(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176967
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20221122BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20221122BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20221122BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20221122BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R43/00 H
H01L21/60 311S
H05K3/32 B
H05K1/18 J
H05K1/18 S
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130274
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2017222923の分割
【原出願日】2017-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2016233712
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017160674
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(57)【要約】
【課題】1枚の異方性導電フィルムを用いてICチップやFPC等の複数種の電子部品を1つの基板等の電子部品に接続するにあたり、異方性導電フィルムをそれぞれの電子部品により適合させ、接続に関与しない無用な導電粒子を低減させる。
【解決手段】第1の端子パターンを有する第1電子部品31と、第1の端子パターン31と端子の大きさ及びピッチが異なる第2の端子パターンを有する第2電子部品32とが、第1の端子パターンと第2の端子パターンのそれぞれに対応する端子パターンを有する第3電子部品33と異方性導電フィルム10A、10Bにより異方性導電接続されている接続構造体40A、40Bであって、異方性導電フィルム10Aが、導電粒子1が規則的に配列した領域、及び導電粒子1の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域の、少なくとも一方を有する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子パターンを有する第1電子部品と、第1の端子パターンと端子の大きさ及びピッチが異なる第2の端子パターンを有する第2電子部品とが、第1の端子パターンと第2の端子パターンのそれぞれに対応する端子パターンを有する第3電子部品と異方性導電フィルムにより異方性導電接続されている接続構造体であって、
異方性導電フィルムが、導電粒子が規則的に配列した領域、及び導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域の、少なくとも一方を有する接続構造体。
【請求項2】
異方性導電フィルムが、導電粒子が規則的に配列し、かつ導電粒子の個数密度が35000個/mm2未満の領域を有する請求項1記載の接続構造体。
【請求項3】
異方性導電フィルムが、導電粒子が規則的に配列し、かつ導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域を有する請求項1記載の接続構造体。
【請求項4】
絶縁性樹脂層と、該絶縁性樹脂層に配置された導電粒子を有する異方性導電フィルムであって、
導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域を有する異方性導電フィルム。
【請求項5】
導電粒子が規則的に配列している請求項4記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
異方性導電フィルムの短手方向又は長手方向に、導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域が並んでいる請求項4又は5記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
絶縁性樹脂層の厚さ方向における導電粒子の位置が、絶縁性樹脂層の一方の表面又はその近傍で揃っている領域と、一方の表面又はその近傍と、他方の表面又はその近傍の双方で揃っている領域を有する請求項4~6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項8】
異方性導電フィルムの平面視において2つの導電粒子が重なり合った導電粒子ユニットが規則的に配列した領域と、単体の導電粒子が規則的に配列した領域を有する請求項7記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
絶縁性樹脂層に、該絶縁性樹脂層よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性樹脂層が積層されている請求項4~8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有する請求項4~9のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項11】
前記傾斜では、導電粒子の近傍の絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面に対して欠けており、前記起伏では、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少ない請求項10記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
絶縁性樹脂層の一方の表面に導電粒子を付着させ、該導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む第1の押し込み工程と、
平面視で、第1の押し込み工程で導電粒子を押し込んだ領域の一部となる領域、又は第1の押し込み工程で導電粒子を押し込んだ領域全体を含む領域、又は第1の押し込み工程で導電粒子を押し込んだ領域と部分的に重複する領域に導電粒子を付着させ、その導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む第2の押し込み工程と、
を有する異方性導電フィルムの製造方法であって、
少なくとも導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域を形成する異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項13】
第1の押し込み工程で絶縁性樹脂層に押し込む導電粒子と、第2の押し込み工程で絶縁性樹脂層に押し込む導電粒子の粒子径及び硬さが同一である請求項12記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項14】
第1の押し込み工程で絶縁性樹脂層に押し込む導電粒子と、第2の押し込み工程で絶縁性樹脂層に押し込む導電粒子の粒子径又は硬さが異なる請求項12記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項15】
第1の押し込み工程で絶縁性樹脂層に押し込む導電粒子の配列又は個数密度と、第2の押し込み工程で絶縁性樹脂層に押し込む導電粒子の配列又は個数密度が異なる請求項12~14のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項16】
第1の押し込み工程において、転写型を用いて導電粒子を絶縁性樹脂層に付着させ、第2の押し込み工程において、該転写型を用いて導電粒子を絶縁性樹脂層に付着させる請求項12又は13記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項17】
第2の押し込み工程において、導電粒子を絶縁性樹脂層の前記一方の表面又は他方の表面に付着させる請求項12~16のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項18】
第2の押し込み工程後、導電粒子を押し込んだ絶縁性樹脂層をスリットする請求項12~17のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項19】
第1の端子パターンを有する第1電子部品と、第1の端子パターンと端子の大きさ及びピッチが異なる第2の端子パターンを有する第2電子部品とを、第1の端子パターンと第2の端子パターンのそれぞれに対応する端子パターンを有する第3電子部品と異方性導電フィルムにより異方性導電接続する接続構造体の製造方法であって、
異方性導電フィルムとして、導電粒子が規則的に配列した領域を有する領域、及び導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域の、少なくとも一つを有する異方性導電フィルムを使用する接続構造体の製造方法。
【請求項20】
第3電子部品上に異方性導電フィルムを介して載置された第1電子部品と第2電子部品を、該第1電子部品と第2電子部品の側から加圧ツールで圧着する請求項19記載の接続構造体の製造方法。
【請求項21】
第1電子部品と第2電子部品を同時に圧着する請求項19記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示素子においてガラス基板端部にICチップとフレキシブルプリント基板(FPC)の双方を接続するなど、1つの基板に複数種の電子部品を、それぞれ異方性導電フィルムを用いて接続することがなされている。この場合、複数種の電子部品のそれぞれに適合した異方性導電フィルムが使用される。
【0003】
これに対し、1枚の異方性導電フィルムを用いて2種の電子部品を1つの基板に接続することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1枚の異方性導電フィルムを用いて2種の電子部品を1つの基板に接続すると、接続に要する工程数やスペースを低減させることができる。
【0006】
しかしながら、従来、2種の電子部品を1つの基板に接続するために使用される異方性導電フィルムは、絶縁性樹脂層に導電粒子をランダムに分散させたものであるため、異方性導電フィルムにおける導電粒子の分散状態を精密に規定することができない。そこで、異方性導電フィルムにおける導電粒子の個数密度は、2種の電子部品のうち、端子の大きさやピッチが小さい方に適合させることが必要となり、接続に関与しない導電粒子が無用に多く存在することになっていた。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題に対し、1枚の異方性導電フィルムを用いてICチップやFPC等の複数種の電子部品を1つの基板等の電子部品に接続するにあたり、異方性導電フィルムをそれぞれの電子部品に更に適合させ、接続に関与しない無用な導電粒子を低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、1枚の異方性導電フィルムを用いて端子パターンの異なる第1電子部品及び第2電子部品を第3電子部品に接続するにあたり、異方性導電フィルムにおける導電粒子を規則的に配列させると導電粒子のピッチや配列方向を制御できるので、導電粒子がランダムに配置されている場合に比して、第1電子部品と第2電子部品の双方を第3電子部品に適切に接続するために必要な導電粒子の個数密度を低減させることができ、また異方性導電接続した接続構造体の歩留まりを向上させやすくなること、さらに、1枚の異方性導電フィルムに導電粒子の個数密度、粒子径、硬度等が異なる複数の領域を設けることにより、第1電子部品及び第2電子部品のそれぞれに、より適合した接続を行うことが可能となり、無用な導電粒子をさらに低減できることを見いだし、本発明を想到した。
【0009】
即ち、第1の本発明は、第1の端子パターンを有する第1電子部品と、第1の端子パターンと端子の大きさ及びピッチが異なる第2の端子パターンを有する第2電子部品とが、第1の端子パターンと第2の端子パターンのそれぞれに対応する端子パターンを有する第3電子部品と異方性導電フィルムにより異方性導電接続されている接続構造体であって、異方性導電フィルムが、導電粒子が規則的に配列した領域、及び導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域の、少なくとも一方を有する接続構造体である。
【0010】
第2の本発明は、絶縁性樹脂層と、該絶縁性樹脂層に配置された導電粒子を有する異方性導電フィルムであって、導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域を有する異方性導電フィルムである。
【0011】
第3の本発明は、絶縁性樹脂層の一方の表面に導電粒子を付着させ、該導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む第1の押し込み工程と、
平面視で、第1の押し込み工程で導電粒子を押し込んだ領域の一部となる領域、又は第1の押し込み工程で導電粒子を押し込んだ領域全体を含む領域、又は第1の押し込み工程で導電粒子を押し込んだ領域と部分的に重複する領域に導電粒子を付着させ、その導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む第2の押し込み工程と、
を有する異方性導電フィルムの製造方法であって、
少なくとも導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域を形成する異方性導電フィルムの製造方法である。
【0012】
第4の本発明は、第1の端子パターンを有する第1電子部品と、第1の端子パターンと端子の大きさ及びピッチが異なる第2の端子パターンを有する第2電子部品とを、第1の端子パターンと第2の端子パターンのそれぞれに対応する端子パターンを有する第3電子部品と異方性導電フィルムにより異方性導電接続する接続構造体の製造方法であって、
異方性導電フィルムとして、導電粒子が規則的に配列した領域、及び導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域の、少なくとも一方を有する異方性導電フィルムを使用する接続構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接続構造体は1枚の異方性導電フィルムにより第1電子部品と第2電子部品が第3電子部品に異方性導電接続されているので、第3電子部品と接続する電子部品ごとに異方性導電フィルムを変える場合に比して製造工程を簡略化でき、低コストで製造することができる。しかも、この接続構造体は、異方性導電フィルムとして、導電粒子が規則的に配列しているか、又は導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域を有するものが使用されることにより製造されるので、1枚の異方性導電フィルムを使用して製造されているにもかかわらず、この異方性導電フィルムは第1電子部品及び第2電子部品のそれぞれに適合しており、かつ無用な導電粒子が低減している。
【0014】
また、本発明の異方性導電フィルムは、導電粒子が規則的に配列しているか、導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域を有するので、これらの領域を、第1電子部品及び第2電子部品のそれぞれの端子パターンに応じたものとすることができる。したがって、上述のように異方性導電フィルムにおける導電粒子の無駄が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1の接続構造体40Aの模式的平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の接続構造体40Aの模式的平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の接続構造体40Aの模式的平面図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の第2の接続構造体40Bの模式的平面図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の第2の接続構造体40Bに使用した異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図4C】
図4Cは、本発明の第2の接続構造体40Bに使用した異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図4D】
図4Dは、本発明の第2の接続構造体40Bに使用した異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図4E】
図4Eは、本発明の第2の接続構造体40Bに使用した異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第2の接続構造体40Bの模式的平面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の第2の接続構造体40Bに使用した異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の第2の接続構造体40Bに使用した異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第2の接続構造体40Bの模式的平面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の第2の接続構造体40Bに使用した異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図7】
図7は、接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図8】
図8は、接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図9】
図9は、接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図10】
図10は、接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図11】
図11は、接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図12】
図12は、接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図13】
図13は、接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図14】
図14は、異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図16】
図16は、異方性導電フィルム10Dの断面図である。
【
図17】
図17は、異方性導電フィルム10Eの断面図である。
【
図18】
図18は、実施例の異方性導電フィルム10Fの断面図である。
【
図19】
図19は、実施例の異方性導電フィルム10Gの断面図である。
【
図20】
図20は、比較対象用の異方性導電フィルム10Xの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0017】
[第1の接続構造体]
(全体構成)
図1は、本発明の接続構造体の態様のうち第1の接続構造体40Aの模式的平面図である。この接続構造体40Aでは、第1の端子パターンを有する第1電子部品31と、第1の端子パターンと端子の大きさ及びピッチが異なる第2の端子パターンを有する第2電子部品32とが、第1の端子パターンと第2の端子パターンのそれぞれに対応する端子パターンを有する第3電子部品33と異方性導電フィルム10Aにより異方性導電接続されている。本実施例では、第1電子部品31として、例えば、ICチップ、ICモジュールなどの電子部品が接続されており、第2電子部品32としてFPC等の電子部品が接続されている。また、これらが接続される第3電子部品33として、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などが使用されている。なお、本発明において、第1電子部品、第2電子部品及び第3電子部品の種類は特に限定されない。第1電子部品及び第2電子部品として、複数のICチップ、ICモジュールなどが接続されていてもよい。
【0018】
また、
図1には、異方性導電フィルム10Aの短手方向の一端側で第1電子部品31を第3電子部品33に接続し、他端側で第2電子部品32を第3電子部品33に接続しているが、1枚の異方性導電フィルム10Aで第1電子部品31と第2電子部品32を第3電子部品33に接続するにあたり、これらの配置は特に限定されない。例えば
図2に示すように、異方性導電フィルム10Aの長手方向に第1電子部品31と第2電子部品32が並ぶようにしてもよい。また、
図3に示すように複数個の第1電子部品31を第3電子部品33に接続してもよく、複数個の第2電子部品32を第3電子部品33に接続してもよい。
【0019】
(第1の接続構造体における異方性導電フィルム)
本発明の第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aでは絶縁性樹脂層2に導電粒子1が規則的に配列している。そのため、この異方性導電フィルム10Aを使用して第1電子部品31と第2電子部品32を異方性導電接続した後の第1の接続構造体40Aも、少なくとも第1電子部品31も第2電子部品32も接続されていない部分に導電粒子が規則的に配列している領域を有する。
【0020】
・導電粒子の規則的な配列と個数密度
第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aに関し、導電粒子の規則的な配列としては、正方格子、六方格子、斜方格子、長方格子等をあげることができる。また、このような格子配列を形成する一部の導電粒子を意図的に除いたものも、格子配列に包含される。この導電粒子の除き方は、フィルムの長手方向に規則性があれば特に制限はない。また、導電粒子全体の粒子配置として、導電粒子1が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。導電粒子を規則的な配列とし、導電粒子のピッチや配列方向を制御することにより、第1電子部品と第2電子部品の双方を第3電子部品に接続するために必要な導電粒子の個数密度を最適化しやすくなる。従来、第1電子部品と第2電子部品の双方を第3電子部品に接続する異方性導電フィルムでは、導電粒子がランダムに配置されていたため、異方性導電フィルムにおける導電粒子の個数密度を、第1電子部品の接続に適した個数密度と、第2電子部品の接続に適した個数密度のうち、個数密度の高い方に合わせることがなされており、そのために導電粒子が無駄に多く使用されていたが、本発明の第1の接続構造体40Aでは、上述のように異方性導電フィルムにおける導電粒子が規則的な配列をしていることにより、導電粒子の個数密度の最適化を図りやすいので、導電粒子の無駄を低減することができる。
【0021】
例えば、第1電子部品と第3電子部品をCOG接続し、第2電子部品と第3電子部品をFOG接続する場合、異方性導電フィルム10Aにおける導電粒子の個数密度は、35000個/mm2未満とすることができる。
【0022】
・面積占有率
異方性導電フィルム10Aにおける導電粒子の個数密度を定めるのに際し、導電粒子の個数密度と、導電粒子1個の平面視面積の平均から次式で算出される面積占有率は、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するための押圧治具に必要とされる推力の指標となる。
【0023】
面積占有率(%)
=[平面視における導電粒子の個数密度(個/mm2)]×[導電粒子1個の平面視面積の平均(mm2/個)]×100
【0024】
異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力を低く抑える点から、面積占有率は好ましくは35%以下、より好ましくは0.3~30%の範囲である。
【0025】
・導電粒子の粒子径
導電粒子の粒子径は、配線高さのばらつきに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは3μm以上9μm以下である。絶縁性樹脂層に分散させる前の導電粒子の粒子径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができる。また、絶縁性樹脂層に分散させた後の導電粒子の粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。画像型でもレーザー型であってもよい。画像型の測定装置としては、一例として湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。導電粒子の平均粒子径Dを測定するサンプル数(導電粒子数)は1000個以上が好ましい。異方性導電フィルムにおける導電粒子の平均粒子径Dは、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、導電粒子の平均粒子径Dを測定するサンプル数(導電粒子数)を200個以上とすることが望ましい。
【0026】
なお、導電粒子として、その表面に絶縁性微粒子が付着しているものを使用する場合、本発明における導電粒子の粒子径は、表面の絶縁性微粒子を含まない粒子径を意味する。
【0027】
・導電粒子が非接触で存在する個数割合
第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aにおいて、導電粒子1は、フィルムの平面視にて互いに接触することなく存在していることが好ましい。そのため、導電粒子全体に対し、導電粒子1同士が互いに非接触で存在する個数割合は95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99.5%以上である。後述するように、転写型を使用して導電粒子1を規則的に配置させると、導電粒子1同士が互いに非接触で存在する割合を容易に制御することができるので好ましい。導電粒子1が平面視で重なりあっている場合、それぞれを個別にカウントする。
【0028】
・導電粒子のフィルム厚方向の位置
第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aにおいて、導電粒子1が互いに接触することなく存在する場合に、そのフィルム厚方向の位置が揃っていることが好ましい。例えば、
図7に示したように、導電粒子1のフィルム厚方向の埋込量Lbを揃えることができる。これにより、第1電子部品31の端子と第3電子部品33の端子の間においても、第2電子部品32の端子と第3電子部品33の端子の間においても、導電粒子の捕捉性が安定し易い。なお、異方性導電フィルム10Aにおいて、導電粒子1は、絶縁性樹脂層2から露出していても、完全に埋め込まれていてもよい。
【0029】
ここで、埋込量Lbは、導電粒子1が埋め込まれている絶縁性樹脂層2の表面(絶縁性樹脂層2の表裏の面のうち、導電粒子1が露出している側の表面、又は導電粒子1が絶縁性樹脂層2に完全に埋め込まれている場合には、導電粒子1との距離が近い表面)であって、隣接する導電粒子間の中央部における接平面2pと、導電粒子1の最深部との距離をいう。
【0030】
・埋込率
導電粒子1の平均粒子径Dに対する埋込量Lbの割合を埋込率(Lb/D)とした場合に、埋込率は30%以上105%以下が好ましい。埋込率(Lb/D)を30%以上60%未満とすると、導電粒子を保持する比較的高粘度の樹脂から導電粒子が露出している比率が高くなることから、より低圧実装が容易になる。60%以上とすると、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持し易くなる。また、105%以下とすることにより、異方性導電接続時に端子間の導電粒子を無用に流動させるように作用する絶縁性樹脂層の樹脂量を低減させることができる。尚、導電粒子1は絶縁性樹脂層2を貫通していてもよく、その場合の埋込率(Lb/D)は100%となる。
【0031】
なお、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が30%以上105%以下とは、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上の埋込率が30%以上105%以下であることをいう。このように全導電粒子の埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重が導電粒子に均一にかかるので、端子における導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。
【0032】
(絶縁性樹脂層)
・絶縁性樹脂層の粘度
第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aにおいて、絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度は、特に制限はなく、異方性導電フィルムの使用対象や、異方性導電フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、後述の凹み2b(
図8)、2c(
図9)を形成できる限り、異方性導電フィルムの製造方法によっては1000Pa・s程度とすることもできる。一方、異方性導電フィルムの製造方法として、導電粒子を絶縁性樹脂層の表面に所定の配置で保持させ、その導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む方法を行うとき、絶縁性樹脂層がフィルム形成を可能とする点から絶縁性樹脂層の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。
【0033】
また、後述の異方性導電フィルムの製造方法で説明するように、
図8に示すように絶縁性樹脂層2に押し込んだ導電粒子1の露出部分の周りに凹み2bを形成したり、
図9に示すように絶縁性樹脂層2に押し込んだ導電粒子1の直上に凹み2cを形成したりする点から、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、さらにより好ましくは3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0034】
絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度を1500Pa・s以上の高粘度とすることにより、異方性導電フィルムの物品への圧着に導電粒子の無用な移動を抑制でき、特に、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0035】
また、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより異方性導電フィルム10Aの導電粒子分散層3を形成する場合において、導電粒子1を押し込むときの絶縁性樹脂層2は、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出するように導電粒子1を絶縁性樹脂層2に押し込んだときに、絶縁性樹脂層2が塑性変形して導電粒子1の周囲の絶縁性樹脂層2に凹み2b(
図8)が形成されるような高粘度の粘性体とするか、あるいは、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出することなく絶縁性樹脂層2に埋まるように導電粒子1を押し込んだときに、導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に凹み2c(
図9)が形成されるような高粘度の粘性体とする。そのため、絶縁性樹脂層2の60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。この測定は最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。
【0036】
絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むときの該絶縁性樹脂層2の具体的な粘度は、形成する凹み2b、2cの形状や深さなどに応じて、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。
【0037】
上述したように、絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1の周囲に凹み2b(
図8)が形成されていることにより、異方性導電フィルムの物品への圧着時に生じる導電粒子1の扁平化に対して絶縁性樹脂から受ける抵抗が、凹み2bが無い場合に比して低減する。このため、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。
【0038】
また、絶縁性樹脂層2から露出することなく埋まっている導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に凹み2c(
図9)が形成されていることにより、凹み2cが無い場合に比して異方性導電フィルムの物品への圧着時の圧力が導電粒子1に集中し易くなる。このため、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで捕捉性が向上し、導通性能が向上する。
【0039】
<凹みに代わる“傾斜”もしくは“起伏”>
図8、
図9に示すような異方性導電フィルムの 「凹み」2b、2cは、「傾斜」もしくは「起伏」という観点から説明することもできる。以下に、図面(
図13~20)を参照しながら説明する。
【0040】
異方性導電フィルム10Aは導電粒子分散層3から構成されている(
図13)。導電粒子分散層3では、絶縁性樹脂層2の片面に導電粒子1が露出した状態で規則的に分散している。フィルムの平面視にて導電粒子1は互いに接触しておらず、フィルム厚方向にも導電粒子1が互いに重なることなく規則的に分散し、導電粒子1のフィルム厚方向の位置が揃った単層の導電粒子層を構成している。
【0041】
個々の導電粒子1の周囲の絶縁性樹脂層2の表面2aには、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層2の接平面2pに対して傾斜2bが形成されている。なお後述するように、本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層2に埋め込まれた導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層の表面に起伏2cが形成されていてもよい(
図16、
図18)。
【0042】
本発明において、「傾斜」とは、導電粒子1の近傍で絶縁性樹脂層の表面の平坦性が損なわれ、前記接平面2pに対して樹脂層の一部が欠けて樹脂量が低減している状態を意味する。換言すれば、傾斜では、導電粒子の周りの絶縁性樹脂層の表面が接平面に対して欠けていることになる。一方、「起伏」とは、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面にうねりがあり、うねりのように高低差がある部分が存在することで樹脂が低減している状態を意味する。換言すれば、導電粒子直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、導電粒子直上の絶縁性樹脂層の表面が接平面にあるとしたときに比して少なくなる。これらは、導電粒子の直上に相当する部位と導電粒子間の平坦な表面部分(
図16、
図18の2f)とを対比して認識することができる。なお、起伏の開始点が傾斜として存在する場合もある。
【0043】
上述したように、絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1の周囲に傾斜2b(
図13)が形成されていることにより、異方性導電接続時に導電粒子1が端子間で挟持される際に生じる導電粒子1の扁平化に対して絶縁性樹脂から受ける抵抗が、傾斜2bが無い場合に比して低減するため、端子における導電粒子の挟持がされ易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。この傾斜は、導電粒子の外形に沿っていることが好ましい。接続における効果がより発現しやすくなる以外に、導電粒子を認識し易くなることで、異方性導電フィルムの製造における検査などが行い易くなるからである。また、この傾斜および起伏は絶縁性樹脂層にヒートプレスするなどにより、その一部が消失してしまう場合があるが、本発明はこれを包含する。この場合、導電粒子は絶縁性樹脂層の表面に1点で露出する場合がある。なお、異方性導電フィルムは、接続する電子部品が多様であり、これらに合わせてチューニングする以上、種々の要件を満たせるように設計の自由度が高いことが望まれるので、傾斜もしくは起伏を低減させても部分的に消失させても用いることができる。
【0044】
また、絶縁性樹脂層2から露出することなく埋まっている導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に起伏2c(
図16、
図18)が形成されていることにより、傾斜の場合と同様に、異方性導電接続時に端子からの押圧力が導電粒子にかかりやすくなる。また、起伏があることにより樹脂が平坦に堆積している場合よりも導電粒子の直上の樹脂量が低減しているため、接続時の導電粒子直上の樹脂の排除が生じやすくなり、端子と導電粒子とが接触し易くなることから、端子における導電粒子の捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。
【0045】
(絶縁性樹脂層の厚さ方向における導電粒子の位置)
「傾斜」もしくは「起伏」という観点を考慮した場合の絶縁性樹脂層2の厚さ方向における導電粒子1の位置は、前述と同様に、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出していてもよく、露出することなく、絶縁性樹脂層2内に埋め込まれていても良いが、隣接する導電粒子間の中央部における接平面2pからの導電粒子の最深部の距離(以下、埋込量という)Lbと、導電粒子の平均粒子径Dとの比(Lb/D)(埋込率)が30%以上105%以下であることが好ましい。
【0046】
埋込率(Lb/D)を30%以上60%未満とすると、導電粒子を保持する比較的高粘度の樹脂から粒子が露出している比率が高くなることから、より低圧実装が容易になる。60%以上とすると、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持し易くなる。また、105%以下とすることにより、異方性導電接続時に端子間の導電粒子を無用に流動させるように作用する絶縁性樹脂層の樹脂量を低減させることができる。
【0047】
なお、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が30%以上105%以下とは、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上の埋込率が30%以上105%以下であることをいう。このように全導電粒子の埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重が導電粒子に均一にかかるので、端子における導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。
【0048】
埋込率(Lb/D)は、異方性導電フィルムから面積30mm2以上の領域を任意に10箇所以上抜き取り、そのフィルム断面の一部をSEM画像で観察し、合計50個以上の導電粒子を計測することにより求めることができる。より精度を上げるため、200個以上の導電粒子を計測して求めてもよい。
【0049】
また、埋込率(Lb/D)の計測は、面視野画像において焦点調整することにより、ある程度の個数について一括して求めることができる。もしくは埋込率(Lb/D)の計測にレーザー式判別変位センサ((株)キーエンス製など)を用いてもよい。
【0050】
(埋込率30%以上60%未満の態様)
埋込率(Lb/D)30%以上60%以下の導電粒子1のより具体的な埋込態様としては、まず、
図13に示した異方性導電フィルム10Aのように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出するように埋込率30%以上60%未満で埋め込まれた態様をあげることができる。この異方性導電フィルム10Aは、絶縁性樹脂層2の表面のうち該絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1と接している部分及びその近傍が、隣接する導電粒子間の中央部の絶縁性樹脂層の表面2aにおける接平面2pに対して導電粒子の外形に概ね沿った稜線となる傾斜2bを有している。
【0051】
このような傾斜2bもしくは後述する起伏2cは、異方性導電フィルム10Aを、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより製造する場合に、導電粒子1の押し込みを、40~80℃で3000~20000Pa・s、より好ましくは4500~15000Pa・sで行うことにより形成することができる。
【0052】
(埋込率60%以上100%未満の態様)
埋込率(Lb/D)60%以上105%以下の導電粒子1のより具体的な埋込態様としては、まず、
図13に示した異方性導電フィルム10Aのように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出するように埋込率60%以上100%未満で埋め込まれた態様をあげることができる。この異方性導電フィルム10Aは、絶縁性樹脂層2の表面のうち該絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1と接している部分及びその近傍が、隣接する導電粒子間の中央部の絶縁性樹脂層の表面2aにおける接平面2pに対して導電粒子の外形に概ね沿った稜線となる傾斜2bを有している。
【0053】
このような傾斜2bもしくは後述する起伏2cは、異方性導電フィルム10Aを、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより製造する場合に、導電粒子1の押し込み時の粘度を、下限は、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上とし、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下とする。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。なお、絶縁性樹脂層をヒートプレスすることなどにより傾斜2bや起伏2cの一部が消失してもよく、傾斜2bが起伏2cに変化してもよく、また、起伏2cを有する絶縁性樹脂層に埋め込まれた導電粒子が、その頂部の1点で絶縁性樹脂層2に露出してもよい。
【0054】
(埋込率100%の態様)
次に、本発明の異方性導電フィルムのうち、埋込率(Lb/D)100%の態様としては、
図14に示す異方性導電フィルム10Bのように、導電粒子1の周りに
図13に示した異方性導電フィルム10Aと同様の導電粒子の外形に概ね沿った稜線となる傾斜2bを有し、絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1の露出径Lcが導電粒子の平均粒子径Dよりも小さいもの、
図15Aに示す異方性導電フィルム10Cのように、導電粒子1の露出部分の周りの傾斜2bが導電粒子1近傍で急激に現れ、導電粒子1の露出径Lcと導電粒子の平均粒子径Dとが略等しいもの、
図16に示す異方性導電フィルム10Dのように、絶縁性樹脂層2の表面に浅い起伏2cがあり、導電粒子1がその頂部1aの1点で絶縁性樹脂層2から露出しているものをあげることができる。
【0055】
なお、導電粒子の露出部分の周りの絶縁性樹脂層2の傾斜2bや、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の起伏2cに隣接して微小な突出部分2qが形成されていてもよい。この一例を
図15Bに示す。
【0056】
これらの異方性導電フィルム10B、10C、10C’、10Dは埋込率100%であるため、導電粒子1の頂部1aと絶縁性樹脂層2の表面2aとが面一に揃っている。導電粒子1の頂部1aと絶縁性樹脂層2の表面2aとが面一に揃っていると、
図13に示したように導電粒子1が絶縁性樹脂層2から突出している場合に比して、異方性導電接続時に個々の導電粒子の周辺にてフィルム厚み方向の樹脂量が不均一になりにくく、樹脂流動による導電粒子の移動を低減できるという効果がある。なお、埋込率が厳密に100%でなくても、絶縁性樹脂層2に埋め込まれた導電粒子1の頂部と絶縁性樹脂層2の表面とが面一となる程度に揃っているとこの効果を得ることができる。言い換えると、埋込率(Lb/D)が概略80~105%、特に、90~100%の場合には、絶縁性樹脂層2に埋め込まれた導電粒子1の頂部と絶縁性樹脂層2の表面とは面一であるといえ、樹脂流動による導電粒子の移動を低減させることができる。
【0057】
これらの異方性導電フィルム10B、10C、10C’10Dの中でも、10Dは導電粒子1の周りの樹脂量が不均一になりにくいので樹脂流動による導電粒子の移動を解消でき、また頂部1aの1点であっても絶縁性樹脂層2から導電粒子1が露出しているので、端子における導電粒子1の捕捉性もよく、導電粒子のわずかな移動も起こりにくいという効果が期待できる。したがって、この態様は、特にファインピッチやバンプ間スペースが狭い場合に有効である。
【0058】
なお、傾斜2b、起伏2cの形状や深さが異なる異方性導電フィルム10B(
図14)、10C(
図15A)、10C’(
図15B)、10D(
図16)は、後述するように、導電粒子1の押し込み時の絶縁性樹脂層2の粘度等を変えることで製造することができる。
【0059】
(埋込率100%超の態様)
本発明の異方性導電フィルムのうち、埋込率100%を超える場合、
図17に示す異方性導電フィルム10Eのように導電粒子1が露出し、その露出部分の周りの絶縁性樹脂層2に接平面2pに対する傾斜2bもしくは導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に接平面2pに対する起伏2c(
図18)があるものをあげることができる。
【0060】
なお、導電粒子1の露出部分の周りの絶縁性樹脂層2に傾斜2bを有する異方性導電フィルム10E(
図17)と導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2に起伏2cを有する異方性導電フィルム10F(
図18)は、それらを製造する際の導電粒子1の押し込み時の絶縁性樹脂層2の粘度等を変えることで製造することができる。
【0061】
なお、
図17に示す異方性導電フィルム10Eを異方性導電接続に使用すると、導電粒子1が端子から直接押圧されるので、端子における導電粒子の捕捉性が向上する。また、
図18に示す異方性導電フィルム10Fを異方性導電接続に使用すると、導電粒子1が端子を直接押圧せず、絶縁性樹脂層2を介して押圧することになるが、押圧方向に存在する樹脂量が
図20の状態(即ち、導電粒子1が埋込率100%を超えて埋め込まれ、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出しておらず、かつ絶縁性樹脂層2の表面が平坦である状態)に比べて少ないため、導電粒子に押圧力がかかりやすくなり、且つ異方性導電接続時に端子間の導電粒子1が樹脂流動により無用に移動することが妨げられる。
【0062】
上述した導電粒子の露出部分の周りの絶縁性樹脂層2の傾斜2b(
図13、
図14、
図15A、
図15B、
図17)や、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の起伏2c(
図16、
図18)の効果を易くする点から傾斜2bの最大深さLeと導電粒子1の平均粒子径Dとの比(Le/D)は、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、さらに好ましくは20~25%であり、傾斜2bや起伏2cの最大径Ldと導電粒子1の平均粒子径Dとの比(Ld/D)は、好ましくは100%以上、より好ましくは100~150%であり、起伏2cの最大深さLfと導電粒子1の粒子径Dとの比(Lf/D)は、0より大きく、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下である。
【0063】
なお、傾斜2bや起伏2cにおける導電粒子1の露出(直上)部分の径Lcは、導電粒子1の平均粒子径D以下とすることができ、好ましくは平均粒子径Dの10~90%である。導電粒子1の頂部の1点で露出するようにしてもよく、導電粒子1が絶縁性樹脂層2内に完全に埋まり、径Lcがゼロとなるようにしてもよい。
【0064】
なお、
図19に示すように、埋込率(Lb/D)が60%未満の異方性導電フィルム10Gでは、絶縁性樹脂層2上を導電粒子1が転がりやすくなるため、異方性導電接続時の捕捉率を向上させる点からは、埋込率(Lb/D)を60%以上とすることが好ましい。
【0065】
また、埋込率(Lb/D)が100%を超える態様において、
図20に示す比較例の異方性導電フィルム10Xのように絶縁性樹脂層2の表面が平坦な場合は導電粒子1と端子との間に介在する樹脂量が過度に多くなる。また、導電粒子1が直接端子に接触して端子を押圧することなく、絶縁性樹脂を介して端子を押圧するので、これによっても導電粒子が樹脂流動によって流され易い。
【0066】
本発明において、絶縁性樹脂層2の表面の傾斜2b、起伏2cの存在は、異方性導電フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、面視野観察においても確認できる。光学顕微鏡、金属顕微鏡でも傾斜2b、起伏2cの観察は可能である。また、傾斜2b、起伏2cの大きさは画像観察時の焦点調整などで確認することもできる。上述のようにヒートプレスにより傾斜もしくは起伏を減少させた後であっても、同様である。痕跡が残る場合があるからである。
【0067】
(絶縁性樹脂層の組成)
絶縁性樹脂層2は、硬化性樹脂組成物から形成することができ、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。
【0068】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤として熱カチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ化合物を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0069】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、異方性導電フィルムの製造時における、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の光硬化と、異方性導電接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。
【0070】
異方性導電フィルムの製造時の光硬化では、絶縁性樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、絶縁性樹脂層2における導電粒子1の配置が保持乃至固定化され、ショートの抑制と捕捉性の向上が見込まれる。また、この光硬化により、異方性導電フィルムの製造工程における絶縁性樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。特にこの光硬化は、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子1の平均粒子径Dとの比(La/D)が0.6未満である場合に行うことが好ましい。導電粒子の平均粒子径に対して絶縁性樹脂層2の層厚が薄い場合にも絶縁性樹脂層2で導電粒子の配置の保持乃至固定化をより確実に行うと共に、絶縁性樹脂層2の粘度調整を行い、異方性導電フィルムを用いた電子部品同士の接続において歩留まりの低下を抑制するためである。
【0071】
絶縁性樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満がさらに好ましい。光重合性化合物が多すぎると接続時の押し込みにかかる推力が増加するためである。
【0072】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来さなければ、複数種の重合性化合物を併用してもよい。併用例としては、カチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物の併用などが挙げられる。
【0073】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0074】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0075】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0076】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0077】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0078】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0079】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0080】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、上述の導電粒子1とは別に絶縁性導電粒子を含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性導電粒子粒径20~1000nmの微小な導電粒子が好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性化合物)100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。
【0081】
本発明の異方性導電フィルムには、上述の絶縁性導電粒子とは別に充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0082】
(絶縁性樹脂層の層厚)
第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aにおいて、絶縁性樹脂層2の層厚は導電粒子1の平均粒子径Dや第1電子部品31、第2電子部品32、及び第3電子部品33の端子高さによって変動するため特に限定されないが、一例として、平均粒子径Dが10μm未満の場合は、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子1の平均粒子径Dとの比(La/D)を0.3以上10以下とすることが好ましく、3以下とすることがより好ましく、1以下とすることがさらに好ましい。絶縁性樹脂層2における導電粒子1の配置の維持の点から、比(La/D)を0.4以上とすることがより好ましい。また、異方性導電接続時の過度な樹脂流動の抑制及び低圧実装の実現の点から1以下とすることがより好ましい。さらに、導電粒子1を絶縁性樹脂層2から露出させることを容易とし、低圧実装をより容易にする点からは、この比(La/D)を1未満とすることが好ましく、より好ましくは0.6未満、さらに好ましくは0.5以下である。尚、比(La/D)を3以下とする場合、絶縁性樹脂層2よりも最低溶融粘度の低い第2の絶縁性樹脂層4を設けることが好ましい場合がある。
【0083】
一方、平均粒子径Dが10μm以上の場合には、La/Dは、上限に関しては、3.5以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下とし、下限に関しては0.8以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.3より大きくする。
【0084】
また、平均粒子径Dの大きさに関わらず、絶縁性樹脂層2の層厚Laが大き過ぎてこの比(La/D)が過度に大きくなると、異方性導電接続時に導電粒子1が端子に押し付けられにくくなると共に、樹脂流動により導電粒子が流されやすくなる。そのため導電粒子が位置ずれしやすくなり、端子における導電粒子の捕捉性が低下する。また、導電粒子を端子に押し付けるために押圧治具に必要とされる推力も増大し、低圧実装の妨げになる。反対に絶縁性樹脂層2の層厚Laが小さすぎてこの比が過度に小さくなると、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の位置に維持することが困難となる。
【0085】
(第2の絶縁性樹脂層)
異方性導電フィルム10Aにおいては、絶縁性樹脂層2に、該絶縁性樹脂層2よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性樹脂層4が積層されていてもよい(
図10~
図12)。この第2の絶縁性樹脂層4は、異方性導電接続時に電子部品のバンプ等の端子によって形成される空間を充填し、対向する電子部品同士の接着性を向上させることができる。即ち、異方性導電フィルムを用いた電子部品の低圧実装を可能とするため、及び異方性導電接続時の絶縁性樹脂層2の樹脂流動を抑制して導電粒子1の粒子捕捉性を向上させるため、絶縁性樹脂層2の粘度を高くすると共に、導電粒子1が位置ずれを起こさない範囲で絶縁性樹脂層2の厚さは薄くすることが望ましいが、絶縁性樹脂層2の厚さを過度に薄くすると、対向する電子部品同士を接着させる樹脂量の不足を招くことから接着性の低下が懸念される。これに対し、異方性導電接続時に絶縁性樹脂層2よりも粘度が低い第2の絶縁性樹脂層4を設けることにより、電子部品同士の接着性も向上させることができ、第2の絶縁性樹脂層4の流動性が高いことから端子による導電粒子の挟持や押し込みを阻害し難くすることができる。
【0086】
導電粒子分散層3に第2の絶縁性樹脂層4を積層する場合、第2の絶縁性樹脂層4が凹み2bの形成面上にあるか否かに関わらず、ツールで加圧する電子部品に第2の絶縁性樹脂層4が貼られるようにする(絶縁性樹脂層2がステージに載置される電子部品に貼られるようにする)ことが好ましい。このようにすることで、導電粒子の無用な移動を避けることができ、捕捉性を向上させることができる。
【0087】
絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4との最低溶融粘度比は、差があるほど電子部品の電極やバンプによって形成される空間が第2の絶縁性樹脂層4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させることができる。また、この差があるほど導電粒子分散層3中に存在する絶縁性樹脂の移動量が相対的に少なくなり、端子間の導電粒子1が樹脂流動により流されにくくなることにより、端子における導電粒子の捕捉性が向上するので好ましい。実用上は、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4との最低溶融粘度比は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺の異方性導電フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングの虞があるので、実用上は15以下が好ましい。第2の絶縁性樹脂層4の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に好ましくは100~2000Pa・sである。
【0088】
なお、第2の絶縁性樹脂層4は、絶縁性樹脂層2と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0089】
また、第2の絶縁性樹脂層4の層厚は、好ましくは4~20μmである。もしくは、導電粒子径、具体的にはその平均粒子径に対して、好ましくは1~8倍である。
【0090】
また、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4を合わせた異方性導電フィルム全体の最低溶融粘度は、実用上は8000Pa・s以下、好ましくは200~7000Pa・s、特に好ましくは200~4000Pa・sである。
【0091】
第2の絶縁性樹脂層4の具体的な積層態様としては、例えば、
図10に示すように導電粒子分散層3の片面に第2の絶縁性樹脂層4を積層することができる。この場合、導電粒子1の平均粒子径Dと絶縁性樹脂層2の層厚Laとの関係は、前述のようにLa/Dを0.3以上10以下とする。
【0092】
図11に示すように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2の片面から突出している場合に、その突出している面に第2の絶縁性樹脂層4を積層し、第2の絶縁性樹脂層4に導電粒子1を食い込ませてもよい。導電粒子1の埋込率が0.95以下の場合、このように第2の絶縁性樹脂層4を積層することが好ましく、0.9以下の場合はそうすることがより好ましい。
【0093】
図12に示すように、導電粒子1が埋め込まれている絶縁性樹脂層2の面と反対側の面に第2の絶縁性樹脂層4を積層してもよい。
【0094】
(第3の絶縁性樹脂層)
第2の絶縁性樹脂層4と絶縁性樹脂層2を挟んで反対側に第3の絶縁性樹脂層が設けられていてもよい。第3の絶縁性樹脂層をタック層として機能させることができる。第2の絶縁性樹脂層4と同様に、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填させるために設けてもよい。
【0095】
第3の絶縁性樹脂層の樹脂組成、粘度及び厚みは第2の絶縁性樹脂層と同様でもよく、異なっていても良い。絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4と第3の絶縁性樹脂層を合わせた異方性導電フィルムの最低溶融粘度は特に制限はないが、200~4000Pa・sとすることができる。
【0096】
(異方性導電フィルム10Aの製造方法)
異方性導電フィルム10Aの製造方法としては、例えば、絶縁性樹脂層2の表面に導電粒子1を所定の規則的な配列で保持させ、その導電粒子1を平板又はローラで絶縁性樹脂層2に押し込む。
【0097】
ここで、絶縁性樹脂層2における導電粒子1の埋込量Lbは、導電粒子1の押し込み時の押圧力、温度等により調整することができ、また、凹み2b、2cの有無、形状及び深さは、押し込み時の絶縁性樹脂層2の粘度、押込速度、温度等により調整することができる。
【0098】
また、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させる手法としては、特に限定されるものではないが、例えば、転写型を使用して絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させる。転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料の転写型材料に対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものを使用することができる。なお、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0099】
異方性導電フィルムを用いて電子部品の接続を経済的に行うには、異方性導電フィルムはある程度の長尺であることが好ましい。そこで異方性導電フィルムは長さを、好ましくは5m以上、より好ましくは10m以上、さらに好ましくは25m以上に製造する。一方、異方性導電フィルムを過度に長くすると、異方性導電フィルムを用いて電子部品の製造を行う場合に使用する従前の接続装置を使用することができなくなり、取り扱い性も劣る。そこで、異方性導電フィルムは長さを好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、さらに好ましくは500m以下に製造する。異方性導電フィルムのこのような長尺体は、巻芯に巻かれた巻装体とすることが取り扱い性に優れる点から好ましい。
【0100】
(第1の接続構造体の製造方法)
第1の接続構造体40Aの製造方法としては、異方性導電フィルム10Aが導電粒子分散層3の単層からなる場合、各種基板などの第3電子部品33に対し、異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれている側から仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれていない側にICチップ等の第1電子部品31を合わせ、熱圧着すると共に、FPC等の第2電子部品32を合わせ、熱圧着することにより製造することができる。この場合、第1電子部品31と第2電子部品32の側から加圧ツールで第1電子部品31と第2電子部品32を同時に圧着してもよく、これらを別々に加圧ツールで圧着してもよい。
【0101】
なお、異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に熱重合開始剤と熱重合性化合物だけでなく、光重合開始剤と光重合性化合物(熱重合性化合物と同一でもよい)が含まれている場合、熱圧着に代えて光と熱を併用した圧着方法でもよい。このようにすれば、導電粒子の無用な移動は最小限に抑えることができる。また、導電粒子が埋め込まれていない側を第3電子部品33に仮貼りして使用してもよい。第3電子部品ではなく、第1電子部品及び第2電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りすることもできる。
【0102】
また、異方性導電フィルム10Aが、導電粒子分散層3と第2の絶縁性樹脂層4の積層体から形成されている場合、導電粒子分散層3を各種基板などの第3電子部品33に仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側にICチップ等の第1電子部品31やFPC等の第2電子部品32をアライメントして載置し、熱圧着する。異方性導電フィルム10Aの第2の絶縁性樹脂層4側を第1電子部品31や第2電子部品32に仮貼りしてもよい。また、導電粒子分散層3側を第1電子部品31や第2電子部品32に仮貼りして使用することもできる。
【0103】
[第2の接続構造体]
(全体構成)
図4Aは、本発明の接続構造体の態様のうち第2の接続構造体40Bの模式的平面図であり、
図4B、
図4C、
図4D、
図4Eは、第2の接続構造体40Bの異方性導電フィルム部分の模式的断面図の例である。この第2の接続構造体40Bでも、第1の端子パターンを有する第1電子部品31と、第1の端子パターンと端子の大きさ及びピッチが異なる第2の端子パターンを有する第2電子部品32とが、第1の端子パターンと第2の端子パターンのそれぞれに対応する端子パターンを有する第3電子部品33と異方性導電フィルム10Bにより異方性導電接続されているが、この第2の接続構造体40Bでは、第2の接続構造体40Bの製造に使用する異方性導電フィルム10Bとして、導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域10p、10qを有するものが使用されている点が第1の接続構造体40Aと異なっている。これにより、第1電子部品31及び第2電子部品32のそれぞれに、第1の接続構造体40Aよりもさらに適合した接続を行うことが可能となり、無用な導電粒子をさらに低減することができる。
【0104】
第2の接続構造体40Bにおいても、第1の接続構造体40Aについて示した
図2、
図3と同様に、第3電子部品33に接続する第1電子部品31や第2電子部品32の個数や配置について、特に限定はない。
【0105】
第2の接続構造体40Bにおいて、異方性導電フィルム10Bが有する、導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる領域10p、10qは、
図4Aに示したように互いに隣接していてもよく、
図5Aに示したように領域10pと領域10qが、導電粒子が存在しない領域10rを介して配置されていてもよい。
図5B、
図5Cは、
図5Aに示した第2の接続構造体40Bの異方性導電フィルム部分の模式的断面図の例である。
図6Aに示したように、領域10pと領域10qが、これらよりも導電粒子の個数密度が高い領域10sを介して配置されていてもよい。
図6Bは、
図6Aに示した第2の接続構造体40Bの異方性導電フィルム部分の模式的断面図の例である。また、導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度の少なくとも一つが異なる複数の領域は、上述の
図4A等に示したようにフィルムの短手方向に並んでいても良く、長手方向に並んでいても良い。この場合、異方性導電フィルムは、絶縁性樹脂層の厚さ方向における導電粒子の位置が、絶縁性樹脂層の一方の表面又はその近傍で揃っている領域と、一方の表面又はその近傍と、他方の表面又はその近傍の双方で揃っている領域とを有することが好ましい。
【0106】
(第2の接続構造体における異方性導電フィルム)
第2の接続構造体の製造に使用する異方性導電フィルム10Bのより具体的な構成としては、例えば、第1電子部品31と第3電子部品33とをCOG接続する場合、異方性導電フィルム10Bの領域10pでは導電粒子の個数密度を7000個/mm2以上35000個/mm2以下とし、又は導電粒子の粒子径を2μm以上9μm以下とし、又は、導電粒子の硬度として、20%圧縮弾性率(20%K値)を4000N/mm2以上28000N/mm2以下、好ましくは4000N/mm2以上20000N/mm2以下とする。一方、第2電子部品32と第3電子部品33とをFOG接続する場合、異方性導電フィルム10Bの領域10qでは導電粒子の個数密度を50個/mm2以上10000個/mm2以下とし、又は導電粒子の粒子径を2μm以上30μm以下とし、又は、導電粒子の硬度として、20%圧縮弾性率(20%K値)を2000N/mm2以上18000N/mm2以下とする。
【0107】
なお、上記では第1電子部品31と第3電子部品33の接続領域と第2電子部品32と第3電子部品33の接続領域における種々の数値が重複しているが、各々では上述する範囲で数値が重複しないように設計して用いる。例えば、第1電子部品31と第3電子部品33とをCOG接続する領域の導電粒子の個数密度が8000個/mm2であるなら、第2電子部品32と第3電子部品33とをFOG接続する領域の導電粒子の個数密度は8000個/mm2未満、好ましくは識別し易くするために20%以上差を設けて6000個/mm2以下とすればよい。他のパラメーターについても同様である。
【0108】
ここで、20%圧縮弾性率としては、微小圧縮試験機(例えば、フィッシャー社製、フィッシャースコープH-100)を用いて導電粒子に圧縮荷重を加えたときの導電粒子の圧縮変量を測定し、
20%圧縮弾性率(K)(N/mm2 )=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
により算出されるK値を使用することができる。
式中、
F:導電粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電粒子の半径(mm)
である。
【0109】
領域10pと領域10qにおいて、導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度のいずれを異ならせるかは接続する第1電子部品31と第2電子部品32に応じて適宜定めるが、個数密度により定めることが好ましい。同じ導電粒子を用いれば、設計上のコンタミ(別種の導電粒子が意図せずに混入すること)を回避できるため、品質管理上好ましいからである。従って、少なくとも一方の面側に存在する導電粒子は、粒子径が同じであることが好ましく、粒子径と硬度が同じであることがより好ましい。
【0110】
また、例えば領域10pと領域10qにおいて導電粒子の個数密度を異ならせる場合に、
図4Bに示したように、絶縁性樹脂層2の片面近傍の導電粒子1の個数密度を異ならせることにより領域10pと領域10qを形成してもよく、
図4C、
図4D、
図4Eに示したように、絶縁性樹脂層2の表裏両面の導電粒子1を合わせて導電粒子の個数密度が異なる領域10pと領域10qを形成してもよい。この場合に、
図4Dに示したように、絶縁性樹脂層2の表裏の導電粒子1が平面視で重なり合って導電粒子ユニット1uを形成し、該導電粒子ユニットが規則的に配列するようにしてもよい。
【0111】
第2の接続構造体40Bの製造に使用する異方性導電フィルム10Bにおいて、導電粒子自体の構成、絶縁性樹脂層2の構成、第2の絶縁性樹脂層4の構成等は第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aと同様にすることができる。
【0112】
第2の接続構造体40Bの製造に使用する異方性導電フィルム10Bの製造方法についても、第1の接続構造体40Aの製造に使用する異方性導電フィルム10Aに準じて製造することができる。例えば、絶縁性樹脂層2の片面に領域10pを形成する導電粒子1を保持させ、その導電粒子1を平板又はローラで絶縁性樹脂層2に押し込み(第1の押し込み工程)、次に、先に導電粒子を押し込んだ絶縁性樹脂層2の片面又はその反対面に、領域10p、又は領域10p及び領域10qを形成する導電粒子1を保持させ、その導電粒子を平板又はローラで絶縁性樹脂層に押し込む(第2の押し込み工程)。この場合、第2の押し込み工程で押し込む導電粒子1が、平面視で、第1の押し込み工程で導電粒子1を押し込んだ領域の一部となるようにしてもよく(
図4C、
図4D)、第1の押し込み工程で導電粒子1を押し込んだ領域全体を含むようにしてもよく(
図4E)、第1の押し込み工程で導電粒子1を押し込んだ領域と部分的に重複するようにしてもよい(
図6B)。導電粒子1の粒子配置によっては、第1の押し込み工程において導電粒子1を絶縁性樹脂層2に付着させるために用いた転写型を、第2の押し込み工程においても導電粒子1を絶縁性樹脂層2に付着させるために用いてもよい(
図5C)。これにより、異方性導電フィルムの製造コストを低減させられるので好ましい。この場合、導電粒子1を絶縁性樹脂層2の一方の表面又は他方の表面に付着させることができる。
【0113】
第1の押し込み工程で押し込む導電粒子と、第2の押し込み工程で押し込む導電粒子の粒子径や硬度は、必要により同一としてもよく、異ならせてもよい。また、第1の押し込み工程で押し込む導電粒子の配列と第2の押し込み工程で押し込む導電粒子の配列を異ならせてもよく、第1の押し込み工程で押し込む導電粒子の個数密度と第2の押し込み工程で押し込む導電粒子の個数密度を異ならせてもよい。
【0114】
なお、一般に、異方性導電フィルムを巻装体に製造する場合、広幅の異方性導電フィルムを所定幅にスリットして帯状とし、それを巻き芯に巻くことがなされるが、例えば、
図4Eに示した異方性導電フィルム10Bでは、絶縁性樹脂層2の表裏両面近傍の導電粒子の個数密度を、それぞれ異なる個数密度で均一に形成しておき、それを破線の位置でスリットして帯状の異方性導電フィルムとし、そこに領域10pと領域10qを形成することができる。これにより、個数密度の異なる領域10pと領域10qを簡便に形成することができる。
【0115】
上記同様の理由から、フィルムの長手方向と直行する方向において、一方の側と反対の側で導電粒子の個数密度が異なることが好ましい。また製造上の理由から、フィルムの一方の面と反対の面で導電粒子の個数密度、粒子径及び硬度が異なることが好ましい。このとき、フィルムの一方の面と反対の面の何れか一方で、導電粒子の粒子間距離が異なることがより好ましい。
【実施例0116】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0117】
実施例1~7、比較例1、2
(1)異方性導電フィルムの製造
表1に示した配合で、導電粒子分散層を形成する絶縁性樹脂層形成用樹脂組成物、及び第2の絶縁性樹脂層形成用樹脂組成物をそれぞれ調製した。絶縁性樹脂層の最低溶融粘度は3000Pa・s以上であり、この絶縁性樹脂層の最低溶融粘度と第2の絶縁性樹脂層の最低溶融粘度の比は2以上であった。
【0118】
絶縁性樹脂層(高粘度樹脂層)を形成する樹脂組成物をバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚さの絶縁性樹脂層を形成した。同様にして、第2の絶縁性樹脂層を表2に示す厚さでPETフィルム上に形成した。
【0119】
【0120】
一方、導電粒子(平均粒子径3μm又は4μm)が平面視で六方格子配列となり、導電粒子の平面視における個数密度(面密度)が表2に示す数値となるように金型を作製した。なお、表2においてFOG側とCOG側で導電粒子の面密度が異なるものは、一つの金型に面密度が異なる2つの領域を形成した。この金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で流し込み、冷やして固めることで、凹部が六方格子配列パターンの樹脂型を形成した。
【0121】
この樹脂型の凹部に、表2に示す平均粒子径の導電粒子(平均粒子径3μm:積水化学工業(株)製、AUL703、及び平均粒子径4μm:積水化学工業(株)製、AUL704)を充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から絶縁性樹脂層を剥離し、絶縁性樹脂層上の導電粒子を(押圧条件:60~70℃、0.5MPa)で該絶縁性樹脂層内に押し込み、導電粒子分散層を形成した(実施例1~7)。
【0122】
比較例1、2では表1に示した絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物に導電粒子を混合し、導電粒子が単層でランダムに分散した導電粒子分散層を形成した。
【0123】
さらに、導電粒子分散層の表面に第2の絶縁性樹脂層を積層することにより2層タイプの異方性導電フィルムを作製した(実施例1~7、比較例1、2)
【0124】
なお、使用した導電粒子の20%圧縮弾性率(20%K値)を、微小圧縮試験機(例えば、フィッシャー社製、フィッシャースコープH-100)を用いて測定した。この結果を表2に示す。
【0125】
(2)評価
(1)で作製した実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、以下の評価用接続物の作製に適用できるように十分な面積で裁断し、裁断した異方性導電フィルムの一部を以下に示す評価用ICとガラス基板との間に配置し、180℃、60MPa、5秒で加熱加圧して異方性導電接続し、次に、そのガラス基板に、同じ異方性導電フィルムの別の領域を使用して評価用FPCをツール幅1.5mm、200℃、5MPa、5秒で加熱加圧して接続することにより、1枚の異方性導電フィルムによって評価用ICと評価用FPCがガラス基板に異方性導電接続された評価用接続物を得た。
【0126】
評価用IC:
外形 1.8×30mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離10μm、バンプ高さ15μm、端子個数820個
【0127】
評価用FPC:
端子ピッチ 20μm
端子幅:端子間スペース=1:1
ポリイミドフィルム厚/銅箔厚(PI/Cu)=38/8、Sn plating
【0128】
ガラス基板:
(COG側)
ガラス材質 コーニング社製1737F
電極 ITO配線
配線厚み 0.5mm
(FOG側)
電極 ITO配線
配線厚み 0.7mm
【0129】
こうして得た評価用接続物に対し、以下のようにして(a)導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)最低捕捉数、(d)ショート率を測定し、評価した。結果を表2に示す。
【0130】
(a)導通抵抗
評価用接続物のCOG側接続部とFOG側接続部における導通抵抗を4端子法で測定した。実使用上2Ω以下が好ましい。
【0131】
(b)導通信頼性
評価用接続物を温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間置き、その後のCOG側接続部とFOG側接続部の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定した。実使用上5Ω以下が好ましい。
【0132】
(c)最低捕捉数
評価用接続物のCOG側接続部とFOG側接続部のそれぞれの端子100個について導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、次の基準で評価した。実使用上、B評価以上が好ましい。
【0133】
最低捕捉数評価基準
A:10個以上
B:5個以上10個未満
C:3個以上5個未満
D:3個未満
【0134】
(d)ショート率
評価用接続物のCOG側接続部とFOG側接続部のそれぞれについて以下の手法でそれぞれのショート数を計測し、端子数に対する計測したショート数の割合としてショート率を求め、次の基準で評価した。実使用上B評価以上が好ましい。
【0135】
COG側接続部におけるショート率
次のショート率の評価用ICを使用して上述と同様の接続条件でCOG側の評価用接続物を得、得られた評価用接続物のショート数を計測し、評価用ICの端子数に対する計測したショート数の割合としてショート率を求めた。
【0136】
ショート率の評価用IC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group)):
外形 15×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ25×140μm、バンプ間距離7.5μm、バンプ高さ15μm
【0137】
FOG側接続部におけるショート率
(a)導通抵抗の試験の評価用接続物の作製に用いた評価用FPCと同じFPCをノンアルカリガラス基板(厚み0.7mm)に同様の接続条件で接続することによりFOG側の評価用接続物を得、得られた評価用接続物のショート数を計測し、計測されたショート数と評価用接続物のギャップ数からショート率を求めた。
【0138】
ショート率評価基準
A:50ppm未満
B:50ppm以上100ppm未満
C:100ppm以上200ppm未満
D:200ppm以上
【0139】
【0140】
表2から、実施例4、5、6、7ではFOG側接続部とCOG側接続部で導電粒子の面密度、粒子径、硬さのいずれも変わらないが、導電粒子が規則的に配列しているため、導通抵抗、導通信頼性、捕捉数、ショート率のいずれも実使用できる結果となった。また、実施例1、2、3では、FOG側接続部とCOG側接続部とで導電粒子の面密度、粒子径、硬さが異なり、実施例4、5、6、7よりもFOG側又はCOG側接続部の導通信頼性が向上していることがわかる。これに対し、比較例1、2はFOG側接続部とCOG側接続部とで導電粒子の面密度、粒子径、硬さが変わらず、かつ導電粒子がランダムに分散しているため、導電粒子の個数密度が高い比較例1ではFOG側接続部の導通抵抗と導通信頼性が劣り、導電粒子の個数密度が低い比較例2ではCOG側接続部の導通抵抗と導通信頼性が劣っていた。