(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176888
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】水崩壊性部材形成用樹脂組成物、水崩壊性部材及び三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 77/12 20060101AFI20221122BHJP
C08L 77/06 20060101ALI20221122BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20221122BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20221122BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20221122BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20221122BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221122BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221122BHJP
【FI】
C08L77/12
C08L77/06
C08L79/08 C
C08L75/08
B29C64/118
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066653
(22)【出願日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021083421
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 絢香
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA29
4F213AA31
4F213AA32
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL23
4F213WL62
4J002CK04X
4J002CL03W
4J002CL08W
4J002CM04W
4J002GA00
4J002GA01
4J002GB00
4J002GG02
4J002GK01
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は耐熱性と水崩壊性に優れる成形部材を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミド樹脂(A2)及びポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)を含み、樹脂(A)に含まれるオキシエチレン基の含有率が樹脂(A)の重量に基づいて20~85重量%である水崩壊性部材形成用樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミド樹脂(A2)及びポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)を含み、樹脂(A)に含まれるオキシエチレン基の合計重量割合が樹脂(A)の重量に基づいて20~85重量%である水崩壊性部材形成用樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂(A)の数平均分子量が10,000~100,000である請求項1に記載の水崩壊性部材形成用樹脂組成物。
【請求項3】
ポリオキシアルキレン鎖を有するポリウレタン(B1)及び/又はポリオキシアルキレングリコール(B2)を更に含む請求項1に記載の水崩壊性部材形成用樹脂組成物。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン鎖を有するポリウレタン(B1)及びポリオキシアルキレングリコール(B2)の合計重量が水崩壊性部材形成用樹脂組成物の合計重量に基づいて20~80重量%である請求項3に記載の水崩壊性部材形成用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなる水崩壊性部材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなる熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメント。
【請求項7】
請求項6に記載の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントを用いる三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水崩壊性部材形成用樹脂組成物、それを用いた水崩壊性部材及び三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の水と接触すること等により崩壊する性質を示す水崩壊性部材は、水を用いることによって容易に除去することができるため、物品の構造の一部を水崩壊性部材で固定すると物品の分解を容易に行うことができる。また、農業用薬剤の包装資材等に水崩壊性部材を用いると灌漑によって薬剤を放出することが可能となる。
そして、水崩壊性を有する固定用部材及び包装資材等を成形できる水崩壊性組成物として、脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニットと、脂肪族ポリエステルユニットとを構成単位として含むブロック共重合体を含有する水崩壊性組成物が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の水崩壊性組成物による成形体は耐熱性が十分ではなく、高温環境下では形状の維持ができず、使用できないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は耐熱性と水崩壊性に優れる成形部材を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミド樹脂(A2)及びポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)を含み、樹脂(A)に含まれるオキシエチレン基の合計重量割合が樹脂(A)の重量に基づいて20~85重量%である水崩壊性部材形成用樹脂組成物;前記の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなる水崩壊性部材;前記の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなる熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメント;前記の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントを用いる三次元造形物の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物は耐熱性が高く、その成形体は従来よりも高い温度環境下でも形状維持ができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<水崩壊性部材形成用樹脂組成物>
第1の発明である水崩壊性部材形成用樹脂組成物は、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミド樹脂(A2)及びポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)を含み、樹脂(A)に含まれるオキシエチレン基の合計重量割合が樹脂(A)の重量に基づいて20~85重量%である。
【0009】
水崩壊性とは、水、又は水を含む液体と接触することによって、物品の形状の一部又は全部が水に溶解、水に膨潤又は水によって分解される等して、物品の当初形状が変化する性質を意味し、被測定物である物品を水に浸漬してその形状変化を目視観察することでその性質の有無を確認することができる。
本発明における水崩壊性の程度は、幅5mm×長さ5mm×厚さ2mmの試験片を水温39~41℃の水に浸漬し、試験片の溶解又は形状変化の状態を目視観察することで判断する。
【0010】
水崩壊性部材としては、前記の水崩壊性を有する部材であれば制限はなく、物品を構成する2つ以上の部材間を固定する固定用部材、薬剤等を封入する容器(カプセル等)、物品の表面の一部又は全部を覆う保護層、及び三次元造形物構造の支持部材等があげられる。
【0011】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物は、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミド樹脂(A2)及びポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)を含む。
【0012】
<ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)>
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)は、主鎖の末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a11)から、カルボキシル基を除いた残基と、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジオール(a21)から水酸基を除いた残基とをエステル基を介して結合した構造を有する化合物である。
なお、主鎖とは分子構造中、最も長い分子鎖を構成する原子団を意味する。
【0013】
ポリアミド(a11)としては、ラクタムの開環重合体、アミノカルボン酸の自己重縮合体、ジアミンとジカルボン酸の重縮合体、及びこれらの混合物があげられる。
【0014】
開環重合体がポリアミド(a11)を構成するラクタムとしては、成形体の耐熱性の観点から、好ましいものとしては、6~8員環のラクタム(2-オキソペンタメチレンイミン、2-オキソヘキサメチレンイミン及び2-オキソオクタメチレンイミン等)があげられ、ポリアミド(a11)のうち、ラクタムの開環重合体として好ましいものとしては、ナイロン5、ナイロン6、及びナイロン8等が挙げられる。
これらの開環重合体は、後述するジカルボン酸の存在下に前記のラクタムを開環重合する公知の方法で得られ、末端にカルボキシル基を有するポリアミドとなる。
【0015】
自己重縮合体がポリアミド(a11)を構成する、アミノカルボン酸としては、成形体の耐熱性の観点から、好ましいものとしては、炭素数6~12のアミノカルボン酸(5-アミノペンタン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸)等があげられ、ポリアミド(a11)のうち、アミノカルボン酸の自己重縮合体として好ましいものとしては、7-アミノヘプタン酸の重縮合によるナイロン7、11-アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、及び12-アミノドデカン酸の重縮合によるナイロン12等があげられる。
これらのアミノカルボン酸の自己重縮合体は一方の末端がアミノ基であり、もう一方がカルボキシル基となり、片末端にカルボキシル基を有するポリアミドとなる。
【0016】
重縮合体がポリアミド(a11)を構成するジアミンとジカルボン酸において、成形体の耐熱性の観点から、好ましいジアミンとしては、炭素数2~11の脂肪族ジアミン、炭素数6~20の芳香族ジアミン及びこれらの混合物があげられる。
【0017】
炭素数2~11の脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン及び1,11-ウンデカンジアミン等があげられ、成形体の耐熱性の観点から、なかでも炭素数4~11の脂肪族ジアミン(1,4-ブチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン及び1,11-ウンデカンジアミン等)が好ましい。
【0018】
炭素数6~20の芳香族ジアミンとしては、p-フェニレンジアミン、2,4-又は2,6-トルイレンジアミン、2,2-ビス(4,4’-ジアミノフェニル)プロパン、4-アミノベンジルアミン、キシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼン及びビス(アミノブチル)ベンゼン等]があげられ、なかでもp-フェニレンジアミンが好ましい。
【0019】
成形体の耐熱性の観点から、好ましいジカルボン酸としては、炭素数6~13の脂肪族ジカルボン酸、炭素数6~14の芳香環含有ジカルボン酸、これらの酸無水物、これらのアルキル(炭素数1~4)エステル及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0020】
炭素数6~13の脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びトリデカン二酸等が挙げられる。
【0021】
炭素数6~14の芳香環含有ジカルボン酸としては、オルト-、イソ-又はテレフタル酸、ナフタレン-2,6-又は-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸及びキシリレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
ジカルボン酸はスルホ基を有していても良く、スルホ基を有するジカルボン酸として好ましいものとしては、5-スルホイソフタル酸及びその塩が挙げられる。
【0023】
ジアミンとジカルボン酸との重縮合体として好ましいものとしては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸又はドデカン二酸とヘキサメチレンジアミンとの重縮合体(ナイロン66、ナイロン610、ナイロン69又はナイロン612)、及びテトラメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合体(ナイロン46)等があげられる。
【0024】
ジアミンとジカルボン酸との重縮合体としては、異なる単量体を併用した共重合ナイロンであってもよく、共重合ナイロンとしては、ナイロン6/66{ナイロン6とナイロン66の共重合体[共重合比(重量比)=5/95~95/5]}及びナイロン6/12{ナイロン6とナイロン12の共重合体[共重合比(重合比)=5/95~95/5]}等があげられる。
【0025】
ポリアミド(a11)は、アミド基とアミド基との間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが好ましい。
【0026】
ポリアミド(a11)のうち、耐熱性等の観点から、好ましいポリアミドはカプロラクタムの開環重合体、及びアジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの重縮合体であり、更に好ましいポリアミドはカプロラクタムの開環重合体である。
なお、ポリアミド(a11)は、特開2016-166332号公報等に記載の公知の方法で得ることができる。
【0027】
ポリアミド(a11)の数平均分子量(以下、Mnと記載する)は、ポリエーテルアミド(A1)の耐熱性の観点から500~5,000が好ましく、更に好ましくは700~3,000である。
ポリアミド(a11)のMnは、ポリアミドの酸価を用いて算出される計算値である。
【0028】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジオール(a21)としては、ポリオキシエチレン基を有する脂肪族ポリエーテルジオール及びポリオキシエチレン基を有する芳香族ポリエーテルジオールがあげられる。
【0029】
ポリオキシエチレン基を有する脂肪族ポリエーテルジオールは、炭素数2~8の直鎖又は分岐脂肪族2価アルコールにエチレンオキサイド(以下、EOと略記する)を必須とするアルキレンオキサイド(以下、AOと略記することがある)を付加したアルキレンオキサイド付加物、及び炭素数6~10の脂環式2価アルコールにEOを必須とするアルキレンオキサイドを付加したアルキレンオキサイド付加物があげられる。
エチレンオキサイド(以下、EOと略記することがある)と併用するアルキレンオキサイドとしては、炭素数3又は4のアルキレンオキサイド[1,2-プロピレンオキサイド(以下、POと略記する)、1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、2,3-又は1,3-ブチレンオキサイド、及びテトラヒドロフラン等]があげられる。
【0030】
ポリオキシエチレン基を有する脂肪族ポリエーテルジオールにおいて、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとを併用する場合、ポリエーテルジオールが有するポリ(オキシアルキレン)基は、一種類のアルキレンオキサイドが2個以上つながって構成された構造単位を有していてもよく、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとが交互に結合した構造を有していてもよく、これらの2種類の構造の両方を有していてもよい。
【0031】
ポリオキシエチレン基を有する脂肪族ポリエーテルジオールは、炭素数2~8の直鎖若しくは分岐脂肪族2価アルコール、又は炭素数6~10の脂環式2価アルコールにエチレンオキサイドを必須とするアルキレンオキサイドをアルカリ触媒の存在下で100~200℃の温度で開環付加重合する方法等の公知の方法により得ることが出来る。
【0032】
炭素数2~8の直鎖又は分岐脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、及び1,2-、1,3-又は2,3-ブタンジオール等があげられる。
【0033】
炭素数6~10の脂環式2価アルコールとしては、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等があげられる。
【0034】
ポリオキシエチレン基を有する脂肪族ポリエーテルジオールとして好ましいものとしては、ポリオキシエチレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)等]、及びポリオキシエチレンとのプロピレンポリオールの共重合体等があげられる。
【0035】
ポリオキシエチレン基を有する芳香族ポリエーテルジオールは、芳香族ジオールにエチレンオキサイドを必須とするアルキレンオキサイド付加物があげられ、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する)と併用するアルキレンオキサイドとしては炭素数3又は4のアルキレンオキサイド[1,2-プロピレンオキサイド(以下、POと略記する)、1,3-プロピレンオキサイド、1,2-、2,3-又は1,3-ブチレンオキサイド、及びテトラヒドロフラン等]があげられる。
【0036】
ポリオキシエチレン基を有する芳香族ポリエーテルジオールにおいて、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとを併用する場合、ポリエーテルジオールが有するポリ(オキシアルキレン)基は、一種類のアルキレンオキサイドが2個以上つながって構成された構造単位を有していてもよく、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとが交互に結合した構造を有していてもよく、これらの2種類の構造の両方を有していてもよい。
【0037】
ポリオキシエチレン基を有する芳香族ポリエーテルジオールは、芳香族ジオールに対してエチレンオキサイドを必須とするアルキレンオキサイドをアルカリ触媒の存在下に100~200℃の温度で開環付加重合する方法等の公知の方法により得ることが出来る。
【0038】
芳香族ジオールとしては、ハイドロキノン、ベンジルオキシ-1,3-プロパンジオール、及びビスフェノールA等があげられる。
【0039】
ポリオキシエチレン基を有する芳香族ポリエーテルジオールとして好ましいものとしては、ビスフェノールAのEO付加物(ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物及びビスフェノールAのEO20モル付加物等)及びジヒドロキシベンゼンの付加物等があげられる。
【0040】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジオール(a21)中のポリオキシエチレン基の合計重量割合は、水崩壊性の観点から、ポリエーテルジオール(a21)の重量に基づいて60重量%以上が好ましく、更に好ましくは、80~95重量%である。
【0041】
ポリエーテルジオール(a21)のMnは、水崩壊性と成型時の強度等の観点から、500~5,000が好ましく、更に好ましくは1,000~3,000である。
【0042】
ポリエーテルジオール(a21)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記)を用いて、以下の条件で測定する。
・装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
・カラム:「Guardcolumn Super H-L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000を各1本連結したもの」[いずれも東ソー(株)製]
・試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
・溶液注入量:10μl
・流量:0.6ml/分
・測定温度:40℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリエチレングリコール
【0043】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)を構成する、ポリエーテルジオール(a21)から2つの水酸基を除いた全ての残基の合計重量割合は、部材の水崩壊性と強度との両立等の観点から、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)の重量に基づいて、50重量%~85重量%が好ましく、更に好ましくは55重量%~85重量%である。
【0044】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)は、アミド基とアミド基との間を、炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが好ましい。
ポリアミド(a11)を構成するラクタム、アミノカルボン酸、並びにジアミン及びジカルボン酸としての前記の好ましいものを用いることで、ポリエーテルエステルアミド(A1)は、アミド基とアミド基との間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが出来る。
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)が、アミド基とアミド基との間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有していると、水崩壊性部材形成用樹脂組成物の耐熱性と水崩壊性とがより良好となり好ましい。
【0045】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)としては、特開平6-287547号公報及び特公平4-5691号に記載のものを用いることができる。ポリエーテルエステルアミド(A1)のうち好ましいのは、特開平6-287547号公報に記載の、Mn200~5,000のポリアミドと、Mn300~5,000のビスフェノールのAO付加物又はポリオキシアルキレンとから構成されるポリエーテルエステルアミドである。
【0046】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)の製造法としては、特開2016-166332号公報等に記載の公知の方法を用いることができ、ジカルボン酸に前記ラクタム又は前記アミノカルボン酸(以下、この2つをポリアミド形成性モノマーと記載する)を開環又は重縮合重合して得られる末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a11)にポリエーテルジオール(a21)をエステル化反応して結合する方法、及びジカルボン酸を過剰に用いたジアミンとジカルボン酸の重縮合体であるポリアミド(a11)にポリエーテルジオール(a21)をエステル化して結合する方法等があげられる。なお、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)は、構造中にポリエーテルジオール(a21)とジカルボン酸とのエステルを含んでも良い。
ポリアミド形成性モノマーの開環又は重縮合重合及びジアミンとジカルボン酸の重縮合は特開2016-166332号公報等に記載の公知の方法で行うことができる。
【0047】
末端にカルボキシル基を有するポリアミドにポリエーテルジオールをエステル化反応は公知の方法で行うことができ、公知のエステル化触媒を用いても良い。
好ましいエステル化触媒としては、アンチモン触媒(三酸化アンチモン等)、スズ触媒(モノブチルスズオキシド等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート等)、ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート等)及び酢酸金属塩触媒(酢酸亜鉛及び酢酸ジルコニル等)等が挙げられる。
【0048】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)に含まれるポリオキシエチレン基の合計重量割合は、水崩壊性の観点から、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)の重量に基づいて20重量%~85重量%が好ましく、更に好ましくは50重量%~80重量%である。
【0049】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)のMnは、水崩壊性部材の機械物性及び耐熱性等の観点から、好ましくは10,000~100,000であり、更に好ましくは10,000~50,000である。
【0050】
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)のMnは、以下の条件でGPCにより測定する。
・装置:「HLC-8120」[東ソー(株)製]
・カラム:「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)、「TSKgelMultiporeHXL-M」[東ソー(株)製](1本)
・試料溶液:0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
・溶液注入量:100μl
・流量:1ml/分
・測定温度:135℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン
【0051】
<ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミド樹脂(A2)>
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミド樹脂(A2)は、主鎖の末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a12)からカルボキシル基を除いた残基と、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジアミン(a22)からアミノ基を除いた残基とをアミド基を介して結合した構造を有する化合物である。
【0052】
主鎖の末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a12)としては、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)を構成するポリアミド(a11)として例示した、ラクタムの開環重合体、アミノカルボン酸の自己重縮合体、及びジアミンとジカルボン酸の重縮合体と同じものがあげられ、好ましいものも同じである。
【0053】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジアミン(a22)としては、上記ポリエーテルジオール(a21)の末端水酸基をアミノ基に変えたものがあげられ、ポリエーテルジオールの水酸基をシアノアルキル化して得られる末端を還元してアミノ基にする等の公知の方法により得ることができる。
【0054】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジアミン(a22)中のポリオキシエチレン基の合計重量割合は、水崩壊性の観点から、ポリエーテルジオール(a22)の重量に基づいて60重量%以上が好ましく、更に好ましくは、80~95重量%である。
【0055】
ポリエーテルジアミン(a22)のMnは、水崩壊性と成型時の強度等の観点から、500~5,000が好ましく、更に好ましくは1,000~3,000である。
【0056】
ポリエーテルジアミン(a22)のMnは、上記のポリエーテルジオール(a11)と同様の条件で測定する。
【0057】
ポリエーテルアミド樹脂(A2)を構成する、ポリエーテルジアミン(a22)からアミノ基を除いた残基の合計重量割合は、部材の水崩壊性と強度との両立等の観点から、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A2)の重量に基づいて、50重量%~85重量%が好ましく、更に好ましくは55重量%~85重量%である。
【0058】
ポリエーテルアミド樹脂(A2)は、アミド基とアミド基との間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが好ましい。
ポリアミド(a12)を構成するラクタム、アミノカルボン酸、ジアミン及びジカルボン酸として前記の好ましいものを用いることで、ポリエーテルアミド樹脂(A2)は、アミド基とアミド基との間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが出来る。
ポリエーテルアミド樹脂(A2)が、アミド基とアミド基との間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有していると、水崩壊性部材形成用樹脂組成物の耐熱性と水崩壊性とがより良好となり好ましい。
【0059】
ポリエーテルアミド樹脂(A2)の製造法としては、ジカルボン酸に前記ラクタム又は前記アミノカルボン酸(以下、この2つをポリアミド形成性モノマーと記載する)を開環又は重縮合重合して得られる末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a12)にポリエーテルジアミン(a22)をアミド化反応して結合する方法、及びジカルボン酸を過剰に用いたジアミンとジカルボン酸の重縮合体であるポリアミド(a12)にポリエーテルジアミン(a22)をアミド化反応して結合する方法等があげられる。
【0060】
ポリエーテルアミド樹脂(A2)に含まれるポリオキシエチレン基の合計重量割合は、水崩壊性の観点から、ポリエーテルアミド樹脂(A2)の重量に基づいて20重量%~85重量%が好ましく、更に好ましくは50重量%~80重量%である。
【0061】
ポリエーテルアミド樹脂(A2)のMnは、水崩壊性部材の機械物性及び耐熱性等の観点から、好ましくは10,000~100,000であり、更に好ましくは10,000~50,000である。
【0062】
ポリエーテルアミド樹脂(A2)のMnは、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)と同様の条件でGPCにより測定する。
【0063】
<ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)>
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)は、主鎖の末端に結合したカルボキシル基と少なくとも1個のイミド環とを有するポリアミドイミド(a13)からカルボキシル基を除いた残基と、ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジオール(a23)から水酸基を除いた残基とをアミド基を介してから結合してなる化合物である。
【0064】
主鎖の末端に結合したカルボキシル基と少なくとも1個のイミド環とを有するポリアミドイミド(a13)としては、少なくとも1個のイミド環を形成しうる芳香族トリカルボン酸又は芳香族テトラポリカルボン酸と、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)を構成するポリアミド(a11)において例示したラクタムとの重合体、少なくとも1個のイミド環を形成しうる芳香族トリカルボン酸又は芳香族テトラポリカルボン酸とポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)を構成するポリアミド(a11)において例示したアミノカルボン酸との重合体、及び少なくとも1個のイミド環を形成しうる芳香族トリカルボン酸又は芳香族テトラポリカルボン酸とポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)において例示したポリアミド(a11)を構成するジアミン及びジカルボン酸との重合体等があげられる。
【0065】
少なくとも1個のイミド環を形成しうる、好ましい芳香族トリカルボン酸及び芳香族テトラポリカルボン酸としては、トリメリット酸、1,2,5-又は2,6,7-ナフタレントリカルボン酸、3,3,’4-ビフェニルトリカルボン酸、ベンゾフェノン-3,3’,4-トリカルボン酸、ジフェニルスルホン-3,3’,4-トリカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4-トリカルボン酸、ピメリット酸、フェニル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸、ベンゾフェノン-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸、ジフェニルスルホン-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸及びこれらの無水物等が挙げられる。
【0066】
ポリアミドイミド(a13)は、アミド基とアミド基との間及びアミド基とイミド基の間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが好ましい。
【0067】
ポリアミドイミド(a13)のMnは、ポリエーテルアミドイミド(A2)の耐熱性の観点から、500~50,000が好ましく、更に好ましくは700~30,000である。
ポリアミドイミド(a13)のMnは、ポリアミドの酸価を用いて計算される。
【0068】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジオール(a23)としては、ポリエーテルエステルアミド(A1)を構成するポリエーテルジオール(a21)と同じものがあげられ、好ましいものも同じである。
【0069】
ポリオキシエチレン基を有するポリエーテルジオール(a23)中のポリオキシエチレン基の合計重量割合は、水崩壊性の観点から、ポリエーテルジオール(a23)の重量に基づいて60重量%以上が好ましく、更に好ましくは、80~95重量%である。
【0070】
ポリエーテルジオール(a23)のMnは、水崩壊性と成型時の強度等の観点から、500~5,000が好ましく、更に好ましくは1,000~3,000である。
【0071】
ポリエーテルジアミン(a23)のMnは、上記のポリエーテルジオール(a11)と同様の条件で測定する。
【0072】
ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)を構成する、ポリエーテルジオール(a23)から2つの水酸基を除いた残基の含有割合は、部材の水崩壊性と強度との両立等の観点から、ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)の重量に基づいて、50重量%~85重量%が好ましく、更に好ましくは55重量%~85重量%である。
【0073】
ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)は、アミド基とイミド基との間を、炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが好ましい。
ポリアミドイミド(a13)を構成するラクタム、アミノカルボン酸、ジアミン及びジカルボン酸、並びに芳香族トリカルボン酸及び芳香族テトラポリカルボン酸として、前記の好ましいものを用いることで、ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)は、アミド基とイミド基の間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有することが出来る。
ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)が、アミド基とイミド基との間を炭素数4~11の2価の飽和脂肪族炭化水素基又は芳香環を有する炭素数6~14の2価の炭化水素基で結合した構造を有していると、水崩壊性部材形成用樹脂組成物の耐熱性と水崩壊性とがより良好となり好ましい。
【0074】
ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)の製造法としては、前記ポリアミドイミド(a13)とポリエーテルジアミン(a23)とを公知の方法でアミド化反応して結合する方法等があげられる。
【0075】
ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)に含まれるポリオキシエチレン基の重量割合は、水崩壊性の観点から、ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)の重量に基づいて20重量%~85重量%が好ましく、更に好ましくは50重量%~80重量%である。
【0076】
ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)のMnは、水崩壊性部材の機械物性及び耐熱性等の観点から、好ましくは10,000~100,000であり、更に好ましくは10,000~50,000である。
【0077】
ポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)のMnは、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)と同様の条件でGPCにより測定する。
【0078】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物は、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)、ポリエーテルアミド樹脂(A2)及びポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいればよい。
樹脂(A)として2種以上を含む場合、樹脂(A)に含まれるオキシエチレン基の合計重量割合が樹脂(A)の重量に基づいて20~85重量%であり、好ましくは50重量%~80重量%である。
樹脂(A)として2種以上を含む場合、樹脂(A)に含まれるオキシエチレン基の合計重量割合は、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A1)、ポリエーテルアミド樹脂(A2)及びポリエーテルアミドイミド樹脂(A3)のそれぞれに含まれるオキシエチレン基の合計重量に基づいて計算される。
上記(A1)~(A3)のうち、好ましいのは(A1)である。
【0079】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物は、前記のポリエーテル含有ポリアミド系樹脂(A)に加えて、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリウレタン(B1)及び/又はポリオキシアルキレングリコール(B2)を含んでも良い。
更にポリオキシアルキレン鎖を有するポリウレタン(B1)及び/又はポリオキシアルキレングリコール(B2)を含むことで水崩壊性部材形成用樹脂組成物の水崩壊性の程度を調整することができる。
上記(B1)~(B2)のうち、好ましいのは(B1)である。
【0080】
<ポリオキシアルキレン鎖を有するポリウレタン(B1)>
ポリオキシアルキレン鎖を有するポリウレタン(B1)は、ポリオキシアルキレングリコール(b11)とポリイソシアネート(b21)とを必須構成単位とするポリウレタンである。
【0081】
ポリオキシアルキレングリコール(b11)としては、ポリオキシエチレン基を有するポリオキシアルキレングリコールが好ましく、ポリオキシエチレングリコール及びエチレンオキサイドとその他のアルキレンオキサイドとの共重合ジオール等があげられ、中でもポリオキシエチレングリコールが好ましい。なお、エチレンオキサイドとその他のアルキレンオキサイドとの共重合ジオールは、前記のポリエーテルジオール(a11)と同様の方法で得ることが出来る。
【0082】
ポリオキシアルキレングリコール(b11)のMnは、水崩壊性と形状保持性等との観点から、5,000~200,000が好ましく、10,000~100,000が更に好ましい。ポリオキシアルキレングリコール(b11)のMnは、上記のポリエーテルジオール(a11)と同様の条件で測定する。
【0083】
ジイソシアネート(b21)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下同様。)6~20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2~18の脂肪族ジイソシアネート、これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0084】
炭素数6~20の芳香族ジイソシアネートとしては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジアミノフェニルメタンジイソシアネート(粗製MDI)等が挙げられる。
【0085】
炭素数2~18の脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数2~18の鎖状脂肪族ジイソシアネート及び炭素数3~18の環状脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0086】
炭素数2~18の鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0087】
炭素数3~18の環状脂肪族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0088】
ジイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する変性物等が用いられ、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI及びこれらの混合物[例えば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との混合物]等が挙げられる。
【0089】
これらのジイソシアネートのうち耐久性の点で好ましいのは、炭素数6~15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4~15の脂肪族ジイソシアネートであり、更に好ましいのはTDI、MDI、HDI、水添MDI及びIPDIである。
【0090】
ポリウレタン(B1)には、ポリオキシアルキレングリコール(b11)以外の2価の活性水素含有化合物(特開2017-57166号公報に記載の2価の活性水素含有化合物等)を含んでも良い。
【0091】
ポリウレタン(B1)に含まれるポリオキシアルキレングリコール(b11)に由来する単位(ポリオキシアルキレングリコールの水酸基から水素原子を除いた残基)の重量割合は、水崩壊性と形状保持性等との観点から、ポリウレタン(B1)の重量に基づいて60~99重量%が好ましく、75~99重量%が更に好ましい。
【0092】
ポリウレタン(B1)は、ポリオキシアルキレングリコール(b11)とジイソシアネート(b21)とを公知の方法でウレタン化することで得られる。
【0093】
ポリウレタン(B1)のMnは、水崩壊性と形状保持性等との観点から、10,000~200,000が好ましく、40,000~150,000が更に好ましい。ポリウレタン(B1)のMnは、上記のポリエーテルジオール(a11)と同様の条件で測定する。
【0094】
<ポリオキシアルキレングリコール(B2)>
ポリオキシアルキレングリコール(B2)としては、前記のポリウレタン(B1)を構成するポリオキシアルキレングリコール(b11)と同じものを用いることができ、好ましいものも同じである。
【0095】
ポリオキシアルキレングリコール(B2)のMnは、水崩壊性と形状保持性等との観点から、10,000~10,000,000が好ましく、50,000~5,000,000が更に好ましい。ポリオキシアルキレングリコール(B2)のMnは、上記のポリエーテルジオール(a11)と同様の条件で測定する。
【0096】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物が、更に、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリウレタン(B1)及び/又はポリオキシアルキレングリコール(B2)を含む場合、ポリウレタン(B1)及びポリオキシアルキレングリコール(B2)の合計重量割合は、水崩壊性と形状保持性等との観点から、樹脂(A)、ポリウレタン(B1)及びポリオキシアルキレングリコール(B2)の合計重量に基づいて20重量%~80重量%が好ましく、50重量%~80重量%が更に好ましい。
【0097】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物は、前記の樹脂(A)、ポリウレタン(B1)及びポリオキシアルキレングリコール(B2)の他に、公知の熱可塑性樹脂(前記の樹脂(A)を除く)及び樹脂用添加剤を含んでも良い。
【0098】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物が含んでもよい熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、水崩壊性部材の用途に応じて選択することができる。
なかでも、水崩壊性部材形成用樹脂組成物を熱溶解積層法三次元造形機用フィラメント樹脂組成物に用いる場合、本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物はポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ブチレン・ビニルアルコール共重合体、イオン性基(スルホ基等)を有するポリアミド樹脂(スルホイソフタル酸ナトリウムを構成単量体として含むポリアミド66等)及びイオン性基(スルホ基等)を有するポリエステル樹脂(スルホイソフタル酸ナトリウムを構成単量体として含むポリエステル樹脂等)等を熱可塑性樹脂として含むことが好ましい。
【0099】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物が含むことのできる樹脂用添加剤としては、公知のフィラーや染料、顔料、安定化剤、滑剤、結晶核剤、及び帯電防止剤等があげられる。樹脂用添加剤の含有量は、本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物の水崩壊性と形状保持性とを阻害しない量であれば制限はなく、水崩壊性部材形成用樹脂組成物の用途に応じて調整することができる。
【0100】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物が更に熱可塑性樹脂を含む場合、水崩壊性部材形成用樹脂組成物に含まれる樹脂(A)、ポリウレタン(B1)及びポリオキシアルキレングリコール(B2)の合計重量割合によって、水崩壊性部材形成用樹脂組成物の水崩壊性、耐熱性及び形状保持性を調整することができる。
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物が用いられる用途に応じて、水崩壊性部材形成用樹脂組成物に必要な水崩壊性、耐熱性及び形状保持性は異なり、用途に応じて樹脂(A)、ポリウレタン(B1)及びポリオキシアルキレングリコール(B2)の合計重量割合を調整することが好ましい。
【0101】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物に含まれる、ポリウレタン(B1)及びポリオキシアルキレングリコール(B2)の合計重量割合は、水崩壊性と形状保持性等との観点から、水崩壊性部材形成用樹脂組成物の合計重量に基づいて30重量%~80重量%が好ましく、45重量%~75重量%が更に好ましい。
【0102】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物は、前記の樹脂(A)、ポリウレタン(B1)、ポリオキシアルキレングリコール(B2)、並びに必要により用いる他の熱可塑性樹脂及び樹脂用添加剤を公知の方法で溶融混合することで得ることができる。
溶融混練温度は、樹脂(A)、ポリウレタン(B1)、ポリオキシアルキレングリコール(B2)、並びに必要により用いる他の熱可塑性樹脂及び樹脂用添加剤が溶融する温度であれば制限はないが、水崩壊性部材形成用樹脂組成物の着色が少なくなる等の理由から、溶融混練温度は、ポリエーテル含有ポリアミド系樹脂(A)の融点と同じ温度から融点よりも40℃高い温度の範囲であることが好ましい。
【0103】
本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物は、水崩壊性粘接着剤及び水崩壊性成形体等に好ましく用いることができる。水崩壊性成形体としては、包装資材、農園芸資材、溶融樹脂積層法による三次元造形物構造の支持体等があげられる。
【0104】
<水崩壊性部材>
第2の発明である水崩壊性部材は、前記の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなる部材である。なお、部材とは、ある物品の一部分を構成する材料を意味し、その形状に制限は無い。
【0105】
本発明の水崩壊性部材として好ましいものとしては、水崩壊性粘接着剤及び水崩壊性成形体があげられ、水崩壊性成形体としては繊維、その不織布、フィルム及び任意の形状に成形した部材等があげられる。
【0106】
本発明の水崩壊性部材からなる水崩壊性粘接着剤は、衛生材料用、包装用、断熱材用及び木工用等様々な用途で用いることができ、粘接着剤で固定した部分を水によって洗浄を行うことにより容易に分離することができる。
【0107】
本発明の水崩壊性部材からなる水崩壊性成形体が繊維及びそれを用いた不織布である場合、水切り袋、医療用衣服、及び医療用シート等に好ましく用いることができる。
【0108】
本発明の水崩壊性部材からなる水崩壊性成形体がフィルムである場合、包装用フィルム、包装袋、コンポスト袋、レジ袋、及びゴミ袋等に用いることができる。なかでも、生ゴミを廃棄する時のゴミ袋に用いた場合には水分によって袋を崩壊させることにより生ゴミと一緒に生ゴミの資源化処理することが可能となるため好ましく用いることができる。
【0109】
本発明の水崩壊性部材からなる水崩壊性成形体は、農園芸資材(マルチフィルム、育苗ポット、農園芸テープ、果実栽培袋、杭、薫蒸シート及びビニールハウス用フィルム等)、及び農薬用包装材等にも好ましく用いることができる。
例えば、育苗ポットとして用いた場合には苗の育成段階や流通段階では充分な強度を維持しつつ、土壌に埋設した後に水分で分解させることで育苗ポットを取り外す手間をなくすことが可能となる。また、農薬原体又は製剤を封入した包装材として用いた場合、散布した水と接触することで包装材が分解して薬効成分を放出することができる。
【0110】
このほかにも本発明の水崩壊性部材からなる成形体は、熱溶融(樹脂)積層法による三次元造型機の構造支持部材、薬品(医薬、農薬、動物用薬品、及び肥料)の結着成分、電気機器の筐体、及びペット汚物処理材等にも用いることができる。
【0111】
<熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメント>
第3の発明である熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントは、前記の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなる樹脂フィラメントである。
熱溶解積層法三次元造形機は、樹脂フィラメントと呼ばれる材料(糸状に成型した熱可塑性樹脂のことを意味する)を加熱溶融してノズルから排出し、ノズルから出た樹脂を3D-CAD等のデータを元に積層して三次元造形物(立体造形物)を作製する印刷機であり、三次元造形物を作製する際には、その形状の保持や、補強を目的とした支持部材(サポート材ともいう)も必要とされ、支持部材は熱溶解積層法三次元造形機によって三次元造形物の形成と同時に形成される。
【0112】
支持部材には、三次元造形物が形成されている間も支持構造を維持できる耐熱性と除去の容易さが必要である。本発明の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントは、耐熱性と水崩壊性に優れる前記の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなるため、三次元造形物が形成されている間も支持構造を維持できる耐熱性と除去の容易さを有する支持部材を得ることができる。
【0113】
本発明の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントは、前記の水崩壊性部材形成用樹脂組成物を公知の方法でフィラメントの形状(好ましく直径1.75mm~3mmのフィラメント等)に成形することで得ることができる。
【0114】
<三次元造形物の製造方法>
第4の発明である三次元造形物の製造方法は、前記の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントを用いる三次元造形物の製造方法であり、前記の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントからなる支持部材を形成する工程を有する三次元造形物の製造方法である。
【0115】
本発明の製造方法は、支持部材の形成に、前記の水崩壊性部材形成用樹脂組成物からなる熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントを用いること以外には熱溶融積層法による三次元造形物の製造方法として公知の方法を用いることができる。
【0116】
本発明の製造方法において、前記の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントを用いて三次元造形物の支持部材を形成する工程は、樹脂フィラメントを加熱(好ましくは170~240℃、更に好ましくは190~230℃)、溶融し、三次元造形機に入力された3D-CAD等の三次元データに基づく所定の位置に、溶融した樹脂を吐出ノズルから吐出して構造支持用部材を成形することで行われる。
【0117】
本発明の製造方法は、前記の熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントからなる支持部材を除去する工程を更に有することが好ましい。
【0118】
三次元造形物の支持部材を除去は、支持部材を溶解液と接触させることで行うことができ、支持部材の一部又は全部に溶解液を接触させる方法及び支持部材全体を溶解液に浸漬する方法等を用いることができる。
溶解液としては、水が好ましく、水には水溶性の化合物を溶解して用いても良い。水に溶解して用いることができる化合物としては、有機酸、無機酸、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。
【実施例0119】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施例において、部は重量部を表す。
【0120】
[製造例1:ポリエーテルウレタン(B-1)]
ステンレス製オートクレーブ(加熱装置と撹拌装置が付属した簡易加圧反応装置)にポリエチレングリコール(Mn20,000)(a21-6)100部を仕込み、オートクレーブ内を窒素置換した後、110℃に加熱しながら1.0~2.0kPaとなるように減圧し、1時間撹拌を継続して脱水を行った。その後、常圧に戻し、トルエンジイソシアネート0.8部を仕込み、撹拌しながら150℃まで昇温し、2時間反応させて、ポリエーテルウレタン(B-1)得た。ポリエーテルウレタン(B-1)のMnは80,000であった。
【0121】
[製造例2:ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)]
製造例1で用いたものと同様のステンレス製オートクレーブに、ε-カプロラクタム170部、テレフタル酸20.0部、イソフタル酸5.0部、酸化防止剤0.4部及び水10部を入れ、オートクレーブ内を窒素置換後、220℃で加圧(0.3~0.4MPa、以下同じ。)密閉下、4時間加熱撹拌し、両末端にカルボキシル基を有する酸価111のポリアミド(a11-1)得た。ポリアミド(a11-1)のMnは1,000であった。ポリアミド(a11-1)のMnは、ポリアミド(a11-1)が2官能であり、その両末端がカルボキシル基であるものと仮定し、計算式[{1モルの水酸価カリウムのmg数(56100)/酸価(111)}×官能基数(2)]により算出した。
次に、ポリアミド(a11-1)300部、ポリエチレングリコール(Mn2,000)(a21-1)300部、ビスフェノールAのEO付加物(Mn4000)(a21-2)600部及び酢酸ジルコニル0.6部をステンレス製オートクレーブ中で撹拌しながら240℃に加熱し、0.13kPa以下となるように減圧しながら6時間加熱して重合することで粘稠なポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)を得た。ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)のMnは28,000であり、(A-1)に含まれるオキシエチレン基の含有率は樹脂(A-1)の重量に基づいて75重量%であった。
【0122】
[製造例3:ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-2))
製造例1で用いたものと同様のステンレス製オートクレーブに、ε-カプロラクタム190部、5-スルホイソフタル酸のナトリウム塩23.7部、酸化防止剤0.4部及び水10部を仕込み、オートクレーブ内を窒素置換後、220℃で加圧(0.3~0.4MPa、以下同じ。)密閉下、4時間加熱撹拌し、両末端にカルボキシル基を有する酸価55のポリアミド(a11-2)得た。ポリアミド(a11-2)のMnは2,000であった。ポリアミド(a11-2)のMnは、ポリアミド(a11-2)が2官能であり、その両末端がカルボキシル基であるものと仮定し、計算式[{1モルの水酸価カリウムのmg数(56100)/酸価(55)}×官能基数(2)]により算出した。
製造例1で用いたものと同様のステンレス製オートクレーブに、ポリエチレングリコール(Mn600)(a21-3)190部、5-スルホイソフタル酸ジメチルエステルのナトリウム塩76部及びジブチル錫オキサイド0.2部を仕込み、190℃まで昇温し、メタノールを留去しながら6時間エステル交換反応させポリエーテル(a21-4)を得た。
次に、ポリアミド(a11-2)300部、ポリエーテルエステル(a21-4)750部及び酢酸ジルコニル0.6部をステンレス製オートクレーブ中で撹拌下しながら240℃に加熱し、0.13kPa以下となるように減圧しながら6時間加熱重合することで粘稠なポリエーテルエステルアミド樹脂(A-2)を得た。ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-2)のMnは41,000であり、樹脂(A-2)に含まれるオキシエチレン基の含有率は樹脂(A-2)の重量に基づいて51重量%であった。
【0123】
[実施例1~2]
製造例2~3で得られたポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)及びポリエーテルエステルアミド樹脂(A-2)を、それぞれ水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-1)及び(Y-2)とした。
【0124】
[実施例3~4:ポリエーテルエステルアミド樹脂とポリエーテルウレタンとの混合物]
製造例2~3で得られたポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)~(A-2)50部と、製造例1で得られたポリエーテルウレタン(B-1)50部とをラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて220℃、50rpmの条件で5分間溶融混練し、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)~(A-2)とポリウレタン(B-1)との混合物からなる水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-3)~(Y-4)を得た。
【0125】
[実施例5~6:ポリエーテルエステルアミド樹脂とポリオキシアルキレングリコールとの混合物]
製造例2~3で得られたポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)~(A-2)40部と、製造例1で得られたポリオキシアルキレングリコール(B-2)[ポリエチレングリコール(Mn20,000)]60部とをラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて220℃、50rpmの条件で5分間溶融混練し、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)~(A-2)とポリオキシアルキレングリコール(B-2)との混合物からなる水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-5)~(Y-6)を得た。
【0126】
[実施例7~10]
ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-1)、ポリエーテルエステルアミド樹脂(A-2)、ポリエーテルウレタン(B-1)、ポリオキシアルキレングリコール(B-2)を、表1の組成(重量部)に従って、ラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて220℃、50rpmの条件で5分間溶融混練し、水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-7)~(Y-10)を得た。
【0127】
[比較例1]
製造例2において用いたポリアミド(a11-1)50部、ポリエチレングリコール(Mn20000)(a21-6)1000部及び酢酸ジルコニル0.6部をステンレス製オートクレーブ中で撹拌下に240℃に加熱し、0.13kPa以下に減圧しながら6時間重合反応してポリエーテルエステルアミド樹脂(比A-1)を含む比較用の樹脂組成物(Z-1)を得た。ポリエーテルエステルアミド樹脂(比A-1)のMnは31000であり、樹脂組成物(比A-1)に含まれるオキシエチレン基の含有率は樹脂組成物(比A-1)の重量に基づいて95重量%であった。
【0128】
[比較例2]
製造例2において用いたポリアミド(a11-1)850部、ポリエチレングリコール(Mn600)(a21-7)170部及び酢酸ジルコニル0.6部をステンレス製オートクレーブ中で撹拌下に240℃に加熱し、0.13kPa以下に減圧しながら6時間重合反応して粘稠なポリエーテルエステルアミド(比A-2)を含む比較用の樹脂組成物(Z-2)を得た。得た。樹脂組成物(比A-2)のMnは30,000であり、(比A-2)に含まれるオキシエチレン基の含有率は樹脂組成物(比A-2)の重量に基づいて17重量%であった。
【0129】
[比較例3]
ステンレス製オートクレーブに、無水コハク酸90.40g、ポリエチレングリコール(Mn1000)(a21-8)990.10g、チタニウムイソプロポキシド1.63g、及びジエチルベンゼンを800ml入れ、加熱してジエチルベンゼンを8時間還流した。次にジエチルベンゼンを減圧下留去し、5mmHgの減圧下で200℃の温度で5時間撹拌し、ポリエステル化反応を行い、Mnが12,000、末端水酸基価が9.55KOHmg/g、酸価が1.27KOHmg/gのポリエステルを得た。
製造例1と同様のステンレス製オートクレーブに上記ポリエステル27.30g、ポリ(ブチレンアジペート)(PBA)ジオール(三井化学ポリウレタン(株)製;平均分子量2000)3.30g、及びトルエン30mlを加えて90℃で混合し、そこにヘキサメチレンジイソシアネート0.63gとジブチル錫ジラウレートを50mg加え、更に90℃で4時間攪拌した。次いで、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを0.30g加えて混合した後、トルエンを減圧留去して、脂肪族ポリオキシアルキレン部を含有するユニットと、脂肪族ポリエステルユニットとを構成単位として含むブロック共重合体(比A-3)からなる比較用の樹脂組成物(Z-3)を得た。得られた樹脂組成物(比A-3))のMnは52,000であった。
【0130】
実施例1~10で得られた水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-1)~(Y-10)及び比較例1~3で得られた比較用の樹脂組成物(Z-1)~(Z-3)について、下記の方法で融点を測定し、表1に記載した。
更に、下記の方法で成形フィルムの高温(180℃)下での形状維持性と水崩壊性との評価を行い、結果を表1に記載した。
【0131】
[融点の測定]
実施例1~10で得られた水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-1)~(Y-10)及び比較例1~3で得られた比較用の樹脂組成物(Z-1)~(Z-3)のそれぞれをJIS K 7100記載の標準温度状態2級の環境に24時間置き、約5mg秤量し、示差走査熱量計(DSC)[商品名:DSC2910、ティー・エイ・インスツルメント(株)製]を用いて毎分10℃の加熱速度で240℃まで加熱し、10分保持した後、冷却速度毎分10℃で-50℃まで冷却した。更に-50℃で10分保持した後、加熱速度毎分10℃で240℃まで加熱して得られたDSC曲線から、加熱による転移温度(融解ピークの頂点)を読み取り、これを融点とした。
なお、融点が高いほど、より高い温度でも形状の維持ができることを意味する。
【0132】
[成形フィルムの高温下での形状維持]
実施例1~10で得られた水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-1)~(Y-10)及び比較例1~3で得られた比較用の樹脂組成物(Z-1)~(Z-3)のそれぞれについて熱プレス機を用いて厚さ2mmのフィルムに成形した。幅5mm×長さ5mm×厚さ2mmに切り出した成形したフィルムを180℃の循風乾燥機の中に2時間静置し、室温にまで冷却した後のフィルムの厚さを測定して結果を表1に記載した。
表1には、厚さに変化がなかったのを「GOOD」と記載し、厚みが1mm以下となったものを「BAD」と記載した。
【0133】
[水崩壊性]
実施例1~10で得られた水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-1)~(Y-10)及び比較例1~3で得られた比較用の樹脂組成物(Z-1)~(Z-3)について、前記の[耐熱性能]で用いた試料と同様に厚さ2mmに成形したフィルムから5mm×5mmの大きさに切り出した試料を、39~41℃に調整したイオン交換水(100g)と円柱型マグネットスターラー(径5mm、長さ30mm)が入ったビーカーに入れ、すぐに400rpmで撹拌を行った。撹拌開始から10分後に撹拌を停止して20分間静置した後のイオン交換水中のフィルムの状態(撹拌開始から30分後のイオン交換水中のフィルムの状態)を目視で観察して成形フィルムの水崩壊性を評価し、結果を表1に記載した。
表1には、成形フィルムが完全に溶解又は溶け残りがあってもその大きさが0.5mm3未満であった場合を「水崩壊性A」と記載し、溶け残りがありその大きさが0.5mm3以上であった場合を「水崩壊性B」と記載した。本発明においては、水に浸漬した場合の溶け残りが少ない樹脂組成物ほど水崩壊性部材用として好ましく用いることができ、水崩壊性の評価結果は、「水崩壊性A」である方が好ましい。
【0134】
【0135】
[実施例11~20、比較例4~6:熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメントとそれを用いた熱溶解積層法三次元造形機による造形]
キャピラリーレオメーター(IMATEC社製 R6000)に直径1.75mm×流路長5mmのロングダイを取り付け、実施例1~10で得られた水崩壊性部材形成用樹脂組成物(Y-1)~(Y-10)及び比較例1~3で得られた比較用の樹脂組成物(Z-1)~(Z-3)のそれぞれを溶融温度220℃、押し出し速度75mm/minの条件で押し出し成型し、直径1.75±0.15mmのフィラメントに加工し、熱溶解積層法三次元造形機用樹脂フィラメント(F-1)~(F-10)及び比較用の樹脂フィラメント(Z-4)~(Z-6)を得た。
得られた樹脂フィラメント(F-1)~(F-10)及び比較用の樹脂フィラメント(Z-4)~(Z-6)について、下記の方法で3Dプリンタによる成形性、造形物の水崩壊性及び造形物の高温下での形状維持を評価した。
【0136】
[3Dプリンタによる成形性]
樹脂フィラメント(F-1)~(F-10)及び比較用の樹脂フィラメント(Z-4)~(Z-6)のそれぞれを、造形物の形状(5mm×5mm×2mmの直方体)のデータを入力したMakerBot社製Replicator X2に供給し、250℃の温度を有するヒートノズルから押し出して成形を行った。所定の形状に成形できたか否かを目視観察し、結果を表2に記載した。
表2において、成形性が〇とあるものは、所定の形状に成形できたことを意味する。
【0137】
[造形物の水崩壊性]
3Dプリンタによって造形した造形物(形状:5mm×5mm×2mm)を、39~41℃に調整したイオン交換水(100g)と円柱型マグネットスターラー(径5mm、長さ30mm)が入ったビーカーに入れ、すぐに400rpmで撹拌を行った。撹拌開始から10分後に撹拌を停止して20分間静置した後のイオン交換水中の造形物の状態を目視で観察して造形物の水崩壊性を評価し、結果を表2に記載した。
表2には、造形物が完全に溶解又は溶け残りがあってもその大きさが0.5mm3未満であった場合を「水崩壊性A」と記載し、溶け残りがありその大きさが0.5mm3以上であった場合を「水崩壊性B」と記載した。本発明においては、水に浸漬した場合の溶け残りが少ない造形物ほど水崩壊性部材として好ましく、水崩壊性の評価結果は、「水崩壊性A」である方が好ましい。
【0138】
[造形物の高温下での形状維持]
3Dプリンタによって造形した造形物(形状:5mm×5mm×2mm)を180℃の循風乾燥機の中に2時間静置し、室温にまで冷却した後のフィルムの厚さを測定して結果を表2に記載した。
表2には、厚さに変化がなかったのを「GOOD」と記載し、厚みが1mm以下となったものを「BAD」と記載した。
【0139】
【0140】
表1及び表2に記載の通り、本発明の水崩壊性部材形成用樹脂組成物及びそれを用いた造形物は、比較例の樹脂組成物では達成できない水崩壊性と耐熱性能の両立が可能である。
本発明の水崩壊性部材用樹脂組成物は、耐熱性を有し、かつ水に浸漬することで容易に除去できることから、水崩壊性が必要な成形体、部材の仮固定に用いる接着剤及び熱溶解積層法三次元造形機用フィラメントに好ましく用いることが出来る。