(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176873
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】CYP24A1結合核酸分子及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20221122BHJP
C12Q 1/6811 20180101ALI20221122BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221122BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221122BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20221122BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221122BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221122BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221122BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221122BHJP
A61K 31/593 20060101ALI20221122BHJP
G01N 33/573 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C12N15/115 Z ZNA
C12Q1/6811 Z
A61P35/00
A61P11/00
A61P13/08
A61P13/12
A61P19/08
A61K31/7088
A61P43/00 121
A61K31/593
G01N33/573 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197996
(22)【出願日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2021082904
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】519164415
【氏名又は名称】BioSeeds株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】安田 佳織
(72)【発明者】
【氏名】ビヤニ マドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ビヤニ マニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】榊 利之
(72)【発明者】
【氏名】中島 美紀
【テーマコード(参考)】
4B063
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
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4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】 CYP24A1に特異的に結合可能な新たな核酸分子を提供する。
【解決手段】 本発明のCYP24A1結合核酸分子は、下記(a)のDNA鎖を含む:
(a)下記(a1)、(a2)又は(a3)のDNA鎖:
(a1)配列番号1~18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖;
(a2)前記(a1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入及び/又は付加された塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖;
(a3)前記(a1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)のDNA鎖を含む、CYP24A1結合核酸分子:
(a)下記(a1)、(a2)又は(a3)のDNA鎖:
(a1)配列番号1~18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖;
(a2)前記(a1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入及び/又は付加された塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖;
(a3)前記(a1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
【請求項2】
さらに、キャリアを含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記キャリアは、ミセル、リポソーム、エマルション、及びニオソームからなる群から選択された少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の核酸分子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、CYP24A1の活性抑制剤。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子と、薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、肺がんの治療薬。
【請求項7】
さらに、1,25-ジヒドロキシビタミンD3を含む、請求項6記載の肺がんの治療薬。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、前立腺がんの治療薬。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、慢性腎臓病の治療薬。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、くる病の治療薬。
【請求項11】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、骨軟化症の治療薬。
【請求項12】
請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、CYP24A1の検出試薬。
【請求項13】
試料と核酸分子とを接触させ、前記試料中のCYP24A1を検出する工程を含み、
前記核酸分子が、請求項1から3のいずれか一項に記載のCYP24A1結合核酸分子であり、
前記検出工程において、前記試料中のCYP24A1と前記核酸分子とを結合させて、前記結合により、前記試料中のCYP24A1を検出することを特徴とする、CYP24A1の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CYP24A1結合核酸分子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDを不活性化する酵素CYP24A1に対する阻害剤として、ケトコナゾール等の低分子化合物が知られている(非特許文献1)。
【0003】
ビタミンDは、高齢化に伴う骨や筋力低下、がんの罹患に関与していることが知られており、ビタミンDに作用して不活化させる酵素であるCYP24A1の活性を阻害することにより、前立腺がん、慢性腎臓病、くる病、骨軟化症を治療できることが知られている(非特許文献2、3、4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D S Loose, et al. “Ketoconazole blocks adrenal steroidogenesis by inhibiting cytochrome P450-dependent enzymes.” The Journal of Clinical Investigation, 1983;71(5):1495-1499.
【非特許文献2】Aruna V Krishnan, et al. “The role of vitamin D in prostate cancer” Recent Results in Cancer Research, Vol. 164, 2003;164:205-21
【非特許文献3】Gary H.Posner, et al. “Vitamin D analogues targeting CYP24 in chronic kidney disease” The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology Volume 121, Issues 1-2, July 2010, Pages 13-19
【非特許文献4】Xiuying Bai, et al. “CYP24 inhibition as a therapeutic target in FGF23-mediated renal phosphate wasting disorders” The Journal of Clinical Investigation, 2016;126(2):667-680.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低分子化合物によるCYP24A1阻害剤は、特異性が低く、CYP24A1だけでなく、例えば、ビタミンDを体内で活性化型へ代謝する際に関与する酵素CYP27B1等を阻害する場合があるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、CYP24A1に特異的に結合可能な核酸分子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のCYP24A1結合核酸分子(以下、「本発明の核酸分子」ともいう)は、下記(a)のDNA鎖を含む:
(a)下記(a1)、(a2)又は(a3)のDNA鎖:
(a1)配列番号1~18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖;
(a2)前記(a1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入及び/又は付加された塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖;
(a3)前記(a1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
【0008】
本発明のCYP24A1の活性抑制剤(以下、「活性抑制剤」ともいう)は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。
【0009】
本発明の医薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子と、薬学的に許容される添加剤とを含む。
【0010】
本発明の肺がん治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。
【0011】
本発明の前立腺がん治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。
【0012】
本発明の慢性腎臓病治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。
【0013】
本発明のくる病治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。
【0014】
本発明の骨軟化症治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。
【0015】
本発明のCYP24A1の検出試薬(以下、「検出試薬」ともいう)は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。
【0016】
本発明のCYP24A1の検出方法(以下、「検出方法」ともいう)は、試料と核酸分子とを接触させ、前記試料中のCYP24A1を検出する工程を含み、前記核酸分子が、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子であり、前記検出工程において、前記試料中のCYP24A1と前記核酸分子とを結合させて、前記結合により、前記試料中のCYP24A1を検出する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP24A1に特異的に結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(
図1A-1、A-2、B、C、D、E-1、E-2)は、本発明のCYP24A1結合核酸分子の推定二次構造を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1における本発明のCYP24A1結合核酸分子のEMSAの結果を示すゲル画像である。
【
図3】
図3(A)及び(B)は、実施例1における本発明のCYP24A1結合核酸分子のCYP24A1への結合の検出結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例1における本発明のCYP24A1結合核酸分子のCYP24A1及びCYP27B1への結合の検出結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例2における本発明のCYP24A1結合核酸分子の存在下におけるCYP24A1活性値の相対値を示すグラフである。
【
図6】
図6(A)~(D)は、実施例2における本発明のCYP24A1結合核酸分子の存在下におけるCYP24A1活性値の相対値を示すグラフである。
【
図7】
図7は、参考例における本発明のCYP24A1結合核酸分子の存在下におけるCYP27B1活性値の相対値を示すグラフである。
【
図8】
図8(A)は、参考例における本発明のCYP24A1結合核酸分子の存在下におけるCYP27A1の活性値の相対値を示すグラフであり、
図8(B)は、参考例における本発明のCYP24A1結合核酸分子の存在下におけるCYP11A1の活性値の相対値を示すグラフである。
【
図9】
図9(A)及び(B)は、実施例3(1)の結果を示す写真である。
【
図10】
図10(A)及び(B)は、実施例3(2)の結果を示す写真である。
【
図11】
図11(A)及び(B)は、実施例4の結果を示すゲル画像である。
【
図12】
図12(A)~(E)は、実施例5のHPLCの結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例6におけるA549細胞の生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<CYP24A1結合核酸分子>
本発明のCYP24A1結合核酸分子は、下記(a)のDNA鎖を含む。本発明の核酸分子は、下記(a)のDNA鎖を含み、DNAから構成されることが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明のCYP24A1結合核酸分子は、例えば、以下、DNAアプタマーともいう。
(a)下記(a1)、(a2)又は(a3)のDNA鎖:
(a1)配列番号1~18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖;
(a2)前記(a1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入及び/又は付加された塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖
(a3)前記(a1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
【0020】
本発明において、CYP24A1(Cytochrome P450 family 24 subfamily A member 1)は、CYP24A1遺伝子によりコードされる、チトクロームP450スーパーファミリーに属する酵素を意味する。CYP24A1の由来は、例えば、ヒトでもよいし、非ヒト動物でもよい。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、サル、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ等があげられる。前記ヒト由来CYP24A1としては、例えば、GeneBankにアクセッションNo.NM_000782で登録されている塩基配列(配列番号19)によりコードされるアミノ酸配列(配列番号20)からなるタンパク質があげられる。
【0021】
ヒト由来CYP24A1遺伝子(配列番号19)
atgcctcagccgcgagaggtgccagtctgcccgctgacagctggtggcgagactcagaacgcggccgccctgccgggccccaccagctggccactgctgggcagcctgctgcagattctctggaaagggggtctcaagaaacagcacgacaccctggtggagtaccacaagaagtatggcaagattttccgcatgaagttgggttcctttgagtcggtgcacctgggctcgccatgcctgctggaagcgctgtaccgcaccgagagcgcgtacccgcagcggctggagatcaaaccgtggaaggcctatcgcgactaccgcaaagaaggctacgggctgctgatcctggaaggggaagactggcagcgggtccggagtgcctttcaaaagaaactaatgaaaccaggggaagtgatgaagctggacaacaaaatcaatgaggtcttggccgattttatgggcagaatagatgagctctgtgatgaaagaggccacgttgaagacttgtacagcgaactgaacaaatggtcgtttgaaagtatctgcctcgtgttgtatgagaagagatttgggcttctccagaagaatgcaggggatgaagctgtgaacttcatcatggccatcaaaacaatgatgagcacgtttgggaggatgatggtcactccagtcgagctgcacaagagcctcaacaccaaggtctggcaggaccacactctggcctgggacaccattttcaaatcagtcaaagcttgtatcgacaaccggttagagaagtattctcagcagcctagtgcagatttcctttgtgacatttatcaccagaatcggctttcaaagaaagaattgtatgctgctgtcacagagctccagctggctgcggtggaaacgacagcaaacagtctaatgtggattctctacaatttatcccgtaatccccaagtgcaacaaaagcttcttaaggaaattcaaagtgtattacctgagaatcaggtgccacgggcagaagatttgaggaatatgccgtatttaaaagcctgtctgaaagaatctatgaggcttacgccgagtgtaccatttacaactcggactcttgacaaggcaacagttctgggtgaatatgctttacccaaaggaacagtgctcatgctaaatacccaggtgttgggatccagtgaagacaattttgaagattcaagtcagtttagacctgaacgttggcttcaggagaaggaaaaaattaatccttttgcgcatcttccatttggcgttggaaaaagaatgtgcattggtcgccgattagcagagcttcaactgcatttggctctttgttggattgtccgcaaatacgacatccaggccacagacaatgagcctgttgagatgctacactcaggcaccctggtgcccagccgggaactccccatcgcgttttgccagcgataa
【0022】
ヒト由来CYP24A1(配列番号20)
MSSPISKSRS LAAFLQQLRS PRQPPRLVTS TAYTSPQPRE VPVCPLTAGG ETQNAAALPG PTSWPLLGSL LQILWKGGLK KQHDTLVEYH KKYGKIFRMK LGSFESVHLG SPCLLEALYR TESAYPQRLE IKPWKAYRDY RKEGYGLLIL EGEDWQRVRS AFQKKLMKPG EVMKLDNKIN EVLADFMGRI DELCDERGHV EDLYSELNKW SFESICLVLY EKRFGLLQKN AGDEAVNFIM AIKTMMSTFG RMMVTPVELH KSLNTKVWQD HTLAWDTIFK SVKACIDNRL EKYSQQPSAD FLCDIYHQNR LSKKELYAAV TELQLAAVET TANSLMWILY NLSRNPQVQQ KLLKEIQSVL PENQVPRAED LRNMPYLKAC LKESMRLTPS VPFTTRTLDK ATVLGEYALP KGTVLMLNTQ VLGSSEDNFE DSSQFRPERW LQEKEKINPF AHLPFGVGKR MCIGRRLAEL QLHLALCWIV RKYDIQATDN EPVEMLHSGT LVPSRELPIA FCQR
【0023】
本発明の核酸分子は、CYP24A1に結合可能であればよく、CYP24A1における結合位置は特に制限されない。
【0024】
本発明の核酸分子は、前記CYP24A1の検出限界濃度が、例えば、0.5nMである。
【0025】
本発明において、「結合する」又は「結合可能」は、本発明の核酸分子が、CYP24A1に対して実際に結合することを意味してもよいし、分子ドッキング法等を用いたシミュレーションにおいて結合することを意味してもよいが、好ましくは、前者である。前記核酸分子とCYP24A1との結合は、例えば、タンパク質間相互作用の解析方法を利用して検出でき、例えば、共免疫沈降、プルダウンアッセイ、ELISA法、フローサイトメトリー等の抗体抗原反応と同様のメカニズムを利用した方法を利用して検出できる。具体例として、前記核酸分子とCYP24A1との結合は、例えば、CYP24A1を発現する細胞と、標識化した核酸分子とを接触後、前記細胞において、標識を検出することにより検出できる。また、本発明の核酸分子とCYP24A1との結合は、例えば、後述する実施例1に記載の方法により検出してもよい。
【0026】
本発明のCYP24A1結合核酸分子について、具体例を以下に示す。本発明の核酸分子は、下記(a)のDNA鎖を含む核酸分子である。本発明において、前記(a)のDNA鎖を含む核酸分子は、例えば、(a1)~(a4)からなる群から選択された少なくとも一つのDNA鎖を含む核酸分子、の意味も含む。
(a)下記(a1)、(a2)又は(a3)のDNA鎖。
(a1)配列番号1~18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖。
(a2)前記(a1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入及び/又は付加された塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
(a3)前記(a1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
(a4)前記(a1)のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
【0027】
本発明の核酸分子において、前記ポリヌクレオチドの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基及びリボヌクレオチド残基があげられる。前記ポリヌクレオチドは、後述するように、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、デオキシリボヌクレオチド残基及びリボヌクレオチド残基を含むDNAであり、さらに、非ヌクレオチド残基を含んでもよく、これらの組合せでもよい。
【0028】
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a1)~(a4)のいずれかのDNA鎖からなる分子でもよいし、前記(a1)~(a4)のいずれかのDNA鎖を含む分子でもよい。後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、後述するように、前記(a1)~(a4)のいずれかのDNA鎖を2つ以上含んでもよい。前記2つ以上のDNA鎖は、同じ配列でもよいし、異なる配列でもよい。また、後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、さらに、リンカー、付加配列及び/又はプライマー結合配列等を有してもよい。
【0029】
前記(a1)のDNA鎖は、配列番号1~18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖である。前記(a1)のDNA鎖は、例えば、後述する実施例に示すように、CYP24A1の活性抑制能が高いことから、配列番号5、7、12、及び18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖(AptCYP24-#5(配列番号5)、AptCYP24-#7(配列番号7)、AptCYP24-#12(配列番号12)、AptCYP24-#18(配列番号18))であることが好ましい。
【0030】
AptCYP24-#1(配列番号1)
5′-CGCCTGGGACCAACATCATGTCATCGTCTA-3′
AptCYP24-#2(配列番号2)
5′-CGCAAGCCACACTTTGTATGGACCAGTATC-3′
AptCYP24-#3(配列番号3)
5′-CAGGGCCATAAGCTGACCCAATCTTGTCGG-3′
AptCYP24-#4(配列番号4)
5′-AGACCAAGTTATGCAAGCTCATCTGTTGT-3′
AptCYP24-#5(配列番号5)
5′-CAGGACAGCACCCTGACCCAGTTCTGTATA-3′
AptCYP24-#6(配列番号6)
5′-CAGGGTCAATGGTCCCCAATCTACACAGAT-3′
AptCYP24-#7(配列番号7)
5′-CATGCAGGAAGTAACCCAATGTCCGTTAAC-3′
AptCYP24-#8(配列番号8)
5′-CAGCGTCACCATACCCTTTAACACCACGCA-3′
AptCYP24-#9(配列番号9)
5′-ACCTATACACCGACGAACCCTACTTCCTGA-3′
AptCYP24-#10(配列番号10)
5′-CTTTTACCCCCCCGCTGCCTTTATACTTGA-3′
AptCYP24-#11(配列番号11)
5′-CAAGCCGAAGTTACACACGGACCAATATGT-3′
AptCYP24-#12(配列番号12)
5′-GCCACTCTTCGTACTCCTCCCTCTATCCGA-3′
AptCYP24-#13(配列番号13)
5′-TCCCCCCCATAACCAACATTTAGCATCATG-3′
AptCYP24-#14(配列番号14)
5′-TAGGTAGCAAGCAAACATGTATTCCTTTTC-3′
AptCYP24-#15(配列番号15)
5′-GTAGCGCGACGTACAATATTTCTTTCCTCC-3′
AptCYP24-#16(配列番号16)
5′-TGGACTTTTTCCGGTGGGAGACGAGGTTGC-3′
AptCYP24-#17(配列番号17)
5′-ACCCAAGGACGTCACCGACTGCAGTGTTAT-3′
AptCYP24-#18(配列番号18)
5′-ACCCTTAGCTCACCCTTCCCCGCCCGCCAC-3′
【0031】
前記(a2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(a2)のDNA鎖が、CYP24A1に結合する範囲であればよい。前記「1もしくは数個」は、前記(a2)のいずれかの塩基配列において、例えば、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1又は2個である。本発明において、塩基数及び配列数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1~5塩基」との記載は、「1、2、3、4、5塩基」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0032】
前記(a3)において、「同一性」は、例えば、前記(a3)のDNA鎖が、CYP24A1に結合する範囲であればよい。前記同一性は、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記同一性は、例えば、BLAST、BLAST2等の解析ソフトウェアを用いて、デフォルトのパラメータにより算出できる(以下、同様)。
【0033】
前記(a4)において、「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」は、例えば、前記(a1)のDNA鎖に対して、完全又は部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0034】
前記(a4)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度及び長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0035】
本発明の核酸分子は、例えば、前記(a1)~(a4)のいずれかのDNA鎖の配列を1つ含んでもよいし、前記(a1)~(a4)のいずれかのDNA鎖の配列を複数含んでもよい。後者の場合、複数のDNA鎖の配列が連結して、一本鎖のDNA鎖を形成していることが好ましい。前記複数のDNA鎖の配列は、例えば、それぞれが直接的に連結してもよいし、リンカーを介して、それぞれが間接的に連結してもよい。前記DNA鎖の配列は、それぞれの末端において、直接的又は間接的に連結していることが好ましい。前記複数のDNA鎖の配列は、例えば、同じでもよいし、異なってもよい。前記複数のDNA鎖の配列は、例えば、同じであることが好ましい。前記DNA鎖の配列を複数含む場合、前記配列の数は、特に制限されず、例えば、2以上、2~18、2~10、2又は3である。
【0036】
前記リンカーは、特に制限されない。前記リンカーの長さは、特に制限されず、例えば、1~200塩基長、1~20塩基長、3~12塩基長、5~9塩基長である。前記リンカーの構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基及びリボヌクレオチド残基等があげられる。前記リンカーは、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記リンカーの具体例として、例えば、ポリデオキシチミン(ポリdT)、ポリデオキシアデニン(ポリdA)、AとTの繰り返し配列であるポリdAdT等があげられ、好ましくはポリdT、ポリdAdTである。
【0037】
本発明の核酸分子において、前記DNA鎖は、一本鎖DNAであることが好ましい。前記一本鎖DNAは、例えば、自己アニーリングによりステム構造及びループ構造を形成可能であることが好ましい。前記DNA鎖は、例えば、ステムループ構造、インターナルループ構造及び/又はバルジ構造等を形成可能であることが好ましい。
【0038】
本発明の核酸分子は、例えば、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、例えば、一方の一本鎖DNAは、前記(a1)~(a4)のいずれかのDNA鎖を含み、他方の一本鎖DNAは、制限されない。前記他方の一本鎖DNAは、例えば、前記(a1)~(a4)のいずれかのDNA鎖に相補的な塩基配列を含むDNA鎖があげられる。本発明の核酸分子が二本鎖の場合、例えば、使用に先立って、変性等により、一本鎖DNAに解離させることが好ましい。また、解離した前記(a1)~(a4)のいずれかの一本鎖DNAは、例えば、前述のように、ステム構造及びループ構造を形成していることが好ましい。
【0039】
本発明において、「ステム構造及びループ構造を形成可能」とは、例えば、実際にステム構造及びループ構造を形成すること、ならびに、ステム構造及びループ構造が形成されていなくても、条件によってステム構造及びループ構造を形成可能なことも含む。「ステム構造及びループ構造を形成可能」とは、例えば、実験的に確認した場合、及び、コンピュータ等のシミュレーションで予測した場合の双方を含む。
【0040】
本発明の核酸分子の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基である。前記ヌクレオチド残基は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基及びリボヌクレオチド残基があげられる。本発明の核酸分子は、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基のみから構成されるDNA、1もしくは数個のリボヌクレオチド残基を含むDNA等があげられる。後者の場合、「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記DNA鎖において、例えば、1~30個、1~15個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1又は2個である。
【0041】
前記ヌクレオチド残基において、前記塩基は、特に制限されない。前記塩基は、例えば、天然の塩基でもよいし、非天然の塩基、すなわち、修飾塩基でもよい。前記塩基は、例えば、天然由来でもよいし、合成品でもよい。前記塩基は、例えば、一般的な塩基、その修飾アナログ等が使用できる。
【0042】
前記天然の塩基は、例えば、アデニン(a)、グアニン(g)等のプリン塩基、シトシン(c)、チミン(t)、ウラシル(u)等のピリミジン塩基があげられる。
【0043】
前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、天然塩基(非人工塩基)が修飾された塩基があげられ、前記天然塩基と同様の機能を有することが好ましい。前記修飾塩基は、デオキシリボース又はリボースに代えて、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、プリン、イソグアニン、イソシトシン、7‐デアザアデニン等を有してもよい。前記塩基の修飾部位は、特に制限されない。前記塩基がプリン塩基の場合、前記プリン塩基の修飾部位は、例えば、前記プリン骨格の7位及び8位があげられる。前記塩基がピリミジン塩基の場合、前記ピリミジン塩基の修飾部位は、例えば、前記ピリミジン骨格の5位及び6位があげられる。前記ピリミジン骨格において、4位の炭素に「=O」が結合し、5位の炭素に「-CH3」又は「-H」以外の基が結合している場合、修飾ウラシル又は修飾チミンということができる。
【0044】
前記修飾塩基の修飾基は、特に制限されず、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基等があげられる。
【0045】
前記修飾塩基は、特に制限されず、例えば、アデニンが修飾された修飾アデニン、チミンが修飾された修飾チミン、グアニンが修飾された修飾グアニン、シトシンが修飾された修飾シトシン及びウラシルが修飾された修飾ウラシル等があげられ、前記修飾チミン、前記修飾ウラシル及び前記修飾シトシンが好ましい。
【0046】
前記修飾塩基の具体例としては、例えば、例えば、2-アミノアデニン、6-メチル化プリン等のアルキル誘導体;2-プロピル化プリン等のアルキル誘導体;5-ハロウラシル及び5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;6-アゾウラシル、6-アゾシトシン及び6-アゾチミン;5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル;8-ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化及び他の8-置換プリン;5-トリフルオロメチル化及び他の5-置換ピリミジン;7-メチルグアニン;5-置換ピリミジン;6-アザピリミジン;N-2、N-6、及びO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む);5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;ジヒドロウラシル;3-デアザ-5-アザシトシン;2-アミノプリン;5-アルキルウラシル;7-アルキルグアニン;5-アルキルシトシン;7-デアザアデニン;N6,N6-ジメチルアデニン;2,6-ジアミノプリン;5-アミノ-アリル-ウラシル;N3-メチルウラシル;置換1,2,4-トリアゾール;2-ピリジノン;5-ニトロインドール;3-ニトロピロール;5-メトキシウラシル;ウラシル-5-オキシ酢酸;5-メトキシカルボニルメチルウラシル;5-メチル-2-チオウラシル;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル;5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル;3-メチルシトシン;5-メチルシトシン(5-Me-dC);N4-アセチルシトシン;2-チオシトシン;N6-メチルアデニン;N6-イソペンチルアデニン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン;N-メチルグアニン;O-アルキル化塩基等があげられる。また、プリン塩基及びピリミジン塩基は、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858~859頁、クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley & Sons、1990、及びイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition、1991、30巻、p.613に開示されるものが含まれる。
【0047】
前記DNA鎖は、例えば、いずれか1種類の前記修飾塩基のみを含んでもよいし、2種類以上の前記修飾塩基を含んでもよい。
【0048】
本発明の核酸分子は、例えば、修飾ヌクレオチドを含んでもよい、前記修飾ヌクレオチドは、前述の前記修飾塩基を有するヌクレオチドでもよいし、糖リン酸骨格が修飾された修飾糖リン酸骨格を有するヌクレオチドでもよいし、前記修飾塩基及び前記修飾糖リン酸骨格を有するヌクレオチドでもよい。
【0049】
前記糖リン酸骨格において、例えば、前記核酸分子の安定性を向上できることから、前記デオキシリボース残基及び/又はリボース残基を修飾してもよい。前記糖残基における修飾部位は、特に制限されず、例えば、前記糖残基の2’位又は4’位があげられ、いずれか一方でも両方が修飾されてもよい。前記修飾糖の修飾基は、例えば、メチル基、フルオロ基、アミノ基、チオ基等があげられる。具体例として、前記デオキシリボース残基は、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水素を、フルオロ等のハロゲンに置換できる。また、前記デオキシリボース残基は、例えば、前記2’位炭素の水素を水酸基に置換することで、デオキシリボース残基をリボース残基に置換できる。前記リボース残基は、例えば、2’位炭素を修飾でき、具体的には、例えば、2’位炭素に結合する水酸基を、水素又はフルオロ等のハロゲンに置換できる。また、前記リボース残基は、例えば、2’位炭素に結合する水酸基の水素を置換してもよい。具体例として、例えば、2’-O-メチルリボース残基、2’-O-メトキシエチルリボース残基、2’-O-ジメチルアミノエチルリボース残基、2’-O-ジメチルアミノエトキシエチルリボース残基等があげられる。前記リボース残基は、例えば、前記2’位炭素の水酸基を水素に置換することで、リボース残基をデオキシリボース残基に置換できる。前記リボース残基は、例えば、立体異性体に置換でき、例えば、アラビノース残基に置換してもよい。前記修飾ヌクレオチド残基は、この他に、例えば、前記ヌクレオチド残基を構成する糖残基において、前記糖残基の環状構造を架橋した二環式の糖残基としてもよい。前記二環式の糖残基を含む修飾ヌクレオチド残基の具体例は、特に制限されず、公知の二環式人工核酸モノマー残基があげられる。前記二環式人工核酸モノマー残基は、例えば、cEt(constrained ethyl bicyclic nucleic acid、Ionis Pharmaceuticals社製)、LNA((商標)、Locked Nucleic Acid)、ENA(登録商標、2’-O,4’-C-Ethylenebridged Nucleic Acid)等があげられ、好ましくは、LNAである。
【0050】
前記修飾ヌクレオチド残基において、塩基がピリミジン塩基の場合、例えば、前記糖残基の2’位及び/又は4’位が修飾されていることが好ましい。前記修飾ヌクレオチド残基の具体例は、例えば、デオキシリボース残基又はリボース残基の2’位が修飾された、2’-メチル化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-メチル化-シトシンヌクレオチド残基、2’-フルオロ化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-フルオロ化-シトシンヌクレオチド残基、2’-アミノ化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-アミノ化-シトシンヌクレオチド残基、2’-チオ化-ウラシルヌクレオチド残基、2’-チオ化-シトシンヌクレオチド残基等があげられる。
【0051】
前記糖リン酸骨格は、例えば、非デオキシリボース残基、非リボース残基及び/又は非リン酸を有する非糖リン酸骨格に置換してもよい。前記非糖リン酸骨格は、例えば、前記糖リン酸骨格の非荷電体があげられる。前記非糖リン酸骨格に置換された、前記ヌクレオチドの代替物は、例えば、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジン、PNA(ペプチド核酸)等があげられる。
【0052】
前記糖リン酸骨格において、例えば、リン酸基を修飾できる。前記糖リン酸骨格において、糖残基に最も隣接するリン酸基は、αリン酸基と呼ばれる。前記αリン酸基は、負に荷電し、その電荷は、糖残基に非結合の2つの酸素原子にわたって、均一に分布している。前記αリン酸基における4つの酸素原子のうち、ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と非結合である2つの酸素原子は、以下、「非結合(non-linking)酸素」ともいう。他方、前記ヌクレオチド残基間のホスホジエステル結合において、糖残基と結合している2つの酸素原子は、以下、「結合(linking)酸素」という。前記αリン酸基は、例えば、非荷電となる修飾、又は、前記非結合酸素における電荷分布が非対称型となる修飾を行うことが好ましい。
【0053】
前記リン酸基は、例えば、前記非結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、Se(セレン)、B(ホウ素)、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)及びOR(Rは、アルキル基又はアリール基)のいずれかの原子で置換でき、好ましくは、Sで置換される。前記非結合酸素は、例えば、両方が置換されていることが好ましく、より好ましくは、両方がSで置換される。前記修飾リン酸基は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキル又はアリールホスホネート、及びホスホトリエステル等があげられ、中でも、ホスホロチオエート、前記2つの非結合酸素が両方ともSで置換されているホスホロジチオエートが好ましい。
【0054】
前記リン酸基は、例えば、前記結合酸素を置換してもよい。前記酸素は、例えば、S(硫黄)、C(炭素)及びN(窒素)のいずれかの原子で置換でき、前記修飾リン酸基は、例えば、Nで置換した架橋ホスホロアミデート、Sで置換した架橋ホスホロチオエート、及びCで置換した架橋メチレンホスホネート等があげられる。前記結合酸素の置換は、例えば、本発明の核酸分子の5’末端ヌクレオチド残基及び3’末端ヌクレオチド残基の少なくとも一方において行うことが好ましく、5’側の場合、Cによる置換が好ましく、3’側の場合、Nによる置換が好ましい。
【0055】
前記リン酸基は、例えば、前記リン非含有のリンカーに置換してもよい。前記リンカーは、例えば、シロキサン、カーボネート、カルボキシメチル、カルバメート、アミド、チオエーテル、エチレンオキサイドリンカー、スルホネート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、及びメチレンオキシメチルイミノ等を含み、好ましくは、メチレンカルボニルアミノ基及びメチレンメチルイミノ基を含む。
【0056】
本発明の核酸分子は、例えば、3’末端及び5’末端の少なくとも一方のヌクレオチド残基が修飾されてもよい。前記修飾は、例えば、3’末端及び5’末端のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。前記修飾は、例えば、前述の通りであり、好ましくは、末端のリン酸基に行うことが好ましい。前記リン酸基は、例えば、全体を修飾してもよいし、前記リン酸基における1つ以上の原子を修飾してもよい。前者の場合、例えば、リン酸基全体の置換でもよいし、欠失でもよい。
【0057】
前記末端のヌクレオチド残基の修飾は、例えば、他の分子の付加があげられる。前記他の分子は、例えば、後述するような標識物質、保護基等の機能性分子があげられる。前記保護基は、例えば、S(硫黄)、Si(ケイ素)、B(ホウ素)、エステル含有基等があげられる。前記標識物質等の機能性分子は、例えば、本発明の核酸分子の検出等に利用できる。
【0058】
前記他の分子は、例えば、前記ヌクレオチド残基のリン酸基に付加してもよいし、スペーサーを介して、前記リン酸基又は前記糖残基に付加してもよい。前記スペーサーの末端原子は、例えば、前記リン酸基の前記結合酸素、又は、糖残基のO、N、SもしくはCに、付加又は置換できる。前記糖残基の結合部位は、例えば、3’位のCもしくは5’位のC、又はこれらに結合する原子が好ましい。前記スペーサーは、例えば、前記PNA等のヌクレオチド代替物の末端原子に、付加又は置換することもできる。
【0059】
前記スペーサーは、特に制限されず、例えば、-(CH2)n-、-(CH2)nN-、-(CH2)nO-、-(CH2)nS-、O(CH2CH2O)nCH2CH2OH、無塩基糖、アミド、カルボキシ、アミン、オキシアミン、オキシイミン、チオエーテル、ジスルフィド、チオ尿素、スルホンアミド、及びモルホリノ等、ならびに、ビオチン試薬及びフルオレセイン試薬等を含んでもよい。前記式において、nは、正の整数であり、n=3又は6が好ましい。
【0060】
前記末端に付加する分子は、これらの他に、例えば、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、抗がん剤、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性担体(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル、又はフェノキサジン)及びペプチド複合体(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド、RGDペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射線標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、抗体、輸送/吸収促進剤(例えば、アスピリン、ビタミンA、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾール複合体、テトラアザマクロ環のEu3+複合体)等、糖(例えば、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、マンノース)があげられる。
【0061】
本発明の核酸分子は、前記5’末端が、例えば、リン酸基又はリン酸基アナログで修飾されてもよい。前記リン酸基は、例えば、5’一リン酸((HO)2(O)P-O-5’)、5’二リン酸((HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’三リン酸((HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’-グアノシンキャップ(7-メチル化又は非メチル化、7m-G-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’-アデノシンキャップ(Appp)、任意の修飾又は非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N-O-5’-(HO)(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’)、5’一チオリン酸(ホスホロチオエート:(HO)2(S)P-O-5’)、5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオエート:(HO)(HS)(S)P-O-5’)、5’-ホスホロチオール酸((HO)2(O)P-S-5’)、硫黄置換の一リン酸、二リン酸及び三リン酸(例えば、5’-α-チオ三リン酸、5’-γ-チオ三リン酸等)、5’-ホスホルアミデート((HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’)、5’-アルキルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、(OH)2(O)P-5’-CH2、Rはアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル等))、5’-アルキルエーテルホスホン酸(例えば、RP(OH)(O)-O-5’、Rはアルキルエーテル(例えば、メトキシメチル、エトキシメチル等))等があげられる。
【0062】
前記修飾ヌクレオチドの個数は、特に制限されず、例えば、前記DNA鎖において、例えば、1~30個、1~20個、1~10個、1~5個、1~4個、1~3個、1又は2個である。また、前記DNA鎖を含む前記核酸分子の全長における前記修飾ヌクレオチドも、特に制限されず、例えば、1~30個、1~20個、1~10個、1~5個、1~4個、1~3個、1又は2個である。
【0063】
本発明の核酸分子は、例えば、1もしくは数個の人工核酸モノマー残基を含んでもよい。前記「1もしくは数個」は、特に制限されず、例えば、前記DNA鎖において、例えば、1~30個、1~20個、1~10個、1~5個、1~4個、1~3個、1又は2個である。前記人工核酸モノマー残基は、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)、ENA(2'-O,4'-C-Ethylenebridged Nucleic Acids)等があげられる。前記モノマー残基における核酸は、例えば、前述と同様である。
【0064】
本発明の核酸分子は、例えば、ヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、前記修飾化ヌクレオチド残基及び/又は前記人工核酸モノマー残基を有することが好ましい。本発明の核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性のため、例えば、5’末端又は3’末端に、数10kDaのPEG(ポリエチレングリコール)又はデオキシチミジン等が結合してもよいし、前述のように、5’末端がリン酸基で修飾されていてもよい。前記修飾リン酸基は、例えば、ホスホロチオエート基が好ましい。
【0065】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記核酸分子の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは3’末端である。前記付加配列は、特に制限されない。前記付加配列の長さは、特に制限されず、例えば、1~200塩基長、1~50塩基長、1~25塩基長、又は1~12塩基長である。前記付加配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基及びリボヌクレオチド残基等があげられる。前記付加配列は、特に制限されず、例えば、デオキシリボヌクレオチド残基からなるDNA、リボヌクレオチド残基を含むDNA等のポリヌクレオチドがあげられる。前記付加配列の具体例として、例えば、ポリdT、ポリdA等があげられる。
【0066】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに、プライマー結合配列を有してもよい。前記プライマー結合配列は、例えば、後述する実施例に記載の方法で本発明の核酸分子を製造(合成)する際に使用するプライマーがハイブリダイズ可能な領域である。前記プライマー結合配列は、例えば、前記核酸分子の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは、’末端及び3’末端の両方に結合していることが好ましい。前記プライマー結合配列の構成単位は、例えば、ヌクレオチド残基であり、デオキシリボヌクレオチド残基及びリボヌクレオチド残基等があげられるが、デオキシリボヌクレオチド残基が好ましい。前記プライマー結合配列の長さは、特に制限されず、例えば、1~40塩基長、1~30塩基長、1~20塩基長、20塩基長である。本発明の核酸分子が前記プライマー結合配列を有する場合、例えば、前記各配列の5´側末端に配列番号21(5´-AGCAGCACAG AGGTCAGATG)で表す塩基配列からなるポリヌクレオチドの3´側末端が結合され、前記各配列の3´側末端に、配列番号22(CCTATCGCTG CTACCGTGAA-3´)で表す塩基配列からなるポリヌクレオチドの5´側末端が結合されていることが好ましい。
【0067】
本発明の核酸分子は、例えば、担体に固定化して使用してもよい。前記本発明の核酸分子は、例えば、5’末端及び3’末端のいずれかを固定化する。本発明の核酸分子を固定化する場合、例えば、前記核酸分子は、前記担体に、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。後者の場合、例えば、前記付加配列を介して固定化することが好ましい。
【0068】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに標識物質を有してもよい。前記標識物質は、例えば、前記核酸分子の5’末端及び3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは5’末端である。
【0069】
前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体、酵素、タグ等があげられる。前記標識物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素、Cy5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられる。前記色素は、例えば、Alexa488等のAlexa色素等があげられる。前記酵素は、例えば、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ等があげられる。前記同位体は、例えば、安定同位体及び放射性同位体があげられ、好ましくは安定同位体である。前記安定同位体は、例えば、被ばくの危険性が少なく、専用の施設も不要であることから取り扱い性に優れ、また、コストも低減できる。また、前記安定同位体は、例えば、標識した化合物の物性変化がなく、トレーサーとしての性質にも優れる。前記安定同位体は、特に制限されず、例えば、2H、13C、15N、17O、18O、33S、34S及び36Sがあげられる。前記タグは、例えば、ビオチン等のビタミン類があげられる。
【0070】
本発明の核酸分子は、例えば、さらに、キャリアを含んでもよい。この場合、本発明の核酸分子は、キャリアに包含されてもよいし、別々に存在してもよい。前者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、前記キャリアに固定化されてもよいし、封入されてもよい。後者の場合、本発明の核酸分子は、例えば、核酸分子を含むキットということもできる。前記キャリアの大きさは、特に制限されず、例えば、100nm~600nmである。
【0071】
前記キャリアは、例えば、本発明の核酸分子を保持できる構造物があげられ、具体例として、ミセル、リポソーム、エマルション、又はニオソーム等があげられる。前記キャリアの構成成分は、前記キャリアの種類に応じて適宜設定できる。前記構成成分は、例えば、両親媒性ポリマー等のポリマー;界面活性剤;カチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質等の脂質;等があげられる。
【0072】
前記カチオン性脂質は、例えば、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミド(DOGS)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウム(DOSPA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DODMA)、1,2-リノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLenDMA)、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスタ-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスタ-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ]-3-ジメチル-1-(シス,シス-9’,1-2’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン(DLinDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-XTC2-DMA)、2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(DLin-KC2-DMA)等があげられる。
【0073】
前記非カチオン性脂質は、例えば、中性、両性イオン性、又はアニオン性脂質があげられる。前記非カチオン性脂質は、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)等があげられる。
【0074】
前記コレステロールは、例えば、N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール(DC-Choi)、1,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン等があげられる。
【0075】
前記ポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルジネート、コラーゲン、キトサン、線状シクロデキストリンコポリマー、線状酸化シクロデキストリンコポリマー、シクロデキストリン、プロタミン、PEG化プロタミン、ポリ-L-リジン(PLL)、PEG化PLL、ポリエチレンイミン(PEI)等があげられる。
【0076】
本発明の核酸分子の前記キャリアへの保持方法は、例えば、リポソームの製造方法に準じて実施できる。
【0077】
本発明の核酸分子の製造方法は、特に制限されず、例えば、化学合成を利用した核酸合成方法等、遺伝子工学的手法、公知の方法により合成できる。本発明の核酸分子は、例えば、いわゆるSELEX法によっても得ることができる。この場合、ターゲットは、CYP24A1が好ましい。また、本発明の核酸分子は、例えば、下記参考文献1に示す、SELCOS法(Systematic Evolution of Ligands by COmpetitive Selection)と呼ばれる競合的非SELEX法により得ることが好ましい。この場合、ターゲットとして、CYP24A1を用い、競合させる対照ターゲットとして、CYP27B1を用いることが好ましい。前記CYP27B1は、生体内においてビタミンDを活性化型に代謝する際に関与する酵素である。前記SELCOS法の具体的な手順は、例えば、後述する実施例に記載の手順を参照できる。前記SELCOS法により本発明の核酸分子を製造することにより、例えば、よりCYP24A1に特異的に結合する核酸分子を得ることができる。
参考文献1:Ankita Kushwaha et al. “Competitive non-SELEX for the selective and rapid enrichment of DNA aptamers and its use in electrochemical aptasensor”, SCIENTIFIC REPORT, 2019 Apr 30, doi: 10.1038/s41598-019-43187-6
【0078】
本発明の核酸分子は、前述のように、CYP24A1に結合性を示す。このため、本発明の核酸分子の用途は、CYP24A1への結合性を利用する用途であれば、特に制限されない。本発明の核酸分子は、例えば、CYP24A1に対する抗体等に代えて、種々の方法に使用できる。
【0079】
<医薬>
本発明の医薬は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子と、薬学的に許容される添加剤とを含む。本発明の医薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の医薬は、前記本発明の核酸分子を含むため、CYP24A1の活性を制御しうる。また、CYP24A1は、ビタミンDの代謝産物である1,25(OH)2D3及び25(OH)D3に作用して不活性化することが知られている。このため、本発明の医薬は、ビタミンD欠乏に起因する疾患用の医薬として使用可能である。また、CYP24A1は、がん細胞で過剰発現していることも報告されている。このため、本発明の医薬は、がんに対する医薬として機能することも期待される。本発明の医薬は、前記本発明の核酸分子の説明を援用できる。
【0080】
前記ビタミンDの欠乏に起因する疾患は、例えば、慢性腎臓病、くる病、骨軟化症等があげられる。
【0081】
前記がんは、例えば、肺がん、前立腺がんがあげられる。
【0082】
本発明の医薬の使用方法(投与条件)は、特に制限されず、例えば、前記投与対象に、前記核酸分子を投与すればよい。
【0083】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織又は器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ブタ、サル等の非ヒト哺乳類動物等があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。
【0084】
前記細胞は、特に制限されず、例えば、ヒト及びマウス由来の細胞があげられ、具体例として、近位尿細管上皮細胞、小腸上皮細胞、大腸上皮細胞、表皮角化細胞等があげられる。前記細胞は、例えば、ヒト受精卵、ならびに、ヒト胚及びヒト個体内の細胞を除く。
【0085】
前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象に応じて適宜決定できる。前記投与対象が、生体から分離された細胞等の場合、例えば、トランスフェクション試薬を使用する方法、エレクトロポレーション法、ナノバブル法等があげられる。前記投与対象が生体の場合、例えば、非経口投与、経口投与等があげられる。前記非経口投与は、例えば、局所投与、皮下投与、静脈内投与等があげられる。本発明の医薬の投与条件、例えば、投与回数、投与量等は、特に制限されない。
【0086】
本発明の医薬の形態は、特に制限されず、例えば、注射液、点滴静注液、点眼液、眼軟膏、皮膚用軟膏、貼付剤、吸入剤、液剤、エアゾール剤、ポンプスプレー剤、経口剤等である。
【0087】
本発明の医薬において、前記核酸分子の配合量は、特に制限されない。また、前記核酸分子の投与条件は、特に制限されない。具体例として、本発明の医薬を皮下注射又は静脈注射等によりヒトに全身投与する場合、1回あたりの投与量(合計)は、例えば、100~500mgである。本発明の医薬の投与回数は、例えば、2週間~8週間に1回である。本発明の医薬において、前記核酸分子の配合量は、例示した投与条件を実現できるような濃度で含まれていることが好ましい。
【0088】
前記薬学的に許容される添加剤は、例えば、複合化剤、担体、標的細胞への結合物質、縮合剤、融合剤、賦形剤、基剤、安定化剤、保存剤等があげられる。
【0089】
前記添加剤は、例えば、前記核酸分子と複合体を形成するものでもよい。この場合、前記添加剤は、例えば、複合化剤ともいえる。本発明の組成物において、前記核酸分子を複合体とすることによって、例えば、前記核酸分子を効率よくデリバリーできる。前記核酸分子と前記複合化剤との結合は、特に制限されず、例えば、非共有結合があげられる。前記複合体は、例えば、包接複合体があげられる。前記複合化剤は、例えば、前述のキャリアの説明を援用できる。
【0090】
前記添加剤の配合量は、前記核酸分子の機能を妨げるものでなければ、特に制限されない。前記添加剤の種類は、特に制限されず、例えば、投与対象の種類に応じて適宜選択できる。
【0091】
本発明の医薬は、例えば、ビタミンDの欠乏に起因する疾患又は前記がんの治療に好適に使用できると期待される。なお、本発明において、前記「治療」は、例えば、予防、改善、予後の改善の意味を含み、いずれでもよい。
【0092】
<CYP24A1活性抑制剤>
本発明のCYP24A1活性抑制剤は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の活性抑制剤は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の活性抑制剤は、前記本発明の核酸分子を含むため、CYP24A1の活性を抑制しうる。また、CYP24A1は、ビタミンDの不活性化において機能している。このため、本発明の活性抑制剤は、ビタミンDの不活性化抑制剤として機能すると期待される。本発明の活性抑制剤は、前記本発明の核酸分子及び医薬の説明を援用できる。
【0093】
本発明において、前記「活性の抑制」とは、前記CYP24A1に対象の核酸分子を導入した場合に、前記核酸分子を未導入又は対照の核酸分子を導入したCYP24A1と比較して、CYP24A1の活性が有意に低下している場合、前記核酸分子は、例えば、CYP24A1の活性を抑制していると評価できる。
【0094】
本発明の活性抑制剤の使用方法は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0095】
<肺がん治療薬>
本発明の肺がん治療薬は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の肺がん治療薬は、例えば、1,25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオールともいう)を含むことが好ましい。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子を含むため、CYP24A1の活性を抑制しうる。後述する実施例に示すように、本発明の核酸分子は、肺がん細胞の増殖を抑制でき、例えば、1,25-ジヒドロキシビタミンD3の存在下においては、さらに肺がん細胞の増殖を抑制できる。本発明の肺がん治療薬は、前記本発明のCYP24A1を含み、CYP24A1の活性を抑制することが可能なため、肺がんを治療できる。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子及び医薬の説明を援用できる。
【0096】
本発明の治療薬の使用方法は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0097】
<前立腺がん治療薬>
本発明の前立腺がん治療薬は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子を含むため、CYP24A1の活性を抑制しうる。下記参考文献2に記載のように、CYP24A1の活性を抑制することにより、前立腺がんの治療が可能なことが知られている。本発明の前立腺がん治療薬は、前記本発明のCYP24A1を含み、CYP24A1の活性を抑制することが可能なため、前立腺がんを治療できる。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子及び医薬の説明を援用できる。
参考文献2 Aruna V Krishnan, et al. “The role of vitamin D in prostate cancer” Recent Results in Cancer Research, Vol. 164, 2003;164:205-21
【0098】
本発明の治療薬の使用方法は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0099】
<慢性腎臓病治療薬>
本発明の慢性腎臓病治療薬は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子を含むため、CYP24A1の活性を抑制しうる。下記参考文献3及び4に記載のように、CYP24A1の活性を抑制することにより、慢性腎臓病の治療が可能なことが知られている。本発明の慢性腎臓病治療薬は、前記本発明のCYP24A1を含み、CYP24A1の活性を抑制することが可能なため、慢性腎臓病を治療できる。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子及び医薬の説明を援用できる。
参考文献3 Gary H.Posner, et al. “Vitamin D analogues targeting CYP24 in chronic kidney disease” The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology Volume 121, Issues 1-2, July 2010, Pages 13-19
参考文献4 Xiuying Bai, et al. “CYP24 inhibition as a therapeutic target in FGF23-mediated renal phosphate wasting disorders” The Journal of Clinical Investigation, 2016;126(2):667-680.
【0100】
本発明の治療薬の使用方法は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0101】
<くる病治療薬>
本発明のくる病治療薬は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子を含むため、CYP24A1の活性を抑制しうる。下記参考文献4に記載のように、CYP24A1の活性を抑制することにより、くる病の治療が可能なことが知られている。本発明のくる病治療薬は、前記本発明のCYP24A1を含み、CYP24A1の活性を抑制することが可能なため、くる病を治療できる。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子及び医薬の説明を援用できる。
参考文献4 Xiuying Bai, et al. “CYP24 inhibition as a therapeutic target in FGF23-mediated renal phosphate wasting disorders” The Journal of Clinical Investigation, 2016;126(2):667-680.
【0102】
本発明の治療薬の使用方法は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0103】
<骨軟化症治療薬>
本発明の骨軟化症治療薬は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の治療薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子を含むため、CYP24A1の活性を抑制しうる。下記参考文献4に記載のように、CYP24A1の活性を抑制することにより、骨軟化症の治療が可能なことが知られている。本発明の骨軟化症治療薬は、前記本発明のCYP24A1を含み、CYP24A1の活性を抑制することが可能なため、くる病を治療できる。本発明の治療薬は、前記本発明の核酸分子及び医薬の説明を援用できる。
参考文献4 Xiuying Bai, et al. “CYP24 inhibition as a therapeutic target in FGF23-mediated renal phosphate wasting disorders” The Journal of Clinical Investigation, 2016;126(2):667-680.
【0104】
本発明の治療薬の使用方法は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0105】
<検出試薬>
本発明のCYP24A1の検出試薬は、前述のように、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の検出試薬は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の核酸分子は、CYP24A1に結合する。このため、本発明の検出試薬は、CYP24A1を検出できる。本発明の検出試薬は、例えば、前記本発明の核酸分子の説明を援用できる。
【0106】
本発明によれば、前記本発明の核酸分子が、CYP24A1に結合することから、例えば、CYP24A1と前記核酸分子との結合を検出することによって、試料中のCYP24A1を検出可能である。具体的には、例えば、試料中のCYP24A1の有無又はCYP24A1の量を分析可能である。このため、本発明の検出試薬は、例えば、分析試薬ということもできる。本発明の検出試薬によれば、例えば、定性又は定量的な分析が可能といえる。
【0107】
本発明において、前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、前述の細胞、組織抽出物等があげられる。前記試料は、CYP24A1を含む試料でもよいし、CYP24A1を含まない試料でもよいし、CYP24A1を含むか否かが不明の試料でもよい。
【0108】
前記試料は、例えば、液体試料でもよいし、固体試料でもよい。前記試料は、例えば、前記核酸分子と接触させ易く、取扱いが簡便であることから、液体試料が好ましい。前記固体試料の場合、例えば、溶媒を用いて、混合液、抽出液、溶解液等を調製し、これを使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0109】
前記検出工程は、例えば、前記試料と前記核酸分子とを接触させて、前記試料中のCYP24A1と前記核酸分子とを結合させる接触工程と、CYP24A1と前記核酸分子との結合を検出する結合検出工程とを含む。また、前記検出工程は、例えば、さらに、前記結合検出工程の結果に基づいて、前記試料中のCYP24A1の有無又は量を分析する分析工程を含む。
【0110】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触方法は、特に制限されない。前記試料と前記核酸分子との接触は、例えば、液体中で行われることが好ましい。前記液体は、特に制限されず、例えば、水、生理食塩水、緩衝液等があげられる。
【0111】
前記接触工程において、前記試料と前記核酸分子との接触条件は、特に制限されない。接触温度は、例えば、4~37℃、18~25℃であり、接触時間は、例えば、10~120分、30~60分である。
【0112】
前記接触工程において、前記核酸分子は、例えば、担体に固定化された固定化核酸分子でもよいし、未固定の遊離した核酸分子でもよい。後者の場合、例えば、容器内で、前記試料と接触させる。前記核酸分子は、例えば、取扱性に優れることから、前記固定化核酸分子でもよい。前記担体は、特に制限されず、例えば、基板、ビーズ、容器等があげられ、前記容器は、例えば、マイクロプレート、チューブ等があげられる。
【0113】
前記結合検出工程は、前述のように、前記試料中のCYP24A1と前記核酸分子との結合を検出する工程である。前記両者の結合の有無を検出することによって、例えば、前記試料中のCYP24A1の有無を分析(定性)でき、また、前記両者の結合の程度(結合量)を検出することによって、例えば、前記試料中のCYP24A1の量を分析(定量)できる。
【0114】
そして、CYP24A1と前記核酸分子との結合が検出できなかった場合は、前記試料中にCYP24A1は存在しないと判断でき、前記結合が検出された場合は、前記試料中にCYP24A1が存在すると判断できる。
【0115】
CYP24A1と前記核酸分子との結合の分析方法は、特に制限されない。前記方法は、例えば、物質間の結合を検出する従来公知の方法が採用でき、具体例として、前述の検出方法があげられる。また、前記結合は、例えば、CYP24A1と前記核酸分子との複合体の検出でもよい。この場合、前記核酸分子は、標識物質により標識されていることが好ましい。前記核酸分子が標識されている場合、前記CYP24A1と前記核酸分子との結合は、例えば、前記標識を検出することにより分析できる。
【0116】
<検出キット>
本発明の検出キットは、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を含む。本発明の検出キットは、前記本発明の核酸分子を含むことが特徴であり、その他の構成及び条件は、特に制限されない。本発明の検出キットによれば、例えば、CYP24A1の検出等を行うことができる。本発明の検出キットは、前記本発明の核酸分子及び検出試薬の説明を援用できる。
【0117】
前記本発明の検出キットは、例えば、前記本発明の核酸分子の他に、その他の構成要素を含んでもよい。前記構成要素は、例えば、前記担体、緩衝液、使用説明書等があげられる。
【0118】
<処置方法>
本発明の処置方法は、投与対象に、本発明のCYP24A1結合核酸分子を投与する投与工程を含む。本発明の処置方法は、投与対象に、本発明のCYP24A1結合核酸分子を投与することが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明の処置方法は、本発明の核酸分子を投与するため、前記投与対象におけるCYP24A1の活性を抑制しうる。本発明の処置方法は、前記本発明の核酸分子、医薬、及び活性制御剤の説明を援用できる。
【0119】
前記投与対象が、例えば、ビタミンDの欠乏に起因する疾患を有する患者の場合、本発明の処置方法は、例えば、当該疾患の治療方法ということもできる。
【0120】
本発明の処置方法の投与条件は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0121】
<活性抑制方法>
本発明のCYP24A1の活性抑制方法(以下、「活性抑制方法」ともいう)は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を用いる。本発明の活性抑制方法は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を用いることが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明の活性抑制方法は、本発明の核酸分子を用いるため、CYP24A1の活性を抑制しうる。また、CYP24A1は、ビタミンDの不活性化において機能している。このため、本発明の活性抑制方法は、ビタミンDの不活性化抑制方法として機能すると期待される。本発明の活性抑制方法は、前記本発明の核酸分子、医薬、及び活性抑制剤の説明を援用できる。
【0122】
本発明の活性抑制方法の投与条件は、前記本発明の医薬の説明を援用できる。
【0123】
<肺がん治療方法>
本発明の肺がん治療方法は、前述のように、対象に肺がん治療薬を投与する投与工程を含み、前記肺がん治療薬が、前記本発明の肺がん治療薬である。本発明の肺がん治療方法は、対象に前記本発明の肺がん治療薬を投与すること、すなわち、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を投与することが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明の肺がん治療方法は、対象に、前記本発明の肺がん治療薬を投与するため、投与対象の肺がんを治療できる。本発明の肺がん治療方法は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子、医薬、肺がん治療薬の説明を援用できる。
【0124】
本発明の肺がん治療方法において、前記投与工程は、例えば、in vitro又はin vivoで行なってもよい。本発明の肺がん治療薬の投与対象及び投与条件は、例えば、本発明の医薬における投与対象及び投与条件の説明を援用できる。
【0125】
<前立腺がん治療方法>
本発明の前立腺がん治療方法は、前述のように、対象に前立腺がん治療薬を投与する投与工程を含み、前記前立腺がん治療薬が、前記本発明の前立腺がん治療薬である。本発明の前立腺がん治療方法は、対象に前記本発明の前立腺がん治療薬を投与すること、すなわち、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を投与することが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明の前立腺がん治療方法は、対象に、前記本発明の前立腺がん治療薬を投与するため、投与対象の前立腺がんを治療できる。本発明の前立腺がん治療方法は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子、医薬、前立腺がん治療薬の説明を援用できる。
【0126】
本発明の前立腺がん治療方法において、前記投与工程は、例えば、in vitro又はin vivoで行なってもよい。本発明の前立腺がん治療薬の投与対象及び投与条件は、例えば、本発明の医薬における投与対象及び投与条件の説明を援用できる。
【0127】
<慢性腎臓病治療方法>
本発明の慢性腎臓病治療方法は、前述のように、対象に慢性腎臓病治療薬を投与する投与工程を含み、前記慢性腎臓病治療薬が、前記本発明の慢性腎臓病治療薬である。本発明の慢性腎臓病治療方法は、対象に前記本発明の慢性腎臓病治療薬を投与すること、すなわち、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を投与することが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明の慢性腎臓病治療方法は、対象に、前記本発明の慢性腎臓病治療薬を投与するため、投与対象の慢性腎臓病を治療できる。本発明の慢性腎臓病治療方法は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子、医薬、慢性腎臓病治療薬の説明を援用できる。
【0128】
本発明の慢性腎臓病治療方法において、前記投与工程は、例えば、in vitro又はin vivoで行なってもよい。本発明の慢性腎臓病治療薬の投与対象及び投与条件は、例えば、本発明の医薬における投与対象及び投与条件の説明を援用できる。
【0129】
<くる病治療方法>
本発明のくる病治療方法は、前述のように、対象にくる病治療薬を投与する投与工程を含み、前記くる病治療薬が、前記本発明のくる病治療薬である。本発明のくる病治療方法は、対象に前記本発明のくる病治療薬を投与すること、すなわち、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を投与することが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明のくる病治療方法は、対象に、前記本発明のくる病治療薬を投与するため、投与対象のくる病を治療できる。本発明のくる病治療方法は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子、医薬、くる病治療薬の説明を援用できる。
【0130】
本発明のくる病治療方法において、前記投与工程は、例えば、in vitro又はin vivoで行なってもよい。本発明のくる病治療薬の投与対象及び投与条件は、例えば、本発明の医薬における投与対象及び投与条件の説明を援用できる。
【0131】
<骨軟化症治療方法>
本発明の骨軟化症治療方法は、前述のように、対象に骨軟化症治療薬を投与する投与工程を含み、前記骨軟化症治療薬が、前記本発明の骨軟化症治療薬である。本発明の骨軟化症治療方法は、対象に前記本発明の骨軟化症治療薬を投与すること、すなわち、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子を投与することが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明の骨軟化症治療方法は、対象に、前記本発明の骨軟化症治療薬を投与するため、投与対象の骨軟化症を治療できる。本発明の骨軟化症治療方法は、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子、医薬、骨軟化症治療薬の説明を援用できる。
【0132】
本発明の骨軟化症治療方法において、前記投与工程は、例えば、in vitro又はin vivoで行なってもよい。本発明の骨軟化症治療薬の投与対象及び投与条件は、例えば、本発明の医薬における投与対象及び投与条件の説明を援用できる。
【0133】
<検出方法>
本発明のCYP24A1の検出方法(以下、「検出方法」ともいう)は、試料と、前記本発明のCYP24A1結合核酸分子とを接触させ、前記試料中のCYP24A1と前記核酸分子とを結合させることにより、前記試料中のCYP24A1を検出する工程を含む。本発明の検出方法は、前記本発明の核酸分子を用いることが特徴であり、その他の工程及び条件は、特に制限されない。本発明の核酸分子は、CYP24A1に結合する。このため、本発明の検出方法は、CYP24A1を検出できる。本発明の検出方法は、例えば、前記本発明の核酸分子、検出試薬、及び検出キットの説明を援用できる。
【0134】
本発明の検出方法は、前記核酸分子として、前記本発明の検出キットを用いてもよい。
【0135】
<核酸分子の使用>
本発明は、CYP24A1の活性を制御するための、本発明の核酸分子又はその使用であり、CYP24A1の検出のための、本発明の核酸分子又はその使用であり、肺がん治療のための、本発明の核酸分子又はその使用であり、前立腺がん治療のための、本発明の核酸分子又はその使用であり、慢性腎臓病治療のための、本発明の核酸分子又はその使用であり、くる病治療のための、本発明の核酸分子又はその使用であり、骨軟化症治療のための、本発明の核酸分子又はその使用である。本発明は、前記本発明の核酸分子、医薬、活性抑制剤、肺がん治療薬、前立腺がん治療薬、慢性腎臓病治療薬、くる病治療薬、骨軟化症治療薬、検出試薬、検出キット、処置方法、活性抑制方法、肺がん治療方法、前立腺がん治療方法、慢性腎臓病治療方法、くる病治療方法、骨軟化症治療方法、及び検出方法の説明を援用できる。
【実施例0136】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0137】
[実施例1]
本発明の核酸分子を、前記参考文献1に記載のSELCOS法により取得できることを確認した。
【0138】
(1)DNAプールの調製
CYP24A1結合核酸分子を取得するための一本鎖の核酸プールとして、下記配列番号23の塩基配列からなるポリヌクレオチドのプールを準備した。下記配列番号23において、5’末端及び3’末端の20塩基がプライマー配列であり、中央の30塩基がランダム配列である。下記塩基配列23において、Nは、A、C、G、又はTである。そして、下記フォワードプライマー(配列番号24)及びビオチン化リバースプライマー(配列番号25)を用いたPCR法により、DNAライブラリーを調製した。前記DNAライブラリーは、およそ1018種類の多様性を有する。
核酸プール(配列番号23)
5’-AGCAGCACAGAGGTCAGATGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNCCTATGCGTGCTACCGTGAA-3’
フォワードプライマー(配列番号24)
5’-AGCAGCACAGAGGTCAGATG-3’
ビオチン化リバースプライマー(配列番号25)
5’-TTCACGGTAGCAGCGATAGG-3’
【0139】
(2)固定化標的の作成
まず、下記参考文献5を参考にし、ヒト由来CYP24A1を発現する大腸菌を調製し、前記大腸菌からヒト由来CYP24A1を採取した。つぎに、下記参考文献6を参考にし、マウス由来CYP27B1を発現する大腸菌を調製し、前記大腸菌からマウス由来CYP27B1を採取した。なお、CYP27B1は、マウスとヒトとの種差が見られないことが知られており、マウス由来CYP27B1における結果は、ヒト由来CYP27B1における結果と同様となることが推定できる。そして、Ni-NTA磁性ビーズ(50μm、QIAGEN社)上に、前記ヒト由来CYP24A1、Ni-NTAアガロース樹脂ビーズ(45-165μm、QIAGEN社)上に、前記マウス由来CYP27B1をそれぞれ、各ビーズのプロトコルに従って固定化し、固定化CYP24A1及び固定化CYP27B1を調製した。前記固定化CYP24A1は、本発明の結合核酸分子の標的タンパク質であり、前記固定化CYP27B1は、本発明の結合核酸分子における競合標的タンパク質である。
参考文献5:Kusudo et al.,“Metabolism of A-ring diastereomers of 1α,25-dihydroxyvitamin D3 by CYP24A1”, BBRC 321, 774, 2004
参考文献6:Uchida et al.,“Purification and characterization of mouse CYP27B1 overproduced by an Escherichia coli system coexpressing molecular chaperonins GroEL/ES”, BBRC 323, 505, 2004
【0140】
(3)セレクション
つぎに、前記(2)で得られた固定化標的と、前記(1)の核酸プールとを用いて、下記参考文献1を参照し、下記のステップでSELCOS法を実施した。
参考文献1:Ankita Kushwaha et al. “Competitive non-SELEX for the selective and rapid enrichment of DNA aptamers and its use in electrochemical aptasensor”, SCIENTIFIC REPORT, 2019 Apr 30, doi: 10.1038/s41598-019-43187-6
【0141】
(第1ステップ)
まず、前記(1)で得られたおよそ1018種類の核酸プールを、90℃で5分間加熱した。その後、4℃に冷却して5分間静置し、25℃で15分間インキュベートした。そして、10pmolの核酸分子を含む核酸プール500μlと、20μlの前記Ni-NTA磁性ビーズ固定化CYP24A1と、及び20μlの前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズ固定化CYP27B1とを、結合緩衝液の存在下で混合し、60分間、25℃でインキュベートし、前記核酸プールの候補核酸分子と、CYP24A1又はCYP27B1とを結合させた。前記結合緩衝液の組成は、20mmol/l トリス-塩酸緩衝液(pH 7.4;0.01% Tween(登録商標) 20を含む)、100mmol/l NaCl、5mmol/l KCl、2mmol/l MgCl2、1mmol/l CaCl2)であった。
【0142】
(第2ステップ)
つぎに、洗浄緩衝液(20mmol/l Tris-HCl緩衝液(pH 7.4、0.05% Tween(登録商標)20)、100mmol/l NaCl、5mmol/l KCl、2mmol/l MgCl2、1mmol/l CaCl2)で洗浄し、試料溶液を1,000gで10秒間遠心分離し、上清を注意深く除去し、CYP24A1又はCYP27B1に結合していないか、結合が弱い核酸分子を除去した。前記洗浄は、2回実施した。そして、前記第1ステップ及び第2ステップを5ラウンド繰り返した。また、1ラウンド繰り返すごとに、前記核酸プールを50pmol、250pmol、1000pmol、及び1000pmolずつ追加し、さらに、1ラウンド繰り返すごとに、インキュベーション時間及び前記洗浄緩衝液のNaCl濃度を、30分(200mmol/l NaCl)、15分(400mmol/l NaCl)、15分(800mmol/l NaCl)、及び15分(2000mmol/l NaCl)にそれぞれ変化させた。
【0143】
(第3ステップ)
そして、前記洗浄後の上清について、マグネットスタンドを用いて、前記Ni-NTA磁性ビーズ固定化CYP24A1を分離し、さらに、1000g、10秒間の遠心分離を行って前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズ固定化CYP27B1を分離し、上清を除去した。分離した前記Ni-NTA磁性ビーズ固定化CYP24A1及び前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズ固定化CYP27B1について、熱処理(90℃、5分間の加熱後、直ちに上清を除去)を行って、各ビーズに結合した核酸分子を回収し、CYP24A1結合核酸分子の候補核酸プール及びCYP27B1結合核酸分子の候補核酸プールとした。
【0144】
(第4ステップ)
前記第3ステップで得られたCYP24A1結合核酸分子の候補核酸プールについて、前記結合緩衝液の存在下で、前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズと25℃、15分~20分間の条件でインキュベートし、その後、前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズを前記第3ステップと同様にして除去することにより、非特異的候補を除去した。そして、得られたCYP24A1結合核酸分子の候補核酸プールについて、さらに、前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズ固定化CYP27B1と25℃、10分~15分インキュベートしたあと、前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズ固定化CYP27B1を前記第3ステップと同様にして除去することにより、CYP27B1に結合する非特異的候補を除去し、CYP24A1結合核酸プールを得た。同様に、CYP27B1結合核酸分子の候補核酸プールについて、前記結合緩衝液の存在下で、前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズと25℃、15分~20分間の条件でインキュベートし、その後、前記Ni-NTAアガロース樹脂ビーズを前記第3ステップと同様にして除去することにより、非特異的候補を除去した。そして、得られたCYP27B1結合核酸分子の候補核酸プールについて、さらに、前記Ni-NTA磁性ビーズ固定化CYP24A1と25℃、10分インキュベートしたあと、前記Ni-NTA磁性ビーズ固定化CYP24A1を前記第3ステップと同様にして除去することにより、CYP24A1に結合する非特異的候補を除去し、CYP27B1結合核酸プールを得た。
【0145】
(第5ステップ)
前記第4ステップで得られたCYP24A1結合核酸プール及びCYP27B1結合核酸プールについて、前記フォワードプライマー(配列番号24)及び前記ビオチン化リバースプライマー(配列番号25)を用い、PCR法により増幅した。PCRの条件は、「98℃ 2分、98℃ 10秒、59℃ 5秒、72℃ 10秒、72℃ 4分」を20サイクル繰り返した。そして、60℃で8mol/lの尿素を含む8%ポリアクリルアミドゲルを使用したゲル電気泳動法により、増幅を確認した。
フォワードプライマー(配列番号24)
5’-AGCAGCACAGAGGTCAGATG-3’
ビオチン化リバースプライマー(配列番号25)
5’-TTCACGGTAGCAGCGATAGG-3’
【0146】
(4)配列解析
前記(3)で得られたCYP24A1結合核酸プール及びCYP27B1結合核酸プールのそれぞれについて、Illumina NGSにて配列解析し、CYP24A1結合核酸分子及びCYP27B1結合核酸分子のそれぞれについて、105種類程度の配列を得た。そして、下記に示す、配列番号1~18のCYP24A1結合核酸分子を得た。なお、各配列の5’末端及び3’末端には、それぞれ、配列番号21及び22で示すプライマー結合配列が結合されているが、記載を省略している。
AptCYP24-#1(配列番号1)
5′-CGCCTGGGACCAACATCATGTCATCGTCTA-3′
AptCYP24-#2(配列番号2)
5′-CGCAAGCCACACTTTGTATGGACCAGTATC-3′
AptCYP24-#3(配列番号3)
5′-CAGGGCCATAAGCTGACCCAATCTTGTCGG-3′
AptCYP24-#4(配列番号4)
5′-AGACCAAGTTATGCAAGCTCATCTGTTGT-3′
AptCYP24-#5(配列番号5)
5′-CAGGACAGCACCCTGACCCAGTTCTGTATA-3′
AptCYP24-#6(配列番号6)
5′-CAGGGTCAATGGTCCCCAATCTACACAGAT-3′
AptCYP24-#7(配列番号7)
5′-CATGCAGGAAGTAACCCAATGTCCGTTAAC-3′
AptCYP24-#8(配列番号8)
5′-CAGCGTCACCATACCCTTTAACACCACGCA-3′
AptCYP24-#9(配列番号9)
5′-ACCTATACACCGACGAACCCTACTTCCTGA-3′
AptCYP24-#10(配列番号10)
5′-CTTTTACCCCCCCGCTGCCTTTATACTTGA-3′
AptCYP24-#11(配列番号11)
5′-CAAGCCGAAGTTACACACGGACCAATATGT-3′
AptCYP24-#12(配列番号12)
5′-GCCACTCTTCGTACTCCTCCCTCTATCCGA-3′
AptCYP24-#13(配列番号13)
5′-TCCCCCCCATAACCAACATTTAGCATCATG-3′
AptCYP24-#14(配列番号14)
5′-TAGGTAGCAAGCAAACATGTATTCCTTTTC-3′
AptCYP24-#15(配列番号15)
5′-GTAGCGCGACGTACAATATTTCTTTCCTCC-3′
AptCYP24-#16(配列番号16)
5′-TGGACTTTTTCCGGTGGGAGACGAGGTTGC-3′
AptCYP24-#17(配列番号17)
5′-ACCCAAGGACGTCACCGACTGCAGTGTTAT-3′
AptCYP24-#18(配列番号18)
5′-ACCCTTAGCTCACCCTTCCCCGCCCGCCAC-3′
5´側末端プライマー結合配列(配列番号21)
5´-AGCAGCACAG AGGTCAGATG
3´側末端プライマー結合配列(配列番号22)
CCTATCGCTG CTACCGTGAA-3´
【0147】
前記18配列の結合核酸分子を、反復数に従って配列をフィルタリングし、それらの相同性に基づいてクラスター分類した。フィルター処理、クラスタリングにはClustalWを使用した。この結果、前記18配列の結合核酸分子について、推定二次構造及びステムループの位置に基づいて、下記表1に示す6種類のクラスターに分類することができた。
【0148】
【0149】
前記6種類のクラスターから、代表的な11配列、すなわち、AptCYP24-#1(配列番号1)、AptCYP24-#2(配列番号2)、AptCYP24-#3(配列番号3)、AptCYP24-#5(配列番号5)、AptCYP24-#7(配列番号7)、AptCYP24-#11(配列番号11)、AptCYP24-#12(配列番号12)、AptCYP24-#15(配列番号15)、AptCYP24-#16(配列番号16)、AptCYP24-#17(配列番号17)、AptCYP24-#18(配列番号18)について、Mfoldを使用して二次構造を解析した。各結合核酸分子の推定二次構造を
図1(
図1A-1、A-2、B、C、D、E-1、E-2)に示す。
図1A-1の左図は、AptCYP24-#1(配列番号1)の推定二次構造を示し、右図は、AptCYP24-#2(配列番号2)の推定二次構造を示す。
図1A-2の左図は、AptCYP24-#3(配列番号3)の推定二次構造を示し、右図は、AptCYP24-#5(配列番号5)の推定二次構造を示す。
図1Bは、AptCYP24-#7(配列番号7)の推定二次構造を示す。
図1Cの左図は、AptCYP24-#11(配列番号11)の推定二次構造を示し、右図は、AptCYP24-#12(配列番号12)の推定二次構造を示す。
図1Dは、AptCYP24-#15(配列番号15)の推定二次構造を示す。
図1E-1の左図は、AptCYP24-#16(配列番号16)の推定二次構造を示し、右図は、AptCYP24-#17(配列番号17)の推定二次構造を示す。
図1E-2は、AptCYP24-#18(配列番号18)の推定二次構造を示す。
【0150】
(5)CYP24A1への結合確認
また、得られたCYP24A1結合核酸分子のうち、AptCYP24-#7(配列番号7)を用いて、CYP24A1をターゲットとするゲルシフトアッセイ(electrophoretic mobility shift assay (EMSA))を行い、本発明のCYP24A1結合核酸分子がCYP24Aに結合することを確認した。具体的には、80nmol/lのAptCYP24-#7(配列番号7)を、所定濃度(0.1μmol/l、0.5μmol/l、1μmol/l、5μmol/l)のCYP24A1と混合し、室温で30分間インキュベートした。つぎに、各サンプル10μlと、4μlのEMSAサンプルバッファー(0mmol/l Tris/10%(v/v) bromophenol blue (pH 6.8)とを混合し、12%PAGEゲルにロードし、100vで、1時間泳動した。コントロールは、CYP24A1と混合していないAptCYP24-#7(配列番号7)単独とした。その後、ゲルをSYBR(商標) Gold Nucleic Acid Gel Stainで染色し、UV Transilluminator Imaging Systemで撮影し、Imagejで解析した。
【0151】
結果を
図2に示す。
図2は、EMSAの結果を示すゲル画像である。
図2のゲル画像において、各レーンは、左から、DNAマーカ(DNA ladder)、CYP24A1の濃度が0、0.1μmol/l、0.5μmol/l、1μmol/l、5μmol/lの結果を示す。
図2において、矢印で示す70bのバンドは、フリーのアプタマー(AptCYP24-#7(配列番号7))を示す。
図2に示すように、CYP24A1の濃度が増加するに伴い、フリーのアプタマー(AptCYP24-#7(配列番号7))を示す70bのバンドの量が減っていることから、AptCYP24-#7(配列番号7)がCYP24A1に結合することがわかる。これにより、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP24A1に結合することがわかった。
【0152】
(6)CYP24A1への特異的結合の確認
得られたCYP24A1結合核酸分子のうち、AptCYP24-#7(配列番号7)について、前記参考文献1を参照して、三電極検出システムDEPSOR(Disposable Electrochemical Printed Sensor)を用いるApta-DEPSORと呼ばれる競合的電気化学アッセイを実施し、CYP24A1への特異的結合を電気的に検出した。
【0153】
(6-1)DEPチップの調製
まず、炭素ベースの作用電極(直径3mm)、参照電極、及びAg/AgCl基準電極を備えた電気化学分析用の三電極システムである、ディスポーザブル三電極スクリーン印刷(DEP)チップ(バイオデバイステクノロジー社)を用意した。前記DEPチップにおける作用電極上に、濃度0.5、5、50、もしくは500nmol/lのCYP24A1又はCYP27B1溶液を滴下し、4℃で1時間インキュベートした。前記インキュベーション後、前記作用電極を100mmol/lのTris-HCl緩衝液(pH 7.4)で3回すすいで洗浄し、過剰なCYP24A1又はCYP27B1を除去し、チップを風乾させた。その後、非特異的吸着を抑制するために、ブロッキング緩衝液(1% BSAを含む100mmol/l Tris-HCl溶液)3.5μlを前記チップに加え、4℃で一晩インキュベートした。その後、前記チップを100mmol/lのTris-HCl緩衝液(pH 7.4)で3回リンスし、乾燥させた。これにより、CYP24A1固定化DEPチップ及びCYP27B1固定化DEPチップを調製した。
【0154】
(6-2)アプタマー修飾金ナノ粒子の調製
AptCYP24-#7(配列番号7)を、金ナノ粒子(40nm, BBI Solutions, UK)の表面にコーティングし、CYP24A1結合核酸分子を固定化した、アプタマー修飾金ナノ粒子を調製した。具体的には、まず、チオール修飾したアプタマー(AptCYP24-#7(配列番号7))を、ヌクレアーゼフリーの水に溶解し、暗所で二時間かけてTCEPにより脱保護した。つぎに、前記金ナノ粒子(AuNP、40nm)を、4℃で10分間遠心分離(80×100g)し、上清45μlを廃棄した。残部5μlを、前記脱保護されたアプタマー溶液(30μl、10μg/ml)に加え、3秒間の超音波処理(45kHz)を行った。その後、混合物を10秒間ボルテックスにより混合し、回転ホイール上に3分間静置した。つぎに、前記混合物に260μlの蒸留水を添加した。さらに、60μlのNaCl(1mol/l)を1滴ずつ添加した。その後、90℃で2分間加熱後、室温で15分間放置して金ナノ粒子に結合したアプタマー分子をフォールディングした。そして、アプタマー結合金ナノ粒子を、40μlの10% BSAを添加し、室温で5分間インキュベート、10秒間のボルテックスを行い、回転ホイール上に2時間静置してブロッキングした。そして、50μlの前記洗浄緩衝液で洗浄し、遠心分離後に上澄みを廃棄して金ナノ粒子に結合していないアプタマーを除去した。得られたアプタマー修飾金ナノ粒子は、50μlの前記結合緩衝液に懸濁し、使用時まで4℃で保存した。
【0155】
(6-3)DEPSORによるCYP24A1への結合の検出
前記(6-2)で調製したアプタマー修飾金ナノ粒子2μlを、前記(6-1)で調製したCYP24A1固定化DEPチップ表面に滴下した。そして、前記CYP24A1固定化DEPチップについて、室温(およそ25℃)で15分インキュベートした。そして、洗浄緩衝液(20mmol/l Tris-HCl緩衝液(pH 7.4)、0.05% Tween(登録商標)20)、100mmol/l NaCl、5mmol/l KCl、2mmol/l MgCl2、1mmol/l CaCl2)を用いて、反応後のDEPチップを三回洗浄し、電気化学アナライザー(BioSeeds株式会社)に接続して電流値を測定した。
【0156】
結果を
図3に示す。
図3(A)は、0.5、5、50、もしくは500nmol/lのCYP24A1固定化DEPチップと、アプタマー修飾金ナノ粒子との応答時のDPV(differential pulse voltammetry)曲線を示すグラフであり、
図3(B)は、ピークシグナルの電流値を示すグラフである。
図3(B)において、縦軸は、電流値(μA)を示し、横軸は、DEPチップに固定化されたCYP24A1の濃度を示す。DEPSORによる解析においては、電極表面に固定化されたCYP24A1により捕捉された金ナノ粒子の量に依存して電気化学的シグナルが増加する。
図3に示すように、CYP24A1の濃度に比例してシグナルが増加しており、アプタマー修飾金ナノ粒子の結合量が増加していることがわかる。このことから、本発明のCYP24A1結合核酸分子が、CYP24A1に結合し、0.5nmol/lという極めて低濃度のCYP24A1を検出可能であることがわかった。
【0157】
(6-4)DEPSORによるCYP24A1への特異的結合の確認
つぎに、アプタマー修飾金ナノ粒子に固定化するAptCYP24-#7(配列番号7)の濃度を10、100、又は1000nmol/lに変化させ、500nmol/lCYP24A1を固定化したCYP24A1固定化DEPチップ又は500nmol/lのCYP27B1を固定化したCYP27B1固定化DEPチップを用いた以外は同様にして、AptCYP24-#7(配列番号7)のCYP24A1又はCYP27B1への結合を検出した。
【0158】
結果を
図4に示す。
図4は、DEPSOR解析によるピークシグナルの電流値を示すグラフであり、
図4において、縦軸は、電流値(μA)を示し、横軸は、金ナノ粒子に固定化されたAptCYP24-#7(配列番号7)の濃度を示す。
図4に示すように、AptCYP24-#7(配列番号7)は、CYP24A1に結合したが、CYP27B1には結合しなかった。すなわち、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP24A1に特異的に結合することがわかった。
【0159】
以上のことから、標的をCYP24A1、競合標的をCYP27B1としたSELCOS法により、本発明のCYP24A1結合核酸分子を取得できること、及び、取得したCYP24A1結合核酸分子が、CYP24A1に特異的に結合することがわかった。
【0160】
[実施例2]
本発明の核酸分子が、CYP24A1の阻害能を奏することを確認した。
【0161】
実施例1で得られたCYP24A1結合核酸分子のうち、AptCYP24-#1(配列番号1)、AptCYP24-#2(配列番号2)、AptCYP24-#3(配列番号3)、AptCYP24-#5(配列番号5)、AptCYP24-#7(配列番号7)、AptCYP24-#11(配列番号11)、AptCYP24-#12(配列番号12)、AptCYP24-#15(配列番号15)、AptCYP24-#16(配列番号16)、AptCYP24-#17(配列番号17)、AptCYP24-#18(配列番号18)を用いて、CYP24A1の活性抑制能を確認した。
【0162】
下記参考文献5を参照して各CYP24A1結合核酸分子のCYP24A1の活性抑制能を評価した。具体的には、各アプタマーを、95℃、5分間インキュベーション後、氷上で3分間、室温(およそ25℃、以下同様)で15分静置した。つぎに、89.5μlの反応組成液(5nmol.l CYP24A1、0.5μmol/l アドレノドキシン、0.05μmol/l アドレノドキシン還元酵素、及び、1mmol/l EDTAを含む100mmol/l Tris-HCl緩衝液(pH 7.5))に、各アプタマーを、濃度が200nmol/lとなるように添加し、室温で15分静置した。つぎに、前記反応組成液89.5μlに、1000μmol/lの1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(基質)を0.5μl(終濃度5μmol/l)、10mmol/lのNADPHを10μl(終濃度 1mmol/l)添加し、37℃で10分間反応させた。反応後の混合液にクロロホルム/メタノール(3:1)溶液を添加し、上清を除去した後に有機相を乾固した。前記乾固物をアセトニトリルに溶解させ、HPLC(Waters社)で分析し、基質である1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と、基質にCYP24A1が作用した後の代謝物である1α,24,25-ジヒドロキシビタミンD3のピーク面積値を算出し、各アプタマーの存在下におけるCYP24A1活性値を算出した。また、コントロールとして、前記アプタマーを添加しなかったもの(コントロール1、CYP24A1 only)、各アプタマーに代えて前記実施例1(1)で調製した初期DNAライブラリーを添加したもの(コントロール2、Initial random library)、各アプタマーに代えてポリTリッチ配列(TTTTTTTTTTTAACATT、配列番号26)を添加したもの(コントロール3、Poly T rich sequence)を用いた。
参考文献5:Kusudo et al.,“Metabolism of A-ring diastereomers of 1α,25-dihydroxyvitamin D3 by CYP24A1”, BBRC 321, 774, 2004
【0163】
結果を
図5に示す。
図5は、CYP24A1活性値の相対値を示すグラフである。
図5において、縦軸は、コントロール1(CYP24A1 only)のCYP24A1活性値を100%としたCYP24A1活性値の相対値を示し、横軸は、サンプルの種類を示す。
図5に示すように、AptCYP24-#1(配列番号1)は、72.5±7.3%、AptCYP24-#2(配列番号2)は、51.4±2.7%、AptCYP24-#3(配列番号3)は、52.8±14.2%、AptCYP24-#5(配列番号5)は、47.9±11.2%、AptCYP24-#7(配列番号7)は、39.1±2.8%、AptCYP24-#11(配列番号11)は、64.2±8.2%、AptCYP24-#12(配列番号12)は、42.1±5.7%、AptCYP24-#15(配列番号15)は、58.2±9.5%、AptCYP24-#16(配列番号16)は、78.8±4.8%、AptCYP24-#17(配列番号17)は、54.2±12.4%、AptCYP24-#18(配列番号18)は、42.9±2.9%の阻害活性を示し、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、いずれもCYP24A1に結合し、CYP24A1の阻害活性を示すことがわかった。また、中でも、AptCYP24-#5(配列番号5)、AptCYP24-#7(配列番号7)、AptCYP24-#12(配列番号12)、AptCYP24-#18(配列番号18)の4つについては、特に高いCYP24A1阻害活性を示すことがわかった。
【0164】
つぎに、特にCYP24A1の阻害活性が高かった、AptCYP24-#5(配列番号5)、AptCYP24-#7(配列番号7)、AptCYP24-#12(配列番号12)、AptCYP24-#18(配列番号18)の4つについて、アプタマー濃度を10nmol/l、50nmol/l、100nmol/l、125nmol/l、150nmol/l、175nmol/l、200nmol/lに変化させた以外は同様にして、CYP24A1の阻害活性を確認した。コントロールは、前記コントロール1のみとした。
【0165】
結果を
図6に示す。
図6は、CYP24A1活性値の相対値を示すグラフであり、(A)は、AptCYP24-#7(配列番号7)の結果を示し、(B)は、AptCYP24-#18(配列番号18)の結果を示し、(C)は、AptCYP24-#12(配列番号12)の結果を示し、(D)は、AptCYP24-#5(配列番号5)の結果を示す。
図6において、縦軸は、CYP24A1単独(コントロール1)のCYP24A1活性値を100%としたCYP24A1活性値の相対値を示し、横軸は、各アプタマーの濃度を示す。
図6に示すように、AptCYP24-#5(配列番号5)、AptCYP24-#7(配列番号7)、AptCYP24-#12(配列番号12)、AptCYP24-#18(配列番号18)は、いずれの濃度においても、高いCYP24A1の阻害活性を示し、特に、AptCYP24-#12(配列番号12)及びAptCYP24-#5(配列番号5)は、10nmol/lという極めて低い濃度においても、高いCYP24A1の阻害活性を示した。また、CYP24A1の相対活性が50%となるアプタマーの濃度(IC
50値)は、AptCYP24-#7(配列番号7)が123±13nmol/lであり、AptCYP24-#18(配列番号18)が72.7±37.7nmol/lであり、AptCYP24-#12(配列番号12)が62.8±12.2nmol/lであり、AptCYP24-#5(配列番号5)が94.2±32.8nmol/lであり、いずれのアプタマーも、極めて低い濃度で強いCYP24A1の阻害活性を示すことがわかった。
【0166】
[参考例]
本発明の核酸分子が、CYP24A1以外の酵素活性を阻害しないことを確認した。
【0167】
下記参考文献6を参照して各CYP24A1結合核酸分子のCYP27B1の活性抑制能を評価した。具体的には、前記実施例2で使用した反応組成液に代えて、反応組成液(20nmol/l CYP27B1、2μmol/l アドレノドキシン、0.2μmol/l アドレノドキシン還元酵素、1mmol/l EDTA、5μmol/l 25-ジヒドロキシビタミンD3(基質)、1mmol/l NADPHを含む100mmol/l Tris-HCl緩衝液(pH 7.5))を使用した以外は前記実施例2と同様とした。なお、コントロールは、前記アプタマーを添加しなかったもの(CYP27B1単独、No Aptamer)を用いた。
参考文献6:Uchida et al.,“Purification and characterization of mouse CYP27B1 overproduced by an Escherichia coli system coexpressing molecular chaperonins GroEL/ES”, BBRC 323, 505, 2004
【0168】
結果を
図7に示す。
図7は、CYP27B1活性値の相対値を示すグラフである。
図7において、縦軸は、CYP27B1単独(コントロール)のCYP27B1活性値を100%としたCYP27B1活性値の相対値を示し、横軸は、サンプルの種類を示す。
図7に示すように、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、いずれもCYP27B1の活性を阻害しなかった。
【0169】
CYP27B1は、生体内において、ビタミンDの体内の貯蔵型である25(OH)D3から1,25(OH)2D3に代謝する際に機能する酵素である。本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP24A1の機能を阻害し、CYP27B1の機能を阻害しないことから、生体に投与した際に、生体内において、ビタミンDの活性化型である1,25(OH)2D3の濃度を向上することができる可能性が示唆された。
【0170】
また、CYP27B1に代えて、CYP27B1と同じミトコンドリア画分に存在するP450分子種であるCYP27A1を使用した以外は同様にして、本発明のCYP24A1結合核酸分子のCYP27A1活性抑制能を確認した。また、CYP27B1に代えて、CYP27B1と同じミトコンドリア画分に存在するP450分子種であるCYP11A1を使用し、下記参考文献7を参照してCYP11A1の活性を測定した以外は同様にして、CYP11A1活性抑制能を確認した。具体的に、CYP11A1の活性は、20mmol/lのリン酸緩衝液、0.3% Tween(登録商標)20、0.2nmol/lのCYP11A1、2μmol/lのADX、0.2μmol/lのADR、1mmol/lのNADPH、及び100μmol/lのコレステロールを含む反応組成液を使用し、37℃、30分間インキュベーションした後、98℃、10分間インキュベーションさせることで、反応を停止した。その後、前記反応液に、コール酸ナトリウム(終濃度1%)及びコレステロールオキシダーゼ(終濃度8unit/ml)を添加し、37℃で20分インキュベーションした。その後ヘキサンを添加して代謝物を抽出した後、HPLCにて分析し、CYP11A1の活性を測定した。
【0171】
結果を
図8(A)及び(B)に示す。
図8(A)は、CYP27A1の活性値の相対値を示すグラフであり、
図8(B)は、CYP11A1の活性値の相対値を示すグラフである。
図8(A)において、縦軸は、CYP27A1単独(コントロール、アプタマーなし)のCYP27A1活性値を100%としたCYP27A1活性値の相対値を示し、横軸は、サンプルの種類を示す。
図8(B)において、縦軸は、CYP11A1単独(コントロール、アプタマーなし)のCYP11A1活性値を100%としたCYP11A1活性値の相対値を示し、横軸は、サンプルの種類を示す。
図8(A)及び(B)に示すように、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP27A1及びCYP11A1の活性を阻害しないことが分かった。
【0172】
これらのことから、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP24A1の活性を特異的に阻害可能であることがわかった。
【0173】
[実施例3]
本発明の核酸分子が、がん細胞に取り込まれることを確認した。
【0174】
(1)CYP24A1結合核酸分子の細胞内取り込み
実施例1で得られたCYP24A1結合核酸分子のうち、AptCYP24-#7(配列番号7)について、固定細胞共焦点顕微鏡(製品名:Zeiss LSM 700、Zeiss社、ドイツ)による観察のため、その5’末端をCy3(登録商標)により標識したCy3標識CYP24A1結合核酸分子を作成した。つぎに、ヒト肺胞基底上皮腺がん細胞(A549細胞、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 JCRB細胞バンクから入手)をノンコートのガラスボトムディッシュ(9.5mm×4ウェル)に、1.5×104cells/whellとなるように播種した。細胞播種後24時間目に、前記ディッシュに、500nmol/lのCy3標識CYP24A1結合核酸分子を加え、37℃で2時間インキュベートした。その後、過剰な蛍光色素を除去するため、細胞を1×PBSで3回洗浄し、小麦胚芽アグルチニン(WGA)コンジュゲート(Biotium社, USA)を用いて、1×PBS、37℃、10分間の条件で膜染色を行った。染色後、細胞を1×PBSで2回の洗浄し、HCHO(4%)で細胞を固定し、細胞内のアプタマーシグナルを共焦点顕微鏡で観察した(実施例3-1)。また、参考例として、DMEM中でエンドサイトーシス阻害剤である100μmol/lのdynasore(Sigma Aldrich社, Japan)で30分間前処理したA549細胞を用意し、同様にアプタマー処理と膜染色を行い、共焦点顕微鏡で細胞を観察した(参考例3)。
【0175】
結果を
図9に示す。
図9(A)は、実施例3-1の結果を示す写真であり、
図9(B)は、参考例3の結果を示す写真である。
図9(A)及び(B)において、左側の写真は、WGAにより膜染色された細胞の写真(WGA-membrane)であり、中央の写真は、Cy3標識CYP24A1結合核酸分子(Cy3-AptCYP24-#7)におけるCy3標識の蛍光を示し、右側の写真は、それらをマージした写真(Merged view)である。また、
図9の各図において、染色箇所を枠線で示し、Cy3標識CYP24A1結合核酸分子(Cy3-AptCYP24-#7)を示す染色が特に局在する箇所を白抜き矢印で示す。
図9(A)に示すように、A549細胞において、Cy3標識CYP24A1結合核酸分子を示す蛍光が、細胞膜内に存在するため、本発明のCYP24A1結合核酸分子がA549細胞内に取り込まれたことが確認できた。また、参考例3である
図9(B)に示すように、エンドサイトーシス阻害剤により前処理したA549細胞では、本発明のCYP24A1結合核酸分子を示す蛍光がみられないため、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれていると推定される。なお、本発明は前記推定に何ら制限されない。
【0176】
(2)CYP24A1結合核酸分子の細胞内における局在確認
細胞内において、ミトコンドリアは、CYP24A1がビタミンD代謝物を不活化する主な場所であることが知られている。このため、ミトコンドリアにおいて、本発明の核酸分子が共局在化していることを確認した。
【0177】
まず、前記Cy3標識CYP24A1結合核酸分子の濃度を100nmol/l又は400nmol/lとした以外は同様にして、A549細胞とCy3標識CYP24A1結合核酸分子とをインキュベートした。その後、過剰な蛍光色素を除去するため、細胞を1×PBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。その後、固定した前記細胞を、100nmol/lのMitoGreen(PromoCell社)及び1:2000の倍率でPBSバッファーにより希釈したHoechst(登録商標)33342(ThermoFisher社)を用いて30分間処理し、細胞の核及びミトコンドリアを染色した後、前記共焦点顕微鏡で細胞を観察した。
【0178】
結果を
図10に示す。
図10は、前記染色結果を示す写真であり、
図10(A)は、CYP24A1結合核酸分子の濃度400nmol/lの結果を示し、
図10(B)は、CYP24A1結合核酸分子の濃度100nmol/lの結果を示す。
図10(A)及び(B)において、左から、核の染色結果(Nucleic(Hoescht3342))、ミトコンドリアの染色結果(Mitochondria(MitoGreen))、Cy3標識CYP24A1結合核酸分子の局在を示すCy3蛍光シグナル(Cy3-AptCYP24-#7)、これらをマージした写真(Merge)を示し、マージした写真の下側の写真は、マージした写真における細胞の拡大図である。また、
図10において、核及びミトコンドリアの染色箇所を枠線で示し、Cy3標識CYP24A1結合核酸分子(Cy3-AptCYP24-#7)を示す染色が特に局在する箇所を白抜き矢印で示す。
図10に示すように、A549細胞において、CYP24A1結合核酸分子は、ミトコンドリアにおいて局在していることがわかった。このため、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、ミトコンドリアにおいてCYP24A1と共局在しており、細胞内において、CYP24A1と相互作用していると推定される。なお、本発明は前記推定に何ら制限されない。
【0179】
[実施例4]
本発明の核酸分子を修飾することにより、ヌクレアーゼ耐性が向上することを確認した。
【0180】
本発明の核酸分子の血清中での安定性を評価するため、実施例1で得られたCYP24A1結合核酸分子のうち、AptCYP24-#7(配列番号7)をホスホロチオエートで修飾し、ホスホロチオエート修飾CYP24A1結合核酸分子を作成した。そして、1μmol/lの前記ホスホロチオエート修飾CYP24A1結合核酸分子を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むPBS中で、2時間、4時間、6時間、24時間、48時間、又は72時間インキュベートした。インキュベート時の温度は、37℃とした。また、ホスホロチオエートで修飾していない、1μmol/lのAptCYP24-#7(配列番号7)を用い、インキュベート時間を2時間、4時間、8時間、24時間とした以外は同様にして、未修飾CYP24A1結合核酸分子についても同様に処理を行った。所定時間経過後、残存する反応生成物を回収し、直ちに95℃、5分間の加熱処理を行い、-80℃で保管した。その後、その後、残留反応物を0.5×TBE緩衝液で2%アガロースゲルにロードし、120Vで15分間泳動した。その後、ゲルをSYBR(商標) Gold Nucleic Acid Gel Stainで染色し、UV Transilluminator Imaging Systemで撮影し、Imagejで解析した。
【0181】
結果を
図11に示す。
図11(A)は、未修飾CYP24A1結合核酸分子の結果を示すゲル画像であり、
図11(B)は、ホスホロチオエート修飾CYP24A1結合核酸分子の結果を示すゲル画像である。
図11において、各ウェル上の数字は、インキュベート時間を示し、0hはコントロール(未処理)の結果を示す。また、
図11において、各ウェルの下側の数字は、コントロール(0h)を100%とした場合におけるアプタマーの残存率(Residual products(%))を示す。
図11(A)に示すように、未修飾のCYP24A1結合核酸分子は、血清中で24時間インキュベートしても、分解されずにアプタマーが残存していることがわかった。また、
図11(B)に示すように、ホスホロチオエート修飾CYP24A1結合核酸分子は、血清中で24時間経過後の残存率が未修飾CYP24A1結合核酸分子の2倍以上であり、72時間経過後も分解されずに残存していた。このため、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、生体内においても利用可能であり、また、ホスホロチオエート修飾CYP24A1結合核酸分子は、ヌクレアーゼ耐性が向上するため、より生体内での利用適性が高くなることがわかった。
【0182】
[実施例5]
本発明の核酸分子が、内因性(endogenous)のCYP24A1の阻害能を有することを確認した。
【0183】
まず、48ウェルプレートに、10%FBSを含むDMEMを1wellあたり150μl分注し、前記A549細胞を3.38×103個/wellとなるように播種した。つぎに、CYP24A1結合核酸分子(AptCYP24-#7(配列番号7))を400nmol/l含み、FBSを含まないDMEMを、培養24時間後のウェルに添加して、A549細胞をアプタマー処理した。その2時間後、1μmol/lの1,25-ジヒドロキシビタミンD3(以下、「1,25-D3」ともいう)をウェルに添加した。CYP24A1結合核酸分子の添加後18時間後に、培地を150μl除去し、クロロホルム/メタノール(3:1)溶液を添加、混合し、上清を除去した後に有機相を乾固した。前記乾固物をアセトニトリルに溶解させ、HPLC(Waters社)でCYP24A1活性を分析した。(実施例5-1)。また、CYP24A1結合核酸分子を含む培地に代えて、400nmol/lのケトコナゾール(富士フィルム和光純薬株式会社)を含む培地を使用した以外は同様にして、A549細胞を処理し、HPLCでCYP24A1活性を分析した(比較例5)。また、CYP24A1結合核酸分子とケトコナゾールの併用効果を確認するため、400nmol/lのCYP24A1結合核酸分子を含む培地に代えて、100nmol/lのCYP24A1結合核酸分子と100nmol/lのケトコナゾールと含む培地を使用した以外は同様にしてA549細胞を処理し、HPLCでCYP24A1活性を分析した(実施例5-2)。なお、コントロールは、1,25-D3添加直後の画分(コントロール1)、CYP24A1結合核酸分子を添加せずに、1,25-D3添加後18時間経過した画分(コントロール2)とした。
【0184】
HPLCの結果を
図12に示す。
図12(A)~(E)は、HPLCの結果を示すグラフであり、
図12(A)は、コントロール1(1,25-D3 only (0h))の結果を示し、
図12(B)は、コントロール2(1,25-D3 only (18h))の結果を示し、
図12(C)は、実施例5-1(1,25-D3 only (18h)+ AptCYP24-#7(400nM))の結果を示し、
図12(D)は、比較例5(1,25-D3 only (18h)+ Ketoconazole(400nM))の結果を示し、
図12(E)は、実施例5-2(1,25-D3 only (18h)+ Ketoconazole(400nM) + AptCYP24-#7(400nM))の結果を示す。
図12の各図において、矢印で示すピークは、1,25-D3代謝物の主要なピークである。
図12に示すように、実施例5-1及び5-2は、コントロール1及び2と比較して、1,25-D3代謝物の主要なピークが有意に減少していた。すなわち、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、A549細胞内因性CYP24A1の活性の阻害能を有しており、また、その阻害能は既知のCYP24A1阻害剤であるケトコナゾールと同等程度であることがわかった。
【0185】
つぎに、実施例5-1および5-2について、基質である1α,25-ジヒドロキシビタミンD3と、基質にCYP24A1が作用した後の代謝物である1α,24,25-ジヒドロキシビタミンD3のピーク面積値を算出し、各アプタマーの存在下におけるCYP24A1活性値を算出した。結果を下記表2に示す。下記表2は、コントロール(1,25-D3のみ)のCYP24A1活性値を100%としたCYP24A1活性値の相対値を示す。下記表2に示すように、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、41.5±3.6%の内因性CYP24A1阻害活性を示し、コントロールと比較して有意な阻害活性を示した。また、実施例5-2に示すように、本発明のCYP24A1とケトコナゾールとを併用した場合、22.1±4.5%の内因性CYP24A1阻害活性を示し、本発明の核酸分子は、既知のCYP24A1阻害剤と併用することにより相乗的な効果を示すことが示された。
【表2】
【0186】
ヒト肺がん細胞においては、CYP24A1が異常に発現しており、CYP24A1が高発現すると、A549細胞を含む肺がん細胞において抗増殖性1,25-D3シグナルが抑制されることが報告されている。本発明のCYP24A1結合核酸分子は、内因性のCYP24A1に対して優れた阻害能を有するため、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、肺がんの治療薬として利用可能であることが示唆された。
【0187】
[実施例6]
本発明の核酸分子が、がん細胞の増殖を抑制することを確認した。
【0188】
前記A549細胞を、96プレートに3×103個/wellとなるように播種した。培養24時間後、本発明のCYP24A1結合核酸分子(AptCYP24-#7(配列番号7))を500nmol/l含み、FBSを含まないDMEMを添加して、A549細胞をアプタマー処理した。その2時間後、100nmol/lの1,25-ジヒドロキシビタミンD3(以下、「1,25-D3」ともいう)を添加した。また、前記アプタマー処理から24時間経過毎に、500nmol/lのCYP24A1結合核酸分子(AptCYP24-#7(配列番号7))を含む前記培地を交換し、継続的にアプタマー処理を行った。培養72時間後に、Cell Counting Kit-8(CK-8キット、株式会社同仁化学研究所)を用いて、細胞生存率を評価した(実施例6)。吸光度は、マイクロプレートリーダー(Spark(商標) 10 M、TECAN社)を用いて450nmで測定した。コントロールは、本発明の結合核酸分子を含まない培地を使用した以外は同様にして処理を行った(細胞のみ、コントロール6)。比較例として、本発明の結合核酸分子を含む培地に代えて、実施例1(1)の初期ランダム配列(配列番号23)を含む培地(比較例6-1)、又は400nmol/lのケトコナゾールを含む培地(比較例6-2)を使用した以外は同様にして処理を行った。なお、すべての値はコントロール(細胞のみ)に正規化した。
【0189】
結果を
図13に示す。
図13は、培養後のA549細胞の生存率を示すグラフであり、縦軸は、コントロール6(Vehicle)の吸光度を1とした相対値を示し、横軸は、サンプルの種類を示す。
図13において、各サンプルの値は、3回測定した場合の平均値±SDとし、**は、P<0.01を意味する。
図13に示すように、本発明の結合核酸分子を添加した実施例6(1,25-D3+Apt-7)は、比較例6-1(1,25-D3 only)と比較して、有意にがん細胞の増殖を抑制し、また、比較例6-2(1,25-D3+KCZ)と比較して同等以上にがん細胞の増殖を抑制した。このため、本発明のCYP24A1結合核酸分子によれば、がん細胞の増殖が抑制でき、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、がんの治療薬として使用できることがわかった。
【0190】
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0191】
この出願は、2021年5月17日に出願された日本出願特願2021-082904を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【0192】
<付記>
上記の実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
下記(a)のDNA鎖を含む、CYP24A1結合核酸分子:
(a)下記(a1)、(a2)又は(a3)のDNA鎖:
(a1)配列番号1~18のいずれかの塩基配列からなるDNA鎖;
(a2)前記(a1)のいずれかの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入及び/又は付加された塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖;
(a3)前記(a1)のいずれかの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、CYP24A1に結合するDNA鎖。
(付記2)
さらに、キャリアを含む、付記1に記載の核酸分子。
(付記3)
前記キャリアは、ミセル、リポソーム、エマルション、及びニオソームからなる群から選択された少なくとも1つである、付記1又は2に記載の核酸分子。
(付記4)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、CYP24A1の活性抑制剤。
(付記5)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子と、薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬。
(付記6)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、肺がんの治療薬。
(付記7)
さらに、1,25-ジヒドロキシビタミンD3を含む、付記6記載の肺がんの治療薬。
(付記8)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、前立腺がんの治療薬。
(付記9)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、慢性腎臓病の治療薬。
(付記10)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、くる病の治療薬。
(付記11)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、骨軟化症の治療薬。
(付記12)
付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子を含む、CYP24A1の検出試薬。
(付記13)
試料と核酸分子とを接触させ、前記試料中のCYP24A1を検出する工程を含み、
前記核酸分子が、付記1から3のいずれかに記載のCYP24A1結合核酸分子であり、
前記検出工程において、前記試料中のCYP24A1と前記核酸分子とを結合させて、前記結合により、前記試料中のCYP24A1を検出することを特徴とする、CYP24A1の検出方法。
本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP24A1に対して結合可能である。本発明のCYP24A1結合核酸分子は、CYP24A1の活性を制御しうる。また、CYP24A1は、ビタミンDの不活化において機能している。このため、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、ビタミンDの欠乏に起因する疾患に対する新たな医薬として機能すると期待される。また、本発明のCYP24A1結合核酸分子によれば、CYP24A1を検出できる。したがって、本発明のCYP24A1結合核酸分子は、例えば、医薬分野及びCYP24A1の検出に、極めて有用なツールといえる。