(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176918
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】試料の顕微鏡検査のための制御システムおよび検査システムならびに対応する方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20221122BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20221122BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20221122BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20221122BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C12M1/34 B
G01N1/28 F
G01N1/28 L
G02B21/00
G02B21/36
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022080100
(22)【出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】21174167
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クリスト
【テーマコード(参考)】
2G052
2H052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AA36
2G052GA32
2G052HC22
2G052HC23
2G052HC29
2G052HC43
2H052AD03
2H052AD23
2H052AD24
2H052AD25
2H052AF02
2H052AF14
2H052AF21
4B029AA07
4B029BB07
4B029BB11
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ07
4B063QQ08
4B063QR72
4B063QR76
4B063QR77
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】試料の顕微鏡検査のための検査システムを動作させるための制御システムを提供する。
【解決手段】制御システム(140)は、ユーザインタフェース(142)を介したユーザ入力時に、少なくとも1つの検査パラメータ(T
S,CO
2)の目標設定値(T
S
**,CO
2
**)を受信することと、受信された少なくとも1つの目標設定値(T
S
**,CO
2
**)に基づいて、インキュベーションモードの少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータ(RH,CO
2)および少なくとも1つの顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値を選択することと、選択された調整設定値に基づいてインキュベーション環境コンディショニングユニット(110)および顕微鏡(100)を動作させることと、を行うように構成されている。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(120)の顕微鏡検査のために構成された検査システム(130)を動作させるための制御システム(140)であって、前記検査システム(130)は、顕微鏡(100)と、前記顕微鏡(100)に接続されたインキュベーション環境コンディショニングユニット(110)と、ユーザインタフェース(142)と、を備え、
前記顕微鏡(100)は、照明光学系(118)と、顕微鏡ステージ(116)と、結像光学系(124)と、前記試料(120)を受容するように構成された試料チャンバ(106)と、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)を前記試料チャンバ(106)に接続するように構成された顕微鏡インタフェース(108)と、前記試料チャンバ(106)から分離され、前記結像光学系(124)を取り囲む結像光学系チャンバ(122)と、を備え、
顕微鏡検査のために構成された前記検査システム(130)は、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)によって生成されたインキュベーション雰囲気の供給によって前記試料チャンバ(106)がインキュベートされるインキュベーションモードを提供し、
前記制御システム(140)は、
前記ユーザインタフェース(142)を介したユーザ入力時に、少なくとも1つの検査パラメータ(TS,CO2)の目標設定値(TS
**,CO2
**)を受信すること(S1)と、
受信された少なくとも1つの前記目標設定値(TS
**,CO2
**)に基づいて、前記インキュベーションモードの少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータ(Tch,RH,CO2)および少なくとも1つの顕微鏡パラメータ(v,Tobj,Tsub)に対する事前定義された調整設定値(Tch
*,RH*,v*)を選択すること(S2)と、
選択された前記調整設定値に基づいて前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)および前記顕微鏡(100)を動作させること(S3)と、
を行うように構成されている、
制御システム(140)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの検査パラメータの前記目標設定値は、少なくとも前記試料の目標温度(TS
**)を含む、
請求項1記載の制御システム(140)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータは、前記試料チャンバ内の温度(Tch)および前記試料チャンバ内の湿度(RH)の群のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1または2記載の制御システム(140)。
【請求項4】
前記制御システム(140)は、前記試料チャンバ内の前記湿度(RH)の値を自動的に提供することを行うようにさらに構成されており、前記値は、前記試料の温度(TS)、前記試料チャンバ内の温度(Tch)、前記結像光学系チャンバ内の温度(Tsub)および前記結像光学系の温度(Tobj)のうちの少なくとも1つの選択されたまたは選ばれた値に依存する、
請求項3記載の制御システム(140)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータは、前記試料チャンバ内の二酸化炭素(CO2)濃度および前記試料チャンバ内の酸素濃度の群のうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項3または4記載の制御システム(140)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの顕微鏡パラメータは、前記顕微鏡(100)の前記結像光学系チャンバ(122)を換気するように構成されたファン(126)の動作速度(v)と、前記結像光学系チャンバ内の温度(Tsub)と、試料温度と、前記結像光学系の温度(Tobj)と、の群のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から5までのいずれか1項記載の制御システム(140)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータは、前記試料チャンバ内の湿度(RH)を含み、選択された前記調整設定値(Tch
*,RH*,v*)に基づいて前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)および前記顕微鏡(100)を動作させること(S3)は、
前記試料の温度(TS)、前記試料チャンバ内の温度(Tch)、前記結像光学系チャンバ内の温度(Tsub)および前記結像光学系の温度(Tobj)のうちの少なくとも1つがそれぞれの事前定義値(Tch’)に到達したか否かを判定することと、
それぞれの温度が所定の値に到達した後、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)の動作を開始して前記試料チャンバ内の湿度(RH)を制御することと
を含み、
それぞれの前記事前定義値は、それぞれの前記目標設定値もしくは選択された前記調整設定値によって定義される値、または、それぞれの前記目標設定値もしくは選択された前記調整設定値(Tch
*)の近傍の範囲内の値(Tch’)である、
請求項3、4または5記載のおよび請求項6記載の制御システム(140)。
【請求項8】
前記制御システム(140)は、
前記少なくとも1つの検査パラメータ、前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータおよび前記少なくとも1つの顕微鏡パラメータの群のうちの少なくとも1つが、それぞれの選択された前記調整設定値(RH*)の近傍の所定の範囲内の値(RH’)に到達した時点、または、選択された前記調整設定値(Tch
*)の値に到達した時点を決定することと、
前記ユーザインタフェース(142)を介して、前記検査システム(130)が検査準備完了していることをユーザに示すこと(S5)と、
を行うようにさらに構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の制御システム(140)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの検査パラメータは、前記試料チャンバ内の二酸化炭素濃度(CO2)および前記試料チャンバ内の酸素濃度の群のうちの少なくとも1つをさらに含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載の制御システム(140)。
【請求項10】
前記インキュベーション環境パラメータおよび前記顕微鏡パラメータに対する前記調整設定値(TS
**,RH*,Tch
*,v*)は、1つ以上のデータセット(300)から選択されており、各データセットは、前記少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値に相関する、前記インキュベーション環境パラメータおよび前記顕微鏡パラメータの群のうちの1つ以上の調整設定値を含む、
請求項1から9までのいずれか1項記載の制御システム(140)。
【請求項11】
前記制御システムは、
前記インキュベーション環境パラメータに対する選択された前記調整設定値(Tch
*,RH*)に基づいて前記インキュベーション雰囲気を供給するように構成された少なくとも1つのインキュベーション制御ユニット(212)と、
前記顕微鏡パラメータに対する選択された前記調整設定値(v*)に基づいて前記顕微鏡を動作させるように構成された顕微鏡制御ユニット(214)と、
を備える、
請求項1から10までのいずれか1項記載の制御システム。
【請求項12】
前記顕微鏡制御ユニット(214)は、
前記ユーザインタフェース(142)から前記少なくとも1つの検査パラメータ(TS)の前記目標設定値(TS
**)を受信することと、
前記インキュベーション環境パラメータおよび前記顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値(Tch
*,RH*,v*)を選択することと、
前記インキュベーション環境パラメータに対する選択された前記調整設定値を前記インキュベーション制御ユニット(212)に送信することと、
を行うようにさらに構成されている、
請求項11記載の制御システム。
【請求項13】
前記制御システム(140)は、前記顕微鏡パラメータに対する選択された前記調整設定値(Tch
*,RH*)に基づいて前記顕微鏡(100)を動作させるように構成された顕微鏡制御ユニット(214)を備え、前記顕微鏡制御ユニット(214)は、
前記ユーザインタフェース(142)から前記少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値(TS
**)を受信することと、
前記インキュベーション環境パラメータおよび前記顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値(Tch
*,RH*,v*)を選択することと、
前記インキュベーション環境パラメータに対する選択された前記調整設定値(Tch
*,RH*)を少なくとも1つのインキュベーション制御ユニット(212)に送信することと、
を行うようにさらに構成されており、
前記少なくとも1つのインキュベーション制御ユニット(212)は、前記インキュベーション環境パラメータに対する選択された前記調整設定値(Tch
*,RH*)に基づいて前記インキュベーション雰囲気を供給するように構成されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の制御システム(140)。
【請求項14】
試料(120)の顕微鏡検査のために構成された検査システム(130)であって、前記検査システム(130)は、顕微鏡(100)と、前記顕微鏡(100)に接続されたインキュベーション環境コンディショニングユニット(110)と、ユーザインタフェースと、を備え、
前記顕微鏡(100)は、照明光学系(118)と、顕微鏡ステージ(116)と、結像光学系(124)と、前記試料を受容するように構成された試料チャンバ(106)と、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)を前記試料チャンバ(106)に接続するように構成された顕微鏡インタフェース(108)と、前記試料チャンバ(106)から分離されて、前記結像光学系(124)を取り囲む結像光学系チャンバ(122)と、を備え、
前記検査システム(130)は、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)によって生成されたインキュベーション雰囲気の供給によって前記試料チャンバ(106)がインキュベートされるインキュベーションモードを提供し、
前記検査システム(130)は、請求項1から13までのいずれか1項記載の制御システム(140)をさらに備える、
検査システム(130)。
【請求項15】
前記ユーザインタフェース(142)は、ディスプレイおよび入力デバイスのうちの少なくとも1つを備える、
請求項14記載の検査システム(130)。
【請求項16】
前記検査システム(130)は、前記ユーザインタフェース(142)を介して、前記少なくとも1つの検査パラメータ(TS)および前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータ(RH)の群のうちの少なくとも1つの現在の値をユーザに表示することを行うようにさらに構成されている、
請求項14または15記載の検査システム(130)。
【請求項17】
前記検査システム(130)は、前記インキュベーションモードにおいて前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータ(Tch,RH)を制御するための雰囲気調節モジュール(216)をさらに備える、
請求項14から16までのいずれか1項記載の検査システム(130)。
【請求項18】
前記雰囲気調節モジュール(216)は、前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータ(Tch,RH)の現在の値を決定するためのセンサを含む、
請求項17記載の検査システム(130)。
【請求項19】
前記顕微鏡(100)は、前記照明光学系(118)、前記顕微鏡ステージ(116)および前記結像光学系(124)を取り囲む顕微鏡ハウジング(102)と、前記顕微鏡ハウジング(102)内に位置し、前記顕微鏡ハウジング(102)内の分離ハウジングセクション(104)によって形成された一体型試料チャンバ(106)と、をさらに備え、
前記結像光学系チャンバ(122)は、前記顕微鏡ハウジング(102)内に位置し、前記試料チャンバ(106)から分離されており、
前記分離ハウジングセクション(104)は、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)を、前記一体型試料チャンバ(106)および前記一体型試料チャンバ(106)内に配置されるステージトップ試料チャンバ(206)のうちの少なくとも1つに接続するように構成された前記顕微鏡インタフェース(108)を備え、
前記検査システム(130)は、第1のインキュベーションモードおよび第2のインキュベーションモードを提供し、前記第1のインキュベーションモードでは、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)による第1のインキュベーション雰囲気の供給によって前記一体型試料チャンバ(106)がインキュベートされ、前記第2のインキュベーションモードでは、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)による第2のインキュベーション雰囲気の供給によって前記ステージトップ試料チャンバ(206)がインキュベートされ、
前記制御システム(140)は、前記第1のインキュベーションモードおよび前記第2のインキュベーションモードのうちの選択された1つに対する選択された前記調整設定値に基づいて、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)および前記顕微鏡(100)を動作させることを行うように構成されている、
請求項14から18までのいずれか1項記載の検査システム(130)。
【請求項20】
請求項14から19までのいずれか1項記載の検査システム(130)による試料(120)の顕微鏡検査のための方法であって、前記方法は、
前記試料チャンバ(106)内に試料(120)を提供するステップと、
前記ユーザインタフェース(142)を介したユーザ入力時に、前記少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値(TS
**)を提供するステップと、
前記インキュベーションモードの前記少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータおよび前記少なくとも1つの顕微鏡パラメータに対する事前定義された前記調整設定値の定義された閾値(RH’)に到達した後に、前記顕微鏡(100)によって前記試料(120)を検査するステップと、
を含む方法。
【請求項21】
前記インキュベーション環境パラメータおよび前記顕微鏡パラメータに対する前記調整設定値(Tch
*,RH*,v*)は、1つ以上のデータセット(300)から選択されており、各データセットは、前記少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値に相関する1つ以上のインキュベーション環境パラメータおよび/または顕微鏡パラメータの調整設定値を含む、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
試料(120)の顕微鏡検査のために構成された検査システム(130)を動作させる方法であって、前記検査システム(130)は、顕微鏡(100)と、前記顕微鏡(100)に接続されたインキュベーション環境コンディショニングユニット(110)と、ユーザインタフェース(142)と、を備え、
前記顕微鏡(100)は、照明光学系(118)と、顕微鏡ステージ(116)と、結像光学系(124)と、前記試料(120)を受容するように構成された試料チャンバ(106)と、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)を前記試料チャンバ(106)に接続するように構成された顕微鏡インタフェース(108)と、前記試料チャンバ(106)から分離されて、前記結像光学系(124)を取り囲む結像光学系チャンバ(122)と、を備え、
前記検査システム(130)は、前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)によって生成されたインキュベーション雰囲気の供給によって前記試料チャンバ(106)がインキュベートされるインキュベーションモードを提供し、
前記方法は、
前記ユーザインタフェース(142)を介したユーザ入力時に、好ましくは前記試料の少なくとも目標温度(TS
**)を含む、少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値(TS
**,CO2
**)を受信するステップ(S1)と、
前記少なくとも1つの検査パラメータの受信された前記目標設定値に基づいて、前記インキュベーションモードの少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータおよび少なくとも1つの顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値(Tch
*,RH*,v*)を選択するステップ(S2)と、
選択された前記調整設定値に基づいて前記インキュベーション環境コンディショニングユニット(110)および前記顕微鏡(100)を動作させるステップ(S3)と、
を含む方法。
【請求項23】
請求項14から19までのいずれか1項記載の検査システム(130)を動作させる、
請求項22記載の方法。
【請求項24】
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサまたは請求項1から13までのいずれか1項記載の制御システム(140)上で実行されるときに、請求項22または23記載の方法を実行するためのプログラムコードを有する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に、試料の顕微鏡検査のために構成された検査システムを動作させるための制御システム、かかる検査システム、顕微鏡検査のための方法および検査システムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞のような生体試料の顕微鏡検査の分野では、特に、試料を好ましいストレスのない環境条件下で可能な限り長く維持することが非常に重要である。この目的のために、インキュベータを使用して、検査対象の試料に適合した微気候を生成することができる。インキュベータは、一方のステージトップインキュベータと他方のケージインキュベータとに区別することができる。
【0003】
ケージインキュベータは、典型的には正立顕微鏡または倒立顕微鏡でありうる標準的な顕微鏡に搭載されており、対物レンズレボルバ、試料キャリアを含む顕微鏡ステージおよびコンデンサなどの顕微鏡の主要部分を覆う大きな気候チャンバを備えているため、大きな容積がインキュベートされなければならない。試料を配置または操作するための作業領域へのアクセスは、ケージインキュベータの内側に設けられており、ケージインキュベータの壁の専用の開口部を通してアクセスすることができる。特にこれらの操作開口部に起因して、ケージインキュベータの寸法は非常に大きいため、ケージインキュベータは顕微鏡台から大きくはみ出すようになっている。そのため、顕微鏡にケージインキュベータを省スペースで装備することは不可能である。一方、ステージトップインキュベータは、試料自体のみを取り囲み、顕微鏡ステージ上に配置されるので、インキュベートすべき容積は小さい。ステージトップインキュベータのスペース要件は最低限であるが、試料が密閉ボックスによって包囲されており、この密閉ボックスを開封しなければならず、ボックス内のインキュベーション雰囲気が破壊されるため、試料へのアクセスは最小限に抑えられている。ステージトップインキュベータモジュールの厳しいスペース制限のため、試料にアクセスして試料を操作するための追加の機器を導入することは、不可能ではなくとも困難である。ケージインキュベータではエネルギおよびガスの消費量が多いのに対し、ステージトップインキュベータには、所望のインキュベーション雰囲気を供給するための接続された供給導管を含む、小さな密閉されたインキュベーション室が設けられている。一方、ケージインキュベータの時間当たりの交換空気量は通常ステージトップインキュベータのそれを上回るので、ステージトップインキュベータモジュールは(例えば、モジュールを開いた後の)インキュベーション雰囲気の任意の乱れを迅速に平衡化させ、または所望のセットアップに到達させることができる。
【0004】
ステージトップインキュベータは、試料を包囲する直接的なインキュベーション環境の厳密な制御を可能にし、調節された容積を最小限に低減し、これによりインキュベーション環境に対する迅速な変更が可能となる。しかしながら、試料自体へのアクセスは非常に制限されており、従来、ステージトップ型のソリューションは顧客のシステムに多大な複雑性および高価格を付加するものである。一方、ケージインキュベータは、試料へのアクセスが容易な反面、環境条件の変化や事前定義されたインキュベーション雰囲気の設定値に到達するまでに時間がかかるものとなっている。
【0005】
かかる顕微鏡およびインキュベータを使用して試料を検査する場合、所望の試料温度を達成するために、ユーザがさまざまな温度およびその他のパラメータを特定の値に設定する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の状況を考慮して、顕微鏡検査においてインキュベーションソリューションを改良することが必要とされている。本発明の実施形態によれば、独立請求項の特徴を有する制御システム、検査システム、顕微鏡検査方法および検査システムを動作させる方法が提案される。有利なさらなる発展形態は、従属請求項および以下の説明の主題を形成する。
【0007】
本発明の実施形態は、試料、特に細胞のような生体試料の顕微鏡検査のために構成された検査システムに関する。試料の検査はまた、かかる試料の撮像を含みうることに留意されたい。検査システムは、顕微鏡と、前記顕微鏡に接続されたインキュベーション環境コンディショニングユニットと、ユーザインタフェースと、を備える。かかるユーザインタフェースは、好ましくは、ディスプレイおよび入力デバイスのうちの少なくとも1つを備える。例えば、ユーザインタフェースは、タッチディスプレイを含みうるか、またはタッチディスプレイでありうる。さらに、かかる検査システムは、本発明の実施形態の主題でもある検査システムを動作させるための制御システムを備える。以下では、制御システムおよび検査システムならびに対応する動作方法を一緒に説明する。
【0008】
前記顕微鏡は、例えば光源およびコンデンサを有する照明光学系と、(その上に試料が配置される)顕微鏡ステージと、例えば対物レンズおよび撮像検出器を有する結像光学系と、を備える。前記顕微鏡は、試料を受容するように構成された試料チャンバ(好ましくは、顕微鏡ステージの試料側部はかかる試料チャンバの一部である)と、インキュベーション環境コンディショニングユニットを試料チャンバに接続するように構成された顕微鏡インタフェースと、試料チャンバから分離され、結像光学系を取り囲む結像光学系チャンバと、をさらに備える。
【0009】
顕微鏡検査のために構成された検査システムは、前記インキュベーション環境コンディショニングユニットによって生成されたインキュベーション雰囲気の供給によって試料チャンバがインキュベートされるインキュベーションモードをさらに提供する。これは、特定のガスまたは湿度を試料チャンバに供給すること、および試料チャンバを加熱することを含みうる。前記試料チャンバは、上述したように、ステージトップチャンバまたはケージチャンバでありうる。好ましくは、前記顕微鏡は、ステージトップチャンバおよびケージチャンバの両方を提供するように構成され、ユーザは、試料を検査するときにそのうちの1つを選択して使用することができる。特定の種類の試料チャンバのさらなる詳細は、後に提供される。
【0010】
本発明者らは、インキュベータおよび顕微鏡の温度および他のパラメータを設定および調整することが困難であり、時間がかかることを認識している。完全に平衡化されたシステムでは、試料を包囲する顕微鏡の全ての構成要素ならびに試料自体が温度の相互設定値に到るはずである。これは、試料自体、試料容器、対物レンズおよび試料面の上下の空気温度を互いに近づける必要があることを意味する。したがって、通常、ケージインキュベータは、上述したように、インキュベートされた容積内に、対物レンズおよび対物レンズレボルバならびに試料底側部も含む。加えて、特にステージトップインキュベータとともに使用する場合、対物レンズ自体の正確な温度を導入し制御するために、複数のデバイス(例えば、対物レンズの周囲に巻き付けられた加熱フォイルが組み込まれたシリコンパッド)が利用可能である。
【0011】
ケージインキュベータは、通常、インキュベートされる容積の内側の試料平面の下に、構成要素および容積を含む。しかしながら、この種のセットアップは、本発明者らが認識しているようにいくつかの欠点、すなわち、(a)インキュベータアセンブリ内に換気が非常に不十分な領域があること、(b)対物レンズの周囲の温度をチェックするためのセンサがないこと、および(c)システムの全体的な温度設定値を変更することなくサブステージ区画内の空気温度を変更する能力がないことを有する。これらのシステムは、完全に統合されたシステムであるため、(d)動作中または顕微鏡の動作モードの変化中に、顕微鏡の電子部品によるサブステージ容積への温熱導入を補償することができない。
【0012】
対物レンズ自体には加熱カラーを取り付けることができ、これは、前述の問題(c)を部分的に克服する一助となりうる。しかしながら、かかるカラーは、全てのタイプの対物レンズ(例えば、電動対物レンズ)に取り付けることができるわけでなく、あくまでインキュベータの制御下にあり、顕微鏡の制御下にはない。顕微鏡を包囲する空気は、かかるソリューションによっては制御できない。
【0013】
既存の構成では、顕微鏡とインキュベータとは2つの独立型システムであり、インキュベータは現在の読み出し値を顕微鏡ユーザインタフェースに表示し、さらに顕微鏡ソフトウェアから設定値コマンドを受信することができるが、各システムは独立して動作および制御を行っている。
【0014】
しかしながら、本発明の一実施形態の制御システムは、検査システムを動作させるために特定のステップを実行するように構成されている。これらのステップは、前記ユーザインタフェースを介したユーザ入力時に、試料温度のような少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値を受信するステップと、受信された少なくとも1つの目標設定値に基づいて、試料チャンバ内の温度または湿度のようなインキュベーションモードの少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータおよび少なくとも1つの顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値を選択するステップと、を含む。
【0015】
これらの事前定義された調整設定値は、好ましくは1つ以上のデータセットの一部であり、例えば、データセットは、インキュベーション環境および顕微鏡パラメータのうちの少なくとも1つの特定の調整設定値に相関する検査パラメータの目標設定値を含むルックアップテーブルの形態を有しうる。かかる特定の相関は、試験および/またはシミュレーションから取得することができ、好ましくは、試料に対する最適な検査条件を表す。さまざまなインキュベーション環境および/または顕微鏡パラメータに対して、さまざまなデータセットまたはルックアップテーブルを使用することができる。換言すれば、インキュベーション環境パラメータおよび顕微鏡パラメータに対する調整設定値は、1つ以上のデータセットから選択され、各データセットは、試料温度の目標設定値に相関する、インキュベーション環境パラメータおよび顕微鏡パラメータの少なくとも1つのうちの1つ以上の調整設定値を含む。
【0016】
さらに、制御システムは、選択された(事前定義された)調整設定値に基づいてインキュベーション環境コンディショニングユニットおよび顕微鏡を動作させるように構成されている。これは、例えば、選択された調整設定値に到達するように、インキュベーション環境コンディショニングユニット内の加熱器およびポンプならびに顕微鏡内のファンを動作させることを含む。これには通常、ユーザ入力時に動作を開始してからしばらく時間がかかり、これらのパラメータの現在値の測定および閉ループ制御のためのフィードバックが必要となる。
【0017】
したがって、本発明の一実施形態の着想は、2つのシステム間でフィードバック制御を実装することによって、顕微鏡およびインキュベーションソリューションを統合することである。ユーザインタフェースにおいてユーザがワンクリック(これは、顕微鏡ソフトウェアと相関しうる)を行い、例えば試料の所望の温度を設定することで、インキュベータおよび顕微鏡における複数のパラメータを並行して変更することができる。これにより、両方のシステムが協働して、対物レンズ、試料、試料チャンバおよびサブステージ容積(結像光学系チャンバ)の温度を有する検査システム全体が完全に平衡化される。
【0018】
特に、ユーザにより試料の温度の目標設定値が変更されると、インキュベータおよび顕微鏡は、好ましくは以前に統合試験によって検証されたパラメータの事前定義された調整設定値を含む種々のパラメータデータセットまたはルックアップテーブルを利用するように強制される。
【0019】
上述したように、ユーザが目標設定値を設定しうる好ましい検査パラメータは、試料の温度である。さらになお、1つ以上の他のまたは追加の検査パラメータに対する目標設定値は、好ましくはユーザ入力およびユーザインタフェースを介して設定することができる。これらのパラメータは、試料チャンバ内の二酸化炭素濃度および試料チャンバ内の酸素濃度を含みうる。実施される特定の試料および/または特定の検査手順に応じて、(インキュベーション環境コンディショニングユニットによって提供される場合)かかる検査パラメータの目標設定値を使用することができる。かかる試料検査に特に関連するさらなるパラメータは、試料チャンバ内の(相対)湿度(空気または雰囲気中の水分の濃度)でありうることに留意されたい。このパラメータの目標設定値の選択は、他のパラメータへの依存性が強いため、ユーザにとって容易な作業ではなく、湿度が高すぎてチャンバ内の試料の結露または蒸発が引き起こされる可能性がある。したがって、本発明の好ましい実施形態では、インキュベーション環境パラメータとしての適切な湿度が、ユーザによって、またはデータセットから既に選択されている1つ以上の温度の(調整)設定値または値に応じて、インキュベーション環境コンディショニングユニットにより自動的に提供される。さらになお、湿度のスイッチオンおよびオフを提供することができ、すなわち、ユーザは、制御された水準の相対湿度を試料チャンバ内に提供するか否かを選択することができる。
【0020】
好ましくは、少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータは、試料チャンバ内の温度および試料チャンバ内の湿度の群のうちの少なくとも1つを含む。試料チャンバ内の温度は、特に、試料チャンバ内の空気または雰囲気の温度に関連する。さらに、インキュベーション環境の試料チャンバ内の二酸化炭素濃度および/または試料チャンバ内の酸素濃度を用いることができる。なお、後者は、検査パラメータとしてもインキュベーション環境パラメータとしても用いることができる。
【0021】
上述したように、少なくとも1つの顕微鏡パラメータに対する調整設定値も選択される。かかる少なくとも1つの顕微鏡パラメータは、特に、結像光学系チャンバを換気するように構成された顕微鏡のファンの動作速度を含む。なお、ファンの動作速度には、ファンが動作しない場合(速度0)も含まれうることに留意されたい。ファンによっては、ゼロと特定の動作速度とのどちらかしか選択できない場合があり、または動作速度の設定値が異なる場合や、一定範囲内で連続して設定される場合がある。代替的または付加的に、かかる顕微鏡パラメータは、結像光学系チャンバ内の温度(すなわち、結像光学系チャンバ内の空気もしくは雰囲気の温度)および結像光学系の温度の群のうちの少なくとも1つを含みうる。かかるファンは、典型的には両方の温度に影響を及ぼす。次に、これらの温度は、特に、試料ステージが結像光学系の近くに配置されるか、または電子機器から加熱される対物レンズの近くに配置される場合に、試料温度に影響を及ぼす。試料温度をさらなる顕微鏡パラメータとすることができ、これは、浸漬媒体を使用する場合、その温度と相関を有しており、浸漬媒体の温度は、回折指数に影響を及ぼす。次に、この回折指数は、結像光学系を適合させるために使用することができる。
【0022】
要約すると、これらの調整設定値は、特に、ケージモードまたはステージトップモードにおけるインキュベータ周囲空気温度の設定値、ならびに専用の湿度設定値を含む。後者の値は、特に、各温度設定値において、試料または試料チャンバ内部の結露も蒸発も起こらないようにするものである。このため、湿度は、ユーザが目標設定値を選択できる検査パラメータとしては使用されず、湿度は、上述したような事前定義された調整設定値または値に従って自動的に設定されるものとする。別個のデータセットまたはルックアップテーブルを、試料チャンバ内の温度および湿度に対して使用することができる。
【0023】
加えて、さらなるデータセットまたはルックアップテーブルにより、顕微鏡の電子部品によって生成される熱を可変的に使用して、対物レンズおよび(結像光学系チャンバ内の)サブステージ容積の温度を試料の温度に近づけることができる。さらに、かかるデータセットは、ルックアップテーブル以外のタイプのものであってもよく、例えば、特性線、曲線、または関数を使用することができる。
【0024】
例えば、ゼブラフィッシュ(試料中の温度の典型的な目標設定値:28℃)または酵母(30℃)が検査システムで撮像される場合、ファンまたはファンアセンブリは、周囲の部屋から結像光学系チャンバ内に空気を導入し、暖気がシステムから排出される。電子熱はこれによって対物レンズから排出され、対物レンズは試料温度に非常に近い温度で平衡化される。この手順は、例えば、室温から、試料における検証された温度限界まで適用され、この温度限界により、対物レンズの温度、ステージの上下の空気温度ならびに試料温度が可能な限り小さい偏差を示すことが保証される。これによって、対物レンズの温度は、この範囲内の試料温度にほぼ追従する。
【0025】
しかしながら、(例えば37℃での)細胞培養実験など、上述した温度限界よりも高い温度で検査システムを用いて実験を実行する場合、ファンまたはファンアセンブリの動作が停止され、電子部品により対物レンズに追加の熱を導入することが可能となる。これにより、対物レンズの温度は再び試料の高い温度に近づく。この手順は、例えば、室温と45℃との間で適用される。
【0026】
有利には、制御システムは、少なくとも1つの検査パラメータ、少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータおよび少なくとも1つの顕微鏡パラメータのうちの少なくとも1つが、それぞれの選択された調整設定値の近傍の所定の範囲内の値に到達した時点、または選択された調整設定値の値に到達した時点を決定することと、前記ユーザインタフェースを介して、検査システムが検査準備完了していることをユーザに示すこととを行うようにさらに構成される。ユーザに示すことは、ディスプレイ上に対応するテキストを表示すること、(実際のまたは仮想的な)ランプを作動させること(赤色から緑色への切り替えのような)などを含みうる。さらに、音を再生することも可能である。これにより、ユーザは、検査システムが試料の使用および検査準備が整うのを待つ間、他のことを行うことができる。
【0027】
選択された調整設定値に基づいてインキュベーション環境コンディショニングユニットおよび顕微鏡を動作させるさらに好ましい方法は、制御システムが、試料の温度、試料チャンバ内の温度、結像光学系チャンバ内の温度および結像光学系の温度のうちの少なくとも1つがそれぞれの事前定義値に到達したかどうかを判定するように構成される場合である。それぞれの事前定義値は、それぞれの目標設定値もしくは選択された調整設定値によって定義される値、またはそれぞれの目標設定値もしくは選択された調整設定値の近傍の範囲内の値(閾値という意味で)のいずれかでありうる。
【0028】
言及された温度の各々は、検査パラメータ、インキュベーション環境パラメータ、または顕微鏡パラメータのいずれかであることに留意されたい。さらになお、これらの温度の各々は、試料の温度および試料チャンバ内の温度に影響を及ぼし、その結果、試料チャンバ内の湿度(または雰囲気中の水分の濃度)の最大値がどの程度となるかに影響を及ぼす。例えば、試料チャンバ内の温度が高いほど、湿度(または相対湿度)の最大値(飽和)が高くなる。さらに、前記温度は、典型的には、試料中の水分の蒸発に影響を及ぼす。
【0029】
そこで、各温度がそれぞれの所定の値に到達した後に、インキュベーション環境コンディショニングユニットを作動させて試料チャンバ内の湿度の制御が開始される。これにより、温度が低い始動時に試料または試料チャンバ内の他の場所で水分が結露することを防止できる。さらに、望ましくない水分の蒸発を防止することができる。目標設定値または選択された調整設定値に到達するまで湿度を制御しながら待つ必要はなく、むしろ、湿度の上昇にもしばらく時間がかかるため、湿度の制御はその前に開始される場合がある。設定値(閾値)の近傍の特定の範囲は、個々の状況に対して個々に決定することができる。
【0030】
上述したように、検査システムは、2つのサブシステム、すなわちインキュベーション環境コンディショニングユニットと顕微鏡とを組み合わせたものである。典型的には、これら2つのサブシステムの各々は、それ自体の制御ユニットなどを有する。好ましい実施形態では、制御システムは、顕微鏡パラメータに対する選択された調整設定値に基づいて顕微鏡を動作させるように構成された顕微鏡制御ユニット(典型的にはプロセッサを含む)と、インキュベーション環境パラメータに対する選択された調整設定値に基づいてインキュベーション雰囲気を供給するように構成された少なくとも1つのインキュベーション制御ユニット(典型的にはプロセッサを含む)と、を備える。これは、両方の制御ユニットが一緒になって制御システムを形成し、基本的に、各制御ユニットがそのそれぞれのパラメータの処理を可能にすることを意味しており、これには、目標設定値を受信すること、およびそれぞれの調整パラメータを選択することが含まれる。例えば、顕微鏡制御ユニットは、それぞれの調整設定値を有する顕微鏡パラメータのための少なくとも1つのデータセットを含み、インキュベーション制御ユニットは、それぞれの調整設定値を有するインキュベーション環境パラメータのための少なくとも1つのデータセットを含む。したがって、好ましい実施形態では、インキュベーション環境パラメータに対する事前定義された調整設定値の選択は、インキュベーション制御ユニット内で行うことができ、顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値の選択は、顕微鏡制御ユニット内で行うことができる。前記ユーザインタフェースから少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値を受信することは、顕微鏡制御ユニット内で(またはインキュベーション環境制御ユニット内でも)行うことができる。
【0031】
しかしながら、別の好ましい実施形態では、前記顕微鏡制御ユニットは、前記ユーザインタフェースから少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値を受信することと、インキュベーション環境パラメータおよび顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値を選択することと、インキュベーション環境パラメータに対する選択された調整設定値を前記インキュベーション制御ユニットに送信することとを行うようにさらに構成される。したがって、顕微鏡制御ユニットは、ユーザ入力を処理し、データセットに基づいて全てのパラメータに対する適切な調整設定値を選択するための任意の必要なソフトウェアを操作または実行するために使用される。これはまた、データセットが、好ましくは顕微鏡制御ユニットにおいて、例えば制御ユニットのメモリ内に提供されることを意味する。したがって、インキュベーション制御ユニットは、インキュベーション環境パラメータに対する関連する設定値を受信するのみであり、いかなる特定の決定または選択プロセスも処理する必要がない。少なくとも1つのインキュベーション制御ユニットは、必ずしも制御システムの一部である必要はないことに留意されたい。
【0032】
検査システムは、好ましくは、前記ユーザインタフェースを介して、試料温度のような少なくとも1つの検査パラメータおよび少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータの現在の値をユーザに表示するように構成される。これにより、現在のプロセス状況の概要がユーザに提供される。さらに、必要に応じて、顕微鏡パラメータの現在の値(例えば、ファンのオンまたはオフ)を表示することができる。
【0033】
有利には、検査システムは、インキュベーションモードにおいて少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータを制御するための雰囲気調節モジュールをさらに備える。かかる雰囲気調節モジュールは、制御システムまたはインキュベーション制御ユニットに接続することができる。これにより、インキュベーション雰囲気のさらなる調節または微調整が可能となる。この目的のために、センサが雰囲気調節モジュール内に設けられていてよく、または少なくともセンサ信号が雰囲気調節モジュールに提供されてもよく、センサ信号は、少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータの値を表す。かかるパラメータの実際の値がこのパラメータの設定値から逸脱する場合、雰囲気調節モジュールは、それぞれのパラメータを調整/再調整することができる。
【0034】
この目的のために、雰囲気調節モジュールは、インキュベーション制御ユニットおよび/またはインキュベーションモード用のポンプ制御ユニットと通信していることが有利である。この実施形態では、インキュベーション雰囲気の温度または湿度が対応する設定値から逸脱した場合、雰囲気調節モジュールは、温度または湿度を正しい設定値に調節/再調節するために、対応する(ポンプ)制御ユニットに要求を送信することができる。他方では、雰囲気調節モジュールは、かかる調節/再調節のための対応する手段を備えることができる。例えば、雰囲気調節モジュールは、調節設定値が提供されると、対応する(ポンプ)制御ユニットと通信することなく、単独でインキュベーション雰囲気の温度および/または湿度を調節するための加熱器/冷却器および加湿器のうちの少なくとも1つを備えていてよい。
【0035】
既に述べたように、好ましい実施形態では、検査システムは、2つの異なる種類の試料チャンバにインキュベーション雰囲気を提供または供給するように構成される。この目的のために、前記顕微鏡は、照明光学系、顕微鏡ステージおよび結像光学系を取り囲む顕微鏡ハウジングをさらに備える。さらに、前記顕微鏡は、顕微鏡ハウジング内に位置し、前記顕微鏡ハウジング内の分離ハウジングセクションによって形成された一体型試料チャンバを備える。結像光学系チャンバは、前記顕微鏡ハウジング内に位置し、試料チャンバから分離される。したがって、第1のタイプの試料チャンバは、顕微鏡ハウジングに一体化された試料チャンバである。このタイプの試料チャンバは、試料チャンバを提供するケージインキュベータと同様にケージチャンバとも称される。
【0036】
第2のタイプの試料チャンバは、前記一体型試料チャンバ内に配置されるものである。この第2のタイプの試料チャンバは、試料チャンバを提供するステージトップインキュベータと同様に、ステージトップチャンバとも称される。さらに、前記ハウジングセクションは、インキュベーション環境コンディショニングユニットを一体型試料チャンバおよび/または前記一体型試料チャンバ内に配置されるステージトップ試料チャンバに接続するように構成された前記顕微鏡インタフェースを備える。かかる第2のタイプの試料チャンバは、典型的には、顕微鏡または一体型試料チャンバに固定されず、要件に応じてその中に配置されうることに留意されたい。
【0037】
かかる構成では、検査システムは、各試料チャンバに対して個々のインキュベーションモードを提供する。特に、検査システムは、第1のインキュベーションモードおよび第2のインキュベーションモードを提供し、第1のインキュベーションモードでは、前記インキュベーション環境コンディショニングユニットによる第1のインキュベーション雰囲気の供給によって一体型試料チャンバがインキュベートされ、第2のインキュベーションモードでは、前記インキュベーション環境コンディショニングユニットによる第2のインキュベーション雰囲気の供給によってステージトップチャンバがインキュベートされる。さらに、制御システムは、第1のインキュベーションモードおよび第2のインキュベーションモードのうちの選択された1つに対する選択された調整設定値に基づいてインキュベーション環境コンディショニングユニットおよび顕微鏡を動作させるように構成される。これは、2つのインキュベーションモードに対して異なるデータセットが必要とされる場合があり、そのデータセットは、少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値に相関する1つ以上のインキュベーション環境パラメータおよび/または顕微鏡パラメータの調整設定値を相関させるものであることに留意されたい。
【0038】
これは、同じ検査システムで実現される2つのインキュベーションソリューションを顧客に提供する。第1のインキュベーションモードでは、インキュベートされる容積は、顕微鏡ハウジング内の分離ハウジングセクションの容積まで減少され、この容積は、それぞれの顕微鏡および意図された用途の必要性に対して具体的に設計されるため、内部容積は既に最小に抑えられる。試料チャンバは、用途によって要求される全ての必要な試料操作を実施するのに十分なスペースを確保し、追加の必要な機器のための十分なスペースを残す。さらに、このシステムは、ユーザが別のシステムに変更することなくステージトップインキュベータを利用することを可能にする。この好ましい実施形態は、ステージトップおよび試料チャンバのインキュベータを1つの単一システムに組み合わせ、共通の構成要素を共有し、温度均一性、加熱段階などに関して再現可能なインキュベーション条件を実現する。両方のタイプの試料チャンバまたはインキュベーションモードについて、さまざまなパラメータを設定するためのワンクリックソリューションが利用可能である。
【0039】
本発明のさらなる実施形態では、上述したような検査システムによる試料の顕微鏡検査のための方法が提供される。かかる方法は、試料チャンバ内に試料を提供するステップ(検査システムの種類に応じて、これは2つの異なる試料チャンバのうちの1つを選択することを含みうる)と、前記ユーザインタフェースを介したユーザ入力時に、少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値を提供するステップと、インキュベーションモードの少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータおよび少なくとも1つの顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値の定義された閾値に到達した後に、顕微鏡によって試料を検査するステップと、を含む。これらの定義された閾値は、調整設定値で設定された値に対応していてよく、またはわずかに異なっていてもよい。この点に関して、検査システムがいつ検査準備完了するかを示すことに対処する上記の見解も参照されたい。
【0040】
インキュベーション環境パラメータおよび顕微鏡パラメータの調整設定値は、特に、1つ以上のデータセットから選択され、各データセットは、少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値に相関する1つ以上のインキュベーション環境パラメータおよび/または顕微鏡パラメータの調整設定値を含む。
【0041】
本発明のさらなる実施形態では、試料の顕微鏡検査のために構成された検査システムを動作させる方法が提供され、検査システムは、顕微鏡と、前記顕微鏡に接続されたインキュベーション環境コンディショニングユニットと、ユーザインタフェースと、を備える。前記顕微鏡は、照明光学系と、顕微鏡ステージと、結像光学系と、試料を受容するように構成された試料チャンバと、インキュベーション環境コンディショニングユニットを試料チャンバに接続するように構成された顕微鏡インタフェースと、試料チャンバから分離され、結像光学系を取り囲む結像光学系チャンバと、を備える。さらに、前記検査システムは、前記インキュベーション環境コンディショニングユニットによって生成されたインキュベーション雰囲気の供給によって試料チャンバがインキュベートされるインキュベーションモードを提供する。
【0042】
本方法は、前記ユーザインタフェースを介したユーザ入力時に、好ましくは少なくとも試料の目標温度を含む、少なくとも1つの検査パラメータの目標設定値を受信するステップと、少なくとも1つの検査パラメータの受信された目標設定値に基づいて、インキュベーションモードの少なくとも1つのインキュベーション環境パラメータおよび少なくとも1つの顕微鏡パラメータに対する事前定義された調整設定値を選択するステップと、選択された調整設定値に基づいてインキュベーション環境コンディショニングユニットおよび顕微鏡を動作させるステップと、を含む。検査システムのさらなる好ましい実施形態については、本明細書において対応して適用される上記の見解を参照されたい。
【0043】
方法の任意のさらなる詳細、好ましい実施形態および利点については、方法の態様も含み、本明細書において対応して適用される上記の見解も参照されたい。
【0044】
本発明は、コンピュータプログラムが1つ以上のプロセッサまたは本発明による制御システム上で実行されるときに本発明による方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムにも関する。
【0045】
本発明のさらなる利点および実施形態は、説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【0046】
前述の特徴および以下でさらに説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ示された組み合わせだけでなく、さらなる組み合わせまたは単独でも使用可能であることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1a】本発明の好ましい実施形態による検査システムの斜視図を概略的に示す図である。
【
図1b】本発明のさらに好ましい実施形態による検査システムを概略的に示す図である。
【
図2】さまざまな動作のステップを説明するための、本発明のさらに好ましい実施形態による検査システムおよびフロー図を概略的に示す図である。
【
図3a】本発明のさらに好ましい実施形態による検査システムを動作させるさまざまなステップを概略的に示す図である。
【
図3b】本発明のさらに好ましい実施形態による検査システムを動作させるさまざまなステップを概略的に示す図である。
【
図4a】2つの異なる動作状態における本発明のさらに好ましい実施形態による検査システムを概略的に示す図である。
【
図4b】2つの異なる動作状態における本発明のさらに好ましい実施形態による検査システムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1aは、本発明の好ましい実施形態による、試料120の顕微鏡検査のための検査システム130を斜視図で概略的に示している。検査システム130は、顕微鏡100と、インキュベーション環境コンディショニングユニット110と、例えばPC146を含む制御システム140と、ユーザインタフェースと、を備え、ユーザインタフェース142は、例えばユーザインタフェースをユーザに提供するためのディスプレイまたはディスプレイスクリーン、キーボードおよびコンピュータマウスを備える。
【0049】
制御システム140は、顕微鏡制御ユニット214と、インキュベーション制御ユニット212と、例えばPC146と、を備え、PCはユーザインタフェースに接続されている。なお、PCの機能は、例えば顕微鏡制御ユニット214に統合することもできる。ユーザインタフェース手段は、代替的に、例えばタッチスクリーンを含みうる。
【0050】
顕微鏡100は、顕微鏡ステージ116上に配置された試料120の顕微鏡検査に用いられる。顕微鏡ハウジング102は、照明光学系118、顕微鏡ステージ116および結像光学系124を取り囲んでいる。一体型試料チャンバ106は、顕微鏡ハウジング102内に位置し、前記顕微鏡ハウジング102内の分離ハウジングセクション104によって形成されている。ハウジングセクション104はヒンジ式の蓋109を備え、蓋109は、試料チャンバ106内の試料120を顕微鏡ステージ116上に配置するため、ならびに蓋が開かれたときに試料120を交換および/または試料120を操作するために、顕微鏡ステージ116への直接のアクセスを提供する。
【0051】
図1aに示されている実施形態は、逆透過光型の顕微鏡100であり、透過光型の照明光学系118がハウジングセクション104内に配置されており、結像光学系124が第2のハウジングセクション内の顕微鏡ステージ116の下に位置し、結像光学系チャンバ122を形成している。結像光学系124は、典型的には、主要な構成要素として顕微鏡対物レンズおよび画像検出器を含む。画像検出器は、通常、顕微鏡画像を生成するカメラを備え、顕微鏡画像は、典型的には、顕微鏡ハウジング102の外側のユーザインタフェース142の表示画面上に表示される。
【0052】
顕微鏡ハウジングセクション104の構造により、蓋109を閉じた後に専用の試料チャンバ106を形成することが可能となる。この試料チャンバ106により、細胞のような生体試料120の顕微鏡検査/撮像の際に試料を良好でストレスのない環境条件下に保つことができるよう、インキュベート可能な好ましい密閉空間が構成されている。この目的のために、ハウジングセクション104は、外部のインキュベーション環境コンディショニングユニット110を試料チャンバ106に接続するためのインタフェース108を備える。インタフェース108は、インキュベーション環境コンディショニングユニット110と試料チャンバ106との間の接続を提供するように構成されており、これにより、コンディショニングユニット110は、インタフェース108に接続されたときに試料チャンバ106内の環境条件を制御することができる。この構成では、第1のインキュベーションモード(「試料チャンバインキュベーション」)が実装される。
【0053】
図示の実施形態では、ハウジングセクション104の一部としてのインタフェース108は、ハウジングセクション104の背面に2つの開口部112を備え、各開口部112は、導管114を受容するように構成されている。インキュベーション雰囲気は、導管114の少なくとも1つを通して試料チャンバ106内に導入することができる。試料チャンバ106のリーク量に応じて、インキュベーション雰囲気の一部を試料チャンバ106から逃がすことができる。一方、インキュベーション雰囲気の一部を、別の1つの導管114を介して試料チャンバ106から引き出すことができる。
【0054】
適切なインキュベーション雰囲気は、例えば、事前定義された含有量のH2O(水または水蒸気、相対湿度)および事前定義された含有量のCO2(二酸化炭素)を有する空気を含む。雰囲気中の酸素が欠乏した状態で低酸素実験を行うことも望ましい。具体的なパラメータおよび適切なまたは好ましい範囲に関するさらなる詳細については、以下の図の説明を参照されたい。
【0055】
関連するパラメータ(インキュベーション環境パラメータ、例えば試料チャンバの温度、湿度、二酸化炭素濃度、酸素濃度;顕微鏡パラメータ、例えばファン速度)の制御は、制御システム140によって自動的に実行され、例えば検査パラメータとしての試料の温度の目標設定値がユーザによって設定されることに留意されたい。
【0056】
上記のパラメータを制御するために、導管114、試料チャンバ106および顕微鏡ステージ116の試料120の近傍のうちの少なくとも1つ内にまたはその上にセンサを配置することが好ましい。好ましい実施形態では、センサの少なくとも一部は、インキュベーション雰囲気を試料チャンバ106に供給するための導管114に組み込まれる。
【0057】
図1aに示されているように、ハウジングセクション104は、顕微鏡ステージの上側、換言すれば顕微鏡ステージのテーブルトップを含む作業面107によって、下方の境界を有する。この構造は、試料120を配置し操作するための作業領域へのユーザフレンドリなアクセスを提供する。他の側面については、ハウジングセクションは、蓋109の内側とハウジングセクション104自体の背面とによって境界を有する。
【0058】
結像光学系124の寿命を延ばすために、また、液浸対物レンズを使用する場合には、例えば結像光学系チャンバ122の空調および/または温度制御が行われる。この目的のために、結像光学系チャンバ122を換気するためのファン126が設けられており、これは、制御システム140によって、または特にその一部としての顕微鏡制御ユニット214によって、操作または制御することができる。
【0059】
前記顕微鏡制御ユニット214は、試料120の顕微鏡検査/撮像を制御するために、顕微鏡100の照明光学系118、顕微鏡ステージ116および結像光学系124のような機能構成要素をさらに制御する。典型的には、ユーザインタフェース142は、顕微鏡100のユーザフレンドリな動作のために、表示画面上に表示されるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供する。
【0060】
制御システム140はさらに、コンディショニングユニット110がインタフェース108に接続されたときに、特に、かかる目的のために提供されたインキュベーション制御ユニット212を介して、インキュベーション環境コンディショニングユニット110の動作を制御するように構成されている。PC146および/または顕微鏡制御ユニット214とインキュベーション制御ユニット212との間の通信のためのケーブルおよびラインは、インタフェース108の上記の開口部/導管のうちの1つ以上を通して誘導することができる。
【0061】
図1aに示されているように、デフォルトの構成は、第1のインキュベーションモードであり、すなわち、この実施形態では、試料チャンバインキュベーションモードである。インキュベーション環境コンディショニングユニット110は、
図1aに示されているインキュベーション制御ユニット212を備える。ハウジングセクション104内には、その背面に、
図1aに示されているように雰囲気調節モジュール216が接続される雰囲気調節モジュールインタフェースが設けられている。
【0062】
インキュベーション雰囲気パラメータのうちの1つ以上を検出するための上述したセンサは、好ましくは、試料チャンバ106内に、特に雰囲気調節モジュール216内または雰囲気調節モジュール216上に配置される。雰囲気調節モジュール216は、通信回線を介してインキュベーション環境コンディショニングユニット110に接続されている。このようにして、パラメータ値に対応するセンサ信号に応じて、第1の雰囲気調節モジュール216は、インキュベーション制御ユニット212とともに、第1のインキュベーション雰囲気のパラメータの第1の群を所望の設定値に設定するためのフィードバック制御を提供することができる。このプロセスにつき、以下の図に関連してさらに説明する。
【0063】
さらに、ステージトップ試料チャンバ206が破線で示されている。かかるステージトップ(またはテーブルトップ)試料チャンバは、一体型試料チャンバ106内に配置されることになり、その小さいステージトップ試料チャンバ206内にそれぞれのインキュベーション環境を提供するために、開口部112および/または導管114への接続も確立することが可能である。ユーザは、どの試料チャンバを使用するかを選択することができ、テーブルトップ試料チャンバ206を使用するには、これを一体型試料チャンバ106内に配置する必要がある。
【0064】
図1bは、さらなる好ましい実施形態における本発明による検査システム130を概略的に示している。検査システム130は、
図1aに示したものに対応しうる。ただし、
図1bは、特に、検査システム130の構成要素およびパラメータを示しており、これらは、本発明の実施形態内で特に関連性がある。図面全体を通して、同様の構成要素およびパラメータには同様の参照番号が使用されることに留意されたい。
【0065】
図1bの左側は、ユーザインタフェース142を示しており、ユーザインタフェース142は、検査パラメータとして試料の温度T
Sの記号を表示し、その隣に、試料のこの温度の目標設定値T
S
**の入力のためのフィールドを表示している。ユーザは、例えばそれぞれのソフトボタンをクリックすることによって、その温度に対する目標設定値を上昇させたり下降させたりすることができる。さらに、ユーザインタフェース142は、検査パラメータとしての試料チャンバ内の温度、二酸化炭素濃度CO
2の記号と、その隣にこの濃度の目標設定値CO
2
**を入力するためのフィールドと、を表示している。ユーザは、例えば、それぞれのソフトボタンをクリックすることによって、その濃度に対する目標設定値を上昇させたり下降させたりすることができる。典型的には、最も関連性の高い検査パラメータは試料の温度であり、二酸化炭素濃度の変更または使用は無効とされる場合があることに留意されたい。以下では、二酸化炭素濃度は考慮されない(または無効とみなされる)。
【0066】
さらに、ユーザインタフェース142は、試料チャンバ内の(相対)湿度RHの記号を表示している。湿度は、検査パラメータではなく、自動的に設定されるインキュベーションパラメータである。ユーザはその設定値を変更することはできない。そのため、現在値しか表示されない場合があり、また湿度(試料チャンバ内の水分)の使用のオンおよびオフの切り替えを可能にすることもできる。さらに、ユーザインタフェース142は、(仮想的な)ランプを表す色付きシンボル144を表示している。かかるランプは、例えば検査が開始可能な場合に赤色から緑色に切り替わることができる。これについては後に詳細に説明する。
【0067】
図1bの右側は、試料チャンバ106および結像光学系チャンバ122を非常に概略的に示したものである。特に、照明光学系118、顕微鏡ステージ116、試料120および結像光学系124が示されている。結像光学系は、例として、タレット上の電動対物レンズを備えることに留意されたい。
【0068】
図2は、本発明のさらに好ましい実施形態による検査システム130およびフロー図を示しており、これに基づいて検査システムを動作させるさまざまなステップを説明する。特に、
図2は、
図1bと同様の試料チャンバ106、結像光学系チャンバ122、照明光学系118、顕微鏡ステージ116、試料120および結像光学系124を示している。さらに、インキュベーション制御ユニット212および顕微鏡制御ユニット214(これらは両方とも制御システムの一部であってよい)が概略的に示されている。
【0069】
第1のステップS1において、ユーザは、
図1bに関して上述したように、ユーザインタフェースを介して試料の温度T
Sに対する目標設定値T
S
**を設定することができる。制御システム、特に顕微鏡制御ユニット214および/またはインキュベーション制御ユニット212は、この目標設定値T
S
**を受信する。
【0070】
さらなるステップS2において、制御システムは、受信した目標設定値T
S
**に基づいて、試料チャンバ内の(相対)湿度RHに対する事前定義された調整設定値RH
*と、試料チャンバの温度T
chに対する事前定義された調整設定値T
ch
*と、を選択する。これら2つのパラメータは、インキュベーション環境が提供される試料チャンバ106を指すため、インキュベーション環境パラメータである。さらに、結像光学系チャンバ内のファン226の動作速度vに対する事前定義された調整設定値v
*が選択される。このパラメータは、顕微鏡の構成要素およびファンが配置された対応する結像光学系チャンバ122を指すため、顕微鏡パラメータである。かかる調整設定値を目標設定値に基づいて選択する方法については、
図3aに関して以下で説明する。
【0071】
次いで、さらなるステップS3において、インキュベーション環境コンディショニングユニット110および顕微鏡100は、制御システムまたは顕微鏡制御ユニット214および/またはインキュベーション制御ユニット212をそれぞれ用いて、3つのパラメータRH、Tchおよびvが、先に選択されたそれぞれの調整設定値RH*、Tch
*およびv*に達するように操作される。
【0072】
結像光学系チャンバ122において、これは、結像光学系チャンバ内の温度T
subおよび結像光学系(対物レンズを備える)の温度T
objが、結像光学系(例えば、結像検出器および電動対物レンズ用のモータおよび他の電子部品を含む)の動作によって生成された熱により変化することを意味する。ファンの動作速度vに応じて、電子部品によって生成された熱の影響が大きくなったり小さくなったりするが、より詳細な説明については
図4a、
図4bを参照されたい。上述したように、温度T
subおよびT
obj(および試料温度T
S)も、それぞれの調整設定値を有する顕微鏡パラメータとして使用することができる。
【0073】
それぞれの調整設定値を達成するためにこれらのパラメータを制御することは、典型的には、これらのパラメータの現在の値を繰り返し測定すること(または別の方法で決定すること)、これらの現在の値を制御システムにフィードバックすること、および必要に応じて作動変数を変更することを含むことに留意されたい。これは、典型的な閉ループ制御によって実施されうることに留意されたい。この点に関して、雰囲気調節モジュール216および上述したセンサを使用することができる。
【0074】
一定時間の後、ステップS5として示されているように調整設定値に到達し、したがって、試料の温度の目標設定値TS
**にも到達する。
【0075】
図3aおよび
図3bは、特に
図2に関して説明した本発明のさらに好ましい実施形態による検査システムを動作させるさまざまなステップを概略的に示している。さらに、
図1に示した全ての要素を表示するユーザインタフェース142が、
図3aおよび
図3bの各々の右側に示されている。
【0076】
図3aの左側はデータセット300を示しており、ここでは、試料チャンバの温度T
ch、試料チャンバ内の湿度RH(インキュベーション環境パラメータ)およびファンの動作速度v(顕微鏡パラメータ)の調整設定値が試料の温度T
S(検査パラメータ)の目標設定値と相関している。具体的には、グラフ曲線は、これらのパラメータの各々に対するデータセット300を示し、パラメータの値は垂直軸によって定義される。線の具体的な値または経路は、本発明の説明に関連しないことに留意されたい。パラメータの物理的な単位としては、温度は℃(摂氏)、湿度は%(パーセンテージ)、ファンの回転数はrpm(回転数/分)などが考えられる(後者は簡単な例としてオン/オフで表現することもできる)。
【0077】
次に、目標設定値に基づいて調整設定値を選択する方法について説明する。上述したように、ユーザは、目標設定値TS
**として試料の所望の温度を選択することができる。図示された特定のデータセット300において、対応する調整設定値RH*、Tch
*およびv*は、TSの曲線が目標設定値TS
**と交差する点を通る垂直線を引くことによって求められる。このようにして求められた調整設定値RH*、Tch
*、v*が次に選択され、これらに基づいてシステムが動作する。
【0078】
データセット300のグラフ表示は、主にさまざまなパラメータとその設定値との間の相関を示す好ましい方法であることに留意されたい。制御システムにおいてかかるデータセットを実装する典型的な方法は、例えば、複数の値のセットとして実装することができ、各セットは、各パラメータについて1つの値を含む。これにより、例えば、試料の温度の値が所与の目標設定値に一致するセットを選択することが可能となる。
【0079】
図3bの左側は、本発明の好ましい実施形態について、時間tにわたる試料チャンバ内の湿度RH、試料チャンバ内の温度T
chおよび対物レンズの温度T
objの変化を示している。インキュベーション環境コンディショニングユニットおよび顕微鏡の動作が開始されると(図の左端を参照)、試料チャンバ内の温度T
chおよび対物レンズの温度T
objは時間とともに上昇し、その最終値に達する。これらの最終値は、試料チャンバ内の温度T
chについては選択された調整設定値T
ch
*に対応する。対物レンズは試料120および試料チャンバ106に非常に近接しているので、対物レンズの温度T
objの最終値は、試料チャンバ内の温度T
chの最終値に非常に近くなっていることに留意されたい。
【0080】
図からわかるように、湿度RHは動作の開始とともに低下する。その理由は、湿度RHの変更または制御が他のパラメータと一緒に開始されないためである。むしろ、最初から湿度を積極的に変化させることはない。しかし、試料チャンバ内の温度Tchの上昇により、湿度低下はわずかである。湿度を最初から積極的に上昇させない理由は、周囲の温度が低い状態で湿度が高くなりすぎると、試料または試料チャンバ内の他の成分に水分が結露するおそれがあるからである。低温では、空気中の最大相対湿度は、高温の場合よりも低い。
【0081】
黒塗りの星印で示されている時点t1において、試料チャンバ内の温度Tchは(閾値)Tch’に到達した。これは、湿度RHを上げても結露しないほど十分に高い温度とみなされる。したがって、制御システムは、選択された調整設定値RH*を達成するために湿度RHが増大するように、インキュベーション環境コンディショニングユニット110の動作を開始する。
【0082】
同じく中抜きの星印で示されている時点t2において、試料チャンバ内の温度Tchは、選択された調整設定値Tch
*に到達し、湿度RHは、それぞれの選択された調整設定値RH*をわずかに下回る値RH’に到達している。これらの条件は、例としてであるが、試料の温度が目標設定値に到達した時点で試料の検査を開始するのに十分な条件であるとみなされる。これは、例えばシンボル144(仮想的なランプ)の色が赤色から緑色に変化するという形で、ユーザインタフェース142を介してユーザに示される。
【0083】
状況に応じて、検査システムが検査準備完了していることを示す時点は、湿度RHが選択された調整設定値に到達した時点に設定することもできることに留意されたい。さらに、他のパラメータを含めることができる。
【0084】
図4aおよび
図4bは、2つの異なる動作状態における本発明のさらに好ましい実施形態による検査システム130を示している。検査システム130は、
図2に示したものに対応する。
図2のステップS2に関して述べたように、ファンの動作速度vは、顕微鏡パラメータであるか否かにかかわらず、選択された調整設定値に設定される。
【0085】
図4aは、動作速度が0に設定されている状況、すなわちファン128が動作していない状況を示しており、したがって換気は行われず、結像光学系124の電子部品128(または結像光学系チャンバ122内の他の熱源)から生成された熱が擾乱されない。このことは、部品128から始まる長い矢印で示されている。その結果、結像光学系124、特に対物レンズが加熱され、対物レンズの温度が上昇し、比較的高い値に到達する。典型的には、対物レンズは、浸漬媒体を介して顕微鏡ステージ(試料キャリア)に熱的および光学的に結合されていることに留意されたい。試料を加熱するための熱の大部分はインキュベーション雰囲気を介して導入されるので、それぞれの温度が低すぎる場合、試料の熱は対物レンズ(および結像光学系チャンバ)に流れる。そのため、電子部品128により生成された熱は、対物レンズおよび結像光学系チャンバに熱を導入するために使用される。試料チャンバは、インキュベーションユニットによって並行して加熱される。検査システムは、動作の平衡状態に到達し、この平衡状態では、試料の温度、対物レンズの温度、ならびに試料平面の下方および上方の空気の温度が特により高い温度でほぼ同一となる。これは、例えば生体細胞の培養実験を実施するために、試料の温度の目標設定値が高い場合(典型的には約37℃)に好ましい。
【0086】
図4bは、動作速度が0よりも高い特定の値に設定されている状況、すなわちファン128が動作している状況を示しており、したがって結像光学系チャンバは換気され、結像光学系124の電子部品128(または結像光学系チャンバ122内の他の熱源)は能動的に冷却され、これにより生成される熱が少なくなり、暖気がシステムの外側に排出されている。これは、部品128から始まる短い矢印で示されている。その結果、結像光学系チャンバ122および結像光学系124、特に対物レンズは、ファンが動作していない場合よりも加熱されず、対物レンズの温度は上昇しないか、または少なくともファンが動作していない場合よりも上昇の度合が小さく、温度は比較的低い値に到達し、対物レンズは仮にあったとしても最小限の熱しか試料に導入しない。試料チャンバは、インキュベーションユニットによってごくわずかだけ並行して加熱される。したがって、検査システムは、動作の平衡状態に到達し、この平衡状態では、試料の温度、対物レンズ、ならびに試料平面の下方および上方の空気温度がより低い温度でほぼ同一となる。これは、ゼブラフィッシュ(例えば、28℃)および酵母(例えば、30℃)に必要とされるような、試料の温度の目標設定値が低い場合に好ましい。
【0087】
ファンの機能に応じて、試料の温度に対するさまざまな目標設定値について、さまざまな動作速度が使用されうることに留意されたい。ただし、オンモードおよびオフモードのみを有する単純なファンを使用することも可能である。
【0088】
要約すると、本発明の一実施形態の着想は、2つのシステム間でフィードバック制御を実装することによって、顕微鏡およびインキュベーションソリューションを統合することである。これは、ユーザにワンクリックソリューションを提供するものであり、例えば、顕微鏡ソフトウェアは、インキュベータおよび顕微鏡において並行して複数のパラメータを変更する。これにより、両方のシステムが協働して、対物レンズ、試料、試料チャンバおよび結像光学系チャンバ(サブステージ容積)の温度が完全に平衡化される。特に、ユーザは、検査パラメータ以外に注意を払う必要がない。好ましい実施形態では、ユーザが提供する必要がある唯一の値は、所望の試料温度である。残りのパラメータは、自動的に最適値に設定される。
【0089】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆる全ての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0090】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0091】
いくつかの実施形態は、
図1aから
図4bのうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムを含んでいる顕微鏡に関する。択一的に、顕微鏡は、
図1aから
図4bのうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムの一部であってもよい。
図1aは本明細書に記載された方法を実施するように構成されたシステム130の概略図を示している。システム130は、顕微鏡100とコンピュータ(制御)システム140とを含んでいる。顕微鏡100は、撮像するように構成されており、かつコンピュータシステム140に接続されている。コンピュータシステム140は、本明細書に記載された方法の少なくとも一部を実施するように構成されている。コンピュータシステム140は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム140と顕微鏡100は別個の存在物であってもよいが、1つの共通のハウジング内に一体化されていてもよい。コンピュータシステム140は、顕微鏡100の中央処理システムの一部であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム140は、顕微鏡100のセンサ、アクター、カメラまたは照明ユニット等の、顕微鏡100の従属部品の一部であってもよい。
【0092】
コンピュータシステム140は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等のさまざまな場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム140は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム140は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、プロセッサは、例えば、顕微鏡または顕微鏡部品(例えばカメラ)のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路等のあらゆる種類の計算回路を意図していてもよいが、これらに限定されない。コンピュータシステム140に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム140は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム140はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザがコンピュータシステム140に情報を入力すること、およびコンピュータシステム140から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0093】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0094】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0096】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0097】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0098】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0099】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0100】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0101】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0102】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0103】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0105】
100 顕微鏡
102 顕微鏡ハウジング
104 分離ハウジングセクション
106 試料チャンバ
107 作業面
108 顕微鏡インタフェース
109 蓋
110 インキュベーション環境コンディショニングユニット
112 開口部
114 導管
116 顕微鏡ステージ
118 照明光学系
120 試料
122 結像光学系チャンバ
124 結像光学系
126 ファン
128 電子部品
130 検査システム
140 制御システム
142 ユーザインタフェース
144 ユーザインタフェース上のシンボル
146 PC
206 ステージトップチャンバ
212 インキュベーション制御ユニット
214 顕微鏡制御ユニット
216 雰囲気調節モジュール
TS 試料の温度
Tch 試料チャンバの温度
Tobj 対物レンズの温度
Tsub 結像光学系チャンバ内の温度
RH 試料チャンバ内の湿度
CO2 二酸化炭素濃度
TS
**,CO2
** 目標設定値
Tch
*,RH* 調整設定値
Tch’,RH’ 値
t1,t2 時間
【外国語明細書】