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特開2022-176909DC金属同時スパッタリングによるLaCoO3薄膜堆積
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  • 特開-DC金属同時スパッタリングによるLaCoO3薄膜堆積 図1
  • 特開-DC金属同時スパッタリングによるLaCoO3薄膜堆積 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176909
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】DC金属同時スパッタリングによるLaCoO3薄膜堆積
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/08 20060101AFI20221122BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20221122BHJP
   H01L 29/24 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C23C14/08 K
C23C14/34 Z
H01L29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022078559
(22)【出願日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】17/318,519
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ラジャシュリー・バッタチャリア
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント・ガンビン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】さまざまな基板上に、絶縁体から金属への高い転移点を有し、比較的低コストで大規模生産に適した、滑らかで高品質の結晶性薄LaCoO膜の製造方法を提供する。
【解決手段】基板38上にLaCoO膜60を製造するための方法であって、基板38を真空チャンバ32内に配置するステップと、真空チャンバ32内にコバルトターゲット34を配置するステップと、真空チャンバ32内にランタンターゲット36を配置するステップと、真空チャンバ32内に酸素46を供給するステップと、コバルト原子56およびランタン原子58が酸素と相互作用して基板38上にLaCoO膜60を形成するように、コバルトターゲット34からコバルト原子56をスパッタリングし、ランタンターゲット36からランタン原子58をスパッタリングするステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にLaCoO膜を製造するための方法であって、
前記基板を真空チャンバ内に配置するステップと、
前記真空チャンバ内にコバルトターゲットを配置するステップと、
前記真空チャンバ内にランタンターゲットを配置するステップと、
前記真空チャンバ内に酸素を供給するステップと、
コバルト原子およびランタン原子が前記酸素と相互作用して前記基板上に前記LaCoO膜を形成するように、前記コバルトターゲットから前記コバルト原子をスパッタリングし、前記ランタンターゲットから前記ランタン原子をスパッタリングするステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記基板を加熱するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板を加熱するステップは、前記基板を400℃から700℃の間の温度に加熱するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板を回転させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コバルト原子およびランタン原子をスパッタリングするステップは、前記チャンバ内で不活性ガスプラズマを生成するステップと、ターゲットにプラズマイオンが衝突するように前記コバルトターゲットおよび前記ランタンターゲットにバイアスをかけるステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性ガスがアルゴンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板が電力リミッタの一部である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基板上にLaCoO膜を製造するためのシステムであって、
前記基板を真空チャンバ内に配置するための手段と、
前記真空チャンバ内にコバルトターゲットを配置するための手段と、
前記真空チャンバ内にランタンターゲットを配置するための手段と、
前記真空チャンバ内に酸素を供給するための手段と、
コバルト原子およびランタン原子が前記酸素と相互作用して前記基板上に前記LaCoO膜を形成するように、前記コバルトターゲットから前記コバルト原子をスパッタリングし、前記ランタンターゲットから前記ランタン原子をスパッタリングするための手段と、
を備える、システム。
【請求項9】
前記基板を加熱するための手段をさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記基板を加熱するための前記手段が、前記基板を400℃から700℃の間の温度に加熱する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記基板を回転させるための手段をさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記コバルト原子およびランタン原子をスパッタリングするための手段が、前記チャンバ内に不活性ガスプラズマを生成し、ターゲットにプラズマイオンが衝突するように前記コバルトターゲットおよび前記ランタンターゲットにバイアスをかける、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記不活性ガスがアルゴンである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記基板が電力リミッタの一部である、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
電子デバイスに適用される電力を制限するための電力リミッタであって、
前記電子デバイスに送信される入力信号を受信する導波路と、
前記導波路に形成された少なくとも1つのLaCoO膜と、
前記導波路の反対側の前記少なくとも1つのLaCoO膜に形成された少なくとも1つの接地要素であって、前記少なくとも1つのLaCoO膜の熱レベルが所定の閾値を下回る場合、前記少なくとも1つのLaCoO膜は絶縁体であり、前記入力信号は、前記導波路を通って前記電子デバイス12に直接伝播し、前記少なくとも1つのLaCoO膜の前記熱レベルが前記閾値に達した場合、前記少なくとも1つのLaCoO膜が導電性になり、前記入力信号が前記少なくとも1つのLaCoO膜を通って前記少なくとも1つの接地要素に分流される、少なくとも1つの接地要素と、
を備える、電力リミッタ。
【請求項16】
前記少なくとも1つのLaCoO膜は、前記導波路の一方の側に形成された第1のLaCoO膜と、前記導波路の反対側に形成された第2のLaCoO膜であり、前記少なくとも1つの接地要素は、前記第1のLaCoO膜に形成された第1の接地要素と、前記第2のLaCoO膜に形成された第2の接地要素である、請求項15に記載の電力リミッタ。
【請求項17】
前記少なくとも1つのLaCoO膜が40~200nmの厚さを有する、請求項15に記載の電力リミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、概して、基板上にLaCoO膜を製造するための方法に関し、より具体的には、高真空スパッタリングチャンバ内で酸素と反応してLaCoO膜を生成する2つの金属ターゲットからコバルト原子とランタン原子とをスパッタリングすることを含む基板上にLaCoO膜を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]受信機のフロントエンド回路やその他のデバイスにおいて、低ノイズアンプ(low noise amplifier:LNA)などの敏感な電気コンポーネントを高電力RF信号から保護するために、RF電力リミッタがよく使用される。従来、これらの電力リミッタは、p-i-nダイオードやMESFETデバイスなどの半導体コンポーネントを使用するソリッド・ステート・デバイスであり、特定の周波数範囲で入力電力を制限する。ただし、RFコンポーネントとシステムの電力と敏捷性の進歩に伴い、低消費電力、より高い入射電力制御、および高い信頼性という形での追加の課題が、従来のRF電力リミッタに課せられている。これらの課題は、電力の増加に伴って増大する特定の温度変化に応答して、絶縁体から金属への相転移(insulator-to-metal phase transition:IMT)を採用することが多い新しい電力制限材料の調査につながった。電流の増加、すなわち温度の上昇に応答して、IMT材料は絶縁状態から金属状態に移行し、所与の閾値を超える電力を分流する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]電力制限の目的でIMTの挙動を示すことができるIMT材料の1つは、二酸化バナジウム(VO)である。VOは、分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy:MBE)、パルスレーザ堆積、直流および高周波スパッタリングなど、さまざまな方法で合成されている。VOは、材料が約340ケルビンに加熱されると、抵抗が急激に低下する。ただし、この温度は一般に、多くのシステムの実際のデバイス動作には低すぎる。
【0004】
[0004]IMTの挙動を示すことができるもう1つのIMT材料は、酸化ランタンコバルト(LaCoO)である。LaCoOは、VOなどの他のIMT材料よりも高温においてIMTを有する。より具体的には、LaCoOは、電子スピン状態遷移または軌道融解メカニズムなどの非構造相転移の結果として、約500ケルビンで抵抗率の大幅な低下を示し、温度上昇の関数として電気抵抗率が急速に低下する。材料に関する研究の大部分が、ガスセンサおよび湿度センサの触媒作用への応用にあるため、文献に見られるLaCoOの典型的な合成方法は、多孔質ボリュームの生成に焦点を当てている。LaCoOの薄膜を堆積するためのさまざまなプロセスが文献で報告されており、これらは通常、MBE、イオンビームスパッタリング、化学蒸着、パルスレーザ堆積などの触媒用途に焦点を当てている。MBEは、高品質で滑らかな結晶性膜を製造することが知られている。ただし、これは時間がかかり、困難で、費用のかかるプロセスである。文献によると、LaCoOの膜は、金属ターゲットのDC同時スパッタリングを使用して製造できるが、これらのプロセスでは、膜を適切に酸素化および結晶化するために、堆積後の焼成ステップが必要であった。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】LaCoO膜を使用する電力リミッタの概略ブロック図である。
図2】LaCoO膜を製造するためのスパッタリングシステムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0007]基板上にLaCoO膜を製造するための方法に向けられた本開示の実施形態に関する以下の議論は、本質的に単なる例示であり、本開示またはその用途もしくは使用を制限することを決して意図するものではない。
【0007】
[0008]本開示は、温度が閾値を上回って上昇するときに抵抗が急速に低下するLaCoO膜を使用するRFデバイスを製造することを提案している。課題は、さまざまな基板上に、絶縁体から金属への高い転移点を有し、比較的低コストで大規模生産に適した、滑らかで高品質の結晶性薄LaCoO膜を製造することである。また、簡単にするため、および高温焼成での損傷から下にあるデバイス層を保護するために、1つのステップのみで構成する必要がある。このプロセスでは、LaCoO膜をさまざまな誘電特性を有するさまざまな基板に堆積させて、膜特性とデバイスの性能を最適化することができる。
【0008】
[0009]上記のようなRFデバイスを提供するために、本開示は、大規模なウェーハスケール材料を迅速に製造することができる比較的安価な原料を使用してLaCoOを合成するための単一ステップDCスパッタリングプロセスを説明する。事前に焼結されたLaCoOのセラミックターゲットを使用するのではなく、提案されたプロセスは、ランタンとコバルトのより安価な金属ターゲットを利用する。このプロセスでは、加熱された基板を、活性酸素/アルゴン雰囲気において金属ターゲットの堆積と組み合わせて使用する。これらの金属は、基板に向かって材料を放出する直流マグネトロンガンによって気化される。これらの条件下で、金属は反応して基板表面に直接結晶化し、LaCoO膜を形成する。したがって、膜を完全に結晶化または酸素化するために二次的な処理ステップを必要としない。提案されたプロセスの追加の利点は、独立して制御された金属ターゲットを使用することにより、膜の組成の調整が可能になり、膜特性の最適化をより細かく制御できることである。このプロセスで基板温度を変化させる機能により、700°Cで成長した高結晶性膜と低温で成長したアモルファス膜の利点のバランスをとることもできる。さらに、滑らかで高品質の膜を製造することが可能である一方、スパッタリングは、大規模なウェーハスケールの合成に使用される低コストで高速な製造ツールと見なされている。
【0009】
[0010]図1は、LNAなどの敏感な電気デバイス12に送達できる電力の量を制限する電力リミッタ10の概略ブロック図である。入力信号は、信号をデバイス12に送達する導波路14に提供される。LaCoO膜16は、導波路14の一方の側に形成され、接地要素18に結合され、LaCoO膜20は、導波路14の反対側に形成され、接地要素22に結合される。入力信号の電力が増加すると、膜16および20においてより多くの熱が発生する。膜16および20の熱レベルが特定の閾値を下回る場合、膜16および20は絶縁体であり、信号は導波路14を通ってデバイス12に直接伝播する。膜16および20の熱レベルが閾値に達すると、膜16および20は金属に転移して導電性になり、信号の電力は膜16および20を介して接地要素18および22に分流され、最小の電力がデバイス12に伝達される。膜16および20の熱レベルが閾値を下回ると、膜16および20は転移して絶縁体に戻る。
【0010】
[0011]図2は、真空チャンバ32を含むスパッタシステム30の概略ブロック図である。コバルト源ターゲット34およびランタン源ターゲット36は、基板38に対してチャンバ32と一緒に配置され、基板38は、炭化ケイ素、サファイア、溶融シリカ、シリコン、アルミン酸ランタンなどの適切な材料の任意の基板、またはGaNウェーハなどの完全に製造されたデバイスを表すことを意図している。用途に応じて、基板38は、スパッタリングプロセスを強化するために、ヒータ40によって所望の温度、例えば、400℃から700℃の間で加熱され得る。供給源44からのアルゴンまたは他の適切な不活性ガスおよび供給源46からの酸素がチャンバ32に放出され、これにより、チャンバ32内の圧力が、例えば、5mtorrに増加する。
【0011】
[0012]DC供給源52および54によって、ターゲット34および36にそれぞれ負のバイアス電位が印加される。磁石(図示せず)を使用して、ターゲット34および36の表面近くに電子の雲をトラップすることによってイオン化頻度を増加させ、これにより、アルゴンガスの衝突およびイオン化の可能性が増加する。正のアルゴンイオンがターゲット34および36に衝突し、ターゲット34からコバルト原子56を放出し、ターゲット36からランタン原子58を放出する。原子56および58は、基板38に引き寄せられ、そこで酸素と直接反応して、基板38上に結晶化されたLaCoO膜60を生成する。回転装置62は、膜60が均一な濃度のコバルトおよびランタンを有するように、基板38を回転させる。スパッタリングプロセスは、膜60の厚さが所望の厚さ、例えば、40~200nmに達するまで続けられる。チャンバ32内の酸素の割合は、ターゲット34および36の有意な酸化を回避するように注意深く調整される。
【0012】
[0013]前述の議論は、本開示の単なる例示的な実施形態を開示および説明する。当業者は、そのような議論ならびに添付の図面および特許請求の範囲から、以下の特許請求の範囲で定義される本開示の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、修正および変形を行うことができることを容易に認識するであろう。
図1
図2
【外国語明細書】