(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017729
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】消化槽及び消化槽堆積物の除去方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20060101AFI20220119BHJP
B01F 25/50 20220101ALI20220119BHJP
B01F 23/50 20220101ALI20220119BHJP
【FI】
C02F3/28 A
B01F5/10
B01F3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120441
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】馬場 圭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 昭博
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】梶井 健司
(72)【発明者】
【氏名】山口 以昌
【テーマコード(参考)】
4D040
4G035
【Fターム(参考)】
4D040AA53
4D040AA55
4G035AB46
4G035AC29
4G035AE13
4G035AE15
(57)【要約】
【課題】消化槽の底面に堆積する堆積物を、効率よく消化槽外へと除去することができる消化槽を提供すること。
【解決手段】汚泥4が投入される鋼板製の消化槽本体1と、前記消化槽本体1内部に設けられた攪拌装置5と、前記消化槽本体の底部側壁の内側に設けられた除去ノズルaと、前記除去ノズルaから汚泥4を吐出するために、消化槽本体1から抜き出された汚泥4を前記除去ノズルaに供給するノズル用配管12と、前記消化槽本体1から汚泥4を引き抜き、引き抜かれた汚泥4を汚泥移送管9に送る引抜配管8と、を備え、前記除去ノズルaから吐出された汚泥4によって消化槽本体1内に汚泥4の旋回流を形成して消化槽本体の底部に堆積した堆積物10を流動化し、流動化した前記堆積物10を前記除去ノズルaによって引き抜いて排出するようにしたことを特徴とする、消化槽。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥が投入される鋼板製の消化槽本体と、
前記消化槽本体の内部に設けられた攪拌装置と、
前記消化槽本体の底部側壁の内側に設けられた除去ノズルと、
前記除去ノズルから汚泥を吐出するために、消化槽本体から抜き出された汚泥を前記除去ノズルに供給するノズル用配管と、
前記消化槽本体から汚泥を引き抜き、引き抜かれた汚泥を汚泥移送配管に送る引抜配管と、を備え、
前記除去ノズルから吐出された汚泥によって消化槽本体内に汚泥の旋回流を形成して消化槽本体の底部に堆積した堆積物を流動化し、流動化した前記堆積物を前記除去ノズルによって引き抜いて排出するようにしたことを特徴とする、消化槽。
【請求項2】
前記消化槽本体から汚泥を引き抜き、引き抜いた汚泥を熱交換器で加温して消化槽本体に戻す汚泥循環配管を備えている、請求項1に記載の消化槽。
【請求項3】
前記引抜配管は消化槽本体の底面中央部に汚泥を引き抜くための開口を有し、引き抜いた汚泥を前記消化槽本体の外部に排出する、請求項1又は2に記載の消化槽。
【請求項4】
前記除去ノズルは、消化槽本体の底部側壁部に沿って間隔を置いて複数個設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の消化槽。
【請求項5】
前記除去ノズルは消化槽本体の側壁に沿って水平方向に汚泥を吐出する吐出口を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の消化槽。
【請求項6】
前記汚泥循環配管はノズル用分岐管を有しており、前記ノズル用分岐管はノズル用配管に連通しており、前記各除去ノズルは前記ノズル用配管に連通している、請求項1~5のいずれか1項に記載の消化槽。
【請求項7】
前記ノズル用配管は前記引抜配管に連通している、請求項6に記載の消化槽。
【請求項8】
鋼板製の消化槽本体と、前記消化槽本体に設けられた攪拌機と、を備えてなる消化槽堆積物の除去方法であって、
前記消化槽本体内の汚泥を引き抜いて、前記消化槽本体の底部側壁の内側に配設した除去ノズルから吐出して、消化槽本体の底部に汚泥の旋回流を形成することによって消化槽本体の底部に堆積した堆積物を流動化する旋回流形成工程と、
前記流動化した前記堆積物を前記除去ノズルによって引き抜いて排出する堆積物引抜工程と、
を有することを特徴とする、消化槽堆積物の除去方法。
【請求項9】
前記除去ノズルを複数個設けて、前記旋回流形成工程において、複数の除去ノズルのうちの任意の一つまたは任意の複数の除去ノズルから前記汚泥を吐出し、前記堆積物引抜工程において、前記複数の除去ノズルのうちの任意の一つまたは任意の複数の除去ノズルによって堆積物を引き抜く、請求項8に記載の消化槽堆積物の除去方法。
【請求項10】
前記複数の除去ノズルの1つによって、前記旋回流形成工程および前記堆積物引抜工程を実施し、これを前記複数の除去ノズルについて順に行なう、請求項8に記載の消化槽堆積物の除去方法。
【請求項11】
前記複数の除去ノズルの全てを用いて前記旋回流形成工程を実施したのち、前記複数の除去ノズルのうちの1つによって前記堆積物引抜工程を実施する、請求項8に記載の消化槽堆積物の除去方法。
【請求項12】
前記複数の除去ノズルの全てを用いて前記旋回流形成工程を実施したのち、前記複数の除去ノズルの全てを用いて前記堆積物引抜工程を実施する、請求項8に記載の消化槽堆積物の除去方法。
【請求項13】
前記旋回流形成工程において、汚泥を加熱して除去ノズルから吐出させる、請求項8~12のいずれか1項に記載の消化槽堆積物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化槽及び消化槽堆積物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥のような有機物を含有する廃水の処理方法としては、汚泥の安定化及びメタンガスの回収を目的として、嫌気性消化法が一般的に用いられる。嫌気性消化法としては、有機物を含有する廃水を消化槽(メタン発酵槽)に投入し、嫌気性下でメタン菌により発酵処理して、有機物をメタンガスに転換するメタン発酵法が汎用されている。
【0003】
消化槽を長年使用すると、投入原料中に含まれる砂等の比重の大きな物質が消化槽の底部側壁部に堆積し、消化槽の有効容積が減少するため、十分な発酵日数を確保できず、処理不良を引き起こす可能性がある。そのため、RC構造では消化槽の形状を底側部に傾斜が付く円筒形、卵形、亀甲形とし、前述の問題発生を抑制した上で定期的(例えば10年毎、20年毎)にバキュームカーで浚渫することによって堆積物を除去している。
【0004】
一方、鋼板製の消化槽本体を備えた消化槽の場合、消化槽本体の製作の困難性とコストの問題により通常底部がフラットであるため、流動性の低い底部側壁部に堆積物が多く堆積する。
そこで、近年、消化槽の撹拌機を逆回転させ、底部側壁部の堆積物を流動させて、汚泥引抜配管で排出する方法(特許文献1参照)、及び、底部に下部コーン構造を設けて堆積物を集約し、水平引抜管で排出する方法(非特許文献1)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】第54回下水道研究発表会講演集1051頁~1053頁 2017年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、消化槽の底面に堆積する堆積物を、効率よく消化槽外へと除去して、消化槽底面への堆積物の堆積を防止することができる消化槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討した結果、消化槽本体の底部側壁の内側に汚泥を吐出する除去ノズルを設け、消化槽本体から引き抜いた汚泥をこの除去ノズルから吐出させて消化槽本体の底部側壁に沿って汚泥の旋回流を形成することによって堆積物を流動化させたのち、この流動化した堆積物を前記除去ノズルから引き抜くことにより堆積物を容易に除去することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、下記(1)に記載するとおりの消化槽に係るものである。
(1)汚泥が投入される鋼板製の消化槽本体と、
前記消化槽本体の内部に設けられた攪拌装置と、
前記消化槽本体の底部側壁の内側に設けられた除去ノズルと、
前記除去ノズルから汚泥を吐出するために、消化槽本体から抜き出された汚泥を前記除去ノズルに供給するノズル用配管と、
前記消化槽本体から汚泥を引き抜き、引き抜かれた汚泥を汚泥移送配管に送る引抜配管 と、を備え、
前記除去ノズルから吐出された汚泥によって消化槽本体内に汚泥の旋回流を形成して消化槽本体の底部に堆積した堆積物を流動化し、流動化した前記堆積物を前記除去ノズルによって引き抜いて排出するようにしたことを特徴とする、消化槽。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消化槽の底面に堆積する堆積物を、効率よく消化槽外へと除去することができ、これにより、消化槽底面への堆積物の堆積を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の消化槽の全体の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の消化槽における堆積物の堆積状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の消化槽における通常運転工程における汚泥の流れを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の消化槽における旋回流形成工程における汚泥の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の消化槽における堆積物引抜工程における汚泥の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の記載に限定されない。
【0013】
本発明は下記(1)に記載するとおりの消化槽に係るものであるが下記(2)~(13)を実施形態として含む。
(1)汚泥が投入される鋼板製の消化槽本体と、
前記消化槽本体の内部に設けられた攪拌装置と、
前記消化槽本体の底部側壁の内側に設けられた除去ノズルと、
前記除去ノズルから汚泥を吐出するために、消化槽本体から抜き出された汚泥を前記除去ノズルに供給するノズル用配管と、
前記消化槽本体から汚泥を引き抜き、引き抜かれた汚泥を汚泥移送配管に送る引抜配管と、を備え、
前記除去ノズルから吐出された汚泥によって消化槽本体内に汚泥の旋回流を形成して消化槽本体の底部に堆積した堆積物を流動化し、流動化した前記堆積物を前記除去ノズルによって引き抜いて排出するようにしたことを特徴とする、消化槽。
(2)前記消化槽本体から汚泥を引き抜き、引き抜いた汚泥を熱交換器で加温して消化槽本体に戻す汚泥循環配管を備えている、上記(1)に記載の消化槽。
(3)前記引抜配管は消化槽本体の底面中央部に汚泥を引き抜くための開口を有し、引き抜いた汚泥を前記消化槽本体の外部に排出する、上記(1)又は(2)に記載の消化槽。
(4)前記除去ノズルは、消化槽本体の底部側壁部に沿って間隔を置いて複数個設けられている、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の消化槽。
(5)前記除去ノズルは消化槽本体の側壁に沿って水平方向に汚泥を吐出する吐出口を有する、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の消化槽。
(6)前記汚泥循環配管はノズル用分岐管を有しており、前記ノズル用分岐管はノズル用配管に連通しており、前記各除去ノズルは前記ノズル用配管に連通している、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の消化槽。
(7)前記ノズル用配管は前記引抜配管に連通している、上記(6)に記載の消化槽。
(8)鋼板製の消化槽本体と、前記消化槽本体に設けられた攪拌機と、を備えてなる消化槽堆積物の除去方法であって、
前記消化槽本体内の汚泥を引き抜いて、前記消化槽本体の底部側壁の内側に配設した除去ノズルから吐出して、消化槽本体の底部に汚泥の旋回流を形成することによって消化槽本体の底部に堆積した堆積物を流動化する旋回流形成工程と、
前記流動化した前記堆積物を前記除去ノズルによって引き抜いて排出する堆積物引抜工程と、
を有することを特徴とする、消化槽堆積物の除去方法。
(9)前記除去ノズルを複数個設けて、前記旋回流形成工程において、複数の除去ノズルのうちの任意の一つまたは任意の複数の除去ノズルから前記汚泥を吐出し、前記堆積物引抜工程において、前記複数の除去ノズルのうちの任意の一つまたは任意の複数の除去ノズルによって堆積物を引き抜く、上記(8)に記載の消化槽堆積物の除去方法。
(10)前記複数の除去ノズルの1つによって、前記旋回流形成工程および前記堆積物引抜工程を実施し、これを前記複数の除去ノズルについて順に行なう、上記(8)に記載の消化槽堆積物の除去方法。
(11)前記複数の除去ノズルの全てを用いて前記旋回流形成工程を実施したのち、前記複数の除去ノズルのうちの1つによって前記堆積物引抜工程を実施する、上記(8)に記載の消化槽堆積物の除去方法。
(12)前記複数の除去ノズルの全てを用いて前記旋回流形成工程を実施したのち、前記複数の除去ノズルの全てを用いて前記堆積物引抜工程を実施する、上記(8)に記載の消化槽堆積物の除去方法。
(13)前記旋回流形成工程において、汚泥を加熱して除去ノズルから吐出させる、上記(8)~(12)のいずれか1項に記載の消化槽堆積物の除去方法。
【0014】
消化槽の全体の構成を
図1に基づいて説明する。
消化槽20の消化槽本体1には、下水処理場で発生する汚泥又は食品廃棄物、畜産由来の糞尿等のバイオマスを含む被処理汚泥4が投入される。
消化槽本体1内に投入された被処理汚泥4は消化槽本体1内で撹拌装置5によって撹拌される。消化槽本体1内の被処理汚泥4は消化槽本体1の側壁2の下部から汚泥循環配管6を通って汚泥循環ポンプ13により取り出され、熱交換器15により、発酵に適した温度に加温される。加温された被処理汚泥4は汚泥循環配管7を経て消化槽本体1に返送される。撹拌装置5によって被処理汚泥4が撹拌され、消化槽本体1内の被処理汚泥4の温度が均一に保たれている。
【0015】
このような消化槽本体1の缶体高さは10m以上30m以下で、直径(水平方向の断面が多角形の場合は、内接円の直径)は10m以上30m以下であることが一般的である。
消化槽は、低温発酵においては温度20℃付近で滞留時間30~60日、中温発酵においては温度37℃付近で滞留時間20~30日、高温発酵においては温度55℃付近で滞留時間7~20日程度で運転される。
【0016】
消化槽20の運転を継続すると、
図2に示すように消化槽本体1の底面3に堆積物10が堆積する。堆積物10がある一定量以上に堆積すると、堆積物10を除去する必要がある。
本発明における消化槽20は、従来の消化槽の構造において、消化槽本体1の底部3に、消化槽本体1の側壁2に沿って旋回流を起こす除去ノズルを設けたものである。そして、堆積物10を除去する必要が生じた場合には、消化槽本体1から抜き出された被処理汚泥4をこの除去ノズルから消化槽本体1の側壁に沿って吐出することによって消化槽本体1の底部側壁部に堆積した堆積物を流動させ、その後、この流動状態にある堆積物10を除去ノズルで引き抜き排出する。
【0017】
消化槽における被処理汚泥処理方法及び消化槽堆積物除去方法を、
図3~
図5に基づいて、(1)通常運転工程、(2)旋回流形成工程、及び、(3)堆積物引抜工程の各工程に分けて説明する。
上記の各工程を行うには、配管に設けた自動弁または手動弁の開閉操作によって汚泥の流路を適宜切り替える必要があるが、以下では弁操作についての説明は省略する。また、図面においても弁については表示していない。
なお、除去ノズルより堆積物10を引き抜く際には汚泥4も同時に引き抜かれるが、簡便のため「除去ノズルより堆積物を引き抜く」という表現とした。
【0018】
(1)通常運転工程
通常運転工程を
図3に基づいて説明する。
図3Aは消化槽の断面模式図であり、通常運転中の被処理汚泥4の流れを示す。
図3Bは消化槽本体1の底部の模式図であり、通常運転中の被処理汚泥4の流れを示す。
鋼製の消化槽本体1は、底面3が水平な平面であり、中央部に撹拌装置5としてモータに接続された2段のインペラ翼が設けられている。2段のインペラ翼の替わりに、撹拌装置5としてスクリュー翼を設けてもよく、インペラ翼を1段又は3段以上の多段としてもよい。
撹拌装置5は、通常、連続して運転されており、通常運転及び逆回転運転がタイマー等によって、連続して定期的に行われる。
【0019】
図3Aに示される被処理汚泥4の流れる方向は、消化槽本体1の中央部では、撹拌装置5に沿って底面3に向かう下降流である。この下降流は、底面3に当たって側壁2の方向に向きを変え、さらに側壁2に当たって水面に向かう上昇流となる。そして、上昇した被処理汚泥4は撹拌装置5によって再び下降流となる。一方で、発生したバイオガスは、消化槽上部に設けられるガス取り出し口(図示せず)から、外部に設置されるガスホルダーへと取り出される。
【0020】
通常運転時には
図3Aに示すように、汚泥循環ポンプ13を駆動して消化槽本体1内の被処理汚泥4を汚泥循環配管6から抜き出して、熱交換器15で加温し、加温された被処理汚泥4を汚泥循環配管7によって消化槽本体1内に戻す。
一方、適宜、汚泥引抜ポンプ14を駆動して消化槽本体1の底面から汚泥を引抜配管8、汚泥移送配管9を介して引き抜いて汚泥脱水設備等に送る。また、汚泥移送配管9に設けた汚泥濃度計16で汚泥濃度を測定・記録する。これによって堆積物10の状態を確認することができる。また、汚泥濃度について閾値を設定しておき、異常が発生した場合には警報を発令できるようにする。
【0021】
(2)旋回流形成工程
旋回流形成工程を
図4に基づいて説明する。
図4Aは消化槽の断面模式図であり、
図4Bは消化槽本体1の底部の配管の配置及び汚泥4の流れを示す図である。
【0022】
通常運転を継続すると、消化槽1内の被処理汚泥4に含有されている土壌、砂若しくは金属片のような難分解性の固形物、又は髪の毛又はプラスチック片のような発酵不適物塊が徐々に堆積する。鋼板製の消化槽本体1のように、底面3が水平な面である場合、堆積物10は、
図2に示されるように、消化槽本体1の側壁2に近い程高く、中央に近づくほど低く堆積する。引抜配管8から汚泥を引き抜くと引抜配管8の周辺の堆積物10は、引抜配管8を介して除去されるが、消化槽本体1の側壁2近傍のその他の大部分の堆積物10は除去されずに、そのまま消化槽本体1の底面3に堆積した状態である。
【0023】
本発明は、消化槽本体1の底部に、消化槽本体1の側壁に沿って旋回流を形成し、併せて堆積物の引き抜きも担う除去ノズルを設けたことを特徴とする。
図4に基づいて上記除去ノズルの作用について説明する。
図4Aは旋回流を形成した時の被処理汚泥4の流れを示す図であり、
図4Bは旋回流形成時の消化槽本体1の底部の被処理汚泥4の流れを示す図である。
【0024】
旋回流形成工程においては
図4A、Bに示すように消化槽本体の底部側壁部に除去ノズルa(a1,a2、a3、a4)を設置する。そして、この除去ノズルaから汚泥4を吐出することによって、消化槽本体1の底部側壁に沿って汚泥4の旋回流Fを形成する。
この汚泥4の旋回流によって堆積物10は流動化する。
【0025】
除去ノズルaから消化槽本体1内に汚泥4を吐出させる方法について以下説明する。
まず、汚泥引抜ポンプ14の駆動を停止するとともに、汚泥循環ポンプ13によって消化槽本体1から引き抜かれた汚泥4の熱交換器15への流路を閉とし、ノズル用分岐管11への流路を開とする。ノズル用分岐管11はノズル用配管12に接続されており、ノズル用配管12は各除去ノズルa1、a2、a3、a4に接続されている。
汚泥循環ポンプ13によって消化槽本体1の底部から引き抜きかれた汚泥4はノズル用分岐管11及びノズル用配管12を介して除去ノズルa(a1、a2、a3、a4)から吐出される。除去ノズルaから吐出された汚泥4は旋回流を形成して堆積物10を解砕して堆積物10を流動化する。
【0026】
そして、汚泥4を、消化槽本体1→汚泥循環配管6→汚泥循環ポンプ13→ノズル用分岐管11→ノズル用配管12→除去ノズルa→消化槽本体1の循環経路で循環させるという操作を所定時間行って堆積物10が十分に流動化した後、次の堆積物引抜工程に進む。
【0027】
容積が3,000~6,000m
3の消化槽を想定した場合、設計除去ノズルルの口径は閉塞防止の観点から80~100Aで、流速は0.1m/sec以上となるよう口径を選定することが好ましい。
除去ノズルの設置高さは、消化槽底面よりCOP+500mm以下とすることが好ましい。
除去ノズルの設置数は、堆積物10の性状に応じて適宜設定することができるが、
図4Bに示した実施形態では除去ノズル設置数を4としている。また、除去ノズルの先端は消化槽本体1の底部側壁部に沿って旋回流を起こすため、90°エルボ吐出口を設けている。汚泥4は一つの除去ノズルから吐出させてもよいし、4つの除去ノズルから同時に吐出させてもよい。
【0028】
汚泥4の流路を切り替えるために自動弁を用いる場合、弁は堆積しやすい汚泥4を対象とするため、異物閉塞や噛込み防止のため、偏芯構造弁、Vポート弁やゲート弁を採用することが好ましい。また、自動弁不具合時を考慮し、消化槽本体1側に手動開閉弁を設けることが好ましい。
【0029】
汚泥4の旋回流による堆積物の流動化を促進するために消化槽本体1から抜き出した汚泥4を加熱してから除去ノズルに供給してもよい。
【0030】
(3)堆積物引抜工程
堆積物引抜工程を
図5に基づいて説明する。
図5Aは堆積物引抜工程における消化槽の断面模式図であり、
図5Bは消化槽本体1の底部の配管の配置及び堆積物10の流れを示す図である。
前記の旋回流形成工程において堆積物10が流動化した後、
図5A、Bに示すように、汚泥循環ポンプ13を停止するとともに汚泥のノズル用分岐管11への流路を閉とする。
次いで、汚泥引抜ポンプ14を駆動させて消化槽本体1の底部の堆積物10を除去ノズルaの開口から抜き出して除去ノズル用配管12及び汚泥移送配管9を通して汚泥濃度計16で汚泥濃度を計測したのち、排出する。
【0031】
旋回流形成工程及び堆積物引抜工程の実施方法としては手動運転または自動運転によって行うことができるが、それぞれの操作の実施の形態としては次のものが考えられる。
(1)手動操作
吐出運転時には4つの除去ノズルのうちの任意の1つの除去ノズルまたは複数の除去ノズルから汚泥4を吐出して底部旋回流を形成する。
堆積物10の引抜運転時には、4つの除去ノズルのうちの任意の1つの除去ノズルから、または複数の除去ノズルから同時に堆積物10を引き抜く。
(2)自動運転
自動運転パターンとしては次のA~Cの3つのモードを設定することができる。
いずれのモードも汚泥の旋回流を形成して消化槽底部の堆積物を流動状態とし、直ちに堆積物引抜を行うものであり、1日の設定回数を年間通して自動実施することによって消化槽内底部の堆積物10を除去するものである。
消化槽本体1から抜き出す堆積物10の性状に応じて、適宜モードを選択することができる。
【0032】
A:ワンショットモード
a1~a4の除去ノズル毎に、ワンショット毎に旋回流の形成と引き抜きとを繰り返す。
ワンショットモード開始:1日の実施回数、および1回あたりの実施時間を設定し、これを365日繰返す。
↓
除去ノズルa1を吐出モードとし、除去ノズルa1から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa2を引抜モードとし、除去ノズルa2から堆積物10を引き抜く。
↓
除去ノズルa2を吐出モードとし、除去ノズルa2から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa3を引抜モードとし、除去ノズルa3から堆積物10を引き抜く。
↓
除去ノズルa3を吐出モードとし、除去ノズルa3から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa4を引抜モードとし、除去ノズルa4から堆積物10を引抜き抜く。
↓
除去ノズルa4を吐出モードとし、除去ノズルa4から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa1を引抜モードとし、除去ノズルa1から堆積物10を引抜く。
↓
モード終了
【0033】
B:サークルショットモード
除去ノズルa1~a4から汚泥4を吐出して旋回流を形成したのち、除去ノズルa1※から堆積物10を引き抜く(※:除去ノズルは任意に選択可能である。)。
サークルショットモード開始:1日の実施回数、および1回あたりの実施時間を設定し、これを365日繰返す。
↓
除去ノズルa1を吐出モードとし、除去ノズルa1から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa2を吐出モードとし、除去ノズルa2から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa3を吐出モードとし、除去ノズルa3から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa4を吐出モードとし、除去ノズルa4から汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa1より引抜モードにて堆積物10を引抜く。
↓
モード終了
【0034】
C:ラウンドショットモード
除去ノズルa1~a4から一斉に汚泥4を吐出して旋回流を形成したのち、除去ノズルa1~a4から一斉に堆積物10の引き抜き行う。
ラウンドショットモード開始:1日の実施回数、および1回あたりの実施時間を設定し、これを365日繰返す。
↓
除去ノズルa1~a4を吐出モードとし、除去ノズルa1~a4から一斉に汚泥4を吐出して旋回流を形成する。
↓
除去ノズルa1~a4を引抜モードとし、除去ノズルa1~a4から一斉に堆積物10を引抜く。
↓
モード終了
【実施例0035】
[実施例]
直径5.0m、高さ5.35mの円筒形の鋼板製消化槽を利用して実験を行った。消化槽には100m3の被処理物が投入され、消化槽の内部には直径約1.4mのインペラ式の撹拌翼が2段設置され(消化槽の底面からそれぞれ、3m及び5mの高さ)、15~20rpmで撹拌翼を回転させた。メタン発酵対象となる汚泥を4.0m3/日で供給し、滞留時間25日でメタン発酵を行った。
【0036】
(堆積物の測定)
消化槽の外壁に沿って円周上4か所に設置した除去ノズル上部より、探触子を利用して堆積物の高さを測定した。消化槽中心部を底辺とし、外壁堆積高さまで逆円錐状に堆積物があるものとして堆積物の体積を求め、消化槽に対する堆積物の容積割合(堆積物体積/消化槽の容積)を算出した。
【0037】
(旋回流形成、堆積物引抜工程の実施)
消化運転開始後、堆積物が徐々に堆積し、約4ヶ月経過後には、上述した消化槽に対する堆積物の容積割合(堆積物体積/消化槽容積)が3.5%程度となったと判断された。そこで、通常運転に加えて旋回流形成運転、堆積物引抜運転を実施した。
【0038】
消化槽の通常の運転に、旋回流形成運転、堆積物引抜運転を組み合わせた運転を7日間行い、探触子を利用して消化槽内の堆積物の堆積状況を確認したところ、消化槽に対する堆積物の容積割合は2.0%まで低下していることが確認された。その後も1ヶ月間運転を継続したが、上記と同様の運転を行うことで、堆積物の容積割合は1.0%程度まで低下できることが確認された。