(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176948
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】塩基性添加物を含むポリマー組成物、方法および前記ポリマー組成物を含む物品
(51)【国際特許分類】
D01F 2/28 20060101AFI20221122BHJP
C08L 1/10 20060101ALI20221122BHJP
C08L 3/06 20060101ALI20221122BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20221122BHJP
C08K 5/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
D01F2/28 Z
C08L1/10
C08L3/06
C08K3/18
C08K5/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022128105
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020115283の分割
【原出願日】2015-12-10
(31)【優先権主張番号】14197348.7
(32)【優先日】2014-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513153721
【氏名又は名称】ソルベイ アセトウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホルター, ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ラペルソンネ, フィリップ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高められた生分解性を示すポリマー組成物を含む、繊維およびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物を含む繊維であって、前記少なくとも1つの塩基性添加物が、20℃で水中の1重量%溶液で測定されるときに13以下および7以上のpHを有する、繊維を提供する。前記ポリマー組成物中の少なくとも1つのポリマーが多糖エステルからなる群から選択されることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物であって、前記少なくとも1つの塩基性添加物が、20℃で水中の1重量%溶液で測定されるときに13以下および7以上のpHを有する組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリマーが、多糖エステル、特にセルロースエステルまたはデンプンエステルからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリマーがセルロースエステルであり、そして前記少なくとも1つのセルロースエステルが、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、ZnOおよび塩基性Al2O3からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、20℃で10-6~70g/100mL水の溶解度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、NaHCO3、ZnO、Na2CO3、およびKHCO3からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、群K2CO3および塩基性Al2O3から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、細かく分布した粒子の形態で前記ポリマー組成物中に存在し、D90粒子径が10μm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、0.01~40重量%の量で細かく分布した粒子の形態で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、少なくとも1個のカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒で起こる自動縮合反応の少なくとも1つの抑制剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの抑制剤が、カルボン酸およびアルコールからなる群から選択される、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの抑制剤が、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸およびグリセロールからなる群から選択される、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの抑制剤が、0.001~10重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項9~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物の製造方法、または請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、少なくとも1つの工程が、a)前記少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に前記少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で前記少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後前記少なくとも1つの溶媒を分離して本発明によるポリマー組成物を得る工程、b)前記少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に前記少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で前記少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後結果として生じた混合物を紡糸して前記ポリマー組成物を含む繊維を得る工程、c)前記少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に前記少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で前記少なくとも1つのポリマーと接触させ、そしてここで、結果として生じた混合物がその後、前記ポリマー組成物を含むフィルムを得るために、フィルム生成法、好ましくはフィルムキャスティング法で処理される工程、d)前記少なくとも1つの塩基性添加物を、前記少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、前記少なくとも1つのポリマーと接触させ、任意選択的に前記混合物を冷却して本発明によるポリマー組成物を得る工程、ならびにe)前記少なくとも1つの塩基性添加物をおよび、前記少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、前記少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後前記混合物を押し出すおよび/またはフィルムブローして前記ポリマー組成物を含む成形部品、繊維、フィルム、深延伸フィルム、射出成形品、厚壁成形部品、粒状体、マイクロビーズ、ビーズ、容器またはフラワーポットを得る工程の群から選択される少なくとも1つの工程を含む方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含むフィルタトウ、または請求項14に記載の少なくとも1つの工程b)を含む方法によって製造された繊維を含むフィルタトウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、欧州特許出願第14197348.7号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物、およびポリマー組成物またはポリマー組成物を含む物品を得るための少なくとも1つのプロセス工程を含む方法に関する。
【0003】
ポリマー組成物を含む物品は、同時にあらゆる場所に存在する。多くの場合、ポリマー組成物を含む物品、例えば包装材料、結合材および葉巻きたばこのフィルタは、短いライフサイクルを有し、使用後に捨てられる。不適切な廃棄による環境汚染は課題になっている。環境中でのポリマー汚染物質の滞留期間を短くするために、向上した生分解性をポリマー組成物に提供することが望ましい。ポリマー組成物の生分解性を高めることによって埋立地でのポリマー汚染物質の滞留時間を短くすることがさらに望ましい。
【0004】
国際公開第9410238号パンフレットは、セルロースエステルをある種の塩基性加水分解促進剤と接触させることによるセルロースエステルの生分解性の向上方法を開示している。
【0005】
少なくとも1つの塩基性添加物が20℃で水中の1重量%溶液で測定されるときに13以下および7以上のpHを有する、少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物は、少なくとも1つの添加物を含まない組成物よりも向上した生分解性を示すことが見いだされた。この効果は、低い溶解性の塩基性添加物を含むポリマー組成物で特に有利である。少なくとも1つの添加物は、加水分解促進剤として働くよりもむしろ分解微生物のための生育に適した場所を生み出し;低い溶解性は、添加物がポリマー組成物からゆっくり浸出し、それによって分解微生物にとって潜在的に有害な過度に塩基性の状態を回避するので有利であると考えられる。さらに、低い溶解性の塩基性添加物のゆっくりした浸出は、添加物のより長い、安定した放出を提供し;したがって、効果は、長期間維持され得る。
【0006】
本発明はそれ故、少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物であって、少なくとも1つの塩基性添加物が、20℃で水中の1重量%溶液で測定されるときに13以下および7以上のpHを有する組成物に関する。ポリマー組成物は一般に、少なくとも1つの添加物を含まないポリマー組成物と比べて向上した生分解性を示す。添加物はしたがって、ポリマー組成物の生分解性を高める添加物である。ポリマー組成物は、少なくとも1個のカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒で起こる自動縮合反応(酸性または塩基性触媒作用下に多くの場合起こる反応)の少なくとも1つの抑制剤をさらに含むことができる。本発明の別の態様は、本発明によるポリマー組成物の製造方法、または本発明によるポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、少なくとも1つの工程が、
a)少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後少なくとも1つの溶媒を分離して本発明によるポリマー組成物を得る工程、
b)少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後結果として生じた混合物を紡糸してポリマー組成物を含む繊維を得る工程、
c)少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後フィルムキャスティング法を適用してポリマー組成物を含むフィルムを得る工程、
d)少なくとも1つの塩基性添加物を、少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、少なくとも1つのポリマーと接触させ、任意選択的に混合物を冷却して本発明によるポリマー組成物を得る工程、
e)少なくとも1つの塩基性添加物を、少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後得られた混合物を押し出すおよび/またはフィルムブローしてポリマー組成物を含む成形部品、繊維、フィルム、深延伸フィルム、射出成形品、厚壁成形部品、特にフラワーポット、粒状体、マイクロビーズ、ビーズまたは容器を得る工程
からなる工程の群から選択される、少なくとも1つの工程を含む方法に関する。
【0007】
別の態様では、本発明は、本発明のポリマー組成物を含むフィルタトウ、または上述の方法による少なくとも1つの工程b)を含む方法によって製造された繊維を含むフィルタトウに関する。
【0008】
本発明によるポリマー組成物中に含まれる少なくとも1つのポリマーは生分解性ポリマーである。多くの場合、少なくとも1つのポリマーはバイオポリマーである。特に、少なくとも1つのポリマーは、多糖、好ましくはセルロースまたはデンプンをベースとするポリマーである。好ましくは、少なくとも1つのポリマーは多糖のエステルである。より好ましくは、少なくとも1つのポリマーは、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートからなる群から選択されるセルロースエステルである。セルロースアセテートが最も好ましい。セルロースエステルの平均置換度(DS)は、1.5~3.0、とりわけ2.2~2.7であり、これはとりわけセルロースアセテートのケースである。セルロースエステルでの最適平均重合度は、150~500、とりわけ180~280である。別の態様では、少なくとも1つのポリマーは、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンおよびポリヒドロキシ酪酸からなる群から選択される。
【0009】
本発明によれば、「塩基性添加物」は、20℃で水中の1重量%溶液で測定されるときに13以下および7以上のpHを有する添加物を意味することを意図する。一般に、塩基性添加物は、20℃で水中の1重量%溶液で測定される13以下のpH;好ましくは、20℃で水中の1重量%溶液で測定される12以下のpH、最も好ましくは20℃で水中の1重量%溶液で測定される11以下のpHを有する。一般に、塩基性添加物は、20℃で水中の1重量%溶液で測定される7以上のpH;好ましくは、20℃で水中の1重量%溶液で測定される7.8以上のpH;最も好ましくは20℃で水中の1重量%溶液で測定される8.5以上のpHを有する。20℃で水中の1重量%溶液で測定される8.5~11のpHの塩基性添加物が特に有利である。pHは、標準手順に従って、例えばガラスpH電極で測定される。
【0010】
一般に、少なくとも1つの塩基性添加物は、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、ZnOおよび塩基性Al2O3からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、NaHCO3、Na2CO3、K2CO3、ZnO KHCO3および塩基性Al2O3からなる群から選択される。別の好ましい態様では、少なくとも1つの塩基性添加物は、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、NaHCO3、K2CO3、ZnO、KHCO3および塩基性Al2O3からなる群から選択される。より好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、MgO、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、ZnO、および塩基性Al2O3からなる群から選択される。一態様では、アルカリ土類金属酸化物、ZnOおよび塩基性Al2O3が、塩基性添加物として特に好ましく;したがって、少なくとも1つの塩基性添加物はより好ましくは、MgO、ZnO、CaOおよびAl2O3からなる群から、さらにより好ましくはMgO、CaOおよびZnOからなる群から選択される。MgOが最も好ましい塩基性添加物である。
【0011】
多くの場合、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で10-5~70g/100mL水の溶解度を有する。一般に、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で10-6g以上/100mL水の溶解度を有する。好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で10-5g以上/100mL水の溶解度を有する。最も好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で10-4g以上/100mL水の溶解度を有する。一般に、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で70g以下/100mL水の溶解度を有する。好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で10g以下/100mL水の溶解度を有する。より好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で1g以下/100mL水の溶解度を有する。最も好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、20℃で0.1g以下/100mL水の溶解度を有する。水中約10-4g/100mL(20℃)の溶解度の添加物についての例は、MgO、ZnOおよびMg(OH)2である。水中約10-2g/100mL(20℃)の溶解度の添加物についての一例はMgCO3である。水中約0.1g/100mL(20℃)の溶解度の添加物についての例は、CaOおよびCa(OH)2である。
【0012】
別の態様では、少なくとも1つの塩基性添加物は多くの場合、K2CO3および塩基性Al2O3からなる群から選択される。
【0013】
一般に、少なくとも1つの塩基性添加物は、細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。
【0014】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの塩基性添加物は、D90粒子径が10μm以下である、細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。より好ましくは、細かく分布した塩基性添加物のD90粒子径は5μm以下である。より好ましくは、細かく分布した塩基性添加物のD90粒子径は3μm以下である。2μm以下の粒径が最も好ましい。一般に、少なくとも1つの塩基性添加物のD90粒子径の下限は、本発明にとって決定的に重要であるわけではない。記載された粒径の粒子は、当業者に公知の手順、例えば、ミル、例えば、ボールミルもしくはWAB Dyno(登録商標)Mill Multi Labなどのビーズミルでの、湿式もしくは乾式すり潰しによって得ることができる。粒子はまた、顔料、充填材または着色剤などの、他の添加物の存在下で添加物をすり潰すことによって得られてもよい。D90粒子径は好ましくは、例えば、Helos(登録商標)BRなどのレーザー回折センサを使って、レーザー回折によって測定することができる。
【0015】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの塩基性添加物は、0.01~40重量%の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。用語「重量%」は、例えば、顔料、充填材または着色剤などの他の添加物を含む、全ポリマー組成物の重量に関連している。多くの場合、少なくとも1つの塩基性添加物は、0.01重量%以上の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、0.05重量%以上の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。最も好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、0.1重量%以上の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。多くの場合、少なくとも1つの塩基性添加物は、40重量%以下の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、30重量%以下の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。より好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、20重量%以下の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。さらにより好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、10重量%以下の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。最も好ましくは、少なくとも1つの塩基性添加物は、8重量%以下の量で細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。
【0016】
本発明の一実施形態では、ポリマー組成物は、少なくとも1つの添加物に加えて、少なくとも1個のカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒で起こる自動縮合反応の少なくとも1つの抑制剤を含む。向上した生分解性への少なくとも1つの塩基性添加物の有利な効果は、少なくとも1個のカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒であって、ポリマー組成物のさらなる処理において存在し得る、少なくとも1つの塩基性添加物の存在下で自動縮合を受ける可能性がある溶媒への少なくとも1つの塩基性添加物の触媒効果を伴い得ることが観察された。自動縮合は、例えば、少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物がアセトンの存在下で処理される、フィルタトウ紡糸プロセスで観察することができる。アセトンからのジアセトンアルコールなどの、自動縮合生成物は有利には、ポリマー組成物の処理において回避されるべきである。ポリマー組成物の処理において多くの場合存在する溶媒は、少なくとも1個のカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒、例えばケトン、より具体的にはC3~C6ケトン、最も具体的にはアセトンである。好ましくは、少なくとも1つの抑制剤は、カルボン酸およびアルコールからなる群から選択される。より好ましくは抑制剤は、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸およびグリセロールからなる群から選択される。クエン酸が最も好ましい抑制剤である。一態様では、少なくとも1つの抑制剤は、0.001~10重量%の量でポリマー組成物中に存在する。一般に、少なくとも1つの抑制剤は、0.001重量%以上の量でポリマー組成物中に存在する。用語「重量%」は、全ポリマー組成物の重量に関連している。好ましくは、少なくとも1つの抑制剤は、0.01重量%以上の量でポリマー組成物中に存在する。最も好ましくは、少なくとも1つの抑制剤は、0.1重量%以上の量でポリマー組成物中に存在する。一般に、少なくとも1つの抑制剤は、10重量%以下の量でポリマー組成物中に存在する。好ましくは、少なくとも1つの抑制剤は、5重量%以下の量でポリマー組成物中に存在する。より好ましくは、少なくとも1つの抑制剤は、1重量%以下の量でポリマー組成物中に存在する。0.5重量%以下の量の抑制剤が最も好ましい。一態様では、少なくとも1つの抑制剤は、D90粒子径が10μm以下である、細かく分布した粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。より好ましくは、細かく分布した抑制剤のD90粒子径は5μm以下である。より好ましくは、細かく分布した抑制剤のD90粒子径は3μm以下である。2μm以下の粒径が最も好ましい。一般に、少なくとも1つの抑制剤のD90粒子径の下限は、本発明にとって決定的に重要であるわけではない。合っている粒径の粒子は、当量者に公知の手順、例えば、ミル、例えばWAB Dyno(登録商標)Mill Multi Labなどのビーズミルでの、湿式もしくは乾式すり潰しによって得ることができる。粒子はまた、少なくとも1つの塩基性添加物、顔料または着色剤などの、他の添加物の存在下で抑制剤をすり潰すことによって得られてもよい。少なくとも1つの抑制剤のD90粒子径は好ましくは、例えば、Helos(登録商標)BRなどのレーザー回折センサを使って、レーザー回折によって測定することができる。
【0017】
顔料または着色剤などの、任意の他の添加物の粒径は、抑制剤および/または塩基性添加物と同じ範囲にあるべきである。任意の他の添加物の90粒子径は好ましくは、上に記載されたようなレーザー回折によって測定される。
【0018】
別の態様では、少なくとも1つの抑制剤は、溶液で少なくとも1つの溶媒を溶液中に含むポリマー組成物混合物中に存在する。少なくとも1つの抑制剤は多くの場合、溶媒が除去された場合に沈澱し、そのとき、「ドメイン」または「相」とも示される細分された粒子の形態でポリマー組成物中に存在する。
【0019】
さらに別の態様では、少なくとも1つの抑制剤は、少なくとも1つの溶媒を含むポリマー組成物混合物および/またはポリマー組成物に溶けやすい物質である。
【0020】
少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物は一般に、向上した生分解性を示す。一態様では、用語「向上した生分解性」は、DIN仕様書EN ISO11721-1の手順に従って微生物に対するセルロース含有織物の耐性を測定することによって評価される生分解性を意味することを意図する。DIN仕様書EN ISO11721-1に従って評価される場合に、「向上した生分解性」は、塩基性添加物なしのポリマー組成物の生分解性と比べて10%絶対以上、好ましくは13%絶対以上、最も好ましくは15%絶対以上の2カ月後の土壌埋設試験でのポリマー組成物の平均減量の増加を意味する。別の態様では、用語「向上した生分解性」は、仕様書ISO 14851の手順に従ってO2消費によって水生の好気性生分解性を測定することによって評価される生分解性を意味することを意図する。仕様書ISO 14851に従って評価される場合に、「向上した生分解性」は、塩基性添加物なしのポリマー組成物の生分解性と比べて2倍以上より高い、好ましくは3倍以上より高い、最も好ましくは4倍以上より高い28日後の水生の好気性生分解でのポリマー組成物のO2消費によって測定されるような増加生分解を意味する。本発明によるポリマー組成物は一般に、本発明による塩基性添加物を含まないポリマー組成物と比較して向上した生分解性を示す。
【0021】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に抑制剤を含むポリマー組成物の製造方法、またはそのようなポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、少なくとも1つの工程が、
a)少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後少なくとも1つの溶媒を分離して本発明によるポリマー組成物を得る工程、
b)少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後結果として生じた混合物を紡糸してポリマー組成物を含む繊維を得る工程、
c)少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させ、そしてここで、結果として生じた混合物がその後、ポリマー組成物を含むフィルムを得るために、フィルム生成法、好ましくはフィルムキャスティング法で処理される工程、
d)少なくとも1つの塩基性添加物を、少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、少なくとも1つのポリマーと接触させ、任意選択的に混合物を冷却して本発明によるポリマー組成物を得る工程、および
e)少なくとも1つの塩基性添加物を、少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後混合物を押し出すおよび/またはフィルムブローしてポリマー組成物を含む成形部品、繊維、フィルム、深延伸フィルム、射出成形品、厚壁成形部品、粒状体、マイクロビーズ、ビーズ、容器またはフラワーポットを得る工程
からなる工程の群から選択される、少なくとも1つの工程を含む方法に関する。
【0022】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に抑制剤を含むポリマー組成物の製造方法、またはそのようなポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、本方法が、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤が、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させられ、その後少なくとも1つの溶媒を分離して本発明によるポリマー組成物を得る1つの工程を含む方法に関する。一態様では、少なくとも1つの溶媒は、少なくとも1つのカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒である。多くの場合、少なくとも1つの溶媒は、ケトン、より具体的にはC3~C6ケトン、最も具体的にはアセトンである。この実施形態の一態様では、少なくとも1つのポリマーは、好ましくは10~60℃の温度で、少なくとも1つの溶媒に溶解させられ、少なくとも1つの抑制剤および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤が加えられる。本発明の別の態様では、少なくとも1つの溶媒は、酢酸エチル、イソプロパノール、エチルアルコールおよびエーテルエーテルなどの、エーテル、アルコールおよびカルボン酸エステルからなる群から選択される。少なくとも1つのカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒が全く存在しない場合、任意選択の抑制剤は一般に存在しない。この実施形態の好ましい態様では、5~90重量部のポリマー、好ましくはセルロースアセテートが、10~95重量部の溶媒、好ましくはアセトンに溶解させられ、混合物がその後、0.01~40重量%の塩基性添加物と接触させられる、ここで、「重量%」は、ポリマーおよび添加物の重量に関連している。ポリマーがセルロースエステル、特にセルロースアセテートである場合、セルロースエステルは、1.5~3.0、とりわけ2.2~2.7のDSを有することが好ましい。任意選択的に、混合物は、0.001~10重量%の抑制剤とさらに接触させられる、ここで、「重量%」は、ポリマー、抑制剤および塩基性添加物の総合重量に関連している。別の態様では、混合物は、顔料および着色剤などの、他の成分とさらに接触させることができる。存在することができる好ましい顔料はTiO2である。一般に、塩基性添加物は、溶媒中でポリマーと接触させられる前に、少なくとも1つの溶媒の存在下で、および任意選択的に、抑制剤および/または顔料および/または着色剤などの、他の添加物の存在下で、湿式もしくは乾式ミリング、好ましくは湿式ミリングによって処理することができる。多くの場合、ミリングは、ボールミルで実施される。別の態様では、塩基性添加物は、任意選択的に少なくとも1つの抑制剤、顔料および/または着色剤の存在下で、好ましくは湿式ミリング手順で、ポリマーの存在下ですり潰される。これによって、塩基性添加物の再集塊は回避することができる。少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの溶媒、少なくとも1つの塩基性添加物、任意選択的に少なくとも1つの抑制剤、着色剤、顔料および他の添加物の混合物は次に、溶媒を分離して本発明によるポリマー組成物を得る工程にかけられる。溶媒を分離する工程は多くの場合、加熱、真空の適用および混合物への空気流の適用からなる群から選択される少なくとも1つの手順を適用することによって行われる。
【0023】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に抑制剤を含むポリマー組成物の製造方法、またはそのようなポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、本方法が、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤が、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させられ、その後結果として生じた混合物を紡糸してポリマー組成物を含む繊維を得る1つの工程を含む方法に関する。少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの塩基性添加物および他の任意選択の添加物ならびに少なくとも1つの溶媒を含む混合物を得るための好ましい条件は、前述の実施形態に示されている。混合物は次に、紡糸プロセス、好ましくは乾紡プロセスにかけて、本発明によるポリマー組成物を含む繊維を得ることができる。乾紡法の詳細は、当業者に公知であり、例えば、「Bio-Based Polymer:Materials and Applications」,S.Kabasci(Ed.),p.49ff,Wiley2014、および「Cellulose Acetates:Properties and Applications」,Macromolecular Symposia,Volume208,Issue1,p.267-292,Wiley,2004に記載されている。両参考文献は、それらの全体を参照により本明細書によって援用される。
【0024】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に抑制剤を含むポリマー組成物の製造方法、またはそのようなポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、本方法が、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤が、少なくとも1つの溶媒を含む液相で少なくとも1つのポリマーと接触させられ、そして結果として生じた混合物がその後、ポリマー組成物を含むフィルを得るために、フィルム生成法、好ましくはフィルムキャスティング法で処理される1つの工程を含む方法に関する。一態様では、少なくとも1つの溶媒は、少なくとも1つのカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒である。多くの場合、少なくとも1つの溶媒は、ケトン、より具体的にはC3~C6ケトン、最も具体的にはアセトンである。この実施形態の一態様では、少なくとも1つのポリマーが、好ましくは10~60℃の温度で、少なくとも1つの溶媒に溶解させられ、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤が加えられる。本発明の別の態様では、少なくとも1つの溶媒は、酢酸エチル、イソプロパノール、エチルアルコールおよびエーテルエーテルなどの、エーテル、アルコールおよびカルボン酸エステルからなる群から選択される。少なくとも1つのカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒が全く存在しない場合、任意選択の抑制剤は一般に存在しない。結果として生じた混合物は、ポリマー組成物を含むフィルムを得るために、フィルムキャスティング手順にかけられる。この実施形態の好ましい態様では、5~30重量部のポリマー、好ましくはセルロースアセテートが、70~95重量部の溶媒、好ましくはアセトンに溶解させられ、溶液がその後、0.01~40重量%の塩基性添加物と接触させられる、ここで、「重量%」は、ポリマーおよび添加物の重量に関連している。ポリマーがセルロースエステル、特にセルロースアセテートである場合、セルロースエステルは、1.5~3.0、とりわけ2.2~2.7のDSを有することが好ましい。任意選択的に、混合物は、0.001~10重量%の抑制剤とさらに接触させられる、ここで、「重量%」は、ポリマー、抑制剤および塩基性添加物の総合重量に関連している。別の態様では、混合物は、可塑剤、顔料および着色剤を含む群から、例えば、選択することができる、少なくとも1つの他の成分とさらに接触させることができる。存在することができる好ましい顔料はTiO2である。一般に、塩基性添加物は、溶媒中でポリマーと接触させられる前に、少なくとも1つの溶媒の存在下で、および任意選択的に、抑制剤および/または可塑剤および/または顔料および/または着色剤などの、他の添加物の存在下で、湿式もしくは乾式ミリング、好ましくは湿式ミリングによって処理することができる。多くの場合、ミリングはボールミルで実施される。別の態様では、塩基性添加物は、任意選択的に少なくとも1つの抑制剤、顔料および/または着色剤の存在下で、ポリマーの存在下での湿式もしくは乾式すり潰し手順で、好ましくは湿式ミリング手順ですり潰される。これによって、塩基性添加物の再集塊は回避することができる。様々なキャスティング手順の技術的詳細は、当業者に公知であり、例えば、「Industrial Plastics:Theory and Applications」,E.Lokensgard,5th Ed.,2010,Delmarに記載されており、本発明によるフィルムキャスティング法に適用することができる。この参考文献は、その全体を参照により本明細書によって援用される。
【0025】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物の製造方法、またはそのようなポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、本方法が、少なくとも1つの塩基性添加物が、少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、少なくとも1つのポリマーと接触させられ、任意選択的に混合物を冷却して本発明によるポリマー組成物を得る1つの工程を含む方法に関する。本発明の一態様では、少なくとも1つの塩基性添加物と任意選択的に抑制剤と他の任意選択の添加物との湿式すり潰しが、ボールミルで水を含まない溶媒中で、先ず第1に実施される。ポリマーの第1部分は、すり潰しの間ずっと存在することができる。ポリマー部分はそのとき、わずかに増加し、懸濁液は、例えば、ローラードライヤーまたは噴霧乾燥機で乾燥させられる。ポリマーが、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの、一般的な溶媒に溶けにくい場合、すり潰されるべき固形分は、例えば、アセトン中ですり潰し、塩基性添加物を含むドープ混合物を得るために1~5%セルロースアセテートで安定させることができる。別の態様では、少なくとも1つの塩基性添加物は、塩基性添加物を含むドープ混合物を得るために、任意選択的に異なるポリマーを含む部分中で、およびさらに任意選択的に、集塊防止添加物などの、別の添加物の存在下で、任意選択的にポリマーの部分とともに、乾式ミリングされる。さらに別の態様では、塩基性添加物は、ドープ混合物を得るために、少なくとも1つの可塑剤の存在下でミリングされる。得られたドープ混合物は次に、任意選択的に冷却後に、本発明のポリマー組成物を得るために、融解状態の少なくとも1つのポリマーと一緒にマスターバッチとして均一に分布させることができる。あるいは、完全にすり潰された懸濁液は、混練機でマトリックスポリマーに組み込み、次に乾燥させ、メルト状態の通常の粒状体のように再び成形することができる。
【0026】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に抑制剤を含むポリマー組成物の製造方法、またはそのようなポリマー組成物を含む物品の製造方法であって、本方法が、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に少なくとも1つの抑制剤が、少なくとも1つのポリマーの少なくとも一部が融解状態にある、少なくとも1つのポリマーと接触させられ、その後混合物を押し出すおよび/または成形するおよび/またはフィルムブローしてポリマー組成物を含む成形部品、繊維、フィルム、深延伸フィルム、射出成形品、厚壁成形部品、粒状体、マイクロビーズ、ビーズ、容器またはフラワーポットを得る1つの工程を含む方法に関する。様々な押出、成形およびフィルムブローイング手順の技術的詳細は、当業者に公知であり、例えば、「Industrial Plastics:Theory and Applications」,E.Lokensgard,5th Ed.,2010,Delmarに記載されており、本発明による方法に適用することができる。本発明の一態様では、少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に抑制剤および他の任意選択の添加物の湿式すり潰しが、ボールミルで水を含まない溶媒中で、先ず第1に実施される。ポリマーの第1部分は、すり潰しの間ずっと存在することができる。ポリマー部分はそのとき、わずかに増加し、懸濁液は、例えば、ローラードライヤーまたは噴霧乾燥機で乾燥させられる。ポリマーが、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの、一般的な溶媒に溶けにくい場合、すり潰されるべき固形分は、例えば、アセトン中ですり潰し、塩基性添加物を含むドープ混合物を得るために1~5%セルロースアセテートで安定させることができる。別の態様では、少なくとも1つの塩基性添加物は、塩基性添加物を含むドープ混合物を得るために、任意選択的に、異なるポリマーを含む部分中で、さらに任意選択的に、集塊防止添加物などの、別の添加物の存在下で、任意選択的にポリマーの部分とともに、乾式ミリングされる。さらに別の態様では、塩基性添加物は、ドープ混合物を得るために、少なくとも1つの可塑剤の存在下でミリングされる。得られたドープ混合物は次に、押出機の混合ゾーンでポリマーと一緒にマスターバッチとして均一に分布させることができる。あるいは、完全にすり潰された懸濁液は、混練機でマトリックスポリマーに組み込み、次に、ドープ混合物が溶媒を含む場合には乾燥させ、メルト状態の通常の粒状体のように再び成形することができる。少なくとも1つのポリマー、少なくとも1つの塩基性添加物、任意選択的に抑制剤およびさらなる添加物を、高温下に接触させることによって得られた融解ポリマー組成物は、当業者に公知の、そして、例えば、「Industrial Plastics:Theory and Applications」,E.Lokensgard,5th Ed.,2010,Delmarに記載されているプロセス詳細に従って成形、押出および/またはフィルムブローイングにかけることができる。
【0027】
本発明の別の実施形態は、上に示されたような本発明によるポリマー組成物を含むフィルタトウ、特にポリマー組成物が少なくとも1つの塩基性添加物、少なくとも1つの抑制剤および顔料を含むフィルタトウに関する。MgO、クエン酸およびTiO2を含むポリマー組成物が好ましい。別の好ましいポリマー組成物は、MgOを含み、抑制剤を全く含まない。本発明の別の態様は、上に記載された少なくとも1つの工程b)を含む方法によって製造された繊維を含むフィルタトウである。
【0028】
参照により本明細書に援用される刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0029】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、その範囲を限定するものではない。
【0030】
実施例1-キャストフィルムの分解性
フィルムを、セルロースアセテート DS 2.45をアセトンに溶解させ、塩基性添加物および任意選択的に抑制剤を加えることによって製造した。結果として生じた混合物を、自動フィルムアプリケータを用いるフィルムキャスティング手順にかけた。フィルムを乾燥させ、カットして小片(6.5cm×6.5cm)にし、小片を枠に取り付け、EN ISO 11721-1に従って土壌に埋めた。1カ月後および2カ月後に、検体を土壌から回収し、粗い堆積物から注意深くきれいにし、重量についておよび目視で喪失面積をについてチェックした。各報告減量および喪失面積は、それぞれ、6つのフィルムの平均であり、土壌と接触していたフィルムの部分に関連している。
フィルムA:15部のセルロースアセテートおよび85部のアセトンから(比較例)
フィルムB:15部のセルロースアセテート、85部のアセトン、0.79部のMgO(最終生成物中5重量%のMgOをもたらす)から
フィルムC:15部のセルロースアセテート、85部のアセトン、0.38部のMgO(最終生成物中2.5重量%のMgOをもたらす)から
フィルムD:15部のセルロースアセテート、85部のアセトン、0.79部のMgO(最終生成物中5重量%のMgOをもたらす)および0.08部のクエン酸(最終生成物中0.5重量%のクエン酸をもたらす)から
【0031】
【0032】
実施例2-紡糸繊維の分解性
紡糸液を、セルロースアセテート(DS 2.45)とアセトンとを混合することによって製造し、乾式紡糸法を用いて紡糸してY横断面の1.9デニールフィラメントにした。フィラメントをミリングし、ISO 14851に従った水生の好気性生分解にかけた。生分解を、O2消費の測定によって求めた。
フィラメントA(比較):73部のアセトン中の26.9部のセルロースアセテートおよび0.1部のTiO2からの紡糸液。
フィラメントB:73部のアセトン中の25.6部のセルロースアセテート、1.35部のMgO(最終生成物中5重量%をもたらす)、0.07部のクエン酸(最終生成物中0.25重量%をもたらす)および0.1部のTiO2からの紡糸液。
【0033】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの塩基性添加物を含むポリマー組成物を含む繊維であって、前記少なくとも1つの塩基性添加物が、20℃で水中の1重量%溶液で測定されるときに13以下および7以上のpHを有する、繊維。
【請求項2】
ポリマー組成物中の少なくとも1つのポリマーが多糖エステルからなる群から選択される、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記ポリマー組成物中の少なくとも1つのポリマーがセルロースエステルであり、そして前記少なくとも1つのセルロースエステルが、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートからなる群から選択される、請求項2に記載の繊維。
【請求項4】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、ZnOおよび塩基性Al2O3からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項5】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、20℃で10-6~70g/100mL水の溶解度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項6】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、MgO、Mg(OH)2、MgCO3、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、NaHCO3、ZnO、Na2CO3、およびKHCO3からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項7】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、K2CO3および塩基性Al2O3からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項8】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、細かく分布した粒子の形態で前記ポリマー組成物中に存在し、D90粒子径が10μm以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項9】
前記少なくとも1つの塩基性添加物が、0.01~40重量%の量で細かく分布した粒子の形態で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、少なくとも1個のカルボニル官能基および前記カルボニル官能基のα-位のC-H結合を持った溶媒で起こる自動縮合反応の少なくとも1つの抑制剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項11】
前記少なくとも1つの抑制剤が、カルボン酸およびアルコールからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項12】
前記少なくとも1つの抑制剤が、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸及びグリセロールからなる群から選択される、請求項11に記載の繊維。
【請求項13】
前記少なくとも1つの抑制剤が、0.001~10重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項9~12のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の繊維の製造方法、または請求項1~13のいずれか一項に記載の繊維を含む物品の製造方法であって、a)前記少なくとも1つの塩基性添加物および任意選択的に前記少なくとも1つの抑制剤を、少なくとも1つの溶媒を含む液相で前記少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後結果として生じた混合物を紡糸して前記ポリマー組成物を含む繊維を得る工程、b)前記少なくとも1つの塩基性添加物を、少なくとも一部が融解状態にある、前記少なくとも1つのポリマーと接触させ、その後前記混合物を押し出して前記ポリマー組成物を含む繊維得る工程を含む群から選択される少なくとも1つの工程を含む方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の繊維を含むか、又は請求項14に記載の少なくとも工程b)を含む方法によって製造された繊維を含むフィルタトウ。
【外国語明細書】