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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177124
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】熱転写シートの融着方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/44 20060101AFI20221122BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20221122BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20221122BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20221122BHJP
   B41M 5/392 20060101ALI20221122BHJP
   B41J 17/38 20060101ALI20221122BHJP
   B41J 31/00 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B41M5/44 410
B41M5/40 440
B41M5/42 410
B41M5/382 420
B41M5/40 400
B41M5/392 400
B41J17/38 A
B41J31/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144393
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2018069848の分割
【原出願日】2018-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】今倉 禄浩
(72)【発明者】
【氏名】福井 大介
(72)【発明者】
【氏名】黒田 浩一郎
(57)【要約】
【課題】画像形成時に被転写体に悪影響を与えることなく、且つ、画像形成後の熱転写シートから情報が漏洩することを防止できる熱転写シートを提供すること。
【解決手段】基材1の一方の面に、プライマー層2、染料層3がこの順で設けられ、前記基材の他方の面に背面層5が設けられた熱転写シートであって、前記プライマー2層が、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂と、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とを含有しており、前記プライマー層2の総質量に対する、前記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が、5質量%以上60質量%以下であり、前記背面層5がリン酸エステルを含有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写シートの融着方法であって、
熱転写シートを使用して熱転写画像を形成し、
次いで、前記熱転写シートの染料層と背面層が重なるように、前記熱転写シートをロール状に巻き取り、
次いで、加熱部を備えた融着装置を使用し、前記ロール状に巻き取った熱転写シートを加熱して、前記染料層と前記背面層とを融着させ、
前記熱転写画像の形成に使用する前記熱転写シートが、基材の一方の面に、プライマー層、染料層がこの順で設けられ、前記基材の他方の面に背面層が設けられ、前記プライマー層が、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂と、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とを含有しており、前記プライマー層の総質量に対する、前記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が、5質量%以上60質量%以下であり、前記背面層がリン酸エステルを含有している、熱転写シートである、
熱転写シートの融着方法。
【請求項2】
前記コロイド状無機粒子が、アルミナゾル、又はコロイダルシリカである、
請求項1に記載の熱転写シートの融着方法。
【請求項3】
前記熱転写画像の形成に使用する前記熱転写シートが、
前記基材の一方の面に、前記染料層と面順次に転写層が設けられ、
前記転写層が、剥離層、及びヒートシール層がこの順で積層されてなる積層構造を呈し、
前記ヒートシール層が、ポリエステルを含有している、熱転写シートである、
請求項1又は2に記載の熱転写シートの融着方法。
【請求項4】
前記熱転写画像の形成に使用する前記熱転写シートの前記染料層が、シリコーン含有化合物を含む、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の熱転写シートの融着方法。
【請求項5】
前記熱転写画像の形成に使用する前記熱転写シートの前記染料層の総質量に対する、前記シリコーン含有化合物の含有量が、0.05質量%以上5質量%以下である、
請求項4に記載の熱転写シートの融着方法。
【請求項6】
前記熱転写画像の形成に使用する前記熱転写シートの前記背面層の総質量に対する、前記リン酸エステルの含有量が、5質量%以上30質量%以下である、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱転写シートの融着方法。
【請求項7】
前記融着装置が、熱転写画像を形成できる画像形成手段を備えており、
前記融着装置が備える前記画像形成手段で、前記熱転写画像を形成する、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱転写シートの融着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートの融着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印画物の製造には、染料層を有する熱転写シートを用い、昇華型熱転写方式により、カードや、熱転写受像シート等の被転写体に画像を形成する画像形成方法が広く用いられている。昇華型熱転写方式を用いた画像形成方法では、熱転写シートにエネルギーを印加し、染料層が含有している染料(昇華性染料)を、被転写体側に移行させることで、被転写体上に画像を形成できる。ところで、このような画像形成方法には、画像形成後の熱転写シートの染料層に、被転写体に形成された画像に対応するパターンが、印画痕として残り、画像形成後の熱転写シートの染料層に残っている印画痕から、被転写体上に形成された画像を容易に特定できてしまうといった問題が内在している。したがって、染料層を有する熱転写シートを用い、被転写体に、画像として、ID情報などの秘匿すべき情報を形成する場合には、画像形成後の熱転写シートの取り扱いに注意が必要となる。本件特許出願人は、以前からこの問題の解決に取り組んでおり、例えば特許文献1に記載するような技術を開発している。
【0003】
また、このような熱転写シートには、被転写体上に画像を形成するときに、被転写体に悪影響を与えない機能が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-126510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、このような状況下においてなされたものであり、画像形成時に被転写体に悪影響を与えることなく、且つ、画像形成後の熱転写シートから情報が漏洩することを防止できる熱転写シートの融着方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本開示の実施の形態に係る熱転写シートは、基材の一方の面に、プライマー層、染料層がこの順で設けられ、前記基材の他方の面に背面層が設けられた熱転写シートであって、前記プライマー層は、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂と、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とを含有しており、前記プライマー層の総質量に対する、前記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が、25質量%以上45質量%以下であり、前記背面層がリン酸エステルを含有している。
一実施形態の熱転写シートは、基材の一方の面に、プライマー層、染料層がこの順で設けられ、前記基材の他方の面に背面層が設けられた熱転写シートであって、前記プライマー層は、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂と、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とを含有しており、前記プライマー層の総質量に対する、前記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が、5質量%以上60質量%以下であり、前記背面層がリン酸エステルを含有している。
【0007】
また、上記の熱転写シートにおいて、前記コロイド状無機粒子が、アルミナゾル、又はコロイダルシリカであってもよい。
【0008】
また、上記の熱転写シートにおいて、前記基材の一方の面に、前記染料層と面順次に転写層が設けられ、前記転写層が、剥離層、及びヒートシール層がこの順で積層されてなる積層構造を呈し、前記ヒートシール層が、ポリエステルを含有していてもよい。
【0009】
また、上記の熱転写シートにおいて、前記染料層が、シリコーン含有化合物を含んでもよい。また、上記の熱転写シートにおいて、前記染料層の総質量に対する、前記シリコーン含有化合物の含有量が、0.05質量%以上5質量%以下であってもよい。また、上記の熱転写シートにおいて、前記背面層の総質量に対する、前記リン酸エステルの含有量が、5質量%以上30質量%以下であってもよい。
一実施形態の熱転写シートの融着方法は、上記の熱転写シートを使用して熱転写画像を形成し、次いで、前記熱転写シートの前記染料層と前記背面層が重なるように、前記熱転写シートをロール状に巻き取り、次いで、加熱部を備えた融着装置を使用し、前記ロール状に巻き取った熱転写シートを加熱して、前記染料層と前記背面層とを融着させる。
また、前記融着装置が、熱転写画像を形成できる画像形成手段を備えており、前記融着装置が備える前記画像形成手段で、前記熱転写画像を形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の熱転写シートの融着方法によれば、画像形成時に被転写体に悪影響を与えることなく、且つ、画像形成後の熱転写シートから情報が漏洩することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図3】本開示の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
図4】本開示の熱転写シートの融着方法に用いる、融着装置の拡大図である。
図5】(a)は、被転写体上に形成された画像を示す平面図であり、(b)は、画像形成後の熱転写シートの染料層の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は多くの異なる態様で実施でき、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各層の厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0013】
<<熱転写シート>>
以下に、本開示の実施の形態に係る熱転写シート(以下、本開示の熱転写シートと言う)について図面を用いて具体的に説明する。
【0014】
本開示の熱転写シート100は、図1図3に示すように、基材1の一方の面上に、プライマー層2、染料層3がこの順で設けられ、基材の他方の面上に背面層5が設けられた構成を呈している。なお、図1図3は、本開示の熱転写シートの一例を示す概略断面図である。
【0015】
染料層を有する熱転写シートを用いた画像の形成(印画物の製造)は、当該熱転写シートと、カード基材や、熱転写受像シート等の被転写体とを組み合わせ、熱転写シートにエネルギーを印加し、染料層が含有している染料を、被転写体側に移行することにより行う。この方法に用いられた画像形成後の熱転写シート(使用後の熱転写シートと言う場合もある)の染料層には、被転写体50に形成した画像55のパターンに対応する印画痕30(抜け殻と言う場合もある)が存在する(図5(b)参照)。この場合、画像形成後の熱転写シートの染料層の印画痕30をみるだけで、被転写体50上に形成された画像55(図5(a)参照)がいかなるものであるかを特定できる。したがって、被転写体上に形成される画像のパターンに、個人情報や、ID情報などの秘匿すべき情報が含まれる場合には、画像形成後の熱転写シートの取り扱いが重要となる。なお、図5(a)は、被転写体上に形成された画像を示す平面図であり、(b)は、画像形成後の染料層の平面図である。
【0016】
画像形成後の熱転写シートから、秘匿すべき情報が特定されることを防止するための一つの手段として、画像形成後の熱転写シートを、例えば、巻き取りローラにより巻き取り、この状態において融着処理をすることにより、基材の一方の面上に設けられた染料層と、基材の他方の面側とを融着させる方法がある。ところで、熱転写シートの染料層には、本来的に、画像形成時に、被転写体と染料層とが融着する異常転写を防止できる機能が求められており、従来の熱転写シートでは、基材の一方の面に設けられた染料層と、基材の他方の面側とを十分に融着させることができない。また、融着が不十分である場合には、融着した画像形成後の熱転写シートを剥がすことで、再度、染料層に存在する印画痕を視認でき、結果的に、被転写体に形成された画像のパターンを特定できる。
【0017】
ここで、本開示の熱転写シート100は、プライマー層2が、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂と、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とを含有している。換言すれば、プライマー層2は、少なくともカチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョンと、コロイド状無機粒子とを含む組成物からなる。また、プライマー層2の総質量に対する、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が5質量%以上60質量%以下である。さらに、本開示の熱転写シート100は、背面層5が、リン酸エステルを含有している。
【0018】
本開示の熱転写シート100によれば、画像形成後の熱転写シート100を、例えば、巻き取りローラにより巻き取り、この状態において融着処理をすることで、染料層3と、背面層5とを強固に融着できる。これにより、融着させた後の熱転写シートから、再度、染料層3を剥がすことを困難にでき、また、剥がした場合には、その強固な融着により、染料層3を破断させることができる。これにより、画像形成後の熱転写シート100から、被転写体上に形成された画像のパターンが特定されることを防止できる。特に、本開示の熱転写シート100は、印画痕を有する染料層3と、背面層5とを直接的に融着させることを可能としている点で、より良好に、画像形成後の熱転写シート100から、被転写体上に形成された画像のパターンが特定されることを防止できる。
【0019】
さらに、本開示の熱転写シート100によれば、画像形成時に、被転写体に悪影響を与えることなく、被転写体への画像の形成が可能である。具体的には、画像形成時に、被転写体にこげが生ずることを抑制できる。
【0020】
以下、本開示の熱転写シート100の各構成について一例を挙げて説明する。
【0021】
(基材)
基材1は、基材1の一方の面上に位置するプライマー層2や、染料層3、及び基材1の他方の面上に設けられる背面層5を保持する。基材1の材料について特に限定はないが、耐熱性、及び機械的特性を有するものが好ましい。基材1の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ウレタン樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の各種プラスチックフィルム、又はシート等を例示できる。基材1の厚みについて特に限定はないが、0.5μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0022】
(プライマー層)
図1図3に示すように、基材1の一方の面上には、プライマー層2が設けられている。プライマー層2は、基材1上に直接的に設けられていてもよく、他の層を介して、間接的に設けられていてもよい。
【0023】
プライマー層2は、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂と、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とを含有しており、また、プライマー層2の総質量に対する、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が、5質量%以上60質量%以下に規定されている。
【0024】
本願明細書でいう、カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョンとは、分子内にカチオン基又は容易にカチオン化する基を有するウレタン樹脂からなるディスパージョン、又はエマルジョンを意味する。カチオン基又は容易にカチオン化する基としては、第4級アンモニウム塩構造や、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のピリジル基等を例示できる。分子内にカチオン基又は容易にカチオン化する基を有するウレタン樹脂は、アルキル基等の置換基を有していてもよく、鎖状、環状のいずれであってもよい。
【0025】
上記の通り、本開示の熱転写シート100のプライマー層2は、プライマー層2の総質量に対する、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が5質量%以上60質量%以下である。本開示の熱転写シート100によれば、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量を、プライマー層2の総質量に対し、5質量%以上とすることで、被転写体に画像を形成するときに、被転写体にこげが生ずることを抑制できる。また、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量を、プライマー層2の総質量に対し、60質量%以下とすることで、染料層と、背面層5との融着を良好なものとできる。また、被転写体に濃度の高い画像を形成できる。
【0026】
なお、染料層と、背面層5との融着を良好なものとできる、本開示の熱転写シート100は、上記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量のみに起因する単独の効果ではなく、後述するプライマー層2が含有している(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子、及び後述する背面層5が含有しているリン酸エステルとの相乗効果による。
【0027】
したがって、プライマー層2が、上記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂を、上記含有量で含有している場合であっても、このプライマー層2が、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子を含有していない場合には、染料層と背面層5とを、所望の程度まで融着できない。
【0028】
好ましい形態のプライマー層2は、プライマー層2の総質量に対する、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が、5質量%以上55質量%以下であり、より好ましくは、5質量%以上45質量%以下である。好ましい形態のプライマー層2によれば、染料層と、背面層5との融着を、より良好なものとできる。
【0029】
さらに好ましい形態のプライマー層2は、プライマー層2の総質量に対する、(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂の含有量が、20質量%以上45質量%以下であり、特には、25質量%以上45質量%以下である。さらに好ましい形態のプライマー層2によれば、染料層3と、背面層5との融着を、より良好なものとでき、さらに、被転写体に画像を形成するときに、被転写体にこげが生ずることを、より良好に抑制できる。
【0030】
プライマー層2は、上記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂と、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とを含有している。
【0031】
コロイド状無機粒子としては、シリカゾル、コロイダルシリカ、アルミナ又はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物、或いはその水和物、擬ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等を例示できる。プライマー層2は、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子として、1種を含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0032】
好ましい形態のプライマー層2は、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子として、アルミナゾル由来の粒子、及びコロイダルシリカ由来の粒子の何れか一方、又は双方を含有している。好ましい形態のプライマー層2によれば、染料層3と、背面層5との融着を、より良好なものとできる。
【0033】
プライマー層2の総質量に対する、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子の含有量について限定はないが、40質量%以上95質量%以下が好ましく、45質量%以上95質量%以下がより好ましく、55質量%以上95質量%以下がさらに好ましく、55質量%以上80質量%以下が特に好ましく、55質量%以上75質量%以下が最も好ましい。(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子の含有量を、上記好ましい含有量とすることで、染料層3と、背面層5とを、より強固に融着できる。また、被転写体に画像を形成するときに、被転写体にこげが生ずることを、より良好に抑制できる。
【0034】
(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子の粒子径について限定はなく、平均粒径が100nm以下のものが好ましく、50nm以下のものがより好ましく、3nm以上30nm以下のものがさらに好ましい。なお、本願明細書でいう、(ii)コロイド状無機粒子由来の平均粒径は、熱転写シートの垂直断面の電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に、100個の粒子について、同様に粒径を計測し、それらの平均を平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は、透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0035】
(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子の形状は、球状、針状、板状、羽毛状や、無定形等、いかなる形状であってもよい。
【0036】
また、プライマー層2は、上記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン由来のウレタン樹脂、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子とともに、他の成分を含有していてもよい。換言すれば、プライマー層2を、カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョンと、コロイド状無機粒子と、他の成分とを含む組成物から構成してもよい。他の成分としては、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、スチレンアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール等を例示できる。また、(ii)コロイド状無機粒子由来の粒子以外の粒子を含有していてもよい。
【0037】
プライマー層2の厚みについて限定はないが、0.05μm以上1μm以下が好ましい。プライマー層2の厚みを、上記厚みとすることで、こげの発生をより良好に抑制でき、且つ、染料層と背面層5とをより強固に融着できる。また、被転写体に、より濃度の高い画像を形成できる。
【0038】
プライマー層2の形成方法についても限定はなく、例えば、上記(i)カチオン性ウレタンディスパージョン、又はカチオン性ウレタンエマルジョン、(ii)コロイド状無機粒子、必要に応じて用いられる各種の添加材を、水系溶媒と混合して得られるプライマー層用塗工液を、基材1上、或いは、基材1上に任意に設けられる層上に、塗布・乾燥して形成できる。プライマー層用塗工液の塗布方法について特に限定なく、従来公知の塗布方法を適宜選択して用いることができる。塗布方法としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等を例示できる。また、これ以外の塗布方法を用いることもできる。このことは、後述する各種塗工液の塗布方法についても同様である。
【0039】
上記水系溶媒としては、エタノール、プロパノール等のアルコール類と、水との混合物等を例示できる。また、上記水系溶媒として、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類や、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の有機溶剤と水との混合物も使用してもよい。
【0040】
(染料層)
図1図3に示すように、プライマー層2上には、染料層3が設けられている。染料層3は、プライマー層2上に直接的に設けられていてもよく、他の層を介して、間接的に設けられていてもよい。また、プライマー層2上に設けられる染料層3は、図1に示すように、単一の染料層3であってもよく、図2に示すように、色相の異なる昇華性染料を含む複数の染料層(イエロー染料層3Y、マゼンタ染料層3M、シアン染料層3C)を、プライマー層2上に面順次に設けてもよい。
【0041】
(染料層)
染料層3は、バインダーと、昇華性染料を含有している。
【0042】
昇華性染料としては、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変退色しないものが好ましい。このような昇華性染料としては、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、メチン系染料、インドアニリン系染料、ピラゾロメチン系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料等を例示できる。具体的には、MSRedG(三井東圧化学(株))、Macrolex Red Violet R(バイエル社)、CeresRed 7B(バイエル社)、Samaron Red F3BS(三菱ケミカル(株))等の赤色染料、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社)、PTY-52(三菱ケミカル(株))、マクロレックスイエロー6G(バイエル(株))等の黄色染料、カヤセット(登録商標)ブルー714(日本化薬(株))、ホロンブリリアントブルーS-R(クラリアント社)、MSブルー100(三井東圧化学(株))、C.I.ソルベントブルー63等の青色染料等を例示できる。
【0043】
被転写体上に形成される画像の耐光性の向上を目的とする場合、染料層3、例えば、シアン染料層3Cは、下記一般式(1)で示されるインドアニリン系染料を含有していることが好ましい。
【0044】
【化1】
【0045】
(一般式(1)中、R1は、置換又は非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基であるか、或いはXと一緒に5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。R2は、置換又は非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。R1とR2とは酸素原子又は窒素原子を含有する、或いは含有しない5員環又は6員環を形成してもよい。R3は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、ウレイド基、カルバモイル基、スルファモイル基又はアミノ基を表し、R4は置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアラルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のアルコキシ基、置換または非置換のアリールオキシ基を表す。R5とR6は夫々同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換又は非置換のアルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基又はウレイド基を表す。Xは水素原子であるか、或いはR1と一緒に5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表し、nは1又は2を表す。)
【0046】
バインダーとしては、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド、ポリエステル等を例示できる。これらの中でも、セルロース樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル等は、耐熱性、染料の移行性等の点において好ましい。
【0047】
昇華性染料や、バインダーの含有量について限定はないが、バインダーの総質量に対する、昇華性染料の含有量は、50質量%以上350質量%以下が好ましく、80質量%以上300質量%以下が好ましい。昇華性染料や、バインダーの含有量を上記含有量とすることで、上記プライマー層2との相乗効果により、より濃度の高い画像を形成できる。また、熱転写シート100の保存性を良好なものとできる。
【0048】
また、染料層3は、離型剤を含有していることが好ましい。離型剤を含有する染料層3とすることで、画像を形成するときの、被転写体と染料層3との離型性を良好なものとできる。離型剤としては、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス、弗素、リン酸エステル、シリコーン含有化合物を例示できる。中でも、シリコーン含有化合物が好ましい。シリコーン含有化合物としては、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等を例示できる。
【0049】
シリコーン樹脂は、分子構造内にシロキサン結合を有する化合物を意味し、未変性のシリコーン樹脂、変性されたシリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂の何れをも含む概念である。シリコーン変性樹脂は、例えば、ポリシロキサン基含有ビニルモノマーと別の種類のビニルモノマーとの共重合、熱可塑性樹脂と反応性シリコーン樹脂との反応等により調製できる。
【0050】
シリコーン変性樹脂としては、熱可塑性樹脂とポリシロキサン基含有ビニルモノマーをブロック共重合させる方法、熱可塑性樹脂とポリシロキサン基含有ビニルモノマーをグラフト共重合させる方法、又は、熱可塑性樹脂に反応性シリコーン樹脂を反応させる方法により調製したもの等を例示できる。シリコーン変性樹脂を構成する熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、エポキシ、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド等を例示できる、
【0051】
反応性シリコーン樹脂とは、主鎖にポリシロキサン構造を有し、片末端又は両末端に熱可塑性樹脂の官能基と反応する反応性官能基を有する化合物である。上記反応性官能基としては、アミノ基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、カルボキシル基等を例示できる。
【0052】
シリコーンオイルとして、各種変性シリコーンオイルを用いてもよい。変性シリコーンオイルとしては、側鎖型変性シリコーンオイル、両末端型変性シリコーンオイル、片末端型変性シリコーンオイル、側鎖両末端型変性シリコーンオイル、シリコーングラフトアクリル樹脂、メチルフェニルシリコーンオイル等を例示できる。
【0053】
変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルとに分けられる。反応性シリコーンオイルとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、カルビノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性、異種官能基変性したもの等を例示できる。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性したもの等を例示できる。
【0054】
好ましい形態の染料層3は、当該染料層3の総質量に対し、シリコーン含有化合物を0.05質量%以上5質量%以下含有しており、より好ましくは、0.2質量%以上3質量%以下含有している。シリコーン含有化合物を上記含有量で含有している染料層3とすることで、画像形成時における、被転写体と染料層3との離型性をより良好なものとできる。
【0055】
また、染料層3を、色相の異なる複数の染料層3とする場合、例えば、イエロー染料層3Y、マゼンタ染料層3M、シアン染料層3Cとする場合、何れか1つの染料層3が、シリコーン含有化合物を含有していることが好ましく、全ての染料層3が、シリコーン含有化合物を含有していることがより好ましい。
【0056】
染料層3の厚みについて限定はないが、0.3μm以上1.5μm以下が好ましい。
【0057】
染料層3の形成方法について限定はなく、昇華性染料、バインダー、必要に応じて添加される各種の添加材を適当な溶媒に分散、或いは、溶解した染料層用塗工液を調製し、これを、プライマー層2、或いは、プライマー層2上に任意に設けられる層上に、塗布・乾燥して形成できる。
【0058】
(背面層)
図1図3に示すように、基材1の他方の面には、背面層5が設けられている。背面層5は、基材1の他方の面上に直接的に設けられていてもよく、他の層(例えば、背面プライマー層)を介して間接的に設けられていてもよい。
【0059】
背面層5は、バインダーと、リン酸エステルを含有している。この背面層5を有する本開示の熱転写シート100によれば、上記プライマー層2との相乗効果により、染料層3と背面層5とを強固に融着できる。したがって、背面層5がリン酸エステルを含有していない場合には、上記で説明したプライマー層2を採用した場合であっても、染料層3と背面層5とを強固に融着できない。
【0060】
リン酸エステルの含有量について特に限定はなく、リン酸エステルを含有していない背面層5と比較して、染料層3との融着を強固なものとできる。好ましい形態の背面層5は、当該背面層5の総質量に対し、リン酸エステルを、5質量%以上30質量%以下含有しており、より好ましくは、10質量%以上20質量%以下含有している。リン酸エステルの含有量を、上記好ましい含有量とした背面層5によれば、染料層3と背面層5との融着をより強固なものとできる。
【0061】
背面層5のバインダーについて特に限定はなく、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、スチレンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリビニルクロリド、ポリビニルブチラールやポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール、これらのシリコーン変性物等を例示できる。
【0062】
また、背面層5は、上記リン酸エステル、バインダーとともに、各種の添加材を含有していてもよい。各種の添加材としては、ワックス、高級脂肪酸アミド、金属石鹸、シリコーンオイル、界面活性剤等の離型剤、フッ素樹脂等の有機粉末、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等の無機粒子等を例示できる。
【0063】
背面層5の厚みは0.5μm以上2μm以下が好ましい。背面層5の形成方法についても限定はなく、リン酸エステル、バインダー、必要に応じて添加される各種の添加材を適当な溶媒に分散、或いは、溶解した背面層用塗工液を調製し、これを、基材1、或いは、基材1上に任意に設けられる層上に、塗布・乾燥して形成できる。
【0064】
(転写層)
図3に示すように、基材の一方の面であって、プライマー層2が設けられていない箇所に、転写層10を設けてもよい。転写層10は、基材1から剥離可能に設けられており、エネルギーの印加により、被転写体側に移行する層である。この形態の熱転写シート100によれば、染料層3による画像の形成と、当該画像上への転写層10の転写を、1つの熱転写シートで行うことができる。なお、図3に示す形態の熱転写シートでは、プライマー層2上に、1つの染料層3が設けられた構成を呈しているが、プライマー層2上に、色相が異なる複数の染料層3を設けた構成としてもよい。
【0065】
一例としての転写層10は、図3に示すように、基材1側から、剥離層11、ヒートシール層12(接着層と言う場合もある)がこの順で積層されてなる積層構造を呈している。転写層10を、剥離層11のみからなる単層構造、或いは、ヒートシール層12のみからなる単層構造としてもよい(図示しない)。
【0066】
(剥離層)
一例としての剥離層11は、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ-アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド-アミノ樹脂等を含有している。剥離層11は、1種の樹脂を単独で含有していていてもよく、2種以上の樹脂を含有していてもよい。
【0067】
剥離層11の厚みは0.5μm以上5μm以下が好ましい。剥離層11の形成方法について限定はなく、例えば、上記で例示した成分を適当な溶媒に溶解、或いは、分散させた剥離層用塗工液を調製し、これを、基材1上に塗布・乾燥して形成できる。このような剥離層を有する転写層10によれば、当該転写層10を転写することで、印画物の耐久性を良好なものとできる。
【0068】
(ヒートシール層)
ヒートシール層12が含有している成分としては、接着性を有するものを適宜選択して用いればよい。このような成分としては、ポリエステル、紫外線吸収性樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アセタール樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の樹脂成分を例示できる。
【0069】
好ましい形態のヒートシール層12は、ポリエステルを含有している。ポリエステルを含有するヒートシール層12によれば、染料層3により形成された画像上に、このヒートシール層12を含む転写層10を転写することで、被転写体に形成された画像に滲みが生ずることを抑制できる。具体的には、高温高湿環境下で、印画物を保管したときに、画像に滲みが生ずることを抑制できる。つまり、この形態のヒートシール層12は、接着性を有するとともに、画像に滲みが生ずることを防止できるバリア層としての役割を兼ねる。
【0070】
ポリエステルとしては、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマー等を例示できる。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を例示できる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2-エチル-ブチル-1-プロパンジオール、ビスフェノールA等を例示できる。ポリエステルは、3種類以上の多価カルボン酸や多価アルコールの共重合体であってもよく、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のモノマーやポリマーとの共重合体であってもよい。また、ポリエステルには、上記ポリエステルの変性物も含まれる。ポリエステルの変性物としては、ポリエステルウレタン等を例示できる。
【0071】
ヒートシール層12の総質量に対する、ポリエステルの含有量は、30質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。ポリエステルの含有量を、上記好ましい含有量とすることで、被転写体との密着性、及び画像の滲みの抑制効果をより良好なものとできる。
【0072】
ヒートシール層12の厚みは0.5μm以上2μm以下が好ましい。ヒートシール層12の形成方法についても限定はなく、上記で例示した成分、及び必要に応じて添加される各種の添加材を適当な溶媒に分散、或いは、溶解したヒートシール層用塗工液を調製し、これを、基材1上や、剥離層11上、或いは後述する中間層上に塗布・乾燥して形成できる。
【0073】
また、剥離層11と、ヒートシール層12との間に中間層(図示しない)を設けてもよい。中間層について限定はないが、上記で説明した基材1と染料層3との間に設けられるプライマー層2や、熱転写シートの分野で従来公知のプライマー層を適宜選択して用いることができる。
【0074】
また、基材1と転写層10との間に、離型層(図示しない)を設けてもよい。離型層を設けることで、転写層10の転写性(剥離性や、離型性と言う場合もある)を良好なものとできる。
【0075】
(被転写体)
本開示の熱転写シート100と組み合わせて、印画物を製造するために用いられる被転写体について限定はなく、カード基材、熱転写受像シート等の、昇華型熱転写方式に用いられる従来公知の被転写体を適宜選択して用いることができる。
【0076】
被転写体の一例である、熱転写受像シートは、支持体と、当該支持体上に設けられる受容層を有する。
【0077】
本開示の熱転写シートと組み合わせて用いられる、好ましい形態の熱転写受像シートは、受容層がアクリル樹脂を含有している。アクリル樹脂を含有する受容層とすることで、本開示の熱転写シート100のプライマー層2との相乗効果により、画像形成時における、こげの発生をより良好に抑制できる。なお、本開示の熱転写シート100は、アクリル樹脂を含有する受容層と組み合わせて用いられることに限定されるものではない。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体、アイオノマー、或いはセルロースジアセテート等のセルロース樹脂、ポリカーボネート等を含有する受容層と組み合わせることもできる。
【0078】
(熱転写シートの融着方法)
次に、本開示の実施の形態に係る熱転写シートの融着方法(以下、本開示の融着方法と言う)について説明する。
【0079】
本開示の融着方法は、本開示の熱転写シート100を用いて画像形成を行った後の、熱転写シートの融着方法であり、画像形成後の熱転写シートをロール状に巻き取る工程と、ロール状に巻き取られた画像形成後の熱転写シートの染料層3と背面層5とを融着する工程とを含む。
【0080】
本開示の融着方法によれば、画像形成後の熱転写シートをロール状に巻き取ることで、染料層3と背面層5とを重ね合せた状態を作ることができる。そして、この重ね合せた状態の熱転写シートに、融着処理を施すことで、染料層3と背面層5とを融着できる。
【0081】
本開示の融着方法では、画像形成後の本開示の熱転写シートが用いられることから、上記本開示の熱転写シートのプライマー層2と、背面層5との相乗効果により、染料層3と背面層5とを重ね合せた状態で融着処理を施すことで、染料層3と背面層5とを強固に融着できる。これにより、染料層3に残存している印画痕から、被転写体に形成した画像情報が特定されることを抑制できる。
【0082】
図4は、本開示の融着方法に用いられる融着装置200の拡大図であり、画像形成後の熱転写シート100が巻き取られた状態を示している。なお、説明の便宜上、熱転写シート100のプライマー層2の記載は省略している。図示する形態の融着装置200は、画像形成後の熱転写シート100を巻き取る巻取部210、及び巻取部210の近傍に位置する加熱部220を有している。巻取部210は、ロール状のコア本体である。巻取部210は、モータ等の不図示の駆動源の動力によって、図中の矢印R2に示す方向に回転する。この回転により、巻取部210は画像形成後の熱転写シート100の染料層3と背面層5が重なるように巻き取る。
【0083】
加熱部220は、巻取部210に巻き取られた、画像形成後の熱転写シートのうち、最外周に位置する箇所を加熱する。なお、巻取部210では、画像形成後の熱転写シート100の巻き取りが進むにつれて、巻き取られた熱転写シート100で構成されるロール隊の外径が増加していく。このような外径の増加に対応させるため、加熱部220を、巻取部から離れる方向に移動可能としてもよい。例えば、加熱部を、当該加熱部を移動可能な支持機構で支持してもよい。
【0084】
加熱部220としては、サーマルヘッドや、加熱ローラ等を例示できる。
【0085】
また、融着装置200として、被転写体に画像を形成する画像形成部(図示しない)を備えるものを用いてもよい。このような融着装置200によれば、被転写体上への画像の形成と、画像形成後の熱転写シートの融着を、1つの装置で行うことができる。画像形成部としては、従来公知のプリンタの機構を適宜選択して用いることができる。さらに、本開示の熱転写シートとして、転写層10を有する熱転写シートを用いる場合には、さらに、融着装置200は、転写層10を転写するための転写部(図示しない)を備えていてもよい。
【0086】
また、本開示の別の実施の形態に係る熱転写シートの融着方法は、上記画像形成後の熱転写シートをロール状に巻き取る工程にかえて、画像形成後の熱転写シートを折り返しながら染料層3と背面層5とを重ねる工程を含む。この融着方法においても、上記同様に、画像形成後の熱転写シートの染料層3と背面層5とを強固に融着できる。
【0087】
なお、本願明細書では、各層を構成する樹脂等について、例示的に記載をしているが、これらの樹脂は、各樹脂を構成するモノマーの単独重合体であってもよく、各樹脂を構成する主成分のモノマーと、1つ或いは複数の他のモノマーとの共重合体、或いはその誘導体であってもよい。例えば、アクリル樹脂と言う場合には、アクリル酸、又はメタクリル酸のモノマーや、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルのモノマーを主成分として含んでいればよい。また、これらの樹脂の変性物であってもよい。また、本願明細書に記載されている以外の樹脂を用いてもよい。
【実施例0088】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準であり、溶媒を除く成分については、固形分に換算後の配合を示している。
【0089】
(実施例1)
基材として、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、コロナ処理)を用い、この基材の一方の面上の一部に、下記組成のプライマー層用塗工液1を塗布・乾燥して、厚みが0.25μmのプライマー層を形成した。次いで、プライマー層上に下記組成のイエロー染料層用塗工液1、マゼンタ染料層用塗工液1、及びシアン染料層用塗工液1を塗布・乾燥して、それぞれ厚みが0.5μmのイエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層がこの順で面順次に設けられた染料層を形成した。また、基材の一方の面上の他の一部に、下記組成の剥離層用塗工液1を塗布・乾燥して、厚みが1μmの剥離層を形成した。この剥離層上に、下記組成のヒートシール層用塗工液1を塗布・乾燥して、厚みが1.2μmのヒートシール層を形成した。また、基材の他方の面上に、下記組成の背面層用塗工液1を塗布・乾燥して、厚みが1μmの背面層を形成することで、実施例1の熱転写シートを得た。なお、剥離層、及びヒートシール層は、本開示の熱転写シートにおける転写層を構成する。
【0090】
<プライマー層用塗工液1>
・アルミナゾル 4部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・カチオン性ウレタン樹脂 6部
(SF-600 第一工業製薬(株))
・水 100部
・イソプロピルアルコール 100部
【0091】
<イエロー染料層用塗工液1>
・分散染料(ホロンブリリアントイエローS-6GL) 5.5部
・ポリビニルアセトアセタール 4.5部
(エスレック(登録商標)KS-5 積水化学工業(株))
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフ(登録商標)A208N 第一製薬工業(株))
・エポキシ変性シリコーンオイル 0.04部
(KF-101 信越化学工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 45部
【0092】
<マゼンタ染料層用塗工液1>
・分散染料(MSレッドG) 1.5部
・分散染料(マクロレックスレッドバイオレットR) 2部
・ポリビニルアセトアセタール 4.5部
(エスレック(登録商標)KS-5 積水化学工業(株))
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフ(登録商標)A208N 第一製薬工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.1部
・エポキシ変性シリコーンオイル 0.04部
(KF-101 信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 45部
【0093】
<シアン染料層用塗工液1>
・分散染料(Solvent Blue 63) 3.5部
・分散染料(HSB-2194) 3部
・ポリビニルアセトアセタール 4.5部
(エスレック(登録商標)KS-5 積水化学工業(株))
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフ(登録商標)A208N 第一製薬工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.1部
・エポキシ変性シリコーンオイル 0.04部
(KF-101 信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 45部
【0094】
<背面層用塗工液1>
・ポリビニルブチラール 6部
(エスレック(登録商標)BX-1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート硬化剤(固形分45%) 22部
(バーノック(登録商標)D750-45 DIC(株))
・リン酸エステル 5部
(プライサーフ(登録商標)A-208N 第一工業製薬(株))
・メチルエチルケトン 60部
・トルエン 60部
【0095】
<剥離層用塗工液1>
・アクリル樹脂 40部
(LP-45M 綜研化学(株))
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0096】
<ヒートシール層用塗工液1>
・ポリエステル 20部
(バイロン(登録商標)700 東洋紡(株))
・二酸化ケイ素 0.5部
(サイリシア310 富士シリシア化学(株))
・紫外線吸収剤 5部
(ST-I UVA 40KT (株)ダイセル)
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0097】
(実施例2)
プライマー層用塗工液1を、下記組成のプライマー層用塗工液2に変更して、プライマー層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを得た。
【0098】
<プライマー層用塗工液2>
・アルミナゾル 5部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・カチオン性ウレタン樹脂 5部
(SF-600 第一工業製薬(株))
・水 100部
・イソプロピルアルコール 100部
【0099】
(実施例3)
プライマー層用塗工液1を、下記組成のプライマー層用塗工液3に変更して、プライマー層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例3の熱転写シートを得た。
【0100】
<プライマー層用塗工液3>
・アルミナゾル 7部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・カチオン性ウレタン樹脂 3部
(SF-600 第一工業製薬(株))
・水 100部
・イソプロピルアルコール 100部
【0101】
(実施例4)
プライマー層用塗工液1を、下記組成のプライマー層用塗工液4に変更して、プライマー層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例4の熱転写シートを得た。
【0102】
<プライマー層用塗工液4>
・アルミナゾル 9部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・カチオン性ウレタン樹脂 1部
(SF-600 第一工業製薬(株))
・水 100部
・イソプロピルアルコール 100部
【0103】
(実施例5)
プライマー層用塗工液1を、下記組成のプライマー層用塗工液5に変更して、プライマー層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを得た。
【0104】
<プライマー層用塗工液5>
・コロイダルシリカ 7部
(スノーテックス(登録商標)OS 日産化学工業(株))
・カチオン性ウレタン樹脂 3部
(SF-600 第一工業製薬(株))
・水 100部
・イソプロピルアルコール 100部
【0105】
(実施例6)
プライマー層用塗工液1を、上記組成のプライマー層用塗工液3に変更して、プライマー層を形成し、イエロー染料層用塗工液1、マゼンタ染料層用塗工液1、シアン染料層用塗工液1を、下記組成のイエロー染料層用塗工液2、マゼンタ染料層用塗工液2、シアン染料層用塗工液2に変更して、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例6の熱転写シートを得た。
【0106】
<イエロー染料層用塗工液2>
・分散染料(ホロンブリリアントイエローS-6GL) 5.5部
・ポリビニルアセトアセタール 4.5部
(エスレック(登録商標)KS-5 積水化学工業(株))
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフ(登録商標)A208N 第一製薬工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45部
【0107】
<マゼンタ染料層用塗工液2>
・分散染料(MSレッドG) 1.5部
・分散染料(マクロレックスレッドバイオレットR) 2部
・ポリビニルアセトアセタール 4.5部
(エスレック(登録商標)KS-5 積水化学工業(株))
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフ(登録商標)A208N 第一製薬工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 45部
【0108】
<シアン染料層用塗工液2>
・分散染料(Solvent Blue 63) 3.5部
・分散染料(HSB-2194) 3部
・ポリビニルアセトアセタール 4.5部
(エスレック(登録商標)KS-5 積水化学工業(株))
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフ(登録商標)A208N 第一製薬工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45部
・トルエン 45部
【0109】
(実施例7)
ヒートシール層用塗工液1を、下記組成のヒートシール層用塗工液2に変更して、ヒートシール層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、実施例7の熱転写シートを得た。
【0110】
<ヒートシール層用塗工液2>
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 20部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株))
・二酸化ケイ素 0.5部
(サイリシア310 富士シリシア化学(株))
・紫外線吸収剤 5部
(ST-I UVA 40KT (株)ダイセル)
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0111】
(比較例1)
プライマー層用塗工液1を、下記組成のプライマー層用塗工液Aに変更して、プライマー層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを得た。
【0112】
<プライマー層用塗工液A>
・アルミナゾル 2部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・カチオン性ウレタン樹脂 8部
(SF-600 第一工業製薬(株))
・水 100部
・イソプロピルアルコール 100部
【0113】
(比較例2)
プライマー層用塗工液1を、下記組成のプライマー層用塗工液Bに変更して、プライマー層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、比較例2の熱転写シートを得た。
【0114】
<プライマー層用塗工液B>
・アルミナゾル 10部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・水 100部
・イソプロピルアルコール 100部
【0115】
(比較例3)
プライマー層を形成しない以外は、全て実施例1と同様にして、比較例3の熱転写シートを得た。
【0116】
(比較例4)
プライマー層用塗工液1を、上記組成のプライマー層用塗工液3に変更して、プライマー層を形成し、背面層用塗工液1を、下記組成の背面層用塗工液Aに変更して背面層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、比較例4の熱転写シートを得た。
【0117】
<背面層用塗工液A>
・ポリビニルブチラール 6部
(エスレック(登録商標)BX-1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート硬化剤(固形分45%) 22部
(バーノック(登録商標)D750-45 DIC(株))
・エポキシ変性シリコーンオイル 5部
(KF-101 信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン 60部
・トルエン 60部
【0118】
(熱転写受像シートの作成)
下記基材1の一方の面上に、下記組成の受容層塗工液1を塗布・乾燥して、厚みが3μmの第1の受容層を形成した。次いで、第1の受容層上に、下記組成の受容層用塗工液2を塗布・乾燥して、厚みが1μmの第2の受容層を形成した。次いで、下記基材1の他方の面に、ホットメルト接着剤(MacroplastQR3460 Henkel社)を介して、下記基材2を貼り合わせて、基材2、基材1、第1の受容層、第2の受容層がこの順で積層されてなる積層体を得た。次いで、この積層体を、ロールカッターを用いて、裁断し、厚みが790μm、55mm×85mm(縦×横)の熱転写受像シートを得た。
基材1・・・厚み188μm U292W-188 帝人デュポンフィルム(株))
基材2・・・厚み188μm U292W-188 帝人デュポンフィルム(株))
【0119】
<受容層用塗工液1>
・ポリビニルブチラール 95部
(エスレック(登録商標)BL-S 積水化学工業(株))
・イソシアネート系硬化剤 5部
(タケネート(登録商標)D-110N 三井化学(株))
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0120】
<受容層用塗工液2>
・スチレン-アクリル共重合体(Mw:8.53×104) 85部
(共重合比率・・・(スチレン(St):ラウリルアクリレート(LA):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)=70:20:10))
・イソシアネート系硬化剤 15部
(タケネート(登録商標)D-110N 三井化学(株))
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0121】
(印画物(1)の作成)
各実施例、及び比較例の熱転写シートと、上記で作製した熱転写受像シートとを、熱転写シートの染料層と、熱転写受像シートの第2の受容層とが接するように重ねあわせ、熱転写シートの背面層側から、サーマルヘッドを用いて、出力:0.23W/dot、line速度:1.0msec./line、dot密度:300dpiの条件で加熱することにより、熱転写受像シートの第2の受容層に、黒ベタ(画像階調(0/255))を形成して、各実施例、及び比較例の印画物(1)を得た。印画物(1)の作成は、35℃80%RHの環境下、及び40℃90%RHの環境下のそれぞれについて行った。なお、各実施例、及び比較例の印画物(1)は、後述の転写層を転写する前の印画物である。
【0122】
(離型性評価)
各実施例、及び比較例の印画物(1)を作成するときの、染料層と、熱転写受像シートとの離型性を下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。なお、離型性の評価は、40℃90%RHの環境下で印画物(1)を作成するときの、受容層と、各染料層との離型性についてそれぞれ行った。
【0123】
<評価基準>
A・・・受容層と各染料層との融着や、受容層側への各染料層の異常転写が生じておらず、染料層と受容層との離型性が良好である。
B・・・受容層と各染料層との融着や、受容層側への各染料層の異常転写が一部分で生じているが、使用上問題ないレベルである。
NG・・・受容層と各染料層との融着、或いは、受容層側への各染料層の異常転写が広範囲で生じており、染料層と受容層との離型性が不良である。
【0124】
(こげ評価)
上記で作成した各実施例、及び比較例の印画物を目視で確認し、下記の評価基準に基づいて、こげ評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、こげとは、染料層を順次重ねて印画して画像を形成したときのベタ高濃度部で画質不良、色相変動が生じ、その結果印画物表面がマット化し、光沢感が無くなる現象である。比較例3の熱転写シートは、染料層と受容層とが全面で融着を起こしており、こげ評価を行うことができなかった。
【0125】
<評価基準>
A・・・こげを目視で確認できない。
B・・・40℃90%RH環境での印画で若干のこげが認められるが、35℃80%RH環境での印画でこげを目視で確認できない。
NG・・・いずれの環境の印画においてもこげが目視で認められる。
【0126】
(印画物(2)の作成)
上記40℃90%RHの環境で作成した各実施例、及び比較例の印画物(1)と、各実施例、及び比較例の熱転写シートを組み合わせ、上記印画物(1)における画像の形成と同じ条件(黒ベタ(画像階調(0/255))で、各実施例、及び比較例の印画物(1)上に、各実施例、及び比較例の熱転写シートの転写層の転写を行い、各実施例、及び比較例の印画物(2)を得た。印画物(2)の作成に用いた、各実施例、及び比較例の印画物(1)と、各実施例、及び比較例の熱転写シートは、それぞれ共通する実施例、及び比較例同士の対応関係にあり、例えば、実施例1の印画物(1)に対しては、実施例1の熱転写シートを用いて転写層を転写し、比較例1の印画物(1)に対しては、比較例1の熱転写シートを用いて転写層を転写している。
【0127】
(滲み評価)
上記で作成した転写層を転写後の各実施例、及び比較例の印画物(2)を、60℃のオーブンに入れ、7日間保存した。保存後の画像の滲みを目視で確認し、下記評価基準に基づいて、滲み評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0128】
<評価基準>
A・・・画像に滲みがなく鮮明であった。
B・・・画像に滲みが殆どなかった。
NG・・・画像に滲みが生じていた。
【0129】
(情報消去評価)
図4に示す融着装置を使用し、加熱部としてサーマルヘッドを用い、巻取部による巻取速度:1.0msec./lineで、印画物(2)を形成した後の各実施例、及び比較例の熱転写シートを巻き取りながら、加熱ヘッド(駆動電圧:24V、ヒーター抵抗値(at 25oC):5.6Ω):5.6Ω)により、180℃のエネルギーを印加し、熱転写シートの背面層と、染料層との融着処理を行った。融着処理後の、各実施例、及び比較例の熱転写シートに対し、背面層と融着している染料層を引きはがし、このときの染料層の状態を確認し、下記の評価基準に基づいて、情報消去評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0130】
<評価基準>
A・・・背面層から染料層を引きはがすことができず、或いは、染料層の印画痕部分が破断し、染料層の印画痕部分を目視で確認できない。
B・・・背面層から染料層を引きはがしたときに、染料層に破断は生じないが、熱ダメージにより、染料層の印画痕を目視で確認できない。
C・・・背面層から染料層を引きはがしたときに、染料層に破断は生じないが、熱ダメージにより、染料層の印画痕の50%以上が目視で確認できない。
NG・・・背面層から染料層を容易に引きはがすことができ、容易に染料層の印画痕を目視で確認できるか、或いは、染料層の印画痕の50%以上を目視で確認できる。
【0131】
【表1】
【符号の説明】
【0132】
100・・・熱転写シート
1・・・基材
2・・・プライマー層
3・・・染料層
5・・・背面層
10・・・転写層
11・・・剥離層
12・・・ヒートシール層
200・・・融着装置
210・・・巻取部
220・・・加熱部
図1
図2
図3
図4
図5