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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017709
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】通風筒
(51)【国際特許分類】
   B63J 2/10 20060101AFI20220119BHJP
   B63G 8/36 20060101ALI20220119BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B63J2/10
B63G8/36 A
E04B1/70 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120414
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 健二郎
(72)【発明者】
【氏名】柏 幸伸
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA04
2E001FA35
2E001KA01
2E001NA07
2E001NB01
2E001NC02
2E001ND11
(57)【要約】
【課題】立壁の損傷が無く、経年後の錆や摩耗による動作不良等を解消した通風筒を提供する。
【解決手段】立壁に取付けられる通風筒本体1と、通風筒本体1の開口部を閉蓋するカバー2と、カバー2を開閉自在に支持するヒンジ3とからなる通風筒Aであって、カバー2には係合ピン24が取付けられており、ヒンジ3には、係合ピン24を掛止しておくフック5が設けられている。通風筒本体1は湾曲した筒体であって、先端が下向きに開口している。開蓋状態のカバー2は垂れ下がって揺れ動く状態となりやすいが、係合ピン24とフック5によって揺れを止められるので、カバー2によって立壁の塗装を剥がすような損傷を防止できる。立壁にフック5を取付ける必要がなく、狭い空間にでもカバー2付きの通風筒Aを設置できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立壁に取付けられる通風筒本体と、
該通風筒本体の開口部を閉蓋するカバーと、
該カバーを開閉自在に支持するヒンジとからなる通風筒であって、
前記カバーには係合ピンが取付けられており、
前記ヒンジには、前記係合ピンを掛止しておくフックが設けられている
ことを特徴とする通風筒。
【請求項2】
前記通風筒本体が湾曲した筒体であって、該通風筒本体の先端が下向きに開口している
ことを特徴とする請求項1記載の通風筒。
【請求項3】
前記ヒンジは、前記通風筒本体に取付けられたヒンジ板と、ヒンジピンとからなり、
前記ヒンジ板には、前記ヒンジピンを挿入する上下方向に長い長孔が形成されており、
前記フックは、前記ヒンジピンを前記長孔内で上方に動かすと前記係合ピンの入退出を許容し、前記ヒンジピンを前記長孔内で下降させると前記係合ピンを嵌入状態に保持するものである
ことを特徴とする請求項2記載の通風筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通風筒に関する。さらに詳しくは、本発明は、船舶や家屋等の立壁に取付けられる通風筒に関する。
【背景技術】
【0002】
通風筒は、非特許文献1に示すように、船舶の船倉、機関室、居室、倉庫等に自然通風させるための筒体である。通風筒は甲板や天井、垂直に立った立壁に取付けられる。荒天の際を考慮して通風筒の先端には開閉可能なカバーが取付けられる。
【0003】
特許文献1の図4に示す従来技術を、本件願書に添付の図4および図5に基づき説明する。通風筒100は、立壁110に取付けた通風筒であって、湾曲した筒本体101の基部が立壁110に溶接され、先端が下向きに開口している。先端開口部には、荒天時に閉鎖するためのカバー102が開閉自在に取付けられている。カバー102の基部のヒンジピン103はヒンジ板104に形成された長孔105に入れられ、カバー102の先端部は蝶ナット付きのロックボルト106で支持される。一方、立壁110にはフック111が取付けられている。
図5に示すように、開蓋したときのカバー102の下端部は立壁110に予め取付けておいたフック111に引っ掛けられるようになっている。
【0004】
ところが、この従来技術では、フック111を取付けるスペースが無いときは、フック無しでカバー102を垂らしておくことになり、その場合はカバー102が船の揺れによって立壁110に衝突し、塗装を剥がしてしまう問題があった。
また、フック111を取付けるスペースがあったとしても、通風筒の設置の際には、カバー102を通風筒先端から垂らしてカバー102の先端位置を現場で確認し、現場でフック111を立壁110に溶接付けするといった手間のかかる工数が必要であった。このため、製造工数が増えるという問題があった。
【0005】
特許文献1の図1および図2に示す従来技術は、カバーを連結するヒンジ構造を工夫してフックが無くともカバーと立壁との衝突を防止できるようにしたものである。具体的には、ヒンジ軸を断面四角形の角棒とし、ヒンジ板の一部に四角形の角形凹部を形成したものである。このヒンジ構造によれば、角棒のヒンジ軸をヒンジ板の角形凹部に嵌めると、ヒンジ軸は回転しないので、カバーの揺れも止めることができる。
【0006】
ところが、この従来技術では、長期にわたる海洋上での使用により錆が付いたり、摩耗が生ずるとヒンジ軸の角形凹部への出し入れが困難になったり、ヒンジ軸の角の摩耗によりカバーの揺れを防止できなくなる等の不具合が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-1150号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】基本船舶学(船体編) 203~204頁 平成14年6月18日 改訂初版発行 上野喜一郎著 株式会社成山堂書店
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、立壁に損傷が生じず、経年後の錆や摩耗による動作不良等を解消できる通風筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の通風筒は、立壁に取付けられる通風筒本体と、該通風筒本体の開口部を閉蓋するカバーと、該カバーを開閉自在に支持するヒンジとからなる通風筒であって、前記カバーには係合ピンが取付けられており、前記ヒンジには、前記係合ピンを掛止しておくフックが設けられていることを特徴とする。
第2発明の通風筒は、第1発明において、前記通風筒本体が湾曲した筒体であって、該通風筒本体の先端が下向きに開口していることを特徴とする。
第3発明の通風筒は、第2発明において、前記ヒンジは、前記通風筒本体に取付けられたヒンジ板と、ヒンジピンとからなり、前記ヒンジ板には、前記ヒンジピンを挿入する上下方向に長い長孔が形成されており、前記フックは、前記ヒンジピンを前記長孔内で上方に動かすと前記係合ピンの入退出を許容し、前記ヒンジピンを前記長孔内で下降させると前記係合ピンを嵌入状態に保持するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、カバーを開蓋状態で保持しておくフックが通風筒を構成するヒンジに設けられているため、現場作業で立壁にフックを取付ける必要がなく、かつ狭い空間にでもカバー付きの通風筒を設置できる。
第2発明によれば、開口が下向きの通風筒では、開蓋状態ではカバーは垂れ下がって揺れ動く状態となりやすいが、係合ピンとフックによって揺れを止められるので、カバーが揺れ動くことによって立壁の塗装を剥がすような損傷を防止できる。
第3発明によれば、ヒンジ板内の長孔内でヒンジピンを上下させることで係合ピンをフックに入退出させたり嵌入させることができるので、カバーの開閉操作が容易に行える。また、ヒンジピンと長孔、および係合ピンとフックは錆や摩耗による動作不良が生じにくいので耐久性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る通風筒Aの閉蓋時の状態説明図である。
図2図2はヒンジ部の拡大図であって、Iは閉蓋時、IIは係止作業時、IIIは開蓋時の説明図である。
図3図1の通風筒Aにおける開蓋時の状態説明図である。
図4】従来技術の通風筒における閉蓋時の状態説明図である。
図5図5の通風筒における開蓋時の状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1図3に基づき本発明の一実施形態に係る通風筒Aを説明する。
110は船室、船倉、機関室等の内外を仕切る立壁である。本明細書でいう立壁とは、甲板上で垂直に立っている壁をいい、甲板や天井のように水平な壁を含まない。通風筒Aを取付けた側(図1では左側)は立壁110の外側であり、その反対側(図1では右側)は船室等の内側となる。立壁110の一部には通風用の孔112が形成されており、その孔112の回りであって、立壁110の外側に本実施形態の通風筒Aが取付けられる。
【0014】
通風筒Aは通風筒本体1とカバー2とヒンジ3とロックボルト4とからなる。
通風筒本体1は湾曲した筒体で、基端部11の開口面と先端部12の開口面が直角に交わるように曲げられている。基端部11は、立壁110の通風用の孔112を取り囲むように固定されている。固定する手段は任意でよく、溶接やフランジを介してのボルト付けなどを採用できる。
【0015】
通風筒本体1の先端部12は下向きに開口している。先端部12にはカバー2が開閉自在に取付けられている。カバー2は、荒天時の海水の侵入を防止するためのものであり、金属板で作られた円形の基板21とその上面に取付けられたゴムや樹脂材料などの弾性材料22からなる。
カバー2の一方の縁部(図1中の右側)はヒンジ3に連結されており、カバー2は開蓋状態と閉蓋状態が可能なように揺動自在に支持されている。このヒンジ3の詳細は後述する。カバー2の他方の縁部(図1中の左側)は閉蓋状態のときロックボルト4で支持されるようになっている。
【0016】
図1及び図2(I)に基づき、ヒンジ3の詳細を説明する。ヒンジ3は、ヒンジ板31とヒンジピン32からなる。ヒンジ板31は通風筒本体1の先端部12の外側に溶接等で固定されている。ヒンジ板31には上下方向に延びる長孔33が形成されている。
一方、カバー2の一方の縁部には、取付板23を介してヒンジピン32を固定している。ヒンジピン32は丸棒状のピンであり、ヒンジ板31に形成された長孔33に挿入されている。ヒンジピン32は長孔33内で自在に回転できるので、カバー2を揺動自在に支持できる。
【0017】
前記ヒンジ板31の下端には、フック5が取付けられている。このフック5は工場内生産工程でヒンジ板31と共に製造できるので、現場での取付け作業に比べ生産効率が高い。
フック5は側面視でJ字形をしており、上端部分はヒンジ板31との結合部51、下端部分はピン受け部52となっている。ピン受け部52は、結合部51につながる垂直部と湾曲した底部と底部から立ち上った立上り部52aが連続して形成された形状である。
一方、カバー2の取付板23には係合ピン24が取付けられていて、この係合ピン24はフック5のピン受け部52に嵌るようになっている。
【0018】
図1および図3に基づき、ロックボルト4を説明する。ロックボルト4はボルト41と蝶ナット42とからなり、通風筒本体1の先端部12の外側に取付けたブラケット43に軸支されている。
一方、カバー2の図1中左側には取付板25が固定されている。取付板25には切欠き(図示省略)が形成されており、ボルト41を通せるようになっている。
図1に示すように、切欠きにボルト41を通して蝶ナット42を締め付けるとカバー2を閉蓋状態に保持でき、図3に示すように、蝶ナット42を緩めるとカバー2を下向きに降ろした開蓋状態にできる。
【0019】
図2に基づき、カバー2の開閉操作を説明する。(I)図はカバー2の閉蓋状態であるので、ロックボルト4(図3参照)を外して、カバー2を自由に揺動する状態とする。ついで、(II)図に示すように、ヒンジピン32をヒンジ板31の長孔33内で押し上げる。そうすると、係合ピン24がフック5におけるピン受け部52の立上がり部52aを乗り越えることができる。そして、(III)図に示すように、カバー2を若干降ろすと係合ピン24がフック5におけるピン受け部52の底部に嵌り込む。
【0020】
この状態で、図3に示すように、カバー2は立壁110から離れた状態に保持される。
ヒンジピン32は長孔33内で横方向の動きを拘束され、係合ピン24はフック5内で横方向の動きを拘束されているので、カバー2は略垂直に保持された姿勢を保つことになる。
【0021】
カバー2を図3に示す開蓋状態から図1に示す閉蓋状態にするには、図2に示す手順を逆にすればよい。つまり、図2において、(III)→(II)→(I)の順でカバー2を動かすと容易にカバー2を外し閉蓋状態にできる。
【0022】
つぎに、本実施形態の通風筒Aの利点を説明する。
(1)ヒンジ板31内の長孔33内でヒンジピン32を上下させることで係合ピン24をフック5に退出させたり嵌入させることができるので、カバー2の開閉操作が容易に行える。また、ヒンジピン32と長孔33、および係合ピン24とフック5は錆の付着や摩耗があったとしても動作不良が生じにくいので耐久性が高い。
(2)開口が下向きの通風筒Aでは、開蓋状態ではカバー2は垂れ下がって揺れ動く状態となりやすいが、係合ピン24とフック5によって揺れを止められるので、カバー2が揺れ動くことによって立壁110の塗装を剥がすような損傷を防止できる。
(3)カバー2を開蓋状態で保持しておくフック5が通風筒Aを構成するヒンジ3に設けられているため、現場作業で立壁110にフック5を取付ける必要がなく、かつ狭い空間にでもカバー2付きの通風筒Aを設置できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の通風筒Aは主に船舶で使用されるが、一般家屋、移動式の家屋、キャンピングカーなどの自動車にも適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 通風筒本体
2 カバー
3 ヒンジ
4 ロックボルト
5 フック
11 基端部
12 先端部
21 基板
22 弾性材料
24 係合ピン
31 ヒンジ板
32 ヒンジピン
33 長孔
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立壁に取付けられる通風筒本体と、
該通風筒本体の先端に形成された開口部を開閉するカバーと、
該カバーを揺動自在に支持するヒンジとからなる通風筒であって、
前記通風筒本体が湾曲した筒体であって、該通風筒本体の先端部の開口面が下向きに開口しており、
前記カバーは、前記開口面を閉蓋した状態から垂れ下がらせたとき前記開口面を開蓋でき、
前記カバーには係合ピンが取付けられており、
前記ヒンジには、前記係合ピンを掛止しておくフックが設けられており、
前記ヒンジは、前記通風筒本体に取付けられたヒンジ板と、前記カバーに取付けられたヒンジピンとからなり、
前記ヒンジ板には、前記ヒンジピンが挿入されている上下方向に長い長孔が形成されており、
前記フックは、前記カバーを垂れ下がらせた状態で、前記ヒンジピンを前記長孔内で上方に動かすと前記係合ピンの入退出を許容し、前記ヒンジピンを前記長孔内で下降させると前記係合ピンを嵌入状態にし、前記カバーを垂れ下がらせた状態に保持するものである
ことを特徴とする通風筒
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
第1発明の通風筒は、立壁に取付けられる通風筒本体と、該通風筒本体の先端に形成された開口部を開閉するカバーと、該カバーを揺動自在に支持するヒンジとからなる通風筒であって、前記通風筒本体が湾曲した筒体であって、該通風筒本体の先端部の開口面が下向きに開口しており、前記カバーは、前記開口面を閉蓋した状態から垂れ下がらせたとき前記開口面を開蓋でき、前記カバーには係合ピンが取付けられており、前記ヒンジには、前記係合ピンを掛止しておくフックが設けられており、前記ヒンジは、前記通風筒本体に取付けられたヒンジ板と、前記カバーに取付けられたヒンジピンとからなり、前記ヒンジ板には、前記ヒンジピンが挿入されている上下方向に長い長孔が形成されており、前記フックは、前記カバーを垂れ下がらせた状態で、前記ヒンジピンを前記長孔内で上方に動かすと前記係合ピンの入退出を許容し、前記ヒンジピンを前記長孔内で下降させると前記係合ピンを嵌入状態にし、前記カバーを垂れ下がらせた状態に保持するものであることを特徴とする
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
第1発明によれば、つぎの効果を奏する。
a)カバーを開蓋状態で保持しておくフックが通風筒を構成するヒンジに設けられているため、現場作業で立壁にフックを取付ける必要がなく、かつ狭い空間にでもカバー付きの通風筒を設置できる。
b)開口が下向きの通風筒では、開蓋状態ではカバーは垂れ下がって揺れ動く状態となりやすいが、係合ピンとフックによって揺れを止められるので、カバーが揺れ動くことによって立壁の塗装を剥がすような損傷を防止できる。
c)ヒンジ板内の長孔内でヒンジピンを上下させることで係合ピンをフックに入退出させたり嵌入させることができるので、カバーの開閉操作が容易に行える。また、ヒンジピンと長孔、および係合ピンとフックは錆や摩耗による動作不良が生じにくいので耐久性が高い。