(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176912
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】耐候性試験装置、及び耐候性試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079381
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2021083023
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】栃木 華恵
(72)【発明者】
【氏名】柏女 恵
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 健二
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA03
2G050BA09
2G050CA03
2G050EA01
2G050EA04
(57)【要約】
【課題】耐候性試験を促進しつつ、安全性を向上することが可能な耐候性試験装置を提供する。
【解決手段】耐候性試験装置1は、加圧容器2と、試料保持部3と、光源4aを有する光照射装置4とを備える。加圧容器2は、光Lを透過可能な石英ガラス板16を有する。試料保持部3は、加圧容器2内に配置され、試料Sを保持可能である。この耐候性試験装置1では、光照射装置4は、加圧容器2の外に配置され、光源4aからの光Lを石英ガラス板16を介して試料Sに照射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過可能な光透過部を有する加圧容器と、
前記加圧容器内に配置され、試料を保持可能な試料保持部と、
光源を有する光照射装置と、を備え、
前記光照射装置は、前記加圧容器の外に配置され、前記光源からの光を前記光透過部を介して前記試料に照射する、耐候性試験装置。
【請求項2】
前記光照射装置は、前記光源からの光を平行光にする光学系を更に有する、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項3】
前記光学系は、少なくとも1つのコリメートレンズを含む、
請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項4】
前記光源は、15mW/cm2以上60mW/cm2以下の光量を有するキセノンランプである、
請求項1又は2に記載の耐候性試験装置。
【請求項5】
前記光源からの光は、少なくとも紫外線を含む、
請求項1又は2に記載の耐候性試験装置。
【請求項6】
前記光照射装置は、前記光源からの光から波長290nm以下の紫外線及び赤外線の少なくとも一方を取り除く光学フィルタを更に有する、
請求項1又は2に記載の耐候性試験装置。
【請求項7】
前記加圧容器内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入部と、
前記加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、
前記気体を加湿する加湿部と、
前記加圧容器内において前記試料に液体を噴霧する噴霧部と、
前記試料の温度を調整する温度調整部と、
前記気体の導入量、前記気圧、前記気体の湿度、及び前記試料の温度の少なくとも1つを検出する検出部と、
前記検出部による検出値に基づいて、前記ガス導入部、前記圧力調整部、前記加湿部、前記噴霧部、及び、前記温度調整部の少なくとも1つを制御する制御部と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の耐候性試験装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ガス導入部から導入される前記酸素ガスの前記気体全体に対する濃度が20%以上となるように、前記ガス導入部を制御する、
請求項7に記載の耐候性試験装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ガス導入部から導入される前記酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、前記ガス導入部及び前記圧力調整部の少なくとも一方を制御する、
請求項7に記載の耐候性試験装置。
【請求項10】
前記加圧容器内に気体を導入するガス導入部と、
前記加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、
前記加圧容器内に液体を供給する液体供給部と、
前記加圧容器に接続される排液収容部と、
前記加圧容器と前記排液収容部との間に設けられる開閉可能な流入バルブと、
前記排液収容部内の前記液体を排出する開閉可能な排出バルブと、
を更に備える、請求項1又は2に記載の耐候性試験装置。
【請求項11】
前記排液収容部の総容積は、前記加圧容器の容積以下である、
請求項10に記載の耐候性試験装置。
【請求項12】
前記加圧容器内に気体を導入するガス導入部と、
前記加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、
前記加圧容器内の圧力を開放する圧力開放弁と、
を更に備え、
前記圧力開放弁は、前記加圧容器内の気圧が前記圧力調整部によって調整可能な気圧を超えた場合に圧力を開放し、
前記圧力開放弁から開放される前記気体の最大流量は、前記圧力調整部から流れる前記気体の最大流量よりも多い、
請求項1又は2に記載の耐候性試験装置。
【請求項13】
前記加圧容器内の圧力を一気に開放するシール弁を更に備え、
前記シール弁は、前記加圧容器内の気圧が前記圧力開放弁の開放圧力値よりも高い場合に圧力を開放する、
請求項12に記載の耐候性試験装置。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の耐候性試験装置を用いて前記試料の耐候性を評価する試験方法であって、
前記試料保持部に前記試料を保持させる工程と、
前記光照射装置からの前記光を前記試料に照射する工程と、
を備える耐候性試験方法。
【請求項15】
前記試料に照射される前記光が紫外光を含む平行光である、
請求項14に記載の耐候性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性試験装置、及び耐候性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料や無機材料が太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う場合、実環境下で試験を行うことが最良である。しかし、実環境下での試験では、試験結果を得るまでに長期間を要してしまうことがある。そこで、太陽光よりも高光量の光源を有する耐候促進試験装置を用いて耐候性試験を行い、各種材料の耐候性の試験結果を早期に取得することが行われている。このような耐候性試験装置として、サンシャインウェザオメーター(SWOM)、メタルウェザーメーター(MW)、スーパーUV(SUV)、キセノンウェザーメーター(例えば特許文献1,2を参照)などが知られている。
【0003】
サンシャインウェザオメーターは、カーボンアークからなる光源を備え、紫外部から可視光部の波長を含む光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧することにより、短期間で耐候性試験を実現する装置である。この装置では、ある程度の試験期間の短縮を行うことができる。また、メタルウェザーメーター及びスーパーUVは、SWOMよりも強力な光源であるメタルハライドランプを備え、紫外部から可視光部までの高光量の光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧する装置である。これらの装置では、高光量の光源を用いているため、サンシャインウェザオメーターよりも短期間で耐候性試験を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1-21891号公報
【特許文献2】特公平1-28897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の耐候性試験装置では、耐候性試験を促進するため、高光量の光源を用いることに加えて、試料を配置する装置容器内の気圧(例えば酸素分圧)などを大気圧よりも高くすることが行われている。この場合、試験装置内に設置される光源ランプを保護する保護装置が高圧環境等により破損したりすると、光源ランプに水噴霧装置からの水が付着して短絡を引き起こしたり、光源ランプの高温部に付着した水が蒸発して容器内の気圧を急激に上昇させてしまったりする虞がある。このような点は容器の耐圧性を向上したり、保護装置の対破損性を高めたりすることである程度、防止可能であるものの、耐候性試験を促進しつつ、より安全性の高い耐候性試験装置の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、耐候性試験を促進しつつ、安全性を向上することが可能な耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、その一側面として、加圧容器と、試料保持部と、光源を有する光照射装置とを備える耐候性試験装置に関する。加圧容器は、光を透過可能な光透過部を有する。試料保持部は、加圧容器内に配置され、試料を保持可能である。この耐候性試験装置では、光照射装置は、加圧容器の外に配置され、光源からの光を光透過部を介して試料に照射する。
【0008】
この耐候性試験装置(1)では、光源を有する光照射装置が加圧容器の外に配置されており、加圧容器の外から加圧容器内の試料に対して光を照射するように構成されている。この場合、光照射装置が加圧容器の外にあるため、光照射装置が高圧雰囲気等により破損することがそもそもなく、また仮に何等かの原因で破損しても、加圧容器内の圧力を急激に高めるようなことがなく、加圧容器への影響が低減されている。これにより、この耐候性試験装置によれば、加圧容器を用いることで耐候性試験を促進しつつ、安全性を向上することが可能となる。また、この耐候性試験装置によれば、光照射装置が加圧容器の外に配置されるため、安全性の基準を高くする必要のある加圧容器を必要以上に大きくする必要がなくなり、より小型の加圧容器を用いた装置とすることができる。この点でも安全性を向上することができる。更に、光照射装置を加圧容器の外に配置することにより、例えば、照射する光の光量を高くしたり、照射する光の波長を選別しやすくしたり、又は、試料に照射する光の照度ムラを低減したり等の光照射装置における光学設計を行いやすくなるため、実環境下(特に光学的な面)での試験に近づけたり、又は実環境下に近い状態のまま試験を促進したりすることができ、実環境下での試験結果を再現しつつ耐候性試験を促進することが可能となる。
【0009】
(2) 上記の耐候性試験装置(1)において、光照射装置は、光源からの光を平行光にする光学系を有することが好ましい。この場合、試料に照射される光がより均一となり、試料の一部に強い光が照射されるといったことがなくなり、耐候性試験を安定して行うことが可能となる。また、複数の試料を同時に試験する場合には、照射される光が平行光であることにより、各試料に照射される光の照度ムラがなくなるため、耐候性試験の最中(例えば3ヶ月~6カ月の間)、照度ムラをならすための試料の配置換え等の作業を行わなくてよくなる。これにより、より正確な耐候性試験結果をより少ない作業量で得ることが可能となる。この場合において、上記の光学系は、少なくとも1つのコリメートレンズを含んで構成されてもよい。この耐候性試験装置では、上述したように、光照射装置が加圧容器の外に配置されており、平行光を生成するための光学系の大きさの制限もそれほどないため、より最適な光学系を用いることが可能となる。
【0010】
(3) 上記の耐候性試験装置(1)又は(2)において、光源は、15mW/cm2以上60mW/cm2以下の光量を有するキセノンランプであることが好ましい。この場合、高光量の光を試料に照射することができるため、耐候性試験を容易に促進することが可能となる。また、キセノン(Xe)ランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。即ち、上述した光源を用いることにより、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。なお、ここで用いる「光量(mW/cm2)」は、光源から照射される光の波長365nmでの光量(照度)を意味しており、例えば、紫外線積算光量計(ウシオ電機株式会社製UIT-250 受光器UVD-S365)といった方法で測定した値である。
【0011】
(4) 上記の耐候性試験装置(1)~(3)の何れかにおいて、光源からの光は、少なくとも紫外線を含むことが好ましい。この場合、太陽光に含まれていて材料等の劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0012】
(5) 上記の耐候性試験装置(1)~(4)の何れかにおいて、光照射装置は、光源からの光から波長290nm以下の紫外線及び赤外線の少なくとも一方を取り除く光学フィルタを更に有してもよい。太陽光に含まれる紫外線のうち波長290nm以下の紫外線は微量であるため、290nm以下の紫外性を取り除く光学フィルタを用いることにより、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。また、試料に照射される光に赤外線が含まれる場合、赤外線により試料が加熱されることになるが、制御しやすい別途の温度調整装置を設ける場合等、赤外線を取り除く光学フィルタを用いることにより、赤外線の影響を低減した試験が可能となり、より希望した試験条件での耐候性試験を行うことが可能となる。
【0013】
(6) 上記の耐候性試験装置(1)~(5)の何れかは、加圧容器内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入部と、加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、気体を加湿する加湿部と、加圧容器内において試料に液体を噴霧する噴霧部と、試料の温度を調整する温度調整部と、気体の導入量、気圧、気体の湿度、及び試料の温度の少なくとも1つを検出する検出部と、検出部による検出値に基づいて、ガス導入部、圧力調整部、加湿部、噴霧部、及び、温度調整部の少なくとも1つを制御する制御部と、を更に備えてもよい。この場合、熱、水(雨)、酸素による試料の劣化を評価する耐候性試験をより具体的に行うことができ、また加圧することによりその耐候性試験を促進することが可能となる。即ち、上記の構成によれば、酸素による試料の劣化が促進され、光照射による劣化と、酸素、水(雨)、温度等による劣化とをバランスよく進行させることができ、実環境下で長時間かけて行った耐候性試験と同様の試験結果をより短時間で再現することが可能となる。
【0014】
(7) 上記の耐候性試験装置(6)において、制御部は、ガス導入部から導入される酸素ガスの気体全体に対する濃度が20%以上となるように、ガス導入部を制御してもよい。この場合、より実環境下に近い耐候性試験の結果を得ることができる。
【0015】
(8) 上記の耐候性試験装置(6)又は(7)において、制御部は、ガス導入部から導入される酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、ガス導入部及び圧力調整部の少なくとも一方を制御してもよい。この場合、酸素による劣化を更に促進させて、実環境下に近い耐候性試験を更に促進することが可能となる。なお、ここで用いる「酸素分圧」は、大気圧を0MPaとした場合の装置内の酸素分圧の値である。
【0016】
(9) 上記の耐候性試験装置(1)~(8)の何れかは、加圧容器内に気体を導入するガス導入部と、加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、加圧容器内に液体を供給する液体供給部と、加圧容器に接続される排液収容部と、加圧容器と排液収容部との間に設けられる開閉可能な流入バルブと、排液収容部内の液体を排出する開閉可能な排出バルブとを更に備えてもよい。この構成によれば、流入バルブ及び排出バルブの開閉動作を調整することにより、加圧容器内を加圧して耐候性試験を行う際、加圧容器内の圧力変化を抑制しつつ、加圧容器内に供給された液体のうち不要となった液体を容器外に排出することが可能である。この態様において、排液収容部の総容積は、加圧容器の容積以下であることが好ましい。この場合、液体排出の際の加圧容器内の圧力変化をより確実に抑制することができる。
【0017】
(10) 上記の耐候性試験装置(1)~(9)の何れかは、加圧容器内に気体を導入するガス導入部と、加圧容器内の気圧を調整する圧力調整部と、加圧容器内の圧力を開放する圧力開放弁とを更に備えてもよい。この圧力開放弁は、加圧容器内の気圧が圧力調整部によって調整可能な気圧を超えた場合に圧力を開放する。また、圧力開放弁から開放される気体の最大流量は、圧力調整部から流れる気体の最大流量よりも多くてもよい。この構成によれば、何等かの理由により加圧容器に過剰な圧力がかかったとしても圧力開放弁を開放することにより、加圧容器の破損や測定機器の故障等を防止することが可能である。これにより、更に安全性を向上させることができる。また、この態様において、耐候性試験装置は、加圧容器内の圧力を一気に開放するシール弁を更に備えてもよい。シール弁は、加圧容器内の気圧が圧力開放弁の開放圧力値よりも高い場合に圧力を開放する。この構成によれば、圧力開放を2段に備えることになり、加圧容器の破損や測定機器の故障等をより確実に防止することが可能となる。
【0018】
(11) 本発明は、別の側面として、耐候性試験方法に関する。この耐候性試験方法は、上述した(1)~(10)の何れかの構成を有する耐候性試験装置を用いて試料の耐候性を評価する試験方法である。この耐候性試験方法は、試料保持部に試料を保持させる工程と、光照射装置からの光を試料に照射する工程と、を備える。このような耐候性試験方法によれば、上述したように、加圧容器を用いることで耐候性試験を促進しつつ、安全性を向上することが可能となる。また、この耐候性試験方法によれば、例えば、照射する光の光量を高くしたり、照射する光の波長を選別しやすくしたり、又は、試料に照射する光の照度ムラを低減したり等の光学設計を行いやすくなるため、実環境下(特に光学的な面)での試験に近づけたり、又は実環境下に近い状態を促進したりして、実環境下での試験結果を再現しつつ耐候性試験を促進することが可能となる。
【0019】
(12) 上記の耐候性試験方法(11)において、試料に照射される光が紫外光を含む平行光であることが好ましい。この場合、上述したように、試料に照射される光がより均一となり、耐候性試験を安定して行うことが可能となる。また、複数の試料を同時に試験する場合、各試料に照射される光の照度ムラがなくなるため、耐候性試験の最中、照度ムラをならすための試料の配置換え等の作業を行わなくてよくなる。これにより、より正確な耐候性試験結果をより少ない作業量で得ることが可能となる。更に、この試験方法では、照射光が紫外光を含むことから、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐候性試験を促進しつつ、安全性を向上することが可能な耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第4実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す耐候性試験の変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例1における照度ムラを示す図である。
【
図7】
図7は、実施例1における照度ムラを示す図である。
【
図8】
図8は、実施例2等の試験に用いる試料(化粧シート)の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例2等と比較例2等との試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る耐候性試験装置及び耐候性試験方法について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、耐候性試験装置1は、加圧容器2、試料保持部3、光照射装置4、ガス導入管5(ガス導入部)、加湿器6(加湿部)、ガス排気管7、圧力調整器8(圧力調整部)、水噴霧管9(噴霧部、液体供給部)、水流量調整器10、排水管11、排水弁12、温度調整器13(温度調整部)、検出部14、及び、制御部15を備えている。耐候性試験装置1では、加圧容器2内の試料保持部3上に試料Sを保持させ、ガス導入管5から酸素や窒素等のガスを導入しつつ圧力調整器8で加圧容器2内を所定の内圧となるように調整する。そして、その加圧状態で、太陽光等を模した光照射装置4からの光Lを試料Sに照射しつつ、水噴霧管9の先端から水を試料Sに噴霧し、更に、温度調整器13により試料Sを加熱する。温度調整器13は、必要に応じて試料Sを冷却してもよい。ガス導入管5から導入される酸素等のガスは加湿器6により加湿されていてもよい。このような環境に試料Sを所定期間置いておき、試料Sが太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う。なお、耐候性試験装置1は、上述した各構成が収納される筐体を更に備え、光照射装置4から漏洩する紫外線や高光量の光が外に漏れないように構成されていてもよい。
【0024】
加圧容器2は、加圧可能な密閉容器であり、試料保持部3等を収納する収納部2aと、収納部2aの開口を塞ぐ蓋2bとを有している。加圧容器2は、例えば上部の蓋2bが取外し可能となっており、試料Sを設置する際に蓋2bを収納部2aから取り外して使用する。試料Sを設置した後、蓋2bは、内部が気密状態となるように収納部2aに取り付けられ、例えばそれぞれの円周部分をボルト等によって締めて固定される。加圧容器2の材料は、容器内の圧力に対する耐圧性を有するものであれば、各種の材料を用いることができるが、例えば、SUS、アルミニウム合金、鉄、チタン合金、タングステン合金などから構成することができる。
【0025】
収納部2aには、ガス導入管5、ガス排気管7、水噴霧管9、排水管11が接続されており、各管の先端が収納部2aの内部に位置するように構成されている。これにより、ガス導入管5から加圧容器2内に所定の試験ガス(酸素等)を導入できると共に、ガス排気管7から不要なガスを排出可能となり、また、水噴霧管9から試料Sに水を噴霧することができると共に、排水管11から不要な水を排出可能となる。
図1に示す装置の例では、蓋2bを取り外す構成であるため、各種の管を収納部2aにまとめて接続しているが、これらの管の一部を蓋2bに接続してもよい。
【0026】
蓋2bの中央の試料保持部3(試料S)に対向する領域には、開口2cが設けられている。この開口2cには、石英ガラス板16(光透過部)が気密に嵌め込まれている。石英ガラス板16は、試料保持部3に対向するように位置し、光照射装置4から照射される光Lを減衰させることなく透過させて試料Sに光Lがそのまま照射されるように構成されている。石英ガラス板16は、光照射装置4から照射される光L(特に紫外線)を透過可能であれば他の材料からなる光透過部材であってもよい。なお、石英ガラス板16は、加圧容器2の一部を構成することから、加圧容器2内の雰囲気や圧力を保つ構造となっている。
【0027】
試料保持部3は、耐候性試験に用いられる試料Sを保持する部材である。試料保持部3は、例えば板状部材3aとそれを支持する支持部材3bとから構成され、試料Sは板状部材3aの上に配置されて、アルミテープなどで貼り付けられることにより保持される。試料保持部3の板状部材3aは、水平方向になるように支持部材3bに取り付けられてもよいが、水噴霧管9から噴霧される水が試料S上に滞留しないように、水平方向に対して傾斜していてもよい。また、試料保持部3には、温度調整器13が内蔵されていてもよい。温度調整器13は、ヒータ及び冷却用流路を内蔵して構成することができ、熱電対の値をフィードバックすることにより、試料Sを加熱したり又は冷却したりして、試料Sの温度を調整する。温度調整器13により、試料保持部3に保持される試料Sを所定の温度に加熱したり冷却したりして耐候性試験を行うことが可能となる。温度調整器13による試料Sの加熱において、加熱温度は室温以上で且つ試料Sの分解温度以下であることが好ましい。分解温度以下の加熱であることにより、熱による劣化だけを先に促進させずに、光や酸素、湿度等による劣化とのバランスを調整できる。なお、温度調整器13の代わりに又は併用して、ガス導入管5から導入されるガスを加熱したり冷却したりするガス温度調整機構を設けてもよいし、加圧容器2に温度調整器を設けて容器自体を温度調整してもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0028】
光照射装置4は、光Lを照射する光源4aと、光源4aからの光から一部の波長の光を取り除く光学フィルタ4bとを有して構成される。光源4aは、少なくとも紫外線を含む光Lを照射する光源であればよく、例えば、耐候性試験に用いられるカーボンアーク、高圧水銀、キセノンランプ、メタルハライドなどを単独で又は2つの異なった種類の光源を組み合わせて使用することができる。光源4aは、LED光源やレーザー光源であってもよい。但し、光源4aとしては、太陽光の波長に最も近いキセノンを使用することが好ましい。また、光源4aから照射される光は、波長290nm~390nmの範囲の光を含んでいることが好ましく、少なくとも波長290nm~390nmの範囲の一部の光を含んでいることが好ましい。光源4aから照射される光のスペクトル形状は、太陽光のスペクトル形状に近いことが好ましく、290nmよりも短い波長の光は、含んでいてもよいが、光学フィルタ4bによりカットした方が好ましい。また、光源から照射される光Lにおいて、波長390nmよりも長い波長の光は、試料Sを劣化させる直接の要因とはならないものの、特に赤外部の波長の光は試料Sを加熱するなどの作用があるため、残してもよい。一方、試料Sの温度調整は上述した温度調整器13等で行うことから、光Lによる加熱の影響を排除するため、波長390nmより大きい赤外光を光学フィルタ4bでカットしてもよい。
【0029】
光照射装置4は、光源4aからの光Lを平行光として試料Sに照射するように構成されていることが好ましいが、これに限定されない。例えば、光源4aからの光Lがある程度、放射状に広がる構成であってもよい。この場合は、光照射装置4からの光Lの照度が試料Sにおいて均一になるように(複数の試料Sを試験する場合は各試料Sでの照度が同じになるように)、試料Sの配置等を考慮することが好ましい。また、光照射装置4から照射される光Lの光量は太陽光よりも高光量であればよく、例えば、光源4aから照射される光のうち波長365nmの光量において、15mW/cm2以上60mW/cm2以下であることが好ましい。なお、ここでいう「光量」は、波長365nmでの光量を測定する装置(例えば、ウシオ電機株式会社製のUIT-250 受光器UVD-S365)で測定した値であり、波長365nmを絶対値校正波長とした波長分布であり、例えば感度波長域310nm~390nmの幅の光量を検出した値である。
【0030】
ガス導入管5は、加圧容器2の外からのガスを加圧容器2内に導入するための管であり、加圧容器2内の雰囲気を変えたり、圧力を高めたりするための部材である。ガス導入管5から加圧容器2内に導入されるガスは、少なくとも圧力調整器8で設定された圧力以上の圧力で加圧容器2内に導入される。ガス導入管5から導入されるガスは、例えば、酸素ガス又は窒素ガス若しくは酸素ガスと窒素ガスとが混合したガスであってもよい。ガス導入管5には、マスフローコントローラ(不図示)を設けて、導入するガスの流量を調整するようにしてもよいし、二種以上のガスを導入する場合には、ガス混合器(不図示)を設けて、導入するガスの切替えや混合等を行ってもよい。
【0031】
加湿器6は、例えばガス導入管5に接続されており、加湿器6内の水をバブリングし、ガス導入管5により導入されるガスを加湿する装置である。加湿器6により、加圧容器2内の湿度が所定の範囲に設定される。なお、加湿器6と加圧容器2との間又は加圧容器2内に湿度計(不図示)を設けて、湿度計からの湿度情報に基づいて加湿器6による加湿を制御部15等により制御してもよい。
【0032】
ガス排気管7は、加圧容器2内のガスを排出するための管である。ガス排気管7には、圧力調整器8が取り付けられており、圧力調整器8により加圧容器2内の圧力が設定した圧力に保持される。圧力調整器8は、加圧容器2内の圧力が設定した圧力以上になったことが検出部14等により検出されると、制御部15の制御により、圧力調整器8内のバルブを開き、設定した圧力になるように圧力を調整する。
【0033】
水噴霧管9は、加圧容器2内に設置された試料Sに水を噴霧するための部材である。水噴霧管9は、加圧容器2の外から供給された水を水流量調整器10により流量を調整した後、加圧容器2内において試料Sに噴霧する。水流量調整器10は、水噴霧管9から試料Sに噴霧される水の量を調整する装置であり、必要な量に応じて水量を設定する。加圧容器2内の水噴霧管9の先端には、スプレーノズルが取り付けられており、このスプレーノズルにより水を試料Sの全体に噴霧(スプレー状、ミスト状、シャワー状)できるようになっている。水流量調整器10による調整で、このスプレーノズルから噴霧する水の勢いを調整することも可能である。水噴霧管9及び水流量調整器10による噴霧装置は、実環境下での雨を模した装置であり、噴霧する水は、純水、水道水、酸性雨を模したペーハー(pH)を調整した水、金属イオンを含んだ水、またはこれらを混合した水、または過酸化水素水等であってもよい。
【0034】
排水管11は、加圧容器2内において水噴霧管9から噴霧された水を加圧容器2の外に排出するための部材である。排水管11には、排水弁12が取り付けられており、排水弁を動作させることにより、不要な水を排出する。排水弁12は、耐候性試験中は通常閉じた状態であり、加圧容器2内の圧力や雰囲気(酸素ガス濃度等)を保つように制御されている。排水弁12は、水位センサ(不図示)や時間等によって所定の条件が満たされた場合、制御部15の制御により開かれて、これにより、加圧容器2内の不要な水等が容器の外に排出される。排水弁12は、水位センサによる条件が解消したり、所定の時間が経過すると、制御部15による制御で再び閉じられる。
【0035】
検出部14は、加圧容器2内の各種の状態を検出するセンサであり、例えば、湿度、温度(内部温度または試料温度)、圧力、ガス濃度、ガス流量、上述した水位等の何れか1つを検出する。検出部14は、検出した情報(検出値)を制御部15に出力する。
【0036】
制御部15は、耐候性試験装置1の動作全体を制御する装置であり、例えば、CPU等を備えたコンピュータから構成される。制御部15は、ガス導入管5のマスフローコントローラ、加湿器6、圧力調整器8、水流量調整器10、排水弁12、温度調整器13、及び、検出部14に配線等を介して電気的に接続されている。制御部15は、検出部14等から検出されるガスの導入流量、加圧容器2内の気圧や温度、湿度、水位等に基づいて、ガス導入管5のマスフローコントローラ、加湿器6、圧力調整器8、水流量調整器10、排水弁12及び温度調整器13の動作を制御する。制御部15による制御により、耐候性試験装置1内に配置される試料Sが所定の環境に配置される。また、制御部15は、加圧容器2の外に配置されている光照射装置4にも配線等を介して電気的に接続されており、照射する光Lの光量や照射時間や間隔等が制御されている。
【0037】
制御部15による制御では、具体的には、ガス導入管5のマスフローコントローラや圧力調整器8等を制御して、ガス導入管5から導入するガスの濃度や加圧容器2内の圧力を調整する。例えば、ガス導入管5から導入するガスを加圧して、当該ガスに含まれる酸素分圧を大気中の酸素分圧よりも大きくなるようにしてもよい。また、制御部15は、ガス導入管5によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度となるようにマスフローコントローラを制御してガスを混合してもよい。更に、制御部15は、ガス導入管5によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度に混合した後、圧縮ポンプなどで加圧容器2内に導入された混合ガスを加圧してもよい。なお、耐候性試験装置1による耐候性試験においては、導入される酸素ガスの濃度は大気中の酸素濃度よりも高濃度であることが好ましく、例えば、加圧容器2内の気体全体に対して、体積比で20%~100%であってもよい。
【0038】
また、制御部15による制御において、圧力調整器8による加圧容器2内の気圧はゲージ圧で1MPa以下となるように調整されることが好ましい。この時に加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として1%~100%のガスが好ましい。さらに好ましくはゲージ圧で0.5MPa以下が好ましい。この加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として4%~100%のガスが好ましい。このように気圧を抑えることにより、加圧容器2の容器厚さを低減することができ、その結果、加圧容器2や耐候性試験装置1の小型化や軽量化を図ることができる。
【0039】
また、制御部15は、加湿器6を制御して、実環境下における湿度による耐候性を再現するようにしてもよい。制御部15による湿度の調整は、検出部14によって検出される湿度の情報に基づいて加湿器6による導入ガスへの加湿を行うことにより行われる。耐候性試験装置1での加湿は、ある程度の加湿が行われればよいが、加圧容器2内の湿度が40%~100%であることが好ましく、湿度が50%~100%であることがより好ましい。制御部15は、このような湿度範囲となるように加湿器6を制御する。なお、促進耐候性試験を行う場合には、実環境下における太陽光に含まれる紫外線量により試料が劣化する際に必要な酸素量に対して、耐候性試験装置1の光源4aから照射される紫外線量の光量に応じて加圧容器2内の酸素濃度を選択することが好ましい。さらに、試料S内部への酸素の拡散を促進するために、加圧容器内の圧力を高めることにより、試料Sの劣化を促進することが可能となる。
【0040】
ここで、上述した構成の耐候性試験装置1を用いた耐候性試験方法について説明する。耐候性試験方法では、まず耐候性試験に用いる試料Sを準備する。試料Sは1つでもよいし、複数であってもよい。また、試料Sは、後述する化粧シートに限らず、各種の無機材料や有機材料からなる部材であってもよく、特に限定されない。このような試料Sが準備されると、加圧容器2の蓋2bを取り外して、試料保持部3に試料Sを貼り付ける等により保持させる。その後、蓋2bを収納部2aに気密に取り付けてボルト等により固定する。これにより試料Sが収納された加圧容器2が密閉状態となる。
【0041】
続いて、制御部15の制御により、圧力調整器8による圧力を設定すると共に、ガス導入管5から所定流量のガス(酸素ガスや窒素ガス)を加圧容器2内に導入する。導入するガスの濃度や圧力(分圧)が所定の値となるように制御される。また、制御部15による水流量調整器10の制御により水量が調整された水が水噴霧管9のノズルから試料Sに連続的に又は所定の周期で供給される。更に、制御部15の制御により、温度調整器13が温度調整を行い、試料Sを所定の温度(例えば80℃)に保温する。この状態で、耐候性試験装置1では、光照射装置4から所定の光Lが石英ガラス板16を介して加圧容器2内に照射され、試料Sが照射される。
【0042】
続いて、このような光の照射、加圧、温度調整、及び水の供給を続けた状態を継続的に行って試料Sの劣化状態を試験する。このような試験は、例えば、3ヶ月~6ヶ月間連続して行ってもよいし、6ヶ月以上又は1年以上継続してもよい。また、所定の加圧及び温度調整を行った状態で、光の照射、水の噴霧等を所定の周期で繰り返してもよい。このような試験状態は、実環境下での試験と同様となるように適宜、選択され得る。
【0043】
なお、実環境下での試料の劣化は光が要因となる劣化だけでなく、雨や大気中に含まれる水分(湿度)による試料の劣化もある。試料表面に雨や湿度等により付着した水は、試料表面から試料内部へと拡散していき加水分解等により試料が劣化する。そこで、耐候性試験装置1では、光源の光量と酸素の関係と同様に、水による劣化を促進させるために、水噴霧の量、加圧容器2内の湿度も選択することができるようになっている。さらに加圧容器2内を加圧することにより、試料内部への水の拡散を促進させている。また、光照射により劣化した試料と酸素との反応、水による加水分解反応をさらに促進させるために試料Sの温度を変更できるようにもなっている。この試料の温度は、光照射装置4からの光の光量に基づいて調整されるようであってもよい。耐候性試験装置1では、これら光量、酸素濃度、圧力、水、湿度、温度を適切に選択することにより、光による劣化と水による劣化とがバランスよく進行し、例えば光による影響のみを強く受けるといったような弊害を受けることなく、実環境下で長期間かけて行ったものと同様な耐候性試験結果を短期間で得ることが可能となる。
【0044】
以上、耐候性試験装置1では、光源4aを有する光照射装置4が加圧容器2の外に配置されており、加圧容器2の外から加圧容器2内の試料Sに対して光Lを照射するように構成されている。この場合、光照射装置4が加圧容器2の外にあるため、光照射装置4が高圧雰囲気等により破損することがそもそもなく、また仮に何等かの原因で破損しても、加圧容器2内の圧力を急激に高めるようなことがなく、加圧容器2への影響が低減されている。これにより、この耐候性試験装置1によれば、加圧容器2を用いることで耐候性試験を促進しつつ、安全性を向上することが可能となる。また、耐候性試験装置1によれば、光照射装置4が加圧容器2の外に配置されるため、安全性の基準を高くする必要のある加圧容器2を必要以上に大きくする必要がなくなり、より小型の加圧容器2を用いた装置とすることができる。この点でも安全性を向上することができる。更に、光照射装置4を加圧容器2の外に配置することにより、例えば、照射する光Lの光量を高くしたり、照射する光Lの波長を選別しやすくしたり、又は、試料Sに照射する光の照度ムラを低減したり等の光照射装置4における光学設計を行いやすくなるため、実環境下(特に光学的な面)での試験に近づけたり、又は実環境下に近い状態のまま試験を促進したりすることができ、実環境下での試験結果を再現しつつ耐候性試験を促進することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光源4aは、15mW/cm2以上60mW/cm2以下の光量を有するキセノンランプであることが好ましい。この場合、高光量の光Lを試料Sに照射することができるため、耐候性試験を容易に促進することが可能となる。また、キセノン(Xe)ランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。即ち、上述した光源を用いることにより、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光源4aからの光Lは、少なくとも紫外線を含むことが好ましい。この場合、太陽光に含まれていて材料等の劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光照射装置4は、光源4aからの光から波長290nm以下の紫外線及び赤外線の少なくとも一方を取り除く光学フィルタ4bを更に有してもよい。太陽光に含まれる紫外線のうち波長290nm以下の紫外線は微量であるため、290nm以下の紫外性を取り除く光学フィルタ4bを用いることにより、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。また、試料に照射される光に赤外線が含まれる場合、赤外線により試料が加熱されることになるが、制御しやすい別途の温度調整器13を設ける場合等、赤外線を取り除く光学フィルタを用いることにより、赤外線の影響を低減した試験が可能となり、より希望した試験条件での耐候性試験を行うことが可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1は、加圧容器2内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入管5と、加圧容器2内の気圧を調整する圧力調整器8と、気体を加湿する加湿器6と、加圧容器2内において試料Sに液体を噴霧する水噴霧管9と、試料Sの温度を調整する温度調整器13と、気体の導入量、気圧、気体の湿度、及び試料の温度の少なくとも1つを検出する検出部14と、検出部14による検出値に基づいて、ガス導入管5、圧力調整器8、加湿器6、水噴霧管9、及び、温度調整器13を制御する制御部15と、を更に備えている。この場合、熱、水(雨)、酸素による試料Sの劣化を評価する耐候性試験をより具体的に行うことができ、また加圧することによりその耐候性試験を促進することが可能となる。即ち、上記の構成によれば、酸素による試料Sの劣化が促進され、光照射による劣化と、酸素、水(雨)、温度等による劣化とをバランスよく進行させることができ、実環境下で長時間かけて行った耐候性試験と同様の試験結果をより短時間で再現することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部15は、ガス導入管5から導入される酸素ガスの気体全体に対する濃度が20%以上となるように、ガス導入管5のマスフローコントローラを制御してもよい。この場合、より実環境下に近い耐候性試験の結果を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部15は、ガス導入管5から導入される酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、ガス導入管5のマスフローコントローラ及び圧力調整器8を制御してもよい。この場合、酸素による劣化を更に促進させて、実環境下に近い耐候性試験を更に促進することが可能となる。なお、ここで用いる「酸素分圧」は、大気圧を0MPaとした場合の装置内の酸素分圧の値である。
【0051】
[第2実施形態]
次に
図2を参照して、本発明の第2実施形態に係る耐候性試験装置について説明する。
図2に示すように、第2実施形態に係る耐候性試験装置1Aは、第1実施形態と同様に、加圧容器2、試料保持部3、光照射装置4、ガス導入管5、加湿器6、ガス排気管7、圧力調整器8、水噴霧管9、水流量調整器10、排水管11、温度調整器、及び、制御部15を備えている。耐候性試験装置1Aは、更に、排水機構20、液面計22a,22b、湿度計24、及び、モニタ部26を備えている。
【0052】
排水機構20は、排水管11に取り付けられており、所定の動作を行うことにより、不要な水を排出する。排水機構20は、排水管11に接続された排水タンク20a(排液収容部)と、排水管11の、排水タンク20aの流入側に設けられた開閉可能な流入バルブ20bと、排水管11の、排水タンク20aの排出側に設けられた開閉可能な排出バルブ20cと、を備えている。流入バルブ20b及び排出バルブ20cは、耐候性試験中は通常閉じた状態であり、加圧容器2内の圧力や雰囲気(酸素ガス濃度等)を保つように制御されている。
【0053】
排水タンク20aの容積は、加圧容器2の容積以下に設定される。具体的には排水タンク20aの容積は、加圧容器2の容積に対して、1/6以下に設定することが好ましい。さらに好ましくは1/6以下、1/60以上である。なお、複数の排水タンク20aが設けられる場合、同時に開放され得る複数の排水タンク20aの総容積が加圧容器2の容積以下に設定されることが好ましい。
【0054】
流入バルブ20b及び排出バルブ20cは、制御部15により制御される。流入バルブ20bは、例えば、水噴霧管9による水の噴霧(液体の供給)が終了した場合に開状態に制御される。この際、排出バルブ20cは閉状態に制御される。そして、加圧容器2内の水が全て排水タンク20aに移動したら、流入バルブ20bは制御部15により閉状態に制御される。一方、排出バルブ20cは、加圧容器2内の水が排水タンク20aに移動し且つ流入バルブ20bが閉状態に制御された後に、制御部15により閉状態から開状態に制御され、排水タンク20aに貯液された水を排出する。
【0055】
加圧容器2及び排水タンク20aには、それぞれ容器(タンク)内の水位を検出する液面計として、加圧容器2の水位を検出する液面計22a及び排水タンク20aの水位を検出する液面計22bが設けられている。液面計22a、22bで検出した情報は、モニタ部26を介して制御部15に入力される。
【0056】
モニタ部26は、液面計22a,22b及び湿度計30の計測信号を入力し、これら計測信号を図示しない表示装置に表示すると共に、各計測信号を制御部15に送信する。耐候性試験装置1Aの利用者は、モニタ部26の表示を参照することによって、加圧容器2内及び排水タンク20a内の液面や、加圧容器2内の湿度を監視することができる。
【0057】
制御部15は、第1実施形態での制御に加え、さらに、以下の制御を行う。具体的には、制御部15は、水流量調整器10を制御して水噴霧管9により試料Sに対して水の噴霧を行ってから水流量調整器10の作動を停止した後、流入バルブ20bを開状態となるように制御する。これにより、加圧容器2内の水が全て排水タンク20aに移動する。制御部15は、その後、流入バルブ20bを閉状態となるように制御する。制御部15は、流入バルブ20bが閉状態に切り替わると、続いて排出バルブ20cが閉状態から開状態となるように制御する。これにより、排水タンク20aに貯液された水が全て排出される。制御部15は、その後、排出バルブ20cが閉状態となるように制御する。
【0058】
制御部15は、加圧容器2内に設けた液面計22aの検出値に基づいて、加圧容器2内の水が全て排水タンク20aに移動したことを検出してもよい。また、制御部15は、例えば排水タンク20a内に設けた液面計22bの検出値に基づいて、排水タンク20a内の水が全て排出されたことを検出してもよい。更に、制御部15は、液面計22a、22bの検出置に基づいて加圧容器2内の水位や排水タンク20a内の水位が規定値を超えると判定した場合には、異常と判定し、上述したように、流入バルブ20bや排出バルブ20cを制御して排水を行ってもよい。これにより、加圧容器2内又は排水タンク20a内の水を排出させることができる。また、この場合、制御部15は、水噴霧管17による水の供給を停止させる等といった、異常発生時の処理を行ってもよい。
【0059】
以上、第2実施形態に係る耐候性試験装置1Aによれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、耐候性試験装置1Aは、加圧容器2内に気体を導入するガス導入管5と、加圧容器2内の気圧を調整する圧力調整器8と、加圧容器2内に液体を供給する水噴霧管9と、加圧容器2に接続される排水タンク20aと、加圧容器2と排水タンク20aとの間に設けられる開閉可能な流入バルブ20bと、排水タンク20a内の液体を排出する開閉可能な排出バルブ20cとを備えている。この構成によれば、流入バルブ20b及び排出バルブ20cの開閉動作を制御することにより、加圧容器2内を加圧して耐候性試験を行う際、加圧容器2内の圧力変化を抑制しつつ、加圧容器2内に供給された液体のうち不要となった液体を容器外に排出することが可能である。
【0060】
また、耐候性試験装置1Aでは、1又は複数の排水タンク20aの総容積は、加圧容器2の容積以下であることが好ましい。これにより、液体排出の際の加圧容器2内の圧力変化をより確実に抑制することができる。
【0061】
[第3実施形態]
次に
図3を参照して、本発明の第3実施形態に係る耐候性試験装置について説明する。
図3に示すように、第3実施形態に係る耐候性試験装置1Bは、第1実施形態と同様に、加圧容器2、試料保持部3、光照射装置4、ガス導入管5、加湿器6、ガス排気管7、圧力調整器8、水噴霧管9、水流量調整器10、排水管11、排水弁12、温度調整器、及び、制御部15を備えている。耐候性試験装置1Bは、更に、モニタ部26、ガス開放管30、圧力開放弁31、及び、圧力計32を備えている。モニタ部26の基本的な機能は第2実施形態と同様である。
【0062】
ガス開放管30は、加圧容器2内の圧力が上昇して、ガス排気管7での排気でも加圧容器2内の圧力が設定した圧力値に下がらなかった場合に、ガス開放管30に取り付けられた圧力開放弁31を開いてガスの排気を促進させる機器である。制御部15は、加圧容器2に取り付けられた圧力計32の検出値(圧力値)をモニタ部26を介して取得し、取得した圧力値が所定の閾値を超えた場合に、圧力開放弁31を開放状態となるように制御する。このような制御により、加圧容器2内の気圧が急激に高くなった場合に加圧容器2内の圧力を低下させる。制御部15は、取得した圧力値に応じた制御信号を圧力開放弁31に送信し、圧力開放弁31は、取得した制御信号に基づいて(即ち、検出された圧力値に基づいて)、所定の開度で弁を開放する。制御部15は、取得した圧力値が所定の閾値を超えた場合、圧力開放弁31を全開とする制御を行ってもよい。
【0063】
圧力開放弁31は、加圧容器2内の気圧に応じて変形する部材であってもよい。例えば、圧力開放弁31は、スプリングのような弾性部材が取り付けられた機械式の弁であってもよい。このような弁を用いた場合、制御部15からの制御信号を用いなくても、加圧容器2内の気圧が高くなった場合に、簡略化した構成で弁の開放を自動的に行うことができる。また、このような弁を用いると、圧力計32が故障した場合でも、加圧容器2内の気圧の上昇に応じて弁を動作(開放)させることができる。
【0064】
圧力開放弁31を開放させるための圧力の閾値は、圧力調整器8の設定圧力より高い圧力値であってもよい。圧力開放弁31は、加圧容器2内の気圧がこの閾値よりも高くなった場合に、制御又は機械的に、動作(開放)するように設定されていてもよい。また、圧力開放弁31を開放させるための圧力の閾値は、加圧容器2の耐圧よりも低く設定されることが好ましい。これにより、加圧容器2が、圧力開放弁31が開放される前に圧力に耐えられなくなり破壊してしまうことを防止できる。
【0065】
なお、制御部15は、圧力開放弁31が所定時間開放しているものの加圧容器2内の圧力が低下しない場合、装置異常と判定して、ガス導入、湿度調整、又は水噴霧を停止したり、耐候性試験自体を停止するようにしてもよい。
【0066】
以上、第3実施形態に係る耐候性試験装置1Bによれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、耐候性試験装置1Bは、加圧容器2内に気体を導入するガス導入管5と、加圧容器2内の気圧を調整する圧力調整器8と、加圧容器2内の圧力を開放する圧力開放弁31とを更に備えている。圧力開放弁31は、加圧容器2内の気圧が圧力調整器8によって調整可能な気圧を超えた場合に圧力を開放する。また、圧力開放弁31から開放される気体の最大流量は、圧力調整器8から流れる気体の最大流量よりも多くてもよい。即ち、圧力開放弁31から放出される気体の量が圧力調整器8を通して排出される気体の量より多いことが好ましい。この構成によれば、何等かの理由により加圧容器2に過剰な圧力がかかったとしても圧力開放弁31を全開又は亜圧力に応じて開放することにより、加圧容器2の破損や測定機器の故障等を防止することが可能である。これにより、更に安全性を向上させることができる。なお、上述した第3実施形態を第2実施形態の構成に組み合わせてもよい。
【0067】
[第4実施形態]
次に
図4を参照して、本発明の第4実施形態に係る耐候性試験装置について説明する。
図4に示すように、第4実施形態に係る耐候性試験装置1Cは、第3実施形態と同様に、加圧容器2、試料保持部3、光照射装置4、ガス導入管5、加湿器6、ガス排気管7、圧力調整器8、水噴霧管9、水流量調整器10、排水管11、排水弁12、温度調整器、制御部15、モニタ部26、ガス開放管30、圧力開放弁31、及び、圧力計32を備えている。第4実施形態に係る耐候性試験装置1Cは、更に、シール弁35を備えている。
【0068】
シール弁35は、加圧容器2の一部に設けられた緊急的な開放弁であり、加圧容器2の耐圧よりも低い圧力で一気に加圧容器2内の気体を開放させることができる弁である。シール弁35の耐圧は、圧力開放弁31よりも高く、加圧容器2の耐圧よりも低くなるように設定されている。シール弁35は、前述した耐圧条件を満たせば、特に材質等は限定されるものではないが、例えば、金属板、セラミックス板、プラスチック板、ガラス板等を用いて作製することができ、もしくはそれらを積層したものを用いて作製することができる。
【0069】
シール弁35は、圧力開放弁31による弁の開放だけでは加圧容器2内の圧力上昇を抑えられない場合に、加圧容器2が破壊される前に弁部分が破れるように構成されている。シール弁35を設けることにより、加圧容器2内の気圧が何らかの事情により急上昇等した場合に、加圧容器2を破壊から守ることができる。なお、圧力開放弁31を制御部15からの制御信号(電気信号)に基づいて開閉させる構成とした場合に、例えば制御部15、圧力開放弁31の開放部又は圧力計32の故障等があったとしても、このようなシール弁35を設けておくことにより、加圧容器2内の急激な気圧の上昇等による容器破壊を防止することができる。
【0070】
以上、第4実施形態に係る耐候性試験装置1Cによれば、第1実施形態及び第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、耐候性試験装置1Cは、加圧容器2内の圧力を一気に開放するシール弁35を更に備えている。シール弁35は、加圧容器2内の気圧が圧力開放弁31の開放圧力値よりも高い場合に圧力を開放する。この構成によれば、圧力開放を2段に備えることになり、加圧容器2の破損や測定機器の故障等をより確実に防止することが可能となる。なお、上述した第4実施形態を第2実施形態の構成に組み合わせてもよいことは、第3実施形態と同様である。
【0071】
以上、本実施形態に係る耐候性試験装置について説明してきたが、本発明に係る耐候性試験装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。例えば、上記実施形態では、光照射装置4から試料Sに照射される光Lが平行光であることが好ましいが、より具体的には、
図5に示す構成の光学系を有する耐候性試験装置1Aとすることが可能である。耐候性試験装置1Dは、光照射装置4Aと加圧容器2等を備えており、光照射装置4Aが上述した光照射装置と相違している。他の構成は、上述した第1実施形態に係る耐候性試験装置1と同様であるため、説明を省略する。この変形例に係る光照射装置4Aは、光源40、反射板41、ハーフミラー42、コリメートレンズ43、反射ミラー44、及び、レンズ45を備えている。
【0072】
光照射装置4Aでは、光源40(例えばキセノンランプ)から照射された光L1が反射板41で一部反射しつつハーフミラー42へと進む。ハーフミラー42では、光L1のうち一部の波長の光(例えば紫外光)は反射させつつ不要な波長の光を透過させて反射させず、紫外線を中心とした光を光L2としてコリメートレンズ43に向かって伝搬する。コリメートレンズ43では、入射した光L2を平行光(コリメート光)L3に変換して反射ミラー44で反射させ、平行光のままレンズ45を介して加圧容器2内に伝搬させ、試料Sを照射する。この変形例に係る光照射装置4Aでは、試料Sに照射される光L3が平行光であることから、より均一な照射となり、試料Sの一部に強い光が照射されるといったことがなくなり、耐候性試験を安定して行うことが可能となる。また、複数の試料Sを同時に試験する場合には、照射される光L3が平行光であることにより、各試料Sに照射される光の照度ムラがなくなるため、耐候性試験の最中(例えば3ヶ月~6カ月の間)、照度ムラをならすための試料の配置換え等の作業を行わなくてよくなる。これにより、より正確な耐候性試験結果をより少ない作業量で得ることが可能となる。この変形例に係る耐候性試験装置1Dでは、光照射装置4Aが加圧容器2の外に配置されており、平行光を生成するための光学系の大きさの制限もそれほどないため、より最適な光学系を用いることが可能となる。平行光を形成する光学系は、他の構成であってもよい。また、光照射装置4Aは、上述した光学フィルタを備えていてもよい。なお、上述した光照射装置4Aは、上述した何れの実施形態に適用してもよい。
【実施例0073】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
(照度ムラの試験)
まず、従来のメタルウェザーメーター(ダイプラ・ウィンテス株式会社製、装置名:ダイプラ・メタルウェザー)を用いて、
図6に示すように、光源からの試料Sに相当する領域(縦200mm×横400mm)に照射される光の照度ムラを測定した(比較例1)。
図6に示すように、上記の領域を9箇所に分けてそれぞれの照度を測定したところ、照度の平均は65.1mW/cm
2であり、最大が72mW/cm
2、最小が60mW/cm
2であり、照度ムラは9.1%であった。なお、照度ムラは、以下の式より算出した。
照度ムラ(%)=((最大値-最小値)/(最大値+最小値))×100
【0075】
これに対し、
図5に示す光学系を有する耐候性試験装置1Dを準備して試料Sに相当する領域(縦72mm×横156mm)での照度ムラを測定した(実施例1)。
【0076】
図7に示すように、上記の領域を17箇所に分けてそれぞれの照度を測定したところ、入射される光が平行光であることから、照度の平均は62mW/cm
2であり、最大が65mW/cm
2、最小が61mW/cm
2であり、照度ムラは3.4%程度に留まった。このように、耐候性試験装置において試料を照射する光を平行光とすることにより、試料に照査される光の照度ムラが低減できることが確認できた。
【0077】
(耐候性の試験)
次に、
図5に示す耐候性試験装置1Dを用いて、化粧シートの実際の耐候性試験を行った。この耐候性試験に用いた化粧シートの作製方法は下記の通りである。
図8は、化粧シート100の構成を示す図である。比較例としては、代表的な耐候性試験機(MW及びXe装置)および実環境下での耐候性試験を行った。それぞれの耐候試験条件は
図9の表に示す通りであった。試験結果の詳細は後述する。
【0078】
<透明樹脂シートの作製>
高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21:ADEKA社製)を1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂シート101(樹脂層)として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シート101の両面にコロナ処理を施して表面の濡れを40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の押出温度やロールなどの冷却条件を変えることにより、種々の透明樹脂シートを作製した。
【0079】
<化粧シートの作製>
得られた透明樹脂シートによる透明樹脂シート101の片面に、2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を行い、絵柄層102を施した後、絵柄層102に重ねて隠蔽性のある2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)を塗布量6g/m2にて塗布して隠蔽層103を施した。また、隠蔽層103に重ねて、プライマーコートとして2液硬化型ウレタンインキ(PET-E、レジウサー:大日精化(株)製)を塗布量1g/m2にて塗布してプライマー層105を形成した。
【0080】
次に、このシートの透明樹脂シートによる透明樹脂シート101の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様101aを施した後、エンボス模様101a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/m
2にて塗布して、コート層104を含み総厚110μmの化粧シート100を得た。この化粧シート100を、ウレタン系の接着剤を用いて金属基材に貼り合わせた後、前述した各種耐候性試験機にて耐候性を評価した。その評価結果は、
図9の表に示す通りであった。
【0081】
(比較例2)
また、比較例2として、メタルウェザオメータ(ダイプラ・ウィンテス社製、装置名:ダイプラ・メタルウェザー)を準備した。このMWの光源は、メタルハライドランプであった。比較例2の条件は以下の通りであった。
光学フィルタ:波長295nm~780nmを透過
光量(照度):波長330nm~390nmの光量
光量設定には、中心波長360nmの照度計(ウシオ電機社製)により光量を設定。
比較例2では、以下の表1に示すように、照射→水噴霧→結露→水噴霧→照射を繰り返した。
【0082】
【0083】
(比較例3)
比較例3として、キセノン(Xe)装置(東洋精機社製、装置名:ATLAS Ci4000)を準備した。この装置の光源はキセノンランプであった。比較例3の条件は以下の通りであった。
光学フィルタ:波長295nm~780nmを透過
光量(照度):波長300nm~400nmの光量
光量設定には、絶対値校正波長365nmの照度計(ウシオ電機社製、UIT250 受光器UVD-S365)により光量を設定。
比較例3では、以下の表2に示すように、照射→水噴霧→結露→水噴霧→照射を繰り返した。
【0084】
【0085】
(比較例4)
比較例4として、スーパーキセノン(S-Xe)装置(東洋精機社製、装置名:ATLAS Ci4000)を準備した。この装置の光源はキセノンランプであった。比較例4に用いられる装置自体は、比較例3の装置と同様であり、光源と試料との距離を290mmまで近づけたものであった。なお、比較例3の装置では、光源と試料との距離は324mmであり、比較例4ではより近い位置で光が照射、即ち、より高い光量の光が試料に照射されるようにした。比較例4の条件は以下の通りであった。
光学フィルタ:波長295nm~780nmを透過
光量(照度):波長300nm~400nmの光量
光量設定には、絶対値校正波長365nmの照度計(ウシオ電機社製、UIT250 受光器UVD-S365)により光量を設定。
比較例4では、以下の表3に示すように、照射→水噴霧→結露→水噴霧→照射を繰り返した。
【0086】
【0087】
一方、実施例2~7として、
図5に示す構成の耐候性試験装置1Dを準備した。この耐候性試験装置1Dでは、光源はキセノンランプであった。実施例2~7の条件は以下の通りであった。なお、実施例2~7は、同じ試験装置を用いて試験条件を変えたものである。
光学フィルタ:波長290nm~490nmを透過
光量(照度):波長330nm~390nmの光量
光量設定には、絶対値校正波長365nmの照度計(ウシオ電機社製UIT250 受光器UVD-S365)により光量を設定。
実施例2~7では、以下の表4に示すように、照射→水噴霧→結露→水噴霧→照射を繰り返した。
【0088】
【0089】
<評価>
比較例2~4及び実施例2~7に係る耐候性試験機による耐候性試験後の試料を、外観の観察と各層の硬度変化の評価により、比較した。なお、比較例5として、実環境下(8年)での耐候性試験結果を追加した。外観の観察はマイクロスコープやレーザー顕微鏡を用い、試料表面のひび割れの有無の確認を比較した。また、手で剥離の有無を調べた。
【0090】
図9の表に示すように、比較例5(基準例)の実環境下(8年)での耐候試験でのサンプルでは、表面のヒビと内部の剥離とが生じていた。一方、比較例2~4では、表面のヒビは生じたものの、実環境下のような化粧シートの層の剥離が生じなかった。また、ヒビも実環境下のようなヒビとは異なり、やや白っぽい色となっていた。
【0091】
一方、実施例2~7では、キセノン光の照射、酸素ガスの導入、酸素分圧が0.2MPa以上であること、80℃への加熱、水噴霧及び湿度50%等であること等により、比較例5の実環境下(8年)での耐候試験でのサンプルと同様に、表面のヒビと内部の層の剥離とを短時間で生じさせられることを確認できた。
1,1A,1B,1C,1D…耐候性試験装置、2…加圧容器、3…試料保持部、4,4A…光照射装置、4a,40…光源、4b…光学フィルタ、5…ガス導入管(ガス導入部)、6…加湿器、7…ガス排気管、8…圧力調整器(圧力調整部)、9…水噴霧管(噴霧部、液体供給部)、10…水流量調整器、13…温度調整器(温度調整部)、14…検出部、15…制御部、16…石英ガラス板(光透過部)、20a…排水タンク(排液収容部)、20b…流入バルブ、20c…排出バルブ、31…圧力開放弁、35…シール弁、43…コリメートレンズ、L,L3…光、S…試料。