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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176908
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20221122BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221122BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/86
A61K8/81
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q5/00
A61K8/39
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077956
(22)【出願日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2021082896
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 彩理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 繁郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB352
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC622
4C083AC792
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD662
4C083CC03
4C083CC11
4C083CC31
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塩型薬剤を添加しても経時的に安定であり、しかも、べたつきやぬるつきの無い優れた使用性を備える水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】(A)式(I):RO(CHCHO)(I)(R及びRは直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、aは4~15の整数である)で表されるポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテル、(B)式(II):R(OCHCHOH(II)(Rは直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、bは8~30の整数である)で表されるポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル、(C)塩型薬剤、(D)水溶性ビニル系高分子化合物、及び(E)水溶性多糖類を含有する水中油型乳化化粧料であって、(E)水溶性多糖類が0.06質量%以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I):
O(CHCHO) (I)
(一般式(I)において、R及びRは炭素数16~24の直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、aは4~15の整数である)
で表されるポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテル、
(B)下記一般式(II):
(OCHCHOH (II)
(一般式(II)において、Rは炭素数16~24の直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、bは8~30の整数である)
で表されるポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(C)塩型薬剤、
(D)水溶性ビニル系高分子化合物、及び
(E)水溶性多糖類
を含有する水中油型乳化化粧料であって、
(E)水溶性多糖類が水中油型乳化化粧料の全量に対して0.06質量%以上である、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(E)水溶性多糖類がサクシノグリカンを含む、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
(E)水溶性多糖類が水中油型乳化化粧料の全量に対して0.06~0.25質量%である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
(D)水溶性ビニル系高分子化合物が水中油型乳化化粧料の全量に対して0.01~0.5質量%である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
(D)水溶性ビニル系高分子化合物がカルボキシビニルポリマーである、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
(F)下記一般式(III):
(OCHCHOH (III)
(一般式(III)において、
はコレステロール及び/又はフィトステロール残基であり、cは5~30の整数である)
で表されるポリオキシエチレンステロールエーテルをさらに含む、請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。より詳しくは、塩型薬剤を添加しても経時的に安定であり、しかも、べたつきやぬるつきの無い優れた使用性を備える水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア等の皮膚に塗布される化粧料において、その使い心地は重要な要素である。特に、保管時には適度な粘度を維持し安定性に優れる一方で、塗布時にはべたつきやぬるつきが無く、なめらかに伸び広がることが望ましい。
【0003】
化粧料の粘度や安定性を保つ手段の一つとして、乳化系にαゲル構造を導入することが広く検討されている。αゲルとは、一般的には高級アルコールや高級脂肪酸と親水性界面活性剤とが水中でラメラ液晶構造を有する会合体を形成したゲルである。
【0004】
しかし、一般的なαゲル組成物は、熱力学的に不安定であり、時間の経過とともに構造内に保持していた水を放出し、その過程で粘度が著しく変化し、高級アルコールや高級脂肪酸が結晶として析出したり、水分が分離したり、化粧料の粘度が上昇したりする場合があった。そこで、αゲル形成能が高い一分子中に一個の長鎖アルキル基を有する界面活性剤(一鎖型界面活性剤)と、αゲル形成能の低い一分子中に複数の長鎖アルキル基を有する界面活性剤(多鎖型界面活性剤)とを組み合わせて、ゲルの粘度を調節することなども検討されてきたが、十分な安定性を得るには至っていない。
【0005】
また、αゲル組成物は、高級アルコールや高級脂肪酸などを多量に含んでいるため、皮膚上に塗布した際にぬるつきを生じたり、のびが悪く重くべたついた感触になったりする場合がある。特に、乾燥による肌荒れなどを防ぐ目的で油分や保湿剤を多量に配合すると、脂っぽさやべたつきが顕著になる傾向がある。
【0006】
そこで、従来のαゲル組成物が抱える問題を解消するために、高級アルコールや高級脂肪酸を実質的に含まず、主にポリオキシエチレン系界面活性剤のみによって形成される新たなタイプのゲル組成物が提案されている(特許文献1)。このタイプのゲル組成物は、複数のポリオキシエチレン系界面活性剤を用いることによって水分量に応じて異なる状態のゲル相を誘起することができるため、保管時には経時での結晶析出や粘度上昇などの安定性の問題を生じないほか、油分や保湿剤を多量配合しても塗布時や塗布後にさっぱりとした使用感を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-132765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリオキシエチレン系界面活性剤によって形成されるタイプのゲル組成物は耐塩性に乏しく、例えば美白作用を有する4-メトキシサリチル酸カリウムやトラネキサム酸等の塩型薬剤を配合すると、粘度が低下してクリーミングを生じることがあるなど安定性に劣る場合があった。
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、ポリオキシエチレン系界面活性剤によって形成されるタイプのゲル組成物の利点を活かしつつ、安定性、使用性に優れた水中油型化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、所定のポリオキシエチレン系界面活性剤をゲル形成の主剤とする水中油型乳化化粧料に、水溶性ビニル系高分子化合物と特定量の水溶性多糖類とを配合することにより、塩型薬剤を添加しても経時的安定性を保持し、しかも、べたつきやぬるつきの無い優れた使用性を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(A)下記一般式(I):
O(CHCHO) (I)
(一般式(I)において、R及びRは炭素数16~24の直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、aは4~15の整数である)
で表されるポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテル、
(B)下記一般式(II):
(OCHCHOH (II)
(一般式(II)において、Rは炭素数16~24の直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、bは8~30の整数である)
で表されるポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(C)塩型薬剤、
(D)水溶性ビニル系高分子化合物、及び
(E)水溶性多糖類
を含有する水中油型乳化化粧料であって、
(E)水溶性多糖類が水中油型乳化化粧料の全量に対して0.06質量%以上である水中油型乳化化粧料を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る水中油型乳化化粧料は、上記構成とすることにより、塩型薬剤を添加しても粘度が低下しにくく、経時的安定性を十分に維持することができる。また、高級アルコールや高級脂肪酸を配合する必要が無いことから、油分や保湿剤を多量に配合しても塗布中にべたつきやぬるつきを生じにくい。このため、優れた安定性と使用感を同時に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水中油型乳化化粧料は、(A)ポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテル、(B)ポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル、(C)塩型薬剤、(D)水溶性ビニル系高分子化合物、及び、(E)水溶性多糖類を含有する。以下に詳しく説明する。
なお、以下において、ポリオキシエチレンを「POE」と略記する場合がある。
【0014】
<(A)ポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテル>
本発明に配合される(A)ポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテルは、下記一般式(I):
O(CHCHO) (I)
(一般式(I)において、R及びRは炭素数16~24の直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、aは4~15の整数である)
で表される。なお、1分子中におけるポリオキシエチレン鎖とアルキル基の結合様式はエステルでもエーテルでも、また、その両方が含まれていても良い。
【0015】
市販品としては、POE(4)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 200DIS)、POE(6)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 300DIS)、POE(8)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 400DIS)、POE(12)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 600DIS)、ステアリン酸ステアレス-4(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex SWS-4)、ステアリン酸ステアレス-6(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex SWS-6)、ステアリン酸ステアレス-9(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex SWS-9)、POE(8)ジベヘニルエーテルなどが挙げられる。
【0016】
なかでも、ポリオキシエチレン鎖が4~15モルであるPOEジステアリン酸が好ましく、POE(6)ジステアリン酸(「ジステアリン酸PEG-6」とも称される)が特に好ましい。
【0017】
(A)ポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテルの配合量は、特に限定されないが、水中油型乳化化粧料の全量に対して0.01~0.8質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。配合量が0.01質量%未満では十分な粘度や安定性が得られず、0.8質量%を超えるとべたつきを生じ、伸びが悪くなる場合がある。
【0018】
<(B)ポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル>
本発明に配合される(B)ポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルは、下記一般式(II):
(OCHCHOH (II)
(一般式(II)において、Rは炭素数16~24の直鎖脂肪族酸残基または直鎖脂肪族アルコール残基であり、bは8~30の整数である)
で表される。
【0019】
市販品としては、POE(5)ベヘニルエーテル(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BB-5)、POE(10)ベヘニルエーテル(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BB-10)、POE(20)ベヘニルエーテル(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BB-20)、POE(10)ステアリルエーテル(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 610)、POE(7)セチルエーテル(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 107)などが挙げられる。
【0020】
なかでも、ポリオキシエチレン鎖が8~30モルであるPOEベヘニルエーテルが好ましく、POE(10)ベヘニルエーテル(「ベヘネス-10」とも称される)が特に好ましい。
【0021】
(B)ポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量は、特に限定されないが、水中油型乳化化粧料の全量に対して0.01~0.8質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。配合量が0.01質量%未満では十分な粘度や安定性が得られず、0.8質量%を超えるとべたつきを生じ、伸びが悪くなる場合がある。
【0022】
<(C)塩型薬剤>
本発明に配合される(C)塩型薬剤は、塩を形成可能な水溶性の薬剤であり、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されない。(C)塩型薬剤の具体例としては、L-アスコルビン酸およびその誘導体の塩、トラネキサム酸およびその誘導体の塩、アルコキシサリチル酸およびその誘導体の塩などを挙げることができる。
【0023】
L-アスコルビン酸誘導体としては、L-アスコルビン酸モノステアレート、L-アスコルビン酸モノパルミテート、L-アスコルビン酸モノオレートなどのL-アスコルビン酸モノアルキルエステル類;L-アスコルビン酸モノリン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステルなどのL-アスコルビン酸モノエステル類;L-アスコルビン酸ジステアレート、L-アスコルビン酸ジパルミテート、L-アスコルビン酸ジオレートなどのL-アスコルビン酸ジアルキルエステル類;L-アスコルビン酸トリステアレート、L-アスコルビン酸トリパルミテート、L-アスコルビン酸トリオレートなどのL-アスコルビン酸トリアルキルエステル類;L-アスコルビン酸トリリン酸エステルなどのL-アスコルビン酸トリエステル類;L-アスコルビン酸2-グルコシドなどのL-アスコルビン酸グルコシド類などが挙げられる。
【0024】
トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体、(例えば、塩酸トランス-4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’-ヒドロキシフェニルエステル等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2-(トランス-4-アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)-5-ヒドロキシ安息香酸等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸メチルアミド、トランス-4-(p-メトキシベンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、トランス-4-グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸等)などが挙げられる。
【0025】
アルコキシサリチル酸は、サリチル酸の3位、4位または5位のいずれかの水素原子がアルコキシ基にて置換されたものであり、置換基であるアルコキシ基は、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基のいずれかであり、さらに好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。具体的に化合物名を例示すれば、3-メトキシサリチル酸、3-エトキシサリチル酸、4-メトキシサリチル酸、4-エトキシサリチル酸、4-プロポキシサリチル酸、4-イソプロポキシサリチル酸、4-ブトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸、5-エトキシサリチル酸、5-プロポキシサリチル酸などが挙げられる。
【0026】
上記薬剤の塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩のほか、アンモニウム塩、アミノ酸塩等の塩が挙げられる。
【0027】
(C)塩型薬剤の配合量は特に限定されないが、水中油型乳化化粧料の全量に対して0.3~5質量%が好ましく、0.5~3.5質量%がより好ましい。配合量が0.3質量%未満では薬剤の効果が十分に得られず、5質量%を超えると安定性が損なわれる場合がある。
【0028】
<(D)水溶性ビニル系高分子化合物>
本発明に配合される(D)水溶性ビニル系高分子化合物は、通常化粧料において水性液剤用の増粘剤又は粘稠剤として使用されるものであり、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子を挙げることができる。粘度の低下をより効果的に抑制するという観点から、カルボキシビニルポリマー(「カルボマー」とも称される)やポリアクリレート-1(ビニルピロリドン、メタクリル酸N、N-ジメチルアミノエチル、アクリル酸ステアリル及びジアクリル酸トリプロピレングリコールを共重合させた架橋型ポリマー)が特に好ましい。
【0029】
(D)水溶性ビニル系高分子化合物の配合量は、特に限定されないが、水中油型乳化化粧料の全量に対して0.01~0.5質量%が好ましく、0.05~0.23質量%がより好ましい。配合量が0.01質量%未満では粘度低下を生じる場合があり、0.5質量%を超えると却ってべたつきを生じ、伸びが悪くなる場合がある。
【0030】
<(E)水溶性多糖類>
本発明に配合される(E)水溶性多糖類は、例えば、ヒアルロン酸又はその塩、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩、キサンタンガム、サクシノグリカン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を使用することができる。なかでもキサンタンガム、サクシノグリカン、ジェランガム等の微生物由来の水溶性多糖類が好ましく、サクシノグリカンが特に好ましい。また、単独で使用するよりも2種以上を併用するとより好ましい。従って、サクシノグリカンと他の水溶性多糖類(例えばキサンタンガム等)を組み合わせて用いることが好ましい。
【0031】
(E)水溶性多糖類の配合量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して0.06質量%以上であり、より好ましくは0.06~0.25質量%である。配合量が0.06質量%未満では粘度低下を生じる場合がある。また、0.25質量%を超えると却ってべたつきを生じ、伸びが悪くなる場合がある。
【0032】
本発明の水中油型乳化化粧料は、水の存在下で(A)ポリオキシエチレンジアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンジアルキルエーテル、及び、(B)ポリオキシエチレンアルキルエステル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルがゲルを形成し、そこにさらに(D)水溶性ビニル系高分子化合物、及び、(E)水溶性多糖類が加わることにより適度な粘度と優れた耐塩性を実現できる。このため、高い安定性を有し、特に(C)塩型薬剤を高配合してもクリーミングを生じにくい。また、高級アルコールや高級脂肪酸を配合する従来のαゲル組成物と異なり、ポリオキシエチレン系界面活性剤を主剤とするタイプのゲル組成物であるため、油分や保湿剤を多量に配合しても塗布中にさっぱりとした使用感を有し、高い保湿作用を付与することができる。
【0033】
<粘度>
本発明の水中油型乳化化粧料は、30℃で30分以上保持した後の粘度が1000mPa・s以上であり、より好ましくは1000~10000mPa・sである。この範囲内であれば、保管時に高い安定性を維持し、塗布時にはなめらかに塗り伸ばすことができる。なお、本発明における「粘度」は、30℃でB型粘度計(ローターNo.2又はNo.3、回転数12rpm、1分間)により測定される値である。
【0034】
<任意配合成分>
本発明の水中油型乳化化粧料には、上記(A)~(E)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。例えば、水性溶媒、油分、保湿剤等のほか、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、粉体、香料、色剤、色素等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0035】
水性溶媒としては、例えば、水(精製水、イオン交換水、水道水等)、低級アルコール、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0036】
油分としては、特に限定されるものではなく、化粧料に広く用いられている種々の油分を配合できる。例えば、アボカド油、月見草油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の液体油脂;オクタン酸セチル、セチル2-エチルヘキサノエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エチルラウレート、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、アセトグリセライド、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール等のエステル油;流動パラフィン、スクワレン、プリスタン、ポリブテン等の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の各種変性ポリシロキサン等のシリコーン油が挙げられる。
【0037】
保湿剤としては、ポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D-マンニット等が挙げられる。
【0038】
また、本発明の水中油型乳化化粧料は、上述したように所定のポリオキシエチレン系界面活性剤、すなわち上記(A)及び(B)成分をゲル形成の主剤として用いるが、上記以外の界面活性剤や、従来のαゲル組成物に配合される高級アルコールや高級脂肪酸等も、使用性などを調整するために本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
特に、べたつきを生じることなく乳化安定性を改善できることから、以下に説明する(F)ポリオキシエチレンステロールエーテルをさらに配合することが好ましい。
【0039】
<(F)ポリオキシエチレンステロールエーテル>
(F)ポリオキシエチレンステロールエーテルは、下記一般式(III):
(OCHCHOH (III)
(一般式(III)において、
はコレステロール及び/又はフィトステロール残基であり、cは5~30の整数である)
で表される。
【0040】
市販品としては、POE(5モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-5)、POE(10モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-10)、POE(20モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-20)、POE(30モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-30)、POE(10モル)コレステロール(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex CS-10)などが挙げられる。
【0041】
(F)ポリオキシエチレンステロールエーテルの配合量は、特に限定されないが、水中油型乳化化粧料の全量に対して0.01~1質量%が好ましく、0.1~0.8質量%がより好ましい。
【0042】
<製法>
本発明の水中油型乳化化粧料は、例えば、(A)、(B)及び他の油性成分を高温で溶解して油分パーツを調製し、(C)、(D)、(E)及び他の水性成分を含む水相パーツを加温したものに前記油分パーツを加えて常法により乳化して冷却することによって製造することができる。
【0043】
<用途>
本発明の水中油型乳化化粧料の形態は特に限定されず、化粧水、乳液、クリーム、洗顔料、ジェル、エッセンス(美容液)、パック等の基礎化粧品、口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、ファンデーション、サンスクリーン等のメーキャップ化粧品、口腔化粧品、芳香化粧品、毛髪化粧品、ボディ化粧品等、従来化粧品に用いるものであればいずれの形態でも広く適用可能である。
【実施例0044】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0045】
(1)粘度
調製した水中油型乳化化粧料を30℃で30分以上保持した後の粘度を、B型粘度計を用いて、ローターNo.3、回転数12rpm、1分間の条件で測定した。
【0046】
(2)安定性
室温で1ヶ月保管した後の外観(透明性)を目視で観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
A:析出やクリーミングがみられず、外観に変化は無い。
B:析出やクリーミングが若干認められたが、少し振ると容易に均一になり、品質に問題はない。
C:析出やクリーミングがみられ、品質に問題がある。
【0047】
(3)使用性
化粧品評価専門パネル20名に実施例及び比較例の化粧料を使用してもらい、使用性(ぬるつきの無さ・べたつきの無さ)を以下の基準に従って5段階評価し、全パネルの評点の平均点を以下の3段階の判断基準に従って判定した。
(評価基準)
評価結果 : 評点
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
(判定基準)
判定 : 評点の平均点
A : 4以上
B : 3以上~4未満
C : 3未満
【0048】
<実施例1~10及び比較例1~9>
下記の表1~表3に記載の組成を有する水中油型乳化化粧料を調製し、上記評価方法に従って粘度、安定性及び使用性を評価した。
【0049】
【表1】
*1 KF-96A-6T(信越化学工業株式会社製)
【0050】
【表2】
*1 KF-96A-6T(信越化学工業株式会社製)
【0051】
【表3】
*1 KF-96A-6T(信越化学工業株式会社製)
【0052】
上記表1~表3に示されるように、(A)POE(6)ジステアリン酸、(B)POE(10)ベヘニルエーテル、(D)カルボマー又はポリアクリレート-1、(E)サクシノグリカン、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースを含み、(E)成分の合計配合量が0.06質量%以上である場合に、塩型薬剤である(C)4-メトキシサリチル酸カリウム塩やトラネキサム酸を配合しても、十分な粘度を有し、安定性に優れ、ぬるつきやべたつきの無い優れた使用性を実現することができた(実施例1~10)。
【0053】
一方、(D)水溶性ビニル系高分子化合物や(E)水溶性多糖類を配合しない場合又はその合計配合量が少なすぎる場合には粘度が不十分であり、安定性にも劣っていた(比較例1~6)。また、(D)水溶性ビニル系高分子化合物の代わりに化粧料で一般的に用いられる非ビニル系水溶性高分子であるPEG-14Mを配合した場合には、ゲルを維持できずにローション状となった(粘度測定せず)(比較例7)。さらに、(D)水溶性ビニル系高分子化合物や(E)水溶性多糖類の代わりに親水性増粘剤として化粧料に広く用いられている(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを配合しても十分な粘度が得られず、安定性にも劣っていた(比較例8~9)。