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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177282
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221122BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G21/16 185
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156991
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2018215214の分割
【原出願日】2018-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 基希
(57)【要約】
【課題】定着装置における第1定着部材と第2定着部材との圧接状態を解除する際の衝撃音を緩和する。
【解決手段】定着装置は、互いに対向する第1定着部材および第2定着部材を支持する支持部材と、前記支持部材を前記第1定着部材と前記第2定着部材との圧接方向に付勢する付勢部材と、前記第1定着部材と前記第2定着部材との圧接を解除する解除部材とを備え、前記解除部材が移動して前記付勢部材を作用させ、前記解除部材は、その移動に連動して前記付勢部材が作用する圧力位置に位置する状態と、前記圧接を解除する解除位置に位置する状態との間で摺接し、前記付勢部材の付勢強度を増減可能とする係合突部を有し、前記支持部材の摺接部は平坦部を有し、前記係合突部が前記平坦部の中央付近にあるとき前記付勢部材の付勢力は前記係合突部が前記平坦部の端部にあるときよりも小さくなるように設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1定着部材および第2定着部材と、前記第1定着部材と前記第2定着部材とを支持する支持部材と、前記支持部材を前記第1定着部材と前記第2定着部材との圧接方向に付勢する付勢部材と、前記第1定着部材と前記第2定着部材との圧接を解除する解除部材とを備えて、前記解除部材が移動して前記付勢部材を作用させる定着装置であって、
前記支持部材は摺接部を備え、
前記解除部材は、前記解除部材の移動に連動し前記付勢部材が作用する圧力位置に位置する状態と、前記圧接を解除する解除位置に位置する状態との間で摺接して、前記付勢部材の付勢強度を増減可能とする係合突部を有し、
前記摺接部は平坦部を有し、前記係合突部が前記平坦部の中央付近にあるとき前記付勢部材の付勢力は前記係合突部が前記平坦部の端部にあるときよりも小さくなるように設けられたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記支持部材には、前記平坦部の端部に連続して配置されて前記解除部材を保持する係合凹部が設けられたことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に適用できる定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置では、回転駆動される感光体ドラムを帯電器により帯電し、前記感光体ドラムに画像情報に応じた光照射により静電潜像を形成し、現像装置によりこの静電潜像にトナー(乾式トナー)を付着させてトナー像を形成し、このトナー像をシート材、用紙などの記録媒体に転写して画像を出力するようにされている。
【0003】
画像形成装置には、搬送される記録媒体上の未定着トナーを溶融・固着する定着装置が設けられている。この種の定着装置としては、未定着トナーを溶融・固着する部位にはハロゲンランプ等を定着源とした定着ローラおよび加圧ローラを備える一対のローラ部材を対向させて配置し、両ローラ部材が所定圧力で圧接する圧接領域(定着ニップ部)に記録媒体を通すことにより、記録媒体上のトナーを溶融させて該記録媒体に定着させる熱定着ローラ方式が広く知られている。
【0004】
従来の定着装置は、バネ等の加圧部材によりローラ部材同士を長時間にわたり付勢することによって、ローラ部材の外周部に形成された弾性層に部分的な永久変形が発生するという問題点があった。これに対して、例えば特許文献1に開示される定着装置では、定着ローラおよび加圧ローラを圧接する加圧レバーとばね部材とを備えた加圧部材により加圧動作を規制することで、定着装置におけるローラ部材の部分的な永久変形の発生を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-192758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の定着装置の使用に際しては未だ改善の余地があり、例えば、加圧部材によって加圧ローラと定着ローラとが圧接された状態を解除する際には、圧力解除レバーを用いてばね部材に付勢された加圧レバーの解除操作が行われる。この圧力解除レバーを操作したとき、圧力解除レバーに衝突音や衝撃音を生じることがあり、定着装置を構成する各部材への振動等を抑えて安心して操作するために、このような衝撃音等を緩和することが望まれた。
【0007】
本発明は、前記のような課題にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、ローラ部材としての第1定着部材と第2定着部材との圧接状態を解除する際の衝撃音を緩和しうる定着装置およびその定着装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の解決手段として、互いに対向する第1定着部材および第2定着部材と、前記第1定着部材と前記第2定着部材とを支持する支持部材と、前記支持部材を前記第1定着部材と前記第2定着部材との圧接方向に付勢する付勢部材と、前記第1定着部材と前記第2定着部材との圧接を解除する解除部材とを備えて、前記解除部材が移動して前記付勢部材を作用させる定着装置であって、前記支持部材は摺接部を備え、前記解除部材は、前記解除部材の移動に連動し前記付勢部材が作用する圧力位置に位置する状態と、前記圧接を解除する解除位置に位置する状態との間で摺接して、前記付勢部材の付勢強度を増減可能とする係合突部を有し、前記摺接部は平坦部を有し、前記係合突部が前記平坦部の中央付近にあるとき前記付勢部材の付勢力は前記係合突部が前記平坦部の端部にあるときよりも小さくなるように設けられたことを特徴としている。
【0009】
より詳細には、前記支持部材には、前記平坦部の端部に連続して配置されて前記解除部材を保持する係合凹部が設けられた態様を例示できる。
【0010】
前記目的を達成するための本発明の解決手段として、前記構成を有する定着装置を備えた画像形成装置についても本発明の技術的思想の範疇にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、上記のように構成されることから、第1定着部材と第2定着部材との圧接状態を解除する際の衝撃音を緩和しうる定着装置およびその定着装置を備えた画像形成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略断面図である。
図2】実施形態1に係る定着装置の要部を概略的に示す斜視図である。
図3図2に示す定着装置の概略正面図であって、定着ローラに対して加圧ローラを圧接している圧接状態を示す図である。
図4図2に示す定着装置の概略正面図であって、定着ローラに対する加圧ローラの圧接を解除している圧力解除状態を示す図である。
図5図5(a)~図5(c)は前記圧接装置における一方の圧力解除レバーによる圧力解除の様子を示す説明図である。
図6】実施形態2に係る定着装置における加圧レバーと圧力解除レバーとを示す説明図であって、図5(b)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る定着装置および画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
(画像形成装置)
図1は、本発明の実施形態1に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略断面図である。なお、図1(および後述する図2から図4)に示される符号Xは水平方向に沿った奥行き方向、符号Yは奥行き方向Xに直交する水平方向に沿った幅方向、符号Zは水平方向に直交する上下方向(垂直方向)をそれぞれ示している。
【0015】
画像形成装置100は、原稿Gの画像を読み取って記録用紙等の記録シートPに画像を形成する複写機能を有しており、原稿Gの画像を読み取る画像読取装置200と、記録シートPに画像を形成する画像形成装置100の本体部300とを備えている。
【0016】
本体部300は、シート供給部310と、シート搬送部320と、画像形成部330と、シート排出部340とを備えている。画像形成部330において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたもの、または、単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像に応じたものとされる。
【0017】
画像形成部330において、感光体ドラム11、帯電器12、現像装置14、転写装置15における中間転写ローラ152およびドラムクリーニング装置16は各色に応じた4種類の画像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれがブラック、シアン、マゼンタおよびイエローに対応付けられている。図1に示す例では、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdでは、これらの間で実質的に共通する構成の部材には同一符号を付して示している。
【0018】
画像形成を行うにあたり、本体部300では、転写装置15の中間転写ベルト151を矢印方向Cに周回移動させつつ感光体ドラム11を回転させ、帯電器12により感光体ドラム11表面を所定の電位に均一に帯電させる。また、光走査装置13により感光体ドラム11表面を露光し、その表面に静電潜像を形成し、現像装置14により感光体ドラム11表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム11表面にトナー像(未定着画像)を形成する。これにより、感光体ドラム11の表面に各色のトナー像が形成される。その後、感光体ドラム11表面の残留トナーを、ドラムクリーニング装置16により除去および回収する。
【0019】
中間転写ベルト151を矢印方向Cに周回移動させつつ、転写バイアスが印加された中間転写ローラ152により各感光体ドラム11表面に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト151に順次転写して重ね合わせ、中間転写ベルト151上にカラーのトナー像を形成する。これにより、中間転写ベルト151表面にカラーのトナー像が形成される。その後、中間転写ベルト151表面の残留トナーをベルトクリーニング装置153により除去および回収する。
【0020】
シート供給部310は、シート供給ローラ部312により給紙カセット311に積載された記録シートPを給紙カセット311から引出して、シート搬送部320のシート搬送経路321を通じて画像形成部330に搬送する。シート搬送経路321には、レジストローラ322、各搬送ローラ324および排出ローラ325が設けられている。
【0021】
レジストローラ322は、記録シートPを一旦停止させて、記録シートPの先端を揃える。その後、レジストローラ322は、中間転写ベルト151と2次転写装置154の転写ローラ154aとの間の転写ニップ域でのカラーのトナー像の転写タイミングに合わせ、記録シートPの搬送を開始する。
【0022】
シート供給部310からシート搬送部320のシート搬送経路321を通じて、画像形成部330に搬送されてきた記録シートPを、中間転写ベルト151と転写ローラ154aとの間の転写ニップ域に挟み込んで搬送しつつ、転写バイアスが印加された転写ローラ154aにより中間転写ベルト151表面におけるカラーのトナー像を記録シートP上に転写する。そして、定着装置17の定着ローラ171と加圧ローラ172との間に記録シートPを挟み込んで加熱および加圧し、記録シートP上のカラーのトナー像を定着させる。さらに、記録シートPをシート排出部340に向けて搬送し、排出ローラ325を介してシート排出部340の排出トレイ341へ排出する。
【0023】
記録シートPの表面だけではなく、裏面の画像形成を行う場合は、定着装置17にて表面にトナー像が定着された記録シートPを排出ローラ325により反転経路323に向けて逆方向に搬送して、反転経路323により記録シートPの表裏を反転させ、記録シートPをレジストローラ322へ再度導き、記録シートPの表面と同様にして、記録シートPの裏面にトナー像を形成して定着し、記録シートPをシート排出部340の排出トレイ341に排出する。
【0024】
(定着装置)
-実施形態1-
図2は、本発明の実施形態1に係る定着装置17の要部を概略的に示す斜視図であり、定着ローラ171に対する加圧ローラ172の圧接状態を示している。図3および図4は、図2に示す定着装置17の概略正面図である。これらのうち、図3は、定着ローラ171に対して加圧ローラ172を圧接している圧接状態を示し、図4は、定着ローラ171に対する加圧ローラ172の圧接を解除している圧力解除状態を示している。
【0025】
なお、定着装置17の奥行き方向Xにおける一方側は他方側とは左右が反転するだけで実質的に同じ図であるために、図2図4では奥行き方向Xにおける一方側のみを示している。また、図2では、本体フレームFLを省略して示している。
【0026】
図3および図4に示すように、定着装置17は、記録シートP上におけるトナー像(トナーTからなる未定着画像)を定着する定着ローラ171(第1定着部材の一例)と、定着ローラ171に対向する加圧ローラ172(第2定着部材の一例)と、定着ローラ171に対して加圧ローラ172を圧接する一方、定着ローラ171に対する加圧ローラ172の圧接を解除する圧接装置400とを備えている。
【0027】
定着装置17は、圧接装置400によって定着ローラ171と加圧ローラ172とを相互に圧接した状態で、定着ローラ171と加圧ローラ172との間に定着ニップ域(定着ニップ部)Nを形成する。
【0028】
本実施形態では、定着ローラ171は、ハロゲンヒータランプ等の熱源174を備えており、熱源174によってローラ表面171aが加熱されるようになっている。
【0029】
図3および図4に示すように、定着ローラ171は、回転軸171bが定着装置17の本体フレームFLに回転自在に設けられている。定着ローラ171は、筒状の芯金171cを備えており、搬送される記録シートP上におけるトナーT側に配設されている。定着ローラ171における芯金171cの内側には、熱源174が設けられている。
【0030】
これにより、定着ローラ171は、熱源174によってローラ表面171aが加熱され、ローラ表面171aの熱を記録シートP上におけるトナーTに伝導する。そして、定着ローラ171は、記録シートPを間にして加圧ローラ172に圧接された状態で、加圧ローラ172との間の定着ニップ域Nに記録シートPを挟持しながら記録シートP上のトナーTを加圧ローラ172と共に加熱定着する。本実施形態では、加圧ローラ172には熱源が設けられていないが、加圧ローラ172に熱源が設けられていてもよい。
【0031】
かかる構成を備えた定着装置17は、画像形成装置100の本体部300(図1参照)に装着された状態で、本体部300側のギア等の駆動機構(図示せず)が定着ローラ171の回転軸171bに設けられたギア(図示せず)に噛合される。本体部300側の駆動機構からの回転駆動力は、ギアを介して定着ローラ171の回転軸171bに伝達される。定着ローラ171は、所定の回転方向E1に回転駆動される。
【0032】
加圧ローラ172は、定着ローラ171の回転に伴って、定着ローラ171の回転方向E1とは逆回転方向E2に従動回転する。記録シートPは、定着ローラ171と加圧ローラ172との間に挟まれつつ搬送され、定着ニップ域Nで加熱および加圧される。これにより、記録シートP上における未定着のトナーTが溶融、混合、および圧接されて熱定着される。
【0033】
(圧接装置)
圧接装置400は、加圧ローラ172を定着ローラ171に対して接離可能に支持する加圧レバー410(支持部材の一例)と、加圧ローラ172が定着ローラ171に対して圧接するように加圧レバー410を付勢するコイルバネ等の第1圧接スプリング420(付勢部材の一例)と、定着ローラ171に対する加圧ローラ172の圧接を解除する圧力解除レバー430(解除部材の一例)とを備えている。
【0034】
ここで、接離可能であるとは、加圧ローラ172が定着ローラ171に近接する方向および加圧ローラ172が定着ローラ171から遠ざかる方向に加圧ローラ172を移動させることが可能であることをいう。
【0035】
本実施形態では、図3および図4に示すように、加圧レバー410は、加圧ローラ172の回転軸173に沿った回動軸線(具体的には回動支点175)回りに、定着ローラ171に対して加圧ローラ172を接離方向Wに回動自在に支持する。なお、接離方向Wは、加圧ローラ172を圧接する方向および加圧ローラ172の圧接を解除する方向とされている。
【0036】
加圧レバー410は、加圧ローラ172の回転軸173を回転自在に支持し、かつ、回動支点175回りに回動自在に設けられている。回動支点175は、加圧ローラ172の回転軸173に沿って定着装置17の本体(具体的には本体フレームFL)に固定された回動軸を構成する支点ピンとされている。加圧レバー410は、加圧ローラ172の回転軸173の両端部にそれぞれ設けられている。
【0037】
このような一対の加圧レバー410は、加圧ローラ172の両側の回転軸173を受ける受け部411をそれぞれ有している。一対の加圧レバー410は、受け部411の軸受け440を介して加圧ローラ172の両端部の回転軸173を回転自在に支持している。
【0038】
加圧レバー410の所定方向における一端部には、回動支点175を回動自在に係止する係止部410aが設けられている。図3および図4に示す例では、加圧ローラ172の上方に係止部410aが設けられている。係止部410aは貫通孔とされており、回動自在に回動支点175を挿通する。
【0039】
圧力解除レバー430は、一対の加圧レバー410にそれぞれ取り付けられている。このように設けられた一対の圧力解除レバー430には、第1圧接スプリング420がそれぞれ備えられている。
【0040】
図3および図4に示すように、圧接装置400は、一対の第1圧接スプリング420を作用させるように、一対の加圧レバー410に対して予め定めた所定の移動方向Aに沿って圧力解除レバー430を相対的に移動させる構成とされている。
【0041】
圧接装置400は、圧力解除レバー430を加圧レバー410に対して移動方向Aに沿った仮想線(ここでは仮想直線α:図3および図4の破線α1、α2)上に相対的に移動させる。なお、移動方向Aは、直線方向の他、円弧方向、波線方向も含む概念であり、移動方向Aに沿った仮想線は、仮想直線の他、円弧方向に沿った仮想円弧、波線方向に沿った仮想波線を例示することができる。
【0042】
図3に示すように、加圧レバー410は、移動方向Aにおける第1圧接スプリング420が作用する圧力位置Q1で、圧力解除レバー430を保持する係合凹部412を有している。この場合、加圧レバー410は、仮想直線α上にある第1圧接スプリング420による付勢力が生じる圧力位置Q1で、圧力解除レバー430を保持するように、係合凹部412が設けられている。係合凹部412は、加圧レバー410の定着ローラ171側とは反対側の側面に設けられ、凹状に窪んだ曲面状に形成されている。
【0043】
より詳細には、係合凹部412は、半円筒状の曲面形状を有しており、その曲率半径が圧力解除レバー430の係合突部431の半径と略同等とされている。係合凹部412は、係合突部431との接触面積を十分に確保しつつ、係合突部431を確実に係合させることが可能となされている。
【0044】
一対の圧力解除レバー430は、それぞれ、加圧レバー410の係合凹部412に係合可能な係合突部431を備えている。図3に示すように、係合突部431は、移動方向A(仮想直線α方向)に直交する直交方向(奥行き方向X)に沿って突状に設けられている。
【0045】
図3では、係合突部431が、加圧レバー410の係合凹部412に係合している状態を示している。このような状態で、一対の第1圧接スプリング420は、一対の加圧レバー410に対し付勢力を付与し、加圧ローラ172を定着ローラ171に圧接する。
【0046】
また、圧力解除レバー430は、移動方向A(仮想直線α方向)に直交する直交方向(奥行き方向X)に沿った軸部432を有している。軸部432は、圧力解除レバー430の一方の端部に設けられている。さらに、この圧力解除レバー430の他方の端部側は、圧力解除レバーを操作するためのつまみ部434が設けられている。
【0047】
このような構造を有する圧力解除レバー430に対して、加圧レバー410は、圧力解除レバー430の軸部432を、移動方向A(仮想直線α方向)に沿って往復移動自在に支持する案内部413をそれぞれ有している。案内部413は、加圧レバー410において、加圧ローラ172を間にして回動支点175とは反対側の端部に設けられている。
【0048】
案内部413は、圧力解除レバー430の軸部432を、移動方向Aに沿って移動自在に案内するガイド溝414を有している。ガイド溝414は、外部に対して開放され、一対の圧力解除レバー430における軸部432を着脱自在に挿入する開口部414aを有している。加圧レバー410の案内部413において、圧力解除レバー430の軸部432は、移動方向Aに沿って往復移動するものとなる。
【0049】
案内部413のガイド溝414には、圧力解除レバー430の軸部432を容易に着脱させることができる。これにより、圧力解除レバー430の軸部432と案内部413との組み立て作業性が高められている。加圧レバー410は、案内部413が圧力解除レバー430の軸部432を中心軸回りに回動自在に支持している。
【0050】
図3および図4に示すように、第1圧接スプリング420は、一端部421が圧力解除レバー430における軸部432に設けられ、他端部422が定着装置17の本体側部材FLaに設けられている。また、第1圧接スプリング420の他端部422は、加圧ローラ172の定着ローラ171への圧接状態での仮想直線α(α1)上に位置している。
【0051】
なお、第1圧接スプリング420の一端部421および他端部422は、力が均一に加わる部分(具体的には第1圧接スプリング420の長手方向に沿った中心線を通る部分)をいうものとする。
【0052】
圧力解除レバー430の圧力解除動作のために、加圧レバー410には、係合凹部412に隣接する摺接部415が備えられている。図3および図4に示すように、摺接部415は、係合凹部412から滑らかに連続して設けられ、係合突部431を摺動可能に形成されている。
【0053】
図2に示すように、圧力解除レバー430の係合突部431は、両側面に突出した円柱状の突出部とされている。これに対して、摺接部415は、加圧レバー410の定着ローラ171側とは反対側の側面に、上下方向Zに沿って設けられている。加圧レバー410は、摺接部415を備える部分において、内側に圧力解除レバー430を移動可能に保持するスリット部を備えている。摺接部415は、スリット部419を挟んで分割された状態で奥行き方向Xに並列されている。
【0054】
各摺接部415は、第1圧接スプリング420の付勢力が緩められる方向に延設された第1の平坦部415bと、第1の平坦部415bに連続して第1圧接スプリング420の付勢力が最小となるニュートラル部415cと、ニュートラル部415cを越えてさらに延設された第2の平坦部415dとを備えている。また、図3に示す例では、係合凹部412と第1の平坦部415bとの間に平坦状の接続部415aが設けられている。摺接部415は、上下方向Zの上側から順に下側へ、係合凹部412、接続部415a、第1の平坦部415b、ニュートラル部415c、および第2の平坦部415dが順に配設されている。
【0055】
第1の平坦部415bは、係合凹部412に連続する接続部415aから、ニュートラル部415cまでの間に設けられている。第1の平坦部415bは、第1圧接スプリング420の付勢力を減少させる方向に傾斜した平滑な傾斜面となされている。
【0056】
第2の平坦部415dは、摺接部415において係合凹部412から離れた側に設けられ、第1圧接スプリング420の付勢力を増大させる方向に傾斜した平滑な傾斜面となされている。第2の平坦部415dは、第1の平坦部415bおよびニュートラル部415cに順に連続する形で設けられている。
【0057】
第1の平坦部415bと第2の平坦部415dとの間に設けられたニュートラル部415cは、曲面状に形成され、第1の平坦部415bと第2の平坦部415dとの間を滑らかに接続する形状を有している。図3に示すように、奥行き方向Xにおける一方側から見たとき、摺接部415は、接続部415aでは上下方向Zに略平行な直線状の外形を呈し、ニュートラル部415cで最も窪み、加圧レバー410の内部方向へ凹んだ外形を呈している。また、摺接部415の第1の平坦部415bと第2の平坦部415dとは、ニュートラル部415cの方向に傾斜した直線状の外形を呈している。ニュートラル部415cは、圧力解除レバー430を解除位置Q2に保持する位置に形成されている。
【0058】
このような摺接部415において、第2の平坦部415dは、係合凹部412からニュートラル部415cまでの間の平坦面長さ(係合突部431の摺接距離)よりも長い平坦面を有するように設けられている。第1の平坦部415bおよび第2の平坦部415dは、その途中部に凹凸や起伏を有さない平面形状の傾斜面とされている。
【0059】
また、第2の平坦部415dは、加圧レバー410の下端部に突設された延長部416を有している。延長部416は、加圧レバー410の下端部において、定着ローラ171および加圧ローラ172から遠ざかる方向へ延びる突状部として形成され、加圧レバー410の定着ローラ171側とは反対側の側面が第2の平坦部415dの一部を構成している。これにより、ニュートラル部415cから接続部415aまでの摺接距離よりも、ニュートラル部415cから第2の平坦部415dの下端部までの摺接距離の方が十分に長く確保されている。
【0060】
本実施形態では、加圧レバー410は、摺接部415において第1の平坦部415bと第2の平坦部415dとのなす角度が鈍角となるように形成され、これらの第1の平坦部415bと第2の平坦部415dとの中間部にニュートラル部415cが設けられている。図3および図4に示す例では、第1の平坦部415bと第2の平坦部415dとのなす角度は160°とされており、140°~170°の鈍角とされることが好ましい。
【0061】
このように構成される摺接部415は、圧力解除レバー430が圧力位置Q1に位置している状態と解除位置Q2に位置している状態との間で、第1圧接スプリング420の付勢力により、係合突部431を摺動させる。
【0062】
加圧レバー410は、圧力解除レバー430が圧力位置Q1に位置している状態で係合突部431を係合凹部412に係止する。すなわち、図3に示すように、加圧レバー410の係合凹部412は、圧力解除レバー430が圧力位置Q1に位置している状態のとき、係合突部431を係合するものとなる。係合突部431は、加圧レバー410の係合凹部412に安定的に保持されている。また、一対の圧力解除レバー430が、解除位置Q2に位置している状態では一対の第1圧接スプリング420による加圧レバー410への付勢力が解除される。
【0063】
一対の加圧レバー410の案内部413において、圧力解除レバー430の軸部432が移動方向A(仮想直線α方向)に沿って往復移動するとき、圧力解除レバー430の係合突部431が、加圧レバー410の摺接部415に接触しながら摺接部415に沿って移動する。前記のとおり、摺接部415は、第1の平坦部415bから第2の平坦部415dまで滑らかに接続されて、途中に凹凸や起伏等を有しないので、衝撃等を発生させることなく極めてスムーズに係合突部431を摺動させることができものである。
【0064】
圧力解除レバー430には、係合突部431を間にして軸部432とは反対側につまみ部434が備えられている。つまみ部434はどのような形状で設けられてもよいが、本実施形態では圧力解除レバー430は軸部432側とつまみ部434側とが係合突部431の部位で屈曲した形状に形成されている。また、つまみ部434は、係合突部431から先端部にかけて湾曲され、係合凹部412に係合した状態で、上下方向Zの上方向に跳ね上げた形状を有している。これにより、使用者はつまみ部434を把持して操作しやすいように構成されている。さらに、つまみ部434の上下表面には複数の突起434aが設けられていることで、手指の滑り止めとなされ、操作性が高められている。
【0065】
圧力解除レバー430は、加圧レバー410のスリット部419に保持されるとともに、係合突部431からつまみ部434までの範囲が加圧レバー410から外方へ突出した状態で備えられている。加圧ローラ172には、その表面をクリーニングする図示しないクリーニングローラが圧接されている。加圧レバー410は、定着ローラ171とは反対側に設けられて移動方向Aに突出した突出支持部417を有している。突出支持部417には前記クリーニングローラが加圧ローラ172に沿うように支持され、加圧ローラ172に向けて圧接される。この突出支持部417は、使用者により把持される突出把持部を兼ねている。
【0066】
図3に示すように、圧力解除レバー430が圧力位置Q1に位置しているとき、つまみ部434は先端部が上下方向Zの斜め上方向を向いた上向き姿勢となっている。また、図4に示すように、圧力解除レバー430が解除位置Q2に位置しているとき、つまみ部434は先端部が上下方向Zの斜め下方向を向いた下向き姿勢となっている。
【0067】
本実施形態では、一対の第1圧接スプリング420は、一対の圧力解除レバー430が解除位置Q2に位置しているときに自由長(自然長)の状態とされている。第1圧接スプリング420は、圧力解除レバー430が解除位置Q2に位置しているときに自由長の状態であることにより、第1圧接スプリング420を圧力解除レバー430側と定着ローラ171側との間にそれぞれ取り付ける際に強い圧力をかけながら第1圧接スプリング420を取り付ける必要がなく、例えば工具等を用いずとも手作業で第1圧接スプリング420を取り付けることが可能とされている。
【0068】
定着装置17は、図3および図4に示すように、さらに、副付勢部材として作用する一対の第2圧接スプリング450を備えている。加圧レバー410の加圧ローラ172を間にして回動支点175とは反対側の加圧ローラ172の周辺部には、係止部418aが設けられている。係止部418aは、具体的には取り付け部418に設けられた取り付け孔とされている。定着装置17の本体フレームFLには係止孔FLbが設けられている。そして、一対の第2圧接スプリング450一端451は係止部418aに係止される一方、一対の第2圧接スプリング450の他端452は、定着装置17の本体フレームFLの係止孔FLbに係止されている。
【0069】
(圧力解除の説明)
圧力解除レバー430は、係合突部431と、加圧レバー410の係合凹部412との係合が解除されると、第1圧接スプリング420による加圧レバー410への付勢力がそれぞれ解除される。移動方向Aにおける解除位置Q2で、加圧ローラ172の定着ローラ171への圧接を解除する構成とされている。
【0070】
図3に示すように、加圧ローラ172を定着ローラ171に圧接するとき、圧力解除レバー430(軸部432)を仮想直線α(α1)上の圧力位置Q1に位置させる。すなわち、係合突部431を加圧レバー410の係合凹部412に係合させる。第1圧接スプリング420による付勢力は、圧力解除レバー430を介して、加圧レバー410に伝達される。これにより、加圧レバー410に支持された加圧ローラ172を、定着ローラ171に向けて圧接させることが可能となる。
【0071】
図4に示すように、加圧ローラ172と定着ローラ171との圧接を解除するとき、圧力解除レバー430を操作し、加圧レバー410の係合凹部412における、圧力解除レバー430の係合突部431の係合状態を解除し、係合突部431を係合凹部412から離脱させる。これにより、圧力解除レバー430(軸部432)を仮想直線α(α2)上の解除位置Q2に位置させる。第1圧接スプリング420の付勢力は緩められ、加圧レバー410に支持された加圧ローラ172と定着ローラ171との圧接が解除される。
【0072】
圧接装置400は、加圧レバー410を介して、加圧ローラ172を第1圧接スプリング420により定着ローラ171に向けて所定の圧接力で圧接する。また、定着ローラ171に対して、加圧レバー410を介して圧接力で圧接された加圧ローラ172の圧接を解除する。定着ローラ171と加圧ローラ172との圧接が解除されるとき、第1圧接スプリング420の付勢力は0となっている。
【0073】
例えば、標準紙(普通紙)の記録シートP(P1、図3参照)に対して定着するのに適した圧接力において、封筒のように袋状に形成された厚手の記録シートP(P2、図4参照)を定着した場合でのシワより等の搬送不良の発生を回避するために、本実施形態の定着装置17は、定着ローラ171と加圧ローラ172との間の圧接力を予め定めた所定の第1圧接力F1と、第1圧接力F1より小さい予め定めた所定の第2圧接力F2とに切り替えることが好ましい。
【0074】
圧接装置400は、一対の圧力解除レバー430が圧力位置Q1(図3参照)に位置しているとき、一対の第1圧接スプリング420により加圧ローラ172を定着ローラ171に向けて第1圧接力F1で圧接する。また、一対の圧力解除レバー430が解除位置Q2(図4参照)に位置しているとき、一対の第1圧接スプリング420による定着ローラ171への加圧ローラ172の圧接を解除するとともに、一対の第2圧接スプリング450により加圧ローラ172を定着ローラ171に向けて第2圧接力F2(<F1)で圧接するようになっている。このように、圧接装置400は、一対の第1圧接スプリング420による定着ローラ171への加圧ローラ172の圧接が解除されているときには、常に、一対の第2圧接スプリング450により加圧ローラ172を定着ローラ171に向けて第2圧接力F2で圧接するように構成されている。
【0075】
したがって、つまみ部434の操作によって圧力解除レバー430を圧力位置Q1または解除位置Q2に位置させて一対の第1圧接スプリング420および一対の第2圧接スプリング450を伸縮させることができる。これにより、定着ローラ171に対して加圧ローラ172に加える圧力を増減させることができる。
【0076】
一対の圧力解除レバー430が圧力位置Q1(図3参照)にある状態、すなわち、定着ローラ171に対して加圧ローラ172を一対の第1圧接スプリング420により第1圧接力F1で圧接する状態から、つまみ部434の操作によって一対の圧力解除レバー430を解除位置Q2に移動させる。加圧ローラ172は、定着ローラ171に対して一対の第2圧接スプリング450によって第2圧接力F2で圧接される。
【0077】
一方、一対の圧力解除レバー430が第2圧接位置(図4参照)にある状態、すなわち、定着ローラ171に対して加圧ローラ172を一対の第2圧接スプリング450により第2圧接力F2で圧接する状態から、つまみ部434の操作によって一対の圧力解除レバー430を圧力位置Q1に位置させ、加圧ローラ172を定着ローラ171に対して第1圧接スプリング420により第1圧接力F1で圧接にする。
【0078】
このような圧力解除レバー430の切り換え操作は、次のようにしてなされる。図5(a)~図5(c)は、加圧レバー410に対する圧力解除レバー430の圧力解除の様子を示し、加圧レバー410および圧力解除レバー430を奥行き方向Xにおける一方側から見て示した説明図である。
【0079】
図5(a)は、圧力解除レバー430が圧力位置Q1に位置する状態を示している。このとき、図3に示される状態と同様の状態であり、圧力解除レバー430の係合突部431は加圧レバー410の係合凹部412に係合している。加圧ローラ172は、一対の第1圧接スプリング420により定着ローラ171に圧接されている。
【0080】
図5(a)に示すように、圧力解除レバー430が圧力位置Q1に位置しているとき、つまみ部434は上向き姿勢となっている。これにより、つまみ部434は加圧レバー410の外方へ延び、使用者は手指でつまみ部434を保持しやすい状態で備えられており、圧力解除レバー430を圧力位置Q1から解除位置Q2への切り替える切り替え操作を行いやすくなされている。
【0081】
次いで、つまみ部434を保持して係合突部431を係合凹部412から離脱させる操作を行う。すなわち、一対の圧力解除レバー430を下げる。具体的には、つまみ部434を上下方向Zの下方へ押圧する。圧力解除レバー430の係合突部431は、加圧レバー410の係合凹部412から離脱し、第1圧接スプリング420の付勢力により摺接部415に沿って下方へ摺動を開始する。圧力解除レバー430の係合突部431は、接続部415aを越えて第1の平坦部415bを摺動する。
【0082】
図5(b)は、圧力解除レバー430が解除位置に位置する状態を示している。圧力解除レバー430の係合突部431は第1圧接スプリング420の付勢力が0となる摺接部415のニュートラル部415cで停止する。第1圧接スプリング420は圧力解除状態(付勢力が0の状態)となる。また、第2圧接スプリング450の付勢力によって、加圧ローラ172は定着ローラ171に第2圧接力F2で圧接される。
【0083】
ここで、前記のように、摺接部415に設けられたニュートラル部415cは、係合突部431を停止させる例えば凹凸状の突起や起伏を備えない構成である。そのため、第1の平坦部415bを摺動した係合突部431は、直ちにニュートラル部415cに位置するものではなく、第1の平坦部415bを摺動し、ニュートラル部415cを越えて第2の平坦部415dへ到達することもある。
【0084】
図5(c)は、圧力解除レバー430の衝撃緩和の様子を示している。係合凹部412から離脱された係合突部431は、第1圧接スプリング420の付勢力によってニュートラル部415cに到達するものの、ニュートラル部415cは係合突部431を停止させる構造を有しないので、第2の平坦部415dへ摺動する。
【0085】
ここで、第2の平坦部415dでは、第1圧接スプリング420の付勢力が徐々に増大する。また、加圧レバー410は延長部416を備えており、第2の平坦部415dには第1の平坦部415bよりも長い摺動距離が確保されている。そのため、係合突部431が延長部416の端部(摺接部415の下端部)まで摺動することなく、その摺動方向を変えることとなる。ニュートラル部415cを越えて摺動した係合突部431は、摺接部415から脱落することなく、第2の平坦部415dからニュートラル部415cへ戻る方向へ摺動する。
【0086】
また、係合突部431は、ニュートラル部415cへ戻る方向(図5(c)における摺接部415に沿った図中上方向)へ摺動し、ニュートラル部415cを越えて第1の平坦部415bを摺動し始めたとしても、第1圧接スプリング420の付勢力が増大することとなる。そのため、係合突部431は接続部415aを上方へ摺動したり、係合凹部412に戻ったりすることは回避される。最終的には、係合突部431はニュートラル部415cに位置するものとなる。
【0087】
このように、図5(a)に示す状態(圧力位置Q1)から、図5(c)に示す状態を経て、図5(b)に示す状態(解除位置Q2)となるまでの間、係合突部431は加圧レバー410の摺接部415に沿って滑らかに移動するものであり、急激な作用をする部位が存在せず、加圧レバー410に対して衝突等をすることがない。したがって、この係合突部431の動作は、衝突音や衝撃音を発生することがなく、極めてスムーズに安定的になされる。
【0088】
反対に、圧力解除の状態から、圧力状態に切り換える際には、解除位置Q2に位置する圧力解除レバー430のつまみ部434が下向き姿勢であることによって、使用者はつまみ部434を手指で上下方向Zの上方向へ動かしやすくすることができ、解除位置Q2から圧力位置Q1への切り替える切り替え操作も容易に行うことができる。
【0089】
(標準紙の記録シートP1での定着動作の場合)
例えば、標準紙の記録シートP(P1)に対して定着動作を行う場合には、図3に示すように、圧力解除レバー430を圧力位置Q1に位置させ、第1圧接スプリング420の付勢力によって加圧ローラ172を定着ローラ171に向けて第1圧接力F1で圧接する。
【0090】
(厚手の記録シートP2での定着動作の場合)
例えば、封筒のように袋状に形成された厚手の記録シートP(P2)に対して定着動作を行う場合には、図4に示すように、圧力解除レバー430を圧力位置Q1に位置させる。そのとき、圧力解除レバー430を操作しても、何ら衝撃音や衝突音を発生することがなく、定着装置17の各部への振動等を抑えるとともに安心して操作することができる。これにより、第1圧接スプリング420を圧力解除状態(付勢力が0の状態)にするとともに、第2圧接スプリング450の付勢力によって加圧ローラ172を定着ローラ171に向けて第2圧接力F2で圧接する。
【0091】
-実施形態2-
定着装置17は、圧接装置400によって定着ローラ171と加圧ローラ172とを相互に圧接し、また、その圧接を解除することが可能である。圧接装置400において、定着ローラ171に対する加圧ローラ172の圧接状態に寄与する加圧レバー410の構成は、前記実施形態1に示すように構成されるだけでなく、他の様々な形態により同様の作用を備えさせて構成することが可能である。
【0092】
一例として、図6に示す圧接装置400の加圧レバー410は、係合凹部412に隣接して摺接部415を備える点で前記実施形態1と共通するが、その摺接部415の形状に特徴を有している。圧接装置400における加圧レバー410のその他の構成、第1圧接スプリング420、および圧力解除レバー430については前記実施形態1と共通するので、共通する構成については共通の参照符号により示して説明を省略し、ここでは摺接部415の構成について詳述する。
【0093】
図6に示すように、この形態に係る圧接装置400の加圧レバー410は、摺接部415が起伏のない平坦な摺接面415eとして形成されている。平坦な摺接面415eは、係合凹部412に隣接するとともに、加圧レバー410の延長部416まで連続して設けられている。この場合、摺接面415eは、実施形態1での第1の平坦部415bと第2の平坦部415dとのなす角度が二直角とされたものであり、第1の平坦部415b、ニュートラル部415c、および第2の平坦部415dといった区別なく連続的に形成されている。
【0094】
これにより、実施形態2に係る定着装置17にあっても、圧力解除レバー430が圧力位置Q1に位置している状態と解除位置Q2に位置している状態との間で、第1圧接スプリング420の付勢力により、係合突部431を摺動させるとき、前記実施形態1と同様に、摺接部415には急激な作用をする部位が存在せず、衝突等をすることがない。したがって、衝突音や衝撃音を発生することがなく、係合突部431は加圧レバー410の摺接部415に沿って滑らかに移動することが可能となる。
【0095】
以上のように、本発明に係る定着装置17および画像形成装置100では、圧力解除レバー430の切り換え操作時に圧力解除レバー430を操作しても、何ら衝撃音や衝突音を発生することがなく、定着装置17の各部への振動等を抑えるとともに安心して操作することが可能とされる。
【0096】
なお、前記実施形態1、2では、第1定着部材として定着ローラを用い、第2定着部材として加圧ローラを用いたが、第1定着部材として加圧ローラを用い、第2定着部材として定着ローラを用いてもよい。また、第1定着部材および第2定着部材のいずれか一方として、定着ローラを含む複数のローラ(例えば定着ローラおよび加熱ローラ)と、該複数のローラに巻き掛けられた無端状の定着ベルトとを備えたものを用い、第1定着部材および第2定着部材のいずれか他方として、定着ベルトを間にして定着ローラに対して圧接される加圧ローラを用いてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、定着装置17は、加圧レバー410を回動支点175回りに回動させる構成としたが、加圧ローラ172に対して圧接または圧力解除する直線方向(加圧ローラ172が定着ローラ171に近接する一方、定着ローラ171から遠ざかる直線方向)に沿って加圧レバー410を移動させる構成としてもよい。
【0098】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0099】
100 画像形成装置
17 定着装置
171 定着ローラ(第1定着部材の一例)
171a ローラ表面
171b 回転軸
171c 芯金
172 加圧ローラ(第2定着部材の一例)
173 回転軸
174 熱源
175 回動支点
200 画像読取装置
330 画像形成部
400 圧接装置
410 加圧レバー(支持部材の一例)
410a 係止部
411 受け部
412 係合凹部
413 案内部
414 ガイド溝
414a 開口部
415 摺接部
415a 接続部
415b 第1の平坦部
415c ニュートラル部
415d 第2の平坦部
415e 摺接面
416 延長部
417 突出支持部
418 取り付け部
418a 係止部
420 第1圧接スプリング(付勢部材の一例)
421 一端部
422 他端部
430 圧力解除レバー(解除部材の一例)
431 係合突部
432 軸部
434 つまみ部
434a 突起
440 軸受け
450 第2圧接スプリング
451 一端
452 他端
A 移動方向
E1 回転方向
E2 逆回転方向
F1 第1圧接力
F2 第2圧接力
FL 本体フレーム
FLb 係止孔
N 定着ニップ域
P 記録シート
Q1 圧力位置
Q2 解除位置
T トナー
W 接離方向
X 奥行き方向
Y 幅方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6