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特開2022-177133象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物
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  • 特開-象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177133
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20221122BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221122BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20221122BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221122BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P1/02 ZNA
A61Q11/00
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/64
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/34
A61K9/08
A61K8/49
C07K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022144807
(22)【出願日】2022-09-12
(62)【分割の表示】P 2020560363の分割
【原出願日】2019-04-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0053012
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518165752
【氏名又は名称】ハイセンスバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジ ヒョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式1のアミノ酸配列からなるペプチドを含む組成物である。
KY-R1-R2-R3-R4-R5-R6-R7-R8(一般式1)
前記一般式1において、R1はアルギニン(R)、リジン(K)またはグルタミン(Q)であり、R2はアルギニン(R)またはグルタミン(Q)であり、R3、R4およびR5はそれぞれアルギニン(R)またはリジン(K)であり、R6はアスパラギン(N)またはセリン(S)であり、R7およびR8はリジン(K)またはチロシン(Y)である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1のアミノ酸配列からなるペプチドを含む象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物において、
KY-R1-R2-R3-R4-R5-R6-R7-R8(一般式1)
前記一般式1において、
R1は、アルギニン(R)、リジン(K)またはグルタミン(Q)であり、
R2は、アルギニン(R)またはグルタミン(Q)であり、
R3、R4およびR5は、それぞれアルギニン(R)またはリジン(K)であり、
R6は、アスパラギン(N)またはセリン(S)であり、
R7およびR8は、リジン(K)またはチロシン(Y)であり、
前記組成物100重量部に対して、前記ペプチド0.00005重量部~0.00015重量部、精製水85重量部~87重量部、界面活性剤1.7重量部~2.9重量部、およびクエン酸水和物0.0045重量部~0.0055重量部を含み、
前記組成物は、象牙質表面に薄い膜を形成するとともに、象牙細管の内側および唾液に存在するリン酸-カルシウムイオンと結合して、象牙細管および象牙質表面に再石灰化を誘導し、
前記ペプチドは、配列番号1~96のいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする、象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物。
【請求項2】
前記組成物100重量部に対して、塩化セチルピリジニウム0.0545重量部~0.0555重量部が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の口腔衛生用組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤は、ポロクサマーまたはポリソルベート20の少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の口腔衛生用組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は、ポロクサマー407を12重量%~14重量%、ポリソルベート20を86重量%~88重量%含むことを特徴とする、請求項3に記載の口腔衛生用組成物。
【請求項5】
前記組成物100重量部に対して湿潤剤9重量部~11重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔衛生用組成物。
【請求項6】
前記湿潤剤は、D-ソルビトール液および/またはグリセリンであることを特徴とする、請求項5に記載の口腔衛生用組成物。
【請求項7】
前記湿潤剤は、前記D-ソルビトール液を45重量%~55重量%、前記グリセリンを45重量%~55重量%含むことを特徴とする、請求項6に記載の口腔衛生用組成物。
【請求項8】
象牙質の再石灰化を誘導することを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の口腔衛生用組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の口腔衛生用組成物を、これを必要とするヒトを除く個体の象牙質表面に投与する段階を含む、象牙質知覚過敏症緩和方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔衛生用組成物に関するもので、より具体的に、本発明は歯を構成する象牙質欠損部の生理的再石灰化を誘導して、知覚過敏症を防止または緩和するための口腔衛生用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よく「しみる歯(知覚過敏)」と言われる象牙質知覚過敏症は、成人人口の8%~57%が経験する一般的な症状である。特に、韓国において最も多く発生する疾患である歯周病の場合、患者の72.5%~98%が知覚過敏で苦しんでいる(出処:国家健康情報ポータル医学情報、http://health.cdc.go.kr/health /Main.do)。
【0003】
象牙質知覚過敏症は、象牙細管が外部からのすべての刺激をそのまま歯髄内の神経に伝達して、同じ刺激に対してもいつもより敏感に反応するようにして誘発される痛症と定義され得る。象牙質自体には神経がないが、歯がしみると感じるのは、冷たい温度刺激が象牙細管を経て歯髄内部の神経まで伝わるからである。
【0004】
歯の最も多くの部分を占める象牙質には、歯髄からエナメル質に至るまでの象牙細管が存在する。この管の内部は液体で詰まっており、歯髄側に行くほど直径が大きくなり密集する構造を有するが、このような構造的特徴のため、外部刺激が内部の歯髄神経に速やかに伝達され得る。外部と接した象牙質が損傷して象牙細管が外部と接する面積が広くなると、同じ刺激に対しても通常より敏感に反応するようになる原因となり得る。
【0005】
現在、知覚過敏症を治療するためのアプローチ方法は、作用原理に応じて大きく2種類に分けられ、一つは痛みを伝達する神経の信号伝達を妨害することであり、他の一つは露出した象牙細管を塞いで、その症状を緩和させる方法である。
【0006】
まず、痛症を伝達する神経の信号伝達を妨害するための方法に、リン酸水素二カリウム塩(KHPO)成分がよく用いられている。しかし、リン酸水素二カリウム塩は、痛症ブロックの効果が低いだけでなく、持続的に繰り返し使用する必要があり、咀嚼過程における噛む感覚を制限するため、効率的な治療方法とは言い難い。
【0007】
次に、象牙細管を封鎖するための方法のために、リン酸一水素カルシウム(CaHPO)、フッ素(fluorine)、シュウ酸(oxalate)、アミノ酸のアルギニン(arginine)
と炭酸カルシウム(CaCO)などが用いられている。しかし、象牙細管封鎖方法も、象牙質とは異なる物質を用いることとなるので、周辺境界部位に隙間が生じたり、または封鎖部から離脱して再び神経が露出されたりして、しみる症状が再発することとなる。現在、象牙質知覚過敏症(しみる歯)緩和のための口腔衛生剤は、大概フッ素が含有された製品が多いが、フッ素は歯をコーティングし、唾液内に存在するカルシウム成分との結合力が強くて、露出した象牙細管を封鎖することによってしみる症状を緩和させる効果を有すると知られている。しかし、フッ素は、長期間使用したときに人体の免疫システムを損傷させたり、関節炎、腰痛、骨粗しょう症などを誘発したりし得る副作用があるとも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、象牙質の生理的再石灰化(remineralization)によって露出された象牙細管の欠損部を閉鎖することにより知覚過敏症を防止または緩和する、ペプチド(peptide)
を含む口腔衛生用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の目的は、以上で言及したものに制限されず、言及されていないまた他の目的は、以下の記載から本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に明確に理解され得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の技術的課題を解決するための本発明の一様態による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物は、下記一般式1のアミノ酸配列からなるペプチドを含む象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物を提供する。
【0011】
K-Y-R1-R2-R3-R4-R5-R6-R7-R8・・・一般式(1)
前記一般式1において、
R1は、アルギニン(R)、リジン(K)、またはグルタミン(Q)であり、
R2は、アルギニン(R)またはグルタミン(Q)であり、
R3、R4およびR5は、それぞれアルギニン(R)またはリジン(K)であり、
R6は、アスパラギン(N)またはセリン(S)であり、
R7およびR8は、リジン(K)またはチロシン(Y)である。
【0012】
ここで、前記ペプチドは、配列番号1~96のいずれかのアミノ酸配列からなるものであり得る。
【0013】
また、前記組成物100重量部に対して、前記ペプチド0.00005重量部~0.00015重量部が含まれ得る。
【0014】
また、前記組成物100重量部に対して、塩化セチルピリジニウム0.0545重量部~0.0555重量部が含まれ得る。
【0015】
例示的な実施例において、口腔衛生用組成物は、前記組成物100重量部に対して精製水85重量部~87重量部、界面活性剤1.7重量部~2.9重量部、およびクエン酸一水和物0.0045重量部~0.0055重量部を含み得る。
【0016】
例示的な実施例において、前記界面活性剤は、ポロクサマー(POLOXAMER)および/ま
たはポリソルベート20(Polysorbate 20)であり得る。
【0017】
例示的な実施例において、前記界面活性剤は、前記ポロクサマー407を12重量%~14重量%、ポリソルベート20を86重量%~88重量%含み得る。
【0018】
例示的な実施例において、口腔衛生用組成物は、前記組成物100重量部に対して湿潤剤を9重量部~11重量部含み得る。
【0019】
例示的な実施例において、前記湿潤剤は、D-ソルビトール液、および/または濃グリセリンであり得る。
【0020】
例示的な実施例において、前記湿潤剤は、前記D-ソルビトール液45重量%~55重量%、前記濃グリセリン45重量%~55重量%を含み得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、象牙質の生理的な再石灰化によって露出された象牙細管の欠損部を閉鎖することにより知覚過敏症を防止または緩和する、ペプチドを含む口腔衛生用組成物を提供し
得る。
【0022】
本発明の効果は以上で言及したものに制限されず、言及されていない他の効果は以下の記載から、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a図1aは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に含まれているペプチドが、象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP発現に及ぼす影響をグループ別に比較した結果を示すグラフである。
図1b図1bは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に含まれているペプチドが処理されたMDPC-23細胞において、象牙芽細胞分化マーカーであるDSPP遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
図1c図1cは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に含まれている、グループ11および12のペプチドが処理されたMDPC-23細胞において、象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP、Dmp1、およびNestin遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。
図1d図1dは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に含まれているペプチドの歯髄組織細胞に対する細胞毒性を評価した結果を示すグラフである。
図2図2は、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の象牙細管透過度を示したもので、蛍光染色試薬(ローダミンB)を混合して象牙細管が露出された歯に1分間処理した後、蛍光顕微鏡で観察した結果を示すものである。
図3図3は、比較例3-1および比較例3-2と本発明の実施例とによる象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の象牙細管封鎖能を比較した結果を図示すものである。A~Cは、精製水のみで処理した象牙質の象牙細管を示すもの(比較例3-1)で、D~Fは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の構成のうち、ペプチド未含有の口腔衛生用組成物と反応した象牙細管を示すもの(比較例3-2)で、G~Iは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物と反応した象牙細管を示すものである(サイズバー:A、D、G、100μm;B、E、H、20μm;C、F、I、10μm)。それぞれの場合、象牙細管が露出された象牙質試験片に1日、1回、1分間反応させてから人工唾液に保管しており、この過程を2週間繰り返した後、象牙細管封鎖能を走査型電子顕微鏡で観察した。
図4図4は、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物によって象牙細管が封鎖された部分を拡大したもので、封鎖された象牙細管と象牙質表面にて再石灰化が起こった結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的および効果、そしてそれらを達成するための技術的構成は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すると明確になることである。本発明を説明するに当たり、公知の機能または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略し得る。そして、後述する用語は、本発明における説明を考慮して定義された用語であり、これはユーザーなどの意図または慣例などによって異なり得る。
【0025】
しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現され得る。ただ、本実施例は、本発明の開示が完全となるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇をきちんと知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇により定義されるのみである。したがって、その定義は、本明細書全般に亘る内容に基づいてなされるべきである。
【0026】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」または「備える」と言うとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0027】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
本発明を説明するに当たり、象牙芽細胞(または象牙質芽細胞)(odontoblast)とは
、象牙質の基質を構成するタンパク質、多糖体を細胞内で合成、分泌する細胞のことを意味し得る。また、象牙前質(未石灰化の象牙質)に接して、歯髄の周辺部に一層の細胞層を構成する円柱状の細胞として、歯乳頭の細胞の中でエナメル基に面しているもの(外胚葉系の中間葉に由来する細胞となる)が分化した細胞であり、また、象牙質の石灰化にも関与する細胞のことを意味し得る。
【0028】
本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に含まれるペプチド(以下、「象牙芽細胞分化促進ペプチド」と言う)は、細胞毒性を示さずとも、象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP、Dmp1およびNestin遺伝子の発現レベルを増加させることができ、歯髄組織細胞と一緒に生体内に移植する場合、前記歯髄組織細胞が象牙質/歯髄組織-類似組織を形成する特徴を示し得る。
【0029】
象牙芽細胞分化促進ペプチドには、象牙質の再生促進または象牙質知覚過敏症の治療効果を示し得る限り、これを構成するアミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸残基が異なる配列を有するペプチド変異体も含まれる。
【0030】
一般に、分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびポリペプチドにおけるアミノ酸の交換は、当該分野に公知である。最も一般的に起きる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。また、アミノ酸配列上の変異または修飾によってペプチドの熱、pHなどに対する構造的安定性が増加したペプチド、または象牙質または歯髄組織の再生促進能が増加したペプチドを含み得る。
【0031】
例えば、本発明で提供する配列番号1のペプチドの3番目に位置する酸性アミノ酸であるグルタミンは、塩基性アミノ酸であるリジンまたはアルギニンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができ;配列番号1のペプチドの4番目または5番目に位置する塩基性アミノ酸であるアルギニンは、酸性アミノ酸であるグルタミンまたは塩基性アミノ酸であるリジンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができ;配列番号1のペプチドの6番目、7番目または9番目に位置する塩基性アミノ酸であるリジンは、塩基性アミノ酸であるアルギニンまたは芳香族アミノ酸であるチロシンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができ;配列番号1のペプチドの8番目に位置する酸性アミノ酸であるアスパラギンは、中性アミノ酸であるセリンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示すことができ;配列番号1のペプチドの10番目に位置する芳香族アミノ酸であるチロシンは、塩基性アミノ酸であるリジンに置換されても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示し得る。
【0032】
このように、象牙芽細胞分化促進ペプチドを構成する酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸または芳香族アミノ酸はそれぞれ、異なる酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸または芳香族アミノ酸に置換されてもそのまま効果を示し得るので、象牙芽細胞分化促進ペプチドを構成するアミノ酸配列と1つ以上のアミノ酸残基が異なる配列を有するペプチド変異体も、象牙芽細胞分化促進ペプチドの範疇に含まれることは自明である。
【0033】
また、象牙芽細胞分化促進ペプチドは、そのN末端またはC末端に任意のアミノ酸が付加された形態を有しても、本発明で提供するペプチドの効果をそのまま示し得るので、本発明で提供するペプチドの範疇に含まれる。一例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1個~300個のアミノ酸が付加された形態となり得、他の例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1個~100個のアミノ酸が付加された形態となり得、また別の例として、前記ペプチドのN末端またはC末端に1個~24個のアミノ酸が付加された形態となり得る。
【0034】
象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理していないMDPC-23細胞(対照群)から測定された象牙芽細胞の分化マーカーであるDSPP遺伝子のmRNAレベルに比べて、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理したMDPC-23細胞において、前記DSPP遺伝子のmRNAレベルがすべて1.3倍以上の値を示すことを確認した(表13~24)。
【0035】
これまで報告されたものによると、DSPPのmRNA発現レベルが増加すると、象牙芽細胞分化および象牙質の再生が促進されると知られているので、前記DSPP遺伝子のmRNAレベルを増加させる効果を示す象牙芽細胞分化促進ペプチドは、象牙芽細胞分化および象牙質再生を促進する効果を示すことが分かる(Taduru Sreenath et al., THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, Vol. 278, No. 27, Issue of July 4, pp.24874-24880, 2003; William T. Butler et al, Connective Tissue Research, 44(Suppl. 1):171-178, 2003)。
【0036】
本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に含まれるペプチドは、ペプチド単独の形態でも使用され得、前記ペプチドが2回以上繰り返し結合されたポリペプチドの形態でも使用され得、前記ペプチドのN末端またはC末端に象牙芽細胞分化または象牙質の再生効果を示す薬物が結合された複合体の形態でも使用され得る。
【0037】
(実施例1)
[象牙芽細胞分化促進のためのペプチドの合成]
ペプチド(配列番号1)をFmoc(9-fluorenylmethyloxycarbonyl)法により合成し、前記合成されたペプチドのアミノ酸を置換して、各グループのペプチドを合成した(表1~表12)。
【0038】
N-KYQRRKKNKY-C(配列番号1)
まず、グループ1のペプチドは、配列番号1のペプチドまたは前記配列番号1のペプチドの5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表1)。
【0039】
【表1】
【0040】
次に、グループ2のペプチドは、配列番号1のペプチドの5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、8番目のアミノ酸をセリンに置換して合成した(表2)。
【0041】
【表2】
【0042】
次に、グループ3のペプチドは、配列番号1のペプチドの5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、9番目のアミノ酸をチロシンに置換して合成した(表3)。
【0043】
【表3】
【0044】
次に、グループ4のペプチドは、配列番号1のペプチドの5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、8番目のアミノ酸をセリンに置換し、9番目のアミノ酸をチロシンに置換し、10番目のアミノ酸をリジンに置換して合成した(表4)。
【0045】
【表4】
【0046】
次に、グループ5のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表5)。
【0047】
【表5】
【0048】
次に、グループ6のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、8番目のアミノ酸をセリンに置換して合成した(表6)。
【0049】
【表6】
【0050】
次に、グループ7のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、9番目のアミノ酸をチロシンに置換し、10番目のアミノ酸をリジンに置換して合成した(表7)。
【0051】
【表7】
【0052】
次に、グループ8のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をアルギニンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、8番目のアミノ酸をセリンに置換し、9番目のアミノ酸をチロシンに置換し、10番目のアミノ酸をリジンに置換して合成した(表8)。
【0053】
【表8】
【0054】
次に、グループ9のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をリジン酸に置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換して合成した(表9)。
【0055】
【表9】
【0056】
次に、グループ10のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をリジンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、8番目のアミノ酸をセリンに置換して合成した(表10)。
【0057】
【表10】
【0058】
次に、グループ11のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をリジンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、9番目のアミノ酸をチロシンに置換し、10番目のアミノ酸をリジンに置換して合成した(表11)。
【0059】
【表11】
【0060】
最後に、グループ12のペプチドは、配列番号1のペプチドの3番目のアミノ酸をリジンに置換し、4番目のアミノ酸をグルタミンに置換し、5番目~7番目のアミノ酸をリジンまたはアルギニンに置換し、8番目のアミノ酸をセリンに置換し、9番目のアミノ酸をチロシンに置換し、10番目のアミノ酸をリジンに置換して合成した(表12)。
【0061】
【表12】
【0062】
(実施例2)
[象牙芽細胞を利用した象牙質の再生促進効果検証]
<実施例2-1:DSPP(dentin sialophosphoprotein)プロモーター活性に及ぼすペプチドの影響検証>
まず、マウス由来象牙芽細胞であるMDPC-23細胞を、10%FBSを含むDMEM培地において、5%のCOおよび37℃の条件で培養した。
【0063】
次に、前記培養したMDPC-23細胞を、24ウェルプレートに各ウェル当り5×10の細胞数で分注して24時間培養した後、リポフェクタミンPlus試薬を用いて、前記培養した細胞に、pGL3ベクターにDSPPプロモーターとルシフェラーゼ遺伝子が導入された組み換えベクターを導入して形質転換させた。前記形質転換されたMDPC-23細胞に、前記実施例1で合成されたグループ1~12のペプチドをそれぞれ処理して48時間培養した後、前記各々の形質転換されたMDPC-23細胞からルシフェラーゼ活性を測定し、各グループ別に算出された平均レベルを比較した(図1a)。この際、対照群としては、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理していない形質転換済みMDPC-23細胞を使用した。
【0064】
図1aは、本発明で提供する各ペプチドが、象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP発現に及ぼす影響をグループ別に比較した結果を示すグラフである。図1aに示すように、本発明で提供する各ペプチドは、全体として対照群から測定されたルシフェラーゼ(luciferase)活性レベルの約1.3倍以上の値を示したが、グループごとに差を示しており、グループ12のペプチドが最も高いレベルのルシフェラーゼ活性を示し、次に高いレベルのルシフェラーゼ活性を示すペプチドはグループ11のペプチドであることを確認した。
【0065】
従って、本発明で提供するペプチドは、DSPPプロモーターを活性化させる効果を示すことが分かった。
【0066】
<実施例2-2:象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP遺伝子の発現レベルに及ぼすペプチドの影響検証>
前記実施例2-1で培養したMDPC-23細胞に、前記実施例1で合成された各グループのペプチドを処理して48時間培養した後、前記MDPC-23細胞にて発現される象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP遺伝子のmRNAレベルを測定し、前記測定された各DSPP遺伝子のmRNAレベルを、対照群から測定されたDSPP遺伝子のmRNAレベルに対する相対的比率で換算した(表13~24)。また、各グループのペプチドにより測定されたDSPP遺伝子のmRNAレベルの平均値を各グループ別に比較した(図1b)。この際、対照群としては、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理していないMDPC-23細胞を使用した。
【0067】
前記DSPP遺伝子の発現レベルは、RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)およびリアルタイムPCR分析によ
り測定した。具体的に、TRIzol試薬を用いて前記MDPC-23細胞から全(total)RNAを分離した。2μgの全RNAと逆転写酵素1ulと0.5μgのオリゴ(oligo;dT)とを用いてcDNAを合成した。合成されたcDNAをリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応に利用した。リアルタイムPCRは、下記各プライマーとSYBR GREEN PCR Master Mix(タカラ社、日本)を用いて、ABIPRISM 7500シーケンス検出システム(sequence detection system)(Applied Biosystems)にて行われた。リアルタイムPCRは、
94℃、1分;95℃、15秒;60℃、34秒を40サイクル(cycles)繰り返す条件で行った。結果の分析は、比較Ct(comparative cycle threshold)法を用いて評価し
た。この際、内部対照群としては、Gapdh遺伝子を使用し、測定値は3回繰り返し実験を行った後、その平均値および標準偏差値を使用した。
【0068】
Dspp_F:5’-ATTCCGGTTCCCCAGTTAGTA-3’(配列番号97)
Dspp_R:5’-CTGTTGCTAGTGGTGCTGTT-3’(配列番号98)
Gapdh_F:5’-AGGTCGGTGTGAACGGATTTG-3’(配列番号99)
Gapdh_R:5’-TGTAGACCATGTAGTTGAGGTCA-3’(配列番号100)
【0069】
【表13】
【0070】
【表14】
【0071】
【表15】
【0072】
【表16】
【0073】
【表17】
【0074】
【表18】
【0075】
【表19】
【0076】
【表20】
【0077】
【表21】
【0078】
【表22】
【0079】
【表23】
【0080】
【表24】
【0081】
前記表13~24に示すように、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理していないMDPC-23細胞(対照群)から測定された象牙芽細胞分化マーカーであるDSPP遺伝子のmRNAレベルに比べて、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理する場合、前記DSPP遺伝子のmRNAレベルがすべて1.3倍以上の値を示すことを確認した。特に、グループ11のペプチドはいずれもDSPP遺伝子のmRNAレベルに比べて3倍以上の値を示し、グループ12のペプチドはいずれもDSPP遺伝子のmRNAレベルに比べて3.8倍以上の値を示すことを確認した。
【0082】
さらに、図1bは、象牙芽細胞分化促進ペプチドが処理されたMDPC-23細胞において、象牙芽細胞分化マーカーであるDSPP遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。図1bに示すように、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理する場合、象牙芽細胞分化マーカーであるDSPP遺伝子のmRNAレベルが増加し、図1aのものと同様に、対照群から測定されたDSPP遺伝子mRNAレベルの約1.3倍以上の値を示すことを確認した。
【0083】
<実施例2-3:象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP、Dmp1およびNestin遺伝子の発現レベルに及ぼすペプチドの影響検証>
前記実施例2-2の結果から、象牙芽細胞分化促進ペプチドは、DSPP遺伝子のmRNAレベルを増加させることができ、特に、グループ11および12のペプチドは、DSPP遺伝子のmRNAレベルを少なくとも3倍以上増加させ得ることを確認した。
【0084】
これにより、前記グループ11および12のペプチドが、他の象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDmp1およびNestin遺伝子のmRNAレベルも増加させ得るかを確認した。
【0085】
概ね、下記の各プライマーを使用して、ペプチドとしてグループ11および12のペプチドを使用することを除いては、前記実施例2-2と同様の方法を行い、Dmp1およびNestin遺伝子の発現レベルに及ぼす象牙芽細胞分化促進ペプチドの効果を測定し、各グループ別に算出された平均レベルを比較した(図1c)。この際、対照群としては、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理していないMDPC-23細胞を使用し、比較群としてDSPP遺伝子のmRNAレベルを使用した。
【0086】
Dmp1_F:5’-CATTCTCCTTGTGTTCCTTTGGG-3’(配列番号101)
Dmp1_R:5’-TGTGGTCACTATTTGCCTGTG-3’(配列番号102)
Nestin_F:5’-CCCTGAAGTCGAGGAGCTG-3’(配列番号103)
Nestin_R:5’-CTGCTGCACCTCTAAGCGA-3’(配列番号104)
【0087】
図1cは、グループ11および12のペプチドが処理されたMDPC-23細胞において、象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP、Dmp1およびNestin遺伝子の発現レベルを比較した結果を示すグラフである。図1cに示すように、象牙芽細胞分化促進ペプチドを処理すると、象牙芽細胞分化マーカー遺伝子であるDSPP、Dmp1およびNestin遺伝子の発現レベルがすべて増加したが、遺伝子ごとに増加レベルの差を示し、グループ11のペプチドよりもグループ12のペプチドがさらに高いレベルで増加させることを確認した。
【0088】
前記各分化マーカー遺伝子は、象牙芽細胞分化と象牙質の石灰化過程に関与する遺伝子として知られているので、本発明で提供するペプチドは、象牙質の再生を促進する効果を示すものと分析された。
【0089】
<実施例2-4:歯髄組織細胞に対する象牙質または歯髄組織の再生促進および象牙質知覚過敏症治療用ペプチドの細胞毒性評価>
まず、ヒト歯髄幹細胞は、ソウル大学歯科病院にて成人10人(18~22歳)の親知らずから歯髄組織細胞を分離した。具体的に、すべての実験は、臨床研究審査委員会(hospital’s Institutional Review Board)から承認を受けた後、患者の同意を得て実験を行い、Jung HS et al(J Mol Histol.(2011))の方法に基づいて親知らずを切断し、歯髄を露出させて鉗子で歯髄組織を分離した。前記分離された歯髄組織を両面刀で細かく細切して60mmシャーレに入れ、カバースリップで覆った後、DMEM培地で培養して、培養された歯髄組織細胞を得た。
【0090】
次いで、前記得られた歯髄組織細胞を96ウェルプレートに、各ウェル当り約3×10細胞数になるよう分注して24時間培養した後、グループ11または12のペプチドを10μg/mlまたは50μg/ml濃度で処理して、さらに1日、3日または5日間培養した。前記培養が終了した後、培養された細胞をPBSで洗浄し、20μlのMTT溶液を加えて、その後約37℃にて4時間反応させた。反応終了後、MTT溶液を除去し、100μlのDMSOを加えて、540nm波長にて吸光度を測定した(図1d)。この際、対照群としては、前記ペプチドを処理せずに培養した歯髄組織細胞を使用した。
【0091】
図1dは、歯髄組織細胞に対する象牙芽細胞分化促進ペプチドの細胞毒性を評価した結果を示すグラフである。図1dに示すように、象牙芽細胞分化促進ペプチドを加えても、歯髄組織細胞の生存率は対照群と同じレベルを示すことを確認した。
【0092】
(実施例3)
[象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の調製]
-段階1:ポロクサマー407を精製水に添加し、撹拌機で約30分間撹拌する(撹拌条件:PADDLE 15rpm~20rpm、DISPERSE 400rpm~500rpm)。
【0093】
-段階2:ソルビン酸カリウム、塩化セチルピリジニウム、キシリトール、アセスルファムカリウム着色剤(青色1号)、D-ソルビトール液、濃グリセリンを添加して撹拌機にて約30分間撹拌する(撹拌条件:PADDLE 15rpm~20rpm、DISPERSE 400rpm~500rpm)。
【0094】
-段階3:ポリソルベート20(Tween20)、金抽出物、緑茶エキス、カモミール抽出物、ローズマリーエキス、ミントの香り(HF-3585)を加温し添加して、撹拌機にて約30分間撹拌する(撹拌条件:PADDLE 15rpm~20rpm、DISPERSE 400rpm~500rpm)。
【0095】
-段階4:象牙芽細胞分化促進ペプチド(配列番号96)を約0.0001%で混合した後、クエン酸水和物(Citric acid hydrate)を添加してpH5.5~6.0の間に
合わせて調製する。
【0096】
本発明の実施例3による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の組成を下記表25にまとめる。
【0097】
【表25】
【0098】
[比較例に用いるための組成物の準備]
<比較例3-1>
実施例3と同じ体積の精製水を準備した。
【0099】
<比較例3-2>
実施例3の成分のうち精製水以外に、象牙芽細胞分化促進ペプチド(配列番号96)が含まれないようにしたこと以外の成分は、すべて同様に含有されるように準備した。
【0100】
<実験例1:実施例3による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の象牙細管透過度観察>
イ.象牙細管が露出するように歯を切断
抜歯した人の歯の歯冠部をダイヤモンドソーにより横に切断して象牙細管を露出した後、リン酸塩緩衝溶液により約5分間2回洗浄する。
【0101】
ロ.切断された歯を洗浄
先に切断した歯を、0.5Mのエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic
acid、EDTA、pH7.4)溶液に約5分間反応させた後、リン酸塩緩衝溶液により
約5分間2回洗浄する。
【0102】
ハ.実施例3による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に蛍光染色試薬添加
象牙芽細胞分化促進ペプチド(配列番号96)が含有された象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に、蛍光染色試薬が0.1%含まれるように添加してよく混合した後、象牙細管が露出された切断歯を約1分間反応させる。
【0103】
ニ.象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の浸透度の観察
反応させた切断歯をリン酸塩緩衝溶液により約5分間2回洗浄した後、ダイヤモンドソーにより切断歯の象牙細管が長く見えるよう縦に約0.5mm厚さで切った後、蛍光顕微鏡で浸透程度を観察する(図2を参照)。
【0104】
<実験例2:実施例3による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の象牙細管封鎖能の観察>
イ.人工唾液の調製
人工唾液の組成は下記表26の通りである。
※精製水に下記表2の各成分の最終濃度になるように添加して混合しており、リン酸カリウム(KHPO)は最後に添加した。
※人工唾液のpHは人の唾液に近い7.2付近で測定される。
【0105】
【表26】
【0106】
ロ.象牙細管試験片の作製
抜歯した人の歯をダイヤモンドソーにより横に切断して、1mm厚さの象牙細管が露出された象牙質試験片を作製した。
※象牙質試験片は、象牙細管を完全に露出させるために、約32%リン酸(phosphoric
acid)溶液に約5分間反応させた後、精製水により約5分間3回洗浄した。その後、象
牙質試験片は、超音波洗浄機で約5分間6回洗浄して、象牙細管を完全に露出されるようにした。
その後、リン酸塩緩衝溶液により3回洗浄して保管する。
【0107】
ハ.象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の象牙細管封鎖能観察
実施例3による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物を用いて、象牙細管試験片に約1分間反応させた後、人工唾液に約24時間反応させる。
【0108】
この過程を2週間繰り返した後、蒸留水で3回洗浄した後、乾燥して、走査型電子顕微
鏡(S-4700、HITACHI社、Tokyo、Japan)で象牙細管封鎖程度を観察する(図3、G~I)。
【0109】
<比較実験例2-1>
比較例3-1で用意された精製水を用いて象牙細管試験片に約1分間反応させた後、人工唾液に約24時間反応させる。
【0110】
この過程を2週間繰り返した後、蒸留水で3回洗浄した後、乾燥して、走査型電子顕微鏡で象牙細管封鎖程度を観察する(図3、A~C)。
【0111】
<比較実験例2-2>
比較例3-2で用意された口腔衛生用組成物を用いて象牙細管試験片に約1分間反応させた後、人工唾液に約24時間反応させる。
【0112】
この過程を2週間繰り返した後、蒸留水で3回洗浄した後、乾燥して、走査型電子顕微鏡で象牙細管封鎖程度を観察する(図3、D~F)。
【0113】
前記実験例1によると、実施例3による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の象牙細管透過度を蛍光顕微鏡で観察した結果、図2に示すように、象牙芽細胞分化促進ペプチドが含有された口腔衛生用組成物が処理された歯の場合、象牙質表面にて蛍光が強く観察された。さらに、露出した象牙細管の下方に沿って蛍光染色試薬の浸透が観察された。
【0114】
次に、前記実験例2と比較実験例2-1および2-2を比較した結果は、図3に示す通りである。図3は、比較例3-1および比較例3-2と、本発明の実施例とによる象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の象牙細管封鎖能を比較した結果を示すものであり、より詳細には、A~Cは精製水のみで処理した象牙質の象牙細管を示すもの(比較例3-1)であり、D~Fは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物の構成のうち、ペプチド未含有の口腔衛生用組成物と反応した象牙細管を示すもの(比較例3-2)であり、G~Iは、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物と反応した象牙細管を示すものである(サイズバー:A、D、G、100μm;B、E、H、20μm;C、F、I、10μm)。
【0115】
図3から分かるように、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物に反応させた象牙質の象牙細管に再石灰化が起こり、象牙細管が封鎖されていることが観察できた。
【0116】
図4は、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物によって象牙細管が封鎖された部分を拡大したもので、封鎖された象牙細管と象牙質の表面で再石灰化が起こった結果を示すものである。
【0117】
図4を参照すると、実験例3による象牙細管の様子をより詳細に観察することができ、象牙細管と象牙質の表面のいずれにおいて再石灰化が起こったことが分かる。本発明の実施例による知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物は、象牙質に薄い膜を形成するとともに、象牙細管の内側および唾液に存在するリン酸-カルシウムイオンと強く結合して、露出された象牙細管および象牙質表面に再石灰化を誘導して、象牙細管を効果的に封鎖することとなる。すなわち、本発明の実施例による象牙質知覚過敏症緩和のための口腔衛生用組成物は、露出した象牙細管の表面のみならず、象牙細管の内部で再石灰化を誘導して、知覚過敏症状を緩和および/または防止できる効果を示し得る。
【0118】
本明細書と図面には、本発明の好適な実施例について開示しており、たとえ特定の用語が使用されているものの、これは単に本発明の技術内容を分かりやすく説明して発明の理解を助けるための一般的な意味で使用されたものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示されている実施例の他にも、本発明の技術的思想に基づいた他の変形例が実施可能であると言うことは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に自明である。
【0119】
「本研究は、韓国における2017年度中小ベンチャー企業部の技術開発事業支援による研究である[S2462696]。」
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
【配列表】
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