(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177132
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】精神障害の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221122BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221122BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221122BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221122BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221122BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P17/00
A61K39/395 N
A61K9/08
A61P17/02
A61P25/00
A61P17/06
A61K39/395 M
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144756
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2020090717の分割
【原出願日】2013-10-01
(31)【優先権主張番号】61/709,741
(32)【優先日】2012-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520431719
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテク,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Janssen Biotech,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シマール,ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炎症性皮膚疾患および種々の精神障害の治療に有用な医薬組成物およびその使用を提供する。
【解決手段】医薬的に許容可能なキャリアと、治療的に有効な量の抗IL-1α抗体とを含む医薬組成物の使用を提供する。好ましくは、抗IL-1α抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする使用であり、より好ましくは、モノクローナル抗体は、IgG1であることを特徴とする使用であり、より好ましくは、モノクローナル抗体は、MABp1の1または複数の相補性決定領域を含むことを特徴とする使用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験者の皮膚炎症を軽減するための医薬品の製造における、医薬的に許容可能なキャリアと、前記ヒト被験者の皮膚炎症を軽減するのに有効な量の抗IL-1α抗体とを含む医薬組成物の使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用において、前記抗IL-1α抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項2に記載の使用において、前記モノクローナル抗体は、IgG1であることを特徴とする使用。
【請求項4】
請求項2に記載の使用において、前記モノクローナル抗体は、MABp1の1または複数の相補性決定領域を含むことを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項2に記載の使用において、前記モノクローナル抗体は、MABp1であることを特徴とする使用。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の使用において、前記抗IL-1α抗体のKaが、少なくとも1×109M-1であることを特徴とする使用。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の使用において、前記医薬組成物が、体重1kg当たり約0.1乃至約5mgの抗IL-1α抗体の用量で投与されることを特徴とする使用。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の使用において、前記医薬組成物が、半週毎、毎週、隔週、週3回、半月毎、3週に1度、毎月、または隔月で投与されることを特徴とする使用。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の使用において、前記医薬組成物が、赤み、腫脹、白血球侵潤、病変発達、および/または病変数を少なくとも約10%軽減することを特徴とする使用。
【請求項10】
ヒト被験者の皮膚炎症を治療するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、医薬的に許容可能なキャリアと、前記ヒト被験者の皮膚炎症を軽減するのに有効な量の抗IL-1α抗体とを含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の医薬組成物において、前記抗IL-1α抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬組成物において、前記モノクローナル抗体は、IgG1であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の医薬組成物において、前記モノクローナル抗体は、MABp1の1または複数の相補性決定領域を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項14】
請求項11に記載の医薬組成物において、前記モノクローナル抗体は、MABp1であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
請求項10乃至14の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記抗IL-1α抗体のKaが、少なくとも1×109M-1であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項16】
請求項10乃至15の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、体重1kg当たり約0.1乃至約5mgの抗IL-1α抗体の用量で投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項17】
請求項10乃至16の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、半週毎、毎週、隔週、週3回、半月毎、3週に1度、毎月、または隔月で投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
請求項10乃至17の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記医薬組成物が、赤み、腫脹、白血球侵潤、病変発達、および/または病変数を少なくとも約10%軽減することを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年10月4日出願の米国仮特許出願第61/709,741号明細書の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし。
【0003】
本発明は、一般に、医学、皮膚科学および免疫学の分野に関するものである。より詳細には、本発明は、インターロイキン-1α(IL-1α)と特異的に結合して、炎症性皮膚疾患および精神障害を治療する抗体(Ab)の使用に関するものである。
【背景技術】
【0004】
炎症性皮膚疾患のざ瘡、酒さおよび乾癬は、何百万もの人々を悩ませている。通常は死に至らしめるものではないが、これらの症状は、肉体的な不快感をもたらし得、かつ感情の安定に影響を及ぼし得る。現在、炎症性皮膚疾患に対する多数の様々な治療があり、コルチコステロイド、ビタミンD類似体、コールタール、紫外線、レチノイド、メトトレキセート、シクロスポリン、ヒドロキシウレア、抗生物質、および生物学的薬剤(TNFアルファ阻害剤等)が挙げられる。これらの治療法は多くの患者にとって有用であると証明されてきたが、多くは不所望の副作用を引き起こし、あらゆる状況に理想的であるものはない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、IL-1αと特異的に結合するmAbが、尋常性ざ瘡および種々の精神障害(不安および悪い自己イメージ等)を治療するのに有用であるという発見に基づくものである。
【0006】
したがって、本発明は、ヒト被験者のざ瘡病変の数を減らす方法、およびヒト被験者の精神障害(例えば、不安、鬱または悪い自己イメージ)を治療する方法に関する。これらの方法は、被験者に、医薬的に許容可能なキャリアと、ざ瘡病変の数を減らす、または被験者の精神障害を改善するのに有効な量の、IL-1αと選択的に結合する剤とを含む医薬組成物を投与するステップを含んでよい。剤は、抗-IL-1α抗体((例えば、IgG1アイソタイプの)モノクローナル抗体、MABp1の相補性決定領域を含むモノクローナル抗体、またはMABp1等)であってよい。
【0007】
本発明の別の態様は、ヒト被験者の皮膚炎症を緩和する方法であって、被験者に、医薬的に許容可能なキャリアと、皮膚炎症(例えば、赤み、腫脹、白血球侵潤、病変発達、または病変数)の徴候を緩和するのに有効な量の抗-IL-1α Ab(または特異的に、かつ/または選択的にIL-1αと結合する他の剤)とを含む医薬組成物を投与することによって、被験者において、任意の標準的な皮膚病学的試験によって測定して、少なくとも約10%(例えば、少なくとも8、9、10、15、17、20、30、40、50、60、70、80、90または100%)皮膚炎症を緩和する方法に関する。抗-IL-1α Abは、mAb(IgG1等)であってよい。抗-IL-1α Abは、MABp1と呼ばれるmAbであってもよいし、MABp1の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含むmAbであってもよい。医薬組成物は、被験者に、皮下注射、静脈注射、筋内注射、または皮内注射によって投与されてよい。本方法では、服用量は少なくとも0.25(例えば、少なくとも0.2、0.5、0.75、1、2、3、4、または5)mg/mlであってよい。
【0008】
他の態様において、本発明は、IL-1αと選択的に結合して、被験者のざ瘡および/または精神障害を治療する剤の使用、ならびに被験者のざ瘡および/または精神障害を治療する医薬組成物であって、IL-1αと選択的に結合する剤を含む組成物を含む。前述のように、剤は、抗-IL-1α抗体((例えば、IgG1アイソタイプの)モノクローナル抗体、MABp1のCDRを含むモノクローナル抗体、またはMABp1等)であってよい。
【0009】
定義されない限り、本明細書中で用いられる全ての専門用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。生物学的用語の一般的によく理解されている定義が、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer-Verlag:New York,1991;およびLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994に見られ得る。医学用語の一般的によく理解されている定義が、Stedman’s Medical Dictionary,27th Edition,Lippincott,Williams & Wilkins,2000に見られ得る。
【0010】
本明細書中で用いられる「抗体」すなわち「Ab」とは、免疫グロブリン(Ig)、同種の、もしくは異種のIg溶液、またはIgの混合物である。「Ab」はまた、Igのフラグメントおよび操作された異形物(Fab、Fab’、およびF(ab’)2フラグメント;scFv、ヘテロコンジュゲートAb、ならびにIg由来CDRを用いて抗原特異性を付与する類似の人工分子等)を指してもよい。「モノクローナル抗体」すなわち「mAb」とは、特定の抗原の特定のエピトープにより免疫応答することができる抗原結合部位の1種のみを含有する、1つのクローンB細胞系、またはAb分子の集団によって発現されるAbである。「ポリクローナルAb」とは、異種Abの混合物である。典型的に、ポリクローナルAbは、特定の抗原と結合する無数の異なるAb分子を含むこととなり、異なるAbの少なくとも一部は、抗原の異なるエピトープにより免疫応答する。本明細書中で用いられるポリクローナルAbは、2つ以上のmAbの混合物であってよい。
【0011】
Abの「抗原結合部分」とは、AbのFab部分の可変領域内に含有されており、抗原特異性をAbに付与するAbの部分(すなわち、一般的に、Abの重鎖および軽鎖のCDRによって形成される3次元ポケット)である。「Fab部分」または「Fab領域」とは、パパイン消化Igのタンパク質分解フラグメントであり、Igの抗原結合部分を含有する。「非Fab部分」とは、Fab部分内にないAbの部分である(例えば、「Fc部分」または「Fc領域」)。Abの「不変領域」とは、可変領域の外側のAbの部分である。通常、不変領域内に包含されるのは、Abの「エフェクタ部分」であり、これは、免疫応答を促進する他の免疫系構成要素との結合に関与するAbの部分である。したがって、例えば、補足構成要素またはFcレセプタと(抗原-結合部分を介さないで)結合するAbの部位は、Abのエフェクタ部分である。
【0012】
Ab等のタンパク質分子に言及する場合、「精製」とは、そのような分子に自然に付随する構成要素からの分離を意味する。典型的に、Abまたはタンパク質が精製されるとは、少なくとも約10重量%(例えば、9重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%、99.9重量%および100重量%)、非-Abタンパク質、または他の自然に存在する、自然に付随する有機分子から遊離している場合である。純度は、任意の適切な方法(例えば、カラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析)によって測定されてよい。化学合成タンパク質、または自然に存在する細胞タイプ以外の細胞タイプにおいて産生される他の組換えタンパク質は、「精製される」。
【0013】
「と結合(bind)」、「と結合(binds)」、または「により応答(reacts with)」が意味するところは、ある分子が、サンプル中の特定の第2の分子を認識し、かつこれに付着するが、サンプル中の他の分子を実質的に認識もしなければ、これに付着もしないことである。通常、別の分子と「特異的に結合する」Abは、Kdが、その別の分子について、約105、106、107、108、109、1010、1011または1012リットル/モルを超える。第1の分子と「選択的に結合する」Abは、第1の分子と第1のエピトープにて特異的に結合するが、第1のエピトープを有しない他の分子と特異的に結合しない。例えば、IL-1アルファと選択的に結合するAbは、IL-1アルファのエピトープと特異的に結合するが、IL-1ベータ(エピトープを有しない)と特異的に結合しない。
【0014】
「治療的に有効な量」とは、治療された動物またはヒトに医学的に所望の効果(例えば、疾患または疾患の徴候の改善または予防)をもたらすことができる量である。
【0015】
本明細書における記載と類似の、または等価の方法および材料が、本発明の実行または試験の際に用いられてよいが、適切な方法および材料が、以下に記載される。本明細書中で言及される全ての出願および刊行物は、それらの全体が参照によって組み込まれる。競合する場合、定義を含む本明細書が支配することとなる。また、以下に議論される特定の実施形態は、説明のためだけのものであり、限定することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、被験者の皮膚病学的病状の1つまたは複数の徴候を改善することを含む、皮膚炎症を和らげる組成物および方法を包含する。以下に記載される好ましい実施形態は、これら組成物および方法の適合を説明するものである。それでもなお、これらの実施形態の記載から、本発明の他の態様が、以下に与えられる記載に基づいてなされてよく、かつ/または実践されてよい。
【0017】
一般的な方法論
従来の免疫学的技術および分子生物学的技術を伴う方法が、本明細書中に記載される。免疫学的方法(例えば、抗原-Ab複合体の検出および局在化に関するアッセイ、免疫沈降、イムノブロッティング等)が、当該技術において一般的に知られており、かつ方法論の専門書(Current Protocols in Immunology,Coligan et al.,ed.,John Wiley & Sons,New York等)に記載されている。分子生物学の技術が、専門書(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001;およびCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,ed.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York等)に詳細に記載されている。Ab法が、Handbook of Therapeutic Abs,Dubel,S.,ed.,Wiley-VCH,2007に記載されている。医学的治療の一般的な方法が、McPhee and Papadakis,Current Medical Diagnosis and Treatment 2010,49th Edition,McGraw-Hill Medical,2010;およびFauci et al.,Harrison’s Principles of Internal Medicine,17th Edition,McGraw-Hill Professional,2008に記載されている。皮膚科学における方法が、James et al.,Andrews’ Diseases of the Skin:Clinical Dermatology-Expert Consult,11th Ed.,Saunders,2011;およびBurns et al.,Rook’s Textbook of Dermatology,8th Ed.,Wiley-Blackwell,2010に記載されている。
【0018】
治療
本明細書中に記載される組成物および方法は、哺乳類の被験者の、皮膚炎症(例えば、酒さ、湿疹、乾癬、乾燥症、皮膚炎、ざ瘡、壊死性膿皮症、蕁麻疹、苔癬様疾患、水疱性疾患(水疱性類天疱瘡等)、皮膚脈管炎および肉芽腫皮膚疾患と関連)および精神障害(例えば、不安、鬱および悪い自己イメージ)を、被験者に、被験者の炎症または精神障害の少なくとも1つの特性を改善(例えば、病変の数およびサイズの緩和、赤みの緩和、ならびに痒さの緩和)するのに有効な量の抗-IL-1α Abを含む医薬組成物を投与することによって治療するのに有用である。哺乳類の被験者とは、皮膚炎症または精神障害を患うあらゆるものであってよく、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギおよびブタが挙げられる。ヒト被験者とは、男性、女性、成人、子供、高齢者(65歳以上)、および他の疾患にかかった人々であってよい。特に好ましい被験者とは、疾患が進行したか、他の抗炎症薬もしくは抗菌剤(レチノイド等)、抗生物質、ステロイド、またはサイトカイン阻害剤(TNFアルファ阻害剤等)による治療後に応答しなかった人々である。抗-IL-1α Abが本物のヒトAb(例えば、ヒト被験者において自然に発現されたもの)(MABp1等)である場合、ヒトの抗-ヒト抗体応答を、治療抗体の前投与に起因して発達させた被験者が好ましい。抗-IL-1α Abによる治療に感受性のあるあらゆるタイプの炎症性皮膚疾患が、標的とされてよい。抗-IL-1α Abの投与が、尋常性ざ瘡および尋常性乾癬を治療するのに特に有効であると考えられる。
【0019】
IL-1αを標的とする抗体および他の剤
IL-1αと特異的に結合して、被験者の、精神障害、皮膚炎症および/または炎症性皮膚疾患(尋常性ざ瘡または尋常性乾癬等)の特性を緩和するのに適したあらゆるタイプのAbが、本発明に用いられてよい。例えば、用いられる抗-IL-1α Abは、mAb、ポリクローナルAb、mAbの混合物、もしくはAbフラグメント、または操作されたAb様分子(scFv等)であってよい。AbのKaは、好ましくは、少なくとも1×109M-1以上(例えば、9×1010M-1、8×1010M-1、7×1010M-1、6×1010M-1、5×1010M-1、4×1010M-1、3×1010M-1、2×1010M-1または1×1010M-1を超える)である。好ましい実施形態において、本発明は、(i)ヒトIL-1αに対して非常に高い結合親和性(例えば、少なくともナノまたはピコモル)を示す抗原-結合可変領域、および(ii)不変領域を含む、完全なヒトmAbを利用する。ヒトAbは、好ましくは、IgG1である。これは、種々のアイソタイプ(IgM、IgA、またはIgE等)のものであってもよいし、サブクラス(IgG2、IgG3またはIgG4等)のものであってもよい。特に有用なmAbの一例が、MABp1(IL-1α-特異的IgG1 mAb)(2009年6月1日出願の米国特許出願第12/455458号明細書に記載される)である。他の有用なmAbは、少なくとも1つの、好ましくは全ての、MABp1のCDRを含むものである。
【0020】
ヒトIL-1αに特異的なIgを発現するBリンパ球が、ヒトにおいて自然に存在するので、mAbを増大させる現在好ましい方法は、最初に、そのようなBリンパ球を被験者から単離し、続いて、これを培養で継続的に複製し得るように不死化するものである。ヒトIL-1αに特異的なIgを発現する、自然に存在するBリンパ球の多くを欠いている被験者は、1つまたは複数のヒトIL-1α抗原により免疫化されて、そのようなBリンパ球の数を増大させることができる。ヒトmAbは、ヒトAb分泌細胞(例えば、ヒトプラズマ細胞)を不死化することによって、調製される。例えば、米国特許第4634664号明細書参照。
【0021】
例示的な方法において、1人または複数(例えば、5、10、25、50、100、1000以上)のヒト被験者が、被験者の血液中のそのようなヒトIL-1α-特異的Abの有無に関してスクリーニングされる。続いて、所望のAbを発現する被験者が、Bリンパ球ドナーとされてよい。1つのあり得る方法において、ヒトIL-1α-特異的Abを発現するBリンパ球を所有するヒトドナーから、末梢血が得られる。続いて、そのようなBリンパ球が、血液サンプルから、例えば、細胞ソーティング(例えば、蛍光活性化細胞ソーティング「FACS」;または磁気ビーズ細胞ソーティング)によって単離されて、ヒトIL-1α-特異的Igを発現するBリンパ球が選択される。続いて、これらの細胞がウィルス形質転換(例えば、EBVを用いる)によって、または別の不死化細胞(ヒト骨髄腫等)への融合によって、不死化されてよい(既知の技術に従う)。続いて、ヒトIL-1αに特異的なIgを発現する、この集団内のBリンパ球は、希釈法を限定することによって(例えば、ヒトIL-1αに特異的なIgについて陽性である、マイクロタイタープレートのウェル中の細胞が選択されて継代培養され、そしてプロセスは、所望のクローン系が単離され得るまで、繰り返される)、単離されてよい。例えば、Goding,MAbs:Principles and Practice,pp.59-103,Academic Press,1986参照。少なくともナノモル、またはピコモルの、ヒトIL-1αに対する結合親和性を有するIgを発現するクローン細胞系が好ましい。これらクローン細胞系によって分泌されるmAbが、培養媒体または体液(例えば、腹水)から、従来のIg精製手順(塩カット、サイズ排除、イオン交換分離、およびアフィニティクロマトグラフィ等)によって、精製されてよい。
【0022】
不死化Bリンパ球がインビトロ培養に用いられて、mAbが直接的に産生されてよいが、ある種の場合において、異種発現系を用いてmAbを産生することが所望されてよい。例えば、米国特許出願第11/754899号明細書に記載される方法を参照。例えば、ヒトIL-1αに特異的なmAbをコードする遺伝子が、異種宿主細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、骨髄腫細胞、および大腸菌細胞)における発現のためにクローニングされ、かつ発現ベクター(例えば、プラスミドベースの発現ベクター)中に導入されてよい。Igは、重(H)鎖および軽(L)鎖をH2L2構成中に含むので、それぞれをコードする遺伝子は、別々に単離されて、異なるベクター中で発現されるのがよい。
【0023】
被験者が抗-Ab応答を発達させることとなる見込みがより大きくなることに起因して、概してあまり好まれないが、キメラmAb(例えば、「ヒト化」mAb)(種々の動物種に由来する種々の部分を有する抗原結合分子(例えば、ヒトIgの不変領域に融合されたマウスIgの可変領域)である)が、本発明に用いられてよい。このようなキメラAbは、当該技術において知られている方法によって、調製されてよい。例えば、Morrison et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,81:6851,1984;Neuberger et al.,Nature,312:604,1984;Takeda et al.,Nature,314:452,1984参照。同様に、Abが、当該技術において知られている方法によってヒト化されてよい。例えば、所望の結合特異性を有するmAbが、種々のベンダーによって、または米国特許第5693762号明細書;米国特許第5530101号明細書;もしくは米国特許第5585089号明細書に記載されるように、ヒト化されてよい。
【0024】
本明細書中に記載されるmAbは、それらの結合特異性を、知られている方法(VHおよびVLドメインシャッフリング(Marks et al.Bio/Technology 10:779-783,1992、超可変領域(HVR)および/またはフレームワーク残基のランダム突然変異生成等)(Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813,1994;Schier et al.Gene 169:147-155,1995;Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004,1995;Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9,1995;およびHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896,1992)によって高めるか、そうでなければ変えるように、親和性成熟されてよい。適切な変化を、Abをコードするヌクレオチド配列中に導入することによって、Abのアミノ酸配列変異体が調製されてよい。また、ある種の発現系におけるmAbの産生を高めるために、mAbをコードする核酸配列への修飾が(例えば、mAbのアミノ酸配列を変えることなく)変更されてよい(例えば、所与の発現系についてのイントロン除去および/またはコドン最適化)。本明細書中に記載されるmAbはまた、別のタンパク質(例えば、別のmAb)または非タンパク質分子へのコンジュゲーションによって、修飾されてよい。例えば、mAbが、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコールまたはカーボンナノチューブ等)にコンジュゲートされてよい(例えば、Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605,2005参照)。米国特許出願第11/754899号明細書参照。
【0025】
好ましくは、高い力価のヒトIL-1α-特異的mAbが、副作用を最小にして被験者に投与され得ることを確実とするために、本発明のmAb組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.9重量パーセント以上が純粋である(いかなる賦形剤をも除く)。本発明のmAb組成物は、単一タイプのmAb(すなわち、単一のクローンBリンパ球系から産生されるもの)のみを含んでもよいし、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)の種々のタイプのmAbの混合物を含んでもよい。
【0026】
機能を修正する、または高めるために、ヒトIL-1α mAbは、別の分子(細胞毒素等)とコンジュゲートされてよい。ヒトIL-1α特異的mAbが、1つまたは複数の細胞毒素とコンジュゲートされて、IL-1αを発現する細胞がより効果的に殺されてよい。本発明に用いられる細胞毒素は、ヒトIL-1α特異的mAbにコンジュゲートされ得る任意の細胞毒性剤(例えば、細胞と接触した後に細胞を殺し得る分子)であってもよい。細胞毒素の例として、限定されないが、放射性核種(例えば、35S、14C、32P、125I、131I、90Y、89Zr、201Tl、186Re、188Re、57Cu、213Bi、および211At)、コンジュゲートした放射性核種、および化学療法剤が挙げられる。細胞毒素のさらなる例として、限定されないが、代謝拮抗薬(例えば、5-フルオロウラシル(fluorouricil)(5-FU)、メトトレキセート(MTX)、フルダラビン等)、抗微小管剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル等)等)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド(cyclophasphamide)、メルファラン、ビスクロロエチルニトロソウレア(bischloroethylnitrosurea)(BCNU)等)、プラチナ剤(例えば、シスプラチン(cDDPとも呼ばれる)、カルボプラチン、オキサリプラチン、JM-216、CI-973等)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン等)、抗生剤(例えば、マイトマイシン-C)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、テノポシド(tenoposide)およびカンプトセシン)、または他の細胞毒性剤(リシン、ジフテリア毒素(DT)、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、サポリン、ヤマゴボウウイルスタンパク質、臭化エチジウム、グルココルチコイド、炭疽菌毒素等)等が挙げられる。例えば、米国特許第5932188号明細書参照。
【0027】
先に記載されるIL-1α特異的Abが本発明での使用に好ましいが、場合によっては、IL-1αを特異的に標的とする他の剤が、その投与により炎症性皮膚疾患および/または精神障害の特性の改善に至る限りにおいて、使用されてよい。これら他の剤として、抗-IL-1α Abの産生をもたらすワクチン、IL-1αと結合するタンパク質またはペプチド、およびIL-1αを特異的に標的とする小さな有機分子が挙げられ得る。IL-1βを特異的に標的とする他の剤と特異的に結合しないものが好ましい。
【0028】
医薬組成物および方法
抗-IL-1α Ab組成物(およびIL-1αを特異的に標的とする他の剤)は、動物またはヒトに、投与のモードおよび経路、ならびに標準的な医薬慣例に基づいて選択される医薬的に許容可能なキャリア(例えば、滅菌生理食塩水)中にあって、投与されてよい。医薬的に許容可能なキャリア、および医薬製剤のリストが、Remington’s Pharmaceutical Sciences(この分野の標準的なテキスト)およびUSP/NFに見られ得る。他の物質が組成物に加えられて、そして他のステップがとられて、組成物が安定化かつ/もしくは保存されてよく、そして/または被験者への投与が促進されてよい。
【0029】
例えば、Ab組成物は、凍結乾燥されてもよいし(Draber et al.,J.Immunol.Methods.181:37,1995;および国際出願PCT/US90/01383号明細書参照);ナトリウムイオンおよびクロリドイオンを含む溶液中に溶解してもよいし;1つもしくは複数の安定化剤(アルブミン、グルコース、マルトース、スクロース、ソルビトール、ポリエチレングリコール、およびグリシン等)を含む溶液中に溶解してもよいし;濾過されてもよいし(例えば、0.45および/または0.2ミクロンのフィルタを用いる);ベータ-プロピオラクトンと接触してもよいし;そして/または殺菌剤を含む溶液(例えば、洗剤、有機溶媒、ならびに洗剤および有機溶媒の混合物)中に溶解してもよい。
【0030】
Ab組成物は、任意の適切な技術によって、動物またはヒトに投与されてよい。典型的に、そのような投与は、非経口的となることとなる(例えば、静脈、皮下、筋肉内、または腹膜内への導入)。組成物はまた、例えば局所塗布によって、標的部位(例えば、皮膚)に直接的に投与されてもよい。他の送達方法(例えば、組成物を含浸させたデバイスからのリポソーム送達または拡散)が、当該技術において知られている。組成物は、単回のボーラスで、複数回の注射で、または連続注入によって(例えば、静注して、または腹膜透析によって)投与されてよい。
【0031】
治療的に有効な量とは、医学的に所望される結果を、治療された動物またはヒトにもたらすことができる量である。抗-IL-1α Ab組成物の有効量とは、患者において臨床有効性を示す量であり、皮膚炎症の1つまたは複数の徴候における改善によって測定される。医術においてよく知られているように、任意の動物またはヒトに対するドーズ量は、多くの要因によって決まるものであり、被験者の大きさ、体表面積、年齢、投与されることとなる特定の組成物、性別、投与の時間および経路、健康状態、ならびに同時に投与される他の薬剤が挙げられる。好ましい服用量は、約0.1から5(例えば、0.05、0.1、0.15、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5または6)mg/kg(体重)にまで及ぶ。場合によっては、単回服用が、皮膚炎症の発現を回復するのに有効である。その他の場合において、服用が繰り返されてもよい(例えば、半週毎、毎週、隔週、週3回、半月毎、3週に1度、毎月、隔月、または必要に応じて(皮膚炎症が再発する場合))。
【実施例0032】
実施例1-Xilonix(商標)
Xilonix(商標)は、注射可能な滅菌液体製剤であり、安定化等張バッファ(pH6.4)中15mg/mLのMABp1である。10-mL Type Iの各ホウケイ酸ガラス血清バイアルが、5mLの製剤を含有しており、20-mm Daikyo Flurotecのブチルゴムストッパおよびフリップ-オフアルミニウムシールでシールされている。製品を、5±3℃にて貯蔵する(室温までのエクスカーションが容認される)。薬剤製品の正確な組成を、以下に示す。
【0033】
投与の方法:
算出した容量を、薬剤(mAb)含有バイアルから、適切なシリンジを用いて引き出す。続いて、薬剤を被験者に皮下注射する。
【0034】
実施例2-尋常性ざ瘡の治療。
18歳男性が、中程度から重篤な尋常性ざ瘡を示し、腕、背中、胸および顔面に及んでいた。病変の重大な硬化が、特に背中にあった。患者はこれを急性的な発生として説明したが、15歳から継続していた尋常性ざ瘡の問題を報告した。局所的にレチノイドおよびコルチコステロイドが過去に用いられ、ある程度の効果があった。また、限られたUV治療が、日焼けベッドを用いてなされたが、結果は限られていた。患者に、Xilonix(商標)(MABpl;15mg/ml)の単回の3mlの皮下注射をした(0.6mg/kgの服用量を表す)。
【0035】
患者を、注入後2時間、観察した。明らかな注入応答も、薬剤に対する有害な応答もなかった。24時間後、患者を再評価した。肩および背中の大きな病変について、大きさが劇的に縮小した。顔の病変の炎症性浸潤の軽減が、服用前と比較した、病変の赤みの減少および病変サイズの縮小によって証明された。病変は、乾燥しているようであった。
【0036】
72時間後に、患者を再検査した。改善は注目に値した。ほとんどの病変が示した炎症は、劇的に少なく、または、多くは全体的に見て明らかでなかった。著しい硬化があった肩および背中の病変は回復し、わずかに変色していただけで、触れると柔軟であった。患者の顔面は基本的には普通に見え、そして患者は、皮膚の外観に非常に満足であると述べた。注射の1週後、患者は継続的な改善を示し、そして皮膚の全領域について、顕著な病変がないように見えた。
【0037】
実施例3-皮下注射用MABp1の製剤化。
T2-18C3は、滅菌液体製剤であり、安定化等張調合バッファ(pH6.4±0.1)中100±5mg/mLのMABp1である。この製剤の1.4±0.1mLが、2mL Type Iのホウケイ酸ガラス血清バイアル内に含有され、20-mm Daikyo Flurotecのブチルゴムストッパおよびフリップ-オフアルミニウムシールでシールされていた。製品を、5±3℃にて直立させて貯蔵した(室温までのエクスカーションが容認された)。薬剤製品の正確な組成を、以下の表2に示す。
【0038】
実施例4-乾癬の治療。
タイプI尋常性乾癬の病歴がある48歳男性(エイジ5と診断)を、T2-18C3により治療した。患者は、尋常性乾癬の家族歴が陽性であり、きょうだい、父および祖母が同様に冒されていた。患者は以前に、局所的なレチノイドおよびビタミンD3調製物により治療されたが、改善は僅かであった。局所的なステロイドおよびUV治療による過去の治療では、ベネフィットが示された。T2-18C3の投与前、患者に生物学的薬剤による治療履歴はなかった。
【0039】
患者に、MABp1の2回の皮下注射を下腹部に0日目に投与した(合計160mgのMABp1)。患者は注射に十分耐容性を示し、合併症はなかった。患者の背中を、投与後17時、41時、5日、6日および10日にて評価した。17時に、病変に伴う赤みの中適度の改善が観察された。41時に、継続的な改善が注目され、病変のサイズおよび赤みについて、はっきり観察可能な減少があった。5日目までに、病変の著しい回復が観察された。この改善は、6日目まで続いた。病変は、10日目までにほぼ完全に回復した。
【0040】
実施例5-乾癬の治療。
True Human(商標)モノクローナル抗体RA-18C3(IL-1アルファに特異的)の非盲検試験を、中程度から重篤な慢性尋常性乾癬のヒト被験者で行った。試験被験者は、200mgのRA-18C3を、皮下注射を介して、0、21および42日目の合計3回の注射で受けた。PASI(乾癬面積および重篤度指標評価)スコアを、各被験者について種々の時点で得た。最初の5つの評価可能な全被験者研究について、56日目にてPASIスコアの低下(すなわち、疾患の改善)が示された。最初の5つの評価可能な被験者の、56日目でのPASIスコアの平均低下量は、ほぼ50%であった。
【0041】
実施例6:True Human(商標)抗炎症治療抗体(RA-18C3)の、中程度から重篤な尋常性ざ瘡の被験者における安全性、薬物動態および有効性のフェーズII非盲検研究の中間結果。
RA-18C3は、MABp1の、注射可能な安定化等張バッファ中滅菌液体製剤である。研究集団は、中程度から重篤な尋常性ざ瘡の、≧18歳の被験者からなる。被験者は、顔の炎症性病変について、調査者の総合評価が≧3、≧15であり、全身治療の候補者であった。11人の患者を登録した。登録した被験者11人のうちの7人が、56日目に入手可能な病変カウントデータを有しており、分析に含めている。ほとんどの患者(86%)はコーカソイドであり、年齢の中央値は23(19~30)歳であり、5人(71%)が女性であった。顔の総炎症性病変カウントは、42日目に35±8%(中央値34%、25~48%に及ぶ);そして56日目に44±23%(中央値42%、19~71%に及ぶ)の平均改善を示した。
【0042】
ボディイメージ不安アンケート(BIDQ)は、「ネガティブなボディイメージ」を評価するために用いられる自問型の臨床的に認証されたアンケートである。7項目のボディイメージ不安アンケートの内的一貫性、信頼性および妥当性は、いくつかの先行研究によって確立されてきた(定性分析用の臨床背景におけるその潜在的有用性も同様である)。近年、尋常性ざ瘡の患者に特に用いるBIDQの修正版が認証された。修正ボディイメージ不安アンケートの自己申告測定(0日目(D0)および21日目(D21)に収集した)を分析した。この7項目の調査ツールは、ボディイメージコンストラクトの種々の側面(見た目に関する懸念、それら懸念への精神的執着、ならびに結果として生じる、社会生活面および職業生活面の障害が挙げられる)を評価した。BIDQ調査の最初の質問に対する答えについて、7人の被験者は全員、ざ瘡が主たる皮膚問題であり、そして皮膚の見た目を心配していると報告した。D21に、43%が、精神的執着(Q2)、感情的苦悩(Q3)および社会/職業障害(Q4)の改善を示した;一方、86%が、社会生活の障害(Q5)、学校/仕事の障害(Q6)、およびざ瘡問題に起因する積極性の無効化(Q7)において、安定化を示した(さらなる悪化はなかった)。6つのBIDQ項目(Q2からQ7)の平均スコアは、D21に、D0のレベルからの顕著な低下を示した。これは、おしなべて、ボディイメージの不安の改善を示している。
【0043】
皮膚疾患に存在する根本的な炎症プロセスと、精神医学的症状の間に因果関係が存在すると仮定した。この可能性をさらに探究するために、病院不安および鬱尺度(HADS)を用いて、試験集団の鬱および不安プロフィールを評価した。D0およびD21のスコアが、7人の被験者全員について入手可能であった。D0およびD21の平均不安スコアは、それぞれ6.1±3.1(中央値6.0)および3.3±3.9(中央値3)であった(Δ2.9)(
図3)。高いD0スコアから観察されるように、かなりのレベルのベースライン不安が、研究集団において優勢であった(中央値6)。不安の約50%の低下(6.1±3.1から3.3±3.9まで)がD21までに達成されたことに注目することが重要である。不安スコアの≧3ポイントの改善を示す被験者は、D21の「顔の炎症性病変カウント」が実質的に(21%から34%)低下した。平均鬱スコアは、D0およびD21に、それぞれ2.6±3.1(中央値1)および2.1±3.1(1)であった。
【0044】
他の実施形態
本発明は、発明を実施するための形態と共に記載されてきたが、前述の記載は説明を意図するものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲の限定を意図するものでないことを理解すべきである。他の態様、利点および修正も、特許請求の範囲内である。