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特開2022-176962疾患材料の検出、捕捉、または除去のための流体デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176962
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】疾患材料の検出、捕捉、または除去のための流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
A61M1/36 163
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129921
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2019500495の分割
【原出願日】2017-07-07
(31)【優先権主張番号】62/359,322
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/407,767
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/454,235
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/478,904
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502073245
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,シネイド イー.
(72)【発明者】
【氏名】ベル,チャールソン エス.
(72)【発明者】
【氏名】クック,アンドリュー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジオ,トッド ディー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、生体液中の疾患材料を検出、捕捉、および/または除去する流体デバイスに関する。本発明はまた、敗血症をクレームに係るデバイスの使用により治療/予防する方法にも関する。
【解決手段】流体デバイスは、流体デバイスへの少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口の間の多方向流路であって、内壁を含む多方向流路と、多方向流路の内壁の少なくとも一部分を被覆するリガンドとから構成される。発明の実施において有用なリガンドとしては、抗体、ペプチド、タンパク質、抗生物質、ポリマー、アプタマー、リガンド、腫瘍壊死因子、接着受容体、E-セレクチン、サイトカイン、化学療法剤、定数感知タンパク質または受容体、および生物学的作用物質を含む結合材料からなる群から選択される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの入口と、
少なくとも1つの出口と、
前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも1つの出口の間の多方向流路であって、内
壁を含む多方向流路と、
前記多方向流路の前記内壁の少なくとも一部分を被覆するリガンドと
を含む流体デバイス。
【請求項2】
前記リガンドが、抗体、ペプチド、タンパク質、抗生物質、ポリマー、アプタマー、リ
ガンド、腫瘍壊死因子、接着受容体、E-セレクチン、サイトカイン、化学療法剤、定数
感知タンパク質または受容体、および生物学的作用物質からなる群から選択される、請求
項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記リガンドが抗生物質である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記抗生物質がコリスチンである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記抗生物質がバンコマイシンである、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記リガンドが抗体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記出口が、少なくとも3つの出口流路を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載
のデバイス。
【請求項8】
前記デバイスが、光学読取装置にカップリングされている、請求項1から6のいずれか
一項に記載のデバイス。
【請求項9】
血液で運ばれる疾患材料を血液から体外で捕捉および除去し、処置された血液を患者に
戻す方法であって、
ポンプで患者から血液を流体デバイスに送り込むステップであって、前記流体デバイス
が少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記
少なくとも1つの出口の間の多方向流路とを含む、ステップと、
前記血液を前記流体デバイスに流して、前記血液で運ばれる疾患材料を前記流体デバイ
ス内の前記流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露す
るステップと、
前記疾患材料を集約および捕捉するステップであって、前記流体デバイスによって課せ
られる力が前記疾患材料を前記疾患材料標的化リガンドで官能化された前記流路の壁の近
くに集約させ、次いで前記リガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料を前記血液から除去して、処置された血液を生成するステップと、
前記処置された血液を前記患者に戻すステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記疾患材料が、健全な材料とサイズ、剛性、接着性、分子構造、遺伝子構造、または
それらの組合せが異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記血液が全血である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記血液が、約0.1mL/分~約200mL/分の流速で導入される、請求項9から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記疾患材料が、約40%~約100%の範囲の効率で分離される、請求項9から12
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記流路が、健全な材料に比べた疾患材料の前記サイズに基づいて前記流路の横断面の
少なくとも一部分に沿って疾患材料を単離するように適合されているアスペクト比を規定
する長さ、横断面、および水力直径を有する、請求項9から13のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項15】
前記疾患材料が、がん細胞、循環腫瘍細胞、ペプチド、βアミロイド、タンパク質、酵
素、毒素、患部細胞、感染性微生物、細胞、寄生虫、真菌、ウイルス、微生物、細菌、細
菌毒素、定数感知タンパク質もしくは受容体、リポ多糖、サイトカイン、IL-Ιβ、I
L-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、IL-13、IL-15、IL
-16、腫瘍壊死因子、プロカルシトニン、病原体関連分子パターン、C反応性タンパク
質、または肝不全に関連している小さいもしくはタンパク質結合型の生体分子を含む1つ
または複数の疾患材料である、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記流体デバイスを放射線に曝露して、前記疾患材料を死滅させるステップをさらに含
む、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
熱を前記流体デバイスに加えて、前記疾患材料を死滅させるステップをさらに含む、請
求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記処置された血液を前記患者に戻す前に、前記流体デバイスを冷却して、前記血液を
正常体温まで冷却させるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患材料標的化リガンドによって捕捉され、標識された前記疾患材料を分析するス
テップをさらに含む、請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料の量を定量化するステップをさらに
含む、請求項9から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料を疾患材料分析および同定のために
蛍光標識するステップをさらに含む、請求項9から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記流体デバイスが、少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記疾患材
料を集約および除去するための螺旋状流路とから構成される、請求項9から21のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項23】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料を捕捉するように、前記疾患材料標的化リガ
ンドで官能化されている、請求項9から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記流体デバイスが、異なる少なくとも2つの疾患材料標的化リガンドで官能化されて
おり、これらのそれぞれが、血漿活性化材料に付着することができる、請求項9から23
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記流体デバイスが、複数の支柱から構成され、これらのそれぞれが、前記疾患材料標
的化リガンドで官能化されている、請求項9から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化ナノ粒子で官能化されている、請求項
9から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化マイクロ粒子で官能化されている、請
求項9から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化繊維で官能化されている、請求項9か
ら27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
血液で運ばれる疾患材料を血液から捕捉および検出する方法であって、
血液を流体デバイスに流し込んで、前記血液で運ばれる疾患材料を前記流体デバイス内
の流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステッ
プであって、前記流体デバイス内の前記流路が螺旋状流路を含む、ステップと、
前記疾患材料を捕捉するステップであって、前記流体デバイスによって課せられる力が
前記疾患材料を前記疾患材料標的化リガンドで官能化された前記螺旋状流路の壁の近くに
集約させ、次いで前記リガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料に結合する光学活性な疾患材料標的化マイクロビーズを前記流体デバイス
に流すステップと、
前記流体デバイスを光学読取装置で読み取るステップと
を含む方法。
【請求項30】
前記疾患材料が、健全な材料とサイズ、剛性、接着性、分子構造、遺伝子構造、または
それらの組合せが異なる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記血液が全血である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記血液が、約0.1mL/分~約200mL/分の流速で導入される、請求項29か
ら31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患材料が、約40%~約100%の範囲の効率で分離される、請求項29から3
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記螺旋状流路が、健全な材料に比べた疾患材料の前記サイズに基づいて前記流路の横
断面の少なくとも一部分に沿って疾患材料を単離するように適合されているアスペクト比
を規定する長さ、横断面、および水力直径を有する、請求項29から33のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患材料が、がん細胞、循環腫瘍細胞、ペプチド、βアミロイド、タンパク質、酵
素、毒素、患部細胞、感染性微生物、細胞、寄生虫、真菌、ウイルス、微生物、細菌、細
菌毒素、定数感知タンパク質もしくは受容体、リポ多糖、サイトカイン、IL-Ιβ、I
L-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、IL-13、IL-15、IL
-16、腫瘍壊死因子、プロカルシトニン、病原体関連分子パターン、C反応性タンパク
質、または肝不全に関連している小さいもしくはタンパク質結合型の生体分子を含む1つ
または複数の疾患材料である、請求項29から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患材料標的化リガンドによって捕捉され、光学活性なマイクロビーズで標識され
た前記疾患材料を分析するステップをさらに含む、請求項29から35のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項37】
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料の量を定量化するステップをさらに
含む、請求項29から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料を疾患材料分析および同定のために
蛍光標識するステップをさらに含む、請求項29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記流体デバイスが、少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記疾患材
料をそこに導入された前記流体から集約および除去するための流路構成とから構成される
、請求項29から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料を捕捉するように、前記疾患材料標的化リガ
ンドで官能化されている、請求項29から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記流体デバイスが、少なくとも2つの疾患材料標的化リガンドで官能化されており、
これらのそれぞれが、血漿活性化材料に付着することができる、請求項29から40のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記流体デバイスが、複数の支柱から構成され、これらのそれぞれが、前記疾患材料標
的化リガンドで官能化されている、請求項29から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化ナノ粒子で官能化されている、請求項
29から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化マイクロ粒子で官能化されている、請
求項29から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化繊維で官能化されている、請求項29
から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
患者における敗血症を治療または予防する方法であって、
ポンプで患者から血液を流体デバイスに送り込むステップであって、前記流体デバイス
が少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記
少なくとも1つの出口の間の多方向流路とを含む、ステップと、
前記血液を前記流体デバイスに流して、血液で運ばれる疾患材料を前記多方向流路内の
内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと、
前記疾患材料を集約および捕捉するステップであって、前記流体デバイスによって課せ
られる力が前記疾患材料を疾患材料標的化リガンドで官能化された前記流路の壁の近くに
集約させ、次いで前記リガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料を前記血液から除去して、処置された血液を生成するステップと、
前記処置された血液を前記患者に戻すステップと
を含む方法。
【請求項47】
前記疾患材料が、健全な材料とサイズ、剛性、接着性、分子構造、遺伝子構造、または
それらの組合せが異なる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記血液が全血である、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記血液が、約0.1mL/分~約200mL/分の流速で導入される、請求項26か
ら48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記疾患材料が、約40%~約100%の範囲の効率で分離される、請求項26から4
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記流路が、健全な材料に比べた疾患材料の前記サイズに基づいて前記流路の横断面の
少なくとも一部分に沿って疾患材料を単離するように適合されているアスペクト比を規定
する長さ、横断面、および水力直径を有する、請求項26から50のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項52】
疾患材料を生体液から捕捉および除去する方法であって、
前記生体液を流体デバイスに導入するステップであって、前記流体デバイスが少なくと
も1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも
1つの出口の間の多方向流路とを含む、ステップと、
前記生体液を前記流体デバイスに流して、前記疾患材料を前記流体デバイス内の前記流
路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと

前記疾患材料と前記流路の前記内壁に結合している疾患材料標的化リガンドとの結合に
より、前記疾患材料を捕捉するステップと、
前記疾患材料を前記生体液から除去するステップと
を含む方法。
【請求項53】
前記流体デバイスが螺旋状流路を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記生体液が血液である、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
流体デバイスを流れてきた生体液を含む組成物であって、前記流体デバイスが少なくと
も1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも
1つの出口の間の多方向流路とを含み、前記流路が内壁を含み、前記内壁の少なくとも一
部分がリガンドで被覆されており、そのようなリガンドが疾患材料に結合し、前記生体液
から除去する、組成物。
【請求項56】
前記生体液が血液である、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記流体デバイスが螺旋状流路を含む、請求項55または56に記載の組成物。
【請求項58】
疾患材料を生体液から捕捉および検出する方法であって、
血液を、流路を含む流体デバイスに流し込むステップであって、前記流路が、前記流体
デバイス内の前記流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドを有する、ス
テップと、
前記疾患材料の前記疾患材料標的化リガンドへの結合により前記疾患材料を捕捉するス
テップと、
前記疾患材料を単離するステップと、
前記疾患材料を培養するステップと
を含む方法。
【請求項59】
前記生体液が血液である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記流路が螺旋状流路である、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
疾患材料を生体液から捕捉および検出する方法であって、
血液を、流路を含む流体デバイスに流し込むステップであって、前記流路が、前記流体
デバイス内の前記流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドを有する、ス
テップと、
前記疾患材料の前記疾患材料標的化リガンドへの結合により前記疾患材料を捕捉するス
テップと、
前記疾患材料を単離するステップと、
前記疾患材料を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、蛍光インサイツハイブリダイゼー
ション(FISH)、およびマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MAL
DI-TOF)からなる群から選択される手順によって同定するステップと
を含む方法。
【請求項62】
前記生体液が血液である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記流路が螺旋状流路である、請求項61または62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月7日出願の米国特許仮出願第62/359,322号、20
16年10月13日出願の米国特許仮出願第62/407,767号、2017年2月3
日出願の米国特許仮出願第62/454,235号、および2017年3月30日出願の
米国特許仮出願第62/478,904号の利益を主張し、これらのそれぞれが、参照に
より本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
米国連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、米国国防総省により供与されたグラント第W81XWH-13-1-039
7号を受けて米国政府の助成で成された。米国政府は本発明に対して一定の権利を保有す
る。
【0003】
本開示は、疾患を引き起こす材料を生体液から検出、捕捉、および/または除去する流
体デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
多くの疾患、ならびに疾患関連細胞および疾患関連分子は、血液で運ばれる。例えば、
循環血液中における細菌の存在により、敗血症になるおそれがある一連の局所性および全
身性調節機構が開始する。敗血症は、感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こ
される生命を脅かすような臓器機能障害と定義されており、年間100万を超える米国人
が罹患し、関連死亡率が25~50%である。敗血症は、米国における危篤状態患者の死
因の首位であり、米国は治療に年間200億ドルを超える費用を必要とする。平均余命が
増加し、侵襲的手技の数が拡大するにつれて、敗血症の発生率が高まっている。現在、特
異的な敗血症治療は存在していない。敗血症の治療は、主に早期認知ならびに適切な抗生
物質、補液、および血管作動性医薬品の急速投与に依拠する。早期の有効な抗生物質療法
が必要不可欠であり、患者の転帰を改善する。しかし、敗血症-関連死亡率は、容認でき
ないほど、かつ持続的に高いままであり、新たな敗血症療法が差し迫って求められている
ことは明らかである。
体外サイトカイン濾過、組み換えヒト活性化プロテインC、コルチコステロイド、ヒト
組み換えラクトフェリン、および免疫調節など、敗血症の実験的補助治療を評価する多く
の研究が行われてきた。免疫調節は広く予測されていたが、患者母集団の異質性および敗
血症の病原性の複雑さによって、これらの実験的手法の進歩が限定された。インターロイ
キン-1(IL-1)または腫瘍壊死因子-α(TNF-α)など単一のメディエーター
のブロックにより、敗血症生存率の改善の見込みはほとんど示されなかった。サイトカイ
ン除去は、動物試験において有望な結果を示した。しかし、様々な結果は、サイトカイン
除去の直接的影響ではなく他の下流機構を調節する結果であると考えられる。エンドトキ
シンのクリアランスの利点は、動物試験においても有効性を示したが、敗血症患者の転帰
の改善はまだ実証されていない。
【0005】
磁性ナノ粒子を使用した機械的細菌除去によって、敗血症齧歯類モデルの生存率が改善
されると報告された。細菌標的化リガンドを使用したナノ粒子の表面改質は、重要ないく
つかの病原性細菌の効率的で再現性がある捕捉を導くことができる。しかし、これらの手
法は、大型生物系の治療のスケールアップにおける潜在的な制約、および血液とナノ粒子
の接触に関する規制のハードルがどうなるか不確かな点が問題になっている。ナノ粒子を
用いた細菌細胞のインキュベーションの後に分離する必要もある。このインキュベーショ
ン時間によって、細菌が複製して数を増やすことが可能になる。さらに、血液中に存在し
ている磁性ナノ粒子は、臓器中に拡散し、生体適合性の問題を引き起こすことがある。単
一分子のアクチベーター/阻害物質または細菌源の単離に対処する処置が、敗血症の複雑
さに十分に対処するとは考えられない。
【0006】
菌血症または敗血症の現行の治療方法は、抗生物質の使用も含む。しかし、病原体は、
抗菌薬回避能力または多剤耐性を急速に獲得しつつあり、全身性の抗生物質投与は、多数
の負の副作用を伴う。様々な吸着剤および他の従来の膜濾過法を使用して、血液から疾患
材料を検出または濾過し、細胞サイズ、変形性、および密度の差を利用して、標的細胞を
濾取してきた。しかし、これらの技法は多大な時間と労力を必要とし、マルチステップの
試料調製が必要とされる。マルチステップの試料調製は、汚染を受けやすい方法であり、
ポイントオブケア治療の目的に十分なほど効率的ではない。膜濾過法は、頻繁な目詰まり
という問題を提起し、クリーニングを必要とする。さらに、濾過および遠心技法は、患者
に戻す必要がある健全な細胞に対してストレスを引き起こす。したがって、後に患者に戻
す健全な細胞の本来の細胞表現型を維持しながら、疾患材料および疾患細胞を除去するよ
うに、血液試料を処理する、より単純でより効率的な技法が求められている。
【0007】
本明細書に開示される流体デバイスおよび方法は、上記その他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、ヒト全血から病原体とエンドトキシンとを除去し、それによって敗血症
における調節不全の生物学的応答の根本的な2つの原因に対処することができるデバイス
を設計した。このデバイスは、単一の敗血症関連メディエーターを血液から除去すること
に依拠する以前の敗血症療法の限界を克服することができる。抗生物質耐性株を含めて病
原体およびエンドトキシンの除去は、敗血症の治療の新たな典型となる。
【0009】
本明細書に記載されるデバイスおよび方法によって、患者の血液量全体などの生体液を
単一の治療時にデバイスに数回通して処理することができる。これにより、疾患を引き起
こす材料の血流における負荷は、血液をデバイスに数回循環させることによって大いに低
減することができる。細菌を血流から除去すると、感染因子の遠位部位への拡散を低減す
ることができる。これにより、臓器または膿瘍内に存在する病原体の数は低減し、炎症性
メディエーターのレベルは低下する。
【0010】
疾患を引き起こす材料の全負荷を低減させると、疾患進行を直接抑制することができ、
したがって、この治療により、例えば感染を引き起こす細菌種を同定するのに使用可能な
時間を大幅に延ばし、最適な抗生物質療法を始めることができる。さらに、流路壁に官能
化されたリガンドが、死んでいる病原体と生きている病原体の両方に結合するので、抗生
物質療法をこの細菌除去療法と二元的に行うことができるからである。1回の通過で多数
の細菌がデバイス内に捕捉されるので、デバイスを使用して、病原体同定および抗生物質
感受性決定を加速するのを助けることもできる。
【0011】
さらに、流路壁を適切なタンパク質特異的または細胞特異的リガンドで官能化すること
によって、このデバイスをさらに改変して、タンパク質(サイトカインなど)および他の
タイプの細胞(循環腫瘍細胞など)を全血から除去することもできる。
【0012】
さらに、デバイスに依拠して、疾患を引き起こす材料を患者の血流から実質的に除去す
る代わりに、デバイスを使用して、疾患を引き起こす材料を単離および同定することもで
きる。このように単離および同定に焦点を絞ることによって、迅速な処方および1クール
の治療の開始が可能になり得る。
【0013】
疾患を引き起こす材料(例えば、細菌)を生体液から検出、捕捉、および/または除去
するためのデバイスが本明細書に開示される。
【0014】
また、そのようなデバイスがそのような疾患を引き起こす材料のそのような生体液から
の分離において使用される治療方法も本明細書に開示される。
【0015】
さらに、その後のさらなるクールの治療を処方することができるように、そのようなデ
バイスが生体液に由来する疾患を引き起こす材料の同定において使用される治療方法が本
明細書に開示される。
【0016】
さらに詳細には、
少なくとも1つの入口と、
少なくとも1つの出口と、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口の間の多方向流路であって、内壁を含む
多方向流路と、
多方向流路の内壁の少なくとも一部分を被覆するリガンドと
を含む流体デバイスが本明細書に開示される。
【0017】
また、疾患材料を生体液から捕捉および除去する方法であって、
生体液を流体デバイスに導入するステップであって、流体デバイスが少なくとも1つの
入口と、少なくとも1つの出口と、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口の間の
多方向流路とを含む、ステップと、
前記生体液を前記流体デバイスに流して、前記疾患材料を流体デバイス内の流路の内壁
に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと、
疾患材料と流路の内壁に結合している疾患材料標的化リガンドとの結合により、疾患材
料を捕捉するステップと、
前記疾患材料を前記生体液から除去するステップと
を含む方法も開示される。
【0018】
さらに、血液で運ばれる疾患材料を血液から体外で捕捉および除去し、処置された血液
を患者に戻す方法であって、
ポンプで患者から血液を流体デバイスに送り込むステップであって、前記流体デバイス
が少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、少なくとも1つの入口と少なくと
も1つの出口の間の多方向流路とを含む、ステップと、
前記血液を前記流体デバイスに流して、前記血液で運ばれる疾患材料を流体デバイス内
の流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステッ
プと、
疾患材料を集約および捕捉するステップであって、流体デバイスによって課せられる力
が疾患材料を疾患材料標的化リガンドで官能化された流路の壁の近くに集約させ、次いで
そのリガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料を前記血液から除去して、処置された血液を生成するステップと、
前記処置された血液を前記患者に戻すステップと
を含む方法が本明細書に開示される。
【0019】
さらに、血液で運ばれる疾患材料を血液から捕捉および検出する方法であって、
血液を流体デバイスに流し込んで、前記血液で運ばれる疾患材料を流体デバイス内の流
路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップで
あって、流体デバイス内の流路が螺旋状流路を含む、ステップと、
疾患材料を捕捉するステップであって、流体デバイスによって課せられる力が疾患材料
を疾患材料標的化リガンドで官能化された螺旋状流路の壁の近くに集約させ、次いでその
リガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料に結合する光学活性な疾患材料標的化マイクロビーズを流体デバイスに流
すステップと、
流体デバイスを光学読取装置で読み取るステップと
を含む方法が開示される。
【0020】
さらに、流体デバイスを流れてきた生体液を含む組成物(composition o
f matter)であって、流体デバイスが少なくとも1つの入口と、少なくとも1つ
の出口と、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口の間の多方向流路とを含み、前
記流路が内壁を含み、前記内壁の少なくとも一部分がリガンドで被覆されており、そのよ
うなリガンドが疾患材料に結合し、前記生体液から除去する、組成物が開示される。
【0021】
さらに、疾患材料を血液から体外で捕捉および除去し、処置された血液を身体に戻す方
法であって、
ポンプで血液を患者から螺旋ベースの流体装置に送り込むステップと、
前記血液を前記螺旋ベースの流体装置に流して、前記疾患材料を螺旋状流体装置の内壁
に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと、
疾患材料を集約および捕捉するステップであって、螺旋ベースの流体装置によって課せ
られたサイズベースの慣性力が疾患材料を疾患材料標的化リガンドで官能化された螺旋状
流路の壁の近くに集約させ、次いでそのリガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと

前記疾患材料を前記血液から除去するステップと、
前記血液を前記患者に戻すステップと
を含む方法が本明細書に開示される。
【0022】
さらに、疾患材料を血液から捕捉および検出する方法であって、
血液を流体装置に流し込んで、前記疾患材料を流体装置の内壁に沿って官能化された疾
患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと、
疾患材料を集約および捕捉するステップであって、流体装置によって課せられたサイズ
ベースの慣性力が疾患材料を疾患材料標的化リガンドで官能化された螺旋状流路の壁の近
くに集約させ、次いでそのリガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料に結合する光学活性な疾患材料標的化マイクロビーズを流体装置に流すス
テップと、
流体装置を光学読取装置で読み取るステップと
を含む方法が本明細書に開示される。
【0023】
本明細書に組み込まれ、その一部を成す添付の図は、以下に記載されるいくつかの態様
を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の範囲内の様々な多方向流体デバイスの概略図を含む。図1Aは、1つの入口および3つの出口を設けた6ループ二重螺旋状流路を含む、粒子/細菌捕捉用多方向流体デバイスの概略図である。図1Bは、マイクロ流路の内壁に結合している細菌標的化リガンドであるコリスチン-PEG-シラン(Col-PEG-Si)との相互作用により細菌を分離する多方向流路の概略図である。
図2】リガンドであるコリスチン-PEG-シランが結合している多方向流路の内壁および細菌の捕捉におけるその使用を示す図である。図2Aは、コリスチン-PEG-シラン(Col-PEG-Si)で被覆された流路内壁の概略図である。図2Bは、5つのアミン基を含み、それらの1つがPEGにコンジュゲートするのに使用され、Col-PEG-Siリガンドが生じ、それによって残りの4つのアミン基をマイクロ流路内の細菌細胞と相互作用および結合させる、コリスチン分子を示す。図2Cは、Col-PEG-Siによる細菌捕捉、引き続いてAtto 488アミン色素への曝露の後に蛍光顕微鏡検査を使用して画像処理したマイクロ流路を示す。
図3】2μmのポリスチレン粒子集約を促進するマイクロ流路アスペクト比(AR)を示す図である。この粒径は、大部分の細菌細胞のサイズに匹敵する。平均混合画像は、流速0.2mL/分で2μmの粒子平衡が表されていることを示す。マイクロ流路の寸法は、幅254μm×高さ15μmからなる流路の全長にわたって一致している。概略図は、三つ叉に分岐している出口に到達する直前のマイクロ流路横断面内の2μmのポリスチレン粒子のおよその位置を示す(点線は、流路壁のおよその位置を示す)。
図4】クレームに係る流体デバイスによる細菌細胞の単離を示す画像を示す図である。ここで、せん断調節慣性力の影響を受けた細菌(蛍光標識されたアシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)細胞)は、官能化されたマイクロ流路壁に沿って平衡を保ち、リガンド(Col-PEG-Si)に結合する。これは、細菌がマイクロ流路中心の両側に移動されたままであるので、示された特定の領域:(A)入口流路に続く第1のループ、(B)ループの中心、および(C)流路の三つ叉に分岐している出口に到達する直前の流路において明らかである(白色点線は流路壁を示す)。実験は、蛍光標識された細菌を流速0.2mL/分で流路に流すことによって行った。次いで、流路を脱イオン水で4回洗浄し、次いで蛍光顕微鏡を使用して画像処理した。細菌は、上記の画像によって示されているように、洗浄ステップ後も流路壁に結合したままであった。
図5図5Aは、細菌単離にとって有用である二重螺旋状マイクロ流路構成を示す図である。この構成は、ただ1つの入口および均等に分けられた3つの出口を含む。図5Bは、二重螺旋状マイクロ流路の出口部を示す顕微鏡画像である。
図6】疾患材料(すなわち、桿形細胞)を含む血液が、ポンプで患者からチューブを通って、疾患材料を捕捉するように設計された疾患材料標的化リガンドで流路壁に沿って官能化されているクレームに係る流体装置に送られることを示す図である。クレームに係る流体装置により処理した後、健全な材料を含む血液が患者に戻される。
図7】流体装置の流路内の力の概略図である。ここで、流路が湾曲しているため、反対方向に回転する2つのディーン力が主流方向に対して直交している。ディーン力は、流路の中心において所望の健全な材料(すなわち、赤色、血球)の再循環を引き起こす。疾患材料(すなわち、緑色、疾患材料)は慣性揚力を受け、健全な材料が流路中心の内腔において遊離のままであるとき、その慣性揚力は、標的疾患材料をリガンドで官能化された流路壁の近くに集約させる。
図8】本発明の実施形態に従って、疾患材料を標的および捕捉するように設計された螺旋形流体装置の別図である。
図9】健全な材料(すなわち、血球)が流路中心の内腔において遊離のままであるとき、慣性力が標的疾患材料、この場合には細菌をリガンドで官能化された流路壁の近くにどのように集約させるかを描く、螺旋形流体装置の別図である。
図10】本発明の範囲内の螺旋ベースの流体デバイスの壁の近くへの疾患材料の集約を捉えている、蛍光顕微鏡を使用して得られた画像である(左図)。健全な材料は、流れ条件下で螺旋ベースの流体装置流路の中心内に残存する(右図)。
図11】本発明の実施形態に従って、疾患材料標的化リガンドで官能化された粒子(例えば、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノファイバーまたはマイクロファイバー)から構成された流体装置壁のある壁の拡大図である。
図12】本発明の実施形態による支柱を含む螺旋ベースの流体装置の拡大図である。
図13】細菌分離効率を最大にする二重螺旋状流体設計を示す図である。(a)S字ジャンクションにおいて連結して、1つの入口および1つの出口を設けた二重螺旋状流路を形成する2つの6ループ螺旋状マイクロ流路からなる、製作されたポリジメチルシロキサン(PDMS)流体デバイスを示す。(b)マスター鋳型を作り出すのに使用される二重螺旋状流体モジュールのCAD図を示す。
図14】クレームに係るデバイスの二重螺旋状流路構成内に集約するマイクロ粒子および細菌を示す図である。画像は連続流速0.2mL/分で取得されたものである。(a)2μmの粒子の集約;(b)10μmの粒子の集約;および(c)二重螺旋状マイクロ流体デバイスの内外の両壁に沿って集約している標識されたA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978。
図15】クレームに係るデバイスの実施形態の1構成について細菌捕捉能力の定量化の例を示す図である。PBS中に添加し、0.2ml/分でコリスチン化およびPEG化された二重螺旋状マイクロ流体デバイスに流したときのグラム陰性細菌分離株の病原体捕捉能力。a、A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978。b、肺炎桿菌(K. pneumoniae) ATCC700603。c、コリスチン耐性A.バウマニ(A. baumannii) 「患者2」。d、コリスチン耐性A.バウマニ(A. baumannii) 19606R。結果を平均±SD(n=3)として記す。P<0.01。
図16】クレームに係る流体デバイスの二重螺旋状構成を使用する生体外血液浄化を示す図である。a、ヒト全血中に添加し、0.2ml/分でコリスチン化およびPEG化されたデバイスに流したときのA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978に対する捕捉能力。結果を平均±SD(n=3)として記す。P<0.01。bおよびc、コリスチン化デバイスに0.2mL/分で通し、続いて洗浄した後のヒト全血からの緑色蛍光標識されたA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978捕捉。d、コリスチン化デバイスに0.2mL/分で通し、コリスチンで官能化されたデバイスにおいてグラム陰性病原体への特異性を確認した後の緑色蛍光標識された黄色ブドウ球菌(S. aureus) ATCC29213捕捉の欠如。
図17】本発明の範囲内のあるコリスチン化二重螺旋状流体デバイスの全細菌捕捉能力を示す図である。そのようなデバイスが捕捉することができる最大細菌負荷は、示された細菌株それぞれに関して報告されている。PBSに添加されているA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978は、対照として役立った。A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978の捕捉は、枯草菌(B. subtilis) 1A578の捕捉とは有意差があった。しかし、A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978の捕捉は、列挙されたいずれか他の細菌分離株とは有意差がなかった。列挙された他のすべての細菌分離株(血液中の肺炎桿菌(K. pneumoniae) ATCC700603、A.バウマニ(A. baumannii) 19606R、A.バウマニ(A. baumannii) 「患者2」、およびA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978)の最大捕捉能力は、枯草菌(B. subtilis) 1A578の最大捕捉能力とも有意差があった。一元配置ANOVAと、その後に続くポストホックテューキーの多重比較検定を用いて、データを比較した。結果を平均±SD(n=3)として記す。P<0.01。
図18図17におけるその使用よりも大きい二重螺旋状流体デバイスの細菌捕捉能力を示す図である。PBS中に添加したA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978を、0.6mL/分でコリスチン化およびPEG化された二重螺旋状マイクロ流体デバイス(長さ(L)長さ328mm×幅(W)750μm×高さ(H)15μm)に流した。マイクロ流体デバイスのA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978捕捉能力を、示された時間にわたって定量化した。結果を平均±SD(n=3)として記す。P<0.01。
図19】マイクロ流路壁へのコリスチン固定化の概略的な記述を示す図である。NHSを使用して、シラン-PEG-NHSをコリスチンの同様な反応性を示す5つのL-α-ジアミノ酪酸(Dab)残基の1つにDab32のアミン側鎖を介してカップリングさせた。シラン-PEG-NHSのNHS基は、コリスチン抗生物質の同等に反応性を示すいずれか単一のアミン残基にカルボジイミド化学的性質により共有結合し、コリスチン-PEG-シランが生じる。コリスチン-PEG-シランのシラン末端は、PDMSベースの流路壁へのシロキサン結合を形成し、コリスチンが流路の内腔にまで広がる。
図20】マイクロ流路内におけるコリスチン修飾の確証を与える図である。a、コリスチンのアミン基の蛍光標識は、ATTO 488 NHSエステル色素で実施された。ATTO 488 NHSエステル色素をコリスチン化デバイスに添加し、次いでPBSで洗浄した。染色は、マイクロ流路内にコリスチンが存在することを示す。b、DMSO中ATTO 488 NHSエステルの標準希釈液を使用して、標品蛍光曲線を作成した。c、ATTO 488 NHSエステル染色されたコリスチン化デバイスおよびATTO 488 NHSエステル PEG化デバイスから発生された蛍光を標準曲線と比較した。コリスチン化二重螺旋状デバイス内に1.76μgのコリスチンが存在していることが決定された。結果を平均±SD(n=3)として記す。
図21】二重螺旋状マイクロ流路構成を有するクレームに係る発明内のデバイス内におけるコリスチンリガンドの保持を示す図である。コリスチンELISA(Bioo Scientific)を用いて、コリスチン化デバイスからのコリスチン遊離を分析した。PBS緩衝液を、0.2mL/分でコリスチン化マイクロ流体デバイスに連続的に流した。示された時点で流体を出口から捕捉して、流路壁からの起こり得るコリスチン脱離を分析した。連続流れ下で、300ngのコリスチンが流路から2時間の間に遊離された。これらのコリスチンレベルは無毒性である。重要なことには、約40分後に、出口流れにおいて検出できるほどのコリスチンは存在しなかったので、使用前にデバイスからカップリングしていないコリスチンを除去するための洗浄が実行可能になる。結果を平均±SD(n=3)として記す。
図22】グラム陽性細菌捕捉の評価を描く図である。PBS中に添加し、0.2ml/分でコリスチン化およびPEG化された二重螺旋状マイクロ流体デバイスに流したときのグラム陽性枯草菌(B. subtilis) 1A578の病原体捕捉能力。捕捉の欠如は、コリスチンのグラム陰性病原体に対する特異性を示す。結果を平均±SD(n=3)として記す。
図23】エンドトキシン捕捉能力の定量化を提示する図である。エンドトキシンを、エンドトキシンを含まない水中に(1EU/ml)添加し、0.2ml/分でコリスチン化およびPEG化された二重螺旋状流体デバイスに流した。時間と共にエンドトキシンの捕捉量を評価した。結果を平均±SD(n=3)として記す。
図24】疾患材料(すなわち、桿形細胞)を含む血液が、ポンプでチューブを通って、疾患材料を捕捉するように設計された疾患材料標的化リガンドで流路壁に沿って官能化されている螺旋ベースの流体装置に送られることを示す図である。
図25】螺旋ベースの流体装置流路内の力の概略図である。流路が湾曲しているため、反対方向に回転する2つのディーン力が主流方向に対して直交している。ディーン力は、流路の中心において所望の健全な材料(すなわち、赤色、血球)の再循環を引き起こす。健全な材料が流路中心の内腔において遊離のままであるのだが、疾患材料(すなわち、緑色、疾患材料)は慣性揚力を受け、その慣性揚力が標的疾患材料をリガンドで官能化された流路壁の近くに集約させる。
図26】本発明の実施形態に従って、疾患材料を標的および捕捉するように設計されたポリメチルメタクリレート(PMMA)製流体デバイスの図である。
図27】疾患材料標的化リガンドから構成される流体装置壁の形成を示す図である。本発明の実施形態による(A)コリスチンおよび(B)バンコマイシン疾患材料標的化リガンドの形成。
図28】ポリカーボネートから製作された本発明のスケールアップしたバージョンの図である。
図29】本発明の流体デバイスの代替実施形態を示す図である。供試体または生体液は、例えばチュービングとすることができるヘリカル状に巻きつけられた流路にポンプで送られる/流される。流路は疾患材料標的化リガンドで被覆されており、病原体などの疾患材料の捕捉が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に開示されるのは、疾患を引き起こす材料を検出および捕捉するための流体デ
バイスおよび方法である。いくつかの態様において、本明細書に開示されるのは、螺旋ベ
ースの流体装置内の所望の血液材料から離して特定の疾患材料を集約および分離して、現
行のフィルター膜方法に伴う目詰まりの問題を避けることによって、望ましくない疾患材
料を血液から除去するためのシステムおよび方法である。
【0026】
次に、本発明の実施形態について詳細に言及し、それらの例を図面および実施例で説明
する。しかし、本発明は様々な多くの形態で実施することができ、本明細書に記載される
実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。
【0027】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される科学技術用語はすべて、当業者が通常理
解するのと同じ意味を有する。以下の定義は、本明細書で使用される用語の十分な理解の
ために提示する。
【0028】
クレームに係るデバイス内の流路構成要素に関して本明細書では、「多方向」は、流路
の方向が少なくとも1回変化することを意味する。そのような方向変化は、疾患を引き起
こす材料と流路の内壁を裏打ちするリガンドの接触を増加させるのに必要である。クレー
ムに係るデバイスの多方向流路は、複数の方向変化を含むことが好ましい。これは、多数
の構成の使用により成し遂げることができ、それらの一部は、本明細書で具体的に開示さ
れている。多方向流路の例としては、二重螺旋(例えば、図1図8)または曲線(図4
B、図16B)の使用が挙げられるが、これらに限定されない。しかし、クレームに係る
発明は、他の例として、やはり本発明の範囲内である部分円またはヘリックスが挙げられ
るので、例示された構成に限定されないと理解されたい。
【0029】
本明細書では、「リガンド」は、疾患を引き起こす材料と複合体を形成するいずれかの
物質を意味する。
【0030】
先に述べたように、流体デバイスは、
流体デバイスへの少なくとも1つの入口と、
少なくとも1つの出口と、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口の間の多方向流路であって、内壁を含む多
方向流路と、
多方向流路の内壁の少なくとも一部分を被覆するリガンドと
から構成される。
【0031】
デバイスのサイズは、その機能に対して重大な意味をもたない。しかし、デバイスは、
多方向流路の被覆された内壁の利用可能領域(したがって、流路の長さ)がその所期の使
用法に適しているようなサイズに作られるべきである。これは、デバイスのサイズを調整
し、または複数のデバイスを直列および/もしくは平行構成で利用することによって成し
遂げることができる。流路が一平面中にのみ存在しているいくつかの構成において、デバ
イスの高さは非常に小さく、例えばわずか約15μmであり得る。
【0032】
以下の示唆されたサイズ範囲に限定しようとするものではないが、多方向流路の長さは
サイズが一般に0.0005~1000cmの範囲であり得る。好ましくは、デバイスは
、サイズが0.1~500cmの範囲である。最も好ましくは、デバイスはサイズが0.
1~100cmの範囲である。デバイスの全サイズは重大な意味をもたず、主に多方向流
路の特定の構成によって決定される。
【0033】
クレームに係るデバイス内の多方向流路はまた、その所期の使用に一致したサイズに作
られるべきである。例えば、そこでの使用を意図した流体が全細胞または細胞断片を含む
のなら、流路の直径は、目詰まりの問題を回避しつつ、それらの通過に適応し、予測され
る流路のリガンド被覆との相互作用を可能にするようなサイズにしなければならない。例
えば、所期の流体が疾患を引き起こすより小さい材料を含むのなら、流路の直径はサイズ
を小さくすることができる。以下の示唆されたサイズ範囲に限定しようとするものではな
いが、デバイス内の流路の直径は、サイズが一般に0.001~1000cmの範囲であ
り得る。好ましくは、デバイスは、サイズが0.001~100cmの範囲である。最も
好ましくは、デバイスはサイズが0.01~30cmの範囲である。図に示すかつ/また
は実施例で述べるデバイスの一部は、直径約0.5cmの流路を利用する。
【0034】
クレームに係るデバイスは、多方向流路に対して少なくとも1つの入口および少なくと
も1つの出口を有する。さらに、入口および出口の数の選択は、重大な意味をもたず、む
しろ、デバイスの性能がその所期の用途に最適化されるように変えてもよい。入口の数は
、入口の以下の範囲にこだわるつもりはないものの、典型的に1から3まであり得る。好
ましくは、デバイスは1~2つの入口を含む。最も好ましくは、デバイスは唯1つの入口
を有する。出口については、デバイスは典型的に1~5つの出口を有する。好ましくは、
1~3つの出口を有する。最も好ましくは、デバイスは1つの出口を有する。
【0035】
クレームに係るデバイスは、いずれかの生体適合性材料から構成することができる。好
ましい生体適合性材料は、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン、アクリロニトリルブ
タジエンスチレン、PEEKポリマー、ポリエチレン、ペルフルオロアルコキシ、ガラス
、ポリ(エーテルケトンケトン)、ポリスチレン、ポリオレフィンコポリマー、グラフェ
ン、金属、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアリ
ールエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリビニルクロリド、シ
クロオレフィンコポリマー、ポリアミド、ポリスルホン、フルオロポリマー、エチレン酢
酸ビニル発泡PTFE(ePTFE)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリグリコリド-
coトリメチレンカーボネート(PGA-TMC)、PGA-カプロラクトン、ポリ(乳
酸-co-グリコール酸)(PLGA)、他のプラスチック、ポリジメチルシロキサン(
PDMS)、SU-8、ポリイミド、パラリン、またはそれらの組合せである。最も好ま
しい生体適合性材料は、シリコーンおよびポリカーボネートである。
【0036】
クレームに係るデバイスは、多数の技術の使用によって作製することができる。例えば
、三次元印刷、リソグラフィー、射出成形、ブロー成形、注入成形、超音波溶接、高周波
溶接、加熱工具または板溶接、溶剤接着、レーザー溶接、回転溶接、赤外線溶接、振動溶
接、接着接合、および機械加工によって作製することができる。一部の実施形態において
、好ましい機械加工方法は、旋削、孔あけ、中ぐり、リーマー仕上げ、放電加工および/
またはフライス削りである。材料を機械加工して、流路(単数または複数)全体として機
械加工することまたは半分を機械加工し、取り付けできることなどによって、所望の寸法
の封入容器を作り出すことができる。流路(単数または複数)については、シリコーンを
据え付けることができ、入口(単数または複数)および出口(単数または複数)をキャッ
プで閉じることができる。機械加工は、様々なグレードのポリカーボネートを含めて様々
な生体適合性材料について行うことができる。次いで、多方向流路(単数または複数)の
内壁の少なくとも一部分を通常の手段によって被覆しているリガンドでデバイスを被覆す
ることができる。
【0037】
クレームに係るデバイスを使用して、がん細胞、循環腫瘍細胞、ペプチド、βアミロイ
ド、タンパク質、酵素、毒素、患部細胞、がん細胞、感染性微生物、細胞、寄生虫、真菌
、ウイルス、微生物、細菌、細菌毒素、リポ多糖、サイトカイン、IL-Ιβ、IL-4
、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、IL-13、IL-15、IL-16
、腫瘍壊死因子、プロカルシトニン、病原体関連分子パターン、C反応性タンパク質、定
数感知タンパク質もしくは受容体、または肝不全に関連している小さいもしくはタンパク
質結合型の生体分子、あるいはそれらの組合せなど疾患を引き起こす多くのタイプの材料
を除去および/または検出することができる。
【0038】
流体デバイスは、疾患を引き起こす材料および血液などの生体液から除去されることが
望まれている他の材料を捕捉するように、多方向流路の内壁の少なくとも一部分に沿って
リガンドで官能化されている。本発明の実施において有用なリガンドとしては、抗体、ペ
プチド、タンパク質、抗生物質、ポリマー、アプタマー、リガンド、腫瘍壊死因子、接着
受容体、E-セレクチン、サイトカイン、化学療法剤、定数感知タンパク質または受容体
、および生物学的作用物質を含む結合材料が挙げられる。
【0039】
リガンドを、通常の手段によって多方向流路の内壁に被覆することができる。流路の内
壁は、デバイスの所期の使用に応じて単一のタイプのリガンドまたはその混合物で被覆す
ることができる。内壁の被覆の範囲も様々であり得る。例えば、マイクロ流路の内壁の全
長またはその一部分のみを被覆することができる。
【0040】
多方向流路の使用は、疾患を引き起こす材料とマイクロ流路の内壁を裏打ちするリガン
ドとの接触を増加させることになるように見えるので、本技術の実施において重要である
。以下に限定しようとするものではないものの、下記のディーン渦力は、クレームに係る
デバイスの多方向流路内で作用していると理論上想定される。
【0041】
薄層状のポアズイユ流において、双曲線形の速度プロファイルは、流路の重心において
最大速度および流路の壁においてゼロ速度を有する。粒子に作用する揚力(F)は、壁
誘起揚力(F)およびせん断誘起揚力(F)によって支配されている。これらの揚力
は連携して作用して、流路壁と中心線の間に粒子平衡位置を生じる。そこでは、逆方向性
の揚力が等しく、粒子の狭帯域を生成する。粒子を流路中心および壁から離れて移動させ
る正味の揚力(F)は、F=f(Re,x)ρU /D として推定さ
れ、ここで、揚力係数(f)は、流路のレイノルズ数Re(Re=ρU/μ)と
流路の横断面内の粒子位置(x)の関数である。Dはマイクロ流路の水力直径であり
、ρおよびμは流体の密度および粘度であり、Uは最大の流体速度であり、aは粒子径
である。
【0042】
しかし、湾曲したマイクロ流体流路において、流体の不均一な慣性によって、流路の上
部半分および底部半分において二次横断流またはディーン渦流が発生する(図1)。湾曲
したマイクロ流路のディーン渦流を特徴付けるのに使用される無次元ディーン数(De)
を、De=(ρU/μ)√(D/2R)と定義することができ、ここで、Rは曲
率の半径であり、Uは平均流体速度31である。ストークス抵抗を仮定して、これらの
流れのために粒子に加えられるディーン抗力(F)の大きさは、F約5.4*10
μπDeaによって推定することができる。
【0043】
流れにおける粒子の平衡位置は、第一に揚力とディーン抗力の間の相互作用によって決
定される。本発明の一部の実施形態において使用される二重螺旋状幾何形状を作製して、
流速0.2mL/分に曝露させると、疾患を引き起こす材料がマイクロ流路内壁の近くの
平衡位置を占有する。これによって、材料が、リガンドで官能化されたマイクロ流路壁に
ごく接近してくることが可能になり、疾患を引き起こす材料を捕捉することになる。これ
を成し遂げるために、二重螺旋状マイクロ流路を、寸法的に例えば長さ(L)406mm
、幅(W)300μm、高さ(H)15μmで、各方向について6つの螺旋状ループを有
するように設計した(図13)。これは、湾曲した幾何形状における細菌およびエンドト
キシンの流体力学的分離および捕捉を成し遂げることを意図したものである。記載された
二重螺旋状マイクロ流路は、低アスペクト比(H/W=0.05)を有する。マイクロ流
路の低アスペクト比によって、疾患を引き起こす材料は急速に最終平衡位置に移動せざる
を得ない。
【0044】
二重螺旋状マイクロ流路内で連続流れ条件下におけるサイズが2μmの粒子(a/H
約0.13;F>F)および10.2μmの粒子(a/H 約0.67;F>F
)は、2μmの粒子がディーン力よりも慣性揚力の影響を受け、したがってマイクロ流路
内で平衡することを実証する(図14aおよび14b)。a/H≧0.07を満足する粒
子は、マイクロ流路内で単一の平衡位置を集約および占有することができる。流路設計の
低アスペクト比は、より小さい粒子が流路内壁の近くに集約することを促進すると考えら
れる。2μmの粒子と比べて、サイズが10μmの大きい粒子は、大きい壁誘起揚力を経
験するため流路の中心近くで平衡する。
【0045】
非球状粒子の集約位置は、粒子の最大横断面寸法に依存している。桿状(球桿)細菌で
あるA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978は、典型的に長さ2μmおよび
幅0.5μmである。したがって、2μmの粒子の集約を評価した(図14a)。しかし
、非球状細菌細胞は、慣性により集約および分類されながら、自由に回転し、強い回転誘
起揚力を経験することがある。10より大きいレイノルズ数では、球状および桿状粒子は
共に、一般に同じ集約動向に従う。しかし、本設計の場合など低アスペクト比のマイクロ
流路において、桿状粒子は2つの平衡領域に集約する(図14c)。細菌は、桿状粒子に
課せられる回転力のため、流路壁に近いとき振動する。壁近傍集約を行う揚力は、回転誘
起と組み合わさって、コリスチンで官能化された流路内壁および外壁の両方との直接接触
をおそらく可能にする。
【0046】
螺旋ベースの設計(螺旋状流路)の使用は、本発明の一部の実施形態において行われる
ように、サイズに依存している慣性力をさらに課して、クレームに係るデバイスに通した
生体液から疾患材料を捕捉することを助ける。
【0047】
デバイスを通る流速は、多方向流路の長さおよび直径、それに通すことになっている生
体液、ならびにデバイスの所期の機能に応じて通常の技法により最適化することができる
。本明細書に例示されるデバイスの一部の使用において、約0.2mL/分~約200m
L/分の流速を利用した。
【0048】
クレームに係るデバイスの複数のバージョンを直列または平行構成に配置することも本
発明の範囲内である。そのようなデバイスは、サイズ、リガンド被覆などが同一でも異な
っていてもよい。
【0049】
先に指摘したように、クレームに係るデバイスは、少なくとも1つの入口および少なく
とも1つの出口を含む。生体液をデバイスの入口(単数または複数)に供給することも、
流体をその出口(単数または複数)から除去することも、通常の手段で成し遂げることが
できる。流体をデバイスに導入するのに適したポンプを使用することができ、容器、入れ
物、試験管などの適当な回収手段を使用して、出口(単数または複数)から出現する流体
を回収することができる。
【0050】
図6に示すようなものなど、本発明の一部の実施形態において、生体液(この場合、患
者の血液)を、血液ポンプで移し、クレームに係るデバイスに流す。デバイスから出現し
た後に回収するのではなく、その代わりに患者の血液を患者に再導入する。流路の壁は、
この例示的な場合において、細菌標的化リガンドで官能化されており(図6)、それによ
って細菌の捕捉および除去が可能になる。この実施形態において、細菌標的化リガンドは
ポリマーベースのものであり、図2aで例示されるように、シラン(Si)-ポリエチレ
ングリコール(PEG)-ポリミキシンE(コリスチン)から構成される。次いで、螺旋
ベースの流体装置の出口から得られる血液は疾患材料を含んでおらず、患者に戻される。
【0051】
一部の実施形態において、流体デバイスは、疾患材料標的化リガンドで官能化された支
柱(図12)を含む。一実施形態において、健全な血球や他の材料など疾患を引き起こさ
ない材料が通過するのに十分な余地をとっておくことによって、目詰まりを防止ししなが
らも、所望の粒子が支柱に衝突および結合する可能性を高めるように、支柱の位置を定め
る。支柱の位置を定めることができる有用なパターンおよび配置が多数あり、いずれかの
そのような配置での使用のために本発明の実施形態が熟考される。
【0052】
一部の実施形態において、螺旋ベースの流体装置またはリガンド(または支柱)の表面
は、細菌などの細胞を捕捉するナノ粒子またはマイクロ粒子である(図11)。ナノ粒子
で官能化された表面は、疾患材料標的化リガンドで官能化されたナノメートルスケールの
粒子を有する。マイクロ粒子表面は、疾患材料標的化リガンドで官能化されたマイクロメ
ートルスケールの粒子を有する。
【0053】
一部の実施形態において、処置に続いて、クレームに係る流体デバイスを使用して、捕
捉された疾患材料を蛍光標識もしくは画像処理または血球計算などの他の技法により分析
することができる。同様に、ELISA、抗原または分析物の存在を決定するために視認
できる変色を引き起こす蛍光発生性または発色性のレポーターまたは基質を使用して、試
料を分析してもよい。一部の実施形態において、熱を血液に加えて、望ましくない疾患材
料を破壊してもよい。一部の実施形態において、医薬品、薬物、化学製品またはそれらの
いずれかの組合せを、クレームに係るデバイスの使用に対するアジュバントとして使用す
ることができる。
【0054】
本発明の別の実施形態において、捕捉された疾患材料を、クレームに係るデバイスから
、そのような疾患材料とリガンドの間の結合を切断する通常の手段(その流路を緩衝塩で
洗い流すなど)により除去することができる。次いで、回収された疾患材料を培養および
/またはその他の方法で試験することができる。本方法は、例えば、その同定および患者
の治療プロトコールの処方において助けとなり得る。そのような材料の単離、回収および
その後の培養を、患者に関連していない多数の他の目的にも使用することができる。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態において、捕捉された疾患材料を、クレームに係るデバイ
スから、そのような疾患材料とリガンドの間の結合を切断する通常の手段(その流路を緩
衝塩または溶解バッファーで洗い流すなど)により除去することができる。回収された疾
患材料が細菌、真菌またはマイコバクテリアである場合、疾患材料のアイデンティティー
は、材料を公知の手段により溶解し、次いで溶解した試料に対してポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)またはマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TO
F)を使用することによって決定することができる。本方法は、患者の治療プロトコール
の迅速な処方を可能にする疾患材料の速やかな同定または患者に関連していない多数の他
の目的においても助けとなり得る。
【0056】
図7に示すように、一部の実施形態において、慣性ベースの分離を使用する流体デバイ
スを使用して、健全な材料を血液中の疾患材料から分離する。具体例として、細菌は血球
より小さい。一部の実施形態において、シラン-ポリエチレングリコール-ポリミキシン
Eなどの細菌標的化リガンドは、螺旋ベースの流体装置流路の壁または支柱に官能化され
、それによって疾患材料(すなわち、細菌)を捕捉することが可能になる。具体例として
、細菌は、白血球や赤血球など血液中の他の細胞より小さい。例えば、細菌は、0.5~
2ミクロンの直径を有することがあり、したがって90%大きい血球が流路の中心に留ま
ることを可能にしながら、より小さい細菌サイズの細胞をリガンドで官能化された流路壁
の近くに押しやるように螺旋を設計することができる。一部の実施形態において、螺旋ベ
ースの流体装置は、微細加工材料で作製される。微細加工材料としては、PDMSまたは
ポリイミドのような他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態に
おいて、螺旋ベースの流体装置はPMMAで作製される。電荷ベースの相互作用により細
菌への親和性が高い特異的リガンドを使用して、細菌を捕捉する。
【0057】
本発明の一部の実施形態において、クレームに係る流体デバイスの球体、支柱、または
壁(またはそれらのいずれかの組合せ)は、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacte
r baumannii)などのアニオン性細菌を捕捉するために、シラン-ポリエチレングリコー
ル-ポリミキシンEなど抗生物質類似体を有するカチオン性ポリマーベースのリガンドで
官能化されている。捕捉した後、撮像して、特異的蛍光抗体コンジュゲートで染色するこ
とによって、疾患進行をさらに診断することができる。細菌捕捉のための抗体標的として
は、LPS、OmpA、リポタイコ酸、GrfA、およびクランピング因子Aが挙げられ
るが、これらに限定されない。
【0058】
一部の実施形態において、流体装置は、ポリマーベースのリガンドなどの疾患材料標的
化リガンド(図2a)で官能化された螺旋状流路(図8)から構成される。螺旋状流路は
、プラスチック、ポリジメチルシロキサン(PDMS)(図5a)、SU-8、ポリイミ
ド、パラリン、金属、または他の材料からなる材料から構成されるが、これらに限定され
ない。一部の実施形態において、螺旋の内部表面は、リガンド、例えばシランベースのポ
リマーリガンドに対して受容性を示すように修飾される。一部の実施形態において、螺旋
ベースの流体装置は、ペプチドで官能化されている。一部の実施形態において、患者の血
液は、関連する生物学的微生物、細胞、タンパク質、抗体、またはペプチドが装置の表面
でリガンドに付着されるように螺旋ベースの流体装置を流れる。一部の実施形態において
、血液は、螺旋ベースの流体装置から約0.2mL/分~約200mL/分の流速で一貫
して流し戻すことができる。代替の実施形態において、血液は、疾患材料を回収するのに
要する時間に応じてより長いまたはより短い時間の後に螺旋ベースの流体装置から流し戻
すことができる。
【0059】
一部の実施形態において、捕捉された材料(細菌など)を含む螺旋ベースの流体装置(
図4)は、蛍光色素で先に蛍光標識される。例えば、SYTO 9色素を使用して、螺旋
ベースの流体装置において捕捉された細菌を標識する(図4)。次に、蛍光細菌を定量化
する。一部の実施形態において、自動化システムを使用して、細菌を定量化する。ソフト
ウェアおよび/またはCCDカメラを定量化システムに組み込んで、細菌を計数すること
ができる。一部の実施形態において、全装置内の細菌を定量化する。一部の実施形態にお
いて、単一の横断面積内の細菌を定量化し、捕捉された細菌細胞の全数をただ1回の細菌
計数から外挿する。一部の実施形態において、流体が除去されると捕捉後に定量化を行う
。捕捉された細胞を標識および定量化するのに使用される様々な方法が存在し、本発明で
説明される。また、様々な材料も捕捉および定量化することができ、本発明で説明される
【0060】
一部の実施形態において、螺旋ベースの流体装置を連続的に流れることがある。代替実
施形態において、血液を特定の時間ポンプで螺旋ベースの流体装置に送り、次いで流れを
特定の時間止め、次いで流れを再開し、このステップを繰り返す。
【0061】
一部の実施形態において、捕捉する螺旋ベースの流体装置を放射線に曝露して、細菌ま
たは他の疾患材料を死滅させる。一部の実施形態において、細菌標的化ポリマーリガンド
を、螺旋ベースの流体装置流路の内部表面に沿って官能化する。細菌は、螺旋ベースの流
体装置を流れるとき、疾患材料標的化リガンドで官能化された流路の表面の近くに集約さ
れる。次いで、リガンド捕捉も抗生物質剤と組み合わせて使用される場合、細菌は付着ま
たは/および死ぬ。一部の実施形態において、抗がん薬または他の化学製品もしくは薬物
が使用される。一部の実施形態において、必ずしも細胞傷害性を示すとは限らない薬物は
、装置の表面で官能化される。これらの薬物は、細菌表面タンパク質またはがん細胞など
、除去の標的とされる細胞壁で発現された特異的タンパク質を標的とする。
【0062】
一部の実施形態において、温熱療法を使用して、血液から疾患材料を除去することで助
けとなり得る。一部の実施形態において、血液をポンプで螺旋ベースの流体装置に送り、
次いで標的疾患材料を破壊または不活性化するのに指定された温度に加熱する。装置の加
熱は、実際の流れの条件下でまたは血液の流れなしで行うことができる。一部の実施形態
において、次いで、螺旋ベースの装置を医学的に許容された温度に冷却する。複数のチャ
ンバ、流路、またはコンパートメントを、加熱および冷却用に指定および適用することが
できる。
【0063】
一部の実施形態において、内側の螺旋状流路は、疾患材料標的化リガンドで官能化され
る。そのリガンドは、タンパク質、抗体、ペプチド、ポリマー、アポトーシスを誘導する
物質、死受容体に結合する物質、腫瘍壊死因子、接着受容体、E-セレクチン、およびサ
イトカイン、定数感知タンパク質受容体を含むリガンドの群から選択される。以上で記載
されていないが使用することができる様々なリガンドが存在する。
【0064】
一部の実施形態において、本発明を使用して、ウイルス、微生物、細菌、転移細胞、材
料、がん幹細胞、ペプチド、タンパク質、酵素、毒素、患部細胞、がん細胞、および定数
感知タンパク質を除去することもできる。一部の実施形態において、本発明は、敗血症、
心内膜炎、および高ラクテートレベルを含めて感染症を低減する助けとなり得る。本発明
は、抗体またはペプチドなどの生物学的リガンドを利用して、微生物、細菌、ウイルス、
エンドトキシン、感染性微生物、がん細胞、循環腫瘍細胞、ペプチド、および血液から除
去されることが望まれている他の疾患材料を捕捉することができる。
【0065】
本開示はまた、血液からの疾患材料の検出および捕捉にも関する。具体的には、本開示
は、本明細書に記載される流体装置内で官能化された疾患材料標的化リガンドを使用して
、全血から除去されることが望まれている疾患材料を捕捉することに関する。
【0066】
一部の実施形態において、血液を流体装置に流した後、次いで光学活性マイクロビーズ
を流体装置に添加して、流路内で捕捉された疾患材料を標識する。
【0067】
一部の実施形態において、マイクロビーズで標識された流体装置を、光学読取装置を使
用して光学読み取りする。結果を使用して、疾患材料が血液中に存在しているかどうかを
決定し、さらに疾患材料を同定し、疾患材料負荷を定量化する。
【0068】
一部の実施形態において、血液は、チューブを通して流体装置に流し込まれる。一部の
実施形態において、螺旋ベースの流体装置は疾患材料標的化リガンドを含む。一部の実施
形態において、リガンドは、細菌など除去の標的となっている疾患材料の表面マーカーに
特異的な抗生物質または抗体である。細菌などの疾患材料は、螺旋ベースの流体装置を流
れるとき、慣性力によって流路の壁に沿って押しやられる。流路の壁は、この例示的な場
合において、細菌標的化リガンドで官能化されており(図2)、それによって細菌の捕捉
および除去が可能になる(図4)。一部の実施形態において、細菌標的化リガンドは、ポ
リマーベースのものであり、図2で示されるように、シラン(Si)-ポリエチレングリ
コール(PEG)-ポリミキシンE(コリスチン)から構成される。一実施形態において
、リガンドであるコリスチン-PEG 1000-シラン(Col-PEG-Si)は、
細菌を捕捉するように設計された。天然のカチオン性デカペプチドであるコリスチンは、
臨床状況で使用される強力な広域スペクトル抗微生物薬である。カチオン性コリスチン分
子とすべてのグラム陰性病原体の負に帯電した脂質A成分が静電気的かつ疎水的に相互作
用し、Col-PEG-Siによる細菌の捕捉が可能になる。流路表面にコンジュゲート
しているコリスチンの量は、細菌結合速度を改善するように慎重に設計された。コリスチ
ンを標的化リガンドとして利用すると、この文脈で使用されてきた合成、遺伝子組み換え
、または生体高分子のリガンドに優る多くの利点がもたらされる。1つの利点は、コリス
チンが、臨床状況で10年間使用されてきた容易に入手可能な認可済み抗生物質であるこ
とである。この設計は、遺伝子組み換えまたは新規の生体高分子リガンドの使用に比べて
開発を単純化し、規制面の考察を促進する。次いで、光学活性な疾患材料標的化マイクロ
ビーズを、流体流路に添加する。光学活性マイクロビーズは、標的疾患材料に結合する。
次いで、光学読取装置を使用して、デバイスを読み取る。
【0069】
一部の実施形態において、流体装置は、疾患材料標的化リガンドで官能化された支柱を
含む。一部の実施形態において、健全な血球および材料が通過するのに十分な余地をとっ
ておくことによって、目詰まりを防止ししながらも、所望の粒子が支柱に衝突および結合
する可能性を高めるように、支柱の位置を定める。支柱の位置を定めることができる有用
なパターンおよび配置が多数あり、いずれかのそのような配置での使用のために本発明の
実施形態が熟考される。
【0070】
一部の実施形態において、処置に続いて、流体装置を使用して、捕捉された疾患材料を
ELISAにより分析することもでき、抗原または分析物の存在を決定するために視認で
きる変色を引き起こす蛍光発生性、または発色性のレポーターまたは基質を使用して、試
料を分析することができる。
【0071】
具体例として、細菌は血球より小さい。一部の実施形態において、シラン-ポリエチレ
ングリコール-ポリミキシンEなどの細菌標的化リガンドは、流体装置流路の壁または支
柱に官能化され、それによって疾患材料(すなわち、細菌)を捕捉することが可能になる
。具体例として、細菌は、白血球や赤血球など血液中の他の細胞より小さい。例えば、細
菌は、0.5~2ミクロンの直径を有することができ、したがって90%大きい血球が流
路の中心に留まることを可能にしながら、より小さい細菌サイズの細胞をリガンドで官能
化された流路壁の近くに押しやるように螺旋を設計することができる。一部の実施形態に
おいて、螺旋ベースの流体装置は、微細加工材料で作製される。微細加工材料としては、
ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリイミドのような他の材料が挙げられる
が、これらに限定されない。
【0072】
電荷ベースの相互作用により細菌への親和性が高い特異的リガンドを使用して、細菌を
捕捉する。本発明の一部の実施形態において、流体装置の球体、支柱、または壁(または
それらのいずれかの組合せ)は、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanni
i)などの細菌を捕捉するために、シラン-ポリエチレングリコール-ポリミキシンEな
どの抗生物質類似体を有するポリマーベースのリガンドで官能化されている。捕捉した後
、撮像して、特異的蛍光抗体コンジュゲートで染色することによって、疾患進行をさらに
診断することができる。細菌捕捉のための抗体標的としては、LPS、OmpA、リポタ
イコ酸、GrfA、およびクランピング因子Aが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
一部の実施形態において、螺旋ベースの流体装置は、ポリマーベースのリガンドなどの
疾患材料標的化リガンド(図2)で官能化された螺旋状流路(図8)から構成される。螺
旋状流路は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDM
S)(図5)、SU-8、ポリイミド、パラリン、金属、または他の材料からなる材料か
ら構成される。一部の実施形態において、螺旋の内部表面は、リガンド、例えばシランベ
ースのポリマーリガンドに対して受容性を示すように修飾される。一部の実施形態におい
て、流体装置は、ペプチドで官能化されている。一部の実施形態において、血液は、関連
する生物学的微生物、細胞、タンパク質、抗体、またはペプチドが装置の表面でリガンド
に付着されるように流体装置を流れる。
【0074】
一部の実施形態において、捕捉された材料(細菌など)を含む螺旋ベースの流体装置(
図4)は、光学活性マイクロビーズで蛍光標識されている。例えば、コリスチンで官能化
された蛍光マイクロビーズを流路に添加して、流体装置において捕捉された細菌を標識す
ることができる。次に、蛍光標識された細菌を定量化する。一部の実施形態において、自
動化システムを使用して、細菌を定量化する。ソフトウェアおよび/またはCCDカメラ
を定量化システムに組み込んで、細菌を計数することができる。一部の実施形態において
、全装置内の細菌を定量化する。一部の実施形態において、単一の横断面積内の細菌を定
量化し、捕捉された細菌細胞の全数をただ1回の細菌計数から外挿する。一部の実施形態
において、流体が除去されると捕捉後に定量化を行う。捕捉された細胞を標識および定量
化するのに使用される様々な方法が存在し、本発明で説明される。また、様々な材料も捕
捉および定量化することができ、本発明で説明される。
【0075】
敗血症における治療様式としての使用には、より大きい生物系の血液量に適応するため
の流量増加とグラム陽性細菌を単離する方式とが必要である。本明細書に開示されるのは
、元のデバイスに適用された同じ定量的手法および設計原理を使用してスケールアップす
る方法である(図8図26)。A.バウマニ(A. baumannii)捕捉は、容積対表面積の
比を一定に保持しながら、流体デバイスの横断面積を増加させた後等しい実効性で行われ
る。重要なことに、これを行って、グラム陽性細菌の捕捉剤を有するデバイスも含む。組
合せデバイスは、グラム陽性、グラム陰性、または抗生物質耐性としての提示にかかわら
ず、細菌を除去する能力を提供し、したがって、血液試料からの陽性細菌培養または株同
定なしに早期処置を可能にする。さらに、細菌およびエンドトキシンの同時除去によって
、敗血症の治療にとって強力で、以前は未試験であった手法が提供される。この研究は、
敗血症が唯一の例である生体液および血液感染症の処置への医用生体工学原理の拡大応用
により達成される変革的影響を強調する。心内膜炎など他の同様に厳しい障害も、同様の
手法によって利益を得ることができる。
【実施例0076】
次の例を以下で記載して、開示された主題によるデバイス、方法、および結果を説明す
る。これらの例は、本明細書に開示される主題のすべての態様を含むことを意図したもの
ではなく、代表的な方法および結果を説明することを意図したものである。これらの例は
、当業者に明らかである本発明の均等物および変形物を排除することを意図したものでは
ない。
【0077】
[実施例1]
細菌を捕捉および除去するための抗生物質で官能化されたマイクロ流体デバイス
本実施例において、流れている流体から細菌を単離するデバイスおよび方法を開発した
。細菌で汚染された試料を、1つまたは複数の流路から構成されるマイクロ流体デバイス
図1Aおよび1B)の少なくとも1つの入口に導入した。細菌に特異的に結合し、高親
和性で流れている流体から捕捉する生体適合性リガンドであるコリスチン-PEG 10
00-シラン(Col-PEG-Si)(図2A、2B、および2C)で、流路壁を連続
的に官能化した。流路はそれぞれ、慣性力に影響を与えるように設計されたアスペクト比
および湾曲を有し、その慣性力によって、細菌細胞および細菌サイズの粒子がマイクロ流
路の壁に沿って押しやられた(図3)。これは、官能化された流路壁に沿って細菌を捕捉
することになる(図4A、4B、および4C)。血球を含めて、他の細胞型はすべて、細
菌標的化リガンドによって捕捉されず、流路の第2の部分に沿って自由に流された。これ
によって、汚染されていない流体が流路出口(単数または複数)を通って出ていった。マ
イクロ流路内のコリスチン表面提示の特徴付けを行い、その結果から、細菌とCol-P
EG-Siとの急速な結合が明らかになった。
【0078】
本実施例において、コリスチンで官能化された新規マイクロ流体デバイスは、インビボ
で安全性および有効性が証明された材料から構成される。これによって、血液で運ばれた
病原体サブセットを感染系から除去および根絶することが可能になり、細菌の遠位部位へ
の伝播がおそらく低減された。血流から循環細菌を選択除去すると、先天性免疫系の再均
衡を助け、それによって、炎症性メディエーターレベルの低下、血管機能の改善、および
血行動態の向上を導く。デバイスによって、磁石などの複雑な外力場の統合の必要性もな
くなり、デバイスを操作しやすくなった。デバイスはナノ粒子を必要とせず、もっぱらF
DAに認可され、生体適合性である材料からなり、臓器におけるナノ粒子の蓄積などの負
の副作用を避けた。システムは、高い処理スループットを有し、高い流速が可能であり、
感染患者の血液をインパクトの強い時間枠で処理するのに適したものとなる。結果は、本
実施例の螺旋状マイクロ流体デバイスが、目詰まりおよび細胞変形の誘起に関連した問題
を克服することを示す。さらに、デバイスは、抗生物質の無効性および過剰使用に対抗す
る助けとなり、その後に多剤耐性細菌の脅威を低減することができる。
【0079】
[実施例2]
血液で運ばれる病原体を急速検出および捕捉するための慣性ベースの流体プラットフォ
ーム
慣性ベースの流体装置を使用した病原体およびエンドトキシンの体外抽出を、敗血症に
関連した罹患率と死亡率を低減する次世代技術として使用することができる。
【0080】
コリスチン-PEG-シランリガンドの合成
NHS-PEG-シラン(N-ヒドロキシスクシンイミド-ポリエチレングリコール
000-シラン、Nanocs,Inc.、ロット#160429)(30mg/mL)
を、エタノール/水、pH5(50/50v/v%、酢酸でpH調整)に溶解した。35
mg/mLのコリスチン硫酸塩(Sigma-Aldrich、ロット#SLBN515
8V)を、NHS-PEG-シラン溶液に添加した。溶液を30秒間ボルテックスし、次
いで21℃で2時間反応させた。NHSを使用して、ヘテロ二官能性NHS-PEG-シ
ランリンカーをコリスチンの同様な反応性を示す5つのL-α-ジアミノ酪酸(Dab)
残基の1つにカップリングさせ、コリスチン-PEG-シランを得た。
【0081】
PEG-シランリガンド溶液調製
PEG-シラン(ポリエチレングリコール1000-シラン、Nanocs,Inc.
、ロット#160706OH)(30mg/mL)を、エタノール/水、pH5(50/
50v/v%、酢酸でpH調整)に溶解した。溶液を30秒間ボルテックスし、次いで2
1℃で2時間インキュベートさせた。
【0082】
デバイスの設計および製作
マイクロ流体デバイスパターンを設計し、AutoCADソフトウェア(AutoCA
D 2014、AutoDesk,Inc.)で描いた。設計は、1つの入口および1つ
の出口を設けた6ループ二重螺旋状マイクロ流路からなるものであった。マイクロ流路は
、6ループについて時計回りに回転し、S字ジャンクションを通って方向を変え、次いで
反時計回りに回転して、二重螺旋を形成する。二重螺旋状マイクロ流路は、406mm(
L)、300μm(W)、15μm(H)の寸法である。隣接している2つのループ間の
間隔は500μmである。湾曲の最外半径は9.8mmである。標準フォトリソグラフィ
ー技法を使用して、SU8-2010(MicroChem Corp.)層(WS-4
00 Lite Series Spin Processor、Laurell Te
chnologies Corp.)で4インチのシリコンウェハ(Nova Elec
tronic Materials)にスピンコーティングしたシリコンマスターから鋳
型を生成した。95℃で5分間ソフトベーキングした後、マスクアライナー(MJB 3
Mask Aligner、Suss MicroTech)をUV光(Novacu
re 2100、Exfo Inc.)およびネガ型フォトマスク(Infinite
Graphics,Inc.)と共に使用して、SU-8層をパターン形成した。続いて
、95℃で5分間の後露光ベーキングステップの後、SU-8現像薬(MicroChe
m Corp.)を使用して、得られたウェハを現像した。最終のハードベーキングを1
50℃で5分間行った。ウェハをマスター鋳型として使用して、マイクロ流体流路を注入
成形した。脱気したPDMS(ポリジメチルシロキサン、PDMSベースと硬化剤を10
:1の比で混合、Sylgard 184、Dow Corning Inc.)を鋳型
に注入成形し、65℃で4時間ベーキングした。流路が埋め込まれたPDMSを、続いて
安全かみそりの刃で切断し、マスター鋳型から取り出した。1.5mmの生検用パンチ(
Integra Miltex)を使用して、PDMSに1つの入口および1つの出口を
あけた。次いで、PDMSスラブを、酸素プラズマ処理(PDC-001 Plasma
Cleaner、Harrick Plasma)後のガラス基板(43mm×50m
m、Ted Pella,Inc.)に結合させた。プラズマ処理およびガラス製カバー
スリップへの結合の直後に、外径1/16インチのタイゴンマイクロボアチュービング(
Cole Parmer Corp.)を、入口ポートと出口ポートとから挿入した。コ
リスチン-PEG-シランリンカーおよびシラン化学的性状を使用して、コリスチンを二
重螺旋状マイクロ流体デバイス流路壁に繋ぎ止めた(図19)。1mLのルアーロック式
使い捨てシリンジ(Becton Dickinson)を使用して、コリスチン-PE
G-シラン溶液を、酸化PDMSマイクロ流路に流した。十分に確立したシラン処理の原
理に従って、コリスチン-PEG-シラン溶液とマイクロ流路表面を65℃で30分間接
触させた。ヘテロ二官能性のコリスチン-PEG-シランリンカーの使用は、細菌および
エンドトキシンとのコリスチン相互作用の立体障害を低減することを意図したPEG分子
スペーサーを含むマイクロ流路壁のコリスチン修飾を可能にするように設計された。生理
学的なpH値の範囲において、コリスチンの第一級アミン基はプロトン化され、したがっ
て正に荷電された。コリスチンの正電荷によって、グラム陰性病原体およびエンドトキシ
ンの負に荷電された外膜への結合が可能になる。まさに同様の手法を使用して、PEG-
シランで官能化されたデバイスも合成し、コリスチン修飾を欠いたPEG化対照群として
使用した。リガンドを添加せずに、官能化されていない二重螺旋状マイクロ流体デバイス
を得た。
【0083】
マイクロ流路壁へのコリスチンコンジュゲーションの確認
コリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイス内のコリスチンの蛍光標識は、ATTO
488 NHSエステル(Sigma-Aldrich、ロット#BCBQ4012V
)を使用して行った。ATTO 488 NHSエステル(2mg/mL)を、使用直前
にジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma-Aldrich)に溶解した。その蛍
光剤をコリスチン化マイクロ流路に添加し、続いて室温で30分間インキュベートするこ
とによって標識した。次いで、染色されたマイクロ流路をリン酸緩衝生理食塩水(PBS
、Gibco、ロット#1806048)、pH7.4で洗浄した。同じプロトコールを
、対照のPEG化マイクロ流路に対して使用した。次いで、蛍光染色したマイクロ流路を
、蛍光顕微鏡(EVOS FL、Invitrogen)を使用して画像処理した。Im
age-Jソフトウェアを使用して、捕捉された画像の流路幅にわたって蛍光強度を定量
化した。官能化されていないマイクロ流体デバイス内のATTO 488 NHSエステ
ルの希釈液を参照として使用して、ATTO 488 NHSエステル標準蛍光較正曲線
を作成した。コリスチン化マイクロ流路およびPEG化マイクロ流路の蛍光強度を、AT
TO 488 NHSエステル標準曲線の蛍光強度と比較し、二重螺旋状マイクロ流路1
つ当たりのコリスチン分子の数を定量化することが可能になった。
【0084】
コリスチンの保持
コリスチン-PEG-シランリガンドが流れ条件下で二重螺旋状マイクロ流体デバイス
の表面から解体する可能性を、MaxSignal(登録商標)コリスチン酵素結合性免
疫吸着アッセイ(ELISA)試験キット(BIOO Scientific、ロット#
109501081415$626311708249)を使用して評価した。PBS、
pH7.4を、0.2mL/分でコリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイスに2時間
流した。試料をデバイス出口から様々な時点(1、2、4、5、10、20、30、45
、60、120分)で回収し、分析した。各試料中の全コリスチン含有量を、コリスチン
ELISAにより製造業者の指示書に従って定量化した。マイクロタイタープレートリー
ダーを使用して、吸光度を450nmで測定し、これらの値を使用して、試料中のコリス
チン濃度を較正曲線に従って算出した(アッセイ検出範囲、0.5~50ng/ml)。
コリスチンリガンド保持の特徴付けの結果によって、二重螺旋状マイクロ流体デバイスを
それぞれ、実験で使用する前に70%エタノールで連続的に30分間洗浄することが促さ
れ、捕捉調査時においてコリスチンの遊離は無視できるほどであった。
【0085】
微生物培養
細菌培養物(すなわち、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)
ATCC17978、コリスチン耐性アシネトバクター・バウマニ(Colistin-resistant
Acinetobacter baumannii) 19606R41、コリスチン耐性アシネトバクター・バ
ウマニ(Colistin-resistant Acinetobacter baumannii) 「患者2」、肺炎桿菌(Kleb
siella pneumoniae) ATCC700603、枯草菌(Bacillus subtilis) 1A57
8 (Bacillus Genetic Stock Center)、黄色ブドウ球
菌(Staphylococcus aureus) ATCC29213)をLB寒天(Sigma-Ald
rich、ロット#SLBR1403V)に蒔き、37℃で終夜増殖させた。次いで、各
株の単一コロニーをLB培地(1倍)(Gibco、ロット#1803272)に播種し
、150rpmで振動させて37℃で18時間増殖させた。細胞濃度をOD595分光測
定(Infinite F500、Tecan)で測定した。
【0086】
慣性集約の可視化
平均直径10.2μm±4μmおよび2μm±0.3μmのポリスチレンマイクロスフ
ェア(Spherotech Inc.)を使用して、マイクロ流路内の粒子集約を分析
した。1vol%のTween-20界面活性剤(Sigma-Aldrich)を含む
1w/v%の懸濁液を用意して、粒子凝集を防止した。脱イオン(DI)水を使用して、
等体積の懸濁液2つを0.1w/v%に希釈した。1mLのルアーロック式チップシリン
ジおよび外径1/16インチのタイゴン入口チュービングを通ってマイクロ流路の入口ポ
ートに連結された注入シリンジポンプ(Nexus 3000、Chemyx Inc.
)を使用して、蛍光粒子を個別に、官能化されていない二重螺旋状マイクロ流路に0.2
mL/分で導入した。蛍光顕微鏡(EVOS FL、Invitrogen)を使用して
、二重螺旋状流路内の粒子の軌道および集約をリアルタイムで可視化した。この方法は、
SYTO(登録商標)9緑色蛍光核酸標識(DMSO中5mM溶液、分子プローブ、ロッ
ト#1687876A)A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978を使用して
繰り返された。SYTO(登録商標)9を用いて5分間インキュベートした後、細菌を、
RNase不含超純水(USB Corp.、ロット#4235512)で3回洗浄し、
約10コロニー形成単位(CFU)/mLの濃度に再懸濁した。注入シリンジポンプを
使用して、蛍光標識された細菌懸濁液を0.2mL/分でPEG化二重螺旋状マイクロ流
体デバイスに流した。蛍光顕微鏡(EVOS FL、Invitrogen)を使用して
、二重螺旋状流路内の細菌の軌道および集約をリアルタイムで可視化した。
【0087】
感受性試験
細菌株のコリスチン最小発育阻止濃度(MIC)を標準寒天平板希釈法で確認した。臨
床検査標準協会の感受性限界点に従って、結果を解釈した。
【0088】
細菌捕捉の可視化
「慣性集約の可視化」方法の節で既に記載したように、A.バウマニ(A. baumannii)
ATCC17978をSYTO(登録商標)9で標識した。注入シリンジポンプを使用
して、蛍光標識された細菌懸濁液を、0.2mL/分でコリスチン化およびPEG化され
た二重螺旋状マイクロ流体デバイスに流した。次いで、デバイスをPBS、pH7.4で
4回洗浄して、弱く結合しているいずれの細菌も除去した。蛍光顕微鏡(EVOS FL
、Invitrogen)を使用して、マイクロ流路の蛍光画像を得た。この方法は、E
DTA抗凝固処理されたヒト全血に添加された蛍光標識されたA.バウマニ(A. baumann
ii) ATCC17978および黄色ブドウ球菌(S. aureus) ATCC29213を
使用して繰り返された。バンダービルト大学被験者(Vanderbilt University Human Subj
ects)施設内倫理委員会(IRB)(プロトコール番号111251)に従って十分な説
明に基づく同意を得て、健常ドナーからヒト血液を得た。
【0089】
細菌捕捉の定量化
コリスチン化およびPEG化された二重螺旋状マイクロ流体デバイスの病原体捕捉能力
の試験は、まず、A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978細菌懸濁液をPB
S、pH7.4中約8×10CFU/mLに調整することによって実施した。対照とし
て働く最初の懸濁液の系列希釈により、約10CFU/mLの濃度を得た。細菌試料を
コリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイスに0.2ml/分で注入し、試料をデバイ
ス出口から異なる5つの時点(1、2、3、4および5分)で回収した。この方法を、P
EG化二重螺旋状マイクロ流体デバイスでも繰り返した。二重螺旋状マイクロ流体デバイ
スの出口から回収された溶液を対照群と同じように希釈した。病原体捕捉能力を定量化す
るために、回収された試料および対照をLB寒天ペトリ皿に3回繰り返して蒔いた(10
0μL)。プレートを37℃で24時間インキュベートし、ペトリ皿に形成されたコロニ
ーを計数した。最初の細菌および回収された細菌の数は、複製物から計数された平均コロ
ニー数にそれらのそれぞれの希釈因子を掛けることによって算出した。回収された細菌の
数を最初の細菌数(すなわち、無処置対照群)から差し引くことによって、捕捉された細
菌の数を決定した。捕捉された細胞の数を最初の細胞の数で割ることによって、捕捉能力
を算出した。PBS、pH7.4中の以下の細菌株の捕捉能力を定量化した:A.バウマ
ニ(A. baumannii) ATCC17978、コリスチン耐性A.バウマニ(colistin-res
istant A. baumannii) 19606R、コリスチン耐性A.バウマニ(colistin-resist
ant A. baumannii) 「患者2」、肺炎桿菌(K. pneumoniae) ATCC700603
、および枯草菌(B. subtilis) 1A578。この方法を、EDTA抗凝固処理された
ヒト全血に添加された蛍光標識されたA.バウマニ(A. baumannii) ATCC1797
8でも繰り返した。
【0090】
エンドトキシン結合アッセイ
Pierce LAL発色性エンドトキシン定量化キット(Thermo Scien
tific、ロット#RG236327)を製造業者のプロトコールに従って使用して、
コリスチン化およびPEG化された二重螺旋状マイクロ流体デバイスのエンドトキシン捕
捉能力をそれぞれ定量化した。簡潔に言えば、大腸菌(E. coli)エンドトキシン標準品
(011:B4)をエンドトキシン不含水中に1EU/mL(エンドトキシン単位)の濃
度で復元し、注入シリンジポンプを使用して、その溶液を0.2ml/分でコリスチン化
二重螺旋状マイクロ流体デバイスに流した。試料をデバイス出口から異なる5つの時点(
1、2、3、4および5分)で回収した。この方法を、PEG化二重螺旋状流体デバイス
で繰り返した。次いで、回収された試料を、製造業者のプロトコールに従ってエンドトキ
シン濃度について分析し、450nmにおいて結果を読み取った。
【0091】
血液学的検討
二重螺旋状マイクロ流体デバイスでの処置が血液学的パラメータを有意に変化させるか
どうか決定するために、1mLのEDTA抗凝固処理されたヒト全血を、0.2ml/分
で血液浄化デバイスに流した後、コリスチン化デバイス出口から回収した。この方法を、
PEG化デバイスで繰り返した。次いで、赤血球溶解を分析して、血漿中における遊離ヘ
モグロビンの放出を決定した。血漿ヘモグロビンを、十分に確立したプロトコールに従っ
て測定した。デバイスに通した後、血液試料を遠心し(500×g)、Triton-X
陽性対照に対する溶血(%)を決定するために、プレートリーダー(Tecan、Inf
inite M1000 Pro)を使用して、上澄液をヘモグロビン放出について45
1nmで分光光度分析した。Triton X-100(Sigma-Aldrich)
を脱イオンHOに希釈して、20v/v%のTriton-X洗浄剤濃度が得られ、そ
れは、陽性対照として働いた。使用された陰性対照は、二重螺旋状マイクロ流体デバイス
に流さなかった(すなわち、無処置の)EDTA抗凝固処理されたヒト全血であった。ヘ
モグロビン放出(%)を次式に従って算出した:ヘモグロビン放出(%)=[(試料45
1nm-陰性対照451nm)/(陽性対照451nm-陰性対照451nm)]×10
0%。各試料(すなわち、無処置、コリスチン化デバイス、PEG化デバイス)の全血球
計算をバンダービルト大学トランスレーショナルパソロジー共有資源コア(Vander
bilt University Translational Pathology
Shared Resource Core)によって行った。
【0092】
デバイスのスケールアップ
既に記載した方法を使用して、最初の二重螺旋状マイクロ流体デバイスのより大きいバ
ージョンを製作および官能化した。デバイスのスケールアップしたバージョンは、1つの
入口および1つの出口を設けた4ループ二重螺旋状マイクロ流路からなるものであった。
スケールアップしたバージョンの寸法は、長さ(L)323mm、幅(W)750μm、
高さ(H)15μmであった。隣接している2つのループ間の間隔は500μmであり、
湾曲の最外半径は11.2mmであった。スケールアップしたデバイスの寸法を、容積対
表面積の比が最初のデバイス設計の比に匹敵するように調整した。スケールアップしたデ
バイスの細菌捕捉能力は、捕捉能力を小さい方のデバイスの捕捉能力と比較するように特
徴付けられた。スケールアップしたデバイスを使用した「細菌捕捉の定量化」アッセイを
、A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978で行った。
【0093】
統計分析
測定値はすべて、エラーバーが指し示すように少なくとも3通りの試料の平均値(av
erage mean)±標準偏差(SD)として報告されている。有意差は、P値<0
.01によって定義されるように、一元配置ANOVAと、その後に続けてポストホック
テューキーの多重比較検定を使用して決定した。
【0094】
結果
マイクロ流路壁へのコリスチンコンジュゲーション
蛍光標識および化学量論的分析を使用して、1.76μgのコリスチンがコリスチン化
二重螺旋状デバイスの壁に沿って官能化されたと推定された(図20)。このデバイスの
表面に結合しているコリスチンの量はヒトに無毒である。ELISAを行って、二重螺旋
状マイクロ流体デバイスから放出されたコリスチン含有分子の量を推定した。2時間の連
続流れによって、流路から約300ngのコリスチンが放出された(図21)。
【0095】
二重螺旋状マイクロ流体デバイスにおける粒子の慣性集約
官能化されていない二重螺旋状マイクロ流体流路内で連続流れ条件下における蛍光ポリ
スチレンマイクロ粒子を画像処理した。体積流量0.2ml/分では、対応するRe=1
4.9の場合、2μmサイズの粒子はマイクロ流路の内壁の近くに集約され(図14a)
、10.2μmサイズの粒子はマイクロ流路幅の中心の近くに集約された(図14b)。
混成の蛍光画像は、10.2μm(赤色流)および2μm(緑色流)の粒子の軌道を示し
、大きい方の粒子は、より大きい血球(すなわち、赤血球および白血球)の軌道に近づく
。マイクロ粒子は、直径に応じて平衡位置で慣性集約した。細菌サイズの粒子が血球サイ
ズの粒子からはっきり分離することは明白であった。A.バウマニ(A. baumannii) A
TCC17978は、直径2μmの球状粒子より流路壁にはるかに近くに慣性集約した。
さらに、細菌は、二重螺旋状デバイスの両方の側部表面の近くに現れた。これらの挙動は
、正味の慣性揚力(F)およびディーン抗力(F)から誘導される慣性設計と一致し
たものであった。
【0096】
表面修飾二重螺旋状マイクロ流体デバイスを使用する細菌細胞捕捉
コリスチン化およびPEG化された二重螺旋マイクロ流体デバイスの細菌捕捉能力を定
性的および定量的に評価するための標準供試体として、A.バウマニ(A. baumannii)
ATCC17978細菌細胞を選択した。緑色の蛍光標識されたA.バウマニ(A. bauma
nnii) ATCC17978は、マイクロ流体デバイスを0.2mL/分で通過し、続い
て洗浄した後、コリスチン化マイクロ流路壁に結合された(図4)。おそらくコリスチン
表面官能化がないため、PEG化二重螺旋マイクロ流体デバイス内では、著しい細菌捕捉
が行われなかった(図4)。
【0097】
PBS(pH7.4)中A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978懸濁液1
mLを、流速0.2mL/分でマイクロ流体デバイスに流すことによって、細菌捕捉能力
を定量化した。デバイスを出る流体から培養することができたコロニーの減少によって確
認されるように、コリスチン化二重螺旋マイクロ流体デバイス(図15a)をただ1回通
過させただけで、10CFUを超える細菌細胞捕捉能力が達成された。肺炎桿菌(K. p
neumoniae) ATCC700603、別のグラム陰性のヒト病原体も、流れている流体
から除去することに成功した(図15b)。コリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイ
スも、流れている流体から、コリスチン耐性A.バウマニ(colistin-resistant A. baum
annii) 「患者2」およびコリスチン耐性A.バウマニ(colistin-resistant A. bauma
nnii) 19606Rを含めて、抗生物質耐性有機体を捕捉および除去した(図15cお
よび15d)。これらのコリスチン耐性株は、文献で十分に特徴付けられており、コリス
チン耐性は、MIC評価により再確認された(表1)。
【0098】
【表1】
【0099】
コリスチン耐性A.バウマニ(colistin-resistant A. baumannii)単離物の最小発育
阻止濃度(MIC;μg/ml)。結果を平均±SD(n=3)として示す。
【0100】
緑色蛍光A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978のコリスチン化二重螺旋
状マイクロ流路デバイスへの結合は、PEG官能化によって強く支持されている(図15
a~図15d)。コリスチン化およびPEG化されたデバイスは、グラム陽性枯草菌(B.
subtilis) 1A578を捕捉せず、コリスチンで官能化されたデバイスにおけるグラ
ム陰性病原体への特異性が確認された(図22)。
【0101】
体外血液浄化
EDTA抗凝固処理され、A.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978で実験
的に汚染されている新鮮なヒト全血を使用して、二重螺旋状マイクロ流体デバイスの血液
浄化能力を評価した。単一のコリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイスは、流速0.
2ml/分でデバイスを1回通過させて、約10コロニー形成単位の細菌を全血から除
去した(図16a)。流れている血液からの細菌細胞捕捉も、蛍光顕微鏡を使用して確認
された。緑色の蛍光標識されたA.バウマニ(A. baumannii) ATCC17978は、
感染血液をマイクロ流体デバイスに0.2mL/分で通し、続いて洗浄した後、コリスチ
ン化マイクロ流路壁に結合される(図16bおよび16c)。しかし、ヒト全血に添加さ
れたグラム陽性黄色ブドウ球菌(S. aureus) ATCC29213は、コリスチン化マ
イクロ流路壁に結合せず、コリスチンで官能化されたデバイスにおけるグラム陰性病原体
への特性が確認された(図16d)。ヒト全血をコリスチン化およびPEG化された二重
螺旋状マイクロ流体デバイスに流しても、血液組成に検出可能な影響を及ぼすこともなく
(表2)、赤血球溶血を誘導することもなかった(表3)。
【0102】
【表2】
【0103】
0.2mL/分でコリスチン化およびPEG化された二重螺旋状流体デバイスに流した
血液の赤血球数、白血球数、および血小板数は、対照群と有意差がなかった。マイクロ流
体デバイスを通過してない未変化の血液を対照として使用した。一元配置ANOVAと、
その後に続くポストホックテューキーの多重比較検定を用いて、データを比較した。結果
を平均±SD(n=3)として示す。P<0.01、**P<0.001、***P<
0.0001。
【0104】
【表3】
【0105】
ヒト全血をコリスチン化およびPEG化された二重螺旋マイクロ流体デバイスに流した
。血液をデバイスに通すと、溶血を引き起こさなかった。Triton-X(20v/v
%)を含有する血液を陽性対照として使用した。陰性対照は、二重螺旋状流体デバイスに
通さなかった血液であった。一元配置ANOVAと、その後に続くポストホックテューキ
ーの多重比較検定を用いて、データを比較した。結果を平均±SD(n=5)として示す
P<0.01、**P<0.001、***P<0.0001。
【0106】
全細菌捕捉能力
コリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイスは、約10CFUの生A.バウマニ(
A. baumannii) ATCC17978(図15a)および同様な量の肺炎桿菌(K. pneum
oniae) ATCC700603(図15b)をPBSからデバイスを作動させて5分以
内に除去した。さらに、A.バウマニ(A. baumannii)のコリスチン耐性株(すなわち、
A.バウマニ(A. baumannii) 19606RおよびA.バウマニ(A. baumannii) 「
患者2」)を、野生型コリスチン感受性A.バウマニ(A. baumannii)株と等しい有効性
で捕捉した(図17)。統計分析により、コリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイス
が、PBSにおける場合と有意差がない能力でグラム陰性細菌をヒト全血から捕捉したこ
とが確認された(図17)。
【0107】
エンドトキシン捕捉の定量化
グラム陰性細菌の外膜の主成分の1つであるエンドトキシンも、敗血症の特徴である全
身性炎症反応に寄与する。したがって、二重螺旋状マイクロ流体デバイスを使用した、流
れている流体からのエンドトキシンの除去を評価した。エンドトキシンをエンドトキシン
不含水に添加し、0.2mL/分で5分間、合計1mLをデバイスに連続的に流した。エ
ンドトキシンは、コリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイスを通っている流体から急
速に捕捉され、エンドトキシン捕捉効率は、1回の通過操作で100%に近づいた(図2
3)。一方、PEG化デバイスを使用すると、エンドトキシンは効果的には捕捉されず、
二重螺旋におけるエンドトキシン保持で重大な意味をもつコリスチンの必要性が明らかに
なった。
【0108】
臨床移行のためのデバイスのスケールアップ
記載されたコリスチン化二重螺旋状マイクロ流体デバイスの捕捉能力は、約10CF
Uであり(図17)、敗血症患者を治療するための要件を3桁より高く上回っている。し
かし、潜在的な臨床移行のためには、現行のデバイス設計に関連する流速を高めて、より
大きい動物モデルおよびヒトの治療を可能にしなければならない。したがって、二重螺旋
状流体設計のより大きいバージョンを開発して、現行の設計のスケールアップの実現可能
性を明らかにした。スケールアップしたバージョンのコリスチン化二重螺旋状マイクロ流
体デバイスは、最初の設計で使用されていた流速より3倍高い流速で作動し、1回の通過
操作で10を超えるA.バウマニ(A. baumannii) ATTC17978 CFUを捕
捉した(図8)。スケールアップしたデバイスの寸法は、適切な流体力学的粒子集約特性
を維持しながら、容積対表面積の比が元のデバイスの比と同様となるように選択した。閉
導管における体液輸送の支配的な原理を使用して、処置容積の増加に適した性能特性を備
えたより大きい二重螺旋状デバイスを設計することができる。
【0109】
コリスチン官能化の必要性は、野生型A.バウマニ(A. baumannii)捕捉がコリスチン
によって媒介されることを示唆する(図4図15aおよび15b)。強いコリスチン耐
性を示す独立して単離された2つのA.バウマニ(A. baumannii)株のコリスチン依存性
捕捉は、抗生物質耐性細菌の捕捉および除去の未だに認識されていない手法を示唆する(
図15cおよび5d)。この結果は、細菌外膜に結合しているコリスチンとは無関係であ
るように、コリスチン耐性と一致する。これらのコリスチン耐性株は、細胞エンベロープ
および膜の生合成に関与する多くの遺伝子の発現を増加させてきた。コリスチンで官能化
された二重螺旋状デバイスが枯草菌(B. subtilis) 1A578などのグラム陽性細菌
を捕捉できないことは、グラム陽性細菌がコリスチンに感受性を示さず、結合することが
できないので、捕捉機序がコリスチン認識であることをさらに支持する。敗血症に関連し
た合併症を誘発し得るグラム陰性細菌毒素であるエンドトキシンは、コリスチンで官能化
されたデバイスに流すと、ほぼ100%の捕捉効率で流体から除去された(図23)。
【0110】
血液からのロバストな細菌捕捉は、インビトロにおける血球を含まない細菌懸濁液の場
合の捕捉と本質的に同一である(図16および17)。二重螺旋の設計は、細菌の結合が
起こる領域から血液の有形成分を空間的に単離し、血球の存在下で低下しない細菌捕捉効
率を担うと仮定される。敗血症のヒトは、感染時のいずれか特定の時間に血液中に最大1
CFUの細菌を含むと推定される。明らかにされたこの設計の能力は、敗血症のヒト
の血液中の平均的な細菌数を3桁より高く上回っている。したがって、肺など感染の供給
元から血液コンパートメントに入る追加の細菌に適応する本デバイスには、相当な捕捉能
力が存在している。本設計の単純性およびロバスト性が、手法の臨床移行の可能性を支持
する。
【0111】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される科学技術用語はすべて、開示された発明
が属する技術分野の技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に引用された
刊行物およびそれらが引用された資料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0112】
当業者は、本発明の好ましい実施形態に対して多数の変更および修正を行うことができ
、そのような変更および修正を本発明の趣旨から逸脱することなく行うことができると認
識する。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような均等な変形をすべて、本発明
の真の趣旨および範囲内に入るものとして包含するよう意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2022-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載された発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
当業者は、本発明の好ましい実施形態に対して多数の変更および修正を行うことができ、そのような変更および修正を本発明の趣旨から逸脱することなく行うことができると認識する。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような均等な変形をすべて、本発明の真の趣旨および範囲内に入るものとして包含するよう意図されている。

本発明は以下の態様を含む。
<1>
少なくとも1つの入口と、
少なくとも1つの出口と、
前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも1つの出口の間の多方向流路であって、内壁を含む多方向流路と、
前記多方向流路の前記内壁の少なくとも一部分を被覆するリガンドと
を含む流体デバイス。
<2>
前記リガンドが、抗体、ペプチド、タンパク質、抗生物質、ポリマー、アプタマー、リガンド、腫瘍壊死因子、接着受容体、E-セレクチン、サイトカイン、化学療法剤、定数感知タンパク質または受容体、および生物学的作用物質からなる群から選択される、<1>に記載のデバイス。
<3>
前記リガンドが抗生物質である、<1>に記載のデバイス。
<4>
前記抗生物質がコリスチンである、<3>に記載のデバイス。
<5>
前記抗生物質がバンコマイシンである、<3>に記載のデバイス。
<6>
前記リガンドが抗体である、<1>に記載のデバイス。
<7>
前記出口が、少なくとも3つの出口流路を含む、<1>から<6>のいずれかに記載のデバイス。
<8>
前記デバイスが、光学読取装置にカップリングされている、<1>から<6>のいずれかに記載のデバイス。
<9>
血液で運ばれる疾患材料を血液から体外で捕捉および除去し、処置された血液を患者に戻す方法であって、
ポンプで患者から血液を流体デバイスに送り込むステップであって、前記流体デバイスが少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも1つの出口の間の多方向流路とを含む、ステップと、
前記血液を前記流体デバイスに流して、前記血液で運ばれる疾患材料を前記流体デバイス内の前記流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと、
前記疾患材料を集約および捕捉するステップであって、前記流体デバイスによって課せられる力が前記疾患材料を前記疾患材料標的化リガンドで官能化された前記流路の壁の近くに集約させ、次いで前記リガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料を前記血液から除去して、処置された血液を生成するステップと、
前記処置された血液を前記患者に戻すステップと
を含む方法。
<10>
前記疾患材料が、健全な材料とサイズ、剛性、接着性、分子構造、遺伝子構造、またはそれらの組合せが異なる、<9>に記載の方法。
<11>
前記血液が全血である、<9>または<10>に記載の方法。
<12>
前記血液が、約0.1mL/分~約200mL/分の流速で導入される、<9>から<11>のいずれかに記載の方法。
<13>
前記疾患材料が、約40%~約100%の範囲の効率で分離される、<9>から<12>のいずれかに記載の方法。
<14>
前記流路が、健全な材料に比べた疾患材料の前記サイズに基づいて前記流路の横断面の少なくとも一部分に沿って疾患材料を単離するように適合されているアスペクト比を規定する長さ、横断面、および水力直径を有する、<9>から<13>のいずれかに記載の方法。
<15>
前記疾患材料が、がん細胞、循環腫瘍細胞、ペプチド、βアミロイド、タンパク質、酵素、毒素、患部細胞、感染性微生物、細胞、寄生虫、真菌、ウイルス、微生物、細菌、細菌毒素、定数感知タンパク質もしくは受容体、リポ多糖、サイトカイン、IL-Ιβ、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、IL-13、IL-15、IL-16、腫瘍壊死因子、プロカルシトニン、病原体関連分子パターン、C反応性タンパク質、または肝不全に関連している小さいもしくはタンパク質結合型の生体分子を含む1つまたは複数の疾患材料である、<9>から<14>のいずれかに記載の方法。
<16>
前記流体デバイスを放射線に曝露して、前記疾患材料を死滅させるステップをさらに含む、<9>から<15>のいずれかに記載の方法。
<17>
熱を前記流体デバイスに加えて、前記疾患材料を死滅させるステップをさらに含む、<9>から<16>のいずれかに記載の方法。
<18>
前記処置された血液を前記患者に戻す前に、前記流体デバイスを冷却して、前記血液を正常体温まで冷却させるステップをさらに含む、<17>に記載の方法。
<19>
前記疾患材料標的化リガンドによって捕捉され、標識された前記疾患材料を分析するステップをさらに含む、<9>から<18>のいずれかに記載の方法。
<20>
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料の量を定量化するステップをさらに含む、<9>から<19>のいずれかに記載の方法。
<21>
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料を疾患材料分析および同定のために蛍光標識するステップをさらに含む、<9>から<20>のいずれかに記載の方法。
<22>
前記流体デバイスが、少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記疾患材料を集約および除去するための螺旋状流路とから構成される、<9>から<21>のいずれかに記載の方法。
<23>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料を捕捉するように、前記疾患材料標的化リガンドで官能化されている、<9>から<22>のいずれかに記載の方法。
<24>
前記流体デバイスが、異なる少なくとも2つの疾患材料標的化リガンドで官能化されており、これらのそれぞれが、血漿活性化材料に付着することができる、<9>から<23>のいずれかに記載の方法。
<25>
前記流体デバイスが、複数の支柱から構成され、これらのそれぞれが、前記疾患材料標的化リガンドで官能化されている、<9>から<24>のいずれかに記載の方法。
<26>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化ナノ粒子で官能化されている、<9>から<25>のいずれかに記載の方法。
<27>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化マイクロ粒子で官能化されている、<9>から<26>のいずれかに記載の方法。
<28>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化繊維で官能化されている、<9>から<27>のいずれかに記載の方法。
<29>
血液で運ばれる疾患材料を血液から捕捉および検出する方法であって、
血液を流体デバイスに流し込んで、前記血液で運ばれる疾患材料を前記流体デバイス内の流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップであって、前記流体デバイス内の前記流路が螺旋状流路を含む、ステップと、
前記疾患材料を捕捉するステップであって、前記流体デバイスによって課せられる力が前記疾患材料を前記疾患材料標的化リガンドで官能化された前記螺旋状流路の壁の近くに集約させ、次いで前記リガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料に結合する光学活性な疾患材料標的化マイクロビーズを前記流体デバイスに流すステップと、
前記流体デバイスを光学読取装置で読み取るステップと
を含む方法。
<30>
前記疾患材料が、健全な材料とサイズ、剛性、接着性、分子構造、遺伝子構造、またはそれらの組合せが異なる、<29>に記載の方法。
<31>
前記血液が全血である、<29>または<30>に記載の方法。
<32>
前記血液が、約0.1mL/分~約200mL/分の流速で導入される、<29>から<31>のいずれかに記載の方法。
<33>
前記疾患材料が、約40%~約100%の範囲の効率で分離される、<29>から<32>のいずれかに記載の方法。
<34>
前記螺旋状流路が、健全な材料に比べた疾患材料の前記サイズに基づいて前記流路の横断面の少なくとも一部分に沿って疾患材料を単離するように適合されているアスペクト比を規定する長さ、横断面、および水力直径を有する、<29>から<33>のいずれかに記載の方法。
<35>
前記疾患材料が、がん細胞、循環腫瘍細胞、ペプチド、βアミロイド、タンパク質、酵素、毒素、患部細胞、感染性微生物、細胞、寄生虫、真菌、ウイルス、微生物、細菌、細菌毒素、定数感知タンパク質もしくは受容体、リポ多糖、サイトカイン、IL-Ιβ、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、IL-13、IL-15、IL-16、腫瘍壊死因子、プロカルシトニン、病原体関連分子パターン、C反応性タンパク質、または肝不全に関連している小さいもしくはタンパク質結合型の生体分子を含む1つまたは複数の疾患材料である、<29>から<34>のいずれかに記載の方法。
<36>
前記疾患材料標的化リガンドによって捕捉され、光学活性なマイクロビーズで標識された前記疾患材料を分析するステップをさらに含む、<29>から<35>のいずれかに記載の方法。
<37>
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料の量を定量化するステップをさらに含む、<29>から<36>のいずれかに記載の方法。
<38>
前記流体デバイスにおいて捕捉された前記疾患材料を疾患材料分析および同定のために蛍光標識するステップをさらに含む、<29>から<37>のいずれかに記載の方法。<39>
前記流体デバイスが、少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記疾患材料をそこに導入された前記流体から集約および除去するための流路構成とから構成される、<29>から<38>のいずれかに記載の方法。
<40>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料を捕捉するように、前記疾患材料標的化リガンドで官能化されている、<29>から<39>のいずれかに記載の方法。
<41>
前記流体デバイスが、少なくとも2つの疾患材料標的化リガンドで官能化されており、これらのそれぞれが、血漿活性化材料に付着することができる、<29>から<40>のいずれかに記載の方法。
<42>
前記流体デバイスが、複数の支柱から構成され、これらのそれぞれが、前記疾患材料標的化リガンドで官能化されている、<29>から<41>のいずれかに記載の方法。
<43>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化ナノ粒子で官能化されている、<29>から<42>のいずれかに記載の方法。
<44>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化マイクロ粒子で官能化されている、<29>から<43>のいずれかに記載の方法。
<45>
前記流体デバイスの内部表面が、疾患材料標的化繊維で官能化されている、<29>から<44>のいずれかに記載の方法。
<46>
患者における敗血症を治療または予防する方法であって、
ポンプで患者から血液を流体デバイスに送り込むステップであって、前記流体デバイスが少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも1つの出口の間の多方向流路とを含む、ステップと、
前記血液を前記流体デバイスに流して、血液で運ばれる疾患材料を前記多方向流路内の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと、
前記疾患材料を集約および捕捉するステップであって、前記流体デバイスによって課せられる力が前記疾患材料を疾患材料標的化リガンドで官能化された前記流路の壁の近くに集約させ、次いで前記リガンドが前記疾患材料に結合する、ステップと、
前記疾患材料を前記血液から除去して、処置された血液を生成するステップと、
前記処置された血液を前記患者に戻すステップと
を含む方法。
<47>
前記疾患材料が、健全な材料とサイズ、剛性、接着性、分子構造、遺伝子構造、またはそれらの組合せが異なる、<46>に記載の方法。
<48>
前記血液が全血である、<46>または<47>に記載の方法。
<49>
前記血液が、約0.1mL/分~約200mL/分の流速で導入される、<26>から<48>のいずれかに記載の方法。
<50>
前記疾患材料が、約40%~約100%の範囲の効率で分離される、<26>から<49>のいずれかに記載の方法。
<51>
前記流路が、健全な材料に比べた疾患材料の前記サイズに基づいて前記流路の横断面の少なくとも一部分に沿って疾患材料を単離するように適合されているアスペクト比を規定する長さ、横断面、および水力直径を有する、<26>から<50>のいずれかに記載の方法。
<52>
疾患材料を生体液から捕捉および除去する方法であって、
前記生体液を流体デバイスに導入するステップであって、前記流体デバイスが少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも1つの出口の間の多方向流路とを含む、ステップと、
前記生体液を前記流体デバイスに流して、前記疾患材料を前記流体デバイス内の前記流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドに集約および曝露するステップと、
前記疾患材料と前記流路の前記内壁に結合している疾患材料標的化リガンドとの結合により、前記疾患材料を捕捉するステップと、
前記疾患材料を前記生体液から除去するステップと
を含む方法。
<53>
前記流体デバイスが螺旋状流路を含む、<52>に記載の方法。
<54>
前記生体液が血液である、<52>または<53>に記載の方法。
<55>
流体デバイスを流れてきた生体液を含む組成物であって、前記流体デバイスが少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、前記少なくとも1つの入口と前記少なくとも1つの出口の間の多方向流路とを含み、前記流路が内壁を含み、前記内壁の少なくとも一部分がリガンドで被覆されており、そのようなリガンドが疾患材料に結合し、前記生体液から除去する、組成物。
<56>
前記生体液が血液である、<55>に記載の組成物。
<57>
前記流体デバイスが螺旋状流路を含む、<55>または<56>に記載の組成物。
<58>
疾患材料を生体液から捕捉および検出する方法であって、
血液を、流路を含む流体デバイスに流し込むステップであって、前記流路が、前記流体デバイス内の前記流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドを有する、ステップと、
前記疾患材料の前記疾患材料標的化リガンドへの結合により前記疾患材料を捕捉するステップと、
前記疾患材料を単離するステップと、
前記疾患材料を培養するステップと
を含む方法。
<59>
前記生体液が血液である、<58>に記載の方法。
<60>
前記流路が螺旋状流路である、<58>または<59>に記載の方法。
<61>
疾患材料を生体液から捕捉および検出する方法であって、
血液を、流路を含む流体デバイスに流し込むステップであって、前記流路が、前記流体デバイス内の前記流路の内壁に沿って官能化された疾患材料標的化リガンドを有する、ステップと、
前記疾患材料の前記疾患材料標的化リガンドへの結合により前記疾患材料を捕捉するステップと、
前記疾患材料を単離するステップと、
前記疾患材料を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)、およびマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)からなる群から選択される手順によって同定するステップと
を含む方法。
<62>
前記生体液が血液である、<61>に記載の方法。
<63>
前記流路が螺旋状流路である、<61>または<62>に記載の方法。
【外国語明細書】