(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177127
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】S字応力プロファイル及び生成方法
(51)【国際特許分類】
C03C 21/00 20060101AFI20221122BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C3/097
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144544
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2018529279の分割
【原出願日】2016-12-08
(31)【優先権主張番号】62/264,495
(32)【優先日】2015-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/280,376
(32)【優先日】2016-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジョン デイネカ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル オラム
(72)【発明者】
【氏名】ロスティスラフ ヴァチェフ ルセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィター マリノ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】シャーリーン マリー スミス
(72)【発明者】
【氏名】ヂョンヂー タン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】深い圧縮層を有する強化ガラスおよびガラスを強化する方法を提供する。
【解決手段】従来の誤差関数及び放物線プロファイルと異なる応力プロファイルを有する強化ガラスであり、より長いイオン交換時間及び/又はアニール時間によって生じる応力緩和及び熱アニール/拡散効果によって、表面層の圧縮深さ(DOC)が増大する。これ等の効果を達成するための方法も提供される。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品であって、
厚さtと、
t/2に位置する中心と、
前記ガラス物品の第1の表面から、第1の圧縮深さDOC1に延びる第1の圧縮層と、
前記第1の圧縮層における第1の最大圧縮応力CS1と、
ガラスの深さの関数として該ガラス中で変化して、前記第1の圧縮層を含む応力プロファイルを形成する応力と、
を有し、
前記応力プロファイルが、
前記第1の表面から前記ガラス物品の深さd1まで延びる第1の領域であって、d1>0.06tであり、前記第1の領域の少なくとも一部が第1の傾きm1を有する領域、及び
少なくともd1の深さから、前記第1の圧縮深さDOC1まで延び、第2の傾きm2を有する第2の領域であって、|m1|≦|m2|である領域
を含み、
前記応力プロファイルが、前記第1の圧縮層に負の曲率を有する第1の小区域と、正の曲率を有する第2の小区域とを含み、
前記負の曲率が、前記第1の小区域にわたり、10MPa/(t(mm))2を超える絶対値を有し、
前記第1の小区域が、tの2%~25%の空間的範囲を有し、
前記第2の小区域が、前記第1の小区域よりも深いところに位置していることを特徴とするガラス物品。
【請求項2】
前記負の曲率の最大絶対値がd1にあることを特徴とする、請求項1記載のガラス物品。
【請求項3】
d1における、前記応力プロファイルの傾きがゼロであることを特徴とする、請求項1又は2記載のガラス物品。
【請求項4】
CS1>0、m1>0、及びm2<0であることを特徴とする、請求項1~3いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項5】
ガラス物品であって、
厚さtと、
t/2に位置する中心と、
前記ガラス物品の表面と前記中心との間に位置し、圧縮応力下にあり、前記表面から圧縮深さDOCまで延びる圧縮領域と、
応力プロファイルが負の曲率を有する、前記圧縮領域内の第1の小区域であって、前記負の曲率の最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である、第1の小区域と、
前記応力プロファイルが正の曲率を有する第2の小区域と、
前記圧縮深さDOCから、前記ガラス物品の少なくとも前記中心まで延び、物理的中心張力CT下にある張力領域と、
を有し、
前記負の曲率が、tの2%~25%の空間的範囲を有する前記第1の小区域にわたり、10MPa/(t(mm))2を超える絶対値を有し、
前記第2の小区域が、前記第1の小区域よりも深いところに位置していることを特徴とするガラス物品。
【請求項6】
tが0.1mm~2mmであることを特徴とする、請求項1~5いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項7】
最大圧縮応力CS1が、前記表面に存在し、500MPa~2,000MPaであり、
前記応力プロファイルの圧縮応力が、前記表面下8μm未満の深さにおいて、前記最大圧縮応力CS1の50%未満に減少することを特徴とする、請求項1~6いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項8】
CTが、40MPa/(t(mm))1/2~150MPa/(t(mm))1/2であることを特徴とする、請求項1~7いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項9】
前記ガラス物品が、
40モル%~70モル%のSiO2と、
11モル%~25モル%のAl2O3と、
2モル%~15モル%のP2O5と、
10モル%~25モル%のNa2Oと、
13モル%~30モル%のRxOと、
を含むアルカリアルミノシリケートガラスを含み、ここで、RxOは前記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である、請求項1~8いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項10】
ガラスを強化する方法であって、
第1のアルカリカチオンを含むガラスを、第2のアルカリカチオンを含むイオン交換浴に浸漬して、前記ガラス内の前記第1のアルカリカチオンを、前記イオン交換浴からの前記第2のアルカリカチオンに交換し、前記ガラスの第1の表面から延びる第1の圧縮層を形成するステップであって、前記ガラスが厚さtを有し、前記第2のアルカリカチオンが前記第1のアルカリカチオンと異なり、前記第1の表面が第2の表面に対向し、前記第1の圧縮層が、前記第1の表面から第1の圧縮深さDOC1まで延び、前記第1の圧縮層が第1の圧縮応力CS1を有する、ステップと、
前記第2のアルカリカチオンを、前記第1の表面からt/2に位置する前記ガラスの中心まで拡散させるステップであって、前記ガラスの応力が、前記ガラスの深さの関数として変化して応力プロファイルが形成され、該プロファイルが、
前記第1の表面から前記ガラスの深さd1まで延びる第1の圧縮領域であって、d1>0.06tであり、前記第1の圧縮領域の少なくとも一部が第1の傾きm1を有し、前記第1の表面に第2の圧縮応力CS2を有し、CS2≦CS1である領域、及び
少なくともd1の深さから、第2の圧縮深さDOC2まで延び、第2の傾きm2を有する、第2の圧縮領域であって、|m1|≦|m2|、及びDOC2>DOC1である領域を含む、ステップと、
を備え、
前記応力プロファイルが、前記第1の圧縮層に負の曲率を有する第1の小区域と、正の曲率を有する第2の小区域とを含み、
前記負の曲率が、前記第1の小区域にわたり、10MPa/(t(mm))2を超える絶対値を有し、
前記第1の小区域が、tの2%~25%の空間的範囲を有し、
前記第2の小区域が、前記第1の小区域よりも深いところに位置していることを特徴とする方法。
【請求項11】
d1における、前記応力プロファイルの傾きがゼロであり、前記負の曲率の最大絶対値がd1にあることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記拡散させるステップが、前記ガラスを少なくとも16時間400℃~500℃の温度に加熱することを含むことを特徴とする、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記ガラスを前記イオン交換浴に浸漬した後に、前記ガラスを第2のイオン交換浴に浸漬し、前記第1の表面に、第3の圧縮応力CS3を有する表面圧縮領域を形成するステップであって、CS3>CS1である、ステップを更に備えたことを特徴とする、請求項10または11記載の方法。
【請求項14】
消費者向け電子装置であって、
前面、背面、及び側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及び前記ハウジングの前記前面に又は前記前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、
前記ディスプレイ上に配置された請求項1~9いずれか1項記載のガラス物品と、
を備えたことを特徴とする製品。
【発明の詳細な説明】
【関連技術の相互参照】
【0001】
本願は、その内容に依拠し、参照により、全内容が本明細書に援用される、それぞれ2015年12月8日、及び2016年1月19日出願の、米国仮特許出願第62/264,495号、及び第62/280,376号の米国特許法第119条に基づく優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は強化ガラスに関するものである。より具体的には、本開示は深い圧縮層を有する強化ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0003】
イオン交換によって強化されたガラスは、相補誤差関数又は放物線関数に類似した応力プロファイルを示す傾向がある。かかる応力プロファイルは、鋭い衝撃等の特定の種類の損傷に対して適切な保護が得られるが、高さから粗い表面への落下等、他の種類の損傷に対して十分な保護が得られない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は強化ガラスであって、かかるガラスにこれまで観察されてきた誤差関数プロファイル、及び放物線プロファイルとは異なるプロファイルを有する、強化ガラスを提供するものである。より長いイオン交換時間及び/又はアニール時間によって生じる応力緩和及び熱アニール/拡散効果によって、表面層の圧縮深さ(DOC)が増大する。これ等の効果を達成するための方法も提供する。
【0005】
従って、本開示の1つの態様は、厚さ(t)及びt/2に中心を有するガラス物品を提供する。本ガラスは、ガラスの第1の表面から第1の圧縮深さ(DOC1)まで延びる、第1の応力(CS1)下にある、第1の圧縮層を有している。ガラスの応力が、厚さ(t)の関数として変化して応力プロファイルが形成され、応力プロファイルが、第1の表面からガラスの深さ(d1)まで延びる第1の領域であって、d1>0.06tであり、第1の領域の少なくとも一部が第1の傾き(m1)を有する領域と、少なくともd1の深さから第1の圧縮深さ(DOC1)まで延び、第2の傾き(m2)を有する第2の領域であって、|m1|≦|m2|である領域とを含んでいる。
【0006】
本開示の別の態様は、厚さ(t)及びt/2に中心を有する、イオン交換によって強化されたガラス物品を提供する。ガラス物品は、ガラス物品の表面から圧縮深さ(DOC)まで延び、圧縮応力下にある圧縮領域を中心の両側に含むと共に、圧縮深さ(DOC)からガラス物品の中心まで延び、物理的中心張力(CT)を有する張力領域を含んでいる。ガラスの応力が厚さ(t)の関数として変化して応力プロファイルが形成され、応力プロファイルが、圧縮領域に負の曲率を有する小区域を含み、負の曲率の最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である。
【0007】
本開示の更に別の態様は、イオン交換処理及びそれに続く熱拡散/アニールステップによって強化されたガラス物品を提供する。ガラス物品は、厚さ(t)及びt/2に中心を有し、ガラスの第1の表面から第1の圧縮深さ(DOC1)に延びる、第1の圧縮応力(CS1)下にある第1の圧縮層を含んでいる。ガラスは、第1の圧縮深さ(DOC1)からガラスの中心まで延びる、物理的中心張力(CT)下にある張力領域も含んでいる。ガラスの応力が厚さ(t)の関数として変化して応力プロファイルが形成される。応力プロファイルは、第1の表面からガラスの深さ(d1)まで延びる第1の領域であって、d1>0.06tであり、第1の領域の少なくとも一部が第1の傾き(m1)を有する領域と、少なくともd1の深さから第1の圧縮深さ(DOC1)まで延び、第2の傾き(m2)を有する第2の領域であって、|m1|≦|m2|である領域とを含んでいる。
【0008】
本開示の更に別の態様は、第1のアルカリカチオンを含むガラスを強化する方法を提供する。ガラスは第1の表面、第1の表面に対向する第2の表面、厚さ(t)、及びt/2に中心を有している。本方法は、第1のカチオンと異なる第2のアルカリカチオンを含むイオン交換浴にガラスを浸漬し、ガラス内の第1のカチオンを、イオン交換浴からの第2のアルカリカチオンに交換し、第1の表面から第1の圧縮深さDOC1まで延びる圧縮層であって、表面において第1の圧縮応力(CS1)下にある圧縮層を形成するステップと、第2のアルカリカチオンを、第1の表面及び第2の表面から、ガラスの中心まで拡散させるステップとを備えている。ガラスの応力は、ガラスの深さの関数として変化して応力プロファイルが形成される。応力プロファイルは、第1の表面及び第2の表面からそれぞれ深さ(d1)まで延びる第1の圧縮領域であって、d1>0.06tであり、第1の圧縮応力領域の少なくとも一部が第1の傾き(m1)を有し、第1の表面及び第2の表面の各々が第2の圧縮応力(CS2)を有し、CS2≦CS1である領域、及び少なくともd1の深さから第2の圧縮深さ(DOC2)まで延び、第2の傾き(m2)を有する第2の圧縮領域であって、|m1|≦|m2|、及びDOC2>DOC1である領域を含んでいる。
【0009】
第1の態様において、ガラス物品が提供される。本ガラス物品は、厚さtと、t/2に位置する中心と、ガラス物品の第1の表面から、第1の圧縮深さDOC1に延びる第1の圧縮層と、第1の圧縮層における第1の最大圧縮応力CS1とを有している。第1の圧縮層は、応力プロファイルを有している。この応力プロファイルは、第1の表面からガラス物品の深さd1まで延びる第1の領域であって、d1>0.06tであり、第1の領域の少なくとも一部が第1の傾きm1を有する領域、及び少なくともd1の深さから、第1の圧縮深さDOC1まで延び、第2の傾きm2を有する第2の領域であって、|m1|≦|m2|である領域を含んでいる。
【0010】
第2の態様において、応力プロファイルが、圧縮領域に負の曲率を有する小区域を含み、負の曲率の最大絶対値がd1にある、態様1に記載のガラス物品が提供される。
【0011】
第3の態様において、負の曲率の最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である、態様1又は2に記載のガラス物品が提供される。
【0012】
第4の態様において、d1における、応力プロフィアルの傾きがゼロである態様1~3いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0013】
第5の態様において、DOC1≧0.2tである、態様1~4いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0014】
第6の態様において、CS1>0、m1>0、及びm2<0である、態様1~5いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0015】
第7の態様において、tが約0.1mm~約2mmである、態様1~6いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0016】
第8の態様において、DOC1が、約0.14t~約0.35tである、態様1~7いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0017】
第9の態様において、第1の最大圧縮応力CS1が、表面に存在し、約500MPa~約2,000MPaであり、応力プロファイルが、正の曲率を有する第2の小区域を更に含む、態様1~8いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0018】
第10の態様において、第1の小区域の負の曲率が、tの約2%~約25%の空間的範囲にわたり、10MPa/(t(mm))2を超える絶対値を有する、態様1~9いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0019】
第11の態様において、第1の最大圧縮応力CS1が第1の表面に存在し、圧縮応力が、第1の表面下約8μm未満の深さにおいて、第1の最大圧縮応力CS1の50%未満に減少する、態様1~10いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0020】
第12の態様において、約40MPa/(t(mm))1/2~約150MPa/(t(mm))1/2の物理的中心張力を更に有する、態様1~11いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0021】
第13の態様において、応力プロファイルの第2の領域が変曲点を含む、態様1~12いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0022】
第14の態様において、応力プロファイルの第1の領域が、第1の表面から深さd2まで延びる小区域を更に含み、d2<d1であり、小区分の少なくとも一部が第3の傾きm3を有し、|m1|<|m3|であり、30MPa/μm≦|m3|≦200MPa/μmである、態様1~13いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0023】
第15の態様において、50MPa/μm≦|m3|≦200MPa/μmである、態様1~14いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0024】
第16の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様1~15いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0025】
第17の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約4モル%のP2O5を含み、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1、ここでM2O3=Al2O3+B2O3であり、RxOは、前記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する、一価及び二価のカチオン酸化物の合計である、態様16記載のガラス物品が提供される。
【0026】
第18の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約40モル%~約70モル%のSiO2と、約11モル%~約25モル%のAl2O3と、約2モル%~約15モル%のP2O5と、約10モル%~約25モル%のNa2Oと、約10モル%~約30モル%のRxOとを含み、ここで、RxOはガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である、態様16記載のガラス物品が提供される。
【0027】
第19の態様において、ガラス物品の第1の表面に対向する、第2の表面から第2の圧縮深さDOC2まで延びる第2の圧縮層と、第2の圧縮層内における第2の最大圧縮応力CS2と、DOC1とDOC2との間に延びる張力領域とを更に有する、態様1~18いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0028】
第20の態様において、DOC1=DOC2である、態様19記載のガラス物品が提供される。
【0029】
第21の態様において、ガラス物品が提供される。本ガラス物品は、厚さtと、t/2に位置する中心と、ガラス物品の表面と前記中心との間に位置し、圧縮応力下にあり、表面から圧縮深さDOCまで延びる圧縮領域と、応力プロファイルが負の曲率を有する、圧縮領域内の小区域であって、負の曲率の最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である、小区域と、圧縮深さDOCから、ガラス物品の少なくとも中心まで延び、物理的中心張力CT下にある張力領域とを有している。
【0030】
第22の態様において、tが約0.1mm~約2mmである、態様21記載のガラス物品が提供される。
【0031】
第23の態様において、DOCが、約0.14t~約0.35tである、態様21又は22記載のガラス物品が提供される。
【0032】
第24の態様において、最大圧縮応力CS1が、第1の表面に存在し、約500MPa~約2,000MPaであり、圧縮領域が、応力プロファイルが正の曲率の小区域を有する小区域を更に含む、態様21~23いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0033】
第25の態様において、圧縮応力が、表面下約8μm未満の深さにおいて、最大圧縮応力の50%未満に減少する、態様21~24いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0034】
第26の態様において、負の曲率が、tの約2%~約25%の空間的範囲を有する小区域にわたり、10MPa/(t(mm))2を超える絶対値を有する、態様21~25いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0035】
第27の態様において、CTが、約40MPa/(t(mm))1/2~約150MPa/(t(mm))1/2である、態様21~26いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0036】
第28の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様21~27いずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0037】
第29の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約4モル%のP2O5を含み、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1であり、M2O3=Al2O3+B2O3であり、RxOは、アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する、一価及び二価のカチオン酸化物の合計である、態様28記載のガラス物品が提供される。
【0038】
第30の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約40モル%~約70モル%のSiO2と、約11モル%~約25モル%のAl2O3と、約2モル%~約15モル%のP2O5と、約10モル%~約25モル%のNa2Oと、約13モル%~約30モル%のRxOとを含み、ここで、RxOは前記ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である、態様28記載のガラス物品が提供される。
【0039】
第31の態様において、ガラスを強化する方法が提供される。本方法は、第1のアルカリカチオンを含むガラスを、第2のアルカリカチオンを含むイオン交換浴に浸漬して、ガラス内の第1のアルカリカチオンを、イオン交換浴からの第2のアルカリカチオンに交換し、ガラスの第1の表面から延びる第1の圧縮層を形成するステップであって、ガラスが厚さtを有し、第2のアルカリカチオンが第1のアルカリカチオンと異なり、第1の表面が第2の表面に対向し、第1の圧縮層が、第1の表面から第1の圧縮深さDOC1まで延び、前記第1の圧縮層が第1の圧縮応力CS1を有する、ステップと、第2のアルカリカチオンを、第1の表面からt/2に位置するガラスの中心まで拡散させるステップであって、ガラスの応力が、ガラスの深さの関数として変化して応力プロファイルが形成される、ステップとを備えている。応力プロファイルは、第1の表面からガラスの深さd1まで延びる第1の圧縮領域であって、d1>0.06tであり、第1の圧縮領域の少なくとも一部が第1の傾きm1を有し、前記第1の表面に第2の圧縮応力CS2を有し、CS2≦CS1である領域、及び少なくともd1の深さから、第2の圧縮深さDOC2まで延び、第2の傾きm2を有する第2の圧縮領域であって、|m1|≦|m2|、及びDOC2>DOC1である領域を含んでいる。
【0040】
第32の態様において、ガラスを、第2のアルカリカチオンを含むイオン交換浴に浸漬するステップが、第1のアルカリカチオンを、イオン交換浴からの第2のアルカリカチオンに交換し、ガラスの第2の表面から延びる第2の圧縮層も形成する、実施形態31記載の方法が提供される。
【0041】
第33の態様において、第1の圧縮層及び第2の圧縮層が同時に形成される、態様32記載の方法が提供される。
【0042】
第34の態様において、d1における、応力プロフィアルの傾きがゼロである、態様31~33いずれか1つに記載の方法が提供される。
【0043】
第35の態様において、拡散させるステップが、ガラスを約400℃~約500℃の温度に加熱する熱拡散ステップを含む、態様31~34いずれか1つに記載の方法が提供される。
【0044】
第36の態様において、熱拡散ステップが、ガラスを、その温度で、少なくとも約16時間加熱することを含む、態様35記載の方法。
【0045】
第37の態様において、イオン交換浴が、第1のアルカリカチオンを含む塩を少なくとも30質量%含む、態様31~36いずれか1つに記載の方法が提供される。
【0046】
第38の態様において、ガラスをイオン交換浴に浸漬するステップの後に、ガラスを第2のイオン交換浴に浸漬し、第1の表面に、第3の圧縮応力CS3を有する表面圧縮領域を形成するステップであって、CS3>CS1である、ステップを更に備えた、態様31~37いずれか1つに記載の方法が提供される。
【0047】
第39の態様において、第2のイオン交換浴が、第2のアルカリカチオンを含む少なくとも約90質量%の塩を含む、実施形態38記載の方法が提供される。
【0048】
第40の態様において、ガラスが、アルカリアルミノシリケートガラスを含む、態様31~39いずれか1つに記載の方法が提供される。
【0049】
第41の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約4モル%のP2O5を含み、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1であり、M2O3=Al2O3+B2O3、RxOは、前記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する、一価及び二価のカチオン酸化物の合計である、態様40記載の方法が提供される。
【0050】
第42の態様において、アルカリアルミノシリケートガラスが、約40モル%~約70モル%のSiO2と、約11モル%~約25モル%のAl2O3と、約2モル%~約15モル%のP2O5と、約10モル%~約25モル%のNa2Oと、約10モル%~約30モル%のRxOとを含み、ここで、RxOはガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である、態様40記載の方法。
【0051】
第43の態様において、応力プロファイルが、圧縮応力領域に、負の曲率を有する小区域を含み、負の曲率の最大絶対値がd1にある、態様31~42いずれか1つに記載の方法が提供される。
【0052】
第44の態様において、負の曲率の最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である、態様43記載の方法が提供される。
【0053】
第45の態様において、消費者向け電子装置が提供される。本消費者向け電子装置は、前面、背面、及び側面を有するハウジングと、少なくとも部分的にハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及びハウジングの前面に又は前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、ディスプレイ上に配置された態様1~30いずれか1つに記載のガラス物品とを備えている。
【0054】
これ等及び他の態様、効果、及び顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付図面、及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図2】拡散時間を関数とする、800μmの厚さを有するイオン交換ガラスの、モデル化及び測定応力プロファイルをプロットした図。
【
図4】460℃で40時間イオン交換したガラスの、モデル化及び測定応力プロファイルをプロットした図。
【
図5】460℃で60時間イオン交換し、次いで490℃で32時間イオン交換したガラスの、モデル化及び測定応力プロファイルのプロット図。
【
図6】組成が異なる混合KNO
3/NaNO
3浴において、460℃で28時間イオン交換したガラスの測定応力プロファイルをプロットした図。
【
図7】41質量%のNaNO
3を含有する浴において、460℃で28時間イオン交換したガラスについて取得した、モデル化応力プロファイル及び測定応力プロファイルをプロットした図。
【
図8】100質量%のKNO
3浴において、410℃で7時間イオン交換し、次いで450℃で5時間加熱して熱拡散させた、0.5mm厚のガラスのモデル化及び測定応力プロファイルをプロットした図。
【
図9】純(100質量%)KNO
3浴において、460℃で24時間イオン交換し、次いで450℃で5時間~24時間の範囲の時間加熱して熱拡散させた、0.5mm厚のガラスのモデル化及び測定応力プロファイルをプロットした図。
【
図10】純(100質量%)KNO
3浴において、460℃で24時間イオン交換し、次いで450℃で5時間~24時間の範囲の時間加熱して熱拡散させた、0.8mm厚のガラスのモデル化及び測定応力プロファイルをプロットした図。
【
図11】17質量%のNaNO
3及び83質量%のKNO
3を含有する浴において、430℃で11.5時間イオン交換し、次いで430℃で13.07時間熱処理した0.4mm厚のガラスについて取得したS字プロファイルをプロットした図。
【
図12】第1のイオン交換及びその後の熱処理後のガラス物品の応力プロファイルの概略図。
【
図13】第1のイオン交換、その後の熱処理、及び第2のイオン交換後のガラス物品の応力プロファイルの概略図。
【
図14】第1のイオン交換、熱処理、及び第2のイオン交換後のガラスについて取得した応力プロファイルの概略図。
【
図15】38質量%のNaNO
3及び62質量%のKNO
3を含有する浴において、450℃で11時間イオン交換し、420℃で6.5時間熱処理し、次いで0.5質量%のNaNO
3及び99.5%のKNO
3を含有する浴において、390℃で11分間イオン交換した0.4mmガラスについて取得した、TM導波光及びTE導波光の屈折率プロファイルをプロットした図。
【
図16】
図15の屈折率プロファイルから抽出された、応力プロファイルをプロットした図。
【
図17】本明細書に開示の任意の強化物品を組み込んだ例示的な電子装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の説明において、同様の参照符号は、図面に示された幾つかの図を通して同様の又は対応する部分を示す。別に明記しない限り、「上端部」、「底部」、「外側」、「内側」等の用語は便宜的な言葉であり、限定用語として解釈されるべきではないことも理解されたい。加えて、要素の群のうちの少なくとも1つ及びそれらの組み合わせを含むとして、群が記述されている場合には、常に、その群は、個別に又は互いに組み合わせて、列挙された要素のうちの任意の数を含む、実質的に成る、あるいは成ることができることを理解されたい。同様に、要素の群のうちの少なくとも1つ又はそれらの組み合わせから成るとして群が記述されている場合には、常に、その群は、個別に又は互いに組み合わせて、列挙された要素のうちの任意の数から成ることができることを理解されたい。別に明記しない限り、値の範囲が列挙されている場合、その範囲は、範囲の上限及び下限の両方、並びにその間の任意の範囲を含む。本明細書において、別に明記しない限り、名詞は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」の対象を指す。また、本明細書及び図面に開示した様々な特徴は、あらゆる組み合わせで使用することができることを理解されたい。
【0057】
本明細書において、「ガラス物品」及び「ガラス物品類」という用語は、全部又は一部がガラスで構成された任意の物体を含む最も広い意味で使用される。別に明記しない限り、すべての組成はモルパーセント(mol%)で示される。
【0058】
本明細書に記載のように、圧縮応力(CS)及び中心張力又は物理的中心張力(CT)はメガパスカル(MPa)で示し、層深さ(DOL)及び圧縮深さ(DOC)は交換可能に使用することができ、マイクロメートル(μm)で示し、ここで1μm=0.001mmであり、別に明記しない限り、厚さ(t)は、本明細書において、ミリメートルで示し、ここで1mm=1,000μmである。本明細書において、圧縮応力は正の値として示し、中心張力及び物理的中心張力(CT)は負の値として示す。
【0059】
(表面CSを含む)圧縮応力は、(日本の)オリハラ工業(株)製のFSM-6000等の市販の機器を用いた表面応力計(FSM)により測定する。表面応力の測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光学係数(SOC)の正確な測定に依存する。SOCは、参照により全内容が本明細書に援用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM標準C770-16に記載の手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。
【0060】
本明細書において、DOCは、本明細書に記載の化学強化アルカリアリミノシリケートガラス物品の応力が圧縮から引張に変化する深さを意味する。DOCはイオン交換処理に応じ、FSM又は散乱光偏光器(SCALP)によって測定することができる。ガラス物品にカリウムイオンを交換することによって、ガラス物品に応力が生成される場合には、FSMを用いてDOCが測定される。ガラス物品にナトリウムイオンを交換することによって、ガラス物品に応力が生成される場合には、SCALPを用いてDOCが測定される。ガラス物品にカリウム及びナトリウムイオンの両方を交換することによって、ガラス物品に応力が生成される場合には、ナトリウムの交換深さがDOCを示し、カリウムイオンの交換深さが圧縮応力の大きさの変化を示すと考えられるので(圧縮応力から引張応力への応力の変化ではない)SCALPを用いてDOCが測定され、かかるガラス物品のカリウムイオンの交換深さはFSMによって測定される。
【0061】
屈折近接場(RNF)法又はSCALPを用いて応力プロファイルを測定することができる。RNF法を用いて応力プロファイルを測定する場合には、SCALPによって与えられる最大CT値がRNFに使用される。特に、RNFによって測定された応力プロファイルは、力平衡であり、SCALP測定によって与えられる最大CT値に合わせて較正される。RNF法は、参照により全内容が本明細書に援用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する、米国特許第8,854,623号明細書に記載されている。具体的には、RNF法は、参照ブロックに隣接してガラス物品を配置するステップ、直交偏光間で1Hz~50Hzの速度で切り替えられる偏光切換光ビームを生成するステップ、偏光切換光ビームの電力量を測定するステップ、及び偏光切換基準信号を生成するステップを含み、各々の直交偏光における測定電力量は互いに50%以内である。この方法は、偏光切換光ビームをガラスサンプル及びガラスサンプルの異なる深さの基準ブロックに通すステップ、次いでリレー光学系を用いて透過した偏光切換光ビームを、偏光切換検出器信号を生成する、信号光検出器に中継するステップを更に備えている。この方法は検出器信号を基準信号で除算して正規化検出器信号を形成するステップ、及び正規化検出器信号からガラスサンプルのプロファイル特性を決定するステップも含んでいる。
【0062】
応力プロファイルは、参照により全内容が本明細書に援用される、米国特許第9140543号明細書に教示されている逆Wetzel-Kramers-Brillouin(IWKB)法によって、TM及びTE偏光の結合光学モードのスペクトルから決定することもできる。
【0063】
本明細書で説明するのは、ガラス物品内の位置(x)の関数(σ (x))として変化する応力プロファイル(σ)を有する強化ガラス物品である。位置(x)は、表面からのガラス物品の深さを指すことができる。応力プロファイルは、位置(x)を用いた、任意の点における応力(σ)の一次導関数である傾き(S)を有している、即ちS=(dσ/dx)である。直線に厳密に近似する応力プロファイルのセグメント又は部分の傾きは、直線セグメントとしてよく近似する領域の平均傾きとして定義される。応力プロファイルの傾き率(SR)又は応力プロファイルの曲率は、位置(x)を用いた応力(σ)の二次導関数、即ちSR=(d2σ/dx2)である。
【0064】
強化ガラス物品の概略断面図を
図1に示す。ガラス物品100は、厚さt、第1の表面110、及び第2の表面112を有している。一部の実施の形態において、ガラス物品100は、約2mmまでの厚さt、及びその間のすべての範囲及び部分範囲の厚さ、例えば、一部の実施の形態において、約0.1mm~約2mm、又は別の実施の形態において、約約0.1mm~約1mmの厚さを有している。
図1に示す実施の形態は、ガラス物品100を平坦な平面シート又はプレートとして示しているが、ガラス物品は、例えば、三次元形状又は非平面構成等、他の構成を有することができる。ガラス物品100は、第1の表面110からガラス物品100のバルク内に圧縮深さ(DOC)d
1まで延びる第1の圧縮層120を有している。
図1に示す実施の形態において、ガラス物品100は、第2の表面112から第2の圧縮深さd
2まで延びる第2の圧縮層122も有している。第1及び第2の圧縮層120、122の各々は、圧縮応力CS下にある。一部の実施の形態において、第1及び第2の圧縮層120、122の各々は、それぞれ第1及び第2の表面110、112において最大圧縮応力を有している。ガラス物品100はd
1~d
2に延びる中心領域130も有している。中心領域130は、圧縮層120、122の圧縮応力を均衡又は相殺する引張応力又は物理的中心張力(CT)下にある。第1及び第2の圧縮層120、122の圧縮深さd
1及びd
2によって、第1及び第2の表面110、112に対する鋭い衝撃による傷が、第1及び第2の圧縮層120、122の深さd
1、d
2を貫通する可能性を抑制することによって、傷が伝播しないようにガラス物品100を保護する。
【0065】
1つの態様において、強化ガラスの応力は深さの関数として変化し、ガラスの第1の表面から圧縮深さ(DOC)又は層深さ(DOL)まで延びる圧縮層を有している。圧縮層は圧縮応力(CS)下にある。このガラス物品の応力プロファイルを
図12に概略的に示す。1回のイオン交換ステップによって、ガラスの表面から第1の圧縮深さ(DOC1)に延びる圧縮層が形成され、圧縮層は第1の圧縮応力(CS1)下にある。1回のイオン交換ステップによって取得した応力プロファイル305は、線形であるか又は相補誤差関数(erfc)で近似できるうちのいずれかであってよい。
【0066】
イオン交換浴からのカチオンは、次に、熱拡散ステップにおいて、ガラスの表面からt/2の深さに位置するガラスの中心まで拡散することができる。一部の実施の形態において、これはイオン交換を長時間(例えば、460℃で16時間以上)継続することによって、及び/又は一部の実施の形態では、その後の熱拡散(加熱)ステップによって達成される。カチオンは、ガラスの対向する表面から、拡散したカチオンがガラス330の中心で出会うまで拡散することができる。一部の実施の形態において、熱拡散ステップは、表面の圧縮応力を第2の圧縮応力(CS2)に減少させ、圧縮深さを第2の圧縮深さ(DOC2)に増加させ、CS2≦CS1及びDOC2>DOC1という結果をもたらす。
【0067】
一部の実施の形態において、熱拡散ステップは、約400℃~約500℃の温度で、少なくとも約0.5時間~40時間ガラスを加熱することを含んでいる。
【0068】
CS1/DOC、ここでCS1は第1のイオン交換後のガラス表面における圧縮応力として示される、第1のイオン交換ステップ後の傾き(S1)は、その絶対値(|S1|)が約0.5MPa/μm~約30MPa/μmである。一部の実施の形態において、傾き(S1)が絶対値(|S1|)を有し、1.2MPa/μm≦|S1|≦20MPa/μm、1.5MPa/μm≦|S1|≦15MPa/μm、並びにこれ等の間のすべての範囲及び部分範囲である。更に別の実施の形態において、傾き(S1)が、約0.6MPa/μm~約15MPa/μmの絶対値|S1|を有し、0.8MPa/μm≦|S1|≦10MPa/μm、1.5MPa/μm≦|S1|≦10MPa/μm、並びにこれ等の間のすべての範囲及び部分範囲である。
【0069】
熱拡散ステップ後、ガラスは、第1の表面からガラスの深さ(d1)まで延びる第1の領域310であって、d1>0.06tであり、第1の領域の少なくとも一部が第1の傾き(m1)を有する領域、及び少なくともd1の深さから第2の圧縮深さ(DOC2)に延び、第2の傾き(m2)を有し、|m1|≦|m2|である第2の領域320を有する、
図12に概略的に示す応力プロファイル300を有している。例えば、
図13に示すように、一部の実施の形態において、d1における傾きがゼロであってよく、これはd1における応力プロファイルの一次導関数((dσ/dx)、ここでx=d1)がゼロであることを意味している。一部の実施の形態において、応力プロファイルは負の曲率を含み、d1は、負の曲率の最大絶対値の点にあってよい。一部の実施の形態において、第1の傾き(m1)はゼロ以上(m1>0)であり、第2の傾き(m2)は負(m2<0)である。
【0070】
一部の実施の形態において、ガラス物品が二段階のイオン交換処理によって強化される。ここでは、熱拡散ステップに続き、ガラス物品に2回目のイオン交換処理が施される。2回目のイオン交換は、1回目のイオン交換浴とは異なるイオン交換浴において実施される。2回目のイオン交換ステップ後に得られた、応力プロファイル350を
図13に概略的に示す。イオン交換処理の2回目のステップは、第1の領域310の小区域に、圧縮応力「スパイク」312、即ち、圧縮応力の急激な増加をもたらす、ここで小区域はガラス物品の表面に隣接し、表面下第2の深さ(d2)まで延び、最大圧縮応力(CS)を有している。一部の実施の形態において、d2<d1である。2回目のイオン交換ステップの後、スパイク領域312の傾き(m3)は、絶対値(|m3|)を有し、その範囲は約30MPa/μm~約200MPa/μm(30MPa/μm≦|m3|≦200MPa/μm)である。一部の実施の形態において、40MPa/μm≦|m3|≦160MPa/μm、別の実施の形態において、50MPa/μm≦|m3|≦200MPa/μm、更に別の実施の形態において、45MPa/μm≦|m3|≦120MPa/μmである。一部の実施の形態において、|m1|<|m3|である。
【0071】
本明細書に記載の第1のイオン交換処理に続いて、熱処理及び第2のイオン交換処理を施したサンプルの応力プロファイルを
図14に示す。サンプルの処理に用いた条件も図に示す。すべてのサンプルが、表面の近傍において圧縮応力の急激な増加又は「スパイク」及び多少の負の曲率を有する領域を示している。
【0072】
ガラス物品が一段階のイオン交換処理によって強化される実施の形態において、CS/DOCで示される傾きSが、約0.5MPa/μm(又は88MPa)/(88μm/2))~約200MPa/μm(又は1,000MPa/5μm)の絶対値|S|を有している。別の実施の形態において、傾き(S)は、約0.6MPa/μm(又は88MPa/140μm)~約200MPa/μm(又は1,000MPa/5μm)の絶対値(|S|)を有している。
【0073】
表面と圧縮深さ(DOC)との間の圧縮層の応力プロファイルの傾斜率(SR)は、SR値の符号が変化する少なくとも1つの領域を含み、応力プロファイルの傾き(S)が単純増加又は単純減少する関数ではないことを示している。代わりに、傾き(S)は、減少から増加パターン又はその逆に変化し、応力プロファイルのS字領域を画成している。
【0074】
一部の実施の形態において、圧縮深さは、厚さの少なくとも20%、即ちDOC≧0.2tである。一部の実施の形態において、圧縮深さ(DOC)は約0.05t~約0.35t、並びにその間のすべての範囲及び部分範囲、例えば、一部の実施の形態において、約0.14t~約0.35t、別の実施の形態において、約0.15t~約0.25t、更に別の実施の形態において、約0.20t~約0.25tである。強化ガラス物品の厚さ(t)は、約0.4mm以下等、約0.1mm~約2mmである。
【0075】
一部の実施の形態において、圧縮層は、約50MPa~約1,000MPa、又は別の実施の形態において、約500MPa~約2,000MPa、並びにその間のすべての範囲及び部分範囲を含む圧縮応力(CS)を表面に有する、近表面領域を更に有することができる。圧縮応力層の応力プロファイルは、負の曲率を有する第1の小区域と、正の曲率を有する第2の小区域とを更に有することができる。本明細書において、「負の曲率」という用語は、その領域の応力プロファイルが下方に凹であり、「正の曲率」とは、その領域の応力プロファイルが上方に凹であることを意味する。一部の実施の形態において、負の曲率の絶対値が、空間的範囲が厚さ(t)の約2%~約25%の小区域にわたって10MPa/(t(mm))2を超えている。一部の実施の形態において、負の曲率の最大絶対値は、約20MPa/(t(mm))2~約4,000MPa/(t(mm))2、並びにその間のすべての範囲及び部分範囲、例えば、一部の実施の形態において、約40MPa/(t(mm))2~約2,000MPa/(t(mm))2、更に別の実施の形態において、約80MPa/(t(mm))2~約1,000MPa/(t(mm))2である。一部の実施の形態において、第2の小区域の応力プロファイルは変曲点を有することができる。物理的中心張力(CT)は、約40MPa/(t(mm))1/2~約150MPa/(t(mm))1/2、並びにその間のすべての範囲及び部分範囲、例えば、一部の実施の形態において、約42MPa/(t(mm))1/2~約100MPa/(t(mm))1/2である。
【0076】
応力プロファイルの曲率は、関心のある応力プロファイルの一部を特定することによって測定される。関心部分に二次多項式適合を適用し、その結果得られる最高次の項の係数が関心部分の曲率である。応力プロファイルのy軸がMPa単位で、応力プロファイルのx軸がmm単位である場合、曲率はMPa/mm2の単位を有することになる。加えて、応力プロファイルのx軸がμm単位である場合、曲率は適切な変換係数によってMPa/mm2の単位に変換することができる。
【0077】
場合により、測定した応力プロファイルが、測定プロセスの結果として、アーチファクト又はノイズを含むことがある。かかる場合、応力プロファイルの曲率を決定する前に、アーチファクトを除去して、曲率の計算精度が高められる。アーチファクトは、当技術分野で周知の任意の適切な処理方法によって除去することができる。例えば、応力プロファイル、又はそこから応力プロファイルが抽出される、TE及びTM屈折率プロファイル(例えば、IWKB法を用いて応力プロファイルを決定するとき)にローパスフィルターを適用することによって、アーチファクトを除去することができる。
【0078】
一部の実施の形態において、圧縮層の圧縮応力は、ガラス物品の表面における最大圧縮応力(CS)から、表面下約8μm未満の深さにおいて、最大圧縮応力の50%未満に減少し得る。
【0079】
一部の実施の形態において、ガラス物品はイオン交換され、アニールされる(即ち、熱拡散ステップを受ける)。特定の実施の形態において、ガラスは、一段階イオン交換(SIOX)処理でイオン交換され、次いでアニール処理が施される。別の実施の形態において、イオン交換処理は、第1のイオン交換ステップの後に、任意の熱アニール又は拡散ステップを含み、その後、第2のイオン交換浴が第1のイオン交換浴の組成と異なる組成を有する、第2のイオン交換ステップが続く、二段階又は二重イオン交換(DIOX)処理である。一部の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、少なくとも90質量%のKNO3及び10質量%未満のNaNO3を含んでいる。別の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、少なくとも95質量%のKNO3及び浴の残余の割合を占めるKNO3を含んでいる。更に別の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、実質的に100質量%のKNO3を含んでいる。第2のイオン交換ステップは、ガラスの表面に直接隣接する領域に、圧縮応力「スパイク」、即ち圧縮応力の急激な増加をもたらす。
【0080】
一段階イオン交換処理を用いてガラス物品をイオン交換する実施の形態において、約25質量%~約100質量%のKNO3、及び約0質量%~約75質量%のNaNO3を含むイオン交換浴において、約300℃~約500℃の温度で物品がイオン交換される。イオン交換浴は、浴の性能を改善するために、ケイ酸等の他の材料を含むことができる。
【0081】
本明細書に記載のガラスは、イオン交換可能なアルカリアルミノシリケートガラスであって、一部の実施の形態において、本技術分野で周知のスロットドロー法、フュージョンドロー法等のダウンドロー法によって形成することができる。特定の実施の形態において、かかるガラスは、少なくとも約100キロポアズ(kP)、又は少なくとも130kPの液相粘度を有することができる。1つの実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスはSiO2、Al2O3、P2O5、及び少なくとも1種のアルカリ金属酸化物(R2O)を含み、0.75≦[(P2O5(モル%)+R2O(モル%))/M2O3(モル%)] ≦1.2、であり、ここでM2O3=Al2O3+B2O3である。一部の実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、約40モル%~約70モル%のSiO2、約0モル%~約28モル%のB2O3、約0モル%~約28モル%のAl2O3、約1モル%~約14モル%のP2O5、及び約12モル%~約16モル%のR2O、及び特定の実施の形態において、約40モル%~約64モル%のSiO2、約0モル%~約8モル%のB2O3、約16モル%~約28モル%のAl2O3、約2モル%~約12モル%のP2O5、及び約10モル%~約16モル%のR2O、又は約12モル%~約16モル%のR2Oであって、ここでR2OはNa2Oを含む、を含むか、これ等から実質的に成っている。一部の実施の形態において、11モル%≦M2O3≦30モル%、一部の実施の形態において、13モル%≦RxO≦30モル%であって、ここでRxOはガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である。一部の実施の形態において、ガラスはリチウムを含んでいない。別の実施の形態において、ガラスは約10モル%までのLi2O、又は約7モル%までのLi2Oを含むことができる。これ等のガラスについては、参照により、全内容が本明細書に援用される、米国特許第9,346,703号として付与された、2011年11月28日、Dana Craig Bookbinder他によって出願された「Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold」と題する、米国特許出願第13/305,271号明細書であって、2010年11月30日に出願された、同じ名称の米国仮特許出願第61/417,941号からの優先権を主張する明細書に記載されている。
【0082】
特定の実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、少なくとも約2モル%のP2O5又は少なくとも約4モル%のP2O5を含み、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1、ここでM2O3=Al2O3+B2O3であり、RxOはアルカリアルミノシリケートガラス中に存在する一価及び二価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施の形態において、一価及び二価のカチオン酸化物は、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、 MgO、CaO、SrO、BaO、及びZnOから成る群より選択される。一部の実施の形態において、ガラスはリチウムを含まず、約40モル%~約70モル%のSiO2、約11モル%~約25モル%のAl2O3、約2モル%からのP2O5、又は4モル%~約15モル%のP2O5、約10モル%からのNa2O、又は約13モル%~約25モル%のNa2O、約13モル%~約30モル%のRxO、ここで、RxOはガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計、約11モル%~約30モル%のM2O3、ここで、M2O3=Al2O3+B2O3、約0モル%~約1モル%のK2O、約0モル%~約4モル%のB2O3、及び3モル%以下のTiO2、MnO、Nb2O5、MoO3、Ta2O5、WO3、ZrO2、Y2O3、La2O3、HfO2、CdO、SnO2、Fe2O3、CeO2、As2O3、Sb2O3、Cl、及びBrのうちの1つ以上を含むか、これ等から実質的に成り、1.3< [(P2O5+R2O)/M2O3] ≦2.3であり、ここでR2Oはガラス中に存在する一価のカチオン酸化物の合計である。一部の実施の形態において、ガラスはリチウムを含んでいない。別の実施の形態において、ガラスは約10モル%までのLi2O又は約7モル%までのLi2Oを含むことができる。このガラスは、いずれも2011年11月16日に出願された米国仮特許出願第61/560,434号に対する優先権を主張する、「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」と題する、2012年11月15日に出願されたTimothy M.Grossの米国特許第9,156,724号明細書及び「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」と題する2012年11月15日に出願されたTimothy M.Grossの米国特許第8,756,262号明細書に記載されている。前述の特許及び出願は、参照により、全内容が本明細書に援用される。
【0083】
別の実施の形態において、アルカリアルミノシリケートガラスは、SiO2、Al2O3、P2O5、及び約1モル%を超えるK2Oを含み、少なくとも約90×10-7℃-1の熱膨張係数(CTE)を有している。一部の実施の形態において、ガラスは、約57モル%~約75モル%のSiO2(即ち、57モル%≦SiO2≦75モル%)、約6モル%~約17モル%のAl2O3(即ち、6モル%≦Al2O3≦17モル%)、約2モル%~約7モル%のP2O5(即ち、2モル%≦P2O5≦7モル%)、約14モル%~約17モル%のNa2O(即ち、14モル%≦Na2O≦17モル%)、及び約1モル%超~約5モル%のK2O(即ち1モル%<K2O≦5モル%)を含むか、これ等から実質的に成っている。一部の実施の形態において、ガラスは、約57モル%~約59モル%のSiO2(即ち、57モル%≦SiO2≦59モル%)、約14モル%~約17モル%のAl2O3(即ち、14モル%≦Al2O3≦17モル%)、約6モル%~約7モル%のP2O5(即ち、6モル%≦P2O5≦7モル%)、約16モル%~約17モル%のNa2O(即ち、16モル%≦Na2O≦17モル%)、及び約1モル%超~約5モル%のK2O(即ち1モル%<K2O5モル%)を含むか、これ等から実質的に成っている。特定の実施の形態において、ガラスは約2モル%までのMgO(即ち、0モル%≦MgO≦2モル%)及び/又は約1モル%までのCaO(0モル%≦CaO≦1モル%)を含んでいる。一部の実施の形態において、ガラスは、実質的にMgOを含んでいない。一部の実施の形態において、ガラスは、実質的にB2O3及び/又はリチウム若しくはLi2Oを含んでいない。これ等のガラスについては、参照により、全内容が本明細書に援用される、米国特許出願公開第2015/0064472号として公開されている、2014年8月22日、Timothy M.Gross他によって出願された「Damage Resistant Glass with High Coefficient of Thermal Expansion」と題する、米国特許出願第14/465,888号明細書であって、2013年8月27日に出願された、同じ名称の米国仮特許出願第61/870,301号からの優先権を主張する明細書に記載されている。
【0084】
別の態様において、厚さ(t)を有するガラスを強化して、本明細書に記載の応力プロファイルを達成する方法が提供される。本方法は、ガラス中に存在するアルカリカチオン(例えば、Na+、Li+)と異なるアルカリカチオン(例えば、K+)含むイオン交換浴にガラスを浸漬して、ガラス内のアルカリカチオンをイオン交換浴からのアルカリカチオンに交換するステップを備えている。イオン交換により、ガラスの表面から第1の圧縮深さ(DOC1)に延びる圧縮層が形成され、圧縮層は第1の圧縮応力(CS1)下にある。
【0085】
イオン交換浴からのカチオンは、次に、ガラスの表面からt/2の深さにあるガラスの中心まで拡散する。一部の実施の形態において、これはイオン交換を長時間(例えば、460℃で16時間以上)継続することによって、及び/又は一部の実施の形態では、その後の熱拡散(加熱)ステップによって達成される。カチオンは、ガラスの対向する表面から、拡散したカチオンがガラス330の中心で出会うまで拡散することができる。一部の実施の形態において、熱拡散ステップは、表面の圧縮応力を第2の圧縮応力(CS2)に減少させ、圧縮深さを第2の圧縮深さ(DOC2)に増加させ、CS2≦CS1及びDOC2>DOC1という結果をもたらす。
【0086】
一部の実施の形態において、熱拡散ステップは、約400℃~約500℃の温度で、約0.5時間~40時間ガラスを加熱することを含んでいる。
【0087】
一部の実施の形態において、本方法は、第1のイオン交換又は熱拡散ステップのうちのいずれかに続き、第2のイオン交換を含むことができる。前述のように、第2のイオン交換浴は第1のイオン交換浴の組成とは異なる組成を有している。一部の実施の形態において、第2のイオン交換浴は少なくとも90質量%のKNO3及び10質量%未満のNaNO3を含んでいる。別の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、少なくとも95質量%のKNO3及び浴の残余の割合を占めるKNO3を含んでいる。更に別の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、実質的に100質量%のKNO3を含んでいる。第2のイオン交換ステップは、ガラスの表面に直接隣接する領域に、圧縮応力「スパイク」、即ち圧縮応力の急激な増加をもたらし、表面に第3の圧縮応力(CS3)をもたらし、ここでCS3>CS1である。
【0088】
理想的な条件下では、イオン交換されたガラスの応力プロファイルの形状及び値は、古典的な拡散方程式に従うはずである。この方程式の解は、イオンが制限なく拡散する単一の境界の場合、応力プロファイルは、相補誤差関数(erfc(x))となるはずであることを示している。本明細書において、「誤差関数」及び「erf」という用語は、0と
【0089】
【0090】
との間の正規化されたガウス関数の積分の2倍の関数を意味する。「相補誤差関数」及び「erfc」は1マイナス誤差関数、即ち、erfc(x)=1-erf(x)である。有界の場合、例えば、イオンがガラスの対向する表面から中心に拡散する場合、強化カチオンの拡散は、イオンがガラスの中心で出会うまで相補誤差関数に従うが、その後、全体の拡散プロファイルは、イオン分布の放物線形状プロファイルによってより良く近似され得る。応力プロファイルは、ガラス内部のイオン分布に直接関連している。従って、イオンの分布が相補誤差関数又は放物線関数に従うか否かを問わず、応力プロファイルはイオン分布に類似しているはずである。
【0091】
特定のガラスに関し、予想応力プロファイルと観測応力プロファイルとの間に顕著な相違が生じ得る。これは、ガラス中に存在する応力緩和、及び追加のアニール効果によるものと思われる。約57モル%のSiO
2、0モル%のB
2O
3、約17モル%のAl
2O
3、約7モル%のP
2O
5、約17モル%のNa
2O、約0.02モル%のK
2O、及び約3モル%のMgOの公称組成、及び800μmの厚さを有する、イオン交換ガラスを広範囲の拡散時間にわたってプロットした、モデル化及び測定した応力プロファイルを
図2に示す。このガラスは、20質量%のNaNO
3/80質量%のKNO
3の溶融塩浴において、460℃で、16時間~約184時間イオン交換したものである。モデル化した応力プロファイルは16時間、40時間、64時間、135時間、159.25時間、及び183.53時間の拡散/イオン交換時間に関するものである。応力プロファイルは、183.43時間の拡散/イオン交換時間について、SCALP(偏光分析法)で、また16時間、40時間、64時間、及び159.25時間の拡散/イオン交換時間について、IWKB法で測定した。16時間及び40時間の拡散時間について、モデル化した応力プロファイル(
図2において、それぞれ破線a、b)は、依然として相補誤差関数に基づいている。より長い拡散時間(64、135、159.25、及び183.53時間)の場合、拡散したイオンがガラスサンプルの中心で出会って、理論的に放物線状のプロファイルに行き着く。しかし、実際には、ガラス内の応力緩和及び/又は追加の熱アニールにより、実際に測定された応力は理論的な予測値から外れている。この場合、S字の応力プロファイルが生成される。理論上の応力プロファイルと実験的な応力プロファイルとの相違の程度は、ガラスの特定の特性及び処理条件に依存する。一部のガラスは、同じ処理条件下において、他のガラスより変動し易い。
図3に示すように、この特定のガラス組成では、460℃で16時間以上のイオン交換に関し有意な差異が生じ始めている。
【0092】
図3に
図2の応力プロファイルをより詳細に示す。表面における圧縮応力(CS)プロファイルについて観測される丸め効果は、460℃で16時間の拡散/イオン交換後において、対象CSの数パーセント程度(
図3のa)であり、460℃で183.53時間の拡散/イオン交換後において、対象CSの100%より大きい(
図3のb)可能性がある。拡散時間が増加するにつれて、丸め効果の進行がはっきりと観察される。また、応力プロファイルの傾きは、イオン交換の時間及び温度によって変化する、つまり応力プロファイルの二次導関数が変化し、応力プロファイルに変曲点が生じ、傾きの絶対値が減少する。変曲点は、応力プロファイルが相補誤差関数(erfc(x))であるか、放物線であるかに関わらず、ガラスの表面と圧縮深さ(DOC)との間の応力プロファイルの圧縮領域のどこかで生じる。
【0093】
460℃で40時間拡散/イオン交換した場合の、モデル化した(破線)及び実験的に測定した(実線)応力プロファイルの更なる詳細を
図4に示す。ここでは、モデル化した応力プロファイルは、サンプル内部の応力がゼロになる位置である、深い圧縮深さ(DOC)を有する、依然として相補誤差関数(erfc(x))である。
図4に示すプロファイルは、誤差関数応力プロファイルが、本明細書に記載の種類のS字プロファイルを含まないことを実証している。
【0094】
S字応力プロファイルは、ガラスが特定のレベルに「被毒」した(例えば、30質量%を超えるNaNO
3を含む)浴においてイオン交換される例において生じ得る。約57モル%のSiO
2、0モル%のB
2O
3、約17モル%のAl
2O
3、約7モル%のP
2O
5、約17モル%のNa
2O、約0.02モル%のK
2O、及び約3モル%のMgOの公称組成を有する、800μm圧のガラスについて、モデル化した(破線)及び測定した(実線)応力プロファイルを
図5に示す。ガラスは、純(100質量%)KNO
3浴において、異なる温度及び時間でイオン交換(IOX)したものである(460℃で60時間IOX、及び490℃で32時間IOX)。
【0095】
モデル化した応力プロファイルは互いに直接重複し、従って、特定の温度における拡散係数をDとすると、2(D×時間)
1/2の拡散長に基づく期待拡散プロファイルが、調査した異なるケースについて、基本的に同じであることを示している。従って、460℃で60時間の拡散(
図5の線a)及び490℃で32時間の拡散(
図5の線b)が、同じ応力プロファイルを生成することが予想される。比較のために、モデル化した相補誤差関数erfc(x)の応力プロファイルを
図5に破線で示す。しかし、実際には、時間と温度の組み合わせによって、ガラス中に異なるレベルの緩和がもたらされ、応力プロファイルが異なる結果となる。これは、IWKB処理を用いたこれ等のサンプルの測定によって観察することができ、サンプルは異なる応力プロファイル、表面圧縮応力(CS)、及び圧縮深さ(DOC)を有していることを示している。
図5に示す両方のサンプルについて決定されたDOC値は、厚さの約21%(0.21t)である理論値より大きい。490℃で32時間イオン交換したガラスの場合、圧縮深さ(DOC)は厚さの25%(0.25t)である。脆いにも関わらず、
図5に示す両方のサンプルは、30グリットのサンドペーパーに落下させたとき、優れた性能を立証し、148cm(490℃におけるIOX)及び152cm(460℃におけるIOX)の平均落下高を耐え抜いた。ガラスの対向する表面から拡散するイオンが、これ等のサンプルの中心で出会うため、サンプルは放物線の応力プロファイルを有すると予想されたが、得られた応力プロファイルはS字形状である。拡散理論では、傾きの絶対値は増加又はほぼ一定に留まると予測するが、観察された応力プロファイルの傾きの絶対値は、約120μmの深さで減少し始める。この変曲又は表面に向かう傾きの減少は、これらのS字応力プロファイルの主な特徴の1つである。
【0096】
図5に示すサンプルのエネルギー(表面、蓄積、合計)、物理的中心張力(CT)、表面圧縮応力(CS)、圧縮深さ(DOC)及び機械的試験(4点曲げ試験、リングオンリング摩耗耐性(AROR)、及び30グリットサンドペーパーに対する落下)結果を表1に示す。
【0097】
【0098】
本明細書に記載の強化ガラス物品は、リングオンリング摩耗耐性(AROR)試験において、表面強度の向上も立証している。材料の強度は、破壊が生じる応力と定義される。リングオンリング摩耗耐性試験は、平坦なガラス試料を試験する、表面強度測定であり、「Standard Test Method for Monotonic Equibiaxia FlexuralStrength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature」と題する、ASTM C1499-09(2013)が、本明細書に記載のリングオンリング摩耗耐性ROR試験法の基礎を成している。ASTM C1499-09は、参照により、その全内容が本明細書に援用される。ガラス試料は、リングオンリング試験の前に、「Standard Test Methods for Strength of Glass by Flexure (Determination of Modulus of Rupture)」と題する、ASTM C158-02(2012)の「abrasion Procedures」と題する、付属書A2に記載の方法及び装置を用いてガラスサンプルに供給される、90グリットのシリコンカーバイド(SiC)粒子で研磨される。ASTM C158-02、及び特に付属書A2は、参照により全内容が本明細書に援用される。
【0099】
リングオンリング試験の前に、ASTM C158-02の付属書A2に記載されているように、ガラスサンプルの表面を研磨し、ASTM C158-02の
図A2.1に示されている装置を使用して、サンプルの表面欠陥状態を標準化及び/又は制御した。研磨材を45psi(約0.31MPa)の空気圧を用いて15psi(約0.1MPa)の負荷でサンプルの表面にサンドブラストする。空気流が確立された後、5cm
3の研磨材を漏斗に放出し、研磨材が導入された後、5秒間サンプルをサンドブラストした。
【0100】
米国特許出願公開第2015/000064472号として公開された、米国特許出願第14/ 465,888号明細書に記載の、460℃で28時間イオン交換した、様々なイオン交換可能なアルミノシリケートガラスについて測定した応力プロファイルを
図6に示す。イオン交換は、KNO
3/NaNO
3混合浴中で行った。浴中のNaNO
3の量を25質量%(
図6の線a)から、30質量%(
図6の線aの下の線)、35質量%(
図6の線bの上の線)、及び最後に41質量%(
図6の線b)に増加させる一方、KNO
3の量を75質量%から70質量%、65%、及び最後に59質量%に減少させた。41質量%のNaNO
3を含有する浴において、460℃で28時間イオン交換したガラスについて取得した応力プロファイル(実線)及びモデル化した応力プロファイル(破線)を
図7に示す。ガラスの対向する表面から拡散するイオンが、サンプルの中心で出会うため、これ等のサンプルは放物線応力プロファイルを有するものと予想されていた。しかし、
図6及び7に示す、実験的に測定した応力プロファイルはS字形状であった。拡散理論では、傾きの絶対値は増加又はほぼ一定に留まると予測するが、観察された応力プロファイルの傾きの絶対値は、約120μmの深さで減少し始める。この変曲又は表面に向かう傾きの減少は、これ等のS字応力プロファイルの主な特徴の1つである。
【0101】
S字応力プロファイルの別の例を
図8、9、及び10に示す。
図8は、500μmの厚さ、及び約57モル%のSiO
2、0モル%のB
2O
3、約17モル%のAl
2O
3、約7モル%のP
2O
5、約17モル%のNa
2O、約0.02モル%のK
2O、及び約3モル%のMgOの公称組成を有するガラスの、モデル化応力プロファイル(破線)及び測定応力プロファイル(実線)を示している。ガラスは100質量%のKNO
3浴において410℃で7時間イオン交換した後、450℃で5時間加熱して熱拡散させ、ガラスの厚さの20%(0.2t)の圧縮深さ(DOC)/圧縮層深さ(DOCL)を達成したものである。これ等のサンプルは、あるレベルの熱緩和が表面に伴う、誤差関数プロファイルから展開し、放物線プロファイルに発展する、応力プロファイルを有するものと予想されていた。この特定の例において、熱アニールとガラス内の追加の応力緩和との組み合わせによって、拡散理論から予想されるものと非常に顕著な差をもたらし、より深い圧縮深さを達成することを可能にした。
図9及び10は、イオン交換及びそれに続く熱拡散処理を使用して、ガラスの厚さの21%を超える圧縮深さを有するS字応力プロファイルを生成する方法を示している。
図9及び10に示す例は、
図8に示したものと同じ組成を有している。0.5mm(500μm)及び0.8mm(800μm)の厚さについて調査した。しかし、ガラスの厚さの21%を超えて圧縮層(DOC)を増加させることは、これ等の例示的な例を十分に超えて、0.1mm(100μm)~2mmの厚さを有するガラスに拡張することができる。
【0102】
イオン交換と熱拡散との組み合わせによって生成した、0.8mm及び0.5mmの厚さを有するガラスについてモデル化した応力プロファイルをそれぞれ
図9及び10に示す。ガラスは、純(100質量%)KNO
3浴において、460℃で24時間イオン交換し、450℃で約5時間~24時間加熱して熱拡散させたものである。既に実証したように、更なる応力緩和が生じ、その結果、圧縮深さ(DOC)がガラスのより深くまで延びることができ、応力プロファイルのS字形状が強調され、ガラス表面の圧縮応力が減少する。
図8~10に示すモデルに基づいて、10時間の熱アニール後に、圧縮応力が減少し、圧縮深さ(DOC)/圧縮層深さDOCLが更に増加して、ガラスの厚さの25%を十分に上回ることを予測することができる。
【0103】
S字応力プロファイルを有する強化ガラスは、同等の圧縮深さ(DOC)を有する他のプロファイルを有するガラスよりも高い脆弱性限界(損傷又は衝撃が生じたとき、物理的中心張力(CT)の上側において爆発的破砕及び小断片噴出が起きる)を有するように見える。約57モル%のSiO
2、0モル%のB
2O
3、約17モル%のAl
2O
3、約7モル%のP
2O
5、約17モル%のNa
2O、約0.02モル%のK
2O、及び約3モル%のMgOの公称組成を有する、0.4mm厚の非脆弱性ガラスについて取得したS字プロファイルを
図11に示す。このガラスは17質量%のNaNO
3及び83質量%のKNO
3を含有する浴において、430℃で11.5時間イオン交換し、次いで430℃で13.07時間熱処理を施したものである。このイオン交換及び熱処理を施したサンプルは、ガラスの中心張力(CT)が、0.4mm厚の非脆弱性ガラスについてこれまでに測定した任意の値より高い117MPaであったが、非脆弱性であった。従って、1つの実施の形態において、強化ガラス物品の応力プロファイルは、化学強化ガラスにおいて、一般的に観察されるものより、概して、高いピーク曲率及び物理的中心張力(CT)を有し、圧縮応力領域において、圧縮応力の負の曲率の領域を有している。ピーク曲率の絶対値は、20MPa/t
2~4000MPa/t
2であって、ここでtは、mmで示すガラスの厚さである。負の曲率の絶対値が10MPa/t
2を超える領域は、ガラス物品の厚さtの約2%~約25%であり、一部の実施の形態において、厚さtの約2.5%~約20%である。
【0104】
0.4mmの厚さを有するガラス物品に対し、第1のイオン交換、熱処理、及び第2のイオン交換を施して、ガラス物品中にS字応力プロファイルを形成した。ガラス物品は、約57質量%のSiO2、約16質量%のAl2O3、約17質量%のNa2O、約3質量%のMgO、及び約7質量%のP2O5を含有するガラスを含んでいた。第1のイオン交換は、38質量%のNaNO3及び62質量%のKNO3を含有する450℃の温度の浴に、ガラス物品を11時間浸漬することによって実施した。次に、このイオン交換したガラス物品に対し、420℃で6.5時間熱処理を施した。その後のイオン交換は、0.5質量%のNaNO3及び99.5質量%のKNO3を含有する390℃の温度の浴に、熱処理したガラス物品を11分間浸漬することによって実施した。
【0105】
横磁場(TM)誘導光及び横電場(TE)誘導光の屈折率プロファイルをIWKB法により抽出し、
図15に示す。屈折率プロファイルの差から抽出した生の応力プロファイルを
図16に示す。
図16に示す応力プロファイルは、圧縮応力のスパイクが、ガラス物品の表面、15μmの深さから80μmと100μmとの間の変曲点までの負の曲率の領域、及びより深い位置における正の曲率の領域に存在していることを立証している。生の応力プロファイルは、TM及びTE屈折率プロファイルの対応する光学モードの転換点の差によって生じるアーチファクトを含み、アーチファクトは表面の圧縮応力スパイクの底部(約12μm~約40μm)の近傍かつ僅かに深いところに位置している。これ等のアーチファクトを屈折率プロファイルとの類似性に基づいて平滑化し、より正確な応力プロファイルを得ることができる。
図16に示す圧縮応力スパイクは、約785MPaの最大値及び約10μmの深さ、約15μmの深さから約層深さ(DOC)との間に位置する変曲点までの領域、及びより深い位置における正の曲率の領域、を有している。
図16の応力プロファイルのDOCは、約84μm(ガラス物品の0.4mm厚の21%)に位置している。一定張力の領域は、ガラス物品の中間厚さ平面を囲むことができ、
図16の応力プロファイルは、約105MPaの物理的中心張力(CT)を示している。
【0106】
図16に示す応力プロファイルを生成する製造プロセスは、製造プロセスを通して、ガラス物品を非脆弱状態に維持する。これは、強化プロセス中に、ガラス物品が破損する可能性を低減する更なる利点である。強化ガラス物品中に形成された圧縮応力スパイクは、595±5nmの波長において、TM及びTE偏光の各々において、3つの光学モードを導波する。595nmにおいて、少なくとも3つの光学モードを閉じ込めることができる、約9μmを超える深さ及び約700MPaを超える最大圧縮応力を有する圧縮応力スパイクは、ガラス物品に施される仕上げ作業中に、ガラス物品の表面の浅い傷に起因する過度の応力によるガラス物品の破損を低減することができる。加えて、スパイクの底部(約15μm)と変曲点の深さ(圧縮深さに相当、約90μm)との間に生じる負の曲率の領域によって、約0.4DOC~約0.9DOC(約34μm~約76μm)の深さに実質的な圧縮応力の領域がもたらされる。この実質的な圧縮応力領域によって、ガラス物品が粗い表面の上に落下したときに生じる深い傷の導入等による、破砕に対する耐性が向上する。一部の実施の形態において、変曲点の深さは、約0.8DOC~約1.2DOCとすることができる。
【0107】
本明細書に開示の強化物品は、ディスプレイを備えた物品(又はディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム等を含む消費者向け電子機器)、建築用物品、輸送用物品(例えば、自動車、電車、航空機、船舶等)、電気器具、又はある程度の透明性、耐擦過性、耐摩耗性、又はこれ等の組み合わせを必要とするあらゆる物品等、別の物品に組み込むことができる。本明細書に開示の任意の強化物品を組み込んだ例示的な物品を
図17及び18に示す。具体的には、
図17及び18は、前面5104、背面5106、及び側面5108を有するハウジング5102、少なくとも部分的又は完全にハウジングの内部に位置し、少なくともコントローラ、メモリ、及びハウジングの前面又は前面に隣接するディスプレイ5110を含む、電気部品(図示せず)、及びディスプレイ上に置かれるようにハウジングの前面に、又はその上に位置するカバー基板5112を含む、消費者向け電子装置5100を示している。
【0108】
説明を目的として、代表的な実施の形態について説明してきたが、前述の説明は本開示及び添付の特許請求の範囲を限定すると見なされるべきではない。従って、本開示又は添付の特許請求の範囲の精神及び範囲を逸脱せずに、様々な改変、適応、及び代替が当業者に生じ得る。
【0109】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0110】
実施形態1
ガラス物品であって、
厚さtと、
t/2に位置する中心と、
前記ガラス物品の第1の表面から、第1の圧縮深さDOC1に延びる第1の圧縮層と、
前記第1の圧縮層における第1の最大圧縮応力CS1と、
を有し、
前記第1の圧縮層が、応力プロファイルを有し、該プロファイルが、
前記第1の表面から前記ガラス物品の深さd1まで延びる第1の領域であって、d1>0.06tであり、前記第1の領域の少なくとも一部が第1の傾きm1を有する領域、及び
少なくともd1の深さから、前記第1の圧縮深さDOC1まで延び、第2の傾きm2を有する第2の領域であって、|m1|≦|m2|である領域
を含むガラス物品。
【0111】
実施形態2
前記応力プロファイルが、前記圧縮領域に負の曲率を有する小区域を含み、前記負の曲率の最大絶対値がd1にある、実施形態1記載のガラス物品。
【0112】
実施形態3
前記負の曲率の前記最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である、実施形態2記載のガラス物品。
【0113】
実施形態4
d1における、前記応力プロフィアルの傾きがゼロである、実施形態1~3いずれか1つに記載のガラス物品。
【0114】
実施形態5
DOC1≧0.2tである、実施形態1~4いずれか1つに記載のガラス物品。
【0115】
実施形態6
CS1>0、m1>0、及びm2<0である、実施形態1~5いずれか1つに記載のガラス物品。
【0116】
実施形態7
tが約0.1mm~約2mmである、実施形態1~6いずれか1つに記載のガラス物品。
【0117】
実施形態8
DOC1が、約0.14t~約0.35tである、実施形態1~7いずれか1つに記載のガラス物品。
【0118】
実施形態9
前記第1の最大圧縮応力CS1が、前記表面に存在し、約500MPa~約2,000MPaであり、
前記応力プロファイルが、正の曲率を有する第2の小区域を更に含む、実施形態1~8いずれか1つに記載のガラス物品。
【0119】
実施形態10
前記第1の小区域の前記負の曲率が、tの約2%~約25%の空間的範囲にわたり、10MPa/(t(mm))2を超える絶対値を有する、実施形態9記載のガラス物品。
【0120】
実施形態11
前記第1の最大圧縮応力CS1が前記第1の表面に存在し、
前記圧縮応力が、前記第1の表面下約8μm未満の深さにおいて、前記第1の最大圧縮応力CS1の50%未満に減少する、実施形態1~10いずれか1つに記載のガラス物品。
【0121】
実施形態12
約40MPa/(t(mm))1/2~約150MPa/(t(mm))1/2の物理的中心張力を更に有する、実施形態1~11いずれか1つに記載のガラス物品。
【0122】
実施形態13
前記応力プロファイルの前記第2の領域が変曲点を含む、実施形態1~12いずれか1つに記載のガラス物品。
【0123】
実施形態14
前記応力プロファイルの前記第1の領域が、前記第1の表面から深さd2まで延びる小区域を更に含み、
d2<d1であり、
前記小区分の少なくとも一部が第3の傾きm3を有し、
|m1|<|m3|であり、
30MPa/μm≦|m3|≦200MPa/μmである、実施形態1~13いずれか1つに記載のガラス物品。
【0124】
実施形態15
50MPa/μm≦|m3|≦200MPa/μmである、実施形態14記載のガラス物品。
【0125】
実施形態16
アルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態1~15いずれか1つに記載のガラス物品。
【0126】
実施形態17
前記アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約4モル%のP2O5を含み、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1、ここでM2O3=Al2O3+B2O3であり、RxOは、前記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する、一価及び二価のカチオン酸化物の合計である、実施形態16記載のガラス物品。
【0127】
実施形態18
前記アルカリアルミノシリケートガラスが、
約40モル%~約70モル%のSiO2と、
約11モル%~約25モル%のAl2O3と、
約2モル%~約15モル%のP2O5と、
約10モル%~約25モル%のNa2Oと、
約10モル%~約30モル%のRxOと、
を含み、ここで、RxOはガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である、実施形態16又は17記載のガラス物品。
【0128】
実施形態19
前記ガラス物品の前記第1の表面に対向する、第2の表面から第2の圧縮深さDOC2まで延びる第2の圧縮層と、
前記第2の圧縮層内における第2の最大圧縮応力CS2と、
DOC1とDOC2との間に延びる張力領域と、
を更に有する、実施形態1~18いずれか1つに記載のガラス物品。
【0129】
実施形態20
DOC1=DOC2である、実施形態19記載のガラス物品。
【0130】
実施形態21
ガラス物品であって、
厚さtと、
t/2に位置する中心と、
前記ガラス物品の表面と前記中心との間に位置し、圧縮応力下にあり、前記表面から圧縮深さDOCまで延びる圧縮領域と、
応力プロファイルが負の曲率を有する、前記圧縮領域内の小区域であって、前記負の曲率の最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である、小区域と、
前記圧縮深さDOCから、前記ガラス物品の少なくとも前記中心まで延び、物理的中心張力CT下にある張力領域と、
を有するガラス物品。
【0131】
実施形態22
tが約0.1mm~約2mmである、実施形態21記載のガラス物品。
【0132】
実施形態23
DOCが、約0.14t~約0.35tである、実施形態21又は22記載のガラス物品。
【0133】
実施形態24
最大圧縮応力CS1が、前記第1の表面に存在し、約500MPa~約2,000MPaであり、
前記圧縮領域が、前記応力プロファイルが正の曲率の小区域を有する、小区域を更に含む、実施形態21~23いずれか1つに記載のガラス物品。
【0134】
実施形態25
前記表面に最大圧縮応力CS1を有し、
前記圧縮応力が、前記表面下約8μm未満の深さにおいて、前記最大圧縮応力の50%未満に減少する、実施形態21~24いずれか1つに記載のガラス物品。
【0135】
実施形態26
前記負の曲率が、tの約2%~約25%の空間的範囲を有する小区域にわたり、10MPa/(t(mm))2を超える絶対値を有する、実施形態21~25いずれか1つに記載のガラス物品。
【0136】
実施形態27
CTが、約40MPa/(t(mm))1/2~約150MPa/(t(mm))1/2である、実施形態21~26いずれか1つに記載のガラス物品。
【0137】
実施形態28
アルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態21~27いずれか1つに記載のガラス物品。
【0138】
実施形態29
前記アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約4モル%のP2O5を含み、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1であり、M2O3=Al2O3+B2O3であり、RxOは、前記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する、一価及び二価のカチオン酸化物の合計である、実施形態28記載のガラス物品。
【0139】
実施形態30
前記アルカリアルミノシリケートガラスが、
約40モル%~約70モル%のSiO2と、
約11モル%~約25モル%のAl2O3と、
約2モル%~約15モル%のP2O5と、
約10モル%~約25モル%のNa2Oと、
約13モル%~約30モル%のRxOと、
を含み、ここで、RxOは前記ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である、実施形態28又は29記載のガラス物品。
【0140】
実施形態31
ガラスを強化する方法であって、
第1のアルカリカチオンを含むガラスを、第2のアルカリカチオンを含むイオン交換浴に浸漬して、前記ガラス内の前記第1のアルカリカチオンを、前記イオン交換浴からの前記第2のアルカリカチオンに交換し、前記ガラスの第1の表面から延びる第1の圧縮層を形成するステップであって、前記ガラスが厚さtを有し、前記第2のアルカリカチオンが前記第1のアルカリカチオンと異なり、前記第1の表面が第2の表面に対向し、前記第1の圧縮層が、前記第1の表面から第1の圧縮深さDOC1まで延び、前記第1の圧縮層が第1の圧縮応力CS1を有する、ステップと、
前記第2のアルカリカチオンを、前記第1の表面からt/2に位置する前記ガラスの中心まで拡散させるステップであって、前記ガラスの応力が、前記ガラスの深さの関数として変化して応力プロファイルが形成され、該プロファイルが、
前記第1の表面から前記ガラスの深さd1まで延びる第1の圧縮領域であって、d1>0.06tであり、前記第1の圧縮領域の少なくとも一部が第1の傾きm1を有し、前記第1の表面に第2の圧縮応力CS2を有し、CS2≦CS1である領域、及び
少なくともd1の深さから、第2の圧縮深さDOC2まで延び、第2の傾きm2を有する、第2の圧縮領域であって、|m1|≦|m2|、及びDOC2>DOC1である領域を含む、ステップと、
を備えた方法。
【0141】
実施形態32
前記ガラスを、前記第2のアルカリカチオンを含む前記イオン交換浴に浸漬するステップが、前記第1のアルカリカチオンを、前記イオン交換浴からの前記第2のアルカリカチオンに交換し、前記ガラスの前記第2の表面から延びる第2の圧縮層も形成する、実施形態31記載の方法。
【0142】
実施形態33
前記第1の圧縮層及び前記第2の圧縮層が同時に形成される、実施形態32記載の方法。
【0143】
実施形態34
d1における、前記応力プロフィアルの傾きがゼロである、実施形態31~33いずれか1つに記載の方法。
【0144】
実施形態35
前記拡散させるステップが、前記ガラスを約400℃~約500℃の温度に加熱する熱拡散ステップを含む、実施形態31~34いずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態36
前記熱拡散ステップが、前記ガラスを、前記温度で、少なくとも約16時間加熱することを含む、実施形態35記載の方法。
【0146】
実施形態37
前記イオン交換浴が、前記第1のアルカリカチオンを含む塩を少なくとも30質量%含む、実施形態31~36いずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態38
前記ガラスを前記イオン交換浴に浸漬する前記ステップの後に、前記ガラスを第2のイオン交換浴に浸漬し、前記第1の表面に、第3の圧縮応力CS3を有する表面圧縮領域を形成するステップであって、CS3>CS1である、ステップを更に備えた、実施形態31~37いずれか1つに記載の方法。
【0148】
実施形態39
前記第2のイオン交換浴が、第2のアルカリカチオンを含む少なくとも約90質量%の塩を含む、実施形態38記載の方法。
【0149】
実施形態40
前記ガラスが、アルカリアルミノシリケートガラスを含む、実施形態31~39いずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態41
前記アルカリアルミノシリケートガラスが、少なくとも約4モル%のP2O5を含み、(M2O3(モル%)/RxO(モル%))<1であり、M2O3=Al2O3+B2O3、RxOは、前記アルカリアルミノシリケートガラス中に存在する、一価及び二価のカチオン酸化物の合計である、実施形態40記載の方法。
【0151】
実施形態42
前記アルカリアルミノシリケートガラスが、
約40モル%~約70モル%のSiO2と、
約11モル%~約25モル%のAl2O3と、
約2モル%~約15モル%のP2O5と、
約10モル%~約25モル%のNa2Oと、
約10モル%~約30モル%のRxOと、
を含み、ここで、RxOは前記ガラス中に存在するアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、及び遷移金属モノオキシドの合計である、実施形態40又は41記載の方法。
【0152】
実施形態43
前記応力プロファイルが、前記圧縮応力領域に、負の曲率を有する小区域を含み、前記負の曲率の最大絶対値がd1にある、実施形態31~42いずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態44
前記負の曲率の前記最大絶対値が、20MPa/(t(mm))2~4,000MPa/(t(mm))2である、実施形態43記載の方法。
【0154】
実施形態45
消費者向け電子装置であって、
前面、背面、及び側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジングの内部に設けられた電気部品であって、少なくともコントローラ、メモリ、及び前記ハウジングの前記前面に又は前記前面に隣接して設けられたディスプレイを含む電気部品と、
前記ディスプレイ上に配置された実施形態1~30いずれか1つに記載のガラス物品と、を備えた製品。
【符号の説明】
【0155】
100 ガラス物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の圧縮層
122 第2の圧縮層
5100 消費者向け電子装置
5102 ハウジング
5104 前面
5106 背面
5108 側面
5110 ディスプレイ
5112 カバー基板