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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176881
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】コレステリック液晶デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20221122BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20221122BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1333
G02F1/1334
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022049624
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】17/321,792
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502144800
【氏名又は名称】ケント ディスプレイズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】エチェヴェリ, マウリシオ
(72)【発明者】
【氏名】ブラガンザ, クリントン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ, アンソニー
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA17
2H088GA03
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA14
2H088JA14
2H088JA29
2H088KA02
2H088KA13
2H189AA04
2H189AA26
2H189BA04
2H189DA01
2H189JA15
2H189JA25
2H189KA01
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA15
2H189LA25
(57)【要約】
【課題】筆記タブレットとも称されるコレステリック液晶デバイスを改良すること。
【解決手段】本発明によるコレステリック液晶デバイスは、従来技術のものとは反対の光学応答を有する。この液晶デバイスは、コレステリック液晶における特有かつ独特の効果を利用し、電圧を印加することなく尖ったスタイラスを用いてデバイスに加えられた圧力が、従来技術のプレーナテクスチャと対照をなす透過性テクスチャを生成する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を空けて配置された第1の基板および第2の基板であって、前記第1の基板が可撓性かつ透明である、第1の基板および第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されたコレステリック液晶材料を含む液晶層と
を備える、液晶デバイスであって、
前記コレステリック液晶材料が、電圧を印加することなく、ユーザによって前記第1の基板に圧力が加えられて、前記コレステリック液晶材料の少なくとも一部分を反射性テクスチャから透過性テクスチャに変化させて画像を形成することを可能にするようになっている、液晶デバイス。
【請求項2】
前記液晶層を通過する光を吸収する光吸収性の背景材を備える、請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項3】
前記光吸収性の背景材が、前記第2の基板上のコーティングまたは層から構成されている、請求項2に記載の液晶デバイス。
【請求項4】
前記光吸収性の背景材が、不透明または半透明である、請求項2に記載の液晶デバイス。
【請求項5】
前記光吸収性の背景材が、不透明または半透明な前記第2の基板から構成されている、請求項2に記載の液晶デバイス。
【請求項6】
前記第2の基板が可撓性であり、前記ユーザによって前記第2の基板に加えられた圧力が、前記コレステリック液晶材料の少なくとも一部分を前記反射性テクスチャから前記透過性テクスチャに変化させる、請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項7】
前記第1の基板と前記液晶層との間に配置された第1の導電層と、前記第2の基板と前記液晶層との間に配置された第2の導電層とを備える、請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項8】
前記第1の導電層および前記第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路であって、前記電子回路が前記液晶デバイスの一体部分である、電子回路を備える、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項9】
請求項7に記載の液晶デバイスと、前記液晶デバイスに恒久的に接続されていない別個の消去デバイスとの組み合わせであって、
前記別個の消去デバイスが、前記第1の導電層および前記第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路を備える、組み合わせ。
【請求項10】
前記画像が、前記コレステリック液晶材料を前記反射性テクスチャにする電圧を前記導電層に印加することによって消去される、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項11】
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間のセルギャップが、約2ミクロン~約4ミクロンのサイズの範囲にある、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項12】
前記コレステリック液晶材料が、ポリマー中に分散されたコレステリック液晶を含む、請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項13】
前記液晶層の上に積層された第2の液晶層を備える、請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項14】
前記液晶層と前記第2の液晶層との間に配置された少なくとも1つの中間基板を備える、請求項13に記載の液晶デバイス。
【請求項15】
前記第2の液晶層が第2のコレステリック液晶材料を含み、前記コレステリック液晶材料と前記第2のコレステリック液晶材料とが反対のキラリティを有する、請求項13に記載の液晶デバイス。
【請求項16】
前記第2の液晶層が第2のコレステリック液晶材料を含み、前記コレステリック液晶材料と前記第2のコレステリック液晶材料とが異なるピッチ長を有する、請求項13に記載の液晶デバイス。
【請求項17】
前記中間基板と前記第2の液晶層との間に配置された第3の導電層と、前記第2の基板と前記第2の液晶層との間に配置された第4の導電層とを備える、請求項14に記載の液晶デバイス。
【請求項18】
前記画像が、前記液晶デバイスを丸めることまたは巻くことによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項19】
前記画像が、前記液晶デバイスを揺らすまたははためかすことによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項20】
前記画像が、前記液晶デバイスをよじることによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項21】
前記画像が、前記液晶デバイスをクシャクシャにすることによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項22】
前記画像が、前記液晶デバイスを物体との接触から取り外すことによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される、請求項7に記載の液晶デバイス。
【請求項23】
前記圧力を加えるスタイラスを備える、請求項1に記載の液晶デバイス。
【請求項24】
互いに間隔を空けて配置された第1の基板および第2の基板であって、前記第1の基板が可撓性かつ透明である、第1の基板および第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されたコレステリック液晶材料を含む液晶層と、
前記液晶層を透過した光を吸収する光吸収性の背景材と
を備える、液晶デバイスであって、
前記コレステリック液晶材料が、電圧を印加することなく、ユーザによって前記第1の基板に圧力が加えられて、暗く見える、圧力が加えられたマークを形成することを可能にし、それによって圧力が印加されていない周囲部分が明るく見えるようになっている、液晶デバイス。
【請求項25】
前記第1の基板と前記液晶層との間に配置された第1の導電層と、前記第2の基板と前記液晶層との間に配置された第2の導電層とを備える、請求項24に記載の液晶デバイス。
【請求項26】
前記第1の導電層および前記第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路であって、前記電子回路が前記液晶デバイスの一体部分である、電子回路を備える、請求項25に記載の液晶デバイス。
【請求項27】
請求項25に記載の前記液晶デバイスと、前記液晶デバイスに恒久的に接続されていない別個の消去デバイスとの組み合わせであって、
前記別個の消去デバイスが、前記第1の導電層および前記第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路を備える、組み合わせ。
【請求項28】
前記第2の基板が可撓性であり、前記ユーザによって前記第2の基板に加えられた圧力が、前記コレステリック液晶材料の少なくとも一部分を反射性テクスチャから透過性テクスチャに変化させる、請求項24に記載の液晶デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コレステリック液晶感圧デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
簡素で低コストの再利用可能な代替デバイスによって紙を置き換えるために、Kent Displays Inc.は、BOOGIE BOARD(登録商標)筆記タブレットを開発した(参照により組み込まれる米国特許第6,104,448号明細書および同第8,139,039号明細書を参照されたい)。図1に示すように、BOOGIE BOARD(登録商標)筆記タブレットの技術は、コレステリック液晶の特有の特徴を使用し、液晶材料が2つの基板3および4の間に適切に挟まれる。前面基板3は、筆記面を形成するために可撓性である(図1図3)。従来技術のBOOGIE BOARD(登録商標)筆記タブレットでは、液晶は、最初はフォーカルコニックテクスチャ2として知られる略透過性テクスチャであり、これにより、ユーザは、通常は色が暗い背面基板4または背面基板上のコーティングもしくは層24によって提供される、デバイスの光吸収性の背景材を見ることができる。物体8を用いて筆記面上に適度な局所的圧力を加えることによって、フォーカルコニックテクスチャが、プレーナテクスチャ9として知られる反射性テクスチャに変化する。プレーナテクスチャ9の色はコレステリック液晶のピッチ長によって決まる。例えば、黒色の光吸収性の背景材と、ピッチ長が緑色(550nm)に調整されたコレステリック液晶とを有する筆記タブレットデバイス上で筆記を行うことにより、圧力が加えられていない筆記デバイスの残り部分の黒色周囲部分7と対照をなす緑色の筆記またはマーク10が生成される。画像は、筆記デバイスを略透過性テクスチャまたはフォーカルコニックテクスチャに初期化することによって消去されて空白ページを形成する。そうするためには、筆記タブレット上のボタンを押し、それに応じて基板の内面上の透明電極5および6に電圧25が印加される(例えば、参照により組み込まれる米国特許第10,558,065号明細書を参照されたい)。フォーカルコニックテクスチャとプレーナテクスチャとの両方が安定しており、テクスチャを維持させるための電圧を必要としない。使用される電圧は、電極に印加され、マーク10のプレーナテクスチャを含むすべての液晶層をフォーカルコニックテクスチャに遷移させる消去電圧パルスだけである。
【0003】
BOOGIE BOARD(登録商標)筆記タブレットの欠点は、筆記中に電圧を印加せずに、より暗い光吸収性の背景材上に反射性の線またはマークを筆記することしかできないことである。これは、従来技術では、コレステリック液晶筆記タブレットに加えられた圧力は、コレステリック液晶筆記タブレットを反射性プレーナテクスチャに駆動させることしかできないためである。結果として、従来技術の筆記タブレットのコントラストを最大化するためには、光吸収性の背景材の選択肢は、かなりの量の光吸収を有する色および色調に制限される。この条件の集合によって、プレーナマークと透過性の周囲部分との間で可能なコントラストの組み合わせのタイプが制限される。さらに、BOOGIE BOARD(登録商標)筆記タブレットが動作するこのモードでは、電圧を印加せずに白色の反射性の周囲部分を有する暗い線またはマークを作ることができないため、一般的な紙のノート、ノートパッド、およびホワイトボードの筆記に似せることができない。より一般的な意味では、モードBとして知られるこのモードを使用して明るい背景材上で暗い筆記を行うことは不可能である。これらの制限を克服する試みとして、米国特許第8,139,039号明細書において、Schneiderらは、コレステリック液晶をプレーナテクスチャからより透過性のテクスチャ(モードAとして知られる)に変換する局所的な圧力を筆記面上に加えながら、プレーナ反射性テクスチャに初期化された典型的な筆記タブレットに小さい連続電圧を印加することを提案している。しかしながら、筆記プロセス全体の間に一定の印加電圧を必要とすることは重大な欠点であり、電圧を使用せずに画像を形成する双安定性コレステリック液晶の最も重要な利点の1つを無効にする。したがって、Schneiderらの技法は、画像を筆記するのではなく、画像を部分的に消去するために商業的に有用であった。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、従来技術の色反射性プレーナテクスチャとは対照的に、印加された圧力が液晶を透過性テクスチャに駆動し、かつこのことを印加電圧なしで行う液晶デバイスを初めて説明する。圧力が加えられたところに透過性テクスチャの暗いマークまたは筆記を付けることができ、それにより、圧力が加えられていないところに反射性テクスチャの周囲部分が存在する。従来は不可能であった、白色の周囲部分を伴う黒色筆記でさえも可能である。液晶デバイスは、第1の基板と第2の基板との間に配置されたコレステリック液晶材料を含む液晶層を備える。2つの任意選択の第1の導電層および第2の導電層が存在する。第1の導電層は第1の基板と液晶層との間に配置され、第2の導電層は第2の基板と液晶層との間に配置される。前面基板である場合の第1の基板と第1の導電層とは透明かつ可撓性であり、背面基板である場合の第2の基板と第2の導電層とは、所望の背景に応じて透明、半透明、または不透明とすることができる。1つまたは複数の適切な電圧パルスを両方の導電層に印加することにより、コレステリック液晶が反射性テクスチャに初期化される。
【0005】
スタイラスまたは指の爪の先端などにより第1の基板上にかかる局所的な圧力は、圧力が加えられていないところに存在する反射性テクスチャと対照をなす透過性テクスチャのマークまたは筆記をデバイス上に生成する。画像は、透過性テクスチャから形成されたマークを含み、透過性テクスチャは、光が液晶層を通過して、光吸収性の背景材によって部分的またはほぼ完全に吸収され得るようにする。圧力が加えられていない周囲部分があり、周囲部分は反射性テクスチャを含む。本明細書で定義され、本開示を通して使用されるように、反射性テクスチャは完全に反射性ではなく、透過性テクスチャは完全に透過性ではない。反射性テクスチャは、いくらかの光が透過し、いくらかの光が反射することを可能にする。透過性テクスチャは、入射光の一部を透過させ、弱く散乱させるテクスチャである。反射性テクスチャは、透過性テクスチャによって弱く散乱される光よりも実質的に多くの光を反射する。透過性テクスチャを透かして光吸収性の背景材を見ることができる。したがって、背面基板が黒色である場合、局所的な圧力は、圧力が加えられていないデバイスの残りの部分(周囲部分)の反射性テクスチャの色と対照をなす暗いマークを生成し、周囲部分の色はコレステリック液晶のピッチ長に依存する。暗いマークは透過性液晶を含み、例えば、液晶層を透かして下地の黒色基板を見ることを可能にする。一例では、互いに相対的に、周囲部分が明るいと呼ばれることがあり、マークが暗いと呼ばれることがある。当然のことながら、このことは、マークが周囲部分と対照をなすだけであり、周囲部分の高レベルの明るさまたはマークの高レベルの暗さを必要としない。カラーの光吸収性の背景材を使用する場合には、マークと周囲部分との両方が選択された色として見える場合がある。カラーの光吸収性の背景材は、均一な色である必要はなく、例えば、光吸収性の背景材またはその背後にパターン、グリッド、または表示画像を含むことができる。
【0006】
画像を完全に消去するためには、適切な電圧パルスが導電層に印加されて、以前に加圧された領域を含んで筆記面全体にわたってコレステリック液晶を駆動して反射性テクスチャにする。
【0007】
液晶デバイスが完全に消去されたとき、コレステリック液晶材料は、筆記面または画面全体にわたって反射性テクスチャになる。これは、液晶デバイスの初期テクスチャまたは初期化された液晶デバイスと呼ばれ得る。
【0008】
一実施形態では、ユーザは、圧力が加えられる第1の基板または前面基板の近くに位置し、光吸収性の背景材は、液晶層を通過する光を吸収する。光吸収性の背景材および第2の基板または背面基板は、前面基板と比べてユーザに対して遠い。一実施形態では、第2の基板は可撓性であってもよい。ユーザが同じ位置に留まった状態でデバイスを裏返すことができ、そしてユーザは第2の基板に圧力を加えることができ、この場合、ユーザは第1の基板よりも第2の基板に近い。本開示では、「基板」という用語は、フィルムのバルクの主材料だけでなく、それらの表面上の任意のコーティングまたは処理も含む総称として使用される。
【0009】
ここで本開示の一般的な第1の態様に目を向けると、互いに間隔を空けて配置された第1の基板および第2の基板を備える液晶デバイスであって、第1の基板が透明かつ可撓性である、液晶デバイスを特徴とする。液晶層は、第1の基板と第2の基板との間に配置される。液晶層は、コレステリック液晶材料を含む。コレステリック液晶材料は、電圧を印加することなく、ユーザによって第1の基板に圧力が加えられて、コレステリック液晶材料の少なくとも一部分を反射性テクスチャから透過性テクスチャに変化させることを可能にして画像を形成するようになっている。
【0010】
ここで第1の態様の特定の特徴を参照すると、液晶デバイスは、液晶層を通過する光を吸収する光吸収性の背景材を備える。別の特定の特徴では、光吸収性の背景材は、第2の基板上のコーティングまたは層から構成される。さらに別の特徴では、光吸収性の背景材は、不透明または半透明である。またさらに、光吸収性の背景材は、不透明または半透明の第2の基板を備え得る。
【0011】
別の特徴では、第2の基板は可撓性であり、ユーザによって第2の基板に加えられた圧力が、コレステリック液晶材料の少なくとも一部分を反射性テクスチャから透過性テクスチャに変化させる。
【0012】
別の特徴では、液晶デバイスは、第1の基板と液晶層との間に配置された第1の導電層と、第2の基板と液晶層との間に配置された第2の導電層とを備える。特に、液晶デバイスは、第1の導電層および第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路であって、電子回路が液晶デバイスの一体部分である、電子回路を備え得る。さらに別の変形形態は、第1の態様の液晶デバイスと、液晶デバイスに恒久的に接続されていない別個の消去デバイスとの組み合わせであって、別個の消去デバイスが、第1の導電層および第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路を備える、組み合わせである。別の特徴では、導電層に電圧を印加してコレステリック液晶材料を反射性テクスチャにことによって画像が消去される。さらに別の特徴では、第1の導電層と第2の導電層との間に、約2ミクロン~約4ミクロンのサイズの範囲にあるセルギャップがある。
【0013】
別の特徴は、コレステリック液晶材料が、ポリマー中に分散されたコレステリック液晶を含むことである。
【0014】
さらに別の特徴は、液晶デバイスが、液晶層の上に積層された第2の液晶層を備えることである。特に、第2の液晶層は、導電層の間に挟まれる。別の特徴として、液晶デバイスは、液晶層と第2の液晶層との間に配置された少なくとも1つの中間基板を備え得る。さらに別の特徴は、第2の液晶層が第2のコレステリック液晶材料を含み、コレステリック液晶材料と第2のコレステリック液晶材料とが反対のキラリティ(chiral handedness)を有することである。別の特徴は、第2の液晶層が第2のコレステリック液晶材料を含み、コレステリック液晶材料と第2のコレステリック液晶材料とが異なるピッチ長を有することである。別の特徴では、液晶デバイスは、中間基板と第2の液晶層との間に配置された第3の導電層と、第2の基板と第2の液晶層との間に配置された第4の導電層とを備える。
【0015】
他の特徴は、デバイスを様々な仕方で屈曲させることによって液晶デバイスを消去することに関する。この関連で、液晶デバイスは、第1の基板と液晶層との間に配置された第1の導電層と、第2の基板と液晶層との間に配置された第2の導電層とを備える。1つの特徴では、画像は、液晶デバイスを丸めること(rolling)または巻くこと(scrolling)によって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される。別の特徴では、画像は、液晶デバイスを揺らすまたははためかすことによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される。別の特徴は、画像が、液晶デバイスをよじることによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去されることである。別の特徴では、画像は、液晶デバイスをクシャクシャにすることによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去される。別の特徴は、画像が、液晶デバイスを物体との接触から取り外すことによって生じる屈曲によって部分的または完全に消去されることである。
【0016】
またさらに、液晶デバイスは、圧力を印加するスタイラスを備え得る。
【0017】
第2の態様では、液晶デバイスは、互いに間隔を空けて配置された第1の基板および第2の基板であって、第1の基板が可撓性かつ透明である、第1の基板および第2の基板を備える。液晶層は、第1の基板と第2の基板との間に配置される。液晶層は、コレステリック液晶材料を含む。液晶デバイスは、液晶層を通過する光を吸収する光吸収性の背景材を備える。コレステリック液晶材料は、電圧を印加することなく、ユーザによって第1の基板に圧力が加えられて、暗く見える、圧力が加えられたマークを形成することを可能にし、それによって圧力が印加されない周囲部分が明るく見えるようになっている。
【0018】
第2の態様の特定の特徴を参照すると、液晶デバイスは、第1の基板と液晶層との間に配置された第1の導電層と、第2の基板と液晶層との間に配置された第2の導電層とを備える。別の特徴では、液晶デバイスは、第1の導電層および第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路を備える。電子回路は、液晶デバイスの一体部分である。別の特徴は、第2の態様の液晶デバイスと、液晶デバイスに恒久的に接続されていない別個の消去デバイスとの組み合わせである。別個の消去デバイスは、第1の導電層および第2の導電層に消去電圧を印加するように構成された電子回路を備える。
【0019】
第2の態様の別の特徴では、第2の基板は可撓性であり、ユーザによって第2の基板に加えられた圧力が、コレステリック液晶材料の少なくとも一部分を反射性テクスチャから透過性テクスチャに変化させる。
【0020】
上記の「本開示の概要」は、本開示の実施形態を大まかに説明しているが、以下の「詳細な説明」は、本開示の実施形態をより詳しく説明し、特許請求の範囲で広く定義される本発明の必要な限定として解釈されるべきではない特定の実施形態を提示していることを理解されたい。本開示の多くの追加の特徴、利点、およびより十分な理解は、添付の図面および以下の「詳細な説明」から得られるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】描画および消去動作を示す、従来技術の典型的な筆記タブレットの断面図である。
図2】描画および消去動作を示す、図1の典型的な従来技術の筆記タブレットの一形態の正面図である。
図3】描画および消去動作を示す、図1の典型的な従来技術の筆記タブレットの別の形態の正面図である。
図4】描画および消去動作を示す、本開示の液晶デバイスの断面図である。
図5】描画および消去動作を示す、図4の液晶デバイスの一形態の正面図である。
図6】描画および消去動作を示す、図4の液晶デバイスの別の形態の正面図である。
図7】様々な仕方でデバイスを屈曲することによる消去を示す、本開示の液晶デバイスの正面図である。
図8A】積層された2層のコレステリック液晶材料を有する実施形態の断面図である。
図8B】積層された2層のコレステリック液晶材料を有する実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図4図6は、可撓性である第1の基板または前面基板3と、任意選択的に可撓性である第2の基板または背面基板4とを備える液晶デバイス26の断面を原寸に比例せずに示している。第1の基板3と第2の基板4とは、互いに間隔を空けて配置される。液晶層27が、第1の基板と第2の基板との間に配置される。液晶層27は、コレステリック液晶材料を含む。前面基板3は、透明である。背面基板4は、透明とすることもできるし、光吸収性の背景材として機能するように半透明、不透明、または多色とすることもできる。任意選択の光吸収性の背景材24が、液晶層27を通過する光を吸収する。光吸収性の背景材24は、背面基板4上にコーティングまたはラミネートされ得る。背面基板4が光吸収性である場合、別個の光吸収性の背景材24は省略されてもよい。任意選択の第2の導電層5と任意選択の第1の導電層6とが間隔を空けて配置され、それらの間にコレステリック液晶層27が配置される。第1の導電層6は第1の基板3と液晶層27との間に配置され、第2の導電層5は第2の基板4と液晶層27との間に配置される。間隔を空けて配置された第1の導電層6と第2の導電層5との間(または導電層が使用されない場合は隣接する基板間)にはセルギャップまたは距離がある。セルギャップに近似するサイズを有するスペーサが、セルギャップ内に配置される。特に、セルギャップは、約2ミクロン~約4ミクロンの範囲のサイズ、最も具体的には約2ミクロンのサイズを有する。一例では、第1の導電層6および第2の導電層5は、液晶層27に隣接することができ、より具体的には、それぞれ一方が第1の基板3上にあり、もう一方が第2の基板4上にある2つのコーティングとしてそれぞれ形成され得る。
【0023】
本開示を検討すれば当業者には理解されるはずであるが、液晶デバイス26は、液晶層27におけるポリマー層もしくは他の材料の有無によって、または液晶層27と第1の導電層6との間もしくは液晶層27と第2の導電層5との間に存在するもしくは存在しない材料によって、第1の導電層6と第1の基板3との間もしくは第2の導電層5と第2の基板4との間の材料によって、または第1の基板3および第2の基板4の外面上の材料の有無によって限定されず、これらの変形形態すべてを包含する。第1の基板3に隣接して配置される第1の導電層6は透明とすることもでき、第2の基板4に隣接して配置される第2の導電層5は透明、半透明、または不透明とすることもできる。導電層5および6は、互いに同じであってもなくてもよく、パターニングされなくてもされてもよい。
【0024】
図4図6に示す実施形態における液晶デバイス26の筆記面は、前面(第1の)基板3上にあり、第1の基板は、背面(第2の)基板4と比べてユーザに対して近い。第1の基板3は、その上に様々な層、例えば、防眩コーティングおよび耐傷コーティングを備えてもよい。一方、ユーザが同じ位置に留まった状態で液晶デバイスを裏返すことができ、第1の基板3と比べてユーザに対して近い筆記面として第2の基板4に筆記することができる。裏返した液晶デバイス26では、第2の基板4に筆記する場合には、光吸収層が液晶層27の他方側(すなわち、液晶層と比べてユーザに対して遠い側)に再配置されるのであってもよい。このことは、一方の基板から他方の基板に移動させることができる取り外し可能な光吸収性の背景材24を使用する場合のように、恒久的な設計であっても一時的な設計であってもよい。
【0025】
液晶層27のコレステリック液晶材料は、その初期状態が反射性テクスチャ29であるようになっており、正面から見て、液晶デバイス26の画面または筆記面が、層4および光吸収性の背景材24の反射スペクトルと組み合わされてコレステリック液晶のピッチによって決定される反射色として全体的に見える(図4の上図および図5)。液晶デバイス26は、外部の物体8によって前面基板3に加えられた圧力によって引き起こされる局所的な変形が前面基板3を変形させて、コレステリック液晶テクスチャの少なくとも一部分を反射性テクスチャ29から透過性テクスチャ28に変化させるように設計される。透過性テクスチャ28の液晶材料の領域を含むマーク31が生成される(図6)。画像を形成するための反射性液晶材料29の1つまたは複数の領域から構成される、圧力が加えられていない周囲部分30が存在する(図4の中央および下の図ならびに図6)。このプロセスは、画像を作成するために電圧を印加することを必要とせず、透過性テクスチャの形成を、本発明者らが知る限り液晶デバイスにおいてこれまでに利用されたことのない現象にしており、このことの意義は大きい。局所的な変形によって生成された透過性テクスチャ28は、変形が完了した後でさえも残り、圧力が加えられなかった反射性テクスチャの周囲部分30を通過するよりも多くの周囲光が変形の領域、すなわちマーク31を含む液晶の領域を通過することを可能にする。透過性テクスチャ28を通過する光は、層4および/または24によって吸収および/または反射される。
【0026】
理論に束縛されることを望むものではないが、透過性テクスチャ28の偏光顕微鏡による研究が、古典的なフォーカルコニックテクスチャとの類似性を示しているが、それらは必ずしも同一ではない。光吸収性の背景材24は、局所的な圧力が加えられた液晶層27の透過性テクスチャ28の領域を通過するほとんどの光を吸収する。表示画面または筆記面の変形されていない領域(周囲部分30)は、(明るく見える)反射性テクスチャ29のままに留まって、プレーナテクスチャのコレステリック液晶の円偏光特性に従って周囲光の一部を反射する。明るくない、または暗いマーク31は、明るい周囲部分30と対照をなす。液晶デバイスを正面から見た場合の結果は、周囲部分30(図6)とは対照をなす可視マーク31である。マーク31は、黒色であっても、周囲部分30のプレーナテクスチャと対照をなす色もしくは色合いであってもよい。
【0027】
例えば、透明な背面基板4があり、任意選択の黒色の光吸収性の背景材24を備える状態でコレステリック液晶のピッチ長が緑色となるように調整される場合、結果として得られる正面から見たデバイスの外観は、多かれ少なかれ黒色のマーク31(暗いマーク)およびマーク31の周りの緑色周囲部分30(図6)となる。黒色の光吸収性の背景材24は、局所的な圧力が加えられた液晶層27の透過性テクスチャ28の領域を通過するほとんどの光を吸収する。
【0028】
より具体的には、液晶層におけるコレステリック液晶は、反射性テクスチャに初期化することができる。反射性テクスチャは、基板の平面に略垂直な螺旋軸線配向分布を有するいくつかまたはすべてのコレステリック液晶ドメインによって形成され、液晶材料の従来技術において周知のブラッグの法則に従った選択的光反射を可能にする。この構成は、プレーナテクスチャと呼ばれることが多い。スタイラスまたは他の物体によってデバイス表面上に加えられた局所的な圧力は、局所的な圧力が加えられた領域においてのみ、実質的に明るい反射性テクスチャを透過性テクスチャに変化させる。透過性テクスチャは、光を部分的に透過させて、光がデバイスの向かい側の層と相互作用することを可能にする。この透過性テクスチャは、フォーカルコニックテクスチャに似ているが、そのテクスチャと同じではない場合がある。フォーカルコニックテクスチャでは、ドメインの螺旋軸線の一部または大部分のコレステリック液晶がよりランダムな配向で分布して、より多くの光が遷移領域を通って透過および散乱して、筆記面から離れた液晶層の背面にある光吸収性の背景材によって吸収および/または反射されることを可能にする(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,104,448号明細書を参照されたい)。周囲光は、反射性テクスチャと透過性テクスチャとの両方と異なって相互作用し、良好なコントラストを有する画像を生成する。画像は、デバイスが部分的にまたは完全に消去されるまで恒久的に留まる。
【0029】
物体8は、スタイラス、指の爪、または前面基板3の局所的な変形を引き起こすことができる任意の力生成エンティティとすることができる。物体8は、固体の物体とすることができるが、力生成エンティティとして、液体ジェットまたは気体ジェットによって引き起こされる局所的な圧力とすることができる。液晶層27は、添加剤の有無を問わず、ポリマー中に分散されたコレステリック液晶を含むことができる。
【0030】
理論に縛られることを望むものではなく、発明の背後にある機構を発明者が説明する必要がないというように理解しているわけではないが、コレステリック液晶を反射性テクスチャから透過性テクスチャに変化させる局所的な圧力を前面基板3に加える効果は、驚くべきことに従来技術のものとは反対である。本効果は、従来技術(例えば、米国特許第8,228,301号明細書を参照されたい)に開示されているのと全く同じコレステリック液晶を用いて生じさせることができることに留意されたい。しかしながら、本効果は、コレステリック液晶分散液中に分散されたポリマーのポリマー配合(実施例1参照)を変更すること、またはミネラルオイルなどの非反応性添加剤を従来技術の分散材料に添加すること(実施例2)のいずれかによって生じさせることができる。実施例1および2の両方の配合物において、本効果は、第1の基板または前面基板3と第2の基板または背面基板4との間の間隔が約2μm~約4μmの範囲にあるときに生じる。場合によっては、本効果は、コレステリック液晶材料に最も近い基板の表面の表面エネルギーを増加させることにより向上する。例えば、基板表面エネルギーを上昇させるUV/オゾン基板表面処理における変形形態を作ることができる。当業者であれば、本開示の特許請求の範囲に記載されているのと同じ特性を有する他のコレステリック液晶材料またはデバイスに到達するために、過度の実験をすることなく、実施例の特徴に修正を加えることができるはずである。実施例1および2の配合物の変形形態は、例えば、異なる開始剤、架橋剤、モノマー、コレステリック液晶化合物、またはネマチック液晶化合物を使用することによって生じ得る。例えば、本開示の範囲内に留まりながら、コントラストを上昇させる、または線幅を変更することを意図した修正を配合物に対して行うことができる。硬化放射照度および硬化時間などの様々な処理条件を使用して、本開示に記載の特性を有するデバイスを得ることができる。これらの組成、構造、および処理の変更は、異なるタイプの力に対して異なるように応答するシステムを作り出す。局所的な圧縮力は、反射性の周囲部分と対照をなす透過性テクスチャをもたらす。理論に束縛されることを望むものではないが、ポリマーモルフォロジーおよび/または非反応性材料の可塑化効果は、液晶のレオロジー挙動に影響を及ぼすことがあり、そのため、加えられる力に応じて流れ方が異なって、流れが終了した後に緩和するときに液晶分子が異なるテクスチャに再配列することを可能にすると考えられる。
【0031】
一実施形態では、導電層5および6は、デバイス全体を初期反射性テクスチャ29にリフレッシュする(すなわち、見えている領域、画面、または筆記面全体を消去する)適切な電圧パルスVを印加して(図4および図5)、その上に再び筆記するための新しい完全なページを作成するように構成された電子回路33に接続され得る。電子回路33は、デバイスに恒久的に取り付けられる必要はない。例えば、電子回路33は、液晶デバイスとは別個のユニットとすることができ、消去が所望されるときに液晶デバイスが周期的に電気的に係合する(参照により組み込まれる米国特許第9,651,813号明細書を参照されたい)。コレステリック液晶を反射性テクスチャまたはプレーナテクスチャに駆動するために必要な電圧プロファイルは、コレステリック液晶の周知の電気-光遷移機構に従う(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,437,811号明細書および同第5,453,863号明細書)。コレステリック液晶を反射性テクスチャまたはプレーナテクスチャに駆動するために消去回路33によって供給される適切な電圧パルスまたはパルスシーケンスは、筆記された画像を消去し、デバイスをリフレッシュまたは初期化するのに十分である。上述した実施形態でのように、反射性テクスチャまたは透過性テクスチャを維持するために一定の電圧を印加する必要はない。
【0032】
別の実施形態では、液晶層は、液晶デバイス26の適切な機械的屈曲がコレステリック液晶材料を反射性テクスチャ29に初期化するとともに、筆記された画像を消去して、液晶デバイス26を再使用することを可能にするようになっている。これに関連して、デバイスは、液晶層の両側に第1の導電層および第2の導電層を備え、これにより、消去は依然として電子的に行われ得る。液晶デバイスを屈曲する動作は、電圧を印加する代わりに、液晶デバイスを消去する代替的な仕方を提供する。デバイスを屈曲させて消去すると、導電層はデバイスの残りの部分と共に屈曲される。このことは、(屈曲による消去後またはそれ以外の後に)液晶デバイス26で筆記をしようとし、電圧を印加することによって液晶デバイスを消去しようとする場合も可能である。図7の左側の図は、光透過性のマーク31と、マーク31の周りの周囲部分30の明るい反射性テクスチャとを含む液晶デバイス26の概略正面図を示している。図7の右側の図は、筆記面全体が反射性テクスチャを示す初期状態の液晶デバイスを示している。
【0033】
筆記された状態の液晶デバイスに様々な屈曲モードを適用して、画像の完全な消去を達成することができる。反射性テクスチャに対する完全な消去は、可撓性デバイスにわたって移動する曲げ応力のリップルを使用する。図7は、消去のために液晶デバイスを屈曲させる様々な仕方を示しており、液晶デバイスは、マークの周りに反射性テクスチャの周囲部分30を伴って透過性テクスチャの筆記またはマーク31を有する状態(左側の図)から、デバイス26の筆記面全体が初期状態として反射性テクスチャ29になっている状態(右側の図)に変更される。例えば、両手で液晶デバイス26を持ち、曲げることによって、液晶デバイス26を屈曲することができる(曲げて消す35)。別の例では、液晶デバイス26は、消去が達成されるまでデバイスを振ることによって屈曲されてもよい(振って消す36)。基板が適切に薄い場合、液晶デバイス26は、内側および/または外側に丸められてデバイス領域全体を屈曲させることができて、内側および外側に丸められたときに筆記または描画を消す、巻く行為などの有用な用途を可能にする(丸めて消す37)。液晶デバイス領域にわたる屈曲はまた、可撓性デバイスをそれが接触している物体から剥がすことによって達成され得る(剥がして消す38)。ねじること(torsion)およびよじること(twisting)、さらにはクシャクシャにすること(39)など、完全な消去を達成するために使用され得る基板の屈曲の例は他にも沢山ある。
【0034】
消去感度も調整することができる。このことは、1~数サイクルの選択された曲げモードを完了することを消去プロセスが必要することができることを意味する。ここでも、このことは用途に依存する。例えば、「剥がして消す」の用途は、可撓性デバイスをそれが取り付けられた表面から取り外す最初の試みでなされる完全な消去を利用することができる。他方、他の用途では、液晶デバイスを完全に消去するために何回かの屈曲または揺動が必要とされるのであってもよく、このことは偶発的な消去を防止するために望ましい。
【0035】
多層液晶デバイス26は、例えば屈曲によって消去されるように設計されている場合、可撓性であってもよい。当然のことながら、このことは、多層液晶デバイスを曲げることによる消去を妨げない限り、液晶デバイスが非可撓性要素を備えることを妨げない。一例では、背面基板は、多層液晶デバイスの屈曲をより少なくすることを可能にするが、依然として屈曲による消去を可能にするのに十分であるような、より厚い要素とすることができる。液晶デバイスの側面は、封止ガスケットおよびレーザダイシング(laser singulation)を含むがこれらに限定されない、当業者に既知の仕方で封止することができる。例えば、このような封止は、液晶デバイスを屈曲して消去するときの層間剥離を防止する。別の例では、液晶デバイスは、非可撓性フレームまたはベゼルを備えることができるが、依然として消去する屈曲を可能にする。一方、液晶デバイス26は、消去するために屈曲を使用するように設計されていない場合など、部分的に非可撓性であってもよい。
【0036】
積層された液晶層の実施形態を図8Aおよび図8Bに示す。この構造では、コレステリック液晶材料(第1の液晶層11および第2の液晶層12)の2つ以上の層が積層され、可撓性である1つの共通の透明中間基板13が共有され得る。あるいは、中間基板13は、光学的に結合された可撓性の透明または半透明の2つの基板に置き換えることができる。第1の基板3の前面は可撓性の筆記面としての役割を果たす一方、光吸収層24の背面基板または第2の基板4および任意選択のコーティングは、それらの複合効果の反射/吸収特性に応じて背景材として機能する。積層されたデバイスは、導電層18、19、20、21を備える。第1の導電層18は第1の基板3と液晶層11との間に配置され、第2の導電層19は中間基板13と液晶層11との間に配置され、第3の導電層20は中間基板13と第2の液晶層12との間に配置され、第4の導電層21は第2の基板4と第2の液晶層12との間に配置される。液晶層11は導電層18、19間のセルギャップに配置され、第2の液晶層12は導電層20、21間のセルギャップに配置される。第1の液晶層11および第2の液晶層12のコレステリック液晶材料は、移動する物体または静止している物体8によって及ぼされる局所的な圧力が前面基板3および中間基板(複数可)13に局所的な変形を生じさせて、圧力が加えられなかった両方の液晶層11、12の反射性テクスチャ40、32を、局所的な圧力が加えられた透過性テクスチャ14、15の領域に変化させるように設計される。透過性テクスチャ14および15の領域は、同じであってもなくてもよい。透過性テクスチャ14および15の領域、ならびにプレーナテクスチャ40、32の領域は、電界がなくても安定している。反射性テクスチャ40、32は、コレステリック液晶材料に固有であり、そのピッチ長に依存する反射色を有し、反射色は、正面から見たときに観測される層4および光吸収性の背景材24の任意の色によって影響を受ける(図8B)。透過性テクスチャで形成されたマーク17は、図8Bの反射性テクスチャの周囲部分16によって示されている反射性テクスチャ40と反射性テクスチャ32との反射色の領域の明るい混合色と対照をなす。透過性テクスチャである場合、領域14、15によって、第2の基板4および/または任意の光吸収性の背景材24を見ることが可能になる。第1の液晶層11における反射性(例えば、プレーナ)テクスチャ40の反射色は、第2の液晶層12における反射性(例えば、プレーナ)テクスチャ32の反射色と混ざり合い、さらに、液晶層12の下の層、ディスプレイ、パターンなど(カラーの光吸収性の背景材24など)からの色の影響を受ける。反射性テクスチャ40、32の領域は、押し下げられておらず、圧力が加えられていない領域である。別の例は、光吸収性の背景材24が半透明層である例である。積層された多層液晶デバイスは可撓性であってもよい。このことは、液晶デバイス26について上述したように、非可撓性要素または構成要素がデバイスに使用されることを妨げない。
【0037】
このタイプの構造の利点は、複数の層の光学特性を組み合わせることによって、1つの層では困難または不可能な効果を実現することが可能であることである。例えば、第1の液晶層11および第2の液晶層12は、同じピッチ長(同じ色)を有するが反対のキラリティを有するコレステリック液晶を含むことができ、その結果、単一層の理論的限界である50%を超える全反射率が得られる。第1の液晶層11および第2の液晶層12は、付加的に混ざり合う異なる色を有して、一層のみでは実現できない色を提供することができる。例えば、青色の第1の液晶層11と黄色の第2の液晶層12とを備える液晶デバイスは、反射性テクスチャであるとき、これらの色の付加的な混ざり合いを経て、特定の用途において望ましい、白色の背景材の外観に近い、より広い波長を提供する。導電層18、19、20、および21の存在は、透過性テクスチャ14および15の以前に筆記された領域を含む第1の液晶層11および第2の液晶層12のすべてを反射性テクスチャに変換する電子消去回路22および23によって提供される適切な電圧の印加を可能にして、図4で説明したようにデバイスを初期化する。消去回路22、23は、積層された液晶デバイスの一部分である必要はないが、積層された液晶デバイスに恒久的に取り付けられていない別個の消去デバイスの一部分とすることができる。
【実施例0038】
本開示はここで特定の実施例を提示するが、これらは特許請求の範囲に定義される主題を限定するために決して使用されるべきではない。
【実施例0039】
・混合物Aの原材料および調製
以下の成分、すなわち、0.39(w/w)%のイルガキュア819(IGM resinsから購入)、ならびに2.23(w/w)%のメチルメタクリレート、4.60(w/w)%のビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、6.16(w/w)%のジ(エチレングリコール)2-エチルヘキシルエーテルアクリレート、および0.66(w/w)%の2-ヒドロキシエチルメタクリレート(すべてSigma-Aldrichから購入)を含む組成物を茶バイアル内で渦流混合した。このバイアルに、18.82(w/w)%のMDA-00-3506ネマチック液晶および66.97(w/w)%のMDA-01-1955コレステリック液晶(いずれもメルクから入手)を添加した。機械的撹拌を使用して、透明な溶液を得た。この混合物に0.2(w/w)%の2μmプラスチックスペーサ(Nanomicroから購入)を添加して超音波によって分散させた。成分は、組成物の総重量に基づいている。
【0040】
・液晶デバイス製作
透明な5ミルのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよび透明な7ミルのPETフィルムをUVオゾンで処理し、AGFA製の導電性ポリマーPEDOT:PSS S300でコーティングして、150Ω/sq~800Ω/sqのシート抵抗を得た。これらのフィルムの間に、導電性ポリマー側が混合物に隣接する状態で、混合物Aをラミネートした。セルギャップが約2μmとなるようにラミネーション条件を設定した。UVランプを使用して、5ミル基板を通して反応性混合物を硬化させた。硬化後、硬化の反対側のPETを黒色インクでコーティングした。
【0041】
・液晶デバイス動作
当該技術分野で周知の50Vrmsの方形波を20Hzでデバイスに印加して、液晶をその初期反射状態に駆動した。物体を用いて透明な5ミルのPET側に直接的な圧力を加えると、変形した領域の反射率が低下し、表示画面の押し下げられてない反射性部分よりもコレステリック液晶材料層を通る透過率が高い透過性マークが液晶層に形成された。黒色インク層は、マークを通過する光を吸収し、変形されていない領域の反射性テクスチャである周囲部分とのコントラストを生み出す。デバイスをその初期反射性テクスチャに戻してリフレッシュするために、50Vrms方形波を20Hzで印加した。
【実施例0042】
・混合物Bの原材料
以下の成分、すなわち、0.47(w/w)%のイルガキュア651(IGM resins製)、ならびに19.25(w/w)%のメチルメタクリレート、3.47(w/w)%のトリメチロールプロパントリアクリレート、および0.40(w/w)%のラウリルメタクリレート(すべてSigma-Aldrichから購入)を含む組成物を茶バイアル内で渦流混合した。14.86(w/w)%のMDA-00-3506および55.90(w/w)%のMDA-01-1955(いずれもメルクから入手)、ならびに0.94(w/w)%の4μmプラスチックスペーサ(Nanomicro製)および4.71%のミネラルオイル(CVSブランド)を添加した。この混合物を超音波で20分間さらに混合した。
【0043】
・液晶デバイス製作
透明な5ミルのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムおよび透明な7ミルのPETフィルムをUVオゾンで処理し、AGFA製の導電性ポリマーPEDOT:PSS S300でコーティングして、150Ω/sq~800Ω/sqのシート抵抗を得た。これらのフィルムの間に、導電性ポリマー側が混合物に隣接する状態で、混合物Bをラミネートした。セルギャップが約4μmとなるようにラミネーション条件を設定した。UVランプを使用して、5ミル基板に隣接させて、かつ5ミル基板を通して反応性混合物を硬化させた。硬化後、硬化の反対側のPETを黒色インクでコーティングした。
【0044】
・液晶デバイス動作
50Vrmsの方形波を20Hzでデバイスに印加して、液晶をその反射状態に駆動した。物体を用いて透明な5ミルのPET側に直接的な圧力を加えると、変形した領域の反射率が低下し、コレステリック液晶材料層を通る光透過率が上昇し、液晶層に透過性テクスチャである暗いマークが形成された。黒色インク層は、マークの液晶を通過する光を吸収し、変形されていない領域の反射性テクスチャである周囲部分とのコントラストを生み出した。デバイスをその初期反射性テクスチャに戻してリフレッシュするために、50Vrms方形波を20Hzで印加した。
【0045】
上述の開示を読めば、多くの修正形態および変形形態が当業者には明らかになるはずである。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、具体的に図示および説明された以外の仕方で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0046】
2…略透過性テクスチャまたはフォーカルコニックテクスチャ、3…第1の基板または前面基板、4…第2の基板または背面基板、5…透明電極または第2の導電層、6…透明電極または第1の導電層、7…黒色周囲部分、8…物体、9…反射性テクスチャまたはプレーナテクスチャ、10…マーク、11…第1の液晶層、12…第2の液晶層、13…中間基板、14…透過性テクスチャ、15…透過性テクスチャ、16…周囲部分、17…マーク、18…第1の導電層、19…第2の導電層、20…第3の導電層、21…第4の導電層、22…消去回路、23…消去回路、24…光吸収性の背景材または光吸収層、25…電圧、26…液晶デバイス、27…液晶層、28…透過性テクスチャ、29…反射性テクスチャまたは反射性液晶材料、30…周囲部分、31…マーク、32…反射性テクスチャまたはプレーナテクスチャ、33…電子回路または消去回路、35…曲げて消す、36…振って消す、37…丸めて消す、38…剥がして消す、39…クシャクシャにする、40…反射性テクスチャまたはプレーナテクスチャ、V…電圧パルス

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【外国語明細書】