(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017717
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】管状部材の曲げ加工方法及びこれに用いられる中子
(51)【国際特許分類】
B21D 9/00 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
B21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120425
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 公雄
(72)【発明者】
【氏名】久野 季朗
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA04
4E063BC13
4E063CA02
4E063HA05
4E063JA02
4E063MA18
(57)【要約】
【課題】引っ張り曲げ加工であっても管状部材の曲げ部だけでなく開口部の変形をも抑制できる管状部材の曲げ加工方法及びこれに用いられる中子を提供する。
【解決手段】管状部材の中空部に中空部の断面形状と略同一の断面形状の中子を挿入した状態で管状部材に曲げを付与する曲げ付与工程と、曲げ付与後の管状部材から中子を抜き出す中子抜出工程と、を備え、中子は、管状部材よりも変形強度が高い芯金と、芯金に固定され、管状部材の端部から曲げ形状が付与される部分までの長さを有する芯型とを有し、芯型は、可撓性を有するとともに、曲げ付与時に管状部材の断面変形を抑制可能な変形強度を有し、曲げ付与工程では、芯金の少なくとも一部が管状部材の開口部に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材の中空部に前記中空部の断面形状と略同一の断面形状の中子を挿入した状態で前記管状部材に曲げを付与する曲げ付与工程と、曲げ付与後の前記管状部材から前記中子を抜き出す中子抜出工程と、を備え、前記中子は、前記管状部材よりも変形強度が高い芯金と、前記芯金に固定され、前記管状部材の端部から曲げ形状が付与される部分までの長さを有する芯型とを有し、前記芯型は、可撓性を有するとともに、前記曲げ付与時に前記管状部材の断面変形を抑制可能な変形強度を有し、前記曲げ付与工程では、前記芯金の少なくとも一部が前記管状部材の開口部に配置されることを特徴とする管状部材の曲げ加工方法。
【請求項2】
前記芯型は、前記芯金に対して着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の管状部材の曲げ加工方法。
【請求項3】
前記芯型は、長さ方向に沿う分割面により複数層に分割されており、前記曲げ付与工程では、前記管状部材に形成される湾曲部の湾曲面に前記分割面が平行となるように前記芯型の各層が積層された状態で前記管状部材内に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の管状部材の曲げ加工方法。
【請求項4】
前記芯金には、牽引用係合部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の管状部材の曲げ加工方法。
【請求項5】
前記曲げ付与工程では、前記牽引用係合部は、前記芯金の前記管状部材の外部に露出する領域に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の管状部材の曲げ加工方法。
【請求項6】
管状部材の曲げ加工方法に用いられる中子であって、管状部材の中空部の断面形状と略同一の断面形状とされており、前記管状部材よりも変形強度が高い芯金と、前記芯金に固定され、前記管状部材の端部から曲げ形状が付与される部分までの長さを有する芯型とを有し、前記芯金は、可撓性を有するとともに、前記曲げ付与時に前記管状部材の断面変形を抑制可能な変形強度を有することを特徴とする中子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状部材の曲げ加工方法及びこれに用いられる中子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、曲げ加工が施された管状部材として、例えば、車両のルーフレール等が知られている。このルーフレールは、押出しによって予め直管状に成形された管状部材を後加工で曲げて成形することにより形成される。このような曲げ加工では、湾曲部におけるシワ等の発生を抑制するため中子が用いられている。
【0003】
このような中子として、例えば特許文献1には、管状部材の曲げ加工に用いられる加工用芯型が記載されている。この特許文献1に記載の曲げ加工用芯型は、中空形材の外向き湾曲面の設計された曲げ半径と等しい曲げ半径の曲面を有する湾曲型材と、外向き湾曲面と内向き湾曲面との間に積層されて管状部材の長さ方向に延びる複数の可撓性板材からなる積層型材とから構成されている。このような構成の曲げ加工用芯型を管状部材内に配置した状態で回転式曲げ加工機などを用いて管状部材に曲げ加工を施すことにより、その湾曲部におけるシワ、変形、亀裂などの発生を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被加工材の両端を把持しつつ長さ方向に引っ張り力を作用させながら湾曲面を有する部材に管状部材を押し付けることにより曲げ加工を施す引っ張り曲げ加工の場合、管状部材の両端(開口端)がその把持力によりつぶれる可能性があるため、曲げ加工後に開口端から中子を容易に取り外すことができない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、引っ張り曲げ加工であっても管状部材の曲げ部だけでなく開口部の変形をも抑制できる管状部材の曲げ加工方法及びこれに用いられる中子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の管状部材の曲げ加工方法は、管状部材の中空部に前記中空部の断面形状と略同一の断面形状の中子を挿入した状態で前記管状部材に曲げを付与する曲げ付与工程と、曲げ付与後の前記管状部材から前記中子を抜き出す中子抜出工程と、を備え、前記中子は、前記管状部材よりも変形強度が高い芯金と、前記芯金に固定され、前記管状部材の端部から曲げ形状が付与される部分までの長さを有する芯型とを有し、前記芯型は、可撓性を有するとともに、前記曲げ付与時に前記管状部材の断面変形を抑制可能な変形強度を有し、前記曲げ付与工程では、前記芯金の少なくとも一部が前記管状部材の開口部に配置される。
【0008】
本発明では、中子が管状部材の中空部と断面形状が略同一形状に形成され、かつ、変形強度が高いので、この中子が管状部材内に挿入された状態で管状部材に曲げが付与された際に、湾曲部にシワ、変形、亀裂等が発生することを抑制できる。また、管状部材に曲げを付与する際に、管状部材の両端部を把持しても、その両端部の内側に変形強度が高い芯金が配置されているので、管状部材の開口部の変形を抑制できる。このため、曲げが付与された状態の管状部材内から中子を取り出す際に、芯金が中空部の内面に引っかかることがないので、芯金を引っ張るだけで、中子を管状部材から容易に引き抜くことができる。
なお、管状部材の素材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金を例示でき、芯金の素材としては、鉄等を例示でき、芯型の素材としては、エンジニアリングプラスチック、例えばジュラコン(登録商標)、ポリペンコ(登録商標)等を例示できる。
【0009】
本発明の管状部材の曲げ加工方法の好ましい態様としては、前記芯型は、前記芯金に対して着脱自在に構成されているとよい。
ここで、芯型は可撓性を有し、曲げが付与される際に管状部材とともに曲げが付与されるため劣化しやすい。上記態様では、芯型が劣化した場合には、芯金をそのまま再利用して、芯型のみを新たな芯型に取り換えることができる。このため、曲げが付与された管状部材の製造コストをより低減できる。
【0010】
本発明の管状部材の曲げ加工方法の好ましい態様としては、前記芯型は、長さ方向に沿う分割面により複数層に分割されており、前記曲げ付与工程では、前記管状部材に形成される湾曲部の湾曲面に前記分割面が平行となるように前記芯型の各層が積層された状態で前記管状部材内に配置されるとよい。
ここで、芯型が一層構造であると、曲がった際の芯型の曲げ内側部分と曲げ外側部分との曲率半径の差が大きくなるため、芯型の外側部分での引っ張り応力と内側部分での圧縮応力との差が大きくなり、芯型への負荷が大きくなる。また、曲げ後の中子を引き抜く際にも大きな力が必要となる。このため、芯型の寿命が短くなる。
これに対し、上記態様では、芯型が複数層に分割され積層された構造であるので、各層の厚さが上記一層構造のものに比べて薄くなることから、曲がった際の芯型の個々の層において、曲げ内側部分と曲げ外側部分との曲率半径の差が上記一層構造に比べて小さくなる。このため、曲げ時に芯型にかかる負荷が軽減され、かつ、曲げ後の中子を引き抜く際の力も軽減できる。したがって、芯型の寿命を延ばすことができ、これにより曲げが付与された管状部材の製造コストをさらに低減できる。
【0011】
本発明の管状部材の曲げ加工方法の好ましい態様としては、前記芯金には、牽引用係合部が形成されているとよい。
上記態様では、牽引用係合部が形成されていることから、これを用いて中子を容易に引き抜くことができるので、引き抜く労力を軽減できる。
【0012】
本発明の管状部材の曲げ加工方法の好ましい態様としては、前記曲げ付与工程では、前記牽引用係合部は、前記芯金の前記管状部材の外部に露出する領域に形成されているとよい。
上記態様では、曲げ加工時に芯金の一部が外部に露出し、この領域に牽引用係合部が形成されているので、中子をより容易に引き抜くことができる。
【0013】
本発明の管状部材の曲げ加工方法に用いられる中子は、管状部材の曲げ加工方法に用いられる中子であって、管状部材の中空部の断面形状と略同一の断面形状とされており、前記管状部材よりも変形強度が高い芯金と、前記芯金に固定され、前記管状部材の端部から曲げ形状が付与される部分までの長さを有する芯型とを有し、前記芯金は、可撓性を有するとともに、前記曲げ付与時に前記管状部材の断面変形を抑制可能な変形強度を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引っ張り曲げ加工であっても管状部材の曲げ部(湾曲部)だけでなく開口部の変形をも抑制できる。これにより曲げ加工後の管状部材から中子を取り出しやすくでき、曲げ付与後の管状部材の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管状部材からなるルーフレールを簡略化して示す図である。
【
図2】曲げが付与される前の管状部材及び中子を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す中子が管状部材の中空部に配置された状態を示す断面図である。
【
図4】
図2に示す中子を分割した状態で示す図である。
【
図5】
図2に示す中子の芯金を拡大して示す図である。
【
図6】
図2に示す中子を管状部材内に配置し、曲げ加工機により管状部材を曲げ加工する様子を示す図である。
【
図7】一層構造の芯型及び
図2に示す芯型のそれぞれ、及びこれらに曲げを付与した際の変形状態を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の変形例に係る中子の芯金部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の管状部材の曲げ加工方法及びこれに用いられる中子の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
この実施形態は、本発明の製造方法を車両のルーフレール製造に適用した例である。
ルーフレール1は、
図1に示すように、車両2の屋根上に車両2の長さ方向等に沿って配置できる長さを有する長尺材であり、JIS A6000系等のアルミニウム合金からなる中空の押出形材によって形成されている。その断面形状は特に限定されるものではないが、曲げ加工が施されてルーフレール1となる管状部材20の断面は、
図3に示す例では、下壁201、両側壁202,203、上壁204、上壁204の端部と側壁203の端部とを接続する傾斜壁205を有する形状に形成されており、車両2の両側部に傾斜壁205の傾斜面の向きを変えて対称に1本ずつ配置されることにより、各ルーフレール1の傾斜壁205の傾斜面が車両2の両側方に向けて下り勾配となるように設けられる。
【0017】
また、このルーフレール1の長さ方向の大部分はほぼストレート状に形成されるが、両端部7は一側方に向けて屈曲されており、それぞれの先端は、車両2に取り付けるための端末加工が施され、
図1に示す例では樹脂製のブラケット8が固定されている。ほぼストレート状の中央部6と両端部7との間の両湾曲部9A、9Bは、その内面の曲率半径R1,R2が異なっている。なお、ほぼストレート状とは、ストレートのものの他、曲率半径が大きいためにほぼストレート状とみなしてよい程度に湾曲しているものも含む。
また、長尺とは、横断面における最大寸法に対して、長さ方向の寸法が相当程度(例えば10倍以上)に大きいことをいう。
【0018】
本実施形態のルーフレール1に加工される管状部材20に両湾曲部9A,9Bを形成するため、本実施形態では、中子10を管状部材20の中空部21に配置した状態で曲げ加工を実行する。以下、詳しく説明する。
【0019】
[管状部材の曲げ加工方法]
本実施形態の管状部材20の曲げ加工方法は、アルミニウム合金の押出成形により形成された管状部材20の中空部21に中空部21の断面形状と略同一形状の断面形状の中子10を挿入した状態で管状部材20に曲げを付与する曲げ付与工程と、曲げ付与後の管状部材20から中子10を抜き出す中子抜出工程と、を備えている。
【0020】
[管状部材の構成]
このような曲げが付与される管状部材20の中空部21は、上述した下壁201、両側壁202,203、上壁204、傾斜壁205により囲まれた領域からなる。このような管状部材20に曲げ加工を施す際には、上壁204の上面が上方に向けて凸となる方向(下壁201の下面が凹となる方向)に湾曲する。
また、下壁201の厚さは1.5mm~2.5mm、側壁202,203の厚さは1.5mm~2.5mm、上壁204の厚さは1.5mm~2.5mm、傾斜壁205の厚さは1.5mm~2.5mmとされている。
なお、この管状部材20において、下壁201の長さ方向を長さ方向とし、下壁201の幅方向を幅方向とし、下壁201に直交する上下方向を厚さ方向とし、この長さ方向、幅方向及び厚さ方向を中子10の説明においても適用する。
【0021】
[中子の構成]
この管状部材20に挿入される中子10は、曲げ加工時に管状部材20の湾曲部9A,9Bにおけるシワ、変形、亀裂などの発生を防止する他、管状部材20の開口部の変形を抑制するために用いられる部材である。また、中子10の長さは、管状部材20の開口端から湾曲部9A,9Bを超える長さがあれば十分であるが、本実施形態では、中子10の基端部を管状部材20から外部に露出した状態で曲げを付与するため、この状態において湾曲部9A,9Bを超える長さに設定される。また、中子10の断面形状は、
図3に示すように、管状部材20の中空部21の断面形状と略同じ大きさに形成されている。
【0022】
この中子10は、管状部材20よりも変形強度が高い芯金13と、芯金13に固定され管状部材20の端部から曲げ形状が付与される部分までの長さを有する芯型11とを有している。これらのうち芯型11は、エンジニアリングプラスチック、例えばジュラコン(登録商標)、ポリペンコ(登録商標)からなり、可撓性を有している。このため、芯型11は、曲げ付与時に管状部材20の断面変形を抑制可能な変形強度を有している。この芯型11は、基端側の端部が芯金13に着脱自在に固定されている。
【0023】
[芯金の構成]
芯金13は、管状部材20よりも変形強度が高い素材(例えば、鉄等)で形成され、芯型11を固定する機能を有する。この芯金13は、
図4及び
図5に示すように、中子10の基端部を構成する本体部131を備えている。本体部131は、その先端部が管状部材20に挿入され、基端部が管状部材20の開口端から突出する程度の長さに形成されており、その断面形状は、管状部材20の中空部21の断面形状と略同じとされている。本体部131の先端部の厚さ方向の中央部には、長さ方向に延びる切り欠き部133が形成されることにより、この切り欠き部133の両側に一対の固定部132が長さ方向に沿って形成されている。これら固定部132は芯金13の厚さ方向に対峙しており、この固定部132の間に、芯型11の基端部が挿入されて固定される。
【0024】
また、固定部132の一方の面には、その延出方向に並んだ2つの孔部134が形成され、これら孔部134は切り欠き部133に連通している。また、これら孔部134は、切り欠き部133に挿入された芯型11の端部を固定するためのねじ等が挿通可能な大きさに形成されている。また、本体部131には、本発明の牽引用係合部に相当する貫通孔135が厚さ方向に沿って形成されている。この貫通孔135には、例えば、中子10を管状部材20から引き抜くための牽引具が接続される。
【0025】
[芯型の構成]
芯型11は、全体としては管状部材20の中空部21の断面形状と略同じに形成されるが、芯金13に挿入固定される基端部は、芯金13の固定部132の厚さ分、薄い厚さに形成されている。この芯金13に固定される基端部を取付部とし、取付部以外の部分を本体部とする。本体部は、管状部材20の中空部21の断面形状と略同じに形成される。また、芯型11は、長さ方向に沿う分割面15により第1層となる第1芯型110と、第2層となる第2芯型120とに分割されている。この分割面15は、幅方向に沿って形成されており、芯型11の厚さを小さくするように第1芯型110と第2芯型120とに分割している。
【0026】
第1芯型110の取付部111は、断面視板状に形成され、本体部112の断面形状は、
図3に示す中空部21における上側半分を占める形状である。また、取付部111には2つの孔部113が長さ方向に沿って並んで配置されている。これら孔部113は、第1芯型110の取付部111が芯金13の切り欠き部133に配置された際に、芯金13の孔部134に連通する。
【0027】
第2芯型120の取付部121は、断面視板状に形成され、本体部122の断面形状は、
図3に示す中空部21における下側半分を占める形状である。また、取付部121には2つの孔部123が長さ方向に沿って並んで配置されている。これら孔部123は、第2芯型120の取付部121が芯金13の切り欠き部133に配置された際に、第1芯型110の孔部113及び芯金13の孔部134に連通する。
【0028】
このような第1芯型110及び第2芯型120の分割面15どうしを当接させた状態で、取付部111,121を切り欠き部133に配置し、孔部134を介して孔部113,123にねじ等を挿通させることにより芯金13と芯型11とが一体化され、中子10となる。そして、このような中子10を用いて管状部材20に曲げを付与する。
【0029】
(曲げ付与工程)
まず、管状部材20の中空部21の一方の開口部から1つの中子10を挿入するとともに、他方の開口部から他の中子10を挿入する。この場合、中子10は、
図3に示すように、管状部材20の幅方向に分割面15が平行(下壁201と平行)となって第1芯型110及び第2芯型120が積層された状態で管状部材20内に配置される。換言すると、曲げ付与工程により管状部材20に形成される湾曲部9A,9Bの湾曲面に分割面15が平行となるように芯型11の各層が積層された状態で管状部材20内に配置される。
また、
図6に示す例では、それぞれの中子10の基端部(芯金13の本体部131)が管状部材20の各開口部に重なり、かつ、本体部131の一部が管状部材20の外側に位置するように中子10を配置する。そして、
図6に示すように、管状部材20の両端部を曲げ加工機のチャック31により把持し、管状部材20に長さ方向に引っ張り力を付与した状態とし、その両端部に近い位置を曲げ型40に押付けて曲げ変形する。
【0030】
なお、ルーフレール1の二つの湾曲部9A,9Bの内面の曲率半径R1,R2が異なっていることから、この湾曲部9A,9Bを加工する曲げ型40の曲げ加工部41A,42Bの外面の曲率半径R3,R4も異なって形成されている。この場合、曲げ加工後の弾性回復量を見込んで、各曲げ加工部41A,41Bとも、目標とするルーフレール1の湾曲部9A,9Bの曲率半径R1,R2よりも小さい曲率半径R3,R4に設定される。また、引っ張り力は適宜設定可能である。
【0031】
ここで、芯型が一層構造であると、
図7に示すように、曲がった際の芯型100の曲げ内側部分と曲げ外側部分との曲率半径の差が大きくなるため、芯型100の外側部分での引っ張り応力と内側部分での圧縮応力との差が大きくなり、芯型100への負荷が大きくなる。
これに対し、本実施形態では、芯型11が第1芯型110及び第2芯型120に分割され積層された構造であるので、
図7に示すように、各層(第1芯型110及び第2芯型120)の厚さが上記一層構造の芯型100に比べて薄くなることから、曲がった際の芯型11(第1芯型110及び第2芯型120)の個々の層において、曲げ内側部分と曲げ外側部分との曲率半径の差が上記一層構造の芯型100に比べて小さくなる。このため、曲げ時に芯型11にかかる負荷が軽減される。
【0032】
(中子抜出工程)
次に、曲げ付与後の管状部材20から各中子10を抜き出す。この際、中子10の芯金13に牽引用係合部としての貫通孔135が形成されているため、この貫通孔135に牽引具(図示省略)を接続し、芯金13を牽引して中子10を管状部材20から引き抜く。
ここで、曲げ付与工程では、管状部材20の両端部を把持し、引っ張り力を発生させながら曲げを付与しているため、管状部材20が変形する可能性がある。この点、本実施形態では、曲げ付与工程時に管状部材20の中空部21に中子10を挿入した状態で曲げを付与する際に、管状部材20の両端部の内側に変形強度が高い芯金13が配置されているので、管状部材20の開口部の変形を抑制している。このため、曲げが付与された状態の管状部材20内から中子10を取り出す際に、芯金13が中空部21の内面に引っかかることが抑制される。
【0033】
(両端部加工工程)
このようにして曲げ加工し、各中子10を引き抜いた後、管状部材20の両端部(曲げ加工機のチャック31により把持されていた部分)を切り落とし、その先端に樹脂製のブラケット8を取り付けることにより、
図1に示すルーフレール1が製造される。
【0034】
本実施形態では、中子10が管状部材20の中空部21と断面形状が略同一形状に形成され、かつ、変形強度が高いので、この中子10が管状部材20内に挿入された状態で管状部材20に曲げが付与された際に、湾曲部9A,9Bにシワ、変形、亀裂等が発生することを抑制できる。また、管状部材20に曲げを付与する際に、管状部材20の両端部を把持しても、その両端部の内側に変形強度が高い芯金13が配置されているので、管状部材20の開口部の変形を抑制できる。このため、曲げが付与された状態の管状部材20内から中子10を取り出す際に、芯金13が中空部21の内面に引っかかることがないので、芯金13を引っ張るだけで、中子10を管状部材20から容易に引き抜くことができる。
【0035】
ここで、芯型11は可撓性を有し、曲げが付与される際に管状部材20とともに曲げが付与されるため劣化しやすい。本実施形態では、芯型11が劣化した場合には、芯金13をそのまま再利用して、芯型11のみを新たな芯型11に取り換えることができる。このため、曲げが付与された管状部材20、つまりルーフレール1の製造コストをより低減できる。
【0036】
また、芯型11が分割面15により二層に分割され積層された構造であるので、各層(第1芯型110及び第2芯型120)の厚さが一層構造のもの(
図7に示した芯型100)に比べて薄くなることから、曲がった際の芯型11の個々の層において、曲げ内側部分と曲げ外側部分との曲率半径の差が上記一層構造に比べて小さくなる。このため、曲げ時に芯型11にかかる負荷が軽減され、かつ、曲げ後の中子10を引き抜く際の力も軽減できる。したがって、芯型11の寿命を延ばすことができ、これにより曲げが付与された管状部材20(ルーフレール1)の製造コストをさらに低減できる。
【0037】
さらに、牽引用係合部として貫通孔135が形成されていることから、これを用いて中子10を容易に引き抜くことができるので、引き抜く労力を軽減できる。また、曲げ加工時に芯金13の一部が外部に露出し、この領域に貫通孔135が形成されているので、中子10をより容易に引き抜くことができる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、芯金13の一部が管状部材20の外部に露出した状態で曲げ付与工程を実行することとしたが、これに限らず、管状部材20の内部に芯金13の全領域が配置されることとしてもよい。この場合、牽引用係合部としての貫通孔135を利用することができないため、例えば、芯金13を有する中子10に代えて、
図8に示す芯金13Aを有する中子10Aを使用すればよい。この芯金13Aは、貫通孔135に変えて牽引用係合部としてのねじ穴135Aが芯金13Aの基端面に形成されている。このため、芯金13Aが管状部材20の内部に配置されている場合でも、ねじ穴135Aに牽引具のねじ等を螺合させて管状部材20の外側から芯金13Aを引き抜くことが可能となる。
【0039】
また、上記実施形態のように芯金13の一部が管状部材20の外側に配置された状態で中子10を引き抜く際には、牽引用係合部は設けられていなくてもかまわない。さらに、上記実施形態では、芯型11は、二層構造とされていたが、これに限らず、三層以上に分割された構造であってもよいし、一層構造でもかまわない。また、上記実施形態では、芯型11は芯金13に着脱自在とすることとしたが、一体化されたものも本発明の権利範囲である。
【0040】
上記実施形態では、曲げ付与工程では、引っ張り力を付与しながら管状部材20に曲げを付与することとしたが、これに限らず、管状部材20に中子10を挿入した状態で引っ張り力を付与することなく両端部を把持しながら曲げを付与することとしてもよい。この場合においても、管状部材20の開口部に芯金13が配置されているので、中子10を管状部材20から容易に引き抜くことが可能となる。つまり、本発明の管状部材の曲げ加工方法及びこれに用いられる中子は、引っ張り曲げに限定されるものではなく、管状部材の曲げ加工全般に好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ルーフレール
2 車両
6 中央部
7 端部
8 ブラケット
9A,9B 曲げ部
10 10A 中子
11 芯型
110 第1芯型
111 取付部
112 本体部
113 孔部
120 第2芯型
121 取付部
122 本体部
123 孔部
13 13A 芯金
131 本体部
132 固定部
133 切り欠き部
134 孔部
135 貫通孔(牽引用係合部)
135A ねじ穴(牽引用係合部)
15 分割面
20 管状部材
201 下壁
202 203 側壁
204 上壁
205 傾斜壁
21 中空部