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特開2022-176868イソシアネート含有組成物および2液反応型ポリウレタン樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176868
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】イソシアネート含有組成物および2液反応型ポリウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20221122BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20221122BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20221122BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20221122BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/10
C08L75/04
C08L71/02
C08K5/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159946
(22)【出願日】2021-09-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2021083460
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】田部 七大
(72)【発明者】
【氏名】山田 欣範
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CH052
4J002CK051
4J002EH036
4J002FD026
4J002GN00
4J002GQ00
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034GA05
4J034GA06
4J034GA33
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034MA12
4J034MA15
4J034MA16
4J034QB13
4J034QB14
4J034QB17
4J034QB19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無機充填剤を含むポリウレタン樹脂組成物において、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性の低下を抑えながら、ポリオール含有組成物との混合性を向上する、イソシアネート含有組成物を提供する。
【解決手段】2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるものであって、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、無機充填剤、可塑剤、および、特定のポリオキシエチレン化合物を含む、イソシアネート含有組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、
無機充填剤、
可塑剤、および、
下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含み、
一般式(1)において、RはOHまたは下記一般式(2)に示す基を表し、RがOHで表される化合物とRが一般式(2)で表される化合物との混合物でもよく、
一般式(3)において、kは1または0の数を表し、Xは-CH-、-CO(CH-または-COCH=CH-である連結基を表し、ここでpは2~6の整数を表し、Zはカルボキシ基、スルホ基またはこれらの塩を表し、
一般式(1)、一般式(2)および一般式(3)において、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6~30の炭化水素基を表し、AOおよびAOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、mおよびnはアルキレンオキシドの平均付加モル数であってそれぞれ独立に1~100の数を表し、(AO)および(AO)はそれぞれ独立にオキシエチレン基の含有量が20モル%以上である、
イソシアネート含有組成物。
【化1】
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートである、請求項1に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート含有組成物100質量%中に前記無機充填剤を50~95質量%含有する、請求項1または2に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項4】
前記可塑剤がフタル酸ジエステルおよび/またはアジピン酸ジエステルである、請求項1~3のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物と、
ポリオールおよび無機充填剤を含むポリオール含有組成物と、を備える、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
放熱材料として用いられる請求項5に記載の2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物、およびそのポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂組成物に無機充填剤を配合することにより放熱性を付与することが知られている。例えば、特許文献1には、ポリイソシアネートとポリブタジエンポリオールとの反応により得られるポリウレタン樹脂中に、無機充填剤と、可塑剤と、リン酸エステルを配合することが開示されており、無機充填剤を高い配合比率で含有させることにより放熱性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-150473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリウレタン樹脂組成物に無機充填剤を配合する場合、一般に、ポリオール成分に無機充填剤を配合しておき、これに無機充填剤を含まないポリイソシアネート成分を加えて混合し、両成分を反応させている。しかしながら、無機充填剤を含むポリオール成分は、無機充填剤を含まないポリイソシアネート成分と混合しにくいという問題がある。両者の混合性を向上するために、ポリイソシアネート成分に無機充填剤を配合すると、ポリイソシアネート成分の貯蔵安定性が低下する。
【0005】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、無機充填剤を含むポリウレタン樹脂組成物において、ポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物の貯蔵安定性の低下を抑えながら、ポリオール成分として用いられるポリオール含有組成物との混合性を向上することができる、イソシアネート含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、無機充填剤、可塑剤、および、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含み、一般式(1)において、RはOHまたは下記一般式(2)に示す基を表し、RがOHで表される化合物とRが一般式(2)で表される化合物との混合物でもよく、一般式(3)において、kは1または0の数を表し、Xは-CH-、-CO(CH-または-COCH=CH-である連結基を表し、ここでpは2~6の整数を表し、Zはカルボキシ基、スルホ基またはこれらの塩を表し、一般式(1)、一般式(2)および一般式(3)において、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6~30の炭化水素基を表し、AOおよびAOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、mおよびnはアルキレンオキシドの平均付加モル数であってそれぞれ独立に1~100の数を表し、(AO)および(AO)はそれぞれ独立にオキシエチレン基の含有量が20モル%以上である、イソシアネート含有組成物。
【化1】
【0007】
[2] 前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートである、[1]に記載のイソシアネート含有組成物。
[3] 前記イソシアネート含有組成物100質量%中に前記無機充填剤を50~95質量%含有する、[1]または[2]に記載のイソシアネート含有組成物。
[4] 前記可塑剤がフタル酸ジエステルおよび/またはアジピン酸ジエステルである、[1]~[3]のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物と、ポリオールおよび無機充填剤を含むポリオール含有組成物と、を備える、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。
[6] 放熱材料として用いられる[5]に記載の2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性の低下を抑えながら、ポリオール含有組成物との混合性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る2液反応型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分としてのポリオール含有組成物と、ポリイソシアネート成分としてのイソシアネート含有組成物と、を備える。
【0010】
<イソシアネート含有組成物>
[ウレタンプレポリマー(a)]
イソシアネート含有組成物は、ウレタンプレポリマー(a)を含む。ウレタンプレポリマー(a)として、本実施形態では、平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールと、ポリイソシアネートと、を構成成分とするイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが用いられる。
【0011】
上記ポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)が2.5以下であることにより、硬化後のポリウレタン樹脂の硬度を低く抑えることができ、例えば、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物をバッテリー周りの隙間を埋めるギャップフィラーとして用いたときに、外力に対して発生する反力を低減することができる。上記ポリオールの平均官能基数は、2.4以下であることが好ましく、より好ましくは2.3以下である。上記ポリオールの平均官能基数の下限は特に限定されず、例えば平均官能基数は1.7以上でもよい。上記ポリオールは両末端に水酸基を持つことが好ましく、従って平均官能基数は2.0以上であることが好ましい。
【0012】
上記ポリオールの重量平均分子量(Mw)が700以上であることにより、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性を向上することができる。ポリオールの重量平均分子量は、800以上であることが好ましい。ポリオールの重量平均分子量の上限は、特に限定されず、例えば重量平均分子量は10000以下でもよく、5000以下でもよい。本明細書において重量平均分子量は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)の測定により、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出される値である。
【0013】
上記ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールやポリアミンにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加させて得られたポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸やフタル酸などのカルボン酸と、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールなどの多価アルコールを脱水縮合して得られるものが挙げられる。ポリブタジエンポリオールとしては、ポリブタジエン構造の両末端にそれぞれ水酸基を有するものがより好ましく、水素添加したものでもよい。これらの中でも、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリブタジエンポリオールを用いることが好ましい。
【0014】
上記ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどが挙げられるが、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートを用いることであり、両者を併用してもよい。
【0015】
上記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどが挙げられる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。また、これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0017】
ウレタンプレポリマー(a)は、上記ポリオールとポリイソシアネートとを、イソシアネート基過剰条件で反応させることにより得られる。ウレタンプレポリマー(a)を得るために用いるイソシアネート基と水酸基の割合(モル比)は、特に限定されないが、イソシアネート基:水酸基=1.5~2.5:1であることが好ましく、より好ましくは1.7~2.3:1である。ウレタンプレポリマー(a)は、好ましくは両末端にイソシアネート基を有する末端イソシアネートプレポリマーである。
【0018】
ウレタンプレポリマー(a)の配合量は、特に限定されないが、イソシアネート含有組成物100質量%中に1.0~15質量%であることが好ましく、より好ましくは1.5~10質量%である。
【0019】
[無機充填剤(b)]
イソシアネート含有組成物は、無機充填剤(b)を含む。無機充填剤(b)を配合することにより、硬化後のポリウレタン樹脂に放熱性を付与することができる。
【0020】
無機充填剤(b)としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物などが挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
無機充填剤(b)の配合量は、イソシアネート含有組成物100質量%中に50~95質量%であることが好ましい。該配合量が50質量%以上であることにより、ポリウレタン樹脂の放熱性を向上することができる。該配合量が95質量%以下であることにより、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性を向上することができる。該配合量は、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、また90質量%以下であることが好ましい。
【0022】
[可塑剤(c)]
イソシアネート含有組成物は、可塑剤(c)を含む。後述する(d)成分とともに可塑剤(c)を配合することで、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性が向上し、またポリオール含有組成物との混合性を向上することができる。
【0023】
可塑剤(c)としては、特に限定されず、ポリウレタン樹脂に配合される従来公知のものを使用することができ、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸ジエステル、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテート、テトライソノニルピロメリテートなどのピロメリット酸エステル、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェートなどリン酸トリエステルなどが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、可塑剤(c)としては、フタル酸ジエステルおよび/またはアジピン酸ジエステルが好ましい。
【0024】
可塑剤(c)の配合量は、特に限定されず、例えば、イソシアネート含有組成物100質量%中に1~40質量%でもよく、3~35質量%でもよく、5~30質量%でもよく、10~20質量%でもよい。
【0025】
[化合物(d)]
イソシアネート含有組成物は、一般式(1)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種(以下、化合物(d)ということがある。)を含む。化合物(d)を可塑剤(c)とともに配合することにより、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性が向上し、またポリオール含有組成物との混合性を向上することができる。
【0026】
化合物(d)のうち下記一般式(1)で表される化合物は、リン酸エステルである。
【化2】
【0027】
式(1)中、RはOHまたは下記一般式(2)に示す基を表す。式(1)で表されるリン酸エステルは、RがOHで表される化合物(モノエステル)でも、Rが一般式(2)で表される化合物(ジエステル)でも、両者の混合物でもよい。
【化3】
【0028】
式(1)および式(2)において、Rは、炭素数6~30の炭化水素基を表し、より好ましくは炭素数8~20の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、又はアルケニル基、又はアリール基、又はアラルキル基が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0029】
アルキル基の具体例としては、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、2-ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、2-オクチルデシル基、2-ヘキシルドデシル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、エイコシル基、イソエイコシル基、ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ドコシル基、イソドコシル基、トリコシル基、イソトリコシル基、テトラコシル基、イソテトラコシル基、ペンタコシル基、イソペンタコシル基、ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基等が挙げられる。
【0030】
アルケニル基の具体例としては、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基等が挙げられる。
【0031】
アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p-クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等が挙げられる。
【0032】
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基等が挙げられる。
【0033】
式(1)および式(2)において、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。mは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を表し、1~100の数であり、好ましくは3~50の数であり、より好ましくは5~30の数であり、更に好ましくは7~20の数である。(AO)で表されるオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン基の含有量が20モル%以上である。すなわち、オキシエチレン基をEOとし、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基をAOとしたとき、EO/AO(モル比)=100/0~20/80である。オキシエチレン基の含有量は50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%でもよい。オキシアルキレン鎖が複数種のオキシアルキレン基からなる場合、オキシアルキレン基はランダム付加でもよく、ブロック付加でもよい。
【0034】
式(1)で表されるリン酸エステルは、例えば、炭素数6~30のモノアルコールやフェノール類に公知の方法によりアルキレンオキシドを付加した後、得られたポリエーテルモノオールのアルキレンオキシド末端の水酸基に、無水リン酸、オルトリン酸、ポリリン酸、オキシ塩化リン酸等のリン酸化剤を反応させることにより製造することができる。製造方法によってはモノエステル型の化合物とジエステル型の化合物が混合体として得られるが、これらは分離してもよいし、そのまま混合物として使用してもよい。また、水の存在下で反応させ、モノエステル型の化合物の含有割合を高めて使用することもできる。
【0035】
化合物(d)のうち下記一般式(3)で表される化合物は、硫酸エステル、スルホン酸またはカルボン酸であり、これらはいずれか一種でも二種以上併用してもよい。
【化4】
【0036】
式(3)中、kは、1または0の数を表す。Xは、-CH-、-CO(CH-または-COCH=CH-である連結基を表し、ここでpは2~6の整数を表す。
【0037】
式(3)中のZは、カルボキシ基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、またはこれらの塩を表し、酸型と塩型が混在してもよい。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられる。アルカリ金属塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属塩の例としては、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。アルカノールアミン塩の例としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等が挙げられる。
【0038】
式(3)中のRは、炭素数6~30の炭化水素基を表し、より好ましくは炭素数8~20の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、又はアルケニル基、又はアリール基、又はアラルキル基が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基の具体例については、Rと同様である。
【0039】
式(3)において、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。nは、アルキレンオキシドの平均付加モル数を表し、1~100の数であり、好ましくは3~50の数であり、より好ましくは5~30の数であり、更に好ましくは7~20の数である。(AO)で表されるオキシアルキレン鎖は、オキシエチレン基の含有量が20モル%以上である。すなわち、オキシエチレン基をEOとし、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基をAOとしたとき、EO/AO(モル比)=100/0~20/80である。オキシエチレン基の含有量は50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%でもよい。オキシアルキレン鎖が複数種のオキシアルキレン基からなる場合、オキシアルキレン基はランダム付加でもよく、ブロック付加でもよい。
【0040】
上記Zがカルボキシ基の場合、式(3)で表される化合物はカルボン酸である。その場合、式(3)のカルボン酸は、例えば、炭素数6~30のモノアルコールやフェノール類に公知の方法によりアルキレンオキシドを付加した後、モノハロゲン化酢酸またはその塩を用い、塩基存在下でアルキレンオキシド末端の水酸基と反応させることにより製造することができる。あるいはまた、酸無水物を用いてアルキレンオキシド末端の水酸基との開環反応による方法により製造することができる。モノハロゲン化酢酸またはその塩を用いる場合、式(3)において、k=1、Xが-CH-、ZがCOOHまたはその塩であるカルボン酸が得られる。また、酸無水物を用いた場合、k=1、Xが-CO(CH-または-COCH=CH-、ZがCOOHであるカルボン酸が得られる。
【0041】
上記Zがスルホ基の場合、式(3)で表される化合物は、k=0であれば硫酸エステルであり、k=1であればスルホン酸である。例えば、硫酸エステルについては、炭素数6~30のモノアルコールやフェノール類に公知の方法によりアルキレンオキシドを付加した後、スルファミン酸をアルキレンオキシド末端の水酸基と反応させることにより製造することができる。また、例えば、スルホン酸については、上記のアルキレンオキシドを付加した後、モノハロゲン化スルホン酸またはその塩を用いてアルキレンオキシド末端の水酸基と反応させることにより製造することができる。
【0042】
化合物(d)の配合量は、特に限定されず、例えば、イソシアネート含有組成物100質量%中に0.01~5質量%でもよく、0.03~2質量%でもよく、0.05~1質量%でもよい。
【0043】
[その他の成分]
イソシアネート含有組成物において、ポリイソシアネート化合物としては、上記ウレタンプレポリマー(a)単独でもよいが、ウレタンプレポリマー(a)とともに他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0044】
他のポリイソシアネート化合物としては、特に限定されず、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する種々のポリイソシアネート化合物を用いることができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、および芳香族ポリイソシアネート、ならびにこれらの変性体および多核体が挙げられ、いずれか1種用いても2種以上併用してもよい。脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、上述した脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物の変性体としては、例えば、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、アダクト変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0045】
これらの中でも、他のポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を用いることが好ましく、より好ましくは脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体である。その場合、該イソシアヌレート変性体の配合量は、特に限定されないが、例えば、イソシアネート含有組成物100質量%中に0.05~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~2質量%である。なお、ポリイソシアネート化合物は、上記ウレタンプレポリマー(a)を主成分とすることが好ましく、他のポリイソシアネート化合物を併用する場合でも、ポリイソシアネート化合物全体の50質量%超、より好ましくは60質量%以上が上記ウレタンプレポリマー(a)であることが好ましい。
【0046】
イソシアネート含有組成物には、上記成分の他、例えば、吸湿剤、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤などの各種添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0047】
イソシアネート含有組成物のイソシアネート価(NCOV)は、特に限定されず、1.0~10mgKOH/gでもよく、1.5~8.0mgKOH/gでもよく、2.0~7.5mgKOH/gでもよい。
【0048】
<ポリオール含有組成物>
[ポリオール(e)]
ポリオール含有組成物は、ポリオール(e)を含む。ポリオール(e)としては、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリブタジエンポリオールを用いることが好ましい。ポリブタジエンポリオールとしては、ポリブタジエン構造の両末端にそれぞれ水酸基を有するものがより好ましく、水素添加したものでもよい。ポリブタジエンポリオールの平均官能基数は2.0~2.5であることが好ましく、より好ましくは2.1~2.4である。
【0049】
ポリオール(e)の配合量は、特に限定されないが、ポリオール含有組成物100質量%中に2~30質量%であることが好ましく、より好ましくは3~25質量%であり、更に好ましくは5~20質量%である。
【0050】
[無機充填剤(f)]
ポリオール含有組成物は、無機充填剤(f)を含む。無機充填剤(f)を配合することにより、硬化後のポリウレタン樹脂に放熱性を付与することができる。無機充填剤(f)としては、特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの金属窒化物などが挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
無機充填剤(f)の配合量は、ポリオール含有組成物100質量%中に50~95質量%であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、また90質量%以下であることが好ましい。
[可塑剤(g)]
ポリオール含有組成物は、可塑剤(g)を含んでもよい。可塑剤(g)を含むことにより、硬化後のポリウレタン樹脂の硬度を下げることができる。可塑剤(g)としては、特に限定されず、上述のフタル酸ジエステル、アジピン酸ジエステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、リン酸トリエステルなどが挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、可塑剤(g)としては、フタル酸ジエステルおよび/またはアジピン酸ジエステルが好ましい。
【0052】
可塑剤(g)の配合量は、特に限定されず、例えば、ポリオール含有組成物100質量%中に1~30質量%でもよく、3~25質量%でもよく、5~20質量%でもよく、5~15質量%でもよい。
[リン酸エステル(h)]
ポリオール含有組成物は、リン酸エステル(h)を含んでもよい。リン酸エステル(h)を含むことにより、ポリオール含有組成物(h)の粘度を低減することができる。リン酸エステル(h)としては上記式(1)で表される化合物が用いられる。
【0053】
リン酸エステル(h)の配合量は、特に限定されず、例えば、ポリオール含有組成物100質量%中に0.01~5質量%でもよく、0.03~2質量%でもよく、0.05~1質量%でもよい。
【0054】
[その他の成分]
ポリオール含有組成物には、上記成分の他、例えば、吸湿剤、触媒、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤などの各種添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0055】
触媒としては、例えば、有機スズ触媒、有機鉛触媒、有機ビスマス触媒などの金属触媒、アミン触媒などの各種ウレタン重合触媒を用いることができる。
【0056】
ポリオール含有組成物の水酸基価(OHV)は、特に限定されず、1.0~15mgKOH/gでもよく、2.0~10mgKOH/gでもよい。
【0057】
<2液反応型ポリウレタン樹脂組成物>
本実施形態に係る2液反応型ポリウレタン樹脂組成物は、通常は、ポリオール含有組成物である第1液とイソシアネート含有組成物である第2液とで構成されるが、ポリオール含有組成物およびイソシアネート含有組成物の他に、任意成分としての上記その他の成分を含むものを第3液として備えてもよい。
【0058】
2液反応型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物をそれぞれ調製することにより製造することができ、すなわち、ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物はそれぞれ別の容器に充填されたものでもよい。別々の容器に充填されたポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物は、使用時に混合されることによりポリオールとポリイソシアネートが反応してポリウレタン樹脂が形成され、硬化してもよい。その際、加熱により硬化させてもよい。実施形態に係る2液反応型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物を混合して得られたものであってもよく、硬化前の液状でもよく、硬化していてもよい。
【0059】
2液反応型ポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物との混合比は、特に限定されず、例えば、ポリオール含有組成物に含まれる水酸基に対するイソシアネート含有組成物に含まれるイソシアネート基のモル比NCO/OH(インデックス)が0.5~1.2でもよく、0.6~0.9でもよい。ここで、NCO/OHは、上記のイソシアネート価(NCOV)と水酸基価(OHV)から、NCOV/OHVとして算出される。
【0060】
2液反応型ポリウレタン樹脂組成物において、ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物との容量配合比は、特に限定されないが、ポリオール含有組成物/イソシアネート含有組成物=30/70~70/30であることが好ましく、より好ましくは40/60~60/40であり、更に好ましくは45/55~55/45である。
【0061】
2液反応型ポリウレタン樹脂組成物の硬化後の硬度は、特に限定されないが、ショア(shore)Cの硬度が60以下であることが好ましく、30~60でもよい。
【0062】
2液反応型ポリウレタン樹脂組成物の硬化後の熱伝導率(JIS R2618)は、特に限定されず、例えば1.0W/m・K以上でもよく、2.0W/m・K以上でもよく、2.0~3.0W/m・Kでもよい。
【0063】
<2液反応型ポリウレタン樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る2液反応型ポリウレタン樹脂組成物の用途は、特に限定されず、電気電子部品や車載向けなどの様々な用途に用いることができる。無機充填剤を配合することで放熱性を持つことから放熱材料として好適に用いられる。一実施形態として、バッテリー等の熱源に対する放熱性のギャップフィラーとして好適に用いられる。
【実施例0064】
以下、実施例及び比較例に基づいて、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されない。
【0065】
実施例及び比較例において使用した原料を以下に示す。
[無機充填剤]
・水酸化アルミニウム:住友化学株式会社製「CW-350」(密度2.4g/cm
・アルミナ1:デンカ株式会社製「DAW-45」(密度4.0g/cm
・アルミナ2:デンカ株式会社製「DAW-03」(密度4.0g/cm
【0066】
[ポリオール]
・ポリブタジエンポリオール:エボニック社製「POLYVEST HT」、平均官能基数2.3
[可塑剤]
・DUP:フタル酸ジウンデシル
・DOA:アジピン酸ジ2-エチルヘキシル
【0067】
[ポリイソシアネート化合物]
・イソシアヌレート:イソシアヌレート変性HDI、万華化学製「HT600」
[吸湿剤]
・吸湿剤:ユニオン昭和株式会社製「モレキュラーシーブ3AB」
【0068】
実施例および比較例で使用したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであるプレポリマー1~7の合成例を以下に示す。
【0069】
[プレポリマー1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)33質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量700、水酸基価160)(AGC株式会社製「エクセノール720」)67質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー1)を得た。
【0070】
[プレポリマー2]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)26質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量1000、水酸基価112)(AGC株式会社製「エクセノール1020」)74質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー2)を得た。
【0071】
[プレポリマー3]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)10質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量3000、水酸基価35)(AGC株式会社製「エクセノール3020」)90質量部とを120℃で6時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー3)を得た。
【0072】
[プレポリマー4]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、イソホロンジイソシアネート(IPDI)(EVONIC社製「IPDI」)31質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量1000、水酸基価112)(AGC株式会社製「エクセノール1020」)69質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー4)を得た。
【0073】
[プレポリマー5]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)46質量部と、ポリプロピレングリコール(平均官能基数2.0、重量平均分子量400、水酸基価281)(AGC株式会社製「エクセノール420」)54質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー5)を得た。
【0074】
[プレポリマー6]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)12質量部と、ポリブタジエンポリオール(平均官能基数2.3、重量平均分子量3000、水酸基価46)(EVONIC社製「POLYVEST HT」)88質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー6)を得た。
【0075】
[プレポリマー7]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコ内で、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(旭化成株式会社製「デュラネート50M」)33質量部と、ひまし油(平均官能基数2.7、重量平均分子量941、水酸基価161)(伊藤製油株式会社製「URIC H30」)68質量部とを90℃で2時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(プレポリマー7)を得た。
【0076】
実施例および比較例で使用した化合物(d)であるリン酸エステル1~3、硫酸アンモニウム塩、カルボン酸1~3の合成例を以下に示す。
【0077】
[リン酸エステル1]
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、トリデシルアルコール200g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド440g(10モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和した。次いで、得られたエチレンオキシド10モル付加体に無水リン酸47g(0.33モル)を80℃で5時間反応させることで一般式(1)のリン酸エステル1(式中、R:トリデシル、AO:EO、m:10、モノエステルとジエステルのモル比1:1の混合物)を得た。
【0078】
[リン酸エステル2]
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、ラウリル186g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド815g(18.5モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和した。次いで、得られたエチレンオキシド18.5モル付加体に無水リン酸47g(0.33モル)を80℃で5時間反応させることで一般式(1)のリン酸エステル2(式中、R:ラウリル、AO:EO、m:18.5、モノエステルとジエステルのモル比1:1の混合物)を得た。
【0079】
[リン酸エステル3]
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、トリデシルアルコール200g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド264g(6モル)とプロピレンオキシド290g(5モル)を同時に反応させた後、酢酸で中和した。次いで、得られたエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加体に無水リン酸47g(0.33モル)を80℃で5時間反応させることで一般式(1)のリン酸エステル3(式中、R:トリデシル、(AO):EO/PO(オキシプロピレン基)=6/5(モル比)のランダム付加体、m:11、モノエステルとジエステルのモル比1:1の混合物)を得た。
【0080】
[硫酸アンモニウム塩]
撹拌機、温度計、還流管を備えた反応容器に、スチレン化フェノール(モノスチレン化フェノール:ジスチレン化フェノール:トリスチレン化フェノール=80:19:1(質量比)の混合物)220g(1.0モル)をオートクレーブに移し、触媒として水酸化カリウムを用いて、圧力0.15MPa、温度130℃の条件にて、エチレンオキサイド792g(18モル)を付加反応させることにより、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを得た。続いて、得られたポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを、撹拌器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に移し、窒素雰囲気下、温度120℃の条件にてスルファミン酸97g(1モル)を反応させた。その後、モノエタノールアミンを添加して1質量%水溶液におけるpHが7.5となるように調整し、一般式(3)の硫酸アンモニウム塩(式中、R:スチレン化フェニル、AO:EO、n:18、k:0、Z:-SONH)を得た。
【0081】
[カルボン酸1]
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、トリデシルアルコール200g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド440g(10モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和した。次いで、トルエン溶媒中に、上記エチレンオキシド付加物及びモノクロロ酢酸ナトリウム151g(1.3モル)を反応器にとり、均一になるよう撹拌した。その後、反応系の温度が60℃の条件で、水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を添加した後、反応系の温度を80℃に昇温させ、3時間反応させた。反応後、98質量%硫酸120g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。次いで、この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより、一般式(3)のカルボン酸1を得た(式中、R:トリデシル、AO:EO、n:10、k:1、X:-CH-、Z:-COOH)。
【0082】
[カルボン酸2]
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、トリデシルアルコール200g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド440g(10モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和した。次いで、スベリン酸無水物156g(1モル)を120℃で2時間反応させることで一般式(3)のカルボン酸2(式中、R:トリデシル、AO:EO、n:10、k:1、X:-CO-(CH-、Z:-COOH)。
【0083】
[カルボン酸3]
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、トリデシルアルコール200g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、圧力0.15MPa、温度130℃の条件下でエチレンオキサイド440g(10モル)を逐次導入して反応させた後、酢酸で中和した。次いで、無水マレイン酸198g(1モル)を120℃で2時間反応させることで一般式(3)のカルボン酸3を得た(式中、R:トリデシル、AO:EO、n:10、k:1、X:-CO-CH=CH-、Z:-COOH)。
【0084】
平均官能基数、重量平均分子量、水酸基価、およびイソシアネート価の測定方法は以下のとおりである。
[平均官能基数]
平均官能基数は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により数平均分子量(Mn)を測定し、JIS K1557-1:2007のA法に準じて水酸基価(mgKOH/g)を測定して下記式より算出される値である。
平均官能基数={(水酸基価)×(Mn)}/(56.11×1000)
【0085】
[重量平均分子量および数平均分子量]
GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)で測定し、標準ポリスチレンの分子量と溶出時間から作成した検量線を用いて、測定試料の溶出時間から算出した値である。測定条件に関し、カラムにTSKgel Hxl(東ソー株式会社)を用いて、移動相はTHF(テトラヒドロフラン)、移動相流量は1.0mL/min、カラム温度は40℃、試料注入量は50μL、試料濃度は0.2質量%の条件で測定を行った。
【0086】
[水酸基価]
JIS K1557-1:2007のA法に準じて測定。
【0087】
[イソシアネート価]
イソシアネート含有率をJIS K1603-1:2007のA法に準拠して測定し、求めたイソシアネート含有率から下記式によりイソシアネート価を算出される値である。
【数1】
56.11:水酸化カリウムの分子量
1000:gからmgへの変換係数
42.02:NCOの分子量
100:百分率から/gへの変換係数
【0088】
[実施例1~16および比較例1~5]
下記表1に示す配合(質量%)に従い、ポリオール含有組成物A1~7を調製するとともに、下記表2に示す配合(質量%)に従い、イソシアネート含有組成物B1~21を調製した。イソシアネート含有組成物B1~21については、貯蔵安定性を評価した。また、下記表3に示す組合せおよび容量配合比にてポリオール含有組成物A1~7とイソシアネート含有組成物B1~21を混合し、両者の混合性を評価した。また、混合し硬化させた後に硬化物の硬度を測定した。貯蔵安定性、混合性、および硬度の測定・評価方法は以下のとおりである。
【0089】
[貯蔵安定性]
調製したイソシアネート含有組成物を60℃で1か月貯蔵した後の性状を評価し、液体のままの場合を「液体」、液体から固化した場合を「固化」と表3に示した。
【0090】
[混合性]
自転公転ミキサーを用いて、ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物を、常温下、2000rpmで30分間攪拌し、それにより混合が可能であった場合を「〇」、混合できなかった場合「×」と表3に示した。
【0091】
[硬度]
ポリオール含有組成物とイソシアネート含有組成物を常温下で混合して硬化させ、常温にて7日間経過後の硬度(ショアC)をJIS K7312:1996(スプリング硬さ試験タイプC)により測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
結果は表3に示すとおりである。比較例1では、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを構成するポリオールの平均官能基数が大きいため、硬化物の硬度が高かった。比較例2では、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを構成するポリオールの重量平均分子量が小さいため、イソシアネート含有組成物は60℃×1か月の貯蔵で固まってしまい、貯蔵安定性が低かった。比較例3では、イソシアネート含有組成物にリン酸エステルや硫酸アンモニウム塩等の化合物(d)を配合していないため、貯蔵安定性が低下した。比較例4では、イソシアネート含有組成物に無機充填剤を配合していないため、イソシアネート含有組成物とポリオール含有組成物との混合性が悪かった。比較例5では、イソシアネート含有組成物に可塑剤を配合していないため、貯蔵安定性に劣っており、また、ポリオール含有組成物との混合性にも劣っていた。
【0096】
これに対し、実施例1~16であると、イソシアネート含有組成物の貯蔵安定性に優れるとともに、ポリオール含有組成物との混合性も良好であり、また硬化後の硬度も60以下であり、良好な結果が得られた。
【0097】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いられる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物のポリイソシアネート成分として用いられるイソシアネート含有組成物であって、
平均官能基数が2.5以下かつ重量平均分子量が700以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、
無機充填剤、
可塑剤、および、
下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含み、
一般式(1)において、RはOHまたは下記一般式(2)に示す基を表し、RがOHで表される化合物とRが一般式(2)で表される化合物との混合物でもよく、
一般式(3)において、kは1または0の数を表し、Xは-CH-、-CO(CH-または-COCH=CH-である連結基を表し、ここでpは2~6の整数を表し、Zはカルボキシ基、スルホ基またはこれらの塩を表し、
一般式(1)、一般式(2)および一般式(3)において、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数6~30の炭化水素基を表し、AOおよびAOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、mおよびnはアルキレンオキシドの平均付加モル数であってそれぞれ独立に1~100の数を表し、(AO)および(AO)はそれぞれ独立にオキシエチレン基の含有量が20モル%以上である、
イソシアネート含有組成物。
【化1】
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートおよび/または脂環式ジイソシアネートである、請求項1に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート含有組成物100質量%中に前記無機充填剤を50~95質量%含有する、請求項1または2に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項4】
前記可塑剤がフタル酸ジエステルおよび/またはアジピン酸ジエステルである、請求項1~3のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項5】
バッテリー周りの隙間を埋める放熱性のギャップフィラーとして用いられる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物であって、
請求項1~4のいずれか1項に記載のイソシアネート含有組成物と、
ポリオールおよび無機充填剤を含むポリオール含有組成物と、を備える、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。