(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022176975
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】自動車用触媒後処理システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20221122BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221122BHJP
F01N 3/021 20060101ALI20221122BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
F01N3/28 301P
F01N3/08 B
F01N3/28 301Q
F01N3/28 301G
F01N3/28 301E
F01N3/021
B01J23/44 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130838
(22)【出願日】2022-08-19
(62)【分割の表示】P 2020009732の分割
【原出願日】2012-12-13
(31)【優先権主張番号】1121468.1
(32)【優先日】2011-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コール, キーラン
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, コリン
(72)【発明者】
【氏名】サヴェージ, ルース
(72)【発明者】
【氏名】スメドラー, グドムント
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ティンゲイ, イザベル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】後処理装置の能動的な熱処理中に、ディーゼル酸化触媒(DOC)の活性を維持する方法、および能動的な熱処理事象中に、ディーゼル酸化触媒(DOC)の消失を回避する方法を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジン排気ガス用の触媒後処理システムが記載される。システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置とを備え、後処理装置は、周期的な熱処理と、後処理装置内に温度上昇を生じさせる手段とを必要とし、前記ディーゼル酸化触媒(DOC)は、炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン排気ガス用の触媒後処理システムであって、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、前記ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置させられた後処理装置とを備え、前記後処理装置は、周期的な熱処理と、前記後処理装置内に温度上昇を生じさせる手段とを必要とし、前記ディーゼル酸化触媒(DOC)は、炭化水素(HC)に対する酸化活性が該ディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを含む、触媒後処理システム。
【請求項2】
前記上流ゾーンは、長さが0.5~1.5インチである、請求項1に記載の触媒後処理システム。
【請求項3】
前記上流ゾーンは、長さが約1インチである、請求項2に記載の触媒後処理システム。
【請求項4】
前記ディーゼル酸化触媒(DOC)は、直径が4~15インチであり、長さが2.5~10インチである、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒後処理システム。
【請求項5】
前記ディーゼル酸化触媒は、PtとPdとの混合物、またはPtとPdとの合金を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒後処理システム。
【請求項6】
前記ディーゼル酸化触媒(DOC)の前記上流ゾーンと前記残部との双方において、Pd対Ptの重量比は1:3~5:1である、請求項5に記載の触媒後処理システム。
【請求項7】
前記上流ゾーンのPGM濃度は10~150gft-3である、請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒後処理システム。
【請求項8】
前記後処理装置はすすフィルターである、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒後処理システム。
【請求項9】
前記後処理装置は選択的接触還元(SCR)用の触媒ユニットである、請求項1~8のいずれか1項に記載の触媒後処理システム。
【請求項10】
大型車両用ディーゼルエンジンをさらに構成する、請求項1~9のいずれか1項に記載の触媒後処理システム。
【請求項11】
ディーゼルエンジンと、請求項1~10のいずれか1項に記載の触媒後処理システムとを備える乗り物。
【請求項12】
炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを含む前記ディーゼル酸化触媒(DOC)上に排気ガスを通すことによって、200~375℃の排気ガス温度での、ディーゼルエンジン排気ガス触媒後処理システムにおけるディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置の能動的熱処理中に、ディーゼル酸化触媒(DOC)の活性を維持する方法。
【請求項13】
炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを含む前記DOC上に、炭化水素(HC)エンリッチ排気ガスを通すことによって、200~375℃の排気ガス温度での、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置の能動的熱処理事象中に、前記ディーゼル酸化触媒(DOC)の消失を回避する方法。
【請求項14】
前記上流ゾーンは、予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部に第2の触媒コーティングを適用する追加の精密コーティング工程を行うことにより調製される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記上流ゾーンは、予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部を含浸させることにより調製される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記上流ゾーンは、予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部の触媒ウォッシュコートにより調製される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項17】
前記上流ゾーンは、予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部への1種以上の触媒金属を化学付着により調製される、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、触媒後処理システム、詳細にはディーゼルエンジンなどの自動車用の触媒後処理システムに関する。より詳細には、本発明は、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する再生可能な後処理装置とを組み込んだ触媒後処理システムに関する。本発明はさらに、後処理装置の能動的な熱処理中に、ディーゼル酸化触媒(DOC)の活性を維持する方法、および能動的な熱処理事象中に、ディーゼル酸化触媒(DOC)の消失を回避する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
精巧なエンジン管理などの工学的設計と種々の触媒後処理装置とを組み合わせることにより、乗り物からの排気物の高まる規制は満たされてきた。
【0003】
圧縮点火(以下、「ディーゼル」と呼ぶ)エンジンからの排気ガスの場合には、規制排気物は、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)および粒子状物質である。粒子状物質は、単に「すす(スート)」と呼ばれることが多く、そのカーボン粒子が大部分を成す複合固体である。かつては、粒子状物質の排出は、特に登坂中などの重荷重下での運転の際に、ディーゼルエンジンによって出される特徴的な「煙」であった。また、カーボン粒子には、様々な量の炭化水素および酸化副産物が吸収または吸着している。
【0004】
ディーゼル酸化触媒(DOC)は、小型ディーゼル車用に導入された最初の触媒後処理装置であった。DOCは、高表面積フロースルー触媒基材に付着された、場合によって別のPGMおよび/または触媒卑金属との組合せでのほぼ白金族金属(PGM)のみ、特に白金をベースにした触媒を含む。基材ユニットは、口語的に「ブリック」と呼ばれる。DOCは、COおよびHCを酸化させ、粒子状物質の重量を減少させるのに有効であり、DOCは小型ディーゼル排気物の規制を満たすのに適していた時期もあった。
【0005】
ディーゼル車からの排ガス規制により高い基準が導入される程、粒子状物質に取り組むことが必要になった。ディーゼルエンジンは、通常、火花点火エンジンまたはガソリンエンジンより低いNOxのレベルをもたらし、ディーゼルエンジンはNOxの増加を代償にして粒子状物質を減少させるように設計可能であり、またはその逆も同様である。ヨーロッパにおける現在の規制、およびUSAにおいて導入中の規制下で、最先端技術のディーゼル車には今や、DOCとすすフィルターとが組み合わされており、NOx還元システムも備えられていることがある。すすフィルターは、それに限られないが、触媒化すすフィルター(CSF)である場合が多く、これらのフィルターは詳細には異なることもあるが、通常、セラミックウォールフローフィルターまたはまれに焼結金属フィルターを組み込んでいる。触媒化フィルターには、PGMおよびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の組合せなどのすす酸化触媒が付着されている。
【0006】
このようなフィルターは、粒子状物質の排出の規制を満たすことができる。高速区間を含む通常の運転サイクルでは、このようなフィルターがすすの蓄積により詰まることはないが、例えば都市部における現実のシナリオは、長時間の低速運転および/または長期間のアイドリングを含むことがあり、その間にすすがフィルターに蓄積し得るが、排気ガスの温度はすすの触媒酸化には不十分である。フィルターの面の閉塞またはフィルターの導管内でのすすの蓄積のいずれかにより、エンジン効率に悪影響を及ぼす程度、または極端な場合、エンジン自体が破損する程度まで背圧が増加することがある。したがって、フィルターをきれいにするために、何らかの形態のフィルター再生を提供することが必要である。
【0007】
受動的再生は、蓄積したすすが酸化し始める温度に排気ガスが到達する十分速い速度で乗り物を走行させることを含む。
【0008】
別法の能動的再生が例えばGB2406803Aに記載されている。排気ガスにHCが補充された形態の燃料がDOCに供給され、ここで燃料は燃焼し、蓄積したすすの触媒燃焼が触媒すすフィルターで開始する点まで排気ガスの温度を上昇させる。能動的再生に関するGB2406803A(Johnson Matthey)は、ブリックの上流端にPt成分を備え、ブリックの下流端にPd成分を備えるDOCを開示している。寸法に関する唯一の他の開示には、「実質的にPdフリーのPt含有ゾーンは、基材モノリスまたは「ストライプ」型寸法の長さの半分までであり得る。」と述べられている。また、異なる組成の目的は、硫黄含有ディーゼル燃料から生じる硫酸化から生じることに留意されたい。ヨーロッパ諸国では、現在のディーゼル燃料は、硫黄含有量が低いまたは極めて低いが、多く他の国では高い硫黄レベルが見出されるという問題が残っている。
【0009】
WO00/29726(Engelhard)には、一実施形態で、触媒化すすフィルターの上流のフロースルー触媒またはDOC(二次触媒として混同して記載されている箇所もある)が記載されている。DOCは均一な組成であるが、CSFは4インチのPtエンリッチ端を有することがある。いくつかの試験においては、DOCはCSFと共に試験され、いくつかの実験においては、CSFは単独で使用される。いくつかのCSF実験においては、Ptエンリッチ端は上流にあり、いくつかの実験においては、Ptエンリッチ端は下流にある。この初期のCSFの開示では、CSFの能動的再生が検討されていない。
【0010】
WO2009/005910(Cummins)には、ブリックの前面が、ディーゼル粒子状物質含有排気ガス流に曝されたブリックの「目詰まり」または閉塞または面詰まり(face-plugging)を防ぐのに有効な物理的形態または化学コーティングを有する排気後処理装置が記載されている。化学コーティングが使用される場合、化学コーティングはブリックの前面上にあることを意図し、ブリックの流路には及ばないことが明示されている。
【0011】
WO2007/077462(Johnson Matthey)には、均一な組成を有するDOCまたはブリックの上流端のPt充填量がより高い単一ゾーンを有するDOCの性能を改良することを意図した、トリプルゾーン化DOCが開示されている。能動的再生システムについては開示されていないため、排気ガスの周期的なエンリッチメントはない。発明は「ライトアウト(light-out)」の問題に取り組むことを意図しているが、その問題は新欧州ドライビングサイクル(New European Drive Cycle)の低温部分で生じる。WO2007/077462の発明者らは、DOCにPGMを均一に充填すること、またはDOCの前部に比較的高量のPGMを充填することにより、ライトアウトまたは消失の傾向を示すことを発見した。WO2007/077462で提唱された解決策は、DOCの下流端に第3の高充填ゾーンを組み込むことである。取り組まれた問題は本発明のものとは異なる。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、排気ガスがDOCに入ると、DOC/フィルター併用システムにおけるフィルターの能動的再生がなおも著しく排気ガス温度に依存することを発見した。この観察は、DOCが既に老化している場合に特に当てはまる。すなわち、DOCが「ライトオフ(light off)」した場合でさえ、排気ガス温度が約250℃であると、DOCのライトオフはなお能動的再生事象中に消失し得る。排気ガス温度を上げてすすフィルター触媒をライトオフさせる目的で過多HC燃料がDOCに供給されており、DOC自体はライトオフという点で依然として動作可能であるはずであると予想されることを考えれば、この結果は驚くべきことである。これがディーゼルエンジン排気において珍しいことではない250℃の排気ガス温度で起こると観察されるのであれば、規制排気物の管理に問題が生じ得る。
【0013】
乗り物触媒後処理における用語「ライトオフ」の意味は、当該技術分野において周知である。別段の記載がない限り、成分の50%(例えば50重量%)が触媒作用で変換される温度で、触媒はライトオフすると考えられる。
【0014】
排気システム内に配置された他の装置が周期的な再生または他の熱処理を必要とすることもある。例えば、選択的接触還元(SCR)触媒、例えば銅成分をベースにするものが脱硫酸化を必要とすることがあり、これは熱処理によって都合よく行うことができる。したがって、排気システムまたは排気ガスに追加の燃料を供給することにより発熱を生じさせることで、多くの様々な排気ガス後処理装置を再生することができる。
【0015】
したがって、本発明の目的は、能動的再生システムにおけるDOCの有効性を向上させるシステムおよび方法を提供することである。本発明の重要な部分は、例えばDOCの残部よりも能動的である第1のゾーンを有するDOCの提供である。
【0016】
したがって、本発明はディーゼルエンジン排気ガス用の触媒後処理システムを提供し、前記システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置とを備え、後処理装置は、周期的な熱処理と、後処理装置内に温度上昇を生じさせる手段とを必要とし、前記ディーゼル酸化触媒(DOC)は、炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを含む。
【0017】
驚くべきことに、WO2007/077462を鑑みれば、このような特定の上流ゾーン寸法を備えるディーゼル酸化触媒は、目的の領域で「ライトアウト」性能を示さないが、同じPGM総充填量を維持していても、均一な組成またはより小さな高活性「ストライプ」を有するゾーン化DOCとは対照的にライトオフをむしろ維持する。以下、本発明の驚くべき効果を例示する実験結果をより詳細に説明する。
【0018】
排気ガス触媒用および排ガスフィルター用のフロースルー金属基材またはセラミック基材をベースにした従来の後処理装置、例えば再生可能な装置が当該技術分野において公知であり、そのような装置を参照して本発明を説明する。しかしながら、本発明はそのような装置に限定されるものと考えるべきではなく、より特有のフロースルー触媒基材またはフィルター構築物の使用が本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
本発明はまた、炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを有するまたは含むディーゼル酸化触媒(DOC)上に、排気ガスを通すことによって、200~375℃の排気ガス温度での、ディーゼルエンジン排気ガス後処理システムにおけるディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置の能動的熱処理中に、ディーゼル酸化触媒(DOC)の活性を維持する方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを有するまたは含むDOC上に、炭化水素(HC)エンリッチ排気ガスを通すことによって、200~375℃の排気ガス温度での、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置の能動的熱処理事象中に、ディーゼル酸化触媒(DOC)の消失を回避する方法を提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様は、ディーゼルエンジンおよび本発明の触媒後処理システムを備える乗り物に関する。
【0022】
本発明はさらに、ディーゼル酸化触媒(DOC)上に炭化水素(HC)エンリッチ排気ガスを通すことによって、典型的には200~375℃の排気ガス温度での、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置の能動的熱処理中に、(a)ディーゼル酸化触媒(DOC)の活性を維持するための、かつ/または(b)ディーゼル酸化触媒(DOC)の消失を回避するための、ディーゼル酸化触媒(DOC)におけるゾーンの使用に関し、ここで、ゾーンは、長さが0.5~2インチ(12.7~50.81mm)であり、炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い。通常、ゾーンはディーゼル酸化触媒の上流(すなわち上流端)にある。
【0023】
本発明のさらなる態様は、典型的にはディーゼルエンジンの排気ガス用の触媒後処理システムにおいて、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置を再生するための、ディーゼル酸化触媒(DOC)の使用に関し、ここで、ディーゼル酸化触媒(DOC)は、炭化水素(HC)に対する酸化活性がディーゼル酸化触媒(DOC)の残部よりも高い長さ0.5~2インチ(12.7~50.81mm)の上流ゾーンを含む。通常、後処理装置は周期的な熱処理を必要とする。典型的には、本発明はさらに、後処理装置で温度上昇を生じさせる手段と組み合わせた、ディーゼル酸化触媒(DOC)の下流に位置する後処理装置を再生するためのディーゼル酸化触媒(DOC)の使用に関する。
【0024】
本発明をより深く理解するために、添付の図面を参照しながら、例示目的のみで以下の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来のディーゼル酸化触媒(DOC1)上に排気ガスを通した場合の、DOC1内の3つの領域での温度を示すグラフである。DOC1は、PGM充填量が均一である。
【
図2】PGM濃度が高い10mmの「ストライプ」を有するディーゼル酸化触媒(DOC2)上に排気ガスを通した場合の、DOC2内の3つの領域での温度を示すグラフである。
【
図3】本発明によるディーゼル酸化触媒(DOC3)上に排気ガスを通した場合の、DOC3内の3つの領域での温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
通常、本明細書に使用される排気ガスとは、典型的には、ディーゼルエンジンからの排気ガスを指す。
【0027】
典型的には、ディーゼル酸化触媒(DOC)上に通される排気ガスの温度は200~375℃である。したがって、使用または方法に関する本発明の態様は、200~375℃の温度での排気ガスをディーゼル酸化触媒(DOC)と接触させるか、あるいはディーゼル酸化触媒(DOC)上にまたはその内部に200~375℃の温度での排気ガスを通す工程を含んでもよい。
【0028】
本発明は、炭化水素(HC)に対する酸化活性がDOCの残部(例えば下流ゾーン(複数の場合あり))より高い上流ゾーンを有するディーゼル酸化触媒(DOC)に関する。炭化水素に対する反応性がより高いゾーンは、排気ガスの温度がDOCの残部の「ライトオフ」温度未満である場合、発熱(すなわち熱)を生じさせることができる。生じた熱は、例えば、排気ガスを介して、基材ユニットまたはブリック全体に伝導されて、DOCの残部をその「ライトオフ」温度までにさせる。また、熱は、排気ガスの温度が低下すると(例えば、エンジンがアイドリング状態であると)、DOCの残部をそのライトオフ温度に維持することもできる。DOCの上流ゾーンおよび残部の炭化水素(HC)に対する酸化活性は、当該技術分野において公知である任意の従来技術を使用して測定可能である。
【0029】
DOCの上流ゾーンおよび残部または下流ゾーン(複数の場合あり)の炭化水素(HC)に対する酸化活性は、好ましくは、炭化水素に関するT50として測定される。したがって、上流ゾーンの炭化水素に関するT50は、DOCの残部または下流ゾーン(複数の場合あり)の炭化水素に関するT50より低い。T50は当該技術分野において周知であり、特定の反応物、この場合は炭化水素の転換率が50%である最低温度を表す。T50は、典型的には、EN590:1993規格に準拠するディーゼル燃料(例えばB7)、好ましくはEN590:1999に準拠するディーゼル燃料、より好ましくはEN590:2004またはEN590:2009に準拠するディーゼル燃料で稼働するディーゼルエンジンなどのディーゼルエンジンからの排気ガスにおける炭化水素の転換率50%に関係する。
【0030】
上流ゾーンは、長さが0.5~2インチ(12.7~50.81mm)である。上流ゾーンは、長さが0.5~1.75インチ、例えば0.5~1.5インチまたは0.6~1.75インチ、より好ましくは0.75~1.25インチであることが好ましい。典型的には、上流ゾーンは、長さが約またはおおよそ1インチ(2.54cm)である。本明細書に使用される上流ゾーンの文脈における長さとは、その平均長を指す。当該技術分野において周知のように、その製造に使用される方法によっては、ゾーンの正確な長さにばらつきが生じることがある。通常は、長さは平均から10%以下、好ましくは長さの平均値から5%以下、より好ましくは1%以下しかずれない。疑義を避けるために、上流ゾーンの長さは、通常、その入口端からDOCの縦軸と平行に測定される。
【0031】
典型的には、DOCは、直径が2.5~15インチ、例えば4~15インチ、好ましくは5~12.5インチ、例えば6~10インチであってもよい。
【0032】
DOCの長さ(すなわち全長)は、典型的には、2.5~15インチ、例えば3~12.5インチ、好ましくは4~11インチ(例えば5~10インチ)である。
【0033】
通常、DOCの寸法は従来通りである。例えば、DOCは、直径が4~15インチであってもよく、長さが2.5~10インチであってもよい。本明細書に使用されるDOCの文脈における長さまたは直径とは、平均長または平均径を指す。通常は、長さまたは直径は、平均から10%以下、好ましくは長さまたは直径の平均値からそれぞれ5%以下、より好ましくは1%以下しかずれない。
【0034】
上流ゾーンの性質(すなわち長さおよび/または酸化活性)が重要であるが、その一方で、DOCの残部または下流ゾーン(複数の場合あり)は様々な組成を有することができる。したがって、例えば、DOCの残部は不均一な組成を有することができる(例えば、DOCの残部は、複数のゾーンおよび/または層、例えば2つまたは3つのゾーンまたは層を含んでもよい)。しかしながら、PGMは希少であり、それに伴い高額であるため、DOC中のPGMの合計量を最小限にすることが優先される。本発明は、PGM全充填量を増やすことなくDOC性能を向上することができ、ある状況下では、DOCへのPGM総充填量を低くすることが可能であってもよい。
【0035】
DOCは、通常、基材ユニット(例えば、「ブリック)に担持された触媒組成物を含む。触媒組成物は典型的には少なくとも1種のPGM、好ましくは少なくとも2種のPGMを含む。
【0036】
触媒組成物は、白金、パラジウム、ロジウム、およびこれらの2種以上の混合物または合金からなる群から選択される少なくとも1種、より好ましくは少なくとも2種の異なるPGMを含むことが好ましい。より好ましくは、触媒組成物は白金およびパラジウムを含む。
【0037】
典型的には、DOCは、PGMの総量(例えば、白金(Pt)とパラジウム(Pd)の総量)が15~400gft-3である。好ましくは、PGMの総量は、20~300gft-3、より好ましくは25~250gft-3、さらにより好ましくは35~200gft-3、より一層好ましくは50~175gft-3である。
【0038】
DOCが白金およびパラジウムを含む場合、(ディーゼル酸化触媒(DOC)の上流ゾーンと残部との双方における)Pt対Pdの重量比は、典型的には1:3~5:1、好ましくは1:2~3:1、より好ましくは1:1.5~2:1(例えば、1:1.5~1.5:1)である。
【0039】
典型的には、上流ゾーンのPGM濃度は10~150gft-3である。好ましくは、上流ゾーンのPGM濃度は、15~135gft-3、より好ましくは20~125gft-3、例えば25~100gft-3である。
【0040】
本発明の一般的な実施形態では、上流ゾーンは白金(Pt)およびパラジウム(Pd)を含む。したがって、上流ゾーンは上流触媒組成物を含んでもよく、上流触媒組成物は白金(Pt)および(Pd)からなるPGMを含む。この実施形態では、白金およびパラジウムが、DOCの上流ゾーンにおける唯一のPGMであってもよい。
【0041】
典型的には、上流ゾーンにおける白金(Pt)の濃度は、DOCの残部または下流ゾーン(複数の場合あり)における白金(Pt)の濃度より高い。より好ましくは、上流ゾーンにおけるパラジウム(Pd)の濃度は、DOCの残部または下流ゾーン(複数の場合あり)におけるパラジウム(Pd)の濃度より低い。
【0042】
上流ゾーンが白金(Pt)およびパラジウム(Pd)を含む場合、典型的には、白金(Pt)対パラジウム(Pd)の重量比は≧1:1である。白金(Pt)対パラジウム(Pd)の重量比が、≧1.1:1、より好ましくは≧1.25:1、特に≧1.5:1、例えば≧1.75:1(例えば≧2:1)、さらにより好ましくは≧2.5:1(例えば≧5:1)であることが好ましい。したがって、DOCの上流ゾーンは、10:1~1:1(例えば、2:1~1.1:1または7.5:1~5:1)、より好ましくは8:1~1.25:1(例えば、7:1~1.5:1)、さらにより好ましくは6:1~2.5:1の重量比で白金(Pt)およびパラジウム(Pd)を含む。
【0043】
触媒組成物は、炭化水素吸着剤(例えばゼオライト)および/または1種以上の担持材を場合によってさらに含んでもよい。炭化水素吸着剤は、当該技術分野において周知である。適切な担持材の例として、アルミナ、シリカ-アルミナ、セリア、セリア-ジルコニアおよびチタニアが挙げられる。
【0044】
DOCは、それに限られないが、好都合には、従来のセラミックフロースルーブリックをベースにしている。1平方インチ当たり100個以上、例えば400個のセルが存在してもよい。
【0045】
したがって、基材ユニットすなわち「ブリック」は、典型的には、フロースルーモノリスなどのフロースルー基材ユニットである。フロースルーモノリスは、典型的には、内部を伸びる複数のチャネルを有するハニカムモノリス(例えば金属またはセラミックのハニカムモノリス)を含み、チャネルは両端で開口している。
【0046】
通常、基材ユニットはセラミック材料または金属材料である。基材は、コーディエライト(SiO2-Al2O3-MgO)、炭化ケイ素(SiC)、Fe-Cr-Al合金、Ni-Cr-Al合金またはステンレス鋼合金から作られるか、それらから構成されていることが好ましい。
【0047】
典型的には、後処理装置(DOCの下流に位置する)は、すすフィルターまたは選択的接触還元(SCR)触媒(例えば、選択的接触還元用の触媒ユニット)である。
【0048】
後処理装置がすすフィルターである場合、すすフィルターの具体的な種類、形態または構築は本発明に重要であるとは考えられておらず、すすフィルターは触媒化されていても、または触媒化されていなくてもよい。
【0049】
通常、すすフィルターは基材ユニットを含み、基材ユニットは、ろ過モノリスまたはフロースルーモノリス、例えば上記のフロースルーモノリスである。好ましくは、基材ユニットはろ過モノリスである。基材ユニットは触媒組成物でコーティングされていてもよい。
【0050】
ろ過モノリスは通常複数の入口チャネルおよび複数の出口チャネルを含み、ここで、入口チャネルは、上流端(すなわち排気ガス入口側)で開口しており、下流端(すなわち排気ガス出口側)で栓がされているかまたは封止されおり、出口チャネルは、上流端で栓がされているかまた封止されており、下流端で開口しており、ここで、各入口チャネルは多孔構造によって出口チャネルとは分離されている。
【0051】
すすフィルターの基材ユニットがろ過モノリスである場合、ろ過モノリスはウォールフローフィルターであることが好ましい。ウォールフローフィルターでは、各入口チャネルは、多孔構造の壁によって出口チャネルとは交互に分離されており、その逆も同様である。入口チャネルおよび出口チャネルはハニカム配置をとることが好ましい。ハニカム配置である場合、入口チャネルと上下左右に隣接したチャネルは上流端で栓がされており、その逆も同様である(すなわち、出口チャネルと上下左右に隣接したチャネルは下流端で栓がされている)ことが好ましい。いずれの端から見ても、チャネルの交互に栓がされ開口した端はチェス盤の外観を呈する。
【0052】
すすフィルターが触媒組成物を含む場合、触媒組成物は、(i)粒子状物質(PM)ならびに/または(ii)一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)を酸化させるのに適していることがある。触媒組成物がPMを酸化させるのに適している場合、得られる後処理装置は触媒化すすフィルター(CSF)として知られている。典型的には、触媒組成物は白金および/またはパラジウムを含む。
【0053】
後処理装置はSCR触媒であってもよい。SCR触媒は、当該技術分野においても周知である。
【0054】
本発明の触媒後処理システムが後処理装置としてSCR触媒を含む場合、触媒後処理システムは、DOCの下流またはSCR触媒の上流の排気ガスに、アンモニアまたは尿素などの窒素系還元剤を注入するための噴射器をさらに含んでもよい。代替としてまたは噴射器に加えて、触媒後処理システムは、排気ガスを炭化水素でエンリッチするためのエンジン管理手段をさらに含んでもよい。次いで、SCR触媒は、還元剤として炭化水素を使用して、NOxを還元することができる。SCR触媒の基材がろ過モノリスである場合、触媒はSCRF触媒である。
【0055】
(例えば、装置を再生する能動的熱処理によって)後処理装置内に温度上昇を生じさせる手段は、本発明に重要ではなく、当該技術分野において公知のものから選択されてもよい。したがって、手段は、遅い燃料噴射または排気行程中の燃料噴射を容易にするエンジン管理システム、ターボの後の燃料バーナー、抵抗加熱コイル、および炭化水素または燃料噴射器から選択されてもよい。噴射器は、DOCの上流またはDOCの下流および後処理装置の上流に位置してもよい。
【0056】
能動的熱処理事象は、一定の(すなわち許容できない)背圧がシステムに存在する場合に引き起こされてもよく、あるいは粒子状物質の生成または硫酸化などと関連したエンジン運転条件を追跡するコンピュータ手段によって開始されてもよい。排気ガスに既に組み込まれているHCに対して追加のHCは、1つ以上のシリンダーへの直接的または間接的な燃料噴射、例えば追加のまたは延長した燃料噴射、燃焼後噴射(injection post combustion)、あるいは排気マニホルドまたは排気配管への噴射を管理することによって提供されてもよい。
【0057】
触媒後処理システムは大型車両用ディーゼルエンジンをさらに構成してもよい。本発明は、大型車両用ディーゼルの用途に適切に適用されるが、必要に応じてまたは有利な場合には他のエンジンに適用してもよい。
【0058】
大型車両の用途の場合には、DOCへの入口の排気ガス温度は、典型的には約225~275℃である。
【0059】
本発明はさらに、ディーゼルエンジンおよびの触媒後処理システムを備える乗り物に関する。米国の法律で規定されるように、乗り物は、好ましくは大型ディーゼル車(HDV)、例えば総重量が>8,500ポンド(米国ポンド)であるディーゼル車である。
【0060】
本発明の態様はまた、特に能動的熱処理事象(すなわち、後処理装置を再生すること)中に、DOCの消失を回避することに関する。本明細書に使用される場合、消失を回避することとは、還元することまたは消失を防ぐことを指す。DOCのT50、通常炭化水素および/または一酸化炭素に関するT50が、DOCの温度、およびまた典型的には排気ガスの温度を超えると消失が起こる。
【0061】
好ましくは、本発明で使用されるDOCは、場合によってアルミナなどの担体に既に付着された、耐熱性高表面積アルミナおよび所望の触媒金属の溶液または懸濁液などの表面積エンハンサー(surface area enhancer)を含む第1のコーティング剤でブリック全体をコーティングすることにより調製される。コーティングの好ましい方法は、WO99/47260に記載されている装置および方法から開発されたような、真空強化精密コーティング(vacuum enhanced Precision Coating)(Johnson Matthey商標)法を使用して、第1の触媒溶液を適用することによるものである。続いて、第2の触媒溶液を、所望の上流ゾーンを付着する量および条件で、同じ精密コーティング法を使用して適用する。ゾーンの下流エッジは、0.5インチの平均長または最小長が得られるならば、直線である必要はない。適切で均一な触媒コーティングが得られるならば、代替のコーティング法が使用されてもよい。このような代替法は当業者に利用可能であり、含浸、ウォッシュコートおよび化学付着を含んでもよいが、現在、好ましい方法は、最も制御しやすく、費用対効果が最も高い方法を提供すると考えられる。
【0062】
上流ゾーンは、典型的には、(a)予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部に第2の触媒コーティングを適用する追加の精密コーティング工程、(b)予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部の含浸、(c)予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部の触媒ウォッシュコート、または(d)予め触媒で均一にコーティングされたブリックの一部への1種以上の触媒金属の化学付着により調製されるまたは入手可能である。
【0063】
第1および第2の溶液に使用される触媒金属の濃度は、必要に応じて当業者によって計算されて、触媒金属の所望の濃度または充填量を得てもよい。例えば、第1の溶液は、PGM濃度が、10~100g/cu ftまでのPGMが得られる濃度であり、適切にはPtとPdとの混合物または合金の重量比が1:2~2:1である。第2の溶液は、PGM濃度が10~150g/cu ftのPGMが得られる濃度であり、Pt:Pd比が1:3~5:1、例えば1:2~2:1である。
【0064】
DOCの下流部分は、製造の容易さおよびコストの理由で、好ましくは触媒金属の充填量が均一である。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な濃度、例えば1つ以上の追加の触媒「ストライプ」が含まれてもよい。
【実施例0065】
ここで本発明について以下の非限定的な実施例により説明する。
【0066】
ディーゼル酸化触媒の調製
3種のDOCを同一のブリックを使用して調製し、それらの全ては、PGM総充填量が同一の40gft-3であった。各DOCは、直径が10.5インチ(266.7mm)であり、長さが4インチ(101.6mm)であった。全てのDOCを、オーブンにおいて12.5時間750℃で加熱することにより従来の老化に供したため、DOCは、使用されたDOCを代表するものであった。
【0067】
DOC1:従来および市販のディーゼル酸化触媒を調製し(DOC1)、DOC1は、充填量が均一でありPt:Pd比が7:6であった。
【0068】
DOC2:充填量が均一の約40gft-3であるが、PGM濃度がより高い10mmの「ストライプ」を備えるディーゼル酸化触媒(DOC2)を調製した。DOC2は、その第1のコーティングを備えるDOCを、Pt:Pd比が1:1である追加の触媒スラリー/溶液に浸漬させて、100gft-3の高濃度ストライプを得ることにより調製された。
【0069】
DOC3:約40gft-3の均一なコーティングと、PGM充填量が100gft-3とより高くPt:Pd比が1:1である深さ1インチ(25.4mm)のゾーンとを有するディーゼル酸化触媒(DOC3)を、DOC2に記載の方法を使用して調製した。
【0070】
試験法
各ディーゼル酸化触媒の熱分析は、2200rpmで稼働する、エンジン運転とエンリッチメントとの双方のためのEUV B7燃料(7%バイオ燃料)が供給されたディーゼルエンジンからの排気ガスを通すことにより行われた。エンジンは、DOCの上流の排気管に配置された第7の噴射器が装着された、2500rpmで235kWをもたらす7リットル容量EUVI6シリンダーエンジンであった。
【0071】
DOCブリックの中心線に沿って、上流面から測定した深さ7.6mm(T1)、25.6mm(T5)および94.6mm(T9)に熱電対を挿入した。したがって、T5は、「中間」位置と後述するが、下流ゾーンの始まりである。流れの1700秒または1800秒後、排気ガスを、フィルター再生事象中に250℃でHCエンリッチガスとなるようエンリッチし、DOCに通した。
【0072】
結果
結果を
図1~3に示すが、これらの図は、試験されたDOCの各々について温度を時間(秒)とプロットしたものである。
【0073】
図1は、従来のDOC(DOC1)の前部では少しの発熱しかないことを実証している。「中間」位置ではわずかに大きい発熱があり、450℃のピーク温度に到達するが、これはごく短い時間だけである。初期のライトオフは2100秒で完全に消失する。
【0074】
DOC2の結果を
図2に示す。エンリッチメントを1800秒で開始すると、全ての位置におけるピーク温度がDOC1でのピーク温度よりも高い。しかし、ライトオフが持続しないことが明らかであり、発熱が2100秒で再び完全に消失する。
【0075】
DOC3の結果を
図3に示す。エンリッチメントを1700秒で開始すると、熱電対位置の全てについての温度プロットがDOC1およびDOC2の結果と比較して著しく異なる。温度は、最初著しく上昇することが分かり、その後、安定した温度が熱電対位置の全てにおいて2000秒で達成された。エンリッチメントが3000秒で終了するまで、温度は維持された。
【0076】
これらの試験は、試験条件下での本発明の利益を明示している。大型車両の用途の場合には、DOCへの入口における排気ガス温度は、典型的には約225~275℃である。
【0077】
加えて、各DOCからの出口ガス中のHCを検出する試験を行った。恐らく当然、上記の試験を鑑みれば、DOC1とDOC2との双方についてはライトオフの消失後にHCスリップが高いレベルで検出されるが、DOC3については、HCは効率的に除去されると同時にフィルター再生に適した所望の発熱を生じさせる。
【0078】
疑義を避けるために、本明細書に引用されているいかなる文献の全内容も本出願に参照により援用されている。