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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176927
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】導電性顔料ペーストを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20221122BHJP
   C09C 1/44 20060101ALI20221122BHJP
   C09C 1/46 20060101ALI20221122BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20221122BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20221122BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20221122BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20221122BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20221122BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221122BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20221122BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221122BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/44
C09C1/46
C09C1/48
C09C3/10
C09D7/62
C09D5/24
C09D201/00
C09D7/61
H01M4/62 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081141
(22)【出願日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021082935
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】橋村 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】北村 貴志
(72)【発明者】
【氏名】湯川 嘉之
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
5H050
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037AA02
4J037CC15
4J037CC29
4J037DD05
4J037DD30
4J037EE02
4J037EE24
4J037EE25
4J037EE28
4J037EE43
4J037EE48
4J037EE50
4J037FF11
4J038CE022
4J038EA011
4J038HA066
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA15
4J038KA20
4J038LA06
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA20
4J038PA19
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA10
5H050EA10
5H050GA10
5H050GA29
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】高顔料濃度においても、顔料分散性及び貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペースト及び合材ペーストを製造する方法、並びに優れた電池性能を有する電池用電極層を製造する方法を提供すること。
【解決手段】顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストを製造する方法であって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が9~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、
顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び任意選択でその他の成分を混合して得られた液体原料(L)に、導電性顔料(B)を含有する粉体原料(P)を投入し、メジアレス分散機により混合及び分散を行う、
導電性顔料ペーストを製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストを製造する方法であって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が9~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、
顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び任意選択でその他の成分を混合して得られた液体原料(L)に、導電性顔料(B)を含有する粉体原料(P)を投入し、メジアレス分散機により混合及び分散を行う、
導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項2】
前記メジアレス分散機が、ケーシング内にローター及びステーターを有し、該ローターを回転させることで、混合、分散、及びポンピングを行う分散機である、請求項1に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項3】
ローターが回転する際に生じる負圧を利用して前記粉体原料(P)を吸引投入する、請求項2に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項4】
前記メジアレス分散機による混合及び分散の後、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ペブルボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、捏和機、押出機、遊星式混錬機からなる群より選ばれる少なくとも一種の分散機によって追加分散を行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項5】
追加分散で用いる分散機がアニュラー型ビーズミルである、請求項4に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項6】
前記アニュラー型ビーズミルが、2軸駆動型のアニュラー型ビーズミルである、請求項5に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項7】
追加分散で用いる分散機が超高速ホモジナイザーまたは高圧ホモジナイザーである、請求項4に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項8】
顔料分散樹脂(A)が、イオン性ポリビニルアルコールを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項9】
イオン性ポリビニルアルコールのけん化度が85mol%以上100mol%未満である、請求項8に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項10】
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~50質量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項11】
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含有し、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、5~50質量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項12】
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含有せず、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~20質量%である、請求項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項13】
導電性顔料(B)の含有量が、導電性顔料ペーストの総量を基準として、1~90質量%であり、かつ導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、10~99.9質量%である、請求項1~12のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項14】
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含有し、カーボンナノチューブ(B-1)の含有量が、導電性顔料ペーストの総量を基準として、1~20質量%であり、かつ導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、10~99質量%である、請求項1~11及び13のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項15】
導電性顔料(B)が、平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、導電性カーボン(B-2)の含有量が、導電性顔料ペーストの総量を基準として、5~90質量%であり、かつ導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、40~99.9質量%である、請求項1~14のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項16】
前記カーボンナノチューブ(B-1)が、多層カーボンナノチューブを含有する、請求項1~11及び13~15のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項17】
導電性顔料(B)が、平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、導電性カーボン(B-2)がアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1~16のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項18】
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAが9.3以上であり、かつ溶媒(C)の溶解性パラメーターδCが10.4~15.0である、請求項1~17のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項19】
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.1の関係である、請求項1~18のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項20】
顔料分散樹脂(A)を50℃以上に加温した溶媒(C)に溶解することで液体原料(L)を製造する、請求項1~19のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の方法で得られた導電性顔料ペーストが、実質的に水を含有しない、導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の方法で得られた導電性顔料ペーストが、実質的に金属を含有しない、導電性顔料ペーストを製造する方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の方法により製造された導電性顔料ペーストに、少なくとも1種の電極活物質を添加する、合材ペーストの製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法により得られた合材ペーストを集電材に塗工して得られる電池用電極層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高顔料濃度においても、顔料分散性及び貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペースト及び合材ペーストを製造する方法、並びに優れた電池性能を有する電池用電極層を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料を顔料分散樹脂及び溶媒等の混合物中に分散させたペースト状の顔料分散体が、塗料、電池用電極、塗工材、コーティング材、電磁波シールド、ディスプレイパネル、タッチスクリーンパネル、着色フィルム、着色シート、化粧材、保護材、磁石改質材、印刷用インキ、デバイス部材、電子機器部材、プリント配線板、太陽電池、機能性ゴム部材、樹脂成形膜等の分野で広く用いられている。さらに、これらの材料に静電塗装性、導電性、電磁波シールド性、帯電防止性等の機能を付与するために導電性顔料や導電性高分子等を含有させている。
【0003】
これらの分野では、顔料の分散性、貯蔵安定性、塗工性、導電性、仕上がり性等の性能向上がますます要求されており、そのため、優れた顔料分散能力と、形成された顔料分散体中の顔料粒子を再凝集させないだけの優れた顔料分散安定性を有する顔料分散樹脂及び顔料ペーストの開発がなされつつある。
【0004】
顔料ペーストの設計にあたっては、顔料分散樹脂が塗工膜等の最終製品そのものの導電性能等に悪い影響を及ぼさないように、あるいは溶媒及び顔料分散樹脂の使用量を低減することや乾燥時の使用エネルギーを低減する観点から、少量の顔料分散樹脂で高濃度かつ均一に分散された顔料ペーストを作製することが重要となっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、繊維状炭素を含んだ溶媒をメディア(以降、「メジア」と表記することもある)型分散機により分散化してスラリーを得、前記スラリーを電極活物質と混練することにより集電体に塗布するスラリーを得ることを特徴とする、リチウム二次電池の電極用スラリーの製造方法が開示されている。しかしながら、高顔料濃度及び/又は高粘度のペーストの場合は、均一な分散ができないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-182892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高顔料濃度及び/又は高粘度のペーストにおいても顔料分散性と貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペーストの製造方法を提供することであって、さらに、仕上がり性、及び導電性等に優れる塗工膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストを製造する方法であって、顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が9~23mmol/gであり、導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び任意選択でその他の成分を混合して得られた液体原料(L)に、導電性顔料(B)を含有する粉体原料(P)を投入し、メジアレス分散機により混合及び分散を行う、導電性顔料ペーストを製造する方法によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の導電性顔料ペースト、合材ペースト、及び電池用電極層の製造方法を提供するものである。
【0010】
項1.
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストを製造する方法であって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が9~23mmol/gであり、
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、
顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び任意選択でその他の成分を混合して得られた液体原料(L)に、導電性顔料(B)を含有する粉体原料(P)を投入し、メジアレス分散機により混合及び分散を行う、
導電性顔料ペーストを製造する方法。
項2.
前記メジアレス分散機が、ケーシング内にローター及びステーターを有し、該ローターを回転させることで、混合、分散、及びポンピングを行う分散機である、項1に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項3.
ローターが回転する際に生じる負圧を利用して前記粉体原料(P)を吸引投入する、項2に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項4.
前記メジアレス分散機による混合及び分散の後、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ペブルボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、捏和機、押出機、遊星式混錬機からなる群より選ばれる少なくとも一種の分散機によって追加分散を行うことを特徴とする、項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項5.
追加分散で用いる分散機がアニュラー型ビーズミルである、項4に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項6.
前記アニュラー型ビーズミルが、2軸駆動型のアニュラー型ビーズミルである、項5に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項7.
追加分散で用いる分散機が超高速ホモジナイザーまたは高圧ホモジナイザーである、項4に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項8.
顔料分散樹脂(A)が、イオン性ポリビニルアルコールを含有する、項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項9.
イオン性ポリビニルアルコールのけん化度が85mol%以上100mol%未満である、項8に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項10.
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~50質量%である、項1~9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項11.
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含有し、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、5~50質量%である、項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項12.
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含有せず、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量が、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~20質量%である、項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項13.
導電性顔料(B)の含有量が、導電性顔料ペーストの総量を基準として、1~90質量%であり、かつ導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、10~99.9質量%である、項1~12のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項14.
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含有し、カーボンナノチューブ(B-1)の含有量が、導電性顔料ペーストの総量を基準として、1~20質量%であり、かつ導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、10~99質量%である、項1~11及び13のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項15.
導電性顔料(B)が、平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、導電性カーボン(B-2)の含有量が、導電性顔料ペーストの総量を基準として、5~90質量%であり、かつ導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、40~99.9質量%である、項1~14のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項16.
前記カーボンナノチューブ(B-1)が、多層カーボンナノチューブを含有する、項1~11及び13~15のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項17.
導電性顔料(B)が、平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、導電性カーボン(B-2)がアセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種である、項1~16のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項18.
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAが9.3以上であり、かつ溶媒(C)の溶解性パラメーターδCが10.4~15.0である、項1~17のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項19.
顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δA-δC|<2.1の関係である、項1~18のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項20.
顔料分散樹脂(A)を50℃以上に加温した溶媒(C)に溶解することで液体原料(L)を製造する、項1~19のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストを製造する方法。
項21.
項1~20のいずれか1項に記載の方法で得られた導電性顔料ペーストが、実質的に水を含有しない、導電性顔料ペーストを製造する方法。
項22.
項1~21のいずれか1項に記載の方法で得られた導電性顔料ペーストが、実質的に金属を含有しない、導電性顔料ペーストを製造する方法。
項23.
項1~22のいずれか1項に記載の方法により製造された導電性顔料ペーストに、少なくとも1種の電極活物質を添加する、合材ペーストの製造方法。
項24.
項23に記載の方法により得られた合材ペーストを集電材に塗工して得られる電池用電極層の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性顔料ペーストの製造方法は、高顔料濃度及び/又は高粘度においても、顔料の分散性、貯蔵安定性に優れ、比較的少ない顔料分散樹脂の配合量で充分にペーストの粘度を低下させることができる。また、その塗工膜は、仕上がり性、導電性、及び電池性能等に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0013】
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0014】
本発明では、まず適度な分散状態の導電性顔料(B)を有する導電性顔料ペーストを調製し、さらに諸性能を満足する塗工膜を得るため、導電性顔料ペーストに各種成分を追加して合材ペーストを製造するものである。
【0015】
なお、本発明においては、導電性顔料ペーストを塗工するために少なくとも1種の電極活物質及び任意選択でその他の各種成分をさらに配合して調製したペーストを「合材ペースト」という。合材ペーストを被塗物に塗工して乾燥したものを「塗工膜」という。塗工膜が電池用電極に用いられる場合は「電極層」とも言い換えることができる。
【0016】
本発明の導電性顔料ペーストを製造する方法は、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する導電性顔料ペーストを製造する方法であって、顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が9~23mmol/gであり、導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有し、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び任意選択でその他の成分を混合して得られた液体原料(L)に、導電性顔料(B)を含有する粉体原料(P)を投入し、メジアレス分散機により混合及び分散を行う。
【0017】
本発明において、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び任意選択でその他の成分を混合して得られた液体原料(L)に、導電性顔料(B)を含有する粉体原料(P)を投入したものを分散する、とは、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)及び溶媒(C)を含む混合物において、導電性顔料(B)を顔料分散樹脂(A)及び溶媒(C)に分散させることを意味する。また、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を含有する混合物における導電性顔料(B)の塊を砕いてより小さい導電性顔料(B)の塊を混合物中に分散させることも用語「ペーストを分散」に包含される。
【0018】
<顔料分散樹脂(A)>
上記導電性顔料ペーストの成分として用いることができる顔料分散樹脂(A)は、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を含有する。また、上記樹脂(A)の極性官能基濃度は、分散性、貯蔵安定性、及び溶媒との相溶性の観点から、通常9~23mmol/gであり、好ましくは10~22.5mmol/gであり、より好ましくは11~22mmol/gであることが好適である。
【0019】
また、顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAとしては、分散性、貯蔵安定性、及び溶媒との相溶性の観点から、9.3(cal/cm1/2以上が好ましく、10.0~13.0(cal/cm1/2がより好ましく、11.0~12.5(cal/cm1/2が更に好ましい。
【0020】
ここで、溶解性パラメーターとは、一般にSP値(ソルビリティ・パラメーター)とも呼ばれるものであって、溶媒や樹脂の親水性又は疎水性の度合い(極性)を示す尺度である。また、溶媒と樹脂、樹脂間の溶解性や相溶性を判断する上で重要な尺度となるものであり、溶解性パラメーターの値が近い(溶解性パラメーターの差の絶対値が小さい)と、一般的に溶解性や相溶性が良好となる。
【0021】
樹脂の溶解性パラメーターは、当業者に公知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものであり、具体的には、K.W.SUH, J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968)に準じて求めることができる。
【0022】
顔料分散樹脂(A)が2種以上の場合の「顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδA」は、各樹脂の溶解性パラメーター値に質量分率を乗じたものを合計した値である。
【0023】
樹脂の種類としては、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
なかでも、該ペーストから形成される導電性塗工膜の優れた導電性を低下させることなく、導電性塗工膜に十分な造膜性を付与する観点から、顔料分散樹脂(A)としては、下記式(1)の重合性不飽和基含有モノマーを含むモノマーを重合又は共重合することにより得られるビニル(共)重合体(A-1)を含有することが好ましい。尚、本発明の「(共)重合体」とは、1種類のモノマーを重合した重合体と2種以上のモノマーを共重合した共重合体の両方を含むものである。
C(-R)=C(-R) ・・・式(1)
〔上記式(1)において、Rは、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子又は有機基である。〕
【0025】
上記ビニル(共)重合体(A-1)としては、その構造中に「-CH-CH(-X)-」で表される構造単位(ただし、Xは極性官能基を有する有機基である。)を含むものが好ましく、当該構造単位中の極性官能基Xとしては、アミド基、イミド基、エーテル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基である。
【0026】
上記ビニル(共)重合体(A-1)としては、例えば、水酸基含有ビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ビニル(共)重合体、ピロリドン基含有ビニル(共)重合体、アミド基含有ビニル(共)重合体、スルホン酸基含有ビニル(共)重合体、リン酸基含有ビニル(共)重合体、アミノ基含有ビニル(共)重合体等が挙げられる。これらの(共)重合体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
水酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール-脂肪酸ビニル共重合体、ビニルアルコール-エチレン共重合体、ビニルアルコール-(N-ビニルホルムアミド)共重合体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。(共)重合体中のビニルアルコール単位は脂肪酸ビニル単位を(共)重合した後に加水分解して得られたものでも良い。
【0028】
カルボキシル基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸の重合体、又はポリ(メタ)アクリル酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0029】
ピロリドン基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリビニルピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン-エチレン共重合体、N-ビニル-2-ピロリドン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0030】
アミド基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドの重合体、又は(メタ)アクリルアミドとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0031】
スルホン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、アリルスルホン酸又はスチレンスルホン酸等の重合体、アリルスルホン酸及び/又はスチレンスルホン酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0032】
リン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートの重合体、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0033】
アミノ基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの重合体、又はジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0034】
これらの実施形態において、「その他の重合性不飽和モノマー」としては、特に限定されないが、例えば、後述する「共重合可能な重合性不飽和基含有モノマー」として列挙したもの等が挙げられ、酢酸ビニル等が好ましい。
【0035】
これらのビニル(共)重合体(A-1)の中でも、分散性を向上させる観点、及び導電性塗工膜の表面抵抗率を低減させる観点から、水酸基含有ポリビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ポリビニル(共)重合体、ピロリドン基含有ポリビニル(共)重合体が好ましく、水酸基含有ポリビニル(共)重合体がより好ましく、ポリビニルアルコール(共)重合体が更に好ましい。
【0036】
前記ポリビニルアルコール(共)重合体は、分散性の観点から、けん化度が85mol%以上100mol%未満であることが好ましく、90mol%以上100mol%未満であることがより好ましく、95mol%以上100mol%未満であることが特に好ましい。
【0037】
前記ポリビニルアルコール(共)重合体の中でも、分散性の観点から、イオン性官能基を有する、イオン性ポリビニルアルコールが特に好ましい。イオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基などが挙げられる。イオン性ポリビニルアルコールは、以下の方法で製造することができる。
(1)イオン性官能基及び重合性不飽和基を含有する化合物と、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルとを共重合し、得られる重合体を更にけん化する方法。
(2)イオン性官能基及び重合性不飽和基を含有する化合物をポリビニルアルコールにマイケル付加させる方法。
(3)ポリビニルアルコールを変性したい官能基に対応した水溶液(酢酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液、アンモニア水溶液等)で加熱する方法。
(4)イオン性官能基を含有するアルデヒド化合物でポリビニルアルコールをアセタール化する方法。
(5)イオン性官能基を有するアルコール、アルデヒド及びチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ、ポリビニルアルコールの重合をする方法。
【0038】
いずれの製造方法でも好適に用いることができるが、特に(1)の方法が好ましい。
【0039】
これらの実施形態において、イオン性官能基及び重合性不飽和基を含有する化合物としては、例えば、カルボキシル基及び重合性不飽和基を含有する化合物(例えば、アクリル酸、メタクリル酸等)、スルホン酸基及び重合性不飽和基を含有する化合物(例えば、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸等)、リン酸基及び重合性不飽和基を含有する化合物(例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェート等)、アミノ基及び重合性不飽和基を含有する化合物(例えば、ビニルアミン、アリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
【0040】
なお、上記ビニル(共)重合体(A-1)は、上記の「-CH-CH(-X)-」で表される構造単位以外に、任意選択で、共重合可能な重合性不飽和基含有モノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。共重合可能な重合性不飽和基含有モノマーとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体又はビニリデン単量体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;エチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体;3-(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム基含有単量体;ビニルトリメトキシシラン、N-ビニルホルムアミド、メタアクリルアミド等が挙げられる。これらの単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
上記ビニル(共)重合体(A-1)の重合方法は、それ自体既知の重合方法で製造することができ、例えば溶液重合を用いることが好ましいが、これに限られるものではなく、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、単量体は一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
【0042】
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、具体的には、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0043】
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30~200℃程度の範囲で設定
することができる。
【0044】
また、重量平均分子量としては、1,000~200,000であることが好ましく、2,000~100,000であることがより好ましく、7,000~30,000であることがさらに好ましい。
【0045】
上記ビニル(共)重合体(A-1)は、合成終了後に脱溶媒及び/又は溶媒置換することで、固体又は任意の溶媒に置き換えた樹脂溶液にすることができる。
【0046】
脱溶媒の方法としては、常圧で加熱により行ってもよいし、減圧下で脱溶媒してもよい。溶媒置換の方法としては、脱溶媒前、脱溶媒途中、又は脱溶媒後のいずれの段階で置換溶媒を投入してもよい。
【0047】
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量としては、顔料分散性と貯蔵安定性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。また、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量の上限としては、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が特に好ましい。また、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量の範囲としては、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~50質量%が好ましく、0.3~45質量%がより好ましく、0.5~40質量%が特に好ましい。
【0048】
本発明の方法で製造される導電性顔料ペーストが、導電性顔料(B)としてカーボンナノチューブ(B-1)を含有する場合、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量としては、分散性と貯蔵安定性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、5~50質量%が好ましく、8~40質量%がより好ましく、10~30質量%が特に好ましい。
【0049】
本発明の方法で製造される導電性顔料ペーストが、導電性顔料(B)としてカーボンナノチューブ(B-1)を含有しない場合、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量としては、分散性と貯蔵安定性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、0.1~20質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%が特に好ましい。
【0050】
<導電性顔料(B)>
本発明で用いる導電性顔料(B)は、カーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する。
【0051】
上記カーボンナノチューブ(B-1)としては、単層カーボンナノチューブ、又は多層カーボンナノチューブをそれぞれ単独で、又は組合せて使用することができる。特に粘度、導電性及びコストの関係から、多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
【0052】
上記カーボンナノチューブ(B-1)の外径としては、1~25nmであることが好ましく、3~20nmであることがより好ましく、5~15nmであることが特に好ましい。
【0053】
上記カーボンナノチューブ(B-1)の長さとしては、1~100μmであることが好ましく、5~80μmであることがより好ましく、10~60μmであることが特に好ましい。
【0054】
上記カーボンナノチューブ(B-1)の比表面積としては、粘度及び導電性の関係から、1~1000m/gの範囲内であることが好ましく、10~500m/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0055】
上記平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)としては、カーボンナノチューブ(B-1)以外の球状、楕円体状、板状、鱗片状、または不定形状の導電性カーボンであり、平均一次粒子径としては、通常10~80nmであり、好ましくは15~60nmであり、より好ましくは20~50nmである。
【0056】
ここで、本発明の平均一次粒子径とは、顔料を電子顕微鏡で観察し、100個の粒子について、それぞれ投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径を求め、100個の粒子の直径を単純平均して求めた一次粒子の平均径をいう。なお、顔料が凝集状態になっていた場合は、凝集粒子を構成している一次粒子で計算をする。
【0057】
上記導電性カーボン(B-2)の種類としては、具体的には、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛等が挙げられる。これらの導電性カーボンは、2種以上を組み合せて用いることもできる。
【0058】
上記導電性カーボン(B-2)の比表面積としては、粘度及び導電性の関係から、1~500m/gの範囲内であることが好ましく、30~150m/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0059】
上記導電性カーボン(B-2)は、顔料分散性の関係から、塩基性であることが好ましく、具体的には、pHが7.5以上であることが好ましく、8.0~12.0であることがより好ましく、8.5~11.0であることがさらに好ましい。
【0060】
また、上記導電性カーボン(B-2)は、導電性の観点から、1次粒子が鎖状構造(ストラクチャー)を形成している状態が好ましく、ストラクチャー指数が1.5~4.0の範囲内であることがより好ましく、1.7~3.2の範囲内であることが特に好ましい。
【0061】
ストラクチャー自体は電子顕微鏡で撮影した画像でも比較的容易に観察できるが、ストラクチャー指数はストラクチャーの度合いを定量化した数値である。ストラクチャー指数は一般的にDBP吸油量(ml/100g)を比表面積(m/g)で割った値で定義することができる。ストラクチャー指数が1.5未満であると、ストラクチャーが発達していないために、十分な導電性が得ることができず、また、4.0を超えるとDBP吸油量に対して粒子径が大きいために導電経路が減少し、十分な導電性を示さなくなるか、又は合材ペーストの粘度が高くなる恐れがある。
【0062】
導電性顔料(B)は、カーボンナノチューブ(B-1)及び/又は平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)以外の導電性顔料を含有してもよい。形成される塗工膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状の形状の顔料を挙げることができる。具体的には、例えば、銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウム等の金属粉を挙げることができ、さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボン又はグラファイトのウィスカー表面に酸化錫等を被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料等が挙げられ、上記導電性顔料は2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0063】
導電性顔料(B)の含有量としては、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの総量を基準として、1~90質量%が好ましく、3~70質量%がより好ましく、5~50質量%が特に好ましい。また、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、10~99.9質量%が好ましく、30~99質量%がより好ましく、50~98質量%が特に好ましい。
【0064】
導電性顔料(B)がカーボンナノチューブ(B-1)を含有する場合、カーボンナノチューブ(B-1)の含有量は、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの総量を基準として、1~20質量%が好ましく、2~18質量%がより好ましく、3~15質量%が特に好ましい。また、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、10~99質量%が好ましく、30~95質量%がより好ましく、50~90質量%が特に好ましい。
【0065】
導電性顔料(B)が、平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)を含有する場合、導電性カーボン(B-2)の含有量は、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの総量を基準として、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。また、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、40~99.9質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましく、60~98質量%が特に好ましい。
【0066】
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B-1)及び平均一次粒子径が10~80nmの導電性カーボン(B-2)の両方を含有する場合、その重量比率(B-1)/(B-2)は、0.1/99.9~99.9/0.1の範囲となることが好ましく、1/99~90/10の範囲となることがさらに好ましい。
【0067】
<溶媒(C)>
上記導電性顔料ペーストで用いることができる溶媒(C)としては、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。具体的には、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(商品名、出光興産株式会社製、アミド系溶剤)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0068】
なかでも、導電性顔料ペーストで用いることができる溶媒(C)は、顔料分散樹脂(A)の溶解性及び導電性顔料ペーストの分散安定性の観点から、水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基等の極性官能基を持つ溶媒を含有することが好ましい。
【0069】
また、導電性顔料ペーストの分散性や樹脂を変質又は加水分解させない観点から、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで「実質的に水を含まない」とは、導電性顔料ペーストの全量を基準として、水の含有量が、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることをいう。
【0070】
本発明において、導電性顔料ペーストの水の分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定することができる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業株式会社製、製品名:MKC-610)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子(株)製、ADP-611)の設定温度は130℃として測定することができる。
【0071】
顔料分散樹脂(A)の溶解性及び導電性顔料ペーストの分散安定性の観点から、溶媒(C)の溶解性パラメーターδCが、10.0(cal/cm1/2以上であることが好ましく、10.4~15.0(cal/cm1/2の範囲内であることがより好ましく、10.5~13.0(cal/cm1/2の範囲内であることが特に好ましい。
【0072】
溶媒の溶解性パラメーターは、J.Brandrup及びE.H.Immergut編“Polymer Handbook” VII Solubility Parament Values,pp519-559(John Wiley& Sons社、第3版1989年発行)に記載される方法に従って求めることができる。2種以上の溶媒を組合せて混合溶媒として用いる場合、その混合溶媒の溶解性パラメーターは、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、個々の液状溶媒のモル分率と溶解性パラメーターとの積の総和により求めることもできる。
【0073】
本発明の「溶媒(C)の溶解性パラメーター」とは、導電性顔料ペーストに含まれる全ての溶媒(混合溶媒)の溶解性パラメーターのことである。
【0074】
顔料分散樹脂(A)の溶解性及び導電性顔料ペーストの分散安定性の観点から、顔料分散樹脂(A)の溶解性パラメーターδAと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとの差|δA-δC|が、|δA-δC|<2.1の関係であることが好ましく、|δA-δC|<2.0であることがより好ましく、|δA-δC|<1.8であることがより好ましく、|δA-δC|<1.6であることがさらに好ましい。
【0075】
<導電性顔料ペースト>
本発明の製造方法で用いることができる導電性顔料ペーストは、上記の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)の他に、任意選択で、その他の成分を含有することができる。
【0076】
その他の成分としては、顔料分散樹脂(A)以外の顔料分散樹脂、皮膜形成樹脂、中和剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、導電性顔料(B)以外の顔料等を挙げることができる。
【0077】
顔料分散樹脂(A)以外の顔料分散樹脂及び皮膜形成樹脂としては、例えば、上記顔料分散樹脂(A)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系樹脂、ジエン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0078】
なかでも、皮膜形成樹脂(D)を含有することが好ましい。皮膜形成樹脂(D)は、塗工膜の膜形成を目的とする樹脂であり、顔料分散樹脂(A)が必須成分としている極性官能基を実質的に含有していない低極性の樹脂であり、例えば、極性官能基濃度としては9mmol/g未満であり、好ましくは5mmol/g以下であり、より好ましくは1mmol/g以下であることが好適である。
【0079】
皮膜形成樹脂(D)としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、ジエン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びこれらの複合樹脂等が好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0080】
皮膜形成樹脂(D)は、顔料分散時に含有していてもよく、あるいは顔料分散後に添加して含有してもよい。皮膜形成樹脂(D)の重量平均分子量としては、基材との密着性、塗膜物性の補強、及び耐溶剤性の観点から、100,000以上であることが好ましく、500,000~3,000,000であることがより好ましい。また、皮膜形成樹脂(D)の溶解性パラメーターとしては、10未満であることが好ましく、9.3未満であることがより好ましい。
【0081】
また、樹脂の溶解性と貯蔵安定性の観点から、上記皮膜形成樹脂(D)の溶解性パラメーターδDと溶媒(C)の溶解性パラメーターδCとが、|δD-δC|<3.0の関係であることが好ましい。より好ましくは0≦|δD-δC|≦2.8、さらに好ましくは0.1≦|δD-δC|≦2.5の関係である。
【0082】
また、本発明の導電性顔料ペーストは、導電性顔料のぬれ性及び/又は分散安定性を上げる観点から、高極性低分子量成分を含有することが好ましい。
【0083】
高極性低分子量成分としては、塩基性又は酸性のものが好ましく、一部又は全部が塩であっても良い。なかでも、顔料が酸性の場合は塩基含有低分子量成分が好ましく、顔料が塩基性の場合は酸基含有低分子量成分が好ましい。
【0084】
高極性低分子量成分は、溶媒蒸発(加熱乾燥)後の導電性塗工膜又は導電性材料にできる限り残留しないことが耐水性等の観点から好適であり、分子量としては、1,000未満が好ましく、400未満がより好ましい。
【0085】
高極性低分子量成分としては、例えば、有機酸、無機酸、有機塩基及び無機塩基を用いることができる。有機酸としては、有機カルボン酸(ギ酸、グルタミン酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸等)、有機スルホン酸(ベンゼンスルホン酸等)等が、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が、有機塩基としては、アミン化合物(ピリジン、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、アニリン等)等が、無機塩基としては、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アンモニア等が、それぞれあげられる。
【0086】
上記高極性低分子量成分の含有量としては、導電性顔料(B)を基準として、0.01~2.0質量%含有することが好ましく、0.02~1.0質量%含有することがより好ましい。
【0087】
導電性顔料(B)以外の顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華等の白色顔料;シアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料;シアニングリーン、緑青等の緑色顔料;アゾ系やキナクリドン系等の有機赤色顔料、ベンガラ等の赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機黄色顔料、チタンイエロー、黄鉛等の黄色顔料等が挙げられる。これらの顔料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの導電性顔料(B)以外の顔料は、導電性を大きく損なわない範囲内で色調整や膜の物性補強等の目的で使用することができ、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)と共に同時に分散してもよく、また、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)を分散してペーストを作成した後に顔料又は顔料ペーストとして混ぜても良い。
【0088】
上記導電性顔料(B)以外の顔料の含有量としては、導電性顔料ペースト中の全顔料を基準として、10質量以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0089】
本発明で製造した導電性顔料ペーストは、製造後に新たに導電性顔料(B-3)を混合することができる。
【0090】
製造後に添加する導電性顔料(B-3)としては、導電性の観点からカーボンナノチューブ、導電カーボン等が好ましく、分散剤や溶媒等を含んだ分散液(ペースト)であっても良い。また、後述する合材ペーストを製造後に、導電性顔料(B-3)と合材ペーストとを混合しても良い。
上記導電性顔料ペーストの製造後に導電性顔料(B-3)を添加する場合、上記導電性顔料(B)と導電性顔料(B-3)の含有比率としては、固形分質量の比率で1/99~99/1が好ましい。
【0091】
<導電性顔料ペーストの製造方法>
本発明の導電性顔料ペーストの製造方法では、以上に述べた各成分を、メジアレス分散機により混合及び分散する。
【0092】
メジアレス分散機は、メジアとなるボール、ビーズ等を含有しないため、分散時の顔料の破壊や異物混入等を防ぎつつ混合及び分散を行うことが可能である。
【0093】
本発明で用いるメジアレス分散機は、分散性及び製造効率の観点から、ケーシング内にローター及びステーターを有し、ローター及びステーターが混合、分散、及びポンプの機能を有することが好ましい。
【0094】
本発明では、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び任意選択でその他の成分を混合して得られた液体原料(L)に、導電性顔料(B)を含有する粉体原料(P)を投入し、メジアレス分散機により混合及び分散を行う。
【0095】
前記液体原料(L)は、粉体原料(P)を投入する前にメジアレス分散機に投入する。このとき、液体原料(L)の複数の含有成分をメジアレス分散機によって混ぜ合わせてもよい。
【0096】
粉体原料(P)は、連続的に投入しても良いし、複数回に分けて投入してもよい。また、メジアレス分散機を停止して粉体原料(P)を一部投入してから運転する、を複数回繰り返すことで粉体原料(P)の投入を行ってもよい。ただし、混合及び分散を効率的に行う観点から、メジアレス分散機を運転させながら粉体原料(P)を投入することがより好ましい。
【0097】
粉体原料(P)は、粉体原料の飛散防止及び生産効率の観点から、吸引によってメジアレス分散機に投入されることが好ましい。中でも、メジアレス分散機がローターを有し、ローターが回転する際に生じる負圧によって、粉体原料(P)を分散機内に吸引投入することが特に好ましい。ローターが回転する際に生じる負圧によって粉体原料(P)を吸引投入すると、分散機を作動させながら系内に徐々に粉体原料(P)を投入することができるため、より効率的な分散が可能となる。このようなメジアレス分散機の市販品としては、例えば、(株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS、IKA社製:商品名CMX等が挙げられる。
【0098】
本発明では、より分散性の高い導電性ペーストを作成するために、前述のメジアレス分散機による混合及び分散の後、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ペブルボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、捏和機、押出機、遊星式混錬機からなる群より選ばれる少なくとも一種の分散機によってさらに追加分散を行うことが好ましい。中でも、追加分散においては、アニュラー型ビーズミル、超高速ホモジナイザー、及び高圧ホモジナイザーが好適である。
【0099】
アニュラー型ビーズミルとは、円筒状のローターを有するベセル容器内部にビーズが充填されているビーズミルである。回転するローターとベセル容器の内壁面との間を分散されるペーストが通過する際に分散が行われる機構となっている。他の方式に比べて比較的狭い領域をペーストが通過することから、ビーズの偏りやショートパスが少なく、ペーストの分散効率が均一となる。アニュラー型ビーズミルの市販品としては、例えば、EIRICH社製:商品名DCPミル、(株)井上製作所製:商品名スパイクミル、浅田鉄工(株)製:商品名タフミル、アシザワ・ファインテック(株)社製:商品名スターミルLMZ等が挙げられる。
【0100】
上記アニュラー型ビーズミルは、分散性の観点から、2軸駆動方式であることがより好ましい。本発明において、2軸駆動方式のアニュラー型ビーズミルとは、円筒状のローターの内側にステーター、スクリュー、スクリーン等が形成されたビーズミルであり、1軸駆動方式よりもビーズの偏りやショートパスが軽減される。2軸駆動方式のアニュラー型ビーズミルとしては、具体的には、例えば、特開平10-005560号公報、特開2003-1082号公報、特開2006-7128号公報等に記載されたビーズミルが挙げられる。
【0101】
上記2軸駆動方式のアニュラー型ビーズミルは、分散性の観点から、ローターの内側のスクリュー、スクリーン等が回転する事が好ましい。ローターの回転と逆の方向に回転させることで、高濃度のペーストを分散させることができる。
【0102】
上記2軸方式のアニュラー型ビーズミルにおいて、分散されたペーストを分離する機構としては、上記特開平10-005560号公報等ではスクリーンタイプを用いているが、本発明においてはスクリーンタイプに限定されず、遠心分離タイプ、ギャップタイプなどを用いてもよい。
【0103】
前記超高速ホモジナイザーは、内刃を有するローターが高速回転するメジアレス分散機である。高速回転する内刃との衝突、及び高速回転によって外壁又は固定外刃との間に生じるせん断力によって、粒子が微細化及び均一化する。超高速ホモジナイザーの市販品としては、例えば、エム・テクニック(株)社製:商品名クレアミックス、プライミクス(株)社製:商品名フィルミックス等が挙げられる。
【0104】
前記高圧ホモジナイザーは、ポンプによる加圧で、狭い間隙にペーストを通過させることで、粒子間の衝突、圧力差による剪断力で分散、微細化、均一化を行うメジアレス分散機である。高圧ホモジナイザーの市販品としては、例えば、吉田機械興業(株)社製:商品名ナノヴェイタ、(株)スギノマシン社製:商品名スターバースト等が挙げられる。
【0105】
<合材ペースト>
本発明の製造方法で用いられる合材ペーストは、前記導電性顔料ペーストに含まれる顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)を必須成分とするものであって、さらに任意選択で、その他の樹脂、顔料、溶媒、添加剤等の成分を導電性顔料ペーストに添加することができる。
【0106】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0107】
顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料、防錆顔料、金属粒子等が挙げられる。これらの顔料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、合材ペーストを電池用電極層の材料として用いる場合は電極活物質を含有することが好ましい。電極活物質としては、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi1/3Co1/3Mn1/32等のリチウム複合酸化物等が挙げられる。これらの電極活物質は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
電極活物質を含有する場合、上記合材ペースト固形分中の電極活物質の固形分含有量は、通常70~99.9質量%、好ましくは80~99質量%であることが、電池容量及び電池抵抗などの面から好適である。
【0108】
溶媒としては、特に制限はないが、前述した溶媒(C)と同様の溶媒を好適に用いることができる。上記溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0109】
添加剤としては、中和剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、粘性調整剤等が挙げられる。
【0110】
合材ペースト中の顔料分散樹脂(A)の含有量は、合材ペースト中の固形分総量を基準として、通常0.01~80質量%、好ましくは0.02~50質量%、より好ましくは0.05~20質量%、特に好ましくは0.08~10質量%であることが、顔料分散時の粘度、顔料分散性、貯蔵安定性、生産効率、及び導電性等の面から好ましい。
【0111】
合材ペーストは、以上に述べた各成分を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ペブルボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、捏和機、押出機、遊星式混錬機等の従来公知の撹拌機又は分散機を用いて均一に混合又は分散させることにより調製することができる。
【0112】
<塗工膜(電極層)>
前述の合材ペーストを被塗物に塗布(塗工)することで塗工膜が形成される。
【0113】
本発明において、塗工膜とは、液状の合材ペーストを被塗物(基材)に塗布して加熱乾燥した固形状の膜のことであり、被塗物から剥がして導電性フィルムを得ることや、板状被塗物(基材)の両面に塗工して導電性材料を得ることもできる。
【0114】
被塗物は特に限定されるものではなく、例えば、金属材;各種プラスチック材;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、これらの複合材料であってもよい。また、これらの被塗物は、任意選択で、適宜、脱脂処理、表面処理等することができる。
なお、塗工膜を電池用電極層として集電材に塗布(塗工)することが好ましい。
上記電極層は、例えば、リチウムイオン電池の正極または負極として用いることができる。
【0115】
塗布方法としては、一定の膜厚範囲内で塗布できるものであれば特に限定されず、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、霧化塗装、ディッピング塗装、アプリケーター塗装、シャワーコート塗装、ロールコーター塗装、ダイコーター塗装等が挙げられる。
【0116】
膜厚としては、乾燥膜厚で1~200μmが好ましく、2~150μmがより好ましい。
乾燥温度としては、60~300℃の温度が好ましく、80~200℃の温度がより好ましい。
【0117】
加熱乾燥することにより、合材ペーストに含まれる溶媒が80%以上消失することが好ましく、90%以上消失することがより好ましく、95%以上消失することが特に好ましい。また、高極性低分子量成分を含有している場合、上記の加熱乾燥により、一部又は全部が消失することが好ましい。
【実施例0118】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0119】
<顔料分散樹脂(A)の製造方法>
製造例1 顔料分散樹脂A1の製造
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90部及びアクリル酸10部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて、約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、カルボン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(顔料分散樹脂A1)を得た。得られた顔料分散樹脂A1は、けん化度が90mol%、SP値が12.5(cal/cm1/2、水酸基濃度が19.2mmol/g、カルボキシル基濃度が2.1mmol/g、重量平均分子量が17,000であった。
【0120】
製造例2 顔料分散樹脂A2の製造
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90及びアクリル酸10部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて、約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、カルボン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(顔料分散樹脂A2)を得た。得られた顔料分散樹脂A2は、けん化度が60mol%、SP値が11.2(cal/cm1/2、水酸基濃度が10.1mmol/g、カルボキシル基濃度が1.7mmol/g、重量平均分子量が18,000であった。
【0121】
製造例3 顔料分散樹脂A3の製造
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル97部及びビニルスルホン酸3部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて、約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、スルホン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(顔料分散樹脂A3)を得た。得られた顔料分散樹脂A3は、けん化度が97mol%、SP値が12.5(cal/cm1/2、水酸基濃度が21.1mmol/g、スルホン酸基濃度が0.65mmol/g、重量平均分子量が15,000であった。
【0122】
製造例4 顔料分散樹脂A4の製造
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル97部及びビニルスルホン酸3部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて、約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、スルホン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(顔料分散樹脂A4)を得た。得られた顔料分散樹脂A4は、けん化度が90mol%、SP値が12.2(cal/cm1/2、水酸基濃度が18.4mmol/g、スルホン酸基濃度が0.61mmol/g、重量平均分子量が16,000であった。
【0123】
製造例5 顔料分散樹脂A5の製造
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90部及び1-ペンテン-4,5-ジオール10部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて、約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、ジオール変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(顔料分散樹脂A5)を得た。得られた顔料分散樹脂A5は、けん化度が90mol%、SP値が12.6(cal/cm1/2、水酸基濃度が22.7mmol/g、重量平均分子量が15,000であった。
【0124】
製造例6 顔料分散樹脂A6の製造
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル100部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて、約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(顔料分散樹脂A6)を得た。得られた顔料分散樹脂A6は、けん化度が90mol%、SP値が12.0(cal/cm1/2、水酸基濃度が18.6mmol/g、重量平均分子量が20,000であった。
【0125】
製造例7 顔料分散樹脂A9の製造
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90及びアクリル酸10部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて、約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してけん化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥し、カルボン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(顔料分散樹脂A9)を得た。得られた顔料分散樹脂A9は、けん化度50mol%、SP値が10.6(cal/cm1/2、水酸基濃度が5.9mmol/g、カルボキシル基濃度が1.5mmol/g、重量平均分子量が20,000であった。
【0126】
<導電性顔料ペーストの製造方法>
実施例1~25、比較例1~2
表1~3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料をメジアレス分散機((株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS)に投入し、次いで導電性顔料(B)の粉体原料を吸引投入して、混合及び分散を150パス行った。続いて特開平10-005560号公報に記載の2軸駆動型のアニュラー型ビーズミルにて分散処理を10パス行い、導電性顔料ペーストX-1~X-25、X-34~X-35を得た。
【0127】
実施例26
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料をメジアレス分散機((株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS)に投入し、次いで導電性顔料(B)の粉体原料を吸引投入して、混合及び分散を800パス行い、導電性顔料ペーストX-26を得た。
【0128】
実施例27
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料をメジアレス分散機((株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS)に投入し、次いで導電性顔料(B)の粉体原料を吸引投入して、混合及び分散を150パス行った。続いて1軸駆動型のアニュラー型ビーズミル(アシザワ・ファインテック(株)社製:商品名スターミルLMZ)にて分散処理を40パス行い、導電性顔料ペーストX-27を得た。
【0129】
実施例28
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料をメジアレス分散機((株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS)に投入し、次いで導電性顔料(B)の粉体原料を吸引投入して、混合及び分散を150パス行った。続いて超高速ホモジナイザー(プライミクス(株)社製:商品名フィルミックス)にて分散処理を600パス行い、導電性顔料ペーストX-28を得た。
【0130】
実施例29
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料をメジアレス分散機((株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS)に投入し、次いで導電性顔料(B)の粉体原料を吸引投入して、混合及び分散を150パス行った。続いて高圧ホモジナイザー(吉田機械興業(株)社製:商品名ナノヴェイタ)にて分散処理を10パス行い、導電性顔料ペーストX-29を得た。
【0131】
実施例30
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料をメジアレス分散機((株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS)に投入し、次いで導電性顔料(B)の粉体原料を吸引投入して、混合及び分散を150パス行った。続いてディスク型ビーズミル((株)シンマルエンタープライゼス社製:商品名DYNO-MILL)にて分散処理を110パス行い、導電性顔料ペーストX-30を得た。
【0132】
実施例31
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料及び導電性顔料(B)を、ホモジナイザー(IKA社製:商品名ULTRA-TURRAX)に投入して、1.5時間混合及び分散を行い、導電性顔料ペーストX-31を得た。
【0133】
実施例32
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料及び導電性顔料(B)を、ホモジナイザー(IKA社製:商品名ULTRA-TURRAX)に投入して、1.5時間混合及び分散を行った。続いて特開平10-005560号公報に記載の2軸駆動型のアニュラー型ビーズミルにて分散処理を10パス行い、導電性顔料ペーストX-32を得た。
【0134】
実施例33
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料及び導電性顔料(B)を、ホモジナイザー(IKA社製:商品名ULTRA-TURRAX)に投入して、1.5時間混合及び分散を行った。続いて超高速ホモジナイザー(プライミクス(株)社製:商品名フィルミックス)にて分散処理を600パス行い、導電性顔料ペーストX-33を得た。
【0135】
比較例3
表3に記載した種類及び量の顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、及び溶媒(C)について、顔料分散樹脂(A)を溶媒(C)に溶解した液体原料及び導電性顔料(B)を、ディスク型ビーズミル((株)シンマルエンタープライゼス社製:商品名DYNO-MILL)に投入して、分散処理を110パス行い、導電性顔料ペーストX-36を得た。
【0136】

<表1>
【0137】
<表2>
【0138】
<表3>
【0139】
表中の顔料分散樹脂(A)種、導電性顔料(B)種、溶媒(C)種、及び分散機種について、以下に示す。
【0140】
[顔料分散樹脂(A)]
表中の顔料分散樹脂配合量は固形分の値である。
A1:カルボン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(けん化度90mol%、SP値:12.5、水酸基濃度:19.2mmol/g、カルボキシル基濃度:2.1mmol/g、重量平均分子量:17,000)
A2:カルボン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(けん化度60mol%、SP値:11.2、水酸基濃度:10.1mmol/g、カルボキシル基濃度:1.7mmol/g、重量平均分子量:18,000)
A3:スルホン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(けん化度97mol%、SP値:12.5、水酸基濃度:21.1mmol/g、スルホン酸基濃度:0.65mmol/g、重量平均分子量:15,000)
A4:スルホン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(けん化度90mol%、SP値:12.2、水酸基濃度:18.4mmol/g、スルホン酸基濃度:0.61mmol/g、重量平均分子量:16,000)
A5:ジオール変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(けん化度90mol%、SP値:12.6、水酸基濃度:22.7mmol/g、重量平均分子量:15,000)
A6:酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(けん化度90mol%、SP値:12.0、水酸基濃度:18.6mmol/g、重量平均分子量:20,000)
A7:ポリビニルピロリドン(SP値:12.8、アミド基濃度:9.1mmol/g、重量平均分子量:10,000)
A8:ポリアクリル酸(SP値:13.0、カルボキシル基濃度:13.9mmol/g、重量平均分子量:15,000)
A9:カルボン酸変性酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体(けん化度50mol%、SP値:10.6、水酸基濃度:5.9mmol/g、カルボキシル基濃度:1.5mmol/g、重量平均分子量:20,000)
A10:ポリメタクリル酸メチル(SP値:9.23、極性基濃度0mmol/g、重量平均分子量:21,000)
【0141】
[導電性顔料(B)]
B1:カーボンナノチューブ(多層、平均外径:9nm、平均長さ:20μm)
B2:カーボンナノチューブ(多層、平均外径:13nm、平均長さ:30μm)
B3:カーボンナノチューブ(多層、平均外径:150nm、平均長さ:6μm)
B4:カーボンブラック(アセチレンブラック、平均一次粒子径:50nm)
B5:カーボンブラック(アセチレンブラック、平均一次粒子径:20nm)
B6:黒鉛(平均一次粒子径:10μm)
【0142】
[溶媒(C)]
C1:N,N-ジメチルアセトアミド(SP値:11.1)
C2:N-メチル-2-ピロリドン(SP値:11.2)
C3:n-ブタノール(SP値:11.4)
C4:プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.4)
【0143】
[分散機]
α:メジアレス分散機((株)ダルトン社製:商品名Conti-TDS)
β:ホモジナイザー(IKA社製:商品名ULTRA-TURRAX)
γ:特開平10-005560号公報に記載の2軸駆動型のアニュラー型分散機
δ:1軸駆動型のアニュラー型ビーズミル(アシザワ・ファインテック(株)社製:商品名スターミルLMZ)
ε:超高速ホモジナイザー(プライミクス(株)社製:商品名フィルミックス)
ζ:高圧ホモジナイザー(吉田機械興業(株)社製:商品名ナノヴェイタ)
η:ディスク型ビーズミル((株)シンマルエンタープライゼス社製:商品名DYNO-MILL)
【0144】
<評価試験>
上記の製造方法で作成された導電性顔料ペーストについて、下記評価方法によって評価試験を行った。その評価結果を表1~3に示す。本発明においては、評価試験における全項目の性能に優れていることが重要であり、いずれか1つに「C」の評価がある場合、その導電性顔料ペーストは不合格となる。
【0145】
[水分量]
得られた導電性顔料ペーストの水分含有量を、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業株式会社製、製品名:MKC-610)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子(株)製、ADP-611)の設定温度を130℃として測定した。
導電性顔料ペーストの総量を基準として水分の含有割合を算出し、下記基準により評価した。
S:水分含有量が、0.1質量%未満である。
A:水分含有量が、0.1質量%以上、かつ0.5質量%未満である。
B:水分含有量が、0.5質量%以上、かつ1質量%未満である。
C:水分含有量が、1質量%以上である。
【0146】
[粘度]
得られた導電性顔料ペーストについて、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名:Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度1.0sec-1で粘度を測定し、下記基準により評価した。
S:粘度が、1.0Pa・s未満である。
A:粘度が、1.0Pa・s以上、かつ2.0Pa・s未満である。
B:粘度が、2.0Pa・s以上、かつ5.0Pa・s未満である。
C:粘度が、5.0Pa・s以上である。
【0147】
[貯蔵安定性(粘度上昇率)]
得られた顔料分散ペーストを50℃の温度で1ヶ月貯蔵を行い、初期粘度と貯蔵後の粘度の比較を行なった。粘度は、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名:Mars2、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度1.0s-1で測定し、下記式により粘度上昇率を評価した。
【0148】
粘度上昇率(%)=貯蔵後粘度/初期粘度×100-100
S:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、30%未満である。
A:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、30%以上、かつ100%未満である。
B:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、100%以上、かつ200%未満である。
C:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、200%以上である。
【0149】
[導電性(体積抵抗率)]
体積抵抗率測定では、バインダーとしてKFポリマーL#7305(商品名、ポリフッ化ビニリデンの5%溶液、溶媒N-メチル-2-ピロリドン、クレハ社製)を使用した。
【0150】
導電性顔料としてカーボンナノチューブを用いる(又は主にカーボンナノチューブを用いる)実施例1~16、21、23~33、及び比較例1~2及び4の導電性顔料ペーストについては、以下の方法により測定、評価を行った。
【0151】
導電性顔料ペースト中の導電性顔料とKFポリマーL#7305中のポリフッ化ビニリデンとの質量比が5:100となるように、実施例及び比較例で得られた各導電性顔料ペーストとKFポリマーL#7305を量り取り、超音波ホモジナイザーで2分間混合して塗工材を得た。
【0152】
ガラス板(2mm×100mm×150mm)へ塗工材をドクターブレード法にて塗工して、130℃で30分加熱乾燥した。得られた塗工膜について、膜厚を測定した後、四探針プローブ(三菱化学製、PSP)を用いて、ソースメータ(ケースレー製、2400)により抵抗を測定した。塗工膜の膜厚と抵抗値を乗じ、体積抵抗率を得た。評価としては、S、A、B、Cが合格で、Dが不合格である。
S:体積抵抗率が、10Ω・cm未満であり、導電性は非常に良好である。
A:体積抵抗率が、10Ω・cm以上、かつ15Ω・cm未満であり、導電性は良好である。
B:体積抵抗率が、15Ω・cm以上、かつ20Ω・cm未満であり、導電性は普通である。
C:体積抵抗率が、20Ω・cm以上であり、導電性は劣る。又は平滑性のある塗工膜が作成できなかった。
【0153】
導電性顔料としてカーボンブラック(アセチレンブラック)又は黒鉛を用いる(又は主にカーボンブラック(アセチレンブラック)を用いる)実施例17~20、22、及び比較例3の導電性顔料ペーストについては、以下の方法で測定、評価を行った。
導電性顔料ペースト中の導電性顔料とKFポリマーL#7305中のポリフッ化ビニリデンとの質量比が85:10となるように、実施例及び比較例で得られた各導電性顔料ペーストとKFポリマーL#7305を量り取り、超音波ホモジナイザーで2分間混合して塗工材を得た。
【0154】
ポリプロピレン板(10cm×15cm×3mm)の上にアルミ箔テープ(住友3M社製、No.425)を3cm間隔で平行に2本貼り付けた。次いで、得られた塗工材をアルミ箔テープの間に長さ5cm、乾燥膜厚15μmになるようにアプリケーターで塗装し、室温で2分間放置してから、80℃で10分間加熱乾燥し、幅3cm×長さ5cm×膜厚15μmの乾燥塗膜を作成した。
【0155】
アルミ箔テープ間に塗装した乾燥塗膜の体積抵抗率を計測機(横河計測社製、商品名ディジタルマルチメーターMODEL73401)を用いて20℃、相対湿度65%の状態下で測定し、下記基準により導電性を評価した。
S:体積抵抗率が、0.005Ω・m未満であり、導電性は非常に良好である。
A:体積抵抗率が、0.005Ω・m以上、かつ0.008Ω・m未満であり、導電性は良好である。
B:体積抵抗率が、0.008Ω・m以上、かつ0.01Ω・m未満であり、導電性はやや劣る。
C:体積抵抗率が、0.01Ω・m以上であり、導電性は非常に劣る。
【0156】
<合材ペースト及び電極層の製造>
応用例Y-1~Y-33、Z-1~Z-33
実施例1~33で得られた導電性顔料ペースト100部に、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドを50部、ポリフッ化ビニリデン(重量平均分子量80万)を1部、及び、活物質粒子(リチウムニッケルマンガン酸化物、平均粒子径:5μm)を50部加え、ディスパーを用いて60分間混合攪拌し、応用例Y-1~Y-33となる合材ペーストY-1~Y-33を得た。
【0157】
続いて、アルミニウム箔(集電体)上に、上記合材ペーストY-1~Y-33をアプリケーターで乾燥膜10μmになるように塗工し、180℃の温度で40分間乾燥し、応用例Z-1~Z-33となる電極層Z-1~33を得た。
【0158】
得られた電極層はいずれも残存溶媒量が1%未満であり、仕上がり性及び電池性能が良好な電極層であった。