(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177284
(43)【公開日】2022-11-30
(54)【発明の名称】送信装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04J 99/00 20090101AFI20221122BHJP
H04L 27/36 20060101ALI20221122BHJP
H04L 27/38 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/36
H04L27/38
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157484
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2021198667の分割
【原出願日】2017-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2016069578
(32)【優先日】2016-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016254546
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】木村 知弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 豊
(72)【発明者】
【氏名】大内 幹博
(57)【要約】
【課題】重畳符号化を用いた多重方式において、複数のデータ系列に関する処理が効率的に行われていない場合がある。
【解決手段】送信装置は、第1の同相成分及び第1の直交成分を有する第1の信号と、第2の同相成分及び第2の直交成分を有し且つQPSK変調とは異なる変調がされている第2の信号とが振幅比率で重畳された多重信号を生成する信号処理部と、多重信号を送信アンテナから送信する送信部とを備え、信号処理部は、さらに、(i)第1の同相成分の極性が正であるなら、第2の同相成分の極性が反転され、(ii)第1の直交成分の極性が正であるなら、第2の直交成分の極性が反転されるように、第2の信号を変換して、多重信号を生成する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の同相成分及び第1の直交成分を有する第1の信号と、第2の同相成分及び第2の直交成分を有し且つQPSK変調とは異なる変調がされている第2の信号とが振幅比率で重畳された多重信号を生成する信号処理部と、
前記多重信号を送信アンテナから送信する送信部とを備え、
前記信号処理部は、さらに、(i)前記第1の同相成分の極性が正であるなら、前記第2の同相成分の極性が反転され、(ii)前記第1の直交成分の極性が正であるなら、前記第2の直交成分の極性が反転されるように、前記第2の信号を変換して、前記多重信号を生成する
送信装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記第1の同相成分及び前記第1の直交成分が引数として入力される式に従って、前記第2の同相成分及び前記第2の直交成分の極性を制御する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記QPSK変調とは異なる前記変調は、前記QPSK変調とは異なる複数の変調のうちのいずれかであり、
前記QPSK変調とは異なる前記複数の変調は、16QAM変調、64QAM変調及びNu-256QAM変調を含む
請求項1又は2に記載の送信装置。
【請求項4】
第1の同相成分及び第1の直交成分を有する第1の信号と、第2の同相成分及び第2の直交成分を有し且つQPSK変調とは異なる変調がされている第2の信号とが振幅比率で重畳された多重信号を受信する受信部と、
前記多重信号に含まれる前記第2の信号を復調する信号処理部とを備え、
前記多重信号では、(i)前記第1の同相成分の極性が正であるなら、前記第2の同相成分の極性が反転され、(ii)前記第1の直交成分の極性が正であるなら、前記第2の直交成分の極性が反転されており、
前記信号処理部は、前記極性の反転に対応して前記第2の信号を復調する
受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデータ系列を多重して送信する多重方式として重畳符号化(Superposition Coding)を用いた多重方式が知られている(非特許文献1)。その他の多重方式として時分割多重(Time Division Multiplexing)および周波数分割多重(Frequency Division Multiplexing)などが知られている(非特許文献2)。
【0003】
重畳符号化を用いた多重方式は、時分割多重および周波数分割多重に比べて、異なる雑音耐性(受信耐性)が要求される複数のデータ系列を多重する場合に好適である。重畳符号化を用いた多重方式は、階層分割多重(Layer Division Multiplexing)という名称でも知られている。また、重畳符号化を用いた多重方式は、多重アクセスに適用した非直交多重アクセス(Non-Orthogonal Division Multiple Access:NOMA)としても知られている。
【0004】
重畳符号化を用いた多重方式において、送信装置は、複数のデータ系列をそれぞれ変調することで得られる複数の変調シンボルを所定の電力配分で重畳して送信する。受信装置は、重畳符号化によって多重された複数の変調シンボルの復調を、雑音耐性が高い階層の変調シンボルから順に、所望のデータ系列が属する階層の変調シンボルの復調が完了するまで行われる。
【0005】
具体的には、受信装置は、雑音耐性が最も高い階層の変調シンボルの復調を行ってデータ系列を推定する。そして、受信装置は、所望のデータ系列が推定されていない場合、推定された他のデータ系列から変調シンボルのレプリカを生成して、受信信号からレプリカをキャンセルし、次に雑音耐性が高い階層の変調シンボルを復調して新たなデータ系列を推定する。受信装置は、これらの処理を所望のデータ系列が推定されるまで繰り返す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Seokhyun YOON and Donghee KIM, Performance of Superposition Coded Broadcast/Unicast Service Overlay System, IEICE Transactions on Communications, vol.E91-B, No.9
【非特許文献2】Thomas M.Cover, Broadcast Channels, IEEE Transactions on Information Theory, vol.IT-18, No.1
【非特許文献3】J. Zoellner and N. Loghin, Optimization of High-order Non-uniform QAM Constellations, IEEE International Symposium on Broadband Multimedia Systems and Broadcasting 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
重畳符号化を用いた多重方式において、複数のデータ系列に関する処理が効率的に行われていない場合がある。
【0008】
例えば、重畳符号化を用いた多重方式では、多重された複数のデータ系列を順次復号するという処理に起因し、処理遅延が発生する。また、重畳符号化を用いた多重方法では、先に復号したデータ系列を再変調するための演算資源等を受信装置が備える必要がある。また、先のデータ系列を復号して再変調し、先のデータ系列の変調シンボル列が得られるまで、次のデータ系列の復号に用いられる受信シンボルを保持するためのメモリ資源等を受信装置が備える必要がある。
【0009】
また、重畳符号化を用いた多重方式では、重畳される複数のデータ系列が互いに影響を及ぼし合うことで、伝送容量が低下する可能性がある。
【0010】
本開示は、重畳符号化を用いた多重方式における上記の課題を解決する実施の形態の一例を提供する。しかしながら、本開示は、上記の課題の全てではなく一部を解決する一態様、または、上記の課題とは異なる課題を解決する一態様も提供している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様における送信装置は、第1の同相成分及び第1の直交成分を有する第1の信号と、第2の同相成分及び第2の直交成分を有し且つQPSK変調とは異なる変調がされている第2の信号とが振幅比率で重畳された多重信号を生成する信号処理部と、前記多重信号を送信アンテナから送信する送信部とを備え、前記信号処理部は、さらに、(i)前記第1の同相成分の極性が正であるなら、前記第2の同相成分の極性が反転され、(ii)前記第1の直交成分の極性が正であるなら、前記第2の直交成分の極性が反転されるように、前記第2の信号を変換して、前記多重信号を生成する。
【0012】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの非一時的な記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様における送信装置等は、重畳符号化を用いた多重方式に関して効率的な処理を行うことができる。
【0014】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。これらの利点および効果は、明細書および図面に記載された特徴によって提供されるが、これらの利点および効果の全てではなく、これらの利点および効果の一部が、明細書および図面に記載された特徴の一部によって提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施の形態1における送信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における受信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、重畳符号化による伝送容量を示す図である。
【
図4】
図4は、QPSKのコンステレーションの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、非均一コンステレーションの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、QPSKとNu-256QAMを用いた重畳符号化による伝送容量を示す図である。
【
図7】
図7は、実施の形態2における受信装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、重畳コンステレーションの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2における第1の受信動作例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、重畳符号化における逐次復号と並列復号とを比較するためのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2における受信装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2における第2の受信動作例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施の形態3における送信装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、実施の形態3における送信装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、実施の形態3における送信装置の第3の構成例を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、実施の形態3における受信装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【
図17】
図17は、実施の形態3における受信装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【
図18】
図18は、実施の形態3における受信装置の第3の構成例を示すブロック図である。
【
図19】
図19は、実施の形態3における受信装置の第4の構成例を示すブロック図である。
【
図20】
図20は、実施の形態3における変形重畳コンステレーションの一例を示す図である。
【
図21】
図21は、実施の形態3における送信動作例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、実施の形態3における受信動作例を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、変形重畳符号化における逐次復号と並列復号とを比較するためのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態等は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態等で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態等における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0017】
また、符号化は、誤り制御符号化を意味する場合がある。誤り制御符号化は、誤り訂正符号化とも呼ばれる。また、復号は、誤り制御復号を意味する場合がある。誤り制御復号は、誤り訂正復号または誤り訂正とも呼ばれる。また、未知は、未確定を意味する場合がある。また、伝送は、送信を意味する場合がある。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態では、重畳符号化を用いた多重方式により、複数のデータ系列を複数の階層に多重して伝送する場合について説明する。
【0019】
本実施の形態を含む複数の実施の形態において、一般性を損なわない範囲で説明を簡単にするために、2つのデータ系列を互いに異なる2つの階層に多重して伝送する場合を例に説明する。しかしながら、本実施の形態を含む複数の実施の形態で説明する多重方式は、3以上のデータ系列を互いに異なる3以上の階層に多重して伝送する場合においても適用可能である。
【0020】
また、本実施の形態を含む複数の実施の形態において、第1のデータ系列が属する第1の階層は、第2のデータ系列が属する第2の階層よりも雑音耐性が高い階層として利用される。
【0021】
図1は、重畳符号化を用いて2つのデータ系列を2つの階層に多重して送信する送信装置100の構成の一例を示す。
図1を参照しながら送信装置100の構成および動作を説明する。
【0022】
送信装置100は、符号化部111、インタリーブ部112、マッピング部113、乗算部114、符号化部121、インタリーブ部122、マッピング部123、乗算部124、加算部130およびRF部(Radio Frequency部)140を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。乗算部114、乗算部124および加算部130は、全体として重畳部とも表現され得る。RF部140は、送信部とも表現され得る。RF部140は、アンテナを含んでいてもよい。
【0023】
符号化部111は、入力された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部112は、符号化部111で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0024】
マッピング部113は、インタリーブ部112で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式(第1の変調方式)に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。第1のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部113は、第1のビット列を第1のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第1のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0025】
符号化部121は、入力された第2のデータ系列に第2の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第2のビット列を生成する。インタリーブ部122は、符号化部121で生成された第2のビット列のビット順を第2の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0026】
マッピング部123は、インタリーブ部122で並べ替えられた第2のビット列に対して第2のマッピング方式(第2の変調方式)に従ったマッピング処理を施し、複数の第2の変調シンボルで構成される第2の変調シンボル列を生成する。第2のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部123は、第2のビット列を第2のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第2のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0027】
マッピング方式として、BPSKおよびQPSK等のPSK変調、または、16QAMおよび64QAM等のQAM変調が用いられる場合、変調シンボルは、例えば実数が同相成分の大きさを示し、虚数が直交成分の大きさを示す複素数で表され得る。また、マッピング方式としてPAM変調が用いられる場合、変調シンボルは、実数で表され得る。
【0028】
乗算部114は、第1の変調シンボル列の第1の変調シンボルに対して第1の振幅係数a1を乗算する。乗算部124は、第2の変調シンボル列の第2の変調シンボルに対して第2の振幅係数a2を乗算する。加算部130は、第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボルと、第2の振幅係数a2が乗算された第2の変調シンボルとを重畳して、複数の重畳変調シンボルで構成される重畳変調シンボル列を生成する。
【0029】
RF部140は、生成された重畳変調シンボル列を信号として送信する。具体的には、RF部140は、加算部130で生成された重畳変調シンボル列から、重畳変調シンボル列に対応する信号として無線周波数帯の信号を生成し、当該無線周波数帯の信号をアンテナから送信する。
【0030】
つまり、乗算部114、乗算部124および加算部130で構成される重畳部は、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とを所定の振幅比率で重畳することにより、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが多重された信号である多重信号を生成する。そして、RF部140は、多重信号を送信する。なお、多重信号は、重畳変調シンボル列に対応する。また、所定の振幅比率は、1:1でもよく、乗算処理は、省略されてもよい。
【0031】
図2は、重畳符号化を用いて2つのデータ系列が2つの階層に多重された信号を受信して逐次復号し、多重された2つのデータ系列の両方またはいずれか一方を取得(抽出)することが可能な受信装置200の構成の一例を示す。
図2を参照しながら受信装置200の構成および動作を説明する。
【0032】
受信装置200は、RF部230、デマッピング部211、デインタリーブ部212、復号部213、符号化部214、インタリーブ部215、マッピング部216、乗算部217、遅延部218、減算部219、デマッピング部221、デインタリーブ部222および復号部223を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。
【0033】
デマッピング部211、デインタリーブ部212、復号部213、符号化部214、インタリーブ部215、マッピング部216、乗算部217、遅延部218、減算部219、デマッピング部221、デインタリーブ部222および復号部223は、全体として導出部とも表現され得る。RF部230は、受信部とも表現され得る。RF部230は、アンテナを含んでいてもよい。
【0034】
受信装置200は、送信装置100から送信された多重信号をアンテナで受信してRF部230に入力する。つまり、RF部230は、アンテナを介して多重信号を受信する。RF部230によって受信された多重信号は、受信信号とも表現され、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とが多重された重畳変調シンボル列に対応する。RF部230は、無線周波数帯の受信信号からベースバンドの受信信号を生成する。
【0035】
デマッピング部211は、ベースバンドの受信信号を第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第1のビット尤度列を生成する。例えば、デマッピングのための第1のコンステレーションには、振幅係数a1が反映されている。
【0036】
デインタリーブ部212は、第1のビット尤度列を第1の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部213は、デインタリーブ部212で並べ替えられた第1のビット尤度列を用いて第1の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を行い、復号結果を第1のデータ系列として出力する。
【0037】
ここで、デマッピング部211は、重畳変調シンボル列に対応する受信信号のうち、第2のデータ系列の第2の変調シンボルに対応する成分を未知な信号(ノイズ)として取扱い、第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングを行う。
【0038】
受信装置200は、第1のデータ系列のみが取得対象である場合、第1のデータ系列の推定が完了した時点で処理を終了する。一方、第1のデータ系列に加えて第2のデータ系列が取得対象である場合、または、第2のデータ系列のみが取得対象である場合、受信装置200は、第2のデータ系列を取得するために以下の処理を実施する。
【0039】
符号化部214は、復号部213で取得された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部215は、符号化部214で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0040】
マッピング部216は、インタリーブ部215で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。乗算部217は、マッピング部216が出力する第1の変調シンボル列に第1の振幅係数a1を乗算する。
【0041】
遅延部218は、RF部230がベースバンドの受信信号を出力してから、再生された第1の変調シンボル列を乗算部217が出力するまでの間、RF部230から出力された受信信号を遅延させる。
【0042】
減算部219は、遅延部218で遅延させられた受信信号から、乗算部217で第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボル列を減算する。これにより、減算部219は、第1の変調シンボルに対応する成分と第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された受信信号から、第1の変調シンボルに対応する成分を除去する。そして、減算部219は、第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された信号を第2の変調シンボル列に対応する信号として出力する。
【0043】
デマッピング部221は、減算部219が出力する信号を第2のマッピング方式の第2のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第2のビット尤度列を生成する。例えば、デマッピングのための第2のコンステレーションには、振幅係数a2が反映されている。
【0044】
デインタリーブ部222は、第2のビット尤度列を第2の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部223は、デインタリーブ部222で並べ替えられた第2のビット尤度列に対して第2の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第2のデータ系列として出力する。
【0045】
以上のようにして、受信装置200は、アンテナで受信した信号から第1のデータ系列および第2のデータ系列の両方またはいずれか一方を取得する。
【0046】
<重畳符号化>
次に、重畳符号化について説明する。
【0047】
信号電力Ps(W)、雑音電力Pn(W)および伝送帯域幅B(Hz)を用いて、伝送容量CT(bit/s)は、シャノン限界として式1で与えられる。
【0048】
【0049】
伝送帯域幅で正規化された1Hzあたりの伝送容量C(bit/s/Hz)は、式2で与えられる。
【0050】
【0051】
以下では、「1Hzあたりの伝送容量」を単に「伝送容量」と呼ぶ。
【0052】
第1のデータ系列と第2のデータ系列との重畳符号化において、第1のデータ系列に対応する第1の階層の信号電力Ps1(W)と、第2のデータ系列に対応する第2の階層の信号電力Ps2(W)と、全体の信号電力Ps(W)とは、Ps=Ps1+Ps2を満たす。
【0053】
第1の階層の復調を行う際に、受信装置200は、第2の階層の変調シンボルの成分を第1の階層の変調シンボルに重畳された未知の成分、すなわちノイズとみなす。このため、第1の階層の伝送容量C1は、式3で与えられる。
【0054】
【0055】
受信装置200が第2の階層の復調を行う際に、第1の階層の変調シンボルの成分は、受信信号からすでに除去されている。このため、第2の階層の伝送容量C2は、式4で与えられる。
【0056】
【0057】
第1の階層の伝送容量C1と第2の階層の伝送容量C2の合計は、式5に示すようにシャノン限界に一致する。
【0058】
【0059】
本実施の形態において、第1のデータ系列に対応する第1の階層の信号電力Ps1は、第1の振幅係数a1の2乗に比例し、第2のデータ系列に対応する第2の階層の信号電力Ps2は、第2の振幅係数a2の2乗に比例する。複数の階層に対する信号電力の配分は、各階層の変調シンボルに乗算される振幅係数によって決定される。
【0060】
第1の階層の信号電力P
s1と第2の階層の信号電力P
s2との比がP
s1:P
s2=2:1である場合の各々の伝送容量のシミュレーション結果の一例を
図3に示す。
図3において、横軸は信号電力P
s対雑音電力P
n比(SNR)をdB(デシベル)で表し、縦軸は伝送容量を表す。
図3において、一点鎖線は第1の階層の伝送容量C
1を示し、破線は第2の階層の伝送容量C
2を示し、実線は第1の階層の伝送容量C
1と第2の階層の伝送容量C
2との合計の伝送容量を示す。
【0061】
なお、SNRは、信号電力対雑音電力比を意味し、信号対雑音電力比または信号対雑音比とも呼ばれる。
【0062】
<非均一コンステレーション>
本実施の形態において、送信装置100は、第1のマッピング方式および第2のマッピング方式として各々任意のマッピング方式を用いることができる。受信装置200は、第2の階層の第2の変調シンボルが未知の状態で第1の階層の復調を行う。そのため、第1のマッピング方式として主に低いSNRを対象とした、例えば、QPSKなどのマッピング方式が好適である。
【0063】
図4は、QPSKのコンステレーションの一例を示す。具体的には、横軸が実数部(実数成分)であり縦軸が虚数部(虚数成分)である複素平面上に、QPSKの4個の信号点がプロットされている。QPSKでは、
図4に示されたコンステレーションに基づいて、ビット群(00、01、10または11)が複素数の変調シンボルに対応付けられる。
【0064】
一方、第2の階層はすでに第1の階層の変調シンボルが除去された状態で復調される。そのため、第2のマッピング方式は、高いSNRを対象とした、多値のコンステレーションを用いたマッピング方式でもよい。
【0065】
近年、多値のコンステレーションとして、非特許文献3に記載されているような非均一(Non-uniform)コンステレーションが注目されている。非均一コンステレーションは、従来のQAMのような均一な間隔で配置された信号点からなる均一(Uniform)コンステレーションと異なり、非均一な間隔で配置された信号点からなるコンステレーションである。非均一コンステレーションを用いたマッピング方式は、均一コンステレーションを用いたマッピング方式に比べて、伝送容量を向上させる場合がある。
【0066】
図5は、256個の信号点からなる非均一コンステレーション(Nu-256QAM)の一例を示す。
図5では、横軸が実数部であり縦軸が虚数部である複素平面上に非均一コンステレーションの256個の信号点がプロットされている。
【0067】
重畳符号化を用いた多重方式において、第1のマッピング方式として
図4に示したQPSKを用い、第2のマッピング方式として
図5に示したNu-256QAMを用いた場合の例を以下に説明する。
【0068】
第1の階層の信号電力P
s1と第2の階層の信号電力P
s2との比がP
s1:P
s2=2:1である場合の各々の伝送容量のシミュレーション結果の一例を
図6に示す。
図6において、横軸は信号電力P
s対雑音電力P
n比(SNR)をdB(デシベル)で表し、縦軸は伝送容量を表す。
図6において、一点鎖線は第1の階層の伝送容量C
1を示し、破線は第2の階層の伝送容量C
2を示す。QPSKおよびNu-256QAMの組み合わせによって、
図3に示された限界に近い伝送容量が得られる。
【0069】
以上で説明したように、本実施の形態によれば、送信装置100は、重畳符号化を用いた多重方式により複数のデータ系列を高効率に多重して伝送することができる。そして、受信装置200は、重畳符号化を用いた多重方式により高効率に多重された複数のデータ系列を受信することができる。さらに、送信装置100および受信装置200は、非均一コンステレーションを用いて伝送容量を向上することができる。
【0070】
なお、並び替え(インタリーブおよびデインタリーブ)は、誤りが連続して発生した場合の影響を抑制する。また、並び替え(インタリーブおよびデインタリーブ)は、誤り訂正符号の符号語を構成するビットと変調シンボルおよびその変調シンボルを構成するビットとの対応付けを制御する。しかし、並び替え(インタリーブおよびデインタリーブ)は、省略されてもよい。
【0071】
すなわち、インタリーブ部112およびインタリーブ部122は、任意の構成要素であって、送信装置100に含まれなくてもよい。同様に、デインタリーブ部212、インタリーブ部215およびデインタリーブ部222は、任意の構成要素であって、受信装置200に含まれなくてもよい。
【0072】
ただし、インタリーブとデインタリーブとは対を構成する。したがって、基本的には、送信装置100がインタリーブ部112およびインタリーブ部122を備える場合、受信装置200は、デインタリーブ部212、インタリーブ部215およびデインタリーブ部222を備える。一方、送信装置100がインタリーブ部112およびインタリーブ部122を備えない場合、受信装置200は、デインタリーブ部212、インタリーブ部215およびデインタリーブ部222を備えない。
【0073】
また、受信装置200のマッピング部216におけるマッピングに振幅係数a1が反映されてもよい。この場合、受信装置200において、乗算処理が省略されてもよく、受信装置200は、乗算部217を備えていなくてもよい。
【0074】
また、第1のデータ系列および第2のデータ系列の誤り制御符号化は、送信装置100とは異なる外部の装置によって行われてもよい。この場合、送信装置100において、誤り制御符号化が省略されてもよい。そして、送信装置100は、符号化部111および符号化部121を備えていなくてもよい。
【0075】
(実施の形態2)
<重畳符号化で得られた信号の並列復号>
本実施の形態では、重畳符号化で得られた信号を並列復号する受信方法について説明する。送信装置の構成は、
図1に示した送信装置100と同じであるため説明を省略する。重畳符号化における並列復号では、受信装置は、受信信号に含まれる第1の階層の変調シンボル列の成分を除去せずに、第1の階層の変調シンボル列の成分を未知な信号(ノイズ)として取扱い、第2の階層を復号する。
【0076】
図7は、重畳符号化を用いて2つのデータ系列が2つの階層に多重された信号を受信して並列復号し、多重された2つのデータ系列の両方またはいずれか一方を取得することが可能な受信装置300の構成の一例を示す。
図7を参照しながら受信装置300の構成および動作を説明する。
【0077】
受信装置300は、RF部330、デマッピング部310、デインタリーブ部312、復号部313、デインタリーブ部322および復号部323を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。デマッピング部310、デインタリーブ部312、復号部313、デインタリーブ部322および復号部323は、全体として導出部とも表現され得る。RF部330は、受信部とも表現され得る。RF部330は、アンテナを含んでいてもよい。
【0078】
受信装置300は、送信装置100から送信された多重信号をアンテナで受信してRF部330に入力する。つまり、RF部330は、アンテナを介して多重信号を受信する。RF部330によって受信された多重信号は、受信信号とも表現され得る。RF部330は、無線周波数帯の受信信号からベースバンドの受信信号を生成する。
【0079】
デマッピング部310は、ベースバンドの受信信号をデマッピングし、第1のビット尤度列および第2のビット尤度列を生成する。デマッピング部310は、例えば、重畳符号化を用いて第1の変調シンボルと第2の変調シンボルとが重畳された重畳変調シンボルの信号点の配置を示す重畳コンステレーションに基づいてデマッピングを行う。
【0080】
重畳コンステレーションは、第1のマッピング方式の第1のコンステレーション、第2のマッピング方式の第2のコンステレーション、第1の振幅係数a1および第1の振幅係数a2等に応じて決まる。
【0081】
図8は、重畳コンステレーションの一例を示す。具体的には、
図4に示されたQPSKのコンステレーションと、
図5に示されたNu-256QAMのコンステレーションとが組み合わされている。より具体的には、QPSKのコンステレーションの4つの信号点に従って、Nu-256QAMのコンステレーション(256個の信号点)が、複素平面上の4つの領域のそれぞれに配置されている。Nu-256QAMのコンステレーションに対応するこれらの4つの領域は、部分的に重なっていてもよい。
【0082】
デマッピング部310は、
図8に示されているような重畳コンステレーションに基づいてデマッピングを行う。すなわち、デマッピング部310は、第2の階層の変調シンボル列が未知な状態で第1のビット尤度列を生成し、第1の階層の変調シンボル列が未知な状態で第2のビット尤度列を生成する。
【0083】
なお、デマッピング部310は、第1のビット尤度列の生成に、第1のマッピング方式の第1のコンステレーションを用い、第2のビット尤度列の生成には、上述した重畳コンステレーションを用いてもよい。
【0084】
デマッピング部310は、第1のビット尤度列の生成に第1のコンステレーションを用いた場合、第1のビット尤度列の生成にも重畳コンステレーションを用いる場合と比較して、第1のビット尤度列の生成に考慮される信号点の数を減らすことができる。したがって、この場合、デマッピング部310は、演算量を削減することができる。
【0085】
また、例えば、デマッピング部310は、受信信号をデマッピングすることにより第1のビット尤度列を生成する第1のデマッピング部と、受信信号をデマッピングすることにより第2のビット尤度列を生成する第2のデマッピング部とに対応する。デマッピング部310は、受信信号をデマッピングすることにより第1のビット尤度列を生成する第1のデマッピング部と、受信信号をデマッピングすることにより第2のビット尤度列を生成する第2のデマッピング部とを備えていてもよい。
【0086】
デインタリーブ部312は、第1のビット尤度列を第1の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部313は、デインタリーブ部312で並べ替えられた第1のビット尤度列に対して第1の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第1のデータ系列として出力する。
【0087】
デインタリーブ部322は、第2のビット尤度列を第2の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部323は、デインタリーブ部322で並べ替えられた第2のビット尤度列に対して第2の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第2のデータ系列として出力する。
【0088】
なお、実施の形態1と同様に、並び替え(デインタリーブ)は省略されてもよい。すなわち、デインタリーブ部312およびデインタリーブ部322は、任意の構成要素であって、受信装置300に含まれなくてもよい。
【0089】
ただし、インタリーブとデインタリーブとは対を構成する。したがって、基本的には、送信装置100がインタリーブ部112およびインタリーブ部122を備える場合、受信装置300は、デインタリーブ部312およびデインタリーブ部322を備える。一方、送信装置100がインタリーブ部112およびインタリーブ部122を備えない場合、受信装置300は、デインタリーブ部312およびデインタリーブ部322を備えない。
【0090】
図9は、受信装置300の動作例を示すフローチャートである。まず、RF部330は、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが多重された信号である多重信号を受信する(S101)。
【0091】
次に、デマッピング部310は、多重信号をデマッピングすることにより、第1のデータ系列の第1のビット尤度列を生成する(S102)。また、デマッピング部310は、多重信号をデマッピングすることにより、第2のデータ系列の第2のビット尤度列を生成する(S103)。デインタリーブ部312は、生成された第1のビット尤度列をデインタリーブしてもよい。また、デインタリーブ部322は、生成された第2のビット尤度列をデインタリーブしてもよい。
【0092】
そして、復号部313は、第1のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、第1のデータ系列を導出する(S104)。また、復号部323は、第2のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、第2のデータ系列を導出する(S105)。
【0093】
なお、基本的に、第1のビット尤度列に対する処理(生成、デインタリーブおよび誤り制御復号)と、第2のビット尤度列に対する処理(生成、デインタリーブおよび誤り制御復号)とは、並列して行われる。
【0094】
図7に示した並列復号を行う受信装置300では、
図2に示した逐次復号を行う受信装置200に比べて、第2の階層に対する復号性能が劣化する。
【0095】
第1の階層の信号電力P
s1と第2の階層の信号電力P
s2との比がP
s1:P
s2=2:1である場合の第2の階層の伝送容量のシミュレーション結果の一例を
図10に示す。
図10において、横軸は信号電力P
s対雑音電力P
n比(SNR)をdB(デシベル)で表し、縦軸は伝送容量を表す。
図10において、実線は逐次復号を行う場合の第2の階層の伝送容量を示し、破線は並列復号を行う場合の第2の階層の伝送容量を示す。
【0096】
図10に示すように、並列復号を行う場合は、逐次復号を行う場合と比較して、第2の階層の復号において、同じ伝送容量に対して必要なSNRが増加し、同じSNRに対して伝送容量が減少する。
【0097】
以上のように、本実施の形態における並列復号を行う受信装置300は、逐次復号を行う受信装置200と比較して、第2の階層で伝送される第2のデータ系列に関する復号性能は劣化する。しかし、第2の階層の復号に必要な構成を減らすことが可能である。
【0098】
具体的には、受信装置300は、
図2に示した逐次復号を行う受信装置200と比較して、第1の階層の変調シンボル列を再生するための符号化部214、インタリーブ部215、マッピング部216および乗算部217が不要となる。また、受信信号を遅延させるための遅延部218、および、受信信号から再生された第1の階層の変調シンボルの成分を除去する減算部219が不要となる。
【0099】
よって、回路規模を削減することが可能である。また、受信装置300は、受信装置200と比較して演算量を低減することができ、消費電力を削減することができる。
【0100】
さらに、
図2に示した逐次復号を行う受信装置200は、受信信号の第1の階層を復調して第1のデータ系列を取得し、取得された第1のデータ系列から第1の変調シンボル列を生成した後に、受信信号の第2の階層の復調を開始して第2のデータ系列を取得する。一方、本実施の形態における並列復号を行う受信装置300は、第1のデータ系列の取得と第2のデータ系列の取得とを同時に並行して実行することができるため、処理遅延を短縮することができる。
【0101】
また、受信装置は、受信信号のSNRを観測し、SNRが高い場合には並列復号を行い、SNRが低い場合には逐次復号を行うように復号処理を切り替えてもよい。
【0102】
その場合、例えば、
図2に示す受信装置200が、SNRに応じて逐次復号と並列復号とを切り替える制御部を備える。制御部は、RF部230またはデマッピング部221に含まれていてもよい。さらに、デマッピング部221が、第2のコンステレーションに基づくデマッピング処理に加え、
図7のデマッピング部310の動作として説明した、重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理の動作を行う構成を備える。
【0103】
そして、デマッピング部221は、減算部219から出力された信号に対する第2のコンステレーションに基づくデマッピング処理と、RF部230から出力された信号に対する重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理とを切り替える。例えば、デマッピング部221は、制御部からの制御信号に応じて、これらのデマッピング処理を切り替える。
【0104】
図11は、並列復号と逐次復号とを選択的に行う受信装置400の構成の一例を示す。受信装置400は、RF部430、デマッピング部411、デインタリーブ部412、復号部413、符号化部414、インタリーブ部415、マッピング部416、乗算部417、遅延部418、減算部419、デマッピング部421、デインタリーブ部422および復号部423を備える。
図11に示す受信装置400の複数の構成要素と、
図2に示す受信装置200の複数の構成要素とは、基本的に同じである。
【0105】
ただし、受信装置400のデマッピング部421は、第2のマッピング方式の第2のコンステレーションに基づくデマッピング処理に加え、重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理を行う。例えば、デマッピング部421は、減算部419から出力された信号を第2のコンステレーションに基づいてデマッピングする処理と、RF部430から出力された信号を重畳コンステレーションに基づいてデマッピングする処理とをSNRに応じて切り替える。
【0106】
また、
図11の例では、SNRに応じて逐次復号と並列復号を切り替える制御部が、省略されているが、デマッピング部421に含まれてもよいし、RF部430に含まれてもよいし、新たな構成要素として受信装置400に含まれてもよい。
【0107】
図12は、受信装置400の動作例を示すフローチャートである。まず、RF部430は、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが多重された信号である多重信号を受信する(S201)。そして、RF部430は、多重信号が所定の基準を満たすか否かを判定する。例えば、所定の基準は、SNRが所定の閾値よりも高いことである。
【0108】
ここで、多重信号が所定の基準を満たす場合(S202でYes)、デマッピング部411は、多重信号をデマッピングすることにより、第1のデータ系列の第1のビット尤度列を生成する(S203)。また、デマッピング部421は、多重信号をデマッピングすることにより、第2のデータ系列の第2のビット尤度列を生成する(S204)。デインタリーブ部412は、生成された第1のビット尤度列をデインタリーブしてもよい。デインタリーブ部422は、生成された第2のビット尤度列をデインタリーブしてもよい。
【0109】
そして、復号部413は、第1のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、第1のデータ系列を導出する(S205)。また、復号部423は、第2のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、第2のデータ系列を導出する(S206)。
【0110】
これらの動作(S203~S206)は、基本的に、
図9に示された動作(S102~S105)と同じである。
【0111】
一方、多重信号が所定の基準を満たさない場合(S202でNo)、デマッピング部411は、多重信号をデマッピングすることにより、第1のデータ系列の第1のビット尤度列を生成する(S207)。デインタリーブ部412は、生成された第1のビット尤度列をデインタリーブしてもよい。次に、復号部413は、第1のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、第1のデータ系列を導出する(S208)。
【0112】
次に、符号化部414は、第1のデータ系列に対して誤り制御符号化を行うことにより、第1のビット列を生成する(S209)。インタリーブ部415は、生成された第1のビット列をインタリーブしてもよい。次に、マッピング部416は、第1のビット列をマッピングすることにより、第1の変調シンボル列を生成する(S210)。乗算部417は、第1の変調シンボル列に振幅係数a1を乗算してもよい。
【0113】
また、遅延部418は、第1の変調シンボル列が生成されるまで、多重信号を遅延させる(S211)。そして、減算部419は、多重信号から第1の変調シンボル列を減算する(S212)。
【0114】
次に、デマッピング部421は、第1の変調シンボル列が減算された多重信号をデマッピングすることにより、第2のビット尤度列を生成する(S213)。デインタリーブ部422は、生成された第2のビット尤度列をデインタリーブしてもよい。次に、復号部423は、第2のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、第2のデータ系列を導出する(S214)。
【0115】
これにより、SNRが高い場合、受信装置400は並列復号を行うことによって、演算量を低減し消費電力を削減することができる。また、SNRが高い場合、受信装置400は並列復号を行うことによって、処理遅延を短縮することができる。一方、SNRが低い場合、受信装置400が逐次復号を行うことによって、第2のデータ系列を正しく復号できる可能性が高くなる。
【0116】
なお、基本的に、本実施の形態における第1のマッピング方式および第2のマッピング方式は、実施の形態1における第1のマッピング方式および第2のマッピング方式と同じである。すなわち、基本的に、本実施の形態における第1のコンステレーションおよび第2のコンステレーションは、実施の形態1における第1のコンステレーションおよび第2のコンステレーションと同じである。第2のマッピング方式には、均一コンステレーションが用いられてもよいし、非均一コンステレーションが用いられてもよい。
【0117】
(実施の形態3)
<変形重畳符号化(変型重畳符号化)>
本実施の形態では、上述した重畳符号化を変形した変形重畳符号化(変型重畳符号化)を用いて複数のデータ系列を多重して伝送する方法について説明する。
【0118】
図13は、変形重畳符号化を用いて2つのデータ系列を2つの階層に多重して送信する送信装置500の構成の一例を示す。
図13を参照しながら送信装置500の構成および動作を説明する。
【0119】
送信装置500は、符号化部511、インタリーブ部512、マッピング部513、乗算部514、符号化部521、インタリーブ部522、マッピング部523、変換部525、乗算部524、加算部530およびRF部540を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。乗算部514、乗算部524および加算部530は、全体として重畳部とも表現され得る。RF部540は、送信部とも表現され得る。RF部540は、アンテナを含んでいてもよい。
【0120】
符号化部511は、入力された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部512は、符号化部511で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0121】
マッピング部513は、インタリーブ部512で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。第1のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部513は、第1のビット列を第1のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第1のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0122】
第1のマッピング方式として、BPSKおよびQPSK等のPSK変調、または、16QAMおよび64QAM等のQAM変調が用いられる場合、第1の変調シンボルは、例えば実数が同相成分の大きさを示し、虚数が直交成分の大きさを示す複素数で表され得る。また、第1のマッピング方式としてPAM変調が用いられる場合、第1の変調シンボルは、実数で表され得る。
【0123】
符号化部521は、入力された第2のデータ系列に第2の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第2のビット列を生成する。インタリーブ部522は、符号化部521で生成された第2のビット列のビット順を第2の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0124】
マッピング部523は、インタリーブ部522で並べ替えられた第2のビット列に対して第2のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第2の変調シンボルで構成される第2の変調シンボル列を生成する。第2のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部523は、第2のビット列を第2のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第2のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0125】
第2のマッピング方式として、BPSKおよびQPSK等のPSK変調、または、16QAMおよび64QAM等のQAM変調が用いられる場合、第2の変調シンボルは、例えば実数が同相成分の大きさを示し、虚数が直交成分の大きさを示す複素数で表され得る。また、第2のマッピング方式としてPAM変調が用いられる場合、第2の変調シンボルは、実数で表され得る。第2のマッピング方式には、均一コンステレーションが用いられてもよいし、非均一コンステレーションが用いられてもよい。
【0126】
変換部525は、第1の変調シンボルの生成に用いられたビットの値に基づいて、当該第1の変調シンボルと重畳される第2の変調シンボルに変換を施す。これにより、変換部525は、第2の変調シンボル列に変換を施す。
【0127】
乗算部514は、第1の変調シンボル列の第1の変調シンボルに対して第1の振幅係数a1を乗算する。乗算部524は、変換部525で変換された第2の変調シンボル列の第2の変調シンボルに対して第2の振幅係数a2を乗算する。加算部530は、第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボルと、第2の振幅係数a2が乗算された第2の変調シンボルとを重畳して、複数の重畳変調シンボルで構成される重畳変調シンボル列を生成する。
【0128】
RF部540は、生成された重畳変調シンボル列を信号として送信する。具体的には、RF部540は、加算部530で生成された重畳変調シンボル列から、重畳変調シンボル列に対応する信号として無線周波数帯の信号を生成し、当該無線周波数帯の信号をアンテナから送信する。
【0129】
つまり、乗算部514、乗算部524および加算部530で構成される重畳部は、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とを所定の振幅比率で重畳することにより、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが多重された信号である多重信号を生成する。そして、RF部540は、多重信号を送信する。なお、多重信号は、重畳変調シンボル列に対応する。また、所定の振幅比率は、1:1でもよく、乗算処理は、省略されてもよい。
【0130】
第1のマッピング方式としてQPSKを用いる場合を例に挙げて、変換部525の動作を説明する。
【0131】
例えば、S1(t)が、マッピング部513で生成される第1の変調シンボル列のt番目の変調シンボルであり、b1(t)およびb2(t)が、S1(t)にマッピングされる複数のビットである場合、変調シンボルS1(t)は、式6で与えられる。
【0132】
【0133】
ここで、iは虚数単位である。変調シンボルS1(t)は、式6の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性(正負)が反転された式で与えられてもよい。ビットb1(t)は、変調シンボルS1(t)の実数部に寄与しているビットである。ビットb2(t)は、変調シンボルS1(t)の虚数部に寄与しているビットである。
【0134】
変換部525は、マッピング部523で生成された第2の変調シンボル列のt番目の変調シンボルS2(t)を式7のようにb1(t)およびb2(t)に基づいてS’2(t)に変換する。
【0135】
【0136】
ここで、S’2(t)は、変換された第2の変調シンボル列のt番目の変調シンボルである。また、Re[S2(t)]はS2(t)の実数部の値であり、Im[S2(t)]はS2(t)の虚数部の値である。変調シンボルS’2(t)は、式7の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。
【0137】
以上のように、変形重畳符号化では、第2の変調シンボルの実数部および虚数部の極性が、第2の変調シンボルと重畳される第1の変調シンボルにマッピングされるビットの値に応じて制御される。なお、第2の変調シンボルの実数部および虚数部の極性が、第2の変調シンボルと重畳される第1の変調シンボルに応じて制御されてもよい。また、第2の変調シンボルの実数部および虚数部のいずれか一方が制御されてもよいし、両方の極性が制御されてもよい。
【0138】
図14は、変形重畳符号化を用いて2つのデータ系列を2つの階層に多重して送信する送信装置600の構成の一例を示す。送信装置600の構成は、送信装置500の構成とは異なる。
図14を参照しながら送信装置600の構成および動作を説明する。
【0139】
送信装置600は、符号化部611、インタリーブ部612、マッピング部613、乗算部614、符号化部621、インタリーブ部622、マッピング部623、変換部625、乗算部624、加算部630およびRF部640を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。乗算部614、乗算部624および加算部630は、全体として重畳部とも表現され得る。RF部640は、送信部とも表現され得る。RF部640は、アンテナを含んでいてもよい。
【0140】
符号化部611は、入力された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部612は、符号化部611で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0141】
マッピング部613は、インタリーブ部612で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。第1のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部613は、第1のビット列を第1のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第1のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0142】
符号化部621は、入力された第2のデータ系列に第2の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第2のビット列を生成する。インタリーブ部622は、符号化部621で生成された第2のビット列のビット順を第2の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0143】
マッピング部623は、インタリーブ部622で並べ替えられた第2のビット列に対して第2のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第2の変調シンボルで構成される第2の変調シンボル列を生成する。第2のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部623は、第2のビット列を第2のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第2のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0144】
変換部625は、生成された第1の変調シンボルに基づいて、当該第1の変調シンボルと重畳される第2の変調シンボルに変換を施す。これにより、変換部625は、第2の変調シンボル列に変換を施す。
【0145】
乗算部614は、第1の変調シンボル列の第1の変調シンボルに対して第1の振幅係数a1を乗算する。乗算部624は、変換部625で変換された第2の変調シンボル列の第2の変調シンボルに対して第2の振幅係数a2を乗算する。加算部630は、第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボルと、第2の振幅係数a2が乗算された第2の変調シンボルとを重畳して、複数の重畳変調シンボルで構成される重畳変調シンボル列を生成する。
【0146】
RF部640は、生成された重畳変調シンボル列を信号として送信する。具体的には、RF部640は、加算部630で生成された重畳変調シンボル列から、重畳変調シンボル列に対応する信号として無線周波数帯の信号を生成し、当該無線周波数帯の信号をアンテナから送信する。
【0147】
つまり、乗算部614、乗算部624および加算部630で構成される重畳部は、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とを所定の振幅比率で重畳することにより、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが多重された信号である多重信号を生成する。そして、RF部640は、多重信号を送信する。なお、多重信号は、重畳変調シンボル列に対応する。また、所定の振幅比率は、1:1でもよく、乗算処理は、省略されてもよい。
【0148】
第1のマッピング方式としてQPSKを用いる場合を例に挙げて、変換部625の動作を説明する。
【0149】
例えば、S1(t)が、マッピング部613で生成される第1の変調シンボル列のt番目の変調シンボルであり、b1(t)およびb2(t)が、S1(t)にマッピングされる複数のビットである場合、変調シンボルS1(t)は、式8で与えられる。
【0150】
【0151】
ここで、iは虚数単位である。変調シンボルS1(t)は、式8の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。ビットb1(t)は、変調シンボルS1(t)の実数部に寄与しているビットである。ビットb2(t)は、変調シンボルS1(t)の虚数部に寄与しているビットである。
【0152】
変換部625は、マッピング部623で生成された第2の変調シンボル列のt番目の変調シンボルS2(t)を式9のように変調シンボルS1(t)に基づいてS’2(t)に変換する。
【0153】
【0154】
ここで、S’2(t)は、変換された第2の変調シンボル列のt番目の変調シンボルである。また、Re[S2(t)]はS2(t)の実数部の値であり、Im[S2(t)]はS2(t)の虚数部の値である。また、sgn(Re[S1(t)])はS1(t)の実数部の極性であり、sgn(Im[S1(t)])はS1(t)の虚数部の極性である。
【0155】
変調シンボルS’2(t)は、式9の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。なお、式9に基づく変換は、式7に基づく変換と実質的に同じである。
【0156】
以上のように、変形重畳符号化では、第2の変調シンボルの実数部および虚数部の極性が、第2の変調シンボルと重畳される第1の変調シンボルに応じて制御される。なお、第2の変調シンボルの実数部および虚数部の極性が、第2の変調シンボルと重畳される第1の変調シンボルにマッピングされるビットの値に応じて制御されてもよい。また、第2の変調シンボルの実数部および虚数部のいずれか一方が制御されてもよいし、両方の極性が制御されてもよい。
【0157】
図15は、変形重畳符号化を用いて2つのデータ系列を2つの階層に多重して送信する送信装置700の構成の一例を示す。送信装置700の構成は、送信装置500および600の構成とは異なる。
図15を参照しながら送信装置700の構成および動作を説明する。
【0158】
送信装置700は、符号化部711、インタリーブ部712、マッピング部713、乗算部714、符号化部721、インタリーブ部722、マッピング部723、乗算部724、加算部730およびRF部740を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。乗算部714、乗算部724および加算部730は、全体として重畳部とも表現され得る。RF部740は、送信部とも表現され得る。RF部740は、アンテナを含んでいてもよい。マッピング部723は、変換部を含んでいてもよい。
【0159】
符号化部711は、入力された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部712は、符号化部711で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0160】
マッピング部713は、インタリーブ部712で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。第1のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部713は、第1のビット列を第1のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第1のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0161】
符号化部721は、入力された第2のデータ系列に第2の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第2のビット列を生成する。インタリーブ部722は、符号化部721で生成された第2のビット列のビット順を第2の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0162】
マッピング部723は、マッピング部713で第1の変調シンボル列にマッピングされる第1のビット列に応じて第2のマッピング方式を変換(変形)する。そして、マッピング部723は、インタリーブ部722で並べ替えられた第2のビット列に対して、第1のビット列に応じて変換された第2のマッピング方式に従ったマッピング処理を施す。これにより、マッピング部723は、複数の第2の変調シンボルで構成される第2の変調シンボル列を生成する。
【0163】
第2のマッピング方式に従ったマッピング処理において、マッピング部723は、第2のビット列を第2のビット数のビット群毎に、当該ビット群の値に従って第2のコンステレーションにおける複数の信号点のうちのいずれか1つの信号点へマッピングする。
【0164】
乗算部714は、第1の変調シンボル列の第1の変調シンボルに対して第1の振幅係数a1を乗算する。乗算部724は、第2の変調シンボル列の第2の変調シンボルに対して第2の振幅係数a2を乗算する。加算部730は、第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボルと、第2の振幅係数a2が乗算された第2の変調シンボルとを重畳して、複数の重畳変調シンボルで構成される重畳変調シンボル列を生成する。
【0165】
RF部740は、生成された重畳変調シンボル列を信号として送信する。具体的には、RF部740は、加算部730で生成された重畳変調シンボル列から、重畳変調シンボル列に対応する信号として無線周波数帯の信号を生成し、当該無線周波数帯の信号をアンテナから送信する。
【0166】
つまり、乗算部714、乗算部724および加算部730で構成される重畳部は、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とを所定の振幅比率で重畳することにより、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが多重された信号である多重信号を生成する。そして、RF部740は、多重信号を送信する。なお、多重信号は、重畳変調シンボル列に対応する。また、所定の振幅比率は、1:1でもよく、乗算処理は、省略されてもよい。
【0167】
第1のマッピング方式としてQPSKを用いる場合を例に挙げて、マッピング部723の動作を説明する。
【0168】
例えば、S1(t)が、マッピング部713で生成される第1の変調シンボル列のt番目の変調シンボルであり、b1(t)およびb2(t)が、S1(t)にマッピングされる複数のビットである場合、変調シンボルS1(t)は、式10で与えられる。
【0169】
【0170】
ここで、iは虚数単位である。変調シンボルS1(t)は、式10の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。ビットb1(t)は、変調シンボルS1(t)の実数部に寄与しているビットである。ビットb2(t)は、変調シンボルS1(t)の虚数部に寄与しているビットである。
【0171】
マッピング部723は、インタリーブ部722から入力された第2のビット列のうち、第2のコンステレーションの実数部にもっとも寄与するビットに対して、b1(t)の排他的論理和を施す。また、マッピング部723は、インタリーブ部722から入力された第2のビット列のうち、第2のコンステレーションの虚数部にもっとも寄与するビットに対して、b2(t)の排他的論理和を施す。そして、これらの排他的論理和が施された第2のビット列を第2のコンステレーションに基づいてマッピングする。
【0172】
ここで、第2のコンステレーションの実数部にもっとも寄与するビットとは、例えば当該ビットの値を0から1へまたは1から0へ反転すると、第2のコンステレーションの実数部の極性が反転するビットを意味する。すなわち、第2のコンステレーションの実数部にもっとも寄与するビットとは、例えば当該ビットの値を0から1へまたは1から0へ反転すると、変調シンボルにおける実数部の値の正負の符号が反転するビットを意味する。
【0173】
同様に、第2のコンステレーションの虚数部にもっとも寄与するビットとは、例えば当該ビットの値を0から1へまたは1から0へ反転すると、第2のコンステレーションの虚数部の極性が反転するビットを意味する。すなわち、第2のコンステレーションの虚数部にもっとも寄与するビットとは、例えば当該ビットの値を0から1へまたは1から0へ反転すると、変調シンボルにおける虚数部の値の正負の符号が反転するビットを意味する。
【0174】
上記において、マッピング部723は、第2のビット列を変換することにより、実質的に第2のマッピング方式(第2のコンステレーション)を変換する。しかしながら、マッピング部723は、第2のビット列を変換することなく、直接的に第2のマッピング方式(第2のコンステレーション)を変換してもよい。つまり、マッピング部723は、第2のコンステレーションにおけるビット群と信号点との対応付けを変換してもよい。
【0175】
また、マッピング部723によって行われる変換は、マッピング部723に含まれる変換部によって行われてもよい。
【0176】
以上のように、変形重畳符号化では、第2の変調シンボルの実数部および虚数部の極性が、第2の変調シンボルと重畳される第1の変調シンボルにマッピングされるビットの値に応じて制御される。なお、第2の変調シンボルの実数部および虚数部の極性が、第2の変調シンボルと重畳される第1の変調シンボルに応じて制御されてもよい。また、第2の変調シンボルの実数部および虚数部のいずれか一方が制御されてもよいし、両方の極性が制御されてもよい。
【0177】
<変形重畳符号化で得られた信号の逐次復号>
図16は、上述した変形重畳符号化を用いて2つのデータ系列が2つの階層に多重された信号を受信して逐次復号し、多重された2つのデータ系列の両方またはいずれか一方を取得することが可能な受信装置800の構成の一例を示す。
図16を参照しながら受信装置800の構成および動作を説明する。
【0178】
受信装置800は、RF部830、デマッピング部811、デインタリーブ部812、復号部813、符号化部814、インタリーブ部815、マッピング部816、乗算部817、遅延部818、減算部819、変換部820、デマッピング部821、デインタリーブ部822および復号部823を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。
【0179】
デマッピング部811、デインタリーブ部812、復号部813、符号化部814、インタリーブ部815、マッピング部816、乗算部817、遅延部818、減算部819、変換部820、デマッピング部821、デインタリーブ部822および復号部823は、全体として導出部とも表現され得る。RF部830は、受信部とも表現され得る。RF部830は、アンテナを含んでいてもよい。
【0180】
受信装置800は、送信装置500、600または700から送信された多重信号をアンテナで受信してRF部830に入力する。つまり、RF部830は、アンテナを介して多重信号を受信する。RF部830によって受信された多重信号は、受信信号とも表現され、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とが多重された重畳変調シンボル列に対応する。RF部830は、無線周波数帯の受信信号からベースバンドの受信信号を生成する。
【0181】
デマッピング部811は、ベースバンドの受信信号を第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第1のビット尤度列を生成する。例えば、デマッピングのための第1のコンステレーションには、振幅係数a1が反映されている。
【0182】
デインタリーブ部812は、第1のビット尤度列を第1の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部813は、デインタリーブ部812で並べ替えられた第1のビット尤度列を用いて第1の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を行い、復号結果を第1のデータ系列として出力する。
【0183】
ここで、デマッピング部811は、重畳変調シンボル列に対応する受信信号のうち、第2のデータ系列の第2の変調シンボルに対応する成分を未知な信号(ノイズ)として取扱い、第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングを行う。
【0184】
受信装置800は、第1のデータ系列のみが取得対象である場合、第1のデータ系列の推定が完了した時点で処理を終了する。一方、第1のデータ系列に加えて第2のデータ系列が取得対象である場合、または、第2のデータ系列のみが取得対象である場合、受信装置800は、第2のデータ系列を取得するために以下の処理を実施する。
【0185】
符号化部814は、復号部813で取得された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部815は、符号化部814で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0186】
マッピング部816は、インタリーブ部815で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。乗算部817は、マッピング部816が出力する第1の変調シンボル列に第1の振幅係数a1を乗算する。
【0187】
遅延部818は、RF部830がベースバンドの受信信号を出力してから、再生された第1の変調シンボル列を乗算部817が出力するまでの間、RF部830から出力された受信信号を遅延させる。
【0188】
減算部819は、遅延部818で遅延させられた受信信号から、乗算部817で第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボル列を減算する。これにより、減算部819は、第1の変調シンボルに対応する成分と第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された受信信号から、第1の変調シンボルに対応する成分を除去する。そして、減算部819は、第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された信号を第2の変調シンボル列に対応する信号として出力する。
【0189】
変換部820は、符号化およびインタリーブ等により再生された第1のビット列を用いて、減算部819から第2の変調シンボル列に対応する信号として出力された信号に変換を施す。デマッピング部821は、変換部820が出力する信号を第2のマッピング方式の第2のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第2のビット尤度列を生成する。例えば、デマッピングのための第2のコンステレーションには、振幅係数a2が反映されている。
【0190】
デインタリーブ部822は、第2のビット尤度列を第2の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部823は、デインタリーブ部822で並べ替えられた第2のビット尤度列に対して第2の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第2のデータ系列として出力する。
【0191】
第1のマッピング方式としてQPSKを用いる場合を例に挙げて、変換部820の動作を説明する。
【0192】
例えば、S1(t)が、マッピング部816で生成される第1の変調シンボル列のt番目の変調シンボルであり、b1(t)およびb2(t)が、S1(t)にマッピングされる複数のビットである場合、変調シンボルS1(t)は、式11で与えられる。
【0193】
【0194】
ここで、iは虚数単位である。変調シンボルS1(t)は、式11の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。ビットb1(t)は、変調シンボルS1(t)の実数部に寄与しているビットである。ビットb2(t)は、変調シンボルS1(t)の虚数部に寄与しているビットである。
【0195】
変換部820は、減算部819によって出力された信号のうち第2の変調シンボル列のt番目の変調シンボルに対応する信号S2(t)を式12のようにb1(t)およびb2(t)に基づいてS’2(t)に変換する。
【0196】
【0197】
ここで、S’2(t)は、変換後の信号である。また、Re[S2(t)]はS2(t)の実数部の値であり、Im[S2(t)]はS2(t)の虚数部の値である。変換後の信号S’2(t)は、式12の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。
【0198】
以上のようにして、受信装置800は、アンテナで受信した信号から第1のデータ系列および第2のデータ系列の両方またはいずれか一方を取得する。
【0199】
図17は、上述した変形重畳符号化を用いて2つのデータ系列が2つの階層に多重された信号を受信して逐次復号し、多重された2つのデータ系列の両方またはいずれか一方を取得することが可能な受信装置900の構成の一例を示す。受信装置900の構成は、受信装置800の構成とは異なる。
図17を参照しながら受信装置900の構成および動作を説明する。
【0200】
受信装置900は、RF部930、デマッピング部911、デインタリーブ部912、復号部913、符号化部914、インタリーブ部915、マッピング部916、乗算部917、遅延部918、減算部919、変換部920、デマッピング部921、デインタリーブ部922および復号部923を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。
【0201】
デマッピング部911、デインタリーブ部912、復号部913、符号化部914、インタリーブ部915、マッピング部916、乗算部917、遅延部918、減算部919、変換部920、デマッピング部921、デインタリーブ部922および復号部923は、全体として導出部とも表現され得る。RF部930は、受信部とも表現され得る。RF部930は、アンテナを含んでいてもよい。
【0202】
受信装置900は、送信装置500、600または700から送信された多重信号をアンテナで受信してRF部930に入力する。つまり、RF部930は、アンテナを介して多重信号を受信する。RF部930によって受信された多重信号は、受信信号とも表現され、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とが多重された重畳変調シンボル列に対応する。RF部930は、無線周波数帯の受信信号からベースバンドの受信信号を生成する。
【0203】
デマッピング部911は、ベースバンドの受信信号を第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第1のビット尤度列を生成する。例えば、デマッピングのための第1のコンステレーションには、振幅係数a1が反映されている。
【0204】
デインタリーブ部912は、第1のビット尤度列を第1の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部913は、デインタリーブ部912で並べ替えられた第1のビット尤度列を用いて第1の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を行い、復号結果を第1のデータ系列として出力する。
【0205】
ここで、デマッピング部911は、重畳変調シンボル列に対応する受信信号のうち、第2のデータ系列の第2の変調シンボルに対応する成分を未知な信号(ノイズ)として取扱い、第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングを行う。
【0206】
受信装置900は、第1のデータ系列のみが取得対象である場合、第1のデータ系列の推定が完了した時点で処理を終了する。一方、第1のデータ系列に加えて第2のデータ系列が取得対象である場合、または、第2のデータ系列のみが取得対象である場合、受信装置900は、第2のデータ系列を取得するために以下の処理を実施する。
【0207】
符号化部914は、復号部913で取得された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部915は、符号化部914で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0208】
マッピング部916は、インタリーブ部915で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。乗算部917は、マッピング部916が出力する第1の変調シンボル列に第1の振幅係数a1を乗算する。
【0209】
遅延部918は、RF部930がベースバンドの受信信号を出力してから、再生された第1の変調シンボル列を乗算部917が出力するまでの間、RF部930から出力された受信信号を遅延させる。
【0210】
減算部919は、遅延部918で遅延させられた受信信号から、乗算部917で第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボル列を減算する。これにより、減算部919は、第1の変調シンボルに対応する成分と第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された受信信号から、第1の変調シンボルに対応する成分を除去する。そして、減算部919は、第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された信号を第2の変調シンボル列に対応する信号として出力する。
【0211】
変換部920は、符号化、インタリーブおよびマッピング等により再生された第1の変調シンボル列を用いて、減算部919から第2の変調シンボル列に対応する信号として出力された信号に変換を施す。デマッピング部921は、変換部920が出力する信号を第2のマッピング方式の第2のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第2のビット尤度列を生成する。例えば、デマッピングのための第2のコンステレーションには、振幅係数a2が反映されている。
【0212】
デインタリーブ部922は、第2のビット尤度列を第2の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部923は、デインタリーブ部922で並べ替えられた第2のビット尤度列に対して第2の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第2のデータ系列として出力する。
【0213】
第1のマッピング方式としてQPSKを用いる場合を例に挙げて、変換部920の動作を説明する。
【0214】
例えば、S1(t)が、マッピング部916で生成される第1の変調シンボル列のt番目の変調シンボルであり、b1(t)およびb2(t)が、S1(t)にマッピングされる複数のビットである場合、変調シンボルS1(t)は、式13で与えられる。
【0215】
【0216】
ここで、iは虚数単位である。変調シンボルS1(t)は、式13の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。ビットb1(t)は、変調シンボルS1(t)の実数部に寄与しているビットである。ビットb2(t)は、変調シンボルS1(t)の虚数部に寄与しているビットである。
【0217】
変換部920は、減算部919によって出力された信号のうち第2の変調シンボル列のt番目の変調シンボルに対応する信号S2(t)を式14のように変調シンボルS1(t)に基づいてS’2(t)に変換する。
【0218】
【0219】
ここで、S’2(t)は、変換後の信号である。また、Re[S2(t)]はS2(t)の実数部の値であり、Im[S2(t)]はS2(t)の虚数部の値である。また、sgn(Re[S1(t)])はS1(t)の実数部の極性であり、sgn(Im[S1(t)])はS1(t)の虚数部の極性である。変換後の信号S’2(t)は、式14の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。なお、式14に基づく変換は、式12に基づく変換と実質的に同じである。
【0220】
以上のようにして、受信装置900は、アンテナで受信した信号から第1のデータ系列および第2のデータ系列の両方またはいずれか一方を取得する。
【0221】
図18は、上述した変形重畳符号化を用いて2つのデータ系列が2つの階層に多重された信号を受信して逐次復号し、多重された2つのデータ系列の両方またはいずれか一方を取得することが可能な受信装置1000の構成の一例を示す。受信装置1000の構成は、受信装置800および900の構成とは異なる。
図18を参照しながら受信装置1000の構成および動作を説明する。
【0222】
受信装置1000は、RF部1030、デマッピング部1011、デインタリーブ部1012、復号部1013、符号化部1014、インタリーブ部1015、マッピング部1016、乗算部1017、遅延部1018、減算部1019、デマッピング部1021、デインタリーブ部1022および復号部1023を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。
【0223】
デマッピング部1011、デインタリーブ部1012、復号部1013、符号化部1014、インタリーブ部1015、マッピング部1016、乗算部1017、遅延部1018、減算部1019、デマッピング部1021、デインタリーブ部1022および復号部1023は、全体として導出部とも表現され得る。RF部1030は、受信部とも表現され得る。RF部1030は、アンテナを含んでいてもよい。デマッピング部1021は、変換部を含んでいてもよい。
【0224】
受信装置1000は、送信装置500、600または700から送信された多重信号をアンテナで受信してRF部1030に入力する。つまり、RF部1030は、アンテナを介して多重信号を受信する。RF部1030によって受信された多重信号は、受信信号とも表現され、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とが多重された重畳変調シンボル列に対応する。RF部1030は、無線周波数帯の受信信号からベースバンドの受信信号を生成する。
【0225】
デマッピング部1011は、ベースバンドの受信信号を第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第1のビット尤度列を生成する。例えば、デマッピングのための第1のコンステレーションには、振幅係数a1が反映されている。
【0226】
デインタリーブ部1012は、第1のビット尤度列を第1の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部1013は、デインタリーブ部1012で並べ替えられた第1のビット尤度列を用いて第1の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を行い、復号結果を第1のデータ系列として出力する。
【0227】
ここで、デマッピング部1011は、重畳変調シンボル列に対応する受信信号のうち第2のデータ系列の第2の変調シンボルに対応する成分を未知な信号(ノイズ)として取扱い、第1のマッピング方式の第1のコンステレーションに基づいてデマッピングを行う。
【0228】
受信装置1000は、第1のデータ系列のみが取得対象である場合、第1のデータ系列の推定が完了した時点で処理を終了する。一方、第1のデータ系列に加えて第2のデータ系列が取得対象である場合、または、第2のデータ系列のみが取得対象である場合、受信装置1000は、第2のデータ系列を取得するために以下の処理を実施する。
【0229】
符号化部1014は、復号部1013で取得された第1のデータ系列に第1の誤り制御符号化方式に基づく符号化を施して第1のビット列を生成する。インタリーブ部1015は、符号化部1014で生成された第1のビット列のビット順を第1の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、インタリーブとも呼ばれる。
【0230】
マッピング部1016は、インタリーブ部1015で並べ替えられた第1のビット列に対して第1のマッピング方式に従ったマッピング処理を施し、複数の第1の変調シンボルで構成される第1の変調シンボル列を生成する。乗算部1017は、マッピング部1016が出力する第1の変調シンボル列に第1の振幅係数a1を乗算する。
【0231】
遅延部1018は、RF部1030がベースバンドの受信信号を出力してから、再生された第1の変調シンボル列を乗算部1017が出力するまでの間、RF部1030から出力された受信信号を遅延させる。
【0232】
減算部1019は、遅延部1018で遅延させられた受信信号から、乗算部1017で第1の振幅係数a1が乗算された第1の変調シンボル列を減算する。これにより、減算部1019は、第1の変調シンボルに対応する成分と第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された受信信号から、第1の変調シンボルに対応する成分を除去する。そして、減算部1019は、第2の変調シンボルに対応する成分とノイズとが重畳された信号を第2の変調シンボル列に対応する信号として出力する。
【0233】
デマッピング部1021は、減算部1019から第2の変調シンボル列に対応する信号として出力された信号を第2のマッピング方式の第2のコンステレーションに基づいてデマッピングし、第2のビット尤度列を生成する。その際、符号化およびインタリーブ等により再生された第1のビット列が、この処理に反映される。また、例えば、デマッピングのための第2のコンステレーションには、振幅係数a2が反映されている。
【0234】
デインタリーブ部1022は、第2のビット尤度列を第2の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部1023は、デインタリーブ部1022で並べ替えられた第2のビット尤度列に対して第2の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第2のデータ系列として出力する。
【0235】
第1のマッピング方式としてQPSKを用いる場合を例に挙げて、デマッピング部1021の動作を説明する。
【0236】
例えば、S1(t)が、マッピング部1016で生成される第1の変調シンボル列のt番目の変調シンボルであり、b1(t)およびb2(t)が、S1(t)にマッピングされる複数のビットである場合、変調シンボルS1(t)は、式15で与えられる。
【0237】
【0238】
ここで、iは虚数単位である。変調シンボルS1(t)は、式15の実数部および虚数部のいずれか一方あるいは両方の極性が反転された式で与えられてもよい。ビットb1(t)は、変調シンボルS1(t)の実数部に寄与しているビットである。ビットb2(t)は、変調シンボルS1(t)の虚数部に寄与しているビットである。
【0239】
デマッピング部1021は、減算部1019から第2の変調シンボル列のt番目の変調シンボルに対応する信号として出力された信号S2(t)を第2のマッピング方式の第2のコンステレーションに基づいてデマッピングする。
【0240】
デマッピング部1021は、デマッピングで得られたビット尤度列のうち、第2のコンステレーションの実数部にもっとも寄与するビットに対応するビット尤度に対してb1(t)に応じた反転処理を施す。また、デマッピング部1021は、デマッピングで得られたビット尤度列のうち、第2のコンステレーションの虚数部にもっとも寄与するビットに対応するビット尤度に対してb2(t)に応じた反転処理を施す。
【0241】
例えば、デマッピング部1021は、デマッピングで得られたビット尤度列のうち、第2のコンステレーションの実数部にもっとも寄与するビットに対応するビット尤度に対してb1(t)の排他的論理和を施す。また、デマッピング部1021は、デマッピングで得られたビット尤度列のうち、第2のコンステレーションの虚数部にもっとも寄与するビットに対応するビット尤度に対してb2(t)の排他的論理和を施す。
【0242】
デマッピング部1021は、上記の反転処理を施した後のビット尤度列を第2のビット尤度列として出力する。
【0243】
上記において、デマッピング部1021は、ビット尤度列を変換することにより、実質的に第2のマッピング方式(第2のコンステレーション)を変換する。しかしながら、デマッピング部1021は、ビット尤度列を変換することなく、直接的に第2のマッピング方式(第2のコンステレーション)を変換してもよい。つまり、デマッピング部1021は、第2のコンステレーションにおけるビット群と信号点との対応付けを変換してもよい。
【0244】
また、デマッピング部1021によって行われる変換は、デマッピング部1021に含まれる変換部によって行われてもよい。
【0245】
以上のようにして、受信装置1000は、アンテナで受信した信号から第1のデータ系列および第2のデータ系列の両方またはいずれか一方を取得する。
【0246】
<変形重畳符号化で得られた信号の並列復号>
以下では、本実施の形態における変形重畳符号化で得られた信号を並列復号する受信方法について説明する。送信装置の構成は、
図13に示した送信装置500、
図14に示した送信装置600、または、
図15に示した送信装置700と同じであるため説明を省略する。変形重畳符号化における並列復号では、受信装置は、受信信号に含まれる第1の階層の変調シンボル列の成分を除去せずに、第1の階層の変調シンボル列の成分を未知な信号(ノイズ)として取扱い、第2の階層を復号する。
【0247】
図19は、変形重畳符号化を用いて2つのデータ系列が2つの階層に多重された信号を受信して並列復号し、多重された2つのデータ系列の両方またはいずれか一方を取得することが可能な受信装置1100の構成の一例を示す。
図19を参照しながら受信装置1100の構成および動作を説明する。
【0248】
受信装置1100は、RF部1130、デマッピング部1110、デインタリーブ部1112、復号部1113、デインタリーブ部1122および復号部1123を備える。各構成要素は、専用または汎用の回路でもよい。デマッピング部1110、デインタリーブ部1112、復号部1113、デインタリーブ部1122および復号部1123は、全体として導出部とも表現され得る。RF部1130は、受信部とも表現され得る。RF部1130は、アンテナを含んでいてもよい。
【0249】
受信装置1100は、送信装置500、600または700から送信された多重信号をアンテナで受信してRF部1130に入力する。つまり、RF部1130は、アンテナを介して多重信号を受信する。RF部1130によって受信された多重信号は、受信信号とも表現され得る。RF部1130は、無線周波数帯の受信信号からベースバンドの受信信号を生成する。
【0250】
デマッピング部1110は、ベースバンドの受信信号をデマッピングし、第1のビット尤度列および第2のビット尤度列を生成する。デマッピング部1110は、例えば、変形重畳符号化を用いて第1の変調シンボルと第2の変調シンボルとが重畳された重畳変調シンボルの信号点の配置を示す変形重畳コンステレーションに基づいてデマッピングを行う。
【0251】
変形重畳コンステレーションは、第1のマッピング方式の第1のコンステレーション、第2のマッピング方式の第2のコンステレーション、第1の振幅係数a1および第1の振幅係数a2等に応じて決まる。
【0252】
図20は、変形重畳符号化に対応する変形重畳コンステレーションの一例を示す。具体的には、
図4に示されたQPSKのコンステレーションと、
図5に示されたNu-256QAMのコンステレーションとが組み合わされている。
【0253】
より具体的には、QPSKのコンステレーションの4つの信号点に従って、Nu-256QAMのコンステレーション(256個の信号点)が、複素平面上の4つの領域のそれぞれに配置されている。Nu-256QAMのコンステレーションに対応するこれらの4つの領域は、部分的に重なっていてもよい。そして、この変形重畳コンステレーションでは、第2の変調シンボル列の変換が反映されている。
【0254】
例えば、QPSKのコンステレーションの4つの信号点のうち、実数部が正である信号点に対して、Nu-256QAMのコンステレーションが組み合わされる際に、Nu-256QAMのコンステレーションの実数部の極性が反転される。また、例えば、QPSKのコンステレーションの4つの信号点のうち、虚数部が正である信号点に対して、Nu-256QAMのコンステレーションが組み合わされる際に、Nu-256QAMのコンステレーションの虚数部の極性が反転される。
【0255】
具体的には、
図20に、第1の信号点、第2の信号点、第3の信号点、第4の信号点、第5の信号点および第6の信号点が示されている。Nu-256QAMのコンステレーションの実数部の極性が反転されない場合、第1の信号点と第3の信号点とは、第2のビット列について同じビット値に対応する。同様に、Nu-256QAMのコンステレーションの虚数部の極性が反転されない場合、第4の信号点と第6の信号点とは、第2のビット列について同じビット値に対応する。
【0256】
Nu-256QAMのコンステレーションの実数部の極性が反転された場合、第1の信号点と第2の信号点とが、第2のビット列について同じビット値に対応する。また、Nu-256QAMのコンステレーションの虚数部の極性が反転された場合、第4の信号点と第5の信号点とが、第2のビット列について同じビット値に対応する。つまり、第2のビット列について同じビット値に対応する複数の信号点が、反転によって近付き、まとめられる。これにより、ノイズによってデマッピングに及ぼされる影響が抑制される。
【0257】
デマッピング部1110は、
図20に示されているような変形重畳コンステレーションに基づいてデマッピングを行う。すなわち、デマッピング部1110は、第2の階層の変調シンボル列が未知な状態で第1のビット尤度列を生成し、第1の階層の変調シンボル列が未知な状態で第2のビット尤度列を生成する。
【0258】
なお、デマッピング部1110は、第1のビット尤度列の生成に、第1のマッピング方式の第1のコンステレーションを用い、第2のビット尤度列の生成には、上述した変形重畳コンステレーションを用いてもよい。
【0259】
デマッピング部1110は、第1のビット尤度列の生成に第1のコンステレーションを用いた場合、第1のビット尤度列の生成にも変形重畳コンステレーションを用いる場合と比較して、第1のビット尤度列の生成に考慮される信号点の数を減らすことができる。したがって、この場合、デマッピング部1110は、演算量を削減することができる。
【0260】
また、例えば、デマッピング部1110は、受信信号をデマッピングすることにより第1のビット尤度列を生成する第1のデマッピング部と、受信信号をデマッピングすることにより第2のビット尤度列を生成する第2のデマッピング部とに対応する。デマッピング部1110は、受信信号をデマッピングすることにより第1のビット尤度列を生成する第1のデマッピング部と、受信信号をデマッピングすることにより第2のビット尤度列を生成する第2のデマッピング部とを備えていてもよい。
【0261】
また、デマッピング部1110は、変形重畳コンステレーションではなく、重畳コンステレーションで生成された第2のビット尤度列を第1のビット尤度列に応じて変換してもよい。これにより、デマッピング部1110は、変形重畳コンステレーションで生成される第2のビット尤度列と同じ第2のビット尤度列を取得することができる。
【0262】
また、デマッピング部1110は、変形重畳コンステレーションを用いずに、多重信号を変換することにより、変形重畳コンステレーションで生成される第2のビット尤度列と同じ第2のビット尤度列を取得してもよい。
【0263】
デインタリーブ部1112は、第1のビット尤度列を第1の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部1113は、デインタリーブ部1112で並べ替えられた第1のビット尤度列に対して第1の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第1のデータ系列として出力する。
【0264】
デインタリーブ部1122は、第2のビット尤度列を第2の並び替え規則と逆の並び替え規則に基づいて並べ替える。この並び替えは、デインタリーブとも呼ばれる。復号部1123は、デインタリーブ部1122で並べ替えられた第2のビット尤度列に対して第2の誤り制御符号化方式に基づく復号処理を施し、復号結果を第2のデータ系列として出力する。
【0265】
以上のようにして、受信装置1100は、アンテナで受信した信号から第1のデータ系列および第2のデータ系列の両方またはいずれか一方を取得する。
【0266】
なお、送信装置500、600および700、並びに、受信装置800、900、1000および1100において、実施の形態1と同様に、並び替え(インタリーブおよびデインタリーブ)は省略されてもよい。すなわち、各インタリーブ部および各デインタリーブ部は、任意の構成要素であって、これらの装置に含まれていなくてもよい。
【0267】
ただし、インタリーブとデインタリーブとは対を構成する。したがって、基本的には、送信装置500、600および700が各インタリーブ部を備える場合、受信装置800、900、1000および1100は、各デインタリーブ部および各インタリーブ部を備える。一方、送信装置500、600および700が各インタリーブ部を備えない場合、受信装置800、900、1000および1100は、各デインタリーブ部および各インタリーブ部を備えない。
【0268】
また、受信装置800、900および1000において、第1の変調シンボルを生成するためのマッピングに振幅係数a1が反映されていてもよい。この場合、振幅係数a1の乗算処理が省略されてもよい。そして、受信装置800、900および1000は、それぞれ、乗算部817、917および1017を備えていなくてもよい。
【0269】
また、第1のデータ系列および第2のデータ系列の誤り制御符号化は、外部の装置によって行われてもよい。この場合、送信装置500、600および700において、誤り制御符号化が省略されてもよい。そして、送信装置500、600および700は、符号化部511、521、611、621、711および721を備えなくてもよい。
【0270】
図21は、送信装置500の動作例を示すフローチャートである。まず、マッピング部513は、第1のデータ系列の第1のビット列をマッピングすることにより第1のデータ系列の第1の変調シンボル列を生成する(S301)。そして、マッピング部523は、第2のデータ系列の第2のビット列をマッピングすることにより第2のデータ系列の第2の変調シンボル列を生成する(S302)。
【0271】
変換部525は、第1の変調シンボル列に応じた変換を第2の変調シンボル列にもたらす(S303)。具体的には、変換部525は、第1のビット列に応じて、第2の変調シンボル列を変換することにより、第1の変調シンボル列に応じた変換を第2の変調シンボル列にもたらす。
【0272】
次に、第1の乗算部514と第2の乗算部524と加算部530とで構成される重畳部は、第1の変調シンボル列と、第1の変調シンボル列に応じた変換がもたらされた第2の変調シンボル列とを所定の振幅比率で重畳することで多重信号を生成する(S304)。そして、RF部540は、生成された多重信号を送信する(S305)。
【0273】
なお、上記の動作例において、送信装置500は、第1のビット列に応じて、第2の変調シンボル列を変換することにより、第1の変調シンボル列に応じた変換を第2の変調シンボル列にもたらす(S303)。これに代えて、送信装置600のように、第1の変調シンボル列に応じて、第2の変調シンボル列を変換することにより、第1の変調シンボル列に応じた変換が第2の変調シンボル列にもたらされてもよい。
【0274】
あるいは、送信装置700のように、第1のビット列に応じて、第2の変調シンボル列を生成するための第2のビット列または第2のマッピング方式(第2のコンステレーション)が変換されてもよい。そして、これにより、第1の変調シンボル列に応じた変換が第2の変調シンボル列にもたらされてもよい。この場合、第2の変調シンボル列の生成前に、第2のビット列または第2のマッピング方式が変換される。
【0275】
すなわち、第1のビット列または第1の変調シンボル列に応じて、第2のビット列、第2のマッピング方式または第2の変調シンボル列を変換することにより、第1の変調シンボル列に応じた変換が第2の変調シンボル列にもたらされてもよい。
【0276】
また、変換部525は、第1の変調シンボル列に応じた変換を第2の変調シンボル列にもたらすことにより、第2の変調シンボル列における各変調シンボルの実数部および虚数部の極性を制御してもよい。これにより、変換部525は、第1の変調シンボルの実数部が所定の実数部条件を満たす場合に第2の変調シンボルの実数部の極性を反転させ、第1の変調シンボルの虚数部が所定の条件を満たす場合に第2の変調シンボルの虚数部の極性を反転させてもよい。
【0277】
所定の実数部条件は、実数部の極性が所定の実数部極性であるという条件でもよいし、実数部が所定の1以上の実数部範囲内であるという条件でもよい。所定の1以上の実数部範囲は、正の範囲でもよいし、負の範囲でもよい。同様に、所定の虚数部条件は、虚数部の極性が所定の虚数部極性であるという条件でもよいし、虚数部が所定の1以上の虚数部範囲内であるという条件でもよい。所定の1以上の虚数部範囲は、正の範囲でもよいし、負の範囲でもよい。
【0278】
図22は、受信装置800、900、1000および1100の動作例を示すフローチャートである。まず、受信部は、多重信号を受信する(S401)。ここで、受信部は、受信装置800のRF部830、受信装置900のRF部930、受信装置1000のRF部1030、または、受信装置1100のRF部1130である。
【0279】
多重信号は、第1の階層の第1のデータ系列と第2の階層の第2のデータ系列とを含む複数のデータ系列が多重された信号である。また、この多重信号は、第1の変調シンボル列と第2の変調シンボル列とが所定の振幅比率で重畳された信号である。
【0280】
第1の変調シンボル列は、第1のデータ系列の第1のビット列をマッピングすることにより生成された変調シンボル列である。第2の変調シンボル列は、第2のデータ系列の第2のビット列をマッピングすることにより生成され、第1の変調シンボル列に応じた変換がもたらされた変調シンボル列である。
【0281】
次に、導出部は、多重信号から第1のデータ系列と第2のデータ系列とのうち少なくとも一方を導出する(S402)。
【0282】
例えば、受信装置800の導出部は、デマッピング部811、デインタリーブ部812、復号部813、符号化部814、インタリーブ部815、マッピング部816、乗算部817、遅延部818、減算部819、変換部820、デマッピング部821、デインタリーブ部822および復号部823で構成される。
【0283】
また、例えば、受信装置900の導出部は、デマッピング部911、デインタリーブ部912、復号部913、符号化部914、インタリーブ部915、マッピング部916、乗算部917、遅延部918、減算部919、変換部920、デマッピング部921、デインタリーブ部922および復号部923で構成される。
【0284】
また、例えば、受信装置1000の導出部は、デマッピング部1011、デインタリーブ部1012、復号部1013、符号化部1014、インタリーブ部1015、マッピング部1016、乗算部1017、遅延部1018、減算部1019、デマッピング部1021、デインタリーブ部1022および復号部1023で構成される。
【0285】
また、例えば、受信装置1100の導出部は、デマッピング部1110、デインタリーブ部1112、復号部1113、デインタリーブ部1122および復号部1123で構成される。
【0286】
上記の動作に従って、第1の変調シンボル列と、第1の変調シンボル列に応じた変換がもたらされた第2の変調シンボル列とが重畳された多重信号が受信される。そして、その多重信号から、多重信号から第1のデータ系列と第2のデータ系列とのうち少なくとも一方が導出される。すなわち、並列復号時の性能劣化が低減されるように重畳された多重信号を受信し、その多重信号から第1のデータ系列および第2のデータ系列の両方またはいずれか一方を効率的に導出することが可能である。
【0287】
図19に示した並列復号を行う受信装置1100では、
図16、17および18に示した逐次復号を行う受信装置800、900および1000に比べて、第2の階層に対する復号性能が劣化する。
【0288】
第1の階層の信号電力P
s1と第2の階層の信号電力P
s2との比がP
s1:P
s2=2:1である場合の第2の階層の伝送容量のシミュレーション結果の一例を
図23に示す。
図23において、横軸は信号電力P
s対雑音電力P
n比(SNR)をdB(デシベル)で表し、縦軸は伝送容量を表す。
図23において、実線は逐次復号を行う場合の第2の階層の伝送容量を示し、破線は並列復号を行う場合の第2の階層の伝送容量を示す。
【0289】
図23に示すように、並列復号を行う場合は、逐次復号を行う場合と比較して、第2の階層の復号において、同じ伝送容量に対して必要なSNRが増加し、同じSNRに対して伝送容量が減少する。
【0290】
以上のように、本実施の形態における並列復号を行う受信装置1100は、逐次復号を行う受信装置800、900および1000と比較して、第2の階層で伝送される第2のデータ系列に関する復号性能は劣化する。しかし、第2の階層の復号に必要な構成を減らすことが可能である。
【0291】
具体的には、受信装置1100では、
図16、17および18に示した逐次復号を行う受信装置800、900および1000と比較して、第1の階層の変調シンボル列を再生するための構成要素が不要となる。すなわち、符号化部814、914および1014、インタリーブ部815、915および1015、マッピング部816、916および1016、並びに、乗算部817、917および1017が不要となる。
【0292】
また、受信信号を遅延させるための遅延部818、918および1018、並びに、受信信号から再生された第1の階層の変調シンボルの成分を除去する減算部819、919および1019が不要となる。
【0293】
よって、回路規模を削減することが可能である。また、受信装置1100は、受信装置800、900および1000と比較して演算量を低減することができ、消費電力を削減することができる。
【0294】
さらに、
図16、17および18に示した逐次復号を行う受信装置800、900および1000は、受信信号の第1の階層を復調して第1のデータ系列を取得し、取得された第1のデータ系列から第1の変調シンボル列を生成する。そして、その後に、受信装置800、900および1000は、受信信号の第2の階層の復調を開始して第2のデータ系列を取得している。
【0295】
一方、本実施の形態における並列復号を行う受信装置1100は、第1のデータ系列の取得と第2のデータ系列の取得とを同時に並行して実行することができるため、処理遅延を短縮することができる。
【0296】
また、受信装置は、受信信号のSNRを観測し、SNRが高い場合には並列復号を行い、SNRが低い場合には逐次復号を行うように復号処理を切り替えてもよい。
【0297】
その場合、例えば、
図16に示す受信装置800が、SNRに応じて逐次復号と並列復号とを切り替える制御部を備える。制御部は、RF部830またはデマッピング部821に含まれていてもよい。さらに、デマッピング部821が、第2のコンステレーションに基づくデマッピング処理に加え、
図19のデマッピング部1110の動作として説明した、変形重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理の動作を行う構成を備える。
【0298】
そして、デマッピング部821は、変換部820から出力された信号に対する第2のコンステレーションに基づくデマッピング処理と、RF部830から出力された信号に対する変形重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理とを切り替える。例えば、デマッピング部821は、制御部からの制御信号に応じて、これらのデマッピング処理を切り替える。
【0299】
なお、このような構成は、
図11に示す受信装置400と、
図16に示す受信装置800(変換部820およびデマッピング部821等)と、
図19に示す受信装置1100(デマッピング部1110等)との組み合わせによっても得られる。
【0300】
さらに別の構成として、例えば、
図17に示す受信装置900が、SNRに応じて逐次復号と並列復号とを切り替える制御部を備える。制御部は、RF部930またはデマッピング部921に含まれていてもよい。さらに、デマッピング部921が、第1のビット列と第2のコンステレーションとに基づくデマッピング処理に加え、
図19のデマッピング部1110の動作として説明した、変形重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理の動作を行う構成を備える。
【0301】
そして、デマッピング部921は、変換部920から出力された信号に対する第2のコンステレーションに基づくデマッピング処理と、RF部930から出力された信号に対する変形重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理とを切り替える。例えば、デマッピング部921は、制御部からの制御信号に応じて、これらのデマッピング処理を切り替える。
【0302】
なお、このような構成は、
図11に示す受信装置400と、
図17に示す受信装置900(変換部920およびデマッピング部921等)と、
図19に示す受信装置1100(デマッピング部1110等)との組み合わせによっても得られる。
【0303】
さらに別の構成として、例えば、
図18に示す受信装置1000が、SNRに応じて逐次復号と並列復号とを切り替える制御部を備える。制御部は、RF部1030またはデマッピング部1021に含まれていてもよい。さらに、デマッピング部1021が、第1のビット列と第2のコンステレーションとに基づくデマッピング処理に加え、
図19のデマッピング部1110の動作として説明した、変形重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理の動作を行う構成を備える。
【0304】
そして、デマッピング部1021は、減算部1019から出力された信号に対する第2のコンステレーションに基づくデマッピング処理と、RF部1030から出力された信号に対する変形重畳コンステレーションに基づくデマッピング処理とを切り替える。例えば、デマッピング部1021は、制御部からの制御信号に応じて、これらのデマッピング処理を切り替える。
【0305】
なお、このような構成は、
図11に示す受信装置400と、
図18に示す受信装置1000(デマッピング部1021等)と、
図19に示す受信装置1100(デマッピング部1110等)との組み合わせによっても得られる。
【0306】
このように、SNRが高い場合、受信装置800、900および1000は並列復号を行うことによって、演算量を低減し消費電力を削減することができる。また、SNRが高い場合、受信装置800、900および1000は並列復号を行うことによって、処理遅延を短縮することができる。一方、SNRが低い場合、受信装置800、900および1000は逐次復号を行うことによって、第2のデータ系列を正しく復号できる可能性が高くなる。
【0307】
図10に示した重畳符号化を用いた多重方式による伝送容量と、
図23に示した変形重畳符号化を用いた多重方式による伝送容量を比較すると、次の事項が見出される。
【0308】
すなわち、逐次復号(実線)による伝送容量の特性は、重畳符号化を用いた多重方式(
図10)と変形重畳符号化を用いた多重方式(
図23)とで同じである。一方、並列復号(破線)による伝送容量の特性は、重畳符号化を用いた多重方式(
図10)よりも変形重畳符号化を用いた多重方式(
図23)で改善されている。すなわち、変形重畳符号化を用いた多重方式は、逐次復号の場合と並列復号の場合とのいずれにおいても望ましい結果を提供する。
【0309】
以上の通り、本開示の一態様における受信装置は、第1の階層の第1のデータ系列と第2の階層の第2のデータ系列とを含む複数のデータ系列が重畳符号化によって多重された信号である多重信号を受信して、前記多重信号から前記複数のデータ系列を導出する受信装置であって、前記多重信号を受信する受信部と、前記多重信号が前記第2のデータ系列の第2の変調シンボル列を未確定の信号成分として含む状態で、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第1のデータ系列の第1のビット尤度列を生成する第1のデマッピング部と、前記多重信号が前記第1のデータ系列の第1の変調シンボル列を未確定の信号成分として含む状態で、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のデータ系列の第2のビット尤度列を生成する第2のデマッピング部と、前記第1のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、前記第1のデータ系列を導出する第1の復号部と、前記第2のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、前記第2のデータ系列を導出する第2の復号部とを備える。
【0310】
これにより、受信装置は、第1のデータ系列の導出等を待たずに、第2のデータ系列を導出することができる。したがって、受信装置は、処理遅延を抑制することができる。すなわち、受信装置は、重畳符号化を用いた多重方式に関して効率的な処理を行うことができる。
【0311】
例えば、前記受信部が受信する前記多重信号は、前記第1のデータ系列の第1のビット列をマッピングすることにより生成される前記第1の変調シンボル列と、前記第2のデータ系列の第2のビット列をマッピングすることにより生成される前記第2の変調シンボル列とが所定の振幅比率で重畳された信号であって、前記第2の変調シンボル列における各変調シンボルの実数部および虚数部の極性が前記第1の変調シンボル列に応じて制御された信号であってもよい。
【0312】
これにより、受信装置は、第1の変調シンボル列と、第1の変調シンボル列に応じて調整された第2の変調シンボル列との多重信号を受信することができる。したがって、受信装置は、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが適切に多重された多重信号から、第1のデータ系列と第2のデータ系列とを適切に導出することができる。
【0313】
また、例えば、前記受信部が受信する前記多重信号は、前記第1の変調シンボル列における第1の変調シンボルと、前記第2の変調シンボル列における第2の変調シンボルとが重畳された信号であって、前記第1の変調シンボルの実数部が所定の実数部条件を満たす場合に前記第2の変調シンボルの実数部の極性が反転され、前記第1の変調シンボルの虚数部が所定の虚数部条件を満たす場合に前記第2の変調シンボルの虚数部の極性が反転された信号であってもよい。
【0314】
これにより、受信装置は、第1の変調シンボルと、第1の変調シンボルに応じて極性が反転された第2の変調シンボルとが重畳された信号を多重信号として受信することができる。第2の変調シンボルの極性の反転によって、第2のデータ系列の同じビット群に対応付けられる複数の信号点が近づけられる。したがって、受信装置は、第1の変調シンボル列を含む多重信号から、第2の変調シンボル列を適切に生成することができる。
【0315】
また、例えば、前記第2のデマッピング部は、前記第1のビット列のマッピングに用いられる第1のコンステレーションと、前記第2のビット列のマッピングに用いられる第2のコンステレーションとが組み合わされたコンステレーションであって、前記第2の変調シンボルの実数部の極性の反転と、前記第2の変調シンボルの虚数部の極性の反転とが反映されたコンステレーションである重畳コンステレーションに基づいて、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のビット尤度列を生成してもよい。
【0316】
これにより、受信装置は、同じビット群に対応付けられた複数の信号点が近づけられている重畳コンステレーションに基づいて、多重信号から第2の変調シンボル列を適切に生成することができる。
【0317】
また、例えば、前記受信装置は、さらに、前記第1の復号部で導出された前記第1のデータ系列に対して誤り制御符号化を行うことにより、前記第1のデータ系列の第1のビット列を生成する符号化部と、前記第1のビット列をマッピングすることにより、前記第1の変調シンボル列を生成するマッピング部と、前記受信部によって受信された前記多重信号を所定の時間遅延させる遅延部と、前記遅延部で遅延させられた前記多重信号から前記第1の変調シンボル列を減算する減算部とを備え、前記第2のデマッピング部は、前記多重信号の信号対雑音比が所定の基準を満たす場合、前記多重信号が前記第1の変調シンボル列を未確定の信号成分として含む状態で、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のビット尤度列を生成し、前記多重信号の信号対雑音比が所定の基準を満たさない場合、前記第1の変調シンボル列が減算された前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のビット尤度列を生成してもよい。
【0318】
これにより、信号対雑音比に応じて、第1の変調シンボル列が取り除かれていない多重信号から第2の変調シンボル列を生成する動作と、第1の変調シンボル列が取り除かれている多重信号から第2の変調シンボル列を生成する動作とが切り替えられる。よって、受信装置は、伝送容量の極端な低下等を抑制することができる。
【0319】
また、本開示の一態様における受信方法は、第1の階層の第1のデータ系列と第2の階層の第2のデータ系列とを含む複数のデータ系列が重畳符号化によって多重された信号である多重信号を受信して、前記多重信号から前記複数のデータ系列を導出する受信方法であって、前記多重信号を受信し、前記多重信号が前記第2のデータ系列の第2の変調シンボル列を未確定の信号成分として含む状態で、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第1のデータ系列の第1のビット尤度列を生成し、前記多重信号が前記第1のデータ系列の第1の変調シンボル列を未確定の信号成分として含む状態で、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のデータ系列の第2のビット尤度列を生成し、前記第1のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、前記第1のデータ系列を導出し、前記第2のビット尤度列に対して誤り制御復号を行うことにより、前記第2のデータ系列を導出する。
【0320】
これにより、この受信方法を用いる受信装置等は、第1のデータ系列の導出等を待たずに、第2のデータ系列を導出することができる。したがって、この受信方法を用いる受信装置等は、処理遅延を抑制することができる。すなわち、この受信方法を用いる受信装置等は、重畳符号化を用いた多重方式に関して効率的な処理を行うことができる。
【0321】
例えば、前記多重信号は、前記第1のデータ系列の第1のビット列をマッピングすることにより生成される前記第1の変調シンボル列と、前記第2のデータ系列の第2のビット列をマッピングすることにより生成される前記第2の変調シンボル列とが所定の振幅比率で重畳された信号であって、前記第2の変調シンボル列における各変調シンボルの実数部および虚数部の極性が前記第1の変調シンボル列に応じて制御された信号であってもよい。
【0322】
これにより、この受信方法を用いる受信装置等は、第1の変調シンボル列と、第1の変調シンボル列に応じて調整された第2の変調シンボル列との多重信号を受信することができる。したがって、この受信方法を用いる受信装置等は、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが適切に多重された多重信号から、第1のデータ系列と第2のデータ系列とを適切に導出することができる。
【0323】
また、例えば、前記多重信号は、前記第1の変調シンボル列における第1の変調シンボルと、前記第2の変調シンボル列における第2の変調シンボルとが重畳された信号であって、前記第1の変調シンボルの実数部が所定の実数部条件を満たす場合に前記第2の変調シンボルの実数部の極性が反転され、前記第1の変調シンボルの虚数部が所定の虚数部条件を満たす場合に前記第2の変調シンボルの虚数部の極性が反転された信号であってもよい。
【0324】
これにより、この受信方法を用いる受信装置等は、第1の変調シンボルと、第1の変調シンボルに応じて極性が反転された第2の変調シンボルとが重畳された信号を多重信号として受信することができる。第2の変調シンボルの極性の反転によって、同じビット群に対応付けられた複数の信号点が近づけられる。したがって、この受信方法を用いる受信装置等は、第1の変調シンボル列を含む多重信号から、第2の変調シンボル列を適切に生成することができる。
【0325】
また、例えば、前記第2のビット尤度列の生成では、前記第1のビット列のマッピングに用いられる第1のコンステレーションと、前記第2のビット列のマッピングに用いられる第2のコンステレーションとが組み合わされたコンステレーションであって、前記第2の変調シンボルの実数部の極性の反転と、前記第2の変調シンボルの虚数部の極性の反転とが反映されたコンステレーションである重畳コンステレーションに基づいて、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のビット尤度列を生成してもよい。
【0326】
これにより、この受信方法を用いる受信装置等は、同じビット群に対応付けられた複数の信号点が近づけられている重畳コンステレーションに基づいて、多重信号から第2の変調シンボル列を適切に生成することができる。
【0327】
また、例えば、前記受信方法は、さらに、導出された前記第1のデータ系列に対して誤り制御符号化を行うことにより、前記第1のデータ系列の第1のビット列を生成し、前記第1のビット列をマッピングすることにより、前記第1の変調シンボル列を生成し、受信された前記多重信号を所定の時間遅延させ、遅延させられた前記多重信号から前記第1の変調シンボル列を減算し、前記第2のビット尤度列の生成では、前記多重信号の信号対雑音比が所定の基準を満たす場合、前記多重信号が前記第1の変調シンボル列を未確定の信号成分として含む状態で、前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のビット尤度列を生成し、前記多重信号の信号対雑音比が所定の基準を満たさない場合、前記第1の変調シンボル列が減算された前記多重信号をデマッピングすることにより、前記第2のビット尤度列を生成してもよい。
【0328】
これにより、信号対雑音比に応じて、第1の変調シンボル列が取り除かれていない多重信号から第2の変調シンボル列を生成する動作と、第1の変調シンボル列が取り除かれている多重信号から第2の変調シンボル列を生成する動作とが切り替えられる。よって、この受信方法を用いる受信装置等は、伝送容量の極端な低下等を抑制することができる。
【0329】
なお、上述した各実施の形態の説明では、説明を簡単にするために2つのデータ系列を2つの階層に多重して伝送する場合を例に説明したが、3以上のデータ系列を多重して伝送する場合も実施の形態に倣って容易に拡張できることは明らかである。
【0330】
また、
図1および13~15は、送信装置がアンテナを備えず、送信装置に接続された外部のアンテナから無線周波数帯の信号が送信される例を示している。しかし、送信装置がアンテナを備え、送信装置のアンテナから無線周波数帯の信号が送信されてもよい。また、
図2、7および16~19では、受信装置がアンテナを備えず、受信装置に接続された外部のアンテナから無線周波数帯の信号が送信される例を示している。しかし、受信装置がアンテナを備え、受信装置のアンテナで無線周波数帯の信号が受信されてもよい。
【0331】
また、無線周波数帯の信号の送信または受信に用いられるアンテナは、複数のアンテナで構成されるアンテナユニットであってもよい。
【0332】
また、
図1および13~15には図示されていないが、送信装置は、加算部で生成された重畳信号を所定のフレーム構成に従って配置することでフレームを生成して、当該フレームをRF部へと出力するフレーム構成部を備えていてもよい。
【0333】
ここで、フレーム構成部で生成されるフレームの構成は、固定であってもよいし、図示されていない制御部から送信される制御信号に応じて変更されてもよい。フレーム構成部は、第1のデータ系列と第2のデータ系列とが多重された重畳変調シンボル列を所定の規則に従ってフレームに配置する。
【0334】
また、フレーム構成部で生成されるフレームは、データシンボル以外に、パイロットシンボル、制御情報シンボルおよびプリアンブル等を含んでいてもよい。なお、パイロットシンボル、制御情報シンボルおよびプリアンブルのそれぞれは、異なる名称で呼ばれる場合もある。
【0335】
例えば、パイロットシンボルは、受信装置にとって既知のビット列をBPSKおよびQPSK等のPSK変調に基づくマッピング処理を行って生成されたシンボルでもよい。また、パイロットシンボルは、受信装置にとって既知の振幅および位相(または既知の複素値)を有するシンボルでもよい。また、パイロットシンボルは、送信装置によって送信された振幅および位相(または複素値)を受信装置が推定することができるシンボルでもよい。
【0336】
そして、受信装置は、パイロットシンボルを用いて、受信した信号に対する周波数同期、時間同期およびチャネル推定等を行う。チャネル推定は、CSI(Channel State Information)の推定とも呼ばれる。
【0337】
制御情報シンボルは、受信信号を復調して所望のデータ系列を取得するための情報として受信装置に通知すべき情報の伝送に用いられるシンボルである。
【0338】
例えば、送信装置は、制御情報に対応する制御情報シンボルを送信する。制御情報は、各データ系列に用いられているマッピング(変調)方式、誤り制御符号化方式、誤り制御符号化方式の符号化率および符号長、並びに、当該データ系列の変調シンボルがフレームにおいて配置される位置等を示してもよい。受信装置は、制御情報シンボルを復調して、制御情報を取得する。そして、受信装置は、取得された制御情報に基づいて、データシンボルを復調し、データ系列を取得する。
【0339】
また、制御情報は、アプリケーションの動作を制御する、上位レイヤーでの設定情報等を含んでいてもよい。
【0340】
プリアンブルは、フレームの先頭に付加される信号である。受信装置は、プリアンブルを含む信号を受信し、プリアンブルに基づいて、例えば、フレームの検出、および、フレーム同期の処理等を行ってもよい。また、プリアンブルが、パイロットシンボルおよび制御情報シンボルを含んでいてもよい。また、フレームは、プリアンブルだけでなく、フレームの後端に付加される信号であるポストアンブルを含んでいてもよい。
【0341】
符号化部は、誤り制御符号化方式として、例えばLDPC(Low Density Parity Check)符号またはターボ符号等を用いる。また、符号化部は、それ以外の符号化方式を用いてもよい。
【0342】
図1および13~15の送信装置は、インタリーブ部を備えているが、上述したように、送信装置はインタリーブ部を備えていなくてもよい。その場合、送信装置は、符号化部で生成されたビット列を直接マッピング部に入力してもよいし、インタリーブとは異なる処理を施してからマッピング部に入力してもよい。また、送信装置がインタリーブ部を備えない場合、
図2、7および16~19の受信装置は、デインタリーブ部を備えていなくてもよい。
【0343】
また、
図2、7および16~19の受信装置のデインタリーブ部は、送信側で行われた並び替え規則とは逆の並び替え規則に基づく並び替えを行うが、このような並び替えとは異なる動作を行ってもよい。例えば、デインタリーブ部は、デマッピング部で生成されたビット尤度列の複数のビット尤度を、復号部で実施される復号処理において要求されるビット順で復号部に入力してもよい。
【0344】
また、上記において、重畳符号化および変形重畳符号化が、無線伝送に適用されているが、無線伝送に限らず、有線伝送または光伝送等に適用されてもよく、記録媒体への記録に適用されてもよい。また、伝送に用いられる周波数帯は、無線周波数帯に限らず、ベースバンドであってもよい。
【0345】
また、本開示において使用されている「複数」は「2以上」と同義である。また、第1、第2および第3などの序数は、表現上、適宜、取り除かれてもよいし、付け替えられてもよいし、新たに付けられてもよい。
【0346】
また、本開示における装置および方法等は、各実施の形態に限定されず、種々変更して実施され得る。例えば、各実施の形態では、本開示の技術が通信装置(送信装置または受信装置)として実現されているが、本開示の技術は、これに限られない。本開示の技術は、この通信装置によって行われる通信方法(送信方法または受信方法)を実行するためのソフトウェアとして実現されてもよい。
【0347】
また、送信装置または受信装置における2以上の構成要素が1つの構成要素に統合されてもよいし、1つの構成要素が2以上の構成要素に分けられてもよい。また、送信装置と受信装置とが1つの送受信装置を構成してもよい。この場合、同種の複数の構成要素が、1つの構成要素に統合されてもよい。例えば、送信アンテナおよび受信アンテナは、1つのアンテナにより構成されていてもよい。
【0348】
また、例えば、特定の構成要素が実行する処理を別の構成要素が実行してもよい。また、処理を実行する順番が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0349】
また、例えば、上記通信方法を実行するためのプログラムが、予めROM(Read Only Memory)に格納され、そのプログラムがCPU(Central Processor Unit)によって実行されてもよい。
【0350】
また、上記通信方法を実行するためのプログラムが、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されてもよい。そして、記憶媒体に格納されたプログラムが、コンピュータのRAM(Random Access Memory)に記録され、コンピュータが、そのプログラムにしたがって通信方法を実行してもよい。
【0351】
そして、上記の複数の実施の形態などにおける各構成要素は、典型的な集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。各構成要素は、個別に1チップ化されてもよいし、各実施の形態の全ての構成要素または一部の構成要素が1チップ化されてもよい。ここでは、LSIを例示しているが、このような集積回路は、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSIまたはウルトラLSIと呼称される場合もある。
【0352】
集積回路化の手法は、LSIに限られない。各構成要素は、専用回路または汎用プロセッサで実現されてもよい。LSI製造後に、プログラミングが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいは、LSI内部の回路セルの接続または設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが利用されても良い。
【0353】
さらに、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて各実施の形態で説明した装置またはその一部の構成の集積化が行われてもよい。例えば、バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
【0354】
本開示は、複数のアンテナからそれぞれ異なる変調信号(多重信号)を送信する無線システムにも広く適用され得る。また、本開示は、複数の送信箇所を持つ有線通信システムにおけるMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送にも適用され得る。このような有線通信システムの例として、PLC(Power Line Communication)システム、光通信システム、および、DSL(Digital Subscriber Line:デジタル加入者線)システムがある。
【産業上の利用可能性】
【0355】
本開示は、無線通信システムおよび放送システム等に適用可能である。また、本開示は、重畳符号化を用いて複数のデータ系列を多重するシステムに広く適用され得る。
【0356】
また、本開示は、例えば、PLC(Power Line Communication)システム、光通信システムおよびDSL(Digital Subscriber Line:デジタル加入者線)システムのような有線通信システム等にも適用され得る。また、本開示は、光ディスクおよび磁気ディスク等の記録媒体への記録を行うストレージシステム等にも適用され得る。
【符号の説明】
【0357】
100、500、600、700 送信装置
111、121、214、414、511、521、611、621、711、721、814、914、1014 符号化部
112、122、215、415、512、522、612、622、712、722、815、915、1015 インタリーブ部
113、123、216、416、513、523、613、623、713、723、816、916、1016 マッピング部
114、124、217、417、514、524、614、624、714、724、817、917、1017 乗算部
130、530、630、730 加算部
140、230、330、430、540、640、740、830、930、1030、1130 RF部(Radio Frequency部)
200、300、400、800、900、1000、1100 受信装置
211、221、310、411、421、811、821、911、921、1011、1021、1110 デマッピング部
212、222、312、322、412、422、812、822、912、922、1012、1022、1112、1122 デインタリーブ部
213、223、313、323、413、423、813、823、913、923、1013、1023、1113、1123 復号部
218、418、818、918、1018 遅延部
219、419、819、919、1019 減算部
525、625、820、920 変換部