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特開2022-17705微小粒子分取装置、微小粒子分取方法、プログラム、及び微小粒子分取システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017705
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】微小粒子分取装置、微小粒子分取方法、プログラム、及び微小粒子分取システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20220119BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01N15/14 K
G01N15/14 C
G01N33/49 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120407
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】柳下 侑大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰信
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】松本 真寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大峰
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045FA37
(57)【要約】
【課題】
微小粒子の分取において、純度を維持しつつ回収率を向上する手法を提供すること。
【解決手段】
本技術は、粒子の分取判定を実行する判定部を備えており、前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行う微小粒子分取装置を提供する。前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含む:(a)分取対象である粒子の粒子集団、(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子の分取判定を実行する判定部を備えており、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記判定において用いられるルールデータを変更することができ、
前記判定部が利用可能なルールデータのうちの少なくとも一つが、
分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路である、
と定義している、
請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項3】
前記微小粒子分取装置は、前記ルールデータを生成するルールデータ生成部をさらに備えており、
前記ルールデータ生成部は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団に基づき、ルールデータを生成する、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項4】
前記微小粒子分取装置は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団を設定するためのゲーティング操作を受け付ける入力部をさらに備えている、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項5】
前記判定部は、流路内を流れる粒子への光照射によって生じた光に基づき、粒子がどの粒子集団に属するかを決定する、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項6】
血液細胞の分取を行うために用いられる、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項7】
血液細胞のうちから所定のT細胞を選択的に分取するために用いられる、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項8】
前記ルールデータは、多次元データである、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項9】
前記ルールデータは、二次元マトリックスデータである、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記所定範囲内に、前記分取判定される粒子及びその他の1以上の粒子が存在する場合に前記判定を行う、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項11】
粒子の分取判定を実行する判定部を備えており、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含む、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団、
微小粒子分取装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子からなる粒子群の各粒子について、当該粒子群の他の全ての粒子それぞれとの関係性を判定する、請求項1に記載の微小粒子分取装置。
【請求項13】
前記判定部は、前記各粒子が、前記他の全ての粒子それぞれとの関係において無視可能であるかを定義するルールデータを用いて、前記関係性の判定を行う、請求項12に記載の微小粒子分取装置。
【請求項14】
前記判定部は、前記関係性の判定の結果、他の全ての粒子との関係において無視可能であると判定された粒子に対しては、進路を割り当てず、且つ、当該粒子以外の粒子に対して、進路を割り当てる、請求項13に記載の微小粒子分取装置。
【請求項15】
前記判定部は、割り当てられた進路に応じて前記分取判定される粒子の進路が定義されているルールデータを用いて、当該粒子の進路を判定する、請求項14に記載の微小粒子分取装置。
【請求項16】
分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて、粒子の分取判定を実行する判定工程を含み、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取方法。
【請求項17】
分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて、粒子の分取判定を実行する判定工程を含み、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取方法を、微小粒子分取装置に実行させるためのプログラム。
【請求項18】
粒子の分取判定を実行する判定部と、
当該分取判定において用いられるルールデータを生成するルールデータ生成部と、
を含み、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、微小粒子分取装置、微小粒子分取方法、プログラム、及び微小粒子分取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
微小粒子を分取するために、これまでに種々の微小粒子分取装置が開発されてきている。例えばフローサイトメータにおいて用いられる粒子分取系において、フローセル又はマイクロチップに形成されたオリフィスから、細胞を含むサンプル液とシース液とから構成される層流が吐出される。吐出される際に所定の振動が当該層流に与えられて、液滴が形成される。当該形成された液滴の移動方向が、目的の粒子を含むか含まないかによって電気的に制御されて、目的の粒子が分取される。
【0003】
上記のように液滴を形成せずに、マイクロチップ内で目的の粒子を分取する技術も開発されている。例えば、下記特許文献1には、「微小粒子を含むサンプル液が通流するサンプル液導入流路と、該サンプル液導入流路にその両側から合流し、前記サンプル液の周囲にシース液を導入する少なくとも1対のシース液導入流路と、前記サンプル液導入流路及びシース液導入流路に連通し、これらの流路を通流する液体が合流して通流する合流流路と、該合流流路に連通し、回収対象の微小粒子を吸引して引き込む負圧吸引部と、 該負圧吸引部の両側に設けられ、前記合流流路に連通する少なくとも1対の廃棄用流路と、を有するマイクロチップ。」(請求項1)が記載されている。当該マイクロチップにおいて、目的の粒子は吸引によって負圧吸引部へと回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-127922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微小粒子分取装置において、しばしば血液由来サンプルから目的細胞を分取することが行われる。血液由来サンプルの量は限定される場合が多く、1回の微小粒子分取処理で、目的細胞をできる限り多く取得することが望ましい。また、目的外の細胞は、分取後の操作(例えば培養又は遺伝子操作)に影響を及ぼす可能性があるので、分取後の操作に影響を及ぼしうる目的外細胞は、できる限り分取せずに廃棄されることが求められうる。
【0006】
そこで、上記で述べたような微小粒子分取装置では、目的細胞のみを回収するような設定で分取処理が行われうる。当該設定では、例えば、或る目的細胞を回収した場合に当該目的細胞付近に存在する目的外細胞も一緒に回収される可能性が有る場合は、当該目的細胞は回収せず、廃棄されうる。当該廃棄によって、回収された細胞集団中も目的細胞の割合は高くなるが、回収率は低くなる傾向にある。
【0007】
ここで、例えば、血液中の赤血球は、上記分取処理後の操作、例えば培養又は遺伝子操作などに対して与える影響は少ない。そのため、分取の目的によっては、赤血球が目的細胞と一緒に回収されることが許容されうる。しかしながら、上記で述べた設定において、赤血球は目的外細胞であると判定されるため、目的細胞付近に赤血球が存在する場合には当該目的細胞は回収されずに廃棄される。また、赤血球の数の割合は高く、赤血球が目的細胞の付近に存在する頻度も高いため、目的細胞の回収率は低くなる。なお、溶血という赤血球を除去する工程も行われるが、この工程には限界が有り、赤血球を完全に無くすことはできない場合がある。
【0008】
以上を踏まえ、本技術は、微小粒子の分取において、分取される目的粒子の純度への影響を低減しつつ目的粒子の回収率を高めるための技法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の分取処理を実行する微小粒子分取装置によって上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本技術は、
粒子の分取判定を実行する判定部を備えており、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取装置を提供する。
前記判定部は、前記判定において用いられるルールデータを変更することができ、
前記判定部が利用可能なルールデータのうちの少なくとも一つが、
分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路である、
と定義していてよい。
前記微小粒子分取装置は、前記ルールデータを生成するルールデータ生成部をさらに備えていてよく、
前記ルールデータ生成部は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団に基づき、ルールデータを生成しうる。
前記微小粒子分取装置は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団を設定するためのゲーティング操作を受け付ける入力部をさらに備えていてよい。
前記判定部は、流路内を流れる粒子への光照射によって生じた光に基づき、粒子がどの粒子集団に属するかを決定しうる。
前記微小粒子分取装置は、血液細胞の分取を行うために用いられていてよい。
前記微小粒子分取装置は、血液細胞のうちから所定のT細胞を選択的に分取するために用いられてよい。
前記ルールデータは、多次元データでありうる。
前記ルールデータは、二次元マトリックスデータでありうる。
前記判定部は、前記所定範囲内に、前記分取判定される粒子及びその他の1以上の粒子が存在する場合に前記判定を行いうる。
前記判定部は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子からなる粒子群の各粒子について、当該粒子群の他の全ての粒子それぞれとの関係性を判定しうる。
前記判定部は、前記各粒子が、前記他の全ての粒子それぞれとの関係において無視可能であるかを定義するルールデータを用いて、前記関係性の判定を行いうる。
前記判定部は、前記関係性の判定の結果、他の全ての粒子との関係において無視可能であると判定された粒子に対しては、進路を割り当てず、且つ、当該粒子以外の粒子に対して、進路を割り当てうる。
前記判定部は、割り当てられた進路に応じて前記分取判定される粒子の進路が定義されているルールデータを用いて、当該粒子の進路を判定しうる。
【0010】
また、本技術は、
粒子の分取判定を実行する判定部を備えており、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含む、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団、
微小粒子分取装置も提供する。
【0011】
また、本技術は、
分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて、粒子の分取判定を実行する判定工程を含み、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取方法も提供する。
【0012】
また、本技術は、
分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて、粒子の分取判定を実行する判定工程を含み、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取方法を、微小粒子分取装置に実行させるためのプログラムも提供する。
【0013】
また、本技術は、
粒子の分取判定を実行する判定部と、
当該分取判定において用いられるルールデータを生成するルールデータ生成部と、
を含み、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取システムも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術において用いられる微小粒子分取用マイクロチップの構成例を示す図である。
図2】本技術において用いられる微小粒子分取用マイクロチップを用いた微小粒子分取処理のフローの一例を示す図である。
図3】本技術において用いられる微小粒子分取用マイクロチップの粒子分取部の一例の拡大図である。
図4】制御部の一例のブロック図である。
図5A】接続流路部分の拡大図である。
図5B】接続流路部分の拡大図である。
図6A】接続流路部分の拡大図である。
図6B】接続流路部分の拡大図である。
図7】ゲーティングの例を示す図である。
図8】分取判定パターンの例を示す図である。
図9】分取判定処理の一例を示すフロー図である。
図10】分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例を示す図である。
図11】分取判定処理において用いられるルールデータの一例及び当該ルールデータを用いて分取判定処理を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図12】分取判定処理において用いられるルールデータの一例及び当該ルールデータを用いて分取判定処理を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図13】分取判定処理において用いられるルールデータの一例及び当該ルールデータを用いて分取判定処理を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図14】分取判定処理において用いられるルールデータの一例及び当該ルールデータを用いて分取判定処理を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図15】本技術に従う微小粒子分取装置の一例の模式図である。
図16】ゲーティングの例を示す図である。
図17】分取判定パターンの例を示す図である。
図18】分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例を示す図である。
図19】分取判定処理の一例を示すフロー図である。
図20】分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例を示す図である。
図21図20に記載のルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図22】分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例を示す図である。
図23図22に記載のルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図24】分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例を示す図である。
図25図24に記載のルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図26】分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例を示す図である。
図27図26に記載のルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果を示す図である。
図28】分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例を示す図である。
図29図28に記載のルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。なお、本技術の説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(微小粒子分取装置)
(1)第1の実施形態の説明
(2)閉鎖型微小粒子分取装置の例
(3)判定処理の詳細
(3-1)判定処理の基本概念
(3-2)判定処理のフロー例(純度を重視し且つ回収率を高める判定パターン)
(3-3)ルールデータの変更による種々の分取判定パターンの実現
(3-3-1)目的細胞の純度を優先した分取判定処理の例
(3-3-2)目的細胞の純度を優先した分取判定処理の他の例
(3-3-3)目的細胞の収率を優先した分取判定処理の例
(3-3-4)目的細胞の純度を重視し且つ回収率を高めるための分取判定処理の例
(3-3-5)実施例
(4)フローサイトメータとして構成された微小粒子分取装置の例
(5)判定処理の詳細
(5-1)判定処理の基本概念
(5-2)判定処理のフロー例
(5-3)ルールデータの変更による種々の分取判定パターンの実現
(5-3-1)目的細胞の純度を重視し且つ回収率を向上するための分取判定処理の例
(5-3-2)目的細胞の純度を重視した分取判定処理の例
(5-3-3)分取判定において考慮される範囲を狭めた分取判定処理の例
(5-3-4)目的細胞の回収率を重視した分取判定処理の例
(5-3-5)分取判定において考慮される範囲内に1つの粒子が含まれている場合にだけ分取すると判定する分取判定処理の例
2.第2の実施形態(微小粒子分取方法)
3.第3の実施形態(プログラム)
4.第4の実施形態(微小粒子分取システム)
【0016】
1.第1の実施形態(微小粒子分取装置)
【0017】
(1)第1の実施形態の説明
【0018】
本技術の微小粒子分取装置は、粒子の分取判定を実行する判定部を備えている。当該判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これらの粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行いうる。前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含みうる。
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団。
本技術の微小粒子分取装置は、前記ルールデータを用いて分取判定を実行する判定部を備えていることにより、分取対象粒子の純度への影響を低減しつつ、分取対象粒子の回収率を高める分取判定を実行することができる。
【0019】
本技術の好ましい実施態様において、前記無視可能な粒子は赤血球を含む。すなわち、前記微小粒子分取装置は、無視可能な粒子として赤血球を含むように前記ルールデータを生成することができ、そして、当該ルールデータに従い粒子の分取判定を行いうる。
上記で述べたとおり、赤血球は、分取の目的によっては、目的細胞と一緒に回収されてもよい。無視可能な粒子が赤血球を含むように粒子集団を設定することによって、前記微小粒子分取装置の判定部は、赤血球を無視するように分取判定を実行できる。これにより、目的細胞の回収率を高めることができる一方で、例えば培養又は遺伝子操作などの分取処理後操作に影響を及ぼすことを防ぐこともできる。
この実施態様において、微小粒子分取装置による分取処理に付される試料は、例えば生体粒子含有試料であり、特には細胞含有試料であり、より特には血液細胞含有試料である。この実施態様において、分取対象である粒子は、例えば細胞であり、特には血液細胞であり、より特には白血球を含み、より特にはT細胞、B細胞、顆粒球、及び単球から選ばれる少なくとも一つを含みうる。すなわち、本技術の微小粒子分取装置は、血液細胞の分取を行うために用いられてよく、より特には血液細胞のうちから所定の白血球(例えばT細胞など)を選択的に分取するために用いられる
【0020】
本技術の好ましい実施態様において、前記判定部は、前記判定において用いられるルールデータを変更することができるように構成されうる。これにより、前記微小粒子分取装置は、目的に応じた粒子分取処理を実行することができる。例えば、目的細胞と赤血球とが一緒に分取されることを許容する分取処理だけでなく、目的細胞と赤血球とが一緒に分取されることを許容しない分取処理も実行することができる。
この実施態様において、前記判定部が利用可能なルールデータのうちの少なくとも一つは、例えば、
分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路である、
と定義していてよい。
このように定義されたルールデータによって、無視可能な粒子が分取対象粒子と一緒に回収されることが許容される。これにより、分取処理後の操作に影響を及ぼすことを防ぎつつ、目的細胞の回収率を高めることができる。
【0021】
以下で、本技術に従う微小粒子分取装置の構成及び分取処理について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(2)閉鎖型微小粒子分取装置の例
【0023】
(2-1)装置の構成及び分取操作
【0024】
本技術に従う微小粒子分取装置は、閉鎖空間内で微小粒子の分取を行う装置として構成されてよく、例えば微小粒子の進行する流路を制御することによって微小粒子の分取を行う装置として構成されてよい。図1に、本技術に従う微小粒子分取装置の構成例を示す。同図には、当該装置に含まれるチップの流路構造の例も示されている。図2に、前記微小粒子分取装置により行われる分取操作のフロー図の一例を示す。
【0025】
図1に示される微小粒子分取装置100は、光照射部101、検出部102、制御部103、及び微小粒子分取用マイクロチップ150を備えている。制御部103は、図4に示されるとおり、信号処理部104、判定部105、及び分取制御部106を含みうる。
以下で、まず微小粒子分取用マイクロチップ150について説明し、次に、微小粒子分取装置100による分取操作を説明しながら、当該装置の他の構成要素について説明する。
【0026】
図1に示される微小粒子分取用マイクロチップ150は、サンプル液流路152と、サンプル液流路152と合流部162で合流するシース液流路154とを有する。微小粒子分取用マイクロチップ150には、さらに、サンプル液インレット151及びシース液インレット153が設けられている。
なお、図1において、シース液流路154の一部が点線で示されている。当該点線で示されている部分は、実線で示されるサンプル液流路152よりも低い位置(矢印で示される光軸方向にずれた位置)にあり、点線で示される流路と実線で示される流路とが交差する位置で、これら流路は連通していない。また、図1においては、サンプル液流路152は、サンプル液インレット151から合流部162までの間で2回曲がるように示されているが、これはサンプル液流路152とシース液流路154との区別を容易にするためである。サンプル液流路152は、サンプル液インレット151から合流部162までの間でこのように曲がることなく直線的に構成されていてよい。
微小粒子分取操作において、サンプル液インレット151から微小粒子を含むサンプル液がサンプル液流路152に導入され、且つ、シース液インレット153から微小粒子を含まないシース液がシース液流路154に導入される。
【0027】
微小粒子分取用マイクロチップ150は、合流部162を一端に有する合流流路155を有する。合流流路155は、微小粒子の分取判別を行うために用いられる分取判別部156を含む。
前記サンプル液及び前記シース液は、合流部162で合流し、そして、合流流路155内を、粒子分取部157に向かって流れる。特には、前記サンプル液及び前記シース液が合流部162で合流して、例えばサンプル液の周囲がシース液で囲まれた層流が形成される。好ましくは、層流中には微小粒子が略一列に並んでいる。サンプル液流路152と2つのシース液流路154とが合流部162で合流しており且つ当該合流部162を一端とする合流流路155を有するという流路構造によって、略一列に並んで流れる微小粒子を含む層流が形成される。これにより、以下で説明する分取判別部(検出領域ともいう)156における光照射において、1つの微小粒子への光照射により生じた光と他の微小粒子への光照射により生じた光とを区別しやすくなる。
【0028】
微小粒子分取用マイクロチップ150は、さらに、合流流路155の他端に粒子分取部157を有する。図3に、粒子分取部157の拡大図を示す。図3Aに示されるとおり、当該他端で、合流流路155は、接続流路170を介して微小粒子回収流路159と接続されている。図3Aに示されるとおり、合流流路155、接続流路170、及び微小粒子回収流路159は同軸上にあってよい。
粒子分取部157に回収対象粒子が流れてきた場合に、図3Bに示されるとおり、合流流路155から接続流路170を通って微小粒子回収流路159へ入る流れが形成されて、回収対象粒子(本明細書内において「分取対象粒子」ともいう)が微小粒子回収流路159内へ回収される。このように、回収対象粒子は、接続流路170を通って微小粒子回収流路159へと流れる。
粒子分取部157に回収対象粒子でない微小粒子が流れてきた場合に、回収対象粒子でない当該微小粒子は、図3Cに示されるとおり、分岐流路158へと流れる。この場合において、微小粒子回収流路159へ入る流れは形成されない。
【0029】
微小粒子回収流路159は、図1に示されるとおり、粒子分取部157から直線状に伸び、Uターンし、そして、サンプル液インレット151及びシース液インレット153が形成する面と同じ面へ到達するように形成されている。微小粒子回収流路159を流れる液体は、回収流路末端163からチップ外へと排出される。
2つの分岐流路158も、図1に示されるとおり、粒子分取部157から直線状に伸び、Uターンし、そして、サンプル液インレット151及びシース液インレット153が形成されている面と同じ面へ到達するように形成されている。分岐流路158を流れる液体は、分岐流路末端166からチップ外へと排出される。
微小粒子回収流路159は、図1において、Uターンする部分で、実線及び点線へと表示方法が変更されている。この変更は、その途中で光軸方向における位置が変化していることを示す。このように光軸方向の位置を変化させることで、分岐流路158と交差する部分で、微小粒子回収流路159及び分岐流路158が連通しない。
回収流路末端163及び2つの分岐流路末端166のいずれもが、サンプル液インレット151及びシース液インレット153が形成されている面に形成されている。さらに、後述する導入流路161へ液体を導入するための導入流路インレット164も、当該面に形成されている。このように、微小粒子分取用マイクロチップ150は、液体が導入されるインレット及び液体が排出されるアウトレットの全てが1つの面に形成されている。これにより、当該チップの微小粒子分取装置100への取り付けが容易になる。例えば、2以上の面にインレット及び/又はアウトレットが形成されている場合と比べて、微小粒子分取装置100に設けられている流路と微小粒子分取用マイクロチップ150の流路との接続が容易になる。
【0030】
微小粒子分取用マイクロチップ150は、図1及び3に示されるとおり、接続流路170へ液体を導入するための導入流路161を有する。
導入流路161から液体を接続流路170へ導入することで、接続流路170内が当該液体によって満たされる。これにより、目的外の微小粒子が微小粒子回収流路159へ侵入することを防ぐことができる。
【0031】
微小粒子分取用マイクロチップ150は、合流流路155の他端で、合流流路155と接続されている2つの分岐流路158を有する。このように、本技術において用いられる微小粒子分取用マイクロチップにおいて、前記合流流路は、前記接続流路と前記少なくとも一つの分岐流路へと分岐していてよい。
回収対象粒子以外の微小粒子は、微小粒子回収流路159へ侵入することなく、2つの分岐流路158のいずれかへ流れる。
【0032】
図2に示されるとおり、微小粒子分取用マイクロチップ150を用いた微小粒子分取操作は、微小粒子を含む液体を合流流路155に流す通流工程S1と、合流流路155を流れる微小粒子が回収対象粒子であるかを判定する判定工程S2と、回収対象粒子を微小粒子回収流路159内へと回収する回収工程S3とを含む。
以下で各工程について説明する。
【0033】
(2-2)通流工程
【0034】
通流工程S1において、サンプル液インレット151及びシース液インレット153から、微小粒子を含むサンプル液及び微小粒子を含まないシース液が、それぞれサンプル液流路152及びシース液流路154に導入される。
【0035】
当該サンプル液及び当該シース液が合流部162で合流して、例えばサンプル液の周囲がシース液で囲まれた層流が形成される。好ましくは、層流中には微小粒子が略一列に並んでいる。すなわち、通流工程S1において、略一列に並んで流れる微小粒子を含む層流が形成されうる。
【0036】
このようにして、通流工程S1において、微小粒子を含む液体が、特には層流として、合流流路155内を通流される。前記液体は、合流流路155内を、合流部162から粒子分取部157へ向かって流れる。
【0037】
(2-3)判定工程
【0038】
判定工程S2において、合流流路155を流れる微小粒子が回収対象粒子であるかが判定される。当該判定は、判定部105により行われうる。判定部105は、当該判定を、光照射部101による微小粒子への光照射によって生じた光に基づき行いうる。判定工程S2の例について、以下でより詳細に説明する。
【0039】
判定工程S2において、光照射部101が、微小粒子分取用マイクロチップ150中の合流流路155(特には分取判別部156)を流れる微小粒子に光(例えば励起光など)を照射し、当該光照射により生じた光を検出部102が検出する。検出部102により検出された光の特徴に基づき、判定部105が、微小粒子が回収対象粒子であるかを判定する。例えば、判定部105は、散乱光に基づく判定、蛍光に基づく判定、又は、画像(例えば暗視野画像若しくは/且つ明視野画像など)に基づく判定を行いうる。後述の回収工程S3において、制御部103が、微小粒子分取用マイクロチップ150中の流れを制御することによって、回収対象粒子が微小粒子回収流路159内へ回収される。
【0040】
光照射部101は、微小粒子分取用マイクロチップ150中の流路内を流れる微小粒子に光(例えば励起光など)を照射する。光照射部101は、光を出射する光源と、分取判別部を流れる微小粒子に対して励起光を集光する対物レンズとを含みうる。光源は、分析の目的に応じて当業者により適宜選択されてよく、例えばレーザダイオード、SHGレーザ、固体レーザ、ガスレーザ、高輝度LED、若しくはハロゲンランプであってよく、又は、これらのうちの2つ以上の組み合わせであってもよい。光照射部は、光源及び対物レンズに加えて、必要に応じて他の光学素子を含んでいてもよい。
【0041】
本技術の一つの実施態様において、検出部102は、光照射部101による光照射によって前記微小粒子から生じた散乱光及び/又は蛍光を検出する。検出部102は、微小粒子から生じた蛍光及び/又は散乱光を集光する集光レンズと検出器とを含みうる。当該検出器として、PMT、フォトダイオード、CCD、及びCMOSなどが用いられうるがこれらに限定されない。検出部102は、集光レンズ及び検出器に加えて、必要に応じて他の光学素子を含んでいてもよい。検出部102は、例えば分光部をさらに含みうる。分光部を構成する光学部品として、例えばグレーティング、プリズム、及び光フィルターを挙げることができる。分光部によって、例えば検出されるべき波長の光を、他の波長の光から分けて検出することができる。検出部102は、検出された光を光電変換によって、アナログ電気信号に変換しうる。検出部102は、さらに当該アナログ電気信号をAD変換によってデジタル電気信号に変換しうる。
【0042】
本技術の他の実施態様において、検出部102は、光照射部101による光照射により生成される画像を取得してもよい。前記画像は、例えば暗視野画像、明視野画像、又はこれらの両方であってよい。この実施態様において、光照射部101は例えばハロゲンランプ又はレーザを含み、検出部102は、CCD又はCMOSを含みうる。検出部102は、例えばCMOSセンサが組み込まれた基板とDSP(Digital Signal Processor)を組み込まれた基板とが積層された撮像素子であってもよい。当該撮像素子のDSPを機械学習部として動作させることによって、当該撮像素子はいわゆるAIセンサとして動作することができる。当該撮像素子を含む検出部102は、微小粒子が回収対象粒子であるかを、例えば学習モデルに基づき判定しうる。また、当該学習モデルは、本技術に従う方法が行われている間に、リアルタイムで更新されてもよい。例えば、CMOSセンサ中の画素アレイ部のリセット中、当該画素アレイ部の露光中、又は当該画素アレイ部の各単位画素からの画素信号の読出中に、DSPが機械学習処理を行いうる。AIセンサとして動作する撮像素子の例として、例えば、国際公開第2018/051809号に記載された撮像装置を挙げることができる。
【0043】
制御部103に含まれる信号処理部104は、検出部102により得られたデジタル電気信号の波形を処理して、判定部105による判定のために用いられる光の特徴に関する情報(データ)を生成しうる。当該光の特徴に関する情報として、信号処理部104は、デジタル電気信号の波形から、例えば当該波形の幅、当該波形の高さ、及び当該波形の面積のうちの1つ、2つ、又は3つを取得しうる。また、当該光の特徴に関する情報には、例えば、当該光が検出された時刻が含まれていてよい。以上の信号処理部104による処理は、特には、前記散乱光及び/又は蛍光が検出される実施態様において行われうる。
【0044】
制御部103に含まれる判定部105は、流路中を流れる微小粒子への光照射により生じた光に基づき、当該微小粒子が回収対象粒子であるかを判定する。
前記散乱光及び/又は蛍光が検出される実施態様において、検出部102により得られたデジタル電気信号の波形が制御部103によって処理され、そして、当該処理によって生成された光の特徴に関する情報に基づき、判定部105が、当該微小粒子が回収対象粒子であるかを判定する。例えば、散乱光に基づく判定において、微小粒子の外形及び/又は内部構造の特徴が特定され、当該特徴に基づき微小粒子が回収対象粒子であるかが判定されてよい。さらに、例えば細胞などの微小粒子に対して予め前処理を施しておくことで、フローサイトメトリーにおいて用いられる特徴と同様の特徴に基づき、当該微小粒子が回収対象粒子であるかを判定することもできる。また、例えば細胞などの微小粒子を抗体又は色素(特には蛍光色素)で標識を行っておくことで、当該微小粒子の表面抗原の特徴に基づき、当該微小粒子が回収対象粒子であるかを判定することもできる。
前記画像が取得される実施態様において、制御部103に含まれる判定部105は、取得された画像(例えば暗視野画像、明視野画像、又はこれらの両方)に基づき、微小粒子が回収対象粒子であるかを判定する。例えば、微小粒子(特には細胞)の形態、サイズ、及び色のうちの一つ又は二つ以上の組合せに基づき、微小粒子が回収対象粒子であるかが判定されうる。
【0045】
前記判定は、例えば、当該光の特徴に関する情報が予め指定された基準を満たすかによって行われうる。当該基準は、微小粒子が回収対象粒子であることを示す基準でありうる。当該基準は、当業者により適宜設定されてよく、例えばフローサイトメトリーなどの技術分野において用いられる基準のような、光の特徴に関する基準でありうる。
【0046】
分取判別部156中の1つの位置に1つの光が照射されてよく、又は、分取判別部156中の複数の位置のそれぞれに光が照射されてもよい。例えば、分取判別部156中の2つの異なる位置のそれぞれに光が照射されるようにマイクロチップ150は構成されうる(すなわち、分取判別部156中に、光が照射される位置が2つある。)。この場合において、例えば、1つの位置での微小粒子への光照射によって生じた光(例えば蛍光及び/又は散乱光など)に基づき当該微小粒子が回収対象粒子であるかが判定されうる。さらに、当該1つの位置での前記光照射によって生じた光の検出時刻ともう一つの位置での光照射によって生じた光の検出時刻との差に基づき、流路内における微小粒子の速度を算出することもできる。当該算出のために、予め、2つの照射位置の間の距離が決定されていてよく、前記2つの検出時刻の差と前記距離に基づき微小粒子の速度が決定されうる。さらに、当該速度に基づき、以下で述べる粒子分取部157への到達時刻を正確に予測することができる。当該到達時刻が正確に予測されることで、微小粒子回収流路159へ入る流れの形成のタイミングを最適化することができる。また、或る微小粒子の粒子分取部157への到達時刻と当該或る微小粒子の前又は後の微小粒子の粒子分取部157への到達時刻との差が所定の閾値以下である場合は、当該或る微小粒子を回収しないと判定することもできる。当該或る微小粒子とその前又は後の微小粒子との間の距離が狭い場合に、当該或る微小粒子の吸引の際に当該前又は後の微小粒子が一緒に回収される可能性が高まる。当該一緒に回収される可能性が高い場合には当該或る微小粒子を回収しないと判定することによって、当該前又は後の微小粒子が回収されることを防ぐことができる。これにより、回収された微小粒子のうちの目的とする微小粒子の純度を高めることができる。分取判別部156中の2つの異なる位置のそれぞれに光が照射されるマイクロチップ及び当該マイクロチップを含む装置の具体例は、例えば特開2014-202573号公報に記載されている。
【0047】
なお、制御部103は、光照射部101による光照射及び/又は検出部102による光の検出を制御してもよい。また、制御部103は、微小粒子分取用マイクロチップ150内に流体を供給するためのポンプの駆動を制御しうる。制御部103は、例えば、本技術に従う微小粒子分取方法を微小粒子分取装置100に実行させるためのプログラムとOSとが格納されたハードディスク、CPU、及びメモリにより構成されてよい。例えば汎用のコンピュータにおいて制御部103の機能が実現されうる。前記プログラムは、例えばmicroSDメモリカード、SDメモリカード、又はフラッシュメモリなどの記録媒体に記録されていてもよい。当該記録媒体に記録された前記プログラムを、微小粒子分取装置100に備えられているドライブ(図示されていない)が読み出し、そして、制御部103が、当該読み出されたプログラムに従い、微小粒子分取装置100に本技術に従う微小粒子分取方法を実行させてもよい。
【0048】
(2-4)回収工程
【0049】
回収工程S3において、判定工程S2において回収対象粒子であると判定された微小粒子が、微小粒子回収流路159内へ回収される。回収工程S3は、マイクロチップ150中の粒子分取部157において行われる。粒子分取部157において、合流流路155を流れてきた前記層流は、2つの分岐流路158へと別れて流れる。図1に記載の粒子分取部157は2つの分岐流路158を有するが、分岐流路の数は2つに限られない。粒子分取部157には、例えば1つ又は複数(例えば2つ、3つ、又は4つなど)の分岐流路が設けられうる。分岐流路は、図1におけるように1平面上でY字状に分岐するように構成されていてよく、又は、三次元的に分岐するように構成されていてもよい。
【0050】
接続流路170付近の拡大図を図5A及び5Bに示す。図5Aは、接続流路170付近の模式的な斜視図である。図5Bは、導入流路161の中心線と接続流路170の中心線とを通る平面における模式的な断面図である。接続流路170は、分取判別部156側の流路170a(以下、上流側接続流路170aともいう)と、微小粒子回収流路159側の流路170b(以下、下流側接続流路170bともいう)と、接続流路170と導入流路161との接続部170cとを含む。導入流路161は、接続流路170の流路の軸に対して略垂直になるように設けられている。図5A及び5Bにおいて、2つの導入流路161が、接続流路170の略中心位置にて向かい合うように設けられているが、1つの導入流路だけが設けられていてもよい。
【0051】
上流側接続流路170aの横断面の形状及び寸法は、下流側接続流路170bの形状及び寸法と、同じであってよい。例えば、図5A及び5Bに示されるとおり、上流側接続流路170aの横断面及び下流側接続流路170bの横断面のいずれもが、同じ寸法を有する略円形であってよい。代替的には、これら2つの横断面のいずれもが同じ寸法を有する矩形(例えば正方形又は長方形など)であってもよい。
【0052】
2つの導入流路161から、図5B中に矢印に示されるとおりに液体が接続流路170へと供給される。当該液体は、接続部170cから、上流側接続流路170a及び下流側接続流路170bの両方へ流れる。
【0053】
回収工程が行われない場合は、当該液体は以下のとおりに流れる。
上流側接続流路170aへ流れた液体は、接続流路170の合流流路155との接続面から出たのち、2つの分岐流路158へと別れて流れる。このように当該液体が当該接続面から出ていることによって、微小粒子回収流路159内へ回収される必要のない液体及び微小粒子が、接続流路170を通って微小粒子回収流路159へ入ることを防ぐことができる。
下流側接続流路170bへ流れた液体は、微小粒子回収流路159内へと流れる。これによって、微小粒子回収流路159内が当該液体によって満たされる。
【0054】
回収工程が行われる場合においても、当該液体は、2つの導入流路161から接続流路170へと供給されうる。しかしながら、微小粒子回収流路159内の圧力変動により、特には微小粒子回収流路159内に負圧を発生させることによって、合流流路155から接続流路170を通って微小粒子回収流路159へと流れる流れが形成される。すなわち、合流流路155から、上流側接続流路170a、接続部170c、及び下流側接続流路170bをこの順に通って微小粒子回収流路159へと流れる流れが形成される。これにより、回収対象粒子が、微小粒子回収流路159内に回収される。
【0055】
上流側接続流路170aの横断面の形状及び/又は寸法は、下流側接続流路170bの形状及び/又は寸法と異なっていてもよい。これら2つの流路の寸法が異なる例を図6A及び6Bに示す。図6A及び6Bに示されるとおり、接続流路180は、分取判別部156側の流路180a(以下、上流側接続流路180aともいう)と、微小粒子回収流路159側の流路180b(以下、下流側接続流路180bともいう)と、接続流路180と導入流路161との接続部180cとを含む。上流側接続流路180aの横断面及び下流側接続流路180bの横断面はいずれも略円形の形状を有するが、後者の横断面の直径は、前者の横断面の直径よりも大きい。後者の横断面の直径を前者のものよりも大きくすることによって、両者の直径が同じ場合と比べて、上記で述べた負圧による微小粒子分取動作の直後に微小粒子回収流路159内に既に分取された回収対象粒子が接続流路180を通って合流流路155へと放出されることをより効果的に防ぐことができる。
例えば、上流側接続流路180aの横断面及び下流側接続流路180bの横断面がいずれも矩形である場合は、後者の横断面の面積を前者の横断面の面積よりも大きくすることによって、上記で述べたように、既に回収された微小粒子が接続流路180を通って合流流路155へと放出されることをより効果的に防ぐことができる。
【0056】
回収工程S3において、微小粒子回収流路159内の圧力変動により、前記回収対象粒子が前記接続流路を通って前記微小粒子回収流路内へと回収される。当該回収は、例えば、上記で述べた通り、微小粒子回収流路159内に負圧を発生させることによって行われてよい。当該負圧は、例えばマイクロチップ150の外部に取り付けられているアクチュエータ107(特にはピエゾアクチュエータ)により、微小粒子回収流路159を規定する壁が変形されることにより生じうる。当該負圧によって、微小粒子回収流路159へ入る当該流れが形成されうる。当該負圧を発生させるために、例えば、微小粒子回収流路159の壁を変形させることができるように、アクチュエータ107がマイクロチップ150外部に取り付けられうる。当該壁の変形によって、微小粒子回収流路159の内空が変化されて、負圧が発生されうる。アクチュエータ107は、例えばピエゾアクチュエータでありうる。回収対象粒子が微小粒子回収流路159へと吸い込まれる際には、前記層流を構成するサンプル液又は前記層流を構成するサンプル液及びシース液も、微小粒子回収流路159へと流れうる。このようにして、回収対象粒子は、粒子分取部157において分取されて、微小粒子回収流路159へと回収される。
【0057】
回収対象粒子でない微小粒子が接続流路170を通って微小粒子回収流路159へと入ることを防ぐために、接続流路170には導入流路161が備えられている。接続流路170には、導入流路161から液体が導入される。当該液体の導入によって、当該液体により接続流路170が満たされる。さらに、当該液体の一部によって接続流路170から合流流路155に向かう流れが形成されることで、回収対象粒子以外の微小粒子が微小粒子回収流路159へ入ることが防がれる。接続流路170から合流流路155に向かう流れを形成する液体は、合流流路155を流れる液体が分岐流路158へと流れる流れによって、合流流路155内を流れることなく、当該液体と同様に分岐流路158を流れる。
なお、接続流路170に導入された液体の残りは、微小粒子回収流路159へと流れる。これにより、微小粒子回収流路159内は当該液体によって満たされうる。
【0058】
分岐流路158へと流れた流れは、分岐流路末端160にて、マイクロチップの外部へと吐出されうる。また、微小粒子回収流路159へと回収された回収対象粒子は、回収流路末端163にて、マイクロチップの外部へと吐出されうる。回収流路末端163には、チューブなどの流路を介して容器が接続されうる。当該容器に、回収対象粒子が回収されてよい。
【0059】
図1及び図3に示されるように、本技術において用いられる微小粒子分取用マイクロチップにおいて、前記合流流路、前記接続流路、及び前記回収流路が直線状に並んでいてよい。これら3つの流路が直線状(特には同軸上)に並んでいる場合、例えば前記接続流路及び前記回収流路が前記合流流路に対して角度を有して配置されている場合と比べて、回収工程をより効率的に行うことができる。例えば、回収対象粒子を接続流路へと導くために要する吸引量をより少なくすることができる。
また、本技術において用いられる微小粒子分取用マイクロチップにおいて、微小粒子は、合流流路内を略一列に並び、接続流路へ向かって流れる。そのため、回収工程における吸引量を少なくすることもできる。
【0060】
以上で述べたとおり、本技術において用いられる微小粒子分取用マイクロチップにおいて、前記導入流路から前記接続流路へ液体が供給される。これにより、前記接続流路内に、前記導入流路と前記接続流路との接続位置から前記合流流路に向かって流れる流れが形成されて、前記合流流路を流れる液体が前記接続流路へと侵入することを防ぐことができ、回収対象粒子以外の微小粒子が接続流路を通って回収流路へ流れることを防ぐこともできる。前記回収工程を行う際には、上記で述べたとおり、例えば回収流路内に生じた負圧によって、回収対象粒子が、前記接続流路を通って、前記回収流路内へと回収される。
【0061】
(2-5)微小粒子分取用マイクロチップ及び微小粒子
【0062】
本技術において、「マイクロ」とは、微小粒子分取用マイクロチップに含まれる流路の少なくとも一部が、μmオーダの寸法を有すること、特にはμmオーダの横断面寸法を有することを意味する。すなわち、本技術において、「マイクロチップ」とは、μmオーダの流路を含むチップ、特にはμmオーダの横断面寸法を有する流路を含むチップをいう。例えば、μmオーダの横断面寸法を有する流路から構成されている粒子分取部を含むチップが、本技術に従うマイクロチップと呼ばれうる。例えば、粒子分取部157のうち、合流流路155の横断面は例えば矩形であり、合流流路155の幅は、粒子分取部157内において例えば100μm~500μmであり、特には100μm~300μmでありうる。合流流路155から分岐する分岐流路の幅は、合流流路155の幅よりも小さくてよい。接続流路170の横断面は例えば円形であり、接続流路170と合流流路155との接続部における接続流路170の直径は例えば10μm~60μm、特には20μm~50μmでありうる。流路に関するこれらの寸法は、微小粒子のサイズ、特には回収対象粒子のサイズに応じて適宜変更されてよい。
【0063】
微小粒子分取用マイクロチップ150は、当技術分野で既知の方法により製造されうる。例えば、当該生体粒子分取用マイクロチップ150は、所定の流路が形成された2枚以上の基板を貼り合わせることにより製造することができる。流路は、例えば2枚以上の基板(特には2枚の基板)の全てに形成されていてもよく、又は、2枚以上の基板の一部の基板(特には2枚の基板のうちの一枚)にのみ形成されていてもよい。基板を貼り合わせる時の位置の調整をより容易にするために、流路は、一枚の基板にのみ形成されていることが好ましい。例えば、図1において点線と実線で示されるように、2つの流路が、光軸方向の異なる位置で(互いに連通しないように)且つ光軸方向から見た場合に交差するように設けられている流路構造は、流路が設けられた3枚以上の基板を積層することによって作成することができる。
【0064】
微小粒子分取用マイクロチップ150を形成する材料として、当技術分野で既知の材料が用いられうる。例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、PDMS(polydimethylsiloxane)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレン、ポリスチレン、ガラス、及びシリコンが挙げられるがこれらに限定されない。特に、加工性に優れており且つ成形装置を使用して安価にマイクロチップを製造することができることから、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、及びポリプロピレンなどの高分子材料が特に好ましい。
【0065】
微小粒子分取用マイクロチップ150は、好ましくは透明である。例えば、微小粒子分取用マイクロチップ150は、少なくとも光(レーザ光及び散乱光)が通過する部分が透明であり、例えば分取判別部が透明でありうる。微小粒子分取用マイクロチップ150全体が透明であってもよい。
【0066】
なお、以上では、使い捨て可能な微小粒子分取用マイクロチップ150に上記流路群が形成されている実施態様を説明したが、本技術において、上記流路群はマイクロチップ150に形成されていなくてもよい。例えば、上記流路群は、例えばプラスチック又はガラスなどの基板内に形成されてもよい。また、上記流路群は、2次元的又は3次元的な構造を有していてもよい。
【0067】
本技術において、微小粒子は、微小粒子分取用マイクロチップ中の流路内を流れることができる寸法を有する粒子であってよい。本技術において、微小粒子は当業者により適宜選択されてよい。本技術において、微小粒子には、細胞、細胞塊、微生物、及びリポソームなどの生物学的微小粒子、並びに、ゲル粒子、ビーズ、ラテックス粒子、ポリマー粒子、及び工業用粒子などの合成微小粒子などが包含されうる。
生物学的微小粒子(生体粒子ともいう)には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)などが含まれうる。細胞には、動物細胞(血球系細胞など)および植物細胞が含まれうる。細胞は、特には血液系細胞又は組織系細胞でありうる。前記血液系細胞は、例えばT細胞及びB細胞などの浮遊系細胞であってよい。前記組織系細胞は、例えば接着系の培養細胞又は組織からばらされた接着系細胞などであってよい。細胞塊には、例えばスフェロイド及びオルガノイドなどが含まれうる。微生物には、大腸菌などの細菌類、タバコモザイクウイルスなどのウイルス類、イースト菌などの菌類などが含まれうる。さらに、生物学的微小粒子には、核酸、タンパク質、これらの複合体などの生物学的高分子も包含されうる。これら生物学的高分子は、例えば細胞から抽出されたものであってよく又は血液サンプル若しくは他の液状サンプルに含まれるものであってもよい。
合成微小粒子は、例えば有機若しくは無機高分子材料又は金属などからなる微小粒子でありうる。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、及びポリメチルメタクリレートなどが含まれうる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、及び磁性体材料などが含まれうる。金属には、金コロイド及びアルミなどが含まれうる。前記合成微小粒子は、例えばゲル粒子又はビーズなどであってよく、より特にはオリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、及び酵素から選ばれる1つ又は2つ以上の組合せが結合されたゲル粒子又はビーズであってよい。
微小粒子の形状は、球形若しくは略球形であってよく、又は非球形であってもよい。微小粒子の大きさ及び質量は、マイクロチップの流路のサイズによって当業者により適宜選択されうる。他方で、マイクロチップの流路のサイズも、微小粒子の大きさ及び質量によって適宜選択されうる。本技術において、微小粒子には、必要に応じて化学的又は生物学的な標識、例えば蛍光色素又は蛍光タンパクなど、が取り付けられうる。当該標識によって、当該微小粒子の検出がより容易になりうる。取り付けられるべき標識は、当業者により適宜選択されうる。当該標識には、微小粒子に特異的に反応する分子(例えば抗体、アプタマー、DNA、又はRNAなど)が結合しうる。
本技術の一つの実施態様に従い、前記微小粒子は生体粒子であり、特には細胞でありうる。
【0068】
(3)判定処理の詳細
【0069】
(3-1)判定処理の基本概念
【0070】
回収工程S3において、微小粒子分取装置100は、上記のとおり、回収対象粒子を回収する際に例えば微小粒子回収流路159内に負圧を発生させることによって、合流流路155から接続流路170を通って微小粒子回収流路159へと流れる流れが形成される。そのため、回収対象粒子と一緒に、回収対象粒子周囲の所定範囲内の流体(特には液体)が、微小粒子回収流路159内に回収される。当該所定範囲内(より特には回収対象粒子の進行方向における前及び後の所定範囲内)に他の粒子が存在する場合に、当該回収対象粒子を回収すると、当該他の粒子も一緒に微小粒子回収流路159内に回収される。そのため、当該他の粒子が、回収されるべきでない粒子である場合は、判定部105が当該回収対象粒子を回収しないと判定することによって、回収された粒子に占める回収対象粒子の純度を高めることができる。
【0071】
判定工程S2において、判定部105は、前記所定範囲内に他の粒子が存在するかを、分取判定される粒子への光照射により生じた光が検出された時刻と、当該粒子の前又は後を流れる他の粒子への光照射により生じた光が検出された時刻とに基づき、判定しうる。これら粒子の合流流路155内での速度は、例えば上記(2-3)で述べたとおりに特定することができる。そのため、例えば前者の時刻と後者時刻との差に基づき、判定部105は、前記所定範囲内に他の粒子が存在するかを判定することができる。より具体的には、当該差が所定の値以下であるかによって、判定部105は、前記所定範囲内に他の粒子が存在するかを判定しうる。すなわち、前記所定範囲は、時刻の差に関する前記所定の値に基づき特定された範囲であってよい。
当該所定の値は、予め特定することができ、例えば前記負圧を1回発生させた場合に、分取判定される粒子に対して他の粒子がどの程度離れていれば、当該他の粒子が微小粒子回収流路159内に回収されないかを特定することによって、前記所定の値を特定することができる。
なお、本明細書内において、前記所定の値を、「ガードタイム(Guard Time)」ともいう。また、前記所定範囲は、上記で述べた通り、前記所定の値に基づき特定することができるので、本明細書内において、語「ガードタイム」を、前記所定範囲を意味するものとして使用することもある。
【0072】
以上のとおり、判定部105は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在するか及び/又は当該他の粒子の種類に基づき、当該或る粒子を回収するかを判定しうる。そして、当該所定範囲内に他の粒子が存在する場合に、分取判定される粒子を分取しないと判定部105が判定することによって、上記で述べたとおり、回収された粒子のうちの目的粒子の純度を高めることができる。一方で、分取後処理が赤血球によって影響を受けない場合においては、赤血球は目的粒子と一緒に回収されることが許容されるにもかかわらず、目的粒子が回収されないことになり、目的粒子の回収率が下がる。そこで、目的粒子周囲の所定範囲内に、回収されることが許容される他の粒子が存在する場合において、当該目的粒子を分取することができれば、目的粒子の回収率を上げることができ、これは分取後処理の種類又は目的によっては好ましいこともある。
以下で、上記のとおりに純度を高めるための手法、及び、回収率を高めるための手法について、血液のうちから特定の白血球を分取する場合を例として説明する。
【0073】
まず、微小粒子分取装置100による血液細胞の分取を行うために、まずサンプル調製及びゲーティングが行われる。サンプル調製は、例えばフローサイトメトリーなどの技術分野において既知の手段を用いて行われてよく、サンプル調製方法は当業者により適宜選択されてよい。例えば、前記サンプル調製のために、血液に対して溶血処理が行われうる。溶血処理により、血液中の赤血球が溶血される。溶血処理は、当業者に既知の溶血剤を用いて行われてよい。
当該溶血処理によって全ての赤血球を溶血しようとすると、白血球にも影響を及ぼすことがある。そのため、当該溶血処理は、全ての赤血球が溶血される前に終了されうる。すなわち、溶血処理によって得られた血液サンプル中には、溶血されていない赤血球が存在しうる。
【0074】
前記溶血処理によって調製された血液サンプルの一部を用いて、ゲーティングが行われる。ゲーティングは、目的とする細胞(例えばT細胞)の分取が可能となるように、当業者により適宜設定されてよい。ゲーティングのために、サンプル中の細胞への光照射によって生じる散乱光及び蛍光が用いられうる。
以下で、図7を参照しながら、ゲーティングの例を説明する。当該例は、血液サンプルから、キラーT細胞及びヘルパーT細胞を選択的に回収するためのゲーティングの例である。
【0075】
前記血液サンプルを、上記(2)で説明したとおりに、微小粒子分取装置100の微小粒子分取用マイクロチップ150中に流し、光照射部101及び検出部102によって、当該血液サンプル中の各粒子への光照射により生じた光が検出される。
検出された光に関するデータを用いて、例えば図7Aに示されるように、前方散乱光(FSC)及び側方散乱光(SSC)の二次元プロット(ドットプロット)が生成される。生成された二次元プロットに対して、ゲートR1及びR5が設定される。ゲートR1は、リンパ球に対するゲートであり、且つ、ゲートR5は、赤血球に対するゲートである。ゲートR5には、赤血球だけでなく、例えば細胞デブリ又は泡などが含まれてもよい。
【0076】
ゲートR1を、CD3に基づくヒストグラムへと展開すると、例えば図7Bに示されるとおりのヒストグラムが得られる。当該ヒストグラムに対して、ゲートR2を設定する。ゲートR2は、CD3陽性の細胞、すなわちT細胞に対するゲートである。
【0077】
ゲートR2を、CD4及びCD8に基づく二次元プロットへと展開すると、例えば図7Cに示されるとおりの二次元プロットが得られる。当該二次元プロットに対して、ゲートR3及びゲートR4を設定する。ゲートR3は、CD8陽性且つCD4陰性の細胞、すなわちキラーT細胞に対するゲートである。ゲートR4は、CD8陰性且つCD4陽性の細胞、すなわちヘルパーT細胞に対するゲートである。
【0078】
以上のとおりのゲーティングによって、前記血液サンプルに含まれる細胞群は、以下のとおりの細胞集団に分けられる。
細胞集団0:以下の細胞集団1~3以外の細胞
細胞集団1:ゲートR1、R2、及びR3に属する細胞(キラーT細胞)
細胞集団2:ゲートR1、R2、及びR4に属する細胞(ヘルパーT細胞)
細胞集団3:ゲートR5に属する細胞(赤血球)
【0079】
以上のとおりのゲーティングによって、細胞集団1及び細胞集団2を分取することで、キラーT細胞及びヘルパーT細胞を高い含有割合で含む細胞集団が得られる。以下では、血液サンプルから細胞集団1及び2のいずれかに属する細胞を分取する場合について説明する。
【0080】
図8は、分取判定される細胞とその細胞周囲の所定範囲内(すなわちガードタイム内)の細胞(特にはその細胞の前又は後を流れる細胞)の有無に応じた分取判定パターンの例を示す図である。
【0081】
図8の左にある「ガードタイム内の粒子の存在例」に、ケース1~9が示されている。これらケースに関して、ガードタイム内の中心にある丸囲みされた数字が、分取判定対象である細胞を示す。この数字は、上記で述べた細胞集団に付された番号にそれぞれ対応する。また、ガードタイムの紙面左から右への方向が、分取判定される粒子の合流流路155内における進行方向である。
【0082】
図8のうち、判定パターンAは、分取判定される粒子が目的細胞であったとしても、当該細胞周囲のガードタイム内に他の粒子が存在する場合には、当該分取判定される粒子は分取しないと判定する判定パターンである。すなわち、判定パターンAは、目的細胞の純度を重視した判定パターンである。図8のうち、判定パターンBは、判定パターンAにおける目的細胞の純度を極力維持しつつ、目的細胞の回収率を向上する判定パターンである。以下で、これら判定パターンの詳細について、判定パターンAを最初に説明し、次に判定パターンBを説明する。
【0083】
判定パターンAのケース1では、分取判定される粒子は細胞集団0に属し且つガードタイム内に他の細胞が存在しないので、判定部105は、当該粒子を分取しないと判定する。
【0084】
ケース2及び3では、分取判定される粒子は細胞集団1又は2に属し(すなわちキラーT細胞又はヘルパーT細胞であり)且つガードタイム内に他の粒子が存在しないので、判定部105は、当該粒子を分取すると判定する。
【0085】
ケース4では、分取判定される粒子は細胞集団3に属し(すなわち赤血球であり)且つガードタイム内に他の粒子が存在しないので、判定部105は、当該粒子を分取しないと判定する。
【0086】
ケース5では、分取判定される粒子は細胞集団1に属するが、ガードタイム内に(分取判定される細胞の後に)細胞集団0に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であるが、当該粒子を回収すると細胞集団0に属する粒子も一緒に回収され、細胞集団0に属する粒子が回収されると、目的細胞の純度が下がる。そのため、ケース5では、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。
【0087】
ケース6では、分取判定される粒子は細胞集団1に属するが、ガードタイム内に(分取判定される細胞の前に)細胞集団0に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であるが、当該粒子を回収すると細胞集団0に属する粒子も一緒に回収される。そのため、ケース6では、ケース5と同様に、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。
【0088】
ケース7では、分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つガードタイム内に(分取判定される細胞の後に)細胞集団2に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であり、当該粒子を回収すると細胞集団2に属する粒子も一緒に回収される。細胞集団2に属する粒子は目的細胞であり、回収されることが望ましい。そのため、ケース7では、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。
【0089】
ケース8では、分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つガードタイム内に(分取判定される細胞の前に)細胞集団3に属する粒子(特には赤血球)が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であり、当該細胞を回収すると細胞集団3に属する細胞も一緒に回収される。細胞集団3に属する粒子は目的細胞でないので、当該粒子が回収されると、目的細胞の純度が下がる。そのため、ケース8では、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。
【0090】
ケース9では、分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つガードタイム内の分取判定される粒子の前及び後に、細胞集団2に属する粒子及び細胞集団3に属する粒子がそれぞれ存在する。分取判定される粒子は目的細胞であり、当該粒子を回収すると細胞集団2に属する粒子及び細胞集団3に属する粒子も一緒に回収される。細胞集団2に属する粒子は目的細胞であるが、細胞集団3に属する粒子は目的細胞でないので、当該細胞が回収されると、目的細胞の純度が下がる。そのため、ケース9では、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。
【0091】
以上で説明したとおり、判定パターンAでは、目的細胞の純度を高めるために、ケース8及び9において、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。しかしながら、上記で述べた通り、例えば細胞集団3に属する粒子が分取操作後の処理において影響を及ぼさない場合など、細胞集団3に属する粒子が目的細胞と一緒に回収されることが許容される場合には、目的細胞の回収率を高めるために、ケース8及び9においても、分取すると判定されることが好ましい。そのような判定パターンが、図8に示される判定パターンBである。判定パターンBにおいて、具体的には以下のとおりの判定が行われうる。
【0092】
ケース1~7に関して、判定パターンBでは、判定パターンAと同じように分取判定が行われる。
ケース8に関して、分取判定される粒子は目的細胞であり、当該粒子を回収すると、細胞集団3に属する粒子も一緒に回収される。細胞集団3に属する粒子は目的細胞でないが、目的細胞と一緒に回収されることが許容される。そのため、ケース8では、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。
ケース9に関して、分取判定される粒子は目的細胞であり、当該粒子を回収すると細胞集団2に属する粒子及び細胞集団3に属する粒子も一緒に回収される。細胞集団2に属する粒子は目的細胞であり、一緒に回収されることが望ましい。細胞集団3に属する粒子は目的細胞でないが回収されることが許容される。そのため、ケース9では、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。
【0093】
図8の判定パターンA及びBは、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて分取判定することによって、実現することができる。より具体的には、本技術に従い、判定部105は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含みうる。
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団。
ここで、前記関係性は、例えば、前記分取判定される粒子が属する粒子集団と前記他の粒子が属する粒子集団とに基づき特定される、前記他の粒子が進行すべき進路であってよい。
【0094】
例えば、上記で述べた細胞集団1及び2を前記(a)の粒子集団として設定し、細胞集団3を前記(b)の粒子集団として設定し、且つ、細胞集団0を前記(c)の粒子集団として設定することで、上記図8で説明した判定パターンの両方を実現することができる。
【0095】
(3-2)判定処理のフロー例(純度を重視し且つ回収率を高める判定パターン)
【0096】
以下で、図8を参照して説明した分取判定パターンBを実現するための、判定部105による分取判定処理の具体例を、図9及び10を参照しながら説明する。図9は、当該分取判定処理のフロー図の一例である。図9には、上記で述べたケース2及びケース9における当該フローに従う分取判定を説明するための模式図も示されている。図10は、当該判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータの例である。
【0097】
図9のステップS101において、判定部105は、分取判定される粒子への光照射により生じた光の特徴に関する情報を取得する。当該光の特徴に関する情報は、例えば、上記で述べたとおりに信号処理部104によって生成されたものであってよい。
【0098】
ステップS102において、判定部105は、流路内を流れる粒子への光照射によって生じた光に基づき、粒子がどの粒子集団に属するかを決定する。特には、判定部105は、ステップS101において取得した前記光の特徴に関する情報に基づき、分取判定される粒子が属する粒子集団を決定する。
具体的には、判定部105は、当該情報に基づき、当該粒子が、細胞集団0、1、2、及び3のいずれに属するかを決定する。
例えばケース2に関しては、図9に示されるとおり、判定部105は、分取判定される粒子が、細胞集団1に属すると決定する。
また、ケース9に関しても、図9に示されるとおり、判定部105は、分取判定される粒子が、細胞集団1に属すると決定する。
【0099】
ステップS103において、判定部105は、ステップS102において決定された粒子集団に基づき、分取判定される粒子の進路を特定する。判定部105は、当該特定のために、例えば、粒子集団と粒子集団に属する粒子が進行すべき進路とが関連付けられている進路割当用データを参照しうる。例えば、当該進路割当用データは、粒子集団の種類に応じて、当該粒子集団に属する粒子が進行すべき進路が、分取対象である粒子が進行する進路であるか又は分取対象でない粒子が進行する進路であるかを定義するデータでありうる。当該進路割当用データは、例えば図10に示されるような進路割当表であってよい。
【0100】
ステップS103において、具体的には、当該粒子が細胞集団1又は2に属する場合は、当該粒子の進路を、微小粒子回収流路159であると特定する。また、当該粒子が細胞集団0又は3に属する場合は、当該粒子の進路を、分岐流路158であると特定する。これら進路は、例えば符号化されていてよく、各進路に割り当てられた符号が、当該粒子に付与されてよい。例えば、図10の「進路割当表」に示されるとおり、細胞集団1又は2に属する粒子は分取対象である粒子であり、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であることが、「1」により表されてよい。また、細胞集団0又は3に属する粒子は分取対象でない粒子であり、当該粒子の進路が分岐流路158であることは、「0」により表わされてよい。このように進路が符号化されている場合、ステップS102において決定された細胞集団の種類に基づき、判定部105は、各粒子に「1」又は「0」の符号を割り当てる。
例えばケース2に関しては、分取判定される粒子は細胞集団1に属するので、図9に示されるとおり、判定部105は、図10の進路割当表を参照して、当該粒子に進路1を割り当てる。
また、ケース9に関しても、分取判定される粒子は細胞集団1に属するので、図9に示されるとおり、判定部105は、図10の進路割当表を参照して、分取判定される粒子に進路1を割り当てる。
【0101】
ステップS104において、判定部105は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に(すなわちガードタイム内に)、他の粒子が存在するかを判定する。
具体的には、判定部105は、ステップS101~103における処理の対象となった粒子の進行方向における前又は後の所定範囲内に、他の粒子が存在するかを判定する。当該判定は、分取判定される粒子への光照射により生じた光が検出された時刻と、その前及び/又は後に流れている粒子への光照射により生じた光が検出された時刻と、に基づき行われてよい。例えば、これら時刻の差の絶対値が所定の値以下である場合は、判定部105は、他の粒子が存在すると判定する。当該絶対値が所定の値よりも大きい場合は、判定部105は、他の粒子が存在しないと判定する。
【0102】
ステップS104において、判定部105は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在すると判定した場合には、処理をステップS105に進める。判定部105は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在しないと判定した場合には、処理をステップS109に進める。
例えばケース2に関しては、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在しないので、判定部105は、処理をステップS109に進める。
また、ケース9に関しては、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在するので、判定部105は、処理をステップS105に進める。
【0103】
このように、本技術の好ましい実施態様において、判定部は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在するかを判定する。そして、当該判定部は、当該所定範囲内に他の粒子が存在すると判定した場合に、ルールデータを用いた判定を行いうる。これにより、必要な場合にだけルールデータを用いた判定を行うことができ、不必要な処理を減らすことができる。
また、本例におけるフローでは、分取判定される粒子の進路の特定工程(ステップS101~S103)の後に、前記所定範囲内の他の粒子の存在判定工程(ステップS104)が行われているが、本技術に従う判定処理において、前記存在判定工程を先に行い、次に、前記特定工程が行われてもよい。
【0104】
ステップS105において、判定部105は、前記所定範囲内に存在する他の粒子が属する粒子集団を決定する。当該決定は、上記で説明したステップS101及びS102と同じように行われてよい。
例えばケース9に関して、判定部105は、分取判定される粒子の前に存在する粒子が細胞集団2に属すると決定し、且つ、分取判定される粒子の後に存在する粒子が細胞集団3に属すると決定する。
【0105】
ステップS106において、判定部105は、分取判定される粒子(すなわちステップS101~S103における処理の対象となった粒子)が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子(すなわちステップS105における処理の対象となった粒子)が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性(より具体的にはこれら粒子の関係性に基づく他の粒子の進路)が定義されているルールデータを参照して、分取判定される粒子と他の粒子との関係性を特定する。
【0106】
前記ルールデータの例が、図10に示されている。図10に示されているルールデータは、分取判定される粒子が属する細胞集団の種類と、他の粒子が属する細胞集団の種類と、に応じて、0又は1の値が特定されている(図10では下線付加された0又は1として示されている)。例えば、判定部105は、分取判定される粒子が属する細胞集団が1又は2であり(すなわち分取対象である粒子である場合)且つ他の粒子が属する細胞集団が1、2、又は3である場合は、分取判定される粒子と他の粒子との関係性が「1」であると特定し、その他の場合は、これら2つの粒子の関係性が「0」であると特定しうる。「1」は、他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であることを意味し、「0」は、他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であることを意味する。
【0107】
すなわち、前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団(本例では細胞集団3)に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路(本例では関係性1)であると定義している。このように定義されたルールデータを用いることで、例えば赤血球などの無視可能な粒子が前記所定範囲内に存在する場合に、当該粒子が目的粒子と一緒に回収されることを許容することができる。これにより、目的粒子の純度を重視し且つ回収率も向上されるように分取判定することができる。
【0108】
また、前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路(本例では関係性1)であると定義している。このように定義されたルールデータによって、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子の両方が目的粒子である場合に、これら粒子を一緒に回収することができる。
【0109】
また、前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(c)のいずれでもない粒子の粒子集団(本例では細胞集団0)に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。このように定義されたルールデータによって、回収されるべきでない粒子が、目的粒子と一緒に回収されることを防ぐことができる。
【0110】
前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団(本例では細胞集団3)に属する場合には、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属するとしても、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。
また、前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(c)のいずれでもない粒子の粒子集団(本例では細胞集団0)に属する場合にも、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属するとしても、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。
このように定義されたルールデータによって、目的粒子の純度を高めることができる。
【0111】
例えばケース9に関して、前記分取判定される粒子が属する細胞集団が「1」であり且つ前記前に存在する粒子が属する細胞集団が「2」である。そのため、判定部105は、当該ルールデータを参照して、図10に示されるとおり、前記前に存在する粒子の進路として「1」(図10では下線付加されている)を割り当てる。
また、前記分取判定される粒子が属する細胞集団が「1」であり且つ前記後に存在する粒子が属する細胞集団が「3」である。そのため、判定部105は、当該ルールデータを参照して、図10に示されるとおり、前記後に存在する粒子の進路として「1」(図10では下線付加されている)を割り当てる。
【0112】
ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された分取判定される粒子の進路と、ステップS106において特定された関係性(すなわち2つの粒子の関係性に基づく他の粒子の進路)に基づき、分取判定される粒子を分取するかを最終的に決定する。
より具体的には、判定部105は、分取判定される粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であり、且つ、他の粒子の進路も、分取対象である粒子が進行する流路である場合に、分取判定される粒子を分取すると最終的に決定する。また、判定部105は、分取判定される粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路であるが、他の粒子の進路(他の粒子が2以上存在する場合は、他の粒子のうちの少なくとも一つの進路)が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)である場合には、分取判定される粒子を分取しないと最終的に決定する。また、判定部105は、分取判定される粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路である場合には、他の粒子の進路がいずれの流路であっても、分取判定される粒子を分取しないと最終的に決定する。
このように、前記ルールデータに従う進路割当結果を考慮して、分取判定される粒子の進路を最終的に決定することで、分取判定される粒子の種類と他の粒子の種類とに応じた分取判定処理が可能となり、例えば赤血球などの無視可能な粒子の回収を許容することができる。
【0113】
例えば、ステップS103において特定された分取判定される粒子の進路が「1」であり且つステップS106において特定された関係性(特には他の粒子の進路)の全てが「1」である場合には、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。これ以外の場合(例えば、分取判定される粒子の進路が「0」である場合、及び、前記関係性のいずれか1つ以上が「0」である場合)には、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。このように判定することによって、目的外の細胞が、目的細胞と一緒に分取されることを防ぐことができる。
【0114】
例えばケース9に関して、ステップS103において特定された、分取判定される粒子の進路は「1」であり、且つ、ステップS106において特定された関係性は全て「1」である。そのため、ステップS107において、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。
【0115】
ステップS108は、ガードタイム内に他の粒子が存在しない場合における判定部105による処理の例である。ステップS108において、判定部105は、ステップS103において特定された進路に基づき、分取判定される粒子を分取するかを決定する。例えば、判定部105は、ステップS103において分取判定される粒子の進路が「1」であると特定されている場合は、当該粒子を分取すると判定し、当該粒子の進路が「0」であると特定されている場合は、当該粒子を分取しないと判定する。
【0116】
ステップS109において、判定部105は、ステップS107又はS108において得られた判定結果を、分取制御部106に送信する。例えば、分取制御部106は、分取判定される粒子を分取するとの判定結果を受信した場合は、当該粒子に対して回収工程S3を実行するよう微小粒子分取装置を駆動する。分取制御部106は、分取判定される粒子を分取しないとの判定結果を受信した場合は、当該粒子に対して回収工程S3を実行しないように微小粒子分取装置を制御する。
【0117】
以上で述べた分取判定処理を、判定部105は、分取判定される粒子のそれぞれに対して行う。
【0118】
以上の分取判定処理において用いられたルールデータによって、分取判定される粒子が前記(a)の粒子集団に属する粒子であれば、当該分取判定される粒子周囲の他の粒子が、前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団に属するとしても、当該分取判定される粒子を分取すると判定することができる。より具体的には、前記ルールデータは、分取判定される粒子が細胞集団1又は2に属し且つ他の粒子が細胞集団3に属する場合に、関係性として「1」を定義しているので、上記のような判定が可能となる。これにより、目的粒子の純度を維持しつつ、目的粒子の回収率を高めることができる。
【0119】
また、前記ルールデータは、図10に示されるような多次元データであってよく、例えば二次元マトリックスデータ又は三次元マトリックスデータであってよい。多次元データであることによって、分取判定される粒子が属する粒子集団と他の粒子が属する粒子集団との関係性を定義することが可能となる。例えば、他の粒子が1つである場合は、二次元マトリックスデータが用いられてよく、他の粒子が2つであるときは、二次元マトリックスデータ又は三次元マトリックスデータのいずれかが採用されてよい。
【0120】
(3-3)ルールデータの変更による種々の分取判定パターンの実現
【0121】
本技術において、判定部は、判定において用いられるルールデータを変更することができるように構成されていてよい。これにより、当該判定処理フローで用いられるルールデータを変更することで、例えば目的細胞の回収率を高める判定パターン及び目的細胞の純度を高める判定パターンなど、種々の判定パターンを実現することができる。これにより、装置ユーザの種々のニーズに対応することができる。
また、本技術の微小粒子分取装置は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを複数有していてよい。複数のルールデータは、例えば微小粒子分取装置の制御部に格納されていてよい。複数のルールデータは、記録媒体に格納されていてもよい。当該記録媒体は微小粒子分取装置内にあってよく又は当該装置外にあってもよい。制御部が、当該記録媒体に格納されているルールデータを取得し、粒子分取判定において使用しうる。
【0122】
また、本技術の微小粒子分取装置は、前記ルールデータを生成するルールデータ生成部をさらに備えていてよい。当該ルールデータ生成部は、例えば上記で説明した制御部103に含まれていてよい。前記ルールデータ生成部は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団に基づき、ルールデータを生成しうる。例えば、ゲーティングによって特定された粒子集団と、各粒子集団の前記(a)~(c)への割り当てと、に基づき、ルールデータを生成しうる。このようなルールデータ生成を可能とするために、好ましくは、前記微小粒子分取装置は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団を設定するためのゲーティング操作を受け付ける入力部をさらに備えていてよい。入力部の構成は、当業者により適宜設定されてよく、例えば上記で述べたとおりであってよい。そのような入力部は、例えばゲートを設定可能な入力装置(例えばマウス、タッチパッド、キーボードなど)を含んでよく、当該入力装置が、設定されるゲートを表示する表示装置と組み合わせて用いられうる。
【0123】
以下で、上記(3-1)において述べたケース1~9に関して、ルールデータの変更によって、種々の分取判定パターンが実現できることを説明する。なお、以下の分取判定パターンにおいて採用される細胞集団のゲーティングは、上記(3-1)において説明したものと同じである。
【0124】
(3-3-1)目的細胞の純度を優先した分取判定処理の例
【0125】
図11に、目的細胞の純度を重視した分取判定において用いられるルールデータの例、及び、当該ルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果の例を示す。
なお、当該分取判定結果は、上記で図8を参照して説明したものと同じである。
【0126】
図11の左上に、ルールデータが示されている。当該ルールデータは、分取判定される粒子が細胞集団1又は2に属し且つ分取判定される粒子周囲の他の粒子も細胞集団1又は2に属する場合に、当該他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路である(ルールデータ表中において下線付加された数字1で示されている)と定義している。また、当該ルールデータは、その他の場合には、当該他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路である(表中において下線付加された数字0で示されている)と定義している。図11の右上に示されている進路割当表は、図10に記載されたものと同じである。
【0127】
図11の下に、ケース1~9における分取判定結果が示されている。ケース1~9における分取判定処理を以下で説明する。
【0128】
(ケース1~4について)
【0129】
ケース1~4では、分取判定される粒子周囲の所定範囲(ガードタイム)内に他の粒子が存在しないため、ステップS104において、判定部105は処理をステップS109に進める。そのため、ステップS101~S103において判定部105により特定された進路に基づき、判定部105は、ステップS109において、分取判定される粒子を分取するかを決定する。
【0130】
例えば、ケース1及び4では、図11に示されるとおり、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「0」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が分岐流路158であると特定する。そして、ステップS109において、判定部105は、分取判定される粒子の進路に「0」が割り当てられていることに基づき、当該粒子を分取しないと判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取しないことを示す「0」(図11では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0131】
ケース2及び3では、図11に示されるとおり、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。そして、ステップS109において、判定部105は、分取判定される粒子の進路に「1」が割り当てられていることに基づき、当該粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図11では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0132】
(ケース5~9について)
【0133】
ケース5~9では、ケース1~4と異なり、分取判定される粒子周囲の所定範囲(ガードタイム)内に他の粒子が存在するため、ステップS104において、判定部105は処理をステップS105に進める。以下で各ケースについて説明する。
【0134】
ケース5に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0135】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団0に属すると特定する。
【0136】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団0に属するので、これら粒子の関係性として「0」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であると特定する。
【0137】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。ステップS103において特定された進路は「1」であるがステップS106において特定された関係性は「0」であり、全ての値が「1」でない。全ての値が「1」でないため、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取しないことを示す「0」(図11では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0138】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップ107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0139】
ケース6に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0140】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団0に属すると特定する。
【0141】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。ケース5と同様に、これら粒子の関係性として「0」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路は、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であると特定する。
【0142】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、判定部105は、ケース5と同様に、分取判定される粒子を分取しないと判定する。
【0143】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップ107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0144】
ケース7に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0145】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0146】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団2に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0147】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。ステップS103において特定された進路が「1」であり且つステップS106において特定された関係性が「1」であり、全ての値が1である。全ての値が1であるため、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図11では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0148】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0149】
ケース8に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0150】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定する。
【0151】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団3に属するので、これら粒子の関係性として「0」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であると特定する。
【0152】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、ステップS103において特定された進路が「1」であるがステップS106において特定された関係性が「0」であり、全ての値が「1」でない。全ての値が「1」でないため、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取しないことを示す「0」(図11では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0153】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0154】
ケース9に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0155】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定し、且つ、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0156】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該2つの他の粒子それぞれとの関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該後に存在する他の粒子は細胞集団3に属するので、これら粒子の関係性として「0」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該後に存在する他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であると特定する。また、判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該前に存在する他の粒子は細胞集団2に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該前に存在する他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0157】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、ステップS103において特定された進路が「1」であり且つステップS106において特定された当該分取判定される粒子と当該前に存在する他の粒子との関係性が「1」であるが、当該分取判定される粒子と当該前後に存在する他の粒子との関係性が「0」である。そのため、全ての値が1でないので、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取しないことを示す「0」(図11では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0158】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0159】
以上のとおり、図11に示されるルールデータによって、目的細胞の純度を重視した分取判定が可能となる。
【0160】
なお、図11に示されるルールデータは、以下のとおりに定義を行うものであると言い換えることができる。
前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路(本例では関係性1)であると定義している。このように定義されたルールデータによって、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子の両方が目的粒子である場合に、これら粒子を一緒に回収することができる。
前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団(本例では細胞集団3)に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。このように定義されたルールデータを用いることで、例えば赤血球などの無視可能な粒子が前記所定範囲内に存在する場合には、当該粒子が目的粒子と一緒に回収されることを防ぐことができる。これにより、目的粒子の純度を向上させることができる。
また、前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(c)のいずれでもない粒子の粒子集団(本例では細胞集団0)に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。このように定義されたルールデータによって、回収されるべきでない粒子が、目的粒子と一緒に回収されることを防ぐことができる。
【0161】
前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団(本例では細胞集団3)に属する場合には、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属するとしても、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。
また、前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(c)のいずれでもない粒子の粒子集団(本例では細胞集団0)に属する場合にも、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属するとしても、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。
このように定義されたルールデータによって、目的粒子の純度を高めることができる。
【0162】
(3-3-2)目的細胞の純度を優先した分取判定処理の他の例
【0163】
図12に、目的細胞の純度を重視した分取判定において用いられるルールデータの他の例、及び、当該ルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果の例を示す。当該ルールデータは、ガードタイム内に他の粒子が存在する場合は、分取判定される粒子を分取しないと判定するためのルールデータである。
【0164】
図12の左上に、ルールデータが示されている。当該ルールデータは、分取判定される粒子がいずれの細胞集団に属する場合においても、他の粒子の進路は、分取対象でない粒子が進行する流路である(表中において下線付加された「0」で示されている)と定義されている。すなわち、このルールデータを用いると、ガードタイム内に他の粒子が存在する場合は、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定することになる。図12の右上に示されている進路割当表は、図10において説明したものと同じである。
【0165】
図12の下に、ケース1~9における分取判定結果が示されている。ケース1~9における分取判定処理を以下で説明する。
【0166】
(ケース1~4について)
【0167】
ケース1~4では、ルールデータを参照しないので、上記(3-3-1)において説明したものと同じ分取判定結果となる。
【0168】
(ケース5~9について)
【0169】
ケース5、6、及び8では、ルールデータを参照するが、ステップS106において特定される関係性は、上記(3-3-1)において説明したものと同じである。そのため、上記(3-3-1)において説明したものと同じ分取判定結果となる。
以下で、上記(3-3-1)と異なる分取判定結果となるケース7及び9について説明する。
【0170】
ケース7に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0171】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0172】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団2に属するので、これら粒子の関係性として「0」(図12では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であると特定する。
【0173】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。ステップS103において特定された進路は「1」であるがステップS106において特定された関係性は「0」であり、全ての値が「1」でない。全ての値が「1」でないため、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取しないことを示す「0」(図12では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0174】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップ107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0175】
ケース9に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0176】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定し、且つ、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0177】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該2つの他の粒子それぞれとの関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該後に存在する他の粒子は細胞集団3に属するので、これら粒子の関係性として「0」(図12では下線付加されている)を特定し、すなわち当該後に存在する他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であると特定する。また、判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該前に存在する他の粒子は細胞集団2に属するので、これら粒子の関係性として「0」(図12では下線付加されている)を特定し、すなわち当該前に存在する他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路(分岐流路158)であると特定する。
【0178】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、ステップS103において特定された進路が「1」であるが、ステップS106において特定された当該分取判定される粒子と当該前又は後に存在する他の粒子との関係性が「0」である。そのため、全ての値が1でないので、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取しないことを示す「0」(図12では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0179】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0180】
以上のとおり、図12に示されるルールデータによっても、目的細胞の純度を重視した分取判定が可能となる。
【0181】
なお、図12に示されるルールデータは、以下のとおりに定義を行うものであると言い換えることができる。
前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に増する場合においても、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路であると定義している。このように定義されたルールデータを用いることで、1回の分取処理において、2つ以上の粒子が回収されることを防ぐことができる。このような判定処理によっても、目的粒子の純度を高めることが可能である。
【0182】
(3-3-3)目的細胞の収率を優先した分取判定処理の例
【0183】
図13に、目的細胞の収率を重視した分取判定において用いられるルールデータの例、及び、当該ルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果の例を示す。当該ルールデータは、分取判定される粒子が分取対象粒子であれば、ガードタイム内に存在する他の粒子がいずれの粒子であっても分取判定される粒子を分取すると判定するためのルールデータである。
【0184】
図13の左上に、ルールデータが示されている。当該ルールデータは、分取判定される粒子が細胞集団1又は2に属する場合において、他の粒子がいずれの細胞集団に属していても、当該他の粒子の進路は、分取対象である粒子が進行する流路である(表中において下線付加された「1」で示されている)と定義している。また、分取判定される粒子が細胞集団0又は3に属する場合において、他の粒子がいずれの細胞集団に属していても、当該他の粒子の進路は、分取対象でない粒子が進行する流路である(表中において下線付加された「0」で示されている)と定義している。すなわち、このルールデータを用いると、分取判定される粒子が分取対象である粒子であれば、ガードタイム内に存在する他の粒子の種類に関係なく、分取判定される粒子を分取すると判定することになる。図13の右上に示されている進路割当表は、図10において説明したものと同じである。
【0185】
図13の下に、ケース1~9における分取判定結果が示されている。ケース1~9における分取判定処理を以下で説明する。
【0186】
(ケース1~4について)
【0187】
ケース1~4では、ルールデータを参照しないので、上記(3-3-1)において説明したものと同じ分取判定結果となる。
【0188】
(ケース5~9について)
【0189】
ケース5に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0190】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団0に属すると特定する。
【0191】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団0に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図13では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0192】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。ステップS103において特定された進路は「1」であり且つステップS106において特定された関係性は「1」であり、全ての値が「1」である。全ての値が「1」であるため、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図13では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0193】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップ107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0194】
ケース6に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0195】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団0に属すると特定する。
【0196】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。ケース5と同様に、これら粒子の関係性として「1」(図13では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路は、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0197】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、判定部105は、ケース5と同様に、分取判定される粒子を分取すると判定する。
【0198】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップ107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0199】
ケース7に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0200】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0201】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団2に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0202】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。ステップS103において特定された進路が「1」であり且つステップS106において特定された関係性が「1」であり、全ての値が1である。全ての値が1であるため、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図13では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0203】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0204】
ケース8に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0205】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定する。
【0206】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団3に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図13では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0207】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、ステップS103において特定された進路が「1」であり且つステップS106において特定された関係性が「1」であり、全ての値が「1」である。全ての値が「1」であるため、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図13では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0208】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0209】
ケース9に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0210】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定し、且つ、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0211】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該2つの他の粒子それぞれとの関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該後に存在する他の粒子は細胞集団3に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図13では下線付加されている)を特定し、すなわち当該後に存在する他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。また、判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該前に存在する他の粒子は細胞集団2に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図11では下線付加されている)を特定し、すなわち当該前に存在する他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0212】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、ステップS103において特定された進路が「1」であり且つステップS106において特定された当該分取判定される粒子と当該前又は後に存在する他の粒子との関係性が「1」である。そのため、全ての値が1であるので、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図13では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0213】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0214】
以上のとおり、図13に示されるルールデータによって、目的細胞の収率を重視した分取判定が可能となる。
【0215】
なお、図13に示されるルールデータは、以下のとおりに定義を行うものであると言い換えることができる。
前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属する場合は、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属する場合であっても、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路(本例では関係性1)であると定義している。
前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団(本例では細胞集団3)に属する場合には、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属するとしても、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。
また、前記ルールデータは、分取判定される粒子が前記(c)のいずれでもない粒子の粒子集団(本例では細胞集団0)に属する場合にも、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属するとしても、前記他の粒子の進路は、分取対象でない粒子の進路(本例では関係性0)であると定義している。
このように定義されたルールデータによって、目的粒子の収率を高めることができる。
【0216】
(3-3-4)目的細胞の純度を重視し且つ回収率を高めるための分取判定処理の例
【0217】
図14に、目的細胞の純度を重視し且つ回収率を高めるための分取判定処理において用いられるルールデータの例、及び、当該ルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果の例を示す。当該ルールデータは、ガードタイム内の他の粒子が無視可能な粒子である場合は、分取判定において当該他の粒子を無視するように、分取判定される粒子を分取するためのルールデータである。
【0218】
図14の左上に、ルールデータが示されている。当該ルールデータは、分取判定される粒子が細胞集団1又は2に属し且つ分取判定される粒子周囲の他の粒子も細胞集団1、2、又は3に属する場合に、当該他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路である(ルールデータ表中において下線付加された数字1で示されている)と定義している。また、当該ルールデータは、その他の場合には、当該他の粒子の進路が、分取対象でない粒子が進行する流路である(表中において下線付加された数字0で示されている)と定義している。図11に記載のルールデータと図14に記載のルールデータとの相違点は、分取判定される粒子が細胞集団1又は2に属し且つ他の粒子が細胞集団3に属する場合である。
図14の右上に示されている進路割当表は、図10に記載されたものと同じである。
【0219】
図14の下に、ケース1~9における分取判定結果が示されている。ケース1~9における分取判定処理を以下で説明する。
【0220】
(ケース1~4について)
【0221】
ケース1~4では、ルールデータを参照しないので、上記(3-3-1)において説明したものと同じ分取判定結果となる。
【0222】
(ケース5~9について)
【0223】
ケース5~7では、ルールデータを参照するが、ステップS106において特定される関係性は、上記(3-3-1)において説明したものと同じである。そのため、上記(3-3-1)において説明したものと同じ分取判定結果となる。
以下で、上記(3-3-1)と異なる分取判定結果となるケース8及び9について説明する。
【0224】
ケース8に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0225】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定する。
【0226】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該他の粒子との関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団3に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図14では下線付加されている)を特定し、すなわち当該他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0227】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、ステップS103において特定された進路が「1」であり且つステップS106において特定された関係性が「1」であり、全ての値が「1」である。全ての値が「1」であるため、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図14では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0228】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0229】
ケース9に関して、ステップS103において、判定部105は、分取判定される粒子の進路として、「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が微小粒子回収流路159であると特定する。
【0230】
次に、ステップS105において、判定部105は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定し、且つ、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0231】
次に、ステップS106において、判定部105は、ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子と当該2つの他の粒子それぞれとの関係性を特定する。判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該後に存在する他の粒子は細胞集団3に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図14では下線付加されている)を特定し、すなわち当該後に存在する他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。また、判定部105は、当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該前に存在する他の粒子は細胞集団2に属するので、これら粒子の関係性として「1」(図14では下線付加されている)を特定し、すなわち当該前に存在する他の粒子の進路が、分取対象である粒子が進行する流路(微小粒子回収流路159)であると特定する。
【0232】
次に、ステップS107において、判定部105は、ステップS103において特定された進路及びステップS106において特定された関係性に基づき、分取判定される粒子を分取するかを判定する。具体的には、ステップS103において特定された進路が「1」であり、且つ、ステップS106において特定された当該分取判定される粒子と当該前又は後に存在する他の粒子との関係性が「1」である。そのため、全ての値が1であるので、判定部105は、分取判定される粒子を分取すると判定する。例えば、判定部105は、分取判定結果として、分取することを示す「1」(図14では斜体で記載されている)を、当該分取判定される粒子に割り当てる。
【0233】
次に、ステップS109において、判定部105は、ステップS107において得られた分取判定結果を、分取制御部106に送信する。
【0234】
以上のとおり、図14に示されるルールデータによって、目的細胞の純度を極力維持しつつ回収率を向上させることができる。
【0235】
なお、図14に示されるルールデータは、図10に記載のルールデータと同じである。そのため、図14に示されるルールデータは、上記(3-2)におけるステップS106に関して述べたとおりに定義を行うものであると言い換えることができる。
【0236】
(3-3-5)実施例
【0237】
上記(3-3-1)では、ケース1~9について説明した。上記で述べたゲーティングによって考えられる前記所定範囲内の粒子の存在パターンは、ケース1~9も含め、合計で292パターンある。そこで、これら292パターンの全てについて、上記(3-3-1)において説明した分取判定処理によって適切に分取判定を行うことができるかを、Microsoft社のExcelを用いて検証した。その結果、いずれのパターンについても、当該分取判定処理を行うことによって、適切に分取判定できることが確認された。
また、上記(3-3-2)~(3-3-4)において説明した分取判定処理のいずれによっても、同様の検証を行った。その結果、いずれの分取判定処理によっても、292パターンの全てについて適切に分取判定できることが確認された。
【0238】
(4)フローサイトメータとして構成された微小粒子分取装置の例
【0239】
本技術に従う微小粒子分取装置は、微小粒子を含む液滴を形成し、当該液滴の進行方向を制御することによって微小粒子の分取を行う装置として構成されてよく、例えばフローサイトメトリーを行う微小粒子分取装置として構成されてよい。図15に、本技術に従う微小粒子分取装置の構成例を示す。
【0240】
図15に示される微小粒子分取装置200は、制御部1、光照射部2、分析対象となる粒子が流れる流路が設けられたチップT、検出部3、出力部4、入力部5、及び分取部6を含む。微小粒子分取装置200は、フローサイトメトリーを行う系として構成されている。
【0241】
(4-1)光照射部
【0242】
光照射部2は、チップTの流路の所定の位置に光の照射を行うように構成されている。流路内の光照射位置を粒子が通過することで、粒子に光が照射され、その結果蛍光及び/又は散乱光が生じる。
【0243】
光照射部2は、光を出射する少なくとも一つの光源、好ましくは互いに異なる波長の光を出射する複数の光源を含む。前記光源はレーザ光源であってよいが、他の光源であってもよく、例えばLEDなどであってもよい。
【0244】
前記光源は、単一波長のレーザ光を出射するレーザ光源であってよく、例えば発振波長が固定されたレーザ光源であってよく又は発振波長が可変のレーザ光源であってもよい。これらレーザ光源の波長は発振波長を意味する。これらレーザ光源により出射されたレーザ光は、その発振波長のままで、粒子に照射されてよい。
【0245】
前記光源がレーザ光源である場合、前記光源は、半導体レーザ、アルゴンイオン(Ar)レーザ、ヘリウム-ネオン(He-Ne)レーザ、ダイ(dye)レーザ、クリプトン(Cr)レーザ、及び、半導体レーザと波長変換光学素子を組み合わせた固体レーザからなる群から選ばれるいずれかであってよく、特に好ましくは半導体レーザである。
【0246】
光照射部2が複数の光源を含む場合、光照射部2は、これら光源から出射された光が合波され、そして、合波された光が粒子に照射されるように構成されうる。光が照射される位置は、1つ以上であてよく、すなわち、光照射部2は、複数の励起光が合波されて1つ以上(例えば1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ)のスポットに照射されるように構成されてよく、当該スポットを粒子が通過するように、微小粒子分取装置200は構成されうる。
光照射部2をこのように構成するために、光照射部2はこれら複数の光を所定の位置に導くための導光光学系を含みうる。当該導光光学系は、例えば、複数の光を合波するために、例えばビームスプリッター群及びミラー群などの光学部品を含んでよい。また、前記導光光学系は、合波された励起光を集光するためのレンズ群を含んでよく、例えば対物レンズを含んでよい。
【0247】
(4-2)チップ
【0248】
チップTは、例えばフローセルとして構成されうる。チップTには流路が設けられている。チップTに設けられている流路構造は、例えば、粒子が略一列に並んで流れる流れ(特には層流)を形成するように構成されている。
【0249】
図15に示されるチップTには、流路P11、P12a、P12b、及びP13が設けられている。粒子を含むサンプル液が収容されている容器(バッグ)B1から、当該サンプル液がサンプル液流路P11に導入される。当該サンプル液は、サンプル液流路P11を主流路P13に向かって流れる。シース液を含む容器(バッグ)B2から、シース液がチップTに導入される。シース液は、2本のシース液流路P12a及びP12bを、主流路P13に向かって流れる。サンプル液流路P11とシース液流路P12a及びP12bは合流して主流路P13を形成するように構成されている。サンプル液流路P11内を送液されるサンプル液と、シース液流路P12a及びP12b内を送液されるシース液とが、前記3つの流路が合流する地点にて合流し、そして、主流路P13内を流れる。主流路P13内には、例えばサンプル液がシース液に挟み込まれた層流が流れる。当該層流中には、粒子が略一列に並んでいる。主流路P13内を並んで流れる粒子に、光照射部2によって生成された光(特にはレーザ光)が照射され、これにより生じた光が、検出部3によって検出される。
【0250】
チップTは、2次元又は3次元の流路構造を有するものであってよい。チップTは、プラスチック材料又はガラス材料から形成された基板形状を有しうる。チップT及びチップTに設けられる流路構造は、図15に示されるものに限定されず、例えばフローサイトメータに関する技術分野において既知のチップ及び流路構造が採用されてもよい。すなわち、本技術において、蛍光検出は、例えばフローサイトメータによる蛍光検出であってよい。
チップTに設けられる流路の横断面の形状は例えば円形、楕円形、又は矩形(正方形又は長方形)などであってよい。流路の横断面が円形又は楕円形である場合、その直径又は長径は、例えば1mm以下であってよく、特には10μm以上1mm以下であってよい。流路の横断面が正方形又は長方形である場合、その一辺又は長辺の長さは、例えば1mm以下であってよく、特には10μm以上1mm以下であってよい。
【0251】
チップTには、前記層流が吐出される吐出口が備えられている。チップTを振動させることによって、当該層流から液滴が形成される。形成された各液滴は、1つ又は複数の粒子を含みうる。各液滴を荷電し、荷電された液滴の進行方向を制御することによって、粒子を分取することができる。
【0252】
(4-3)分取部
【0253】
分取部6は、上記で述べたとおり、荷電された粒子含有液滴を形成し、当該液滴の進行方向を制御して分取することができるように構成されうる。例えば、分取部6は、当該液滴の形成のためにチップTを振動させる振動素子、液滴を荷電する荷電部、及び荷電された液滴の進行方向を制御する偏向板を含みうる。分取部6は、例えば後述の分取制御部によって制御されて、分取処理を実行しうる。
【0254】
前記振動素子は、チップTを振動させることによって、前記吐出口から吐出された前記層流を液滴化させる。前記振動素子は例えばピエゾ素子であってよい。前記振動素子は、チップTと一体的に構成されたものであってもよく、又は、一体的に構成されたものでなくてもよい。一体的に構成されたものでない場合、前記振動素子は、チップTと接触可能であるように配置されうる。
【0255】
前記荷電部は、前記吐出口から吐出される液滴に、正又は負の電荷を付与する。前記荷電部は、例えば、流路を送液されるサンプル液又はシース液に電気的に接触するように挿入されている電極によって液滴に電荷を付与する。
【0256】
微小粒子分取装置200は、前記振動素子の駆動電圧の周波数と、前記荷電部の電圧(チャージ電圧)の切り換えタイミングと、を同期させることにより、前記吐出口から吐出される液滴の一部にプラス又はマイナスのいずれかの電荷を付与しうる。一部の液滴には、電荷を付与されず、チャージなしとされていてもよい。
【0257】
前記偏向板は、液滴の進行方向を制御するように構成されうる。例えば、前記偏向板は、前記液滴の進路を挟んで対向するように配置された一対の偏向板であってよい。当該偏向板は、液滴に付与された電荷との間に作用する電気的な力によって、各液滴の進行方向を変化させうる。当該偏向板は、当技術分野において通常使用される電極であってよい。
【0258】
微小粒子分取装置200は、液滴を回収する複数の回収容器を交換可能に取り付けられるように構成されていてよい。当該複数の回収容器は、分取対象である粒子を回収する1つ又は複数の回収容器と、分取対象でない粒子を回収する1つ又は2以上の容器とを含みうる。前記複数の回収容器として、当技術分野において既知の容器が採用されてよい。
【0259】
(4-4)検出部
【0260】
検出部3は、光照射部2による粒子への光照射により生じた光を検出する。例えば、検出部3は、チップTの流路内を流れる粒子への光照射により生じた光を検出するように構成されていてよい。検出部3が検出する光は、例えば蛍光及び/又は散乱光を含む光であってよい。前記散乱光は、例えば前方散乱光、後方散乱光、及び側方散乱光のいずれか1つ以上であってよい。
【0261】
検出部3は、光照射部2による粒子への光照射により生じた光を検出する少なくとも一つの光検出器を備えている。各光検出器は、1以上の受光素子を含み、例えば受光素子アレイを有する。各光検出器は、例えば受光素子として、1又は複数のPMT(光電子増倍管)及び/又はフォトダイオードを含んでよく、特には1又は複数のPMTを含む。当該光検出器は、例えば複数のPMTを一次元方向に配列したPMTアレイを含みうる。
【0262】
検出部3は、光を分光する分光部を含みうる。当該分光部は、各光検出器に備えられていてよい。当該分光部は、例えば、光(例えば蛍光)を分光して、所定の検出波長が割り当てられた受光素子(例えばPMT)に、当該所定の検出波長の光を到達させるように構成されうる。
【0263】
検出部3は、蛍光測定器、散乱光測定器、透過光測定器、反射光測定器、回折光測定器、紫外分光測定器、赤外分光測定器、ラマン分光測定器、FRET測定器、及びFISH測定器から選ばれる1つ以上の測定器を含みうる。また、検出部3は、例えばCCD又はCMOSなどの2次元受光素子を含んでもよい。
【0264】
検出部3は、信号処理部を含みうる。当該信号処理部が、前記蛍光検出器により得られた電気信号をデジタル信号に変換する。当該信号処理部は、当該変換を行う装置として例えばA/D変換器を含んでよい。光検出器により検出された光信号は、当該信号処理部によりデジタル信号に変換され、そして、制御部1に送信されうる。前記デジタル信号が、制御部1により光データとして取り扱われ、後述の分取判定処理において用いられる。
【0265】
検出部3(特に光検出器)は、粒子から生成された光を検出可能な位置に配置される。例えば、図15に示されるように、検出部3は、チップT(特には主流路P13)を光照射部2と検出部3とで挟むように配置されてよく、又は、検出部3は、チップTに対して、光照射部2と同じ側に配置されてもよい。
【0266】
(4-5)制御部
【0267】
制御部1は、図15に示されるとおり、例えば判定部201及び分取制御部202を含む。
【0268】
判定部201は、光照射部による粒子への光照射により得られた光の特徴に基づき、粒子が回収対象粒子であるかを判定する。例えば、判定部201は、散乱光に基づく判定、蛍光に基づく判定、又は、画像(例えば暗視野画像若しくは/且つ明視野画像など)に基づく判定を行いうる。上記(2)における判定部105に関する説明が、判定部201にも当てはまる。
【0269】
分取制御部202は、判定部201により得られた判定結果に基づき分取部6を制御して、粒子の分取を実行させる。
【0270】
制御部1の構成例を以下で説明する。制御部1により行われる分取判定及び分取制御は例えば以下の構成により実現されうるが、制御部1の構成は以下に限定されない。
【0271】
制御部1は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM、及びROMを備えていてよい。CPU、RAM、及びROMは、バスを介して相互に接続されていてよい。バスには、さらに入出力インタフェースが接続されていてよい。バスには、当該入出力インタフェースを介して、出力部4及び入力部5が接続されうる。
【0272】
前記入出力インタフェースにはさらに、例えば通信装置、記憶装置、及びドライブが接続されていてよい。
【0273】
前記通信装置は、制御部1をネットワークに有線又は無線で接続する。前記通信装置によって、制御部1は、ネットワークを介して各種データ(例えば光データ及び/又はSRデータなど)を取得することができる。取得したデータは、例えば記憶部(図示せず)に格納されうる。前記通信装置の種類は当業者により適宜選択されてよい。
【0274】
前記記憶装置には、オペレーティング・システム(例えば、WINDOWS(登録商標)、UNIX(登録商標)、又はLINUX(登録商標)など)、本技術に従う情報処理方法を情報処理装置(又は粒子分析装置若しくは粒子分析システム)に実行させるためのプログラム及び他の種々のプログラム、並びに、光データ、SRデータ、及び他の種々のデータが格納されうる。
【0275】
前記ドライブは、記録媒体に記録されているデータ(例えば光データ及びSRデータなど)又はプログラムを読み出して、RAMに出力することができる。記録媒体は、例えば、microSDメモリカード、SDメモリカード、又はフラッシュメモリであるが、これらに限定されない。
【0276】
(4-6)出力部及び入力部
【0277】
出力部4は、各種データを出力する出力装置を含みうる。例えば分取判定の結果を出力する装置を含む。当該出力装置は、例えば表示装置(ディスプレイ)を含みうる。また、出力部4は例えば印刷装置を含みうる。前記印刷装置は、分取判定の結果を、例えば紙などの印刷媒体に印刷して出力しうる。
【0278】
入力部5は、例えばユーザによる操作を受け付ける装置である。入力部5は、例えばマウス、キーボード、又はディスプレイ(この場合ユーザ操作はディスプレイへのタッチ操作であってよい)を含みうる。入力部5は、例えば、ユーザによるゲーティング操作を受け付ける。また、入力部5は、各ゲートが前記(a)、(b)、又は(c)の粒子集団のいずれであるかを特定するユーザ操作を受け付ける。
【0279】
(5)判定処理の詳細
【0280】
(5-1)判定処理の基本概念
【0281】
本技術を上記(4)で説明した微小粒子分取装置に適用した場合における判定処理の例を、以下で説明する。
【0282】
以下で、図16を参照しながらゲーティングの例を説明する。当該例は、血液サンプルから、キラーT細胞及びヘルパーT細胞を1つの細胞集団として回収し、且つ、顆粒球及び単球を1つの細胞集団として回収するためのゲーティングの例である。
【0283】
上記(3)において述べた血液サンプルを、上記(5)で説明した微小粒子分取装置200のチップT中に流し、光照射部2及び検出部3によって、当該血液サンプル中の各粒子への光照射により生じた光が検出される。
検出された光に関するデータを用いて、例えば図16Aに示されるように、前方散乱光(FSC)及び側方散乱光(SSC)の二次元プロット(ドットプロット)が生成される。生成された二次元プロットに対して、ゲートR1、R5、及びR6を設定する。ゲートR1は、リンパ球に対するゲートであり、ゲートR5は、赤血球に対するゲートであり、ゲートR6は、顆粒球及び単球に対するゲートである。ゲートR5には、赤血球だけでなく、例えば細胞デブリ又は泡などが含まれてもよい。
【0284】
ゲートR1を、CD3に基づくヒストグラムへと展開すると、例えば図16Bに示されるとおりのヒストグラムが得られる。当該ヒストグラムに対して、ゲートR2を設定する。ゲートR2は、CD3陽性の細胞、すなわちT細胞に対するゲートである。
【0285】
ゲートR2を、CD4及びCD8に基づく二次元プロットへと展開すると、例えば図16Cに示されるとおりの二次元プロットが得られる。当該二次元プロットに対して、ゲートR3及びゲートR4を設定する。ゲートR3は、CD8陽性且つCD4陰性の細胞、すなわちキラーT細胞に対するゲートである。ゲートR4は、CD8陰性且つCD4陽性の細胞、すなわちヘルパーT細胞に対するゲートである。
【0286】
以上のゲーティングによって、前記血液サンプルに含まれる細胞群は、以下のとおりの細胞集団に分けられる。
細胞集団0:以下の細胞集団1~4以外の細胞
細胞集団1:ゲートR1、R2、及びR3に属する細胞(キラーT細胞)
細胞集団2:ゲートR1、R2、及びR4に属する細胞(ヘルパーT細胞)
細胞集団3:ゲートR5に属する細胞(赤血球)
細胞集団4:ゲートR6に属する細胞(顆粒球及び単球)
【0287】
以上のとおりのゲーティングによって、細胞集団1及び細胞集団2を1つの回収容器に分取し且つ細胞集団4をもう1つの回収容器に分取することで、キラーT細胞及びヘルパーT細胞を高い含有割合で含む細胞集団と顆粒球及び単球を高い含有割合で含む細胞集団が得られる。
【0288】
また、同図に示されるとおり、細胞集団1及び細胞集団2が回収される容器へと進行する液滴の進路はストリーム0と設定され、細胞集団4が回収される容器へと進行する液滴の進路はストリーム1と設定され、細胞集団0及び3が回収される容器へと進行する液滴の進路はストリーム2と設定されている。このように、本例では、粒子を分取するかの判定に加え、粒子の進路も判定される。すなわち、本例では、回収対象である2種以上の粒子が、2つ以上の容器へと選択的に回収される。
【0289】
以下では、血液サンプルから細胞集団1及び2のいずれかに属する細胞を分取し且つ細胞集団4に属する細胞を分取する場合について説明する。
【0290】
図17は、分取判定される細胞とその細胞周囲の所定範囲内の細胞(特にはその細胞の前又は後を流れる細胞)の有無に応じた分取判定パターンの例を示す図である。
【0291】
図17の左にある「粒子の存在パターン例」に、ケース1~9が示されている。同図中に矢印で示された「対象液滴の分取判定において考慮される範囲」が、前記所定範囲に相当する。
これらケースにおいて示される、「現在の液滴」が、分取判定される粒子を含む液滴であり、「前の液滴」が、当該現在の液滴よりも1つ先に形成された液滴であり、「後の液滴」が、当該現在の液滴よりも1つ後に形成された液滴である。
これら液滴中に存在する粒子が、丸囲みの数字で示されている。この数字は、上記で述べた細胞集団に付された番号にそれぞれ対応する。当該現在の液滴の中心に存在する液滴が、分取判定される粒子である。
【0292】
また、図17において、「対象液滴の分取判定において考慮される範囲」を規定する点線は、前の液滴及び後の液滴にかかっている。この点線により規定される範囲内に存在する、分取判定される粒子以外の粒子が、分取判定される粒子を分取するかの判定において考慮される。なお、この点線が前の液滴及び後の液滴にも点線がかかっているのは、上記微小粒子分取装置において、通常は、粒子への光照射により生じた光の検出は、液滴を形成する前に行われ、前の液滴又は後の液滴に含まれるべき粒子が、分取判定される液滴に含まれる可能性があること、及び、前の液滴又は後の液滴が、現在の液滴と一緒に分取される可能性があることを考慮したためである。
なお、前記所定範囲は、上記(3)において述べたガードタイムと同様に、当業者により適宜設定されてよい。例えば、純度が重視される分取判定処理において、前記所定範囲を液滴の進行方向に沿って広げることで、目的細胞の回収率はやや下がるが、分取判定の精度を高めることができる。反対に、前記所定範囲を狭めることで、精度はやや低くなるが、回収率を高めることができる。また、回収率を重視した分取判定処理において、前記所定範囲を液滴の進行方向に沿って広げることで、目的細胞の回収率を挙げることができる。反対に、前記所定範囲を狭めることで、目的細胞の回収率はやや低くなるが、純度を高めることができる。
【0293】
図17の判定パターン1は、分取判定される粒子が目的細胞であったとしても、当該細胞周囲の所定範囲内に他の細胞が存在する場合には、当該目的細胞は分取しないと判定される場合を説明する。すなわち、判定パターン1は、目的細胞をより高い純度で回収するための判定パターンである。図17のうち、判定パターン2は、判定パターン1における目的細胞の純度を極力維持しつつ、目的細胞の回収率が向上された判定パターンである。以下で、これら判定パターンの詳細について、判定パターン1を最初に説明し、次に判定パターン2を説明する。
【0294】
判定パターン1において、ケース1~9は以下のとおりに判定される。
【0295】
ケース1では、分取判定される粒子は細胞集団0に属し且つ前記所定範囲内に他の細胞が存在しないので、判定部201は、当該粒子を分取しないと判定し、且つ、当該粒子の進路が進路2であると判定する。
【0296】
ケース2では、分取判定される粒子は細胞集団1に属し(すなわちキラーT細胞であり)且つ前記所定範囲内に他の細胞が存在しない。そのため、判定部201は、当該粒子を分取すると判定し、且つ、当該粒子の進路が進路0であると判定する。
すると判定する。
【0297】
ケース3では、分取判定される粒子は細胞集団4に属し(すなわち顆粒球又は単球であり)且つ前記所定範囲内に他の細胞が存在しない。そのため、判定部201は、当該粒子を分取すると判定し、且つ、当該粒子の進路が進路1であると判定する。
すると判定する。
【0298】
ケース4では、分取判定される粒子は細胞集団3に属し(すなわち赤血球であり)且つガードタイム内に他の細胞が存在しないので、判定部201は、当該粒子を分取しないと判定し、且つ、当該粒子の進路が進路2であると判定する。
【0299】
ケース5では、分取判定される粒子は細胞集団1に属するが、前記所定範囲内に(分取判定される粒子の後に)細胞集団0に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であるが、当該粒子を回収するために現在の液滴を回収すると、後の液滴に含まれる細胞集団0に属する粒子も一緒に回収される可能性がある。細胞集団0に属する粒子が目的細胞と一緒に回収されると、目的細胞の純度の低下をもたらす。そのため、ケース5では、判定部201は、分取判定される粒子を分取しないと判定し、且つ、当該粒子の進路が進路2であると判定する。
【0300】
ケース6では、分取判定される粒子は細胞集団1に属するが、前記所定範囲内に(分取判定される粒子の前に)細胞集団4に属する細胞が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であるが、当該粒子を回収するために現在の液滴の分取を行うと、現在の液滴に含まれる細胞集団4に属する粒子も一緒に回収される。そのため、ケース6では、判定部201は、分取判定される細胞を分取しないと判定し、且つ、当該粒子の進路が進路2であると判定する。
【0301】
ケース7では、分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ前記所定範囲内に細胞集団2に属する粒子が存在する。分取判定される細胞は目的細胞であり、当該細胞を回収すると細胞集団2に属する細胞も一緒に回収される。細胞集団2に属する細胞は目的細胞であるので、分取判定される粒子と一緒に回収されることが望ましい。そのため、ケース7では、判定部201は、分取判定される粒子を分取すると判定し、且つ、当該粒子の進路が進路0であると判定する。
【0302】
ケース8では、分取判定される粒子は細胞集団1に属する。ケース8では、さらに、前記所定範囲内のうち、分取判定される粒子の前に細胞集団3に属する粒子(特には赤血球)が存在し、分取判定される粒子の後に細胞集団2に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であるが、当該粒子を含む液滴を回収すると、細胞集団3に属する粒子も一緒に回収される可能性がある。細胞集団3に属する細胞は目的細胞でないので、当該細胞が回収されると、目的細胞の純度が下がる。そのため、ケース8では、判定部201は、分取判定される粒子を分取しないと判定し、且つ、当該粒子の進路を進路2であると判定する。
【0303】
ケース9では、分取判定される粒子は細胞集団2に属し且つ前記所定範囲内の分取判定される粒子の後に、細胞集団3に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であるが、当該細胞を含む現在の液滴を回収すると細胞集団3に属する粒子も一緒に回収される可能性がある。細胞集団3に属する粒子は目的細胞でないので、当該細胞が分取判定される粒子と一緒に回収されると、目的細胞の純度が下がる。そのため、ケース9では、判定部105は、分取判定される粒子を分取しないと判定し、且つ、当該粒子の進路を進路2であると判定する。
【0304】
以上のとおり、判定パターン1では、目的細胞の純度を高めるために、ケース8及び9において、判定部201は、分取判定される粒子を分取しないと判定する。しかしながら、上記(3)で述べた通り、例えば細胞集団3に属する細胞が分取操作後の処理において影響を及ぼさない場合など、細胞集団3に属する粒子が目的細胞と一緒に回収されることが許容される場合には、目的細胞の回収率を高めるために、ケース8及び9においても、分取すると判定されることが好ましい。
回収率を高めるための判定パターンを、判定パターン2を参照しながら説明する。
【0305】
図17において、ケース1~7では、図17に関して説明したとおりに、判定部201は分取判定を行う。
【0306】
ケース8では、分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ前記所定範囲内のうち分取判定される粒子の前に細胞集団3に属する粒子が存在し、分取判定される粒子の後に細胞集団2に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であり、当該細胞を回収すると、細胞集団3に属する粒子も一緒に回収される。細胞集団3に属する粒子は目的細胞でないが、目的細胞と一緒に回収されることが許容される。そのため、ケース8では、判定部201は、分取判定される粒子を分取すると判定し、且つ、分取判定される粒子の進路を進路0であると判定する。
【0307】
ケース9では、分取判定される粒子は細胞集団2に属し且つ前記所定範囲内の分取判定される粒子の後に、細胞集団3に属する粒子が存在する。分取判定される粒子は目的細胞であるが、当該細胞を含む現在の液滴を回収すると細胞集団3に属する粒子も一緒に回収される可能性がある。細胞集団3に属する粒子は目的細胞でないが、目的細胞と一緒に回収することが許容される。そのため、ケース9では、判定部201は、分取判定される粒子を分取すると判定し、且つ、分取判定される粒子の進路を進路0であると判定する。
【0308】
以上で説明した判定パターン1及び判定パターン2は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて実現することができる。より具体的には、本技術に従い、判定部201は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行う。前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含みうる。
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団。
ここで、前記関係性は、より具体的には、分取判定において考慮される粒子のうちの或る粒子が、他の粒子との関係において無視可能であるかという関係性であってよい。
【0309】
上記で述べた細胞集団1及び2を前記(a)の粒子集団として設定し、細胞集団3を前記(b)の粒子集団として設定し、且つ、細胞集団0を前記(c)の粒子集団として設定することで、上記図17で説明した判定パターン1及び2の両方が可能となる。
【0310】
さらに、前記(a)~(c)の粒子集団が設定されているルールデータを用いることによって、複数種類の目的粒子を、互いに異なる複数の進路へ割り当てるように判定することもできる。これにより、1回の分取操作で、複数種類の目的粒子を、指定された複数の回収容器へと選択的に回収することもできる。
【0311】
このような複数の進路への割り当てのために、好ましくは、前記ルールデータに加えて、各粒子に割り当てられた進路の一致を判定するためのルールデータが用いられる。
【0312】
(5-2)判定処理のフロー例
【0313】
以下で、前記ルールデータを用いる分取判定処理の具体例を、図18及び19を参照しながら説明する。図18のAは、当該処理における粒子集団への進路の割り当てに関する進路割当表を示す。図18のBは、或る粒子が、他の粒子との観点から分取判定において無視可能であるかを定義するルールデータである。図18のCは、2つの粒子に割り当てられた進路の関係性に基づき分取判定される粒子の進路を定義するルールデータである。図19は、分取判定処理のフロー図の一例である。図19において、当該フロー図に加えて、上記で述べたケース8における分取判定処理を説明するための図が示されている。
【0314】
図19に示されるステップS201において、判定部201は、分取判定される粒子への光照射により生じた光の特徴に関する情報を取得する。当該光の特徴に関する情報は、例えば、上記で述べたとおりに検出部により検出された光に基づくものであってよい。
【0315】
ステップS202において、判定部201は、流路内を流れる粒子への光照射によって生じた光に基づき、粒子がどの粒子集団に属するかを決定する。特には、判定部201は、ステップS201において取得した前記光の特徴に関する情報に基づき、分取判定される粒子が属する粒子集団を決定する。具体的には、判定部201は、当該情報に基づき、当該粒子が、細胞集団0、1、2、3、及び4のうちのいずれに属するかを決定する。
例えばケース8に関しては、図19に示されるとおり、判定部201は、分取判定される粒子が細胞集団1に属すると決定する。
【0316】
ステップS203において、判定部201は、ステップS202において決定された粒子集団に基づき、分取判定される粒子の進路を特定する。判定部201は、当該特定のために、例えば、粒子集団と粒子集団に属する粒子が進行すべき進路とが関連付けられている進路割当用データを参照しうる。例えば、当該進路割当用データは、粒子集団の種類に応じて、当該粒子集団に属する粒子が進行すべき進路が、分取対象である粒子が進行する進路であるか又は分取対象でない粒子が進行する進路であるかを定義するデータでありうる。当該進路割当用データは、例えば図18に示されるような進路割当表であってよい。
【0317】
ステップS203において、具体的には、当該粒子が細胞集団1又は2に属する場合は、当該粒子の進路を、図18に示されるとおり、進路「0」であると特定する。当該粒子が細胞集団0又は3に属する場合、当該粒子の進路を進路「2」であると特定する。当該粒子が細胞集団4に属する場合、当該粒子の進路を進路「1」であると特定する。
ケース8に関しては、分取判定される粒子は細胞集団1に属するので、図19に示されるとおり、判定部201は、図18Aの進路割当表を参照して、当該粒子に進路1を割り当てる。
【0318】
進路割当表に記載された進路に関して以下で説明する。
進路0は、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が進行する進路であり、進路0へ進行した粒子は、回収容器(以下「回収容器0」という)へ回収される。
進路1は、分取対象である粒子のうち、細胞集団4に属する粒子が進行する進路であり、進路1へ進行した粒子は、他の回収容器(以下「回収容器1」という)へ回収される。
進路2は、分取対象でない粒子が進行する粒子であり、進路2へ進行した粒子は、さらに他の回収容器(以下「回収容器2」という)へ回収される。
これらの進路及び回収容器は、例えば図15に示されるように構成されうる。なお、図15は模式的な例であり、進路及び回収容器の構成は図15に記載されたものに限定されない。
【0319】
液滴の進路0、1、又は2への進行制御は、前記分取部における粒子含有液滴への電荷付与及び偏向板による偏向によって行われてよい。例えば、以下のとおりに行われる。
進路0への進行は、例えば、前記分取部において、正に荷電された粒子含有液滴の進行方向を、偏向板によって偏向することによって、行われてよい。そして、進路0の先に設けられた回収容器0に、当該粒子含有液滴が回収される。
進路1への進行は、前記分取部において、負に荷電された粒子含有液滴の進行方向を、偏向板によって偏向することによって、行われてよい。そして、進路1の先に設けられた回収容器1に、当該粒子含有液滴が回収される。
進路2への進行は、前記分取部において、荷電されていない粒子含有液滴を、偏向板によって偏向することなく直進させることによって、行われてよい。そして、進路2の先に設けられた回収容器2に、当該粒子含有液滴が回収される。
【0320】
ステップS204において、判定部201は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に、他の粒子が存在するかを判定する。
具体的には、判定部201は、ステップS201~203における処理の対象となった粒子の進行方向における前又は後の所定範囲内に、他の粒子が存在するかを判定する。当該判定は、分取判定される粒子への光照射により生じた光が検出された時刻と、その前及び/又は後に流れている粒子への光照射により生じた光が検出された時刻と、に基づき行われてよい。例えば、これら時刻の差の絶対値が所定の値以下である場合は、判定部201は、他の粒子が存在すると判定する。当該絶対値が所定の値よりも大きい場合は、判定部201は、他の粒子が存在しないと判定する。
【0321】
ステップS204において、判定部201は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在すると判定した場合には、処理をステップS205に進める。判定部201は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在しないと判定した場合には、処理をステップS209に進める。
ケース8に関して、判定部201は、前記所定範囲内に2つの粒子が存在すると判定し、処理をステップS205に進める。
【0322】
このように、本技術の好ましい実施態様において、判定部は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在するかを判定する。そして、当該判定部は、当該所定範囲内に他の粒子が存在すると判定した場合に、ルールデータを用いた判定を行いうる。これにより、必要な場合にだけルールデータを用いた判定を行うことができ、不必要な処理を減らすことができる。
また、本例におけるフローでは、分取判定される粒子の進路の特定工程(ステップS201~S203)の後に、前記所定範囲内の他の粒子の存在判定工程(ステップS204)が行われているが、本技術に従う判定処理において、前記存在判定工程を先に行い、次に、前記特定工程が行われてもよい。
【0323】
ステップS205において、判定部201は、前記所定範囲内に存在する他の粒子が属する粒子集団を決定する。当該決定は、上記で説明したステップS201及びS202と同じように行われてよい。
ケース8に関して、判定部201は、分取判定される粒子の前に存在する粒子が、細胞集団3に属すると特定し、且つ、分取判定される粒子の後に存在する粒子が、細胞集団2に属すると特定する。
【0324】
ステップS206において、判定部201は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子からなる粒子群の各粒子について、当該粒子群の他の全ての粒子それぞれとの関係性を判定する。判定部201は、前記各粒子が、前記他の全ての粒子それぞれとの関係において無視可能であるかを定義するルールデータを用いて、前記関係性の判定を行いうる。
より具合的には、まず、判定部201は、分取判定される粒子(すなわちステップS201~S203における処理の対象となった粒子)が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子(すなわちステップS105における処理の対象となった粒子)が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを参照して、前記所定範囲内の或る粒子と他の粒子との関係性を特定する。
前記関係性は、より具体的には、前記所定範囲内の或る粒子が、他の粒子に関して無視できるかという関係性であってよく、さらにより具体的には、前記所定範囲内の或る粒子が、他の粒子の分取後処理において無視できるかという関係性であってよい。当該関係性は、分取操作後の処理に応じて適宜設定されてよく、例えば分取後操作を行うユーザが当該関係性を設定し、この設定に基づきルールデータが設定されうる。
前記ルールデータの例は、図18Bに示されている「ルールデータ」の表である。図18Bに示されているルールデータは、或る粒子が属する細胞集団の種類と、他の粒子が属する細胞集団の種類と、に応じて、0又は1の値が特定されている(図18Bでは下線付加された0又は1として示されている)。「0」は、或る粒子は、他の粒子との関係において無視可能でないことを示す。「1」は、或る粒子は、他の粒子との関係において無視可能であることを示す。
例えば、判定部201は、或る粒子が属する細胞集団が1である場合において、他の粒子は、いずれの細胞集団に属する場合においても、これら粒子の関係性を「0」であると特定する。或る粒子が属する細胞集団が、0、2、及び4のいずれの場合においても、同様である。
また、判定部201は、或る粒子が属する細胞集団が3である場合において、他の粒子が、細胞集団1又は2に属するときは、これら粒子の関係性を「1」と特定し、すなわち当該或る粒子は、当該他の粒子との関係において無視可能であると特定する。また、判定部201は、或る粒子が属する細胞集団が3である場合において、他の粒子が細胞集団0、3、又は4に属するときは、これら粒子の関係性を「0」と特定し、すなわち当該或る粒子は、当該他の粒子との関係において無視可能でないと特定する。
【0325】
ケース8に関して、判定部201は、分取判定される粒子と、当該粒子の前及び後に存在する粒子のそれぞれとの関係性を特定する。判定部201は、当該分取判定される粒子が細胞集団1に属し且つ当該前に存在する粒子が細胞集団3に属するので、前記ルールデータを参照して、これら2つの粒子の関係性が「0」であると特定する。同様に、判定部201は、当該分取判定される粒子と当該後に存在する粒子との関係性が「0」であると特定する。
判定部201は、当該前に存在する粒子と、当該分取判定される粒子及び当該後に存在する粒子のそれぞれと、の関係性も特定する。判定部201は、当該前に存在する粒子が細胞集団3に属し且つ当該分取判定される粒子が細胞集団1に属するので、前記ルールデータを参照して、これら2つの粒子の関係性が「1」であると特定する。同様に、判定部201は、当該前に存在する粒子と当該後に存在する粒子との関係性が「1」であると特定する。
判定部201は、当該後に存在する粒子と、当該分取判定される粒子及び当該前に存在する粒子のそれぞれと、の関係性も特定する。判定部201は、当該後に存在する粒子が細胞集団2に属し且つ当該分取判定される粒子が細胞集団1に属するので、前記ルールデータを参照して、これら2つの粒子の関係性が「0」であると特定する。同様に、判定部201は、当該後に存在する粒子と当該前に存在する粒子との関係性が「0」であると特定する。
【0326】
すなわち、前記ルールデータは、或る粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団(本例では細胞集団3)に属し、且つ、他の粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属する場合において、前記或る粒子は、前記他の粒子との関係において無視可能であると定義している。また、前記ルールデータは、その他の場合については、或る粒子は、他の粒子との関係において無視可能でないと定義している。このように定義されたルールデータを用いることで、例えば赤血球などの無視可能な粒子が前記所定範囲内に存在する場合に、当該粒子が目的粒子と一緒に回収されることを許容することができる。これにより、目的粒子の回収率を向上させることができる。
【0327】
ステップS206において、判定部201は、さらに、各粒子について、上記で特定された関係性に基づき、分取判定において無視可能であるかを判定する。
例えば、判定部201は、或る粒子について、前記所定範囲内の他の粒子それぞれとの関係性全てが無視可能であると特定された場合に、当該或る粒子を無視可能であると判定し、この場合以外の場合に(すなわち、前記所定範囲内の他の粒子それぞれとの関係性のいずれか1つ以上が無視可能でないと特定された場合に)、当該或る粒子を無視可能でないと判定する。
ケース8に関して、分取判定される粒子について、他の2つの粒子それぞれとの観点で特定された関係性は、上記のとおりいずれも「0」である。そのため、判定部201は、当該分取判定される粒子について、「無視可能でない」と判定する。また、前記前に存在する粒子について、他の2つの粒子それぞれとの観点で特定された関係性は、上記のとおりいずれも「1」である。そのため、判定部201は、当該前に存在する粒子について、「無視可能である」と判定する。また、前記後に存在する粒子について、他の2つの粒子それぞれとの観点で特定された関係性は、上記のとおりいずれも「0」である。そのため、判定部201は、当該前に存在する粒子について、「無視可能でない」と判定する。
【0328】
ステップS207において、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された全粒子の進路を特定する。すなわち、判定部201は、ステップS206において無視可能であると判定された粒子の進路は特定されなくてよい。進路の特定は、例えば前記進路割当表を参照して行われてよい。
ケース8に関して、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された前記分取判定される粒子及び前記後に存在する粒子のそれぞれについて進路を特定する。判定部201は、前記進路割当表を参照し、分取判定される粒子の進路が進路0(図19においては「stream 0」と示されている)であると特定する。また、判定部201は、同様に、前記後に存在する粒子の進路が進路0(「stream 0」と示されている)であると特定する。
以上のとおり、本技術において、判定部は、前記関係性の判定の結果、他の全ての粒子との関係において無視可能であると判定された粒子に対しては、進路を割り当てず、且つ、当該粒子以外の粒子に対して、進路を割り当てうる。
【0329】
ステップS208において、判定部201は、ステップS207において特定された進路に基づき、分取判定される粒子の進路を最終的に決定する。これにより、分取判定される粒子が分取されるかが決定され、さらには、分取判定される粒子が回収される容器も決定される。
【0330】
ステップS207において例えば2つ以上の粒子それぞれについて進路が特定された場合(すなわち2以上の進路が特定された場合)には、ステップS208において、判定部201は、例えば図18Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定してよい。当該ルールデータは、ステップS207において特定された進路が一致する場合は、その進路が、分取判定される粒子を含有する液滴の進路であると定義し、且つ、一致しない場合には、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象でない粒子が進行する進路であると特定する。本技術において、1つの進路は1つの回収容器へと対応付けられていてよい。これにより、進路を特定することで、粒子含有液滴が回収される回収容器も特定される。
ケース8に関しては、判定部201は、ステップS207において特定された2つの粒子の進路がいずれも「0」であることに応じて、当該ルールデータを参照し、分取判定される粒子を含有する液滴の進路が、進路0であると特定する。
【0331】
ステップS209は、前記所定範囲内に他の粒子が存在しない場合における判定部201による処理の例である。ステップS209において、判定部201は、ステップS203において特定された進路を、分取判定される粒子の進路として決定する。これにより、分取判定される粒子が分取されるかが決定され、さらには、分取判定される粒子が回収される容器も決定される。
【0332】
ステップS210において、判定部201は、ステップS208又はS209において得られた判定結果を、分取制御部202に送信する。分取制御部202は、判定結果に基づき、微小粒子分取装置(特には分取部)を制御して、分取判定される粒子を含有する液滴の進行方向を特定された進路へと導く。これにより、当該特定された進路へと対応付けられた回収容器へと、分取判定される粒子が回収される。
ケース8に関しては、ステップS208において、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は進路0であると判定された。判定部201は、当該判定の結果を分取制御部202に送信する。分取制御部202は、当該判定結果に基づき、当該液滴を進路0へと導くように分取部を制御して、当該液滴の進行方向を進路0へと進行させる。これにより、当該分取判定される粒子が、回収容器0へと回収される。
【0333】
以上で述べた分取判定処理を、判定部201は、分取判定される粒子のそれぞれに対して行う。
【0334】
(5-3)ルールデータの変更による種々の分取判定パターンの実現
【0335】
微小粒子分取装置200に関しても、判定部201は、判定において用いられるルールデータを変更することができるように構成されていてよい。これにより、当該判定処理フローで用いられるルールデータを変更することで、例えば目的細胞の回収率を高める判定パターン及び目的細胞の純度を高める判定パターンなど、種々の判定パターンを実現することができる。これにより、装置ユーザの種々のニーズに対応することができる。
【0336】
以下で、上記(5-1)において述べたケース1~9に関して、ルールデータの変更によって、種々の分取判定パターンが実現できることを説明する。なお、以下の分取判定パターンにおいて採用される細胞集団のゲーティングは、上記(5-1)において説明したものと同じである。
【0337】
(5-3-1)目的細胞の純度を重視し且つ回収率を向上するための分取判定処理の例
【0338】
この分取判定処理の例を、図20及び21を参照しながら説明する。この分取判定処理は、上記で図17を参照して説明した分取判定パターン2を実現する。
【0339】
図20Aは、上記で説明したとおりの進路割当表である。図20Bは、或る粒子が他の粒子との関係の観点から分取判定において無視可能であるかを定義するルールデータである。図20Cは、進路の関係性に基づき、分取判定される粒子を含む液滴の進路を定義するルールデータである。これら図は、上記で説明した図18に記載されたものと同じである。
図21に、当該ルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果の例を示す。
【0340】
図21に、ケース1~9における分取判定結果が示されている。ケース1~9における分取判定処理を以下で説明する。
【0341】
(ケース1~4について)
【0342】
ケース1~4では、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在しないため、ステップS204において、判定部201は処理をステップS209に進める。そのため、ステップS201~S203において特定された進路に基づき、判定部201は、ステップS209において、分取判定される粒子の進路を決定決定する。
以下で各ケースについて説明する。
【0343】
ケース1では、判定部201は、ステップS202において、分取判定される粒子が、細胞集団0に属すると特定する。そして、判定部201は、ステップS203において、分取判定される粒子が細胞集団0に属すると特定されたことに基づき、当該粒子の進路として「2」を割り当て、すなわち、分取対象でない粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると特定する。そして、ステップS209において、判定部201は、ステップS203において特定された進路が、当該粒子の進路であると最終的に決定する。
【0344】
ケース2では、判定部201は、ステップS202において、分取判定される粒子が、細胞集団1に属すると特定する。そして、判定部201は、ステップS203において、分取判定される粒子が細胞集団1に属すると特定されたことに基づき、当該粒子の進路として「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。そして、ステップS209において、判定部201は、ステップS203において特定された進路が、当該粒子の進路であると最終的に決定する。
【0345】
ケース3では、判定部201は、ステップS202において、分取判定される粒子が、細胞集団4に属すると特定する。そして、判定部201は、ステップS203において、分取判定される粒子が細胞集団4に属すると特定されたことに基づき、当該粒子の進路として「1」を割り当て、すなわち、当該粒子の進路が、分取対象である粒子のうち、細胞集団4に属する粒子が回収される回収容器(回収容器1)へと進行する進路であると特定する。そして、ステップS209において、判定部201は、ステップS203において特定された進路が、当該粒子の進路であると最終的に決定する。
【0346】
ケース4では、判定部201は、ステップS202において、分取判定される粒子が、細胞集団3に属すると特定する。そして、判定部201は、ステップS203において、分取判定される粒子が細胞集団3に属すると特定されたことに基づき、当該粒子の進路として「2」を割り当て、すなわち、分取対象でない粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると特定する。そして、ステップS209において、判定部201は、ステップS203において特定された進路が、当該粒子の進路であると最終的に決定する。
【0347】
(ケース5~9について)
【0348】
ケース5~9では、ケース1~4と異なり、分取判定される粒子周囲の所定範囲(ガードタイム)内に他の粒子が存在するため、ステップS204において、判定部201は処理をステップS205に進める。
以下で各ケースについて説明する。
【0349】
ケース5に関して、ステップS203において、判定部201は、分取判定される粒子の進路として、「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。
【0350】
次に、ステップS205において、判定部201は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団0に属すると特定する。
【0351】
次に、ステップS206において、判定部201は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性が定義されているルールデータ(図20Bに示されるルールデータ)を参照して、前者の粒子と後者の粒子との関係性を特定する。
当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団0に属するので、判定部201は、前記ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子については、関係性として「0」(無視可能でない)を特定し、当該他の粒子についても、関係性として「0」(無視可能でない)を特定する。
ステップS206において、判定部201は、さらに、各粒子について、上記で特定された関係性に基づき、分取判定において無視可能であるかを判定する。上記のとおり、いずれの粒子についても「0」が特定されているので、判定部201は、いずれの粒子も無視可能でないと判定する。
【0352】
次に、ステップS207において、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された全粒子の進路を特定する。すなわち、判定部201は、当該分取判定される粒子については、進路が「0」であると特定し、当該他の粒子については、進路が「2」であると特定する。
【0353】
ステップS208において、判定部201は、ステップS207において特定された進路に基づき、分取判定される粒子の進路を最終的に決定する。具体的には、2つの進路は一致しないので、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象でない粒子が進行する進路であると特定する。
より具体的には、ステップS208において、ステップS207において、2つ以上の粒子それぞれについて進路が特定されているので、判定部201は、例えば図20Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「2」である場合に、最終的な進路は「2」(図20Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象でない粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0354】
次に、ステップS210において、判定部201は、ステップ208において得られた分取判定結果を、分取制御部202に送信する。
【0355】
ケース6に関して、ステップS203において、判定部201は、分取判定される粒子の進路として、「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。
【0356】
次に、ステップS205において、判定部201は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団4に属すると特定する。
【0357】
次に、ステップS206において、判定部201は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性が定義されているルールデータ(図20Bに示されるルールデータ)を参照して、前者の粒子と後者の粒子との関係性を特定する。
当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団4に属するので、判定部201は、前記ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子については、関係性として「0」(無視可能でない)を特定し、当該他の粒子についても、関係性として「0」(無視可能でない)を特定する。
ステップS206において、判定部201は、さらに、各粒子について、上記で特定された関係性に基づき、分取判定において無視可能であるかを判定する。上記のとおり、いずれの粒子についても「0」が特定されているので、判定部201は、いずれの粒子も無視可能でないと判定する。
【0358】
次に、ステップS207において、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された全粒子の進路を特定する。すなわち、判定部201は、当該分取判定される粒子については、進路が「0」であると特定し、当該他の粒子については、進路が「1」であると特定する。
【0359】
ステップS208において、判定部201は、ステップS207において特定された進路に基づき、分取判定される粒子の進路を最終的に決定する。具体的には、2つの進路は一致しないので、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象でない粒子が進行する進路であると特定する。
より具体的には、ステップS208において、2つ以上の粒子それぞれについて進路がステップS207において特定されているので、判定部201は、例えば図20Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「1」である場合に、最終的な進路は「2」(図20Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象でない粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0360】
次に、ステップS210において、判定部201は、ステップ208において得られた分取判定結果を、分取制御部202に送信する。
【0361】
ケース7に関して、ステップS203において、判定部201は、分取判定される粒子の進路として、「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。
【0362】
次に、ステップS205において、判定部201は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0363】
次に、ステップS206において、判定部201は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性が定義されているルールデータ(図20Bに示されるルールデータ)を参照して、前者の粒子と後者の粒子との関係性を特定する。
当該分取判定される粒子は細胞集団1に属し且つ当該他の粒子は細胞集団2に属するので、判定部201は、前記ルールデータを参照し、当該分取判定される粒子については、関係性として「0」(無視可能でない)を特定し、当該他の粒子についても、関係性として「0」(無視可能でない)を特定する。
ステップS206において、判定部201は、さらに、各粒子について、上記で特定された関係性に基づき、分取判定において無視可能であるかを判定する。上記のとおり、いずれの粒子についても「0」が特定されているので、判定部201は、いずれの粒子も無視可能でないと判定する。
【0364】
次に、ステップS207において、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された全粒子の進路を特定する。すなわち、判定部201は、当該分取判定される粒子については、進路が「0」であると特定し、当該他の粒子については、進路が「0」であると特定する。
【0365】
ステップS208において、判定部201は、ステップS207において特定された進路に基づき、分取判定される粒子の進路を最終的に決定する。具体的には、2つの進路は一致しているので、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が進行する進路であると特定する。
より具体的には、ステップS208において、ステップS207において、2つ以上の粒子それぞれについて進路が特定されているので、判定部201は、例えば図20Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「0」である場合に、最終的な進路は「0」(図20Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路として「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0366】
次に、ステップS210において、判定部201は、ステップ208において得られた分取判定結果を、分取制御部202に送信する。
【0367】
ケース8に関して、ステップS203において、判定部201は、分取判定される粒子の進路として、「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。
【0368】
次に、ステップS205において、判定部201は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定し、且つ、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0369】
次に、ステップS206において、判定部201は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性が定義されているルールデータ(図20Bに示されるルールデータ)を参照して、前者の粒子と後者の粒子との関係性を特定する。
前記分取判定される粒子(細胞集団1に属する)に関しては、前記前に存在する粒子との関係は、前記ルールデータより「0」であり、且つ、前記後に存在する粒子との関係も、前記ルールデータより「0」である。そのため、判定部201は、前記分取判定される粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能でないと判定する。
前記前に存在する粒子(細胞集団3に属する)に関しては、前記分取判定される粒子との関係は、前記ルールデータより「1」であり、且つ、前記後に存在する粒子との関係も、前記ルールデータより「1」である。そのため、判定部201は、前記前に存在する粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能であると判定する。
前記後に存在する粒子(細胞集団2に属する)に関しては、前記分取判定される粒子との関係は、前記ルールデータより「0」であり、且つ、前記前に存在する粒子との関係も、前記ルールデータより「0」である。そのため、判定部201は、前記前に存在する粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能でないと判定する。
【0370】
次に、ステップS207において、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された全粒子(すなわち、前記分取判定される粒子及び前記後に存在する粒子)の進路を特定する。すなわち、判定部201は、前記分取判定される粒子については、進路が「0」であると特定し、前記後に存在する粒子についても、進路が「0」であると特定する。
【0371】
ステップS208において、判定部201は、ステップS207において特定された進路に基づき、分取判定される粒子の進路を最終的に決定する。具体的には、2つの進路は一致しているので、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が進行する進路であると特定する。
より具体的には、ステップS208において、ステップS207において、2つの粒子それぞれについて進路が特定されているので、判定部201は、例えば図20Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「0」である場合に、最終的な進路は「0」(図20Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路として「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0372】
次に、ステップS210において、判定部201は、ステップ208において得られた分取判定結果を、分取制御部202に送信する。
【0373】
ケース9に関して、ステップS203において、判定部201は、分取判定される粒子の進路として、「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。
【0374】
次に、ステップS205において、判定部201は、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定する。
【0375】
次に、ステップS206において、判定部201は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性が定義されているルールデータ(図20Bに示されるルールデータ)を参照して、前記2つの粒子との関係性を特定する。
前記分取判定される粒子(細胞集団1に属する)に関しては、前記後に存在する粒子との関係は、前記ルールデータより「0」である。そのため、判定部201は、前記分取判定される粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能でないと判定する。
前記後に存在する粒子(細胞集団3に属する)に関しては、前記分取判定される粒子との関係は、前記ルールデータより「1」である。そのため、判定部201は、前記後に存在する粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能であると判定する。
【0376】
次に、ステップS207において、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された全粒子(すなわち、前記分取判定される粒子のみ)の進路を特定する。すなわち、判定部201は、前記分取判定される粒子については、進路が「0」であると特定する。
【0377】
ステップS208において、判定部201は、ステップS207において特定された進路に基づき、分取判定される粒子の進路を最終的に決定する。
より具体的には、ステップS208において、ステップS207において、前記分取判定される粒子についてだけ進路が特定されているので、判定部201は、当該特定された進路「0」を最終的な進路であると最終的に決定する。
【0378】
次に、ステップS210において、判定部201は、ステップ208において得られた分取判定結果を、分取制御部202に送信する。
【0379】
以上のとおり、図20に示される無視可能であるかに関する関係性を定義するルールデータを用いることで、図17を参照して説明した分取判定パターン2を実現することができ、目的細胞の純度を重視し且つ目的細胞の回収率が向上された分取判定処理が可能となる。
【0380】
なお、前記ルールデータは、以下のとおりに定義を行うものであると言い換えることもできる。
前記ルールデータは、前記所定範囲内の或る粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団(本例では細胞集団3)に属し、且つ、他の粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団(本例では細胞集団1又は2)に属する場合において、前記或る粒子は、前記他の粒子との関係において無視可能であると定義している。また、前記ルールデータは、その他の場合については、或る粒子は、他の粒子との関係において無視可能でないと定義している。このように定義されたルールデータを用いることで、例えば赤血球などの無視可能な粒子が前記所定範囲内に存在する場合に、当該粒子が目的粒子と一緒に回収されることを許容することができる。これにより、目的粒子の回収率を向上させることができる。
【0381】
(5-3-2)目的細胞の純度を重視した分取判定処理の例
【0382】
この分取判定処理の例を、図22及び23を参照しながら説明する。この分取判定処理は、目的細胞の純度を重視したものであり、上記で図17を参照して説明した分取判定パターン1を実現する。
【0383】
図22Aは、上記で説明したとおりの進路割当表である。図22Bは、或る粒子が他の粒子との関係の観点から分取判定において無視可能であるかを定義するルールデータである。図22Cは、進路の関係性に基づき、分取判定される粒子を含む液滴の進路を定義するルールデータである。
図23に、当該ルールデータを用いて分取判定を行った場合の分取判定結果の例を示す。
【0384】
図23に、ケース1~9における分取判定結果が示されている。ケース1~9における分取判定処理を以下で説明する。
【0385】
(ケース1~4について)
【0386】
ケース1~4において、上記(5-3-1)においてケース1~4に関して述べた処理と同じ処理が行われ、同じ処理結果が得られる。
【0387】
(ケース5~9について)
【0388】
ケース5~7についても、上記(5-3-1)においてケース5~7に関して述べた処理と同じ処理が行われ、同じ処理結果が得られる。
【0389】
ケース8及び9に関しては、上記(5-3-1)と異なる判定処理が行われる。以下でこれらのケースに関して説明する。
【0390】
ケース8に関して、ステップS203において、判定部201は、分取判定される粒子の進路として、「0」を割り当て、すなわち、分取対象である粒子のうち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。
【0391】
次に、ステップS205において、判定部201は、分取判定される粒子の前に存在する他の粒子が細胞集団3に属すると特定し、且つ、分取判定される粒子の後に存在する他の粒子が細胞集団2に属すると特定する。
【0392】
次に、ステップS206において、判定部201は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、当該粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じた、これら粒子の関係性が定義されているルールデータ(図22Bに示されるルールデータ)を参照して、前者の粒子と後者の粒子との関係性を特定する。図22Bのルールデータは、図20Bのものと異なり、「1」が存在しない。そのため、このルールデータを採用する場合は、無視可能であると判定される粒子は生じない。
前記分取判定される粒子(細胞集団1に属する)に関しては、前記前に存在する粒子との関係は、前記ルールデータより「0」であり、且つ、前記後に存在する粒子との関係も、前記ルールデータより「0」である。そのため、判定部201は、前記分取判定される粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能でないと判定する。
前記前に存在する粒子(細胞集団3に属する)に関しては、前記分取判定される粒子との関係は、前記ルールデータより「0」であり、且つ、前記後に存在する粒子との関係も、前記ルールデータより「0」である。そのため、判定部201は、前記前に存在する粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能でないと判定する。
前記後に存在する粒子(細胞集団2に属する)に関しては、前記分取判定される粒子との関係は、前記ルールデータより「0」であり、且つ、前記前に存在する粒子との関係も、前記ルールデータより「0」である。そのため、判定部201は、前記前に存在する粒子について、他の粒子との関係において、分取判定において無視可能でないと判定する。
【0393】
次に、ステップS207において、判定部201は、ステップS206において無視可能でないと判定された全粒子(すなわち、前記分取判定される粒子、前記前に存在する粒子、及び前記後に存在する粒子)の進路を特定する。すなわち、判定部201は、前記分取判定される粒子については、進路が「0」であると特定し、前記後に存在する粒子についても、進路が「0」であると特定する。一方で、前記後に存在する粒子については、進路が「2」であると特定する。
【0394】
ステップS208において、判定部201は、ステップS207において特定された進路に基づき、分取判定される粒子の進路を最終的に決定する。具体的には、3つの進路は一致していないので、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象でない粒子が進行する進路「2」を割り当て、すなわち、分取対象でない粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0395】
次に、ステップS210において、判定部201は、ステップ208において得られた分取判定結果を、分取制御部202に送信する。
【0396】
以上のとおり、図22に示される無視可能であるかに関する関係性を定義するルールデータを用いることで、図17を参照して説明した分取判定パターン1を実現することができ、目的細胞の純度を高めることができる。
【0397】
なお、前記ルールデータは、以下のとおりに定義を行うものであると言い換えることもできる。
前記ルールデータは、前記所定範囲内の或る粒子が前記(a)~(c)のいずれの粒子集団に属する場合においても、前記或る粒子は、前記他の粒子との関係において無視可能でないと定義している。このように定義されたルールデータを用いることで、目的粒子の純度を高めることができる。
【0398】
(5-3-3)分取判定において考慮される範囲を狭めた分取判定処理の例
【0399】
上記(5-3-1)及び(5-3-2)では、分取判定において考慮される粒子が存在する範囲は、分取判定される粒子を含む液滴だけでなく、その前後の液滴の一部も含むように設定されている。これは、当該前後の液滴に含まれるべき粒子が、分取判定される粒子を含む液滴に含まれる可能性があり、その可能性を排除して、目的粒子の純度を高めるためである。しかしながら、純度の高さよりも、回収率が重視される場合がある。そのような場合には、前記範囲を狭めてもよい。前記範囲を狭めることによって、目的粒子の回収率を高めることができる。そのような場合の例として、以下で図24及び25を参照しながら、前記範囲を、分取判定される粒子を含む液滴を含むが、その前後の液滴を含まないように設定した場合の分取判定処理の結果を説明する。
【0400】
図24は、前記分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータであり、これらは、上記(5-3-2)において説明したものと同じである。図25は、前記分取判定処理の結果を示す図である。図25において示されるとおり、同図中の分取判定において考慮される粒子が存在する範囲は、上記(5-3-2)において説明した図23中の分取判定において考慮される粒子が存在する範囲よりも狭められている。
【0401】
(ケース1~4について)
【0402】
ケース1~4において、上記(5-3-2)においてケース1~4に関して述べた処理と同じ処理が行われ、同じ処理結果が得られる。
【0403】
(ケース5~9について)
【0404】
ケース5について、前記範囲が狭められたことにより、上記(5-3-2)において述べた場合と異なり、ステップS204において、判定部201は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在しないため、処理をステップS209に進める。その結果、ケース5の分取判定処理結果は、ケース2と同じになる。これにより、上記(5-3-2)においては廃棄された目的粒子が、ケース5においても、目的粒子が回収容器0に回収される。
【0405】
ケース6及び7については、前記範囲が狭められているが、分取判定において考慮される粒子に変化はないので、上記(5-3-2)と同じ分取判定処理が行われ、同じ処理結果が得られる。
【0406】
ケース8に関しては、前記範囲が狭められたことにより、上記(5-3-2)において述べた場合と異なり、ステップS204において、判定部201は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在しないため、処理をステップS209に進める。その結果、ケース8の分取判定処理結果は、ケース2と同じになる。これにより、上記(5-3-2)においては廃棄された目的粒子が、ケース5においても、目的粒子が回収容器0に回収される。
【0407】
ケース9に関しても、前記範囲が狭められたことにより、上記(5-3-2)において述べた場合と異なり、ステップS204において、判定部201は、分取判定される粒子周囲の所定範囲内に他の粒子が存在しないため、処理をステップS209に進める。
【0408】
ケース9では、ステップS201~S203において、分取判定される粒子は、細胞集団2に属すると判定され、そして、当該粒子の進路は「0」であると特定されている。そのため、ステップS209において、判定部201は、分取判定される粒子の進路が「0」であると最終的に決定し、すなわち、細胞集団1及び2に属する粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると特定する。
【0409】
(5-3-4)目的細胞の回収率を重視した分取判定処理の例
【0410】
上記(5-3-2)では、目的細胞の純度を重視した分取判定処理を説明した。ステップS208において参照されるルールデータを変更することで、目的細胞の回収率を高めることもできる。以下で、図26及び27を参照しながら、目的細胞の回収率を高める分取判定処理について説明する。
【0411】
図26は、前記分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータである。
図26A及びBの進路割当表及びルールデータは、上記(5-3-2)において説明したものと同じである。
図26Cに示されるルールデータが、上記(5-3-2)において説明したものと異なる。図26Cにおいて、優先順位は、進路0が最も優先され、次に進路1が優先され、進路2は最も優先されていない。すなわち、前記範囲内に、進路0が割り当てられた粒子が含まれる場合は、前記範囲内に進路1又は2が割り当てられた粒子が含まれるとしても、分取判定される粒子を含む液滴の進路は0であると定義されている。前記範囲内に、進路1に割り当てられた粒子と進路2に割り当てられた粒子とが存在する場合には、分取判定される粒子を含む液滴の進路は1であると定義されている。前記範囲内に、進路2に割り当てられた粒子だけが存在する場合にのみ、分取判定される粒子を含む液滴の進路は2であると定義されている。
【0412】
(ケース1~4について)
【0413】
ケース1~4において、上記(5-3-2)においてケース1~4に関して述べた処理と同じ処理が行われ、同じ処理結果が得られる。
【0414】
(ケース5~9について)
【0415】
ケース5について、ステップS201~S207は、上記(5-3-2)と同じ処理が行われる。
ステップS208において、判定部201は、図26Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「2」である場合に、最終的な進路は「0」(図26Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0416】
ケース6についても、ステップS201~S207は、上記(5-3-2)と同じ処理が行われる。
ステップS208において、判定部201は、図26Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「1」である場合に、最終的な進路は「0」(図26Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0417】
ケース7についても、ステップS201~S207は、上記(5-3-2)と同じ処理が行われる。
ステップS208において、判定部201は、図26Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「0」である場合に、最終的な進路は「0」(図26Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0418】
ケース8についても、ステップS201~S207は、上記(5-3-2)と同じ処理が行われる。
ステップS208において、判定部201は、図26Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。前記範囲内に含まれる粒子に割り当てられた進路は「0」及び「2」である。2つの粒子に割り当てられた2つの進路が「0」及び「0」である場合、「0」及び「2」である場合、「2」及び「0」である場合のいずれについても、最終的な進路は「0」(図26Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0419】
ケース9に関しても、ステップS201~S207は、上記(5-3-2)と同じ処理が行われる。
ステップS208において、判定部201は、図26Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。前記範囲内に含まれる粒子に割り当てられた進路は「0」及び「2」である。2つの粒子に割り当てられた2つの進路が「0」及び「2」である場合、最終的な進路は「0」(図26Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が回収される回収容器(回収容器0)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0420】
(5-3-5)分取判定において考慮される範囲内に1つの粒子が含まれている場合にだけ分取すると判定する分取判定処理の例
【0421】
本技術に従い、分取判定において考慮される範囲内に1つの粒子が含まれている場合にだけ分取すると判定することもできる。このような判定によって、目的細胞の純度をさらに高めることができる。このような判定を行う判定処理を、図28及び29を参照しながら説明する。
【0422】
図28は、前記分取判定処理において用いられる進路割当表及びルールデータである。図28Aの進路割当表及び図28Bのルールデータは、上記(5-3-2)において説明したものと同じである。図28Cのルールデータは、2つの粒子にそれぞれ割り当てられた進路がいずれの進路であっても、最終的な進路として「2」を定義している。これにより、2つ以上の粒子が前記範囲内に含まれる場合は、分取判定される粒子を含む液滴の進路は、分取対象でない粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると最終的に決定される。
【0423】
図29は、上記ケース1~9について、前記ルールデータを用いる判定処理結果を説明するための図である。図29では、分取判定において考慮される粒子が存在する範囲が、分取判定される粒子を含む液滴だけでなく、その前後の液滴の全てを含むように設定されている。これは、目的粒子の純度をさらに高めるためである。
【0424】
(ケース1~4について)
【0425】
ケース1~4において、上記(5-3-2)においてケース1~4に関して述べた処理と同じ処理が行われ、同じ処理結果が得られる。
【0426】
(ケース5~9について)
【0427】
ケース5~9について、ステップS201~S207は、上記(5-3-2)と同じ処理が行われる。
ステップS208において、判定部201は、図26Cに示されるルールデータを参照して、分取判定される粒子を含有する液滴の進路を最終決定する。
例えばケース5に関して、当該ルールデータでは、一方の粒子の進路が「0」であり且つ他方の粒子の進路が「2」である場合に、最終的な進路は「2」(図28Cでは、下線付加された斜体で記載されている)であると定義されている。そのため、判定部201は、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると最終的に決定する。
その他のケースに関しても、判定部201は、当該ルールデータを参照して、最終的な進路を「2」と特定し、すなわち、分取判定される粒子を含有する液滴の進路は、分取対象である粒子が回収される回収容器(回収容器2)へと進行する進路であると最終的に決定する。
【0428】
2.第2の実施形態(微小粒子分取方法)
【0429】
本技術は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて、粒子の分取判定を実行する判定工程を含む微小粒子分取方法も提供する。これらの粒子が属しうる粒子集団は、以下の粒子集団を含む。
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団。
前記判定工程を実行することによって、上記1.で述べたとおり、高い回収率で目的とする分取対象粒子の回収することが可能である。
【0430】
好ましくは、前記(c)の粒子集団の無視可能な粒子は赤血球を含む。これにより、上記1.において述べたように、前記判定工程において、赤血球を無視することができ、これにより、例えば培養又は遺伝子操作などの分取処理後操作に影響を及ぼすことを防ぎつつ、目的細胞の回収率を高めることができる。
【0431】
本技術の微小粒子分取方法における前記判定工程は、上記1.において図10及び19を参照して説明した処理フローのとおりに行われてよい。以下ではまず、これら2つの処理フローに共通する工程を説明する。次に、これら処理フローのそれぞれに特有の工程について説明する。
【0432】
(1)前記2つの処理フローに共通する工程
【0433】
前記判定工程は、分取判定される粒子が属する粒子集団を決定する粒子集団決定工程を含みうる。この工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS102、及び、図19を参照して説明したステップS202に対応する。これらステップに関する説明が、前記存在判定工程について当てはまる。
【0434】
さらに、前記判定工程は、当該決定された粒子集団に基づき、分取判定される粒子の進路を仮決定する仮決定工程を含みうる。当該仮決定工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS103、及び、図19を参照して説明したステップS203に対応する。これらステップに関する説明が、前記仮決定工程について当てはまる。
【0435】
本技術の好ましい実施態様において、前記判定工程は、前記所定範囲内に他の粒子が存在するかを判定する存在判定工程を含む。当該存在判定工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS104、及び、図19を参照して説明したステップS204に対応する。これらステップに関する説明が、前記存在判定工程について当てはまる。
【0436】
本技術の好ましい実施態様において、前記判定工程は、前記仮決定工程において仮決定された進路を、分取判定される粒子の進路であるとして最終決定する最終決定工程を含みうる。この最終決定工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS108、及び、図19を参照して説明したステップS209に対応する。これらステップに関する説明が、前記最終決定工程について当てはまる。
【0437】
本技術の好ましい実施態様において、前記判定工程は、前記他の粒子が属する粒子集団を決定する粒子集団決定工程を含む。当該粒子集団決定工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS105、及び、図19を参照して説明したステップS205に対応する。これらステップに関する説明が、前記粒子集団決定工程について当てはまる。
【0438】
本技術の好ましい実施態様において、前記判定工程は、前記ルールデータを参照して、前記所定範囲内に存在する複数の粒子間の関係性を特定する関係性特定工程を含む。当該関係性特定工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS106、及び、図10を参照して説明したステップS206に対応する。これらステップに関する説明が、前記関係性特定工程について当てはまる。
【0439】
(2)図10の処理フローに特有の工程
【0440】
本技術の一つの実施態様において、前記関係性特定工程において、前記ルールデータを参照して、分取判定される粒子が属する粒子集団と他の粒子が属する粒子集団との関係性が特定される。このように関係性を特定する関係性特定工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS106に相当する。
【0441】
本技術の一つの実施態様において、前記判定工程は、前記仮決定工程において決定された進路と、前記関係性特定工程において特定された関係性とに基づき、分取判定される粒子を分取するかを決定する最終決定工程を含む。当該最終決定工程は、上記1.において図10を参照して説明したステップS107に相当する。
【0442】
(3)図19の処理フローに特有の工程
【0443】
本技術の他の実施態様において、前記関係性特定工程において、前記ルールデータを参照して、前記所定範囲内に存在するすべての粒子それぞれについて、他の粒子との関係性が特定されうる。このように関係性を特定する関係性特定工程は、図19を参照して説明したステップS206に相当する。この実施態様において、特定される関係性は、各粒子が、他の粒子の存在の観点から、分取判定において無視可能であるかという関係性であってよい。
【0444】
前記他の実施態様において、前記微小粒子分取方法は、前記関係性特定工程において無視可能でないと判定された粒子の全てについて、当該粒子が進行すべき進路を、当該粒子が属する粒子集団に基づき特定する進路特定工程をさらに含む。当該進路特定工程は、図19におけるステップS207に相当する。当該進路特定工程において、前記関係性特定工程において無視可能であると判定された粒子については、当該粒子の進行すべき流路は特定されなくてよい。
【0445】
前記他の実施態様において、前記進路特定工程において特定された進路に基づき、分取判定される粒子を含む液滴の進路を最終決定する最終決定工程を含む。当該最終決定工程は、図19におけるステップS208に相当する。
前記進路特定工程において2以上の進路が特定された場合、前記最終決定工程において、当該2以上の進路に基づき、分取判定される粒子を含む液滴の進路を定義するルールデータが用いられてよい。当該ルールデータは、当該2以上の進路が一致する場合は、前記液滴の進路は、当該一致した進路であると定義し、当該2以上の進路が一致しない場合は、当該液滴に進路は、分取対象でない粒子が進行する進路(例えば廃棄される粒子が進行する進路)であると定義するものであってよい。
【0446】
3.第3の実施形態(プログラム)
【0447】
本技術は、上記2.において述べた微小粒子分取方法を微小粒子分取装置に実行させるためのプログラムも提供する。当該プログラムは、本技術の微小粒子分取装置に備えられているハードディスクに格納されていてよく、又は、例えばmicroSDメモリカード、SDメモリカード、又はフラッシュメモリなどの記録媒体に記録されていてもよい。例えば、前記微小粒子分取装置の制御部が、当該プログラムに従い、当該微小粒子分取装置に本技術の微小粒子分取方法を実行させうる。
【0448】
4.第4の実施形態(微小粒子分取システム)
【0449】
本技術は、上記1.において述べた分取判定を行う判定部を含む微小粒子分取判定システムも提供する。当該システムは、例えば、当該分取判定において用いられるルールデータを生成するルールデータ生成部をさらに含みうる。当該ルールデータ生成部は、例えばユーザにより入力された前記(a)~(c)の粒子集団に関する設定に基づき、ルールデータを生成しうる。前記(a)~(c)の粒子集団に関する設定は、例えばゲーティング又はこれに準ずる設定であってよい。当該ルールデータ生成部は、前記粒子集団に関する設定に加えて、目的粒子の純度及び/又は回収率に関する設定に基づき、ルールデータを生成してよい。
【0450】
なお、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
〔1〕
粒子の分取判定を実行する判定部を備えており、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取装置。
〔2〕
前記判定部は、前記判定において用いられるルールデータを変更することができ、
前記判定部が利用可能なルールデータのうちの少なくとも一つが、
分取判定される粒子が前記(a)の分取対象である粒子の粒子集団に属し且つ前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が前記(b)の無視可能な粒子の粒子集団に属する場合において、前記他の粒子の進路は、分取対象である粒子の進路である、
と定義している、
〔1〕に記載の微小粒子分取装置。
〔3〕
前記微小粒子分取装置は、前記ルールデータを生成するルールデータ生成部をさらに備えており、
前記ルールデータ生成部は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団に基づき、ルールデータを生成する、〔1〕又は〔2〕に記載の微小粒子分取装置。
〔4〕
前記微小粒子分取装置は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団を設定するためのゲーティング操作を受け付ける入力部をさらに備えている、〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔5〕
前記判定部は、流路内を流れる粒子への光照射によって生じた光に基づき、粒子がどの粒子集団に属するかを決定する、〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔6〕
血液細胞の分取を行うために用いられる、〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔7〕
血液細胞のうちから所定のT細胞を選択的に分取するために用いられる、〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔8〕
前記ルールデータは、多次元データである、〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔9〕
前記ルールデータは、二次元マトリックスデータである、〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔10〕
前記判定部は、前記所定範囲内に、前記分取判定される粒子及びその他の1以上の粒子が存在する場合に前記判定を行う、〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の微小粒子分取装置。
〔11〕
粒子の分取判定を実行する判定部を備えており、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含む、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団、
微小粒子分取装置。
〔12〕
前記判定部は、前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子からなる粒子群の各粒子について、当該粒子群の他の全ての粒子それぞれとの関係性を判定する、〔1〕~〔11〕のいずれか一つ請求項1に記載の微小粒子分取装置。
〔13〕
前記判定部は、前記各粒子が、前記他の全ての粒子それぞれとの関係において無視可能であるかを定義するルールデータを用いて、前記関係性の判定を行う、〔12〕に記載の微小粒子分取装置。
〔14〕
前記判定部は、前記関係性の判定の結果、他の全ての粒子との関係において無視可能であると判定された粒子に対しては、進路を割り当てず、且つ、当該粒子以外の粒子に対して、進路を割り当てる、〔13〕に記載の微小粒子分取装置。
〔15〕
前記判定部は、割り当てられた進路に応じて前記分取判定される粒子の進路が定義されているルールデータを用いて、当該粒子の進路を判定する、〔14〕に記載の微小粒子分取装置。
〔16〕
分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて、粒子の分取判定を実行する判定工程を含み、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取方法。
〔17〕
分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて、粒子の分取判定を実行する判定工程を含み、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取方法を、微小粒子分取装置に実行させるためのプログラム。
〔18〕
粒子の分取判定を実行する判定部と、
当該分取判定において用いられるルールデータを生成するルールデータ生成部と、
を含み、
前記判定部は、分取判定される粒子が属する粒子集団と、前記粒子周囲の所定範囲内の他の粒子が属する粒子集団と、に応じて、これら粒子の関係性が定義されているルールデータを用いて前記判定を行い、
前記分取判定される粒子及び前記所定範囲内の他の粒子が属しうる粒子集団は、以下の(a)~(c)の粒子集団を含み、
(a)分取対象である粒子の粒子集団、
(b)分取対象でないが前記判定において無視可能な粒子の粒子集団、及び
(c)前記分取対象である粒子及び前記無視可能な粒子のいずれでもない粒子の粒子集団
且つ、
前記無視可能な粒子は赤血球を含む、
微小粒子分取システム。
【符号の説明】
【0451】
100 微小粒子分取装置
101 光照射部
102 検出部
103 制御部
105 判定部
150 微小粒子分取用マイクロチップ
200 微小粒子分取装置
1 制御部
2 光照射部
3 検出部
201 判定部
T チップ

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
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