IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ビー・ケミカル株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017733
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】カチオン電着塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20220119BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120445
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 沙理
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 佑梨
(72)【発明者】
【氏名】宮前 治広
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 祐斗
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB051
4J038DB281
4J038DG302
4J038KA03
4J038NA03
4J038NA07
4J038NA12
4J038NA27
4J038PA04
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】
本発明では、カチオン電着塗料組成物から得られた塗膜の密着性と遮断性を従来のものよりも更に向上させて、防錆性を高めると共に、VOCも更に低下が達成できるカチオン電着塗料組成物を提供する。
【解決手段】
本発明は、アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂が、密着官能基数2.9~3.9meq/solid gおよび溶解性パラメータ(SP)10.2~11.6を有することを特徴とする、カチオン電着塗料組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂が、密着官能基数2.9~3.9meq/solid gおよび溶解性パラメータ(SP)10.2~11.6を有することを特徴とする、カチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂と前記ブロック化ポリイソシアネート硬化剤を混合した混合物の溶解性パラメータ(SP)が9.9~11.3であり、
かつ、
前記カチオン電着塗料組成物を鋼板に乾燥膜厚で15μmになるように塗装し170℃で20分焼き付けた後の残存密着官能基数が1.4~2.4meq/solid gであることを特徴とする、請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
前記アミン化エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂を、ケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンでアミン化することにより得られる、請求項1または2記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、エピクロルヒドリンと多環式フェノール化合物との反応生成物であり、かつ前記反応生成物中のオキシラン環を鎖延長剤で鎖延長されたものである、請求項3記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
前記ケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンが、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、ジメチルアミノエチルアミンまたはそれらの混合物である、請求項3記載のカチオン電着塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン電着塗料組成物、特に新しいアミン化エポキシ樹脂を用いるカチオン電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗料は、自動車などの工業製品に防食性を付与するために下塗り塗料として多用されているもので、アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含むものである。カチオン電着塗料は、高い防錆性の他に、低VOC(揮発性有機化合物)含有量、高い密着性および高い疎水性(遮断性)等を必要とする。
【0003】
カチオン電着塗料の密着性と疎水性(遮断性)は、防錆性に寄与する重要性能で、常に向上が求められている。例えば、特表2000-501448号公報(特許文献1)には、一級アミノ基と三級アミノ基とを有するジアミン化合物をエポキシ樹脂と反応させたものを使用したカチオン電着塗料組成物が開示されているが、密着性や遮断性に更に改良が必要である。
【0004】
一方、低VOCに焦点を当てると、例えば特開2011-256306号公報(特許文献2)には、塗料組成物中に添加する有機溶媒の量を特定の芳香族化合物を混合または反応させることにより低減することが記載されている。また、特開2009-1781号公報(特許文献3)には、特定のキシレンホルムアルデヒド樹脂を用いてカチオン電着塗料組成物中に必要とする有機溶媒の量を低減することを提案する。
【0005】
これらの文献では、カチオン電着塗料組成物に添加する有機溶媒の量を減らすことを目的としているが、カチオン電着塗料組成物へ添加する有機溶媒はもう既に非常に少ない状態になっていてこれを減らすことは困難な状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2000-501448号公報
【特許文献2】特開2011-256306号公報
【特許文献3】特開2009-1781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、カチオン電着塗料組成物から得られた塗膜の密着性と遮断性を従来のものよりも更に向上させて、防錆性を高めると共に、VOCも更に低下が達成できるカチオン電着塗料組成物を提供する。本発明では、上記目的を達成するために、密着官能基量と遮断性に寄与する溶解性パラメータ(SP値)に着目して、制御を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は以下の態様を提供する:
[1]
アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂が、密着官能基数2.9~3.9meq/solid gおよび溶解性パラメータ(SP)10.2~11.6を有することを特徴とする、カチオン電着塗料組成物。
[2]
アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂と前記ブロック化ポリイソシアネート硬化剤を混合した混合物の溶解性パラメータ(SP)が9.9~11.3であり、
かつ、
前記カチオン電着塗料組成物を鋼板に乾燥膜厚で15μmになるように塗装し170℃で20分焼き付けた後の残存密着官能基数が1.4~2.4meq/solid gであることを特徴とする、[1]のカチオン電着塗料組成物
[3]
前記アミン化エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂を、1級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンでアミン化することにより得られる、[1]または[2]のカチオン電着塗料組成物。
[4]
前記エポキシ樹脂が、エピクロルヒドリンと多環式フェノール化合物との反応生成物であり、かつ前記反応生成物中のオキシラン環を鎖延長剤で鎖延長されたものである、[3]のカチオン電着塗料組成物。
[5]
前記1級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンが、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、ジメチルアミノエチルアミンまたはそれらの混合物である、[2]~[4]のいずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するカチオン電着塗料組成物中の、アミン化エポキシ樹脂の密着官能基数を2.9~3.9meq/solid gおよび溶解性パラメータ(SP)を10.2~11.6に制御することにより、密着性と遮断性が向上し、さらに高い防錆性の塗膜が得られることが解った。また、本発明では、アミン化エポキシ樹脂を製造する際に、これまで通常用いられているケチミン化合物、特にケチミン基を二つ有するジケチミン化合物を極力使用しないで、または全く使用しないで、別のケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級アミノ基または三級アミノ基とを有するジアミンでアミン化することにより、高官能基数を確保すると共に、疎水化も達成することにより、従来と同様の性能を発揮できるようにした。また、既に述べたように、ケチミン化合物を使用しないか殆ど使用しないので、ケチミンによりブロック化していた一級アミノ基の脱ブロック時点で生じるブロック剤(例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK))の生成が起こらないので、VOCの発生が抑制される。この場合、ケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級アミノ基または三級アミノ基とを有するジアミン中の一級アミノ基は、エポキシ樹脂との反応で消費されてしまうので、一級アミノ基は得られたアミン化エポキシ樹脂中に存在せず、しかも残る二級アミノ基または三級アミノ基は高塩基化を達成し、中和点を増やして乳化性や密着性に寄与する。
【0010】
本発明の場合、前述のようにアミン化エポキシ樹脂が、密着官能基数2.9~3.9meq/solid gおよび溶解性パラメータ(SP)10.2~11.6を有することを特徴とする。密着官能基数と溶解性パラメータ(SP)を特定数値範囲内に制御したことで、最終的に得られた複層塗膜の耐食性を向上することができる。これらの数値の制御には、ケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンには、水酸基が存在することも必要になることもある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含有するものであって、前記アミン化エポキシ樹脂が、密着官能基数2.9~3.9meq/solid gおよび溶解性パラメータ(SP)10.2~11.6を有することを特徴とする。尚、本明細書において、数値範囲を「a~b」(aおよびbは共に数値を表す。)で表現する時は、a以上b以下を表すものとする。
【0012】
<アミン化エポキシ樹脂>
アミン化エポキシ樹脂は電着塗膜を構成する塗膜形成樹脂である。アミン化エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂のオキシラン環(「エポキシ基」ともいう。)をアミン化合物で変性、即ちアミン化して得られる。
【0013】
出発原料のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。本明細書において「ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂」はポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂および多環式フェノール化合物が反応(鎖延長反応)した状態を含む。このアミン変性工程において、ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂および多環式フェノール化合物が反応(鎖延長反応)したエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂および多環式フェノール化合物を鎖延長反応させる反応条件は、用いる攪拌装置および反応スケールなどに応じて適宜選択することができる。反応条件として、例えば85~180℃で0.1~8時間、より好ましくは100~150℃で2~8時間反応させる条件などが挙げられる。用いる攪拌装置として、塗料分野において一般的に用いられる撹拌装置を用いることができる。
【0014】
他の出発原料樹脂の例として、特開平5-306327号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のイソシアネート基をメタノール、エタノールなどの低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって調製することができる。
【0015】
上記エポキシ樹脂は、アミン化の前に、その一部を、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレンオキシド基を有するポリオール、ポリプロピレンオキシド基を有するポリオールなど)、2塩基性カルボン酸などにより鎖延長反応してもよい。例えば、ポリプロピレンオキシド基を有するポリオールを用いて鎖延長反応を行う場合は、ポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂となる。この態様の例として、ポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、多環式フェノール化合物およびポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂が反応(鎖延長反応)した状態が挙げられる。アミン変性工程でアミン化合物と反応させるエポキシ樹脂が、ポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂を含む場合におけるポリプロピレンオキシド基含有エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1~40質量部であるのが好ましく、15~25質量部であるのがより好ましい。
【0016】
通常の場合、上記エポキシ樹脂のオキシラン環とアミン化合物とを反応させることによって、アミン化エポキシ樹脂が得られる。このアミン化エポキシ樹脂を形成するときのアミン化合物は、従来、ケチミン化合物、特に1分子内の2つの1級アミノ基を有するアミノ化合物をケトンでブロック化したジケチミンを得て、これをエポキシ樹脂に導入した後に脱ブロック化することによって調製することが行われていたが、本発明ではケチミン化合物を極力用いないでアミン化することが必要である。ケチミン基の形成には、ケトン化合物(一般的には、メチルイソブチルケトン)によるブロックが必要で、それが脱ブロック時にケトン化合物が再生して、これが揮発性有機化合物(VOC)になるので、低VOCを達成するためにケチミン化合物、特にジケチミン化合物を極力使用しないことが好ましい。
【0017】
本発明では、上述のように、ケチミン化合物を極力使用しない方がこのましいので、アミン化合物としてケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンを用いる。この場合の一級アミノ基は、これまでのように、ケトン化合物でブロック化されずに、エポキシ樹脂のアミン化反応で消費されて、アミン化エポキシ樹脂の分岐鎖の形成に使用される。ケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンとしては、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミンやジメチルアミノエチルアミンのような一級アミノ基と三級アミノ基を有するジアミンや、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミンのような、一級アミノ基と三級アミノ基の他にヒドロキシル基を余分に有しているジアミンを用いてアミン化するのが好適である。ヒドロキシル基の存在は、ケチミン化合物を使用しないことによる密着性や硬化性に寄与する官能基の不足を補うものであり、後述する密着官能基量の制御に利用される。本発明ではこれらのケチミンでブロックしていない一級アミノ基と二級または三級アミノ基とを有するジアミンや、一級アミノ基の他にヒドロキシル基も余分に有しているアミノ化合物(本明細書では特に、「高アミン強度ジアミン」と呼ぶことがある。)を用いることが必要である。尚、一級アミノ基の数は、上記例示では1個であるが、複数個有していても良いが、一級アミノ基は反応性が高いので反応を制御する意味では1個の方がよい。また、ヒドロキシル基の数も上記例示では2個であるが、前述のように密着性や硬化性に寄与する意味では2個に限定されず、1個以上でよい。
【0018】
アミン化合物としては、上記の高アミン強度ジアミンのみを使用することも出来るが、一般にアミン化エポキシ樹脂を製造する時に用いられているアミン化合物と、上記の高アミン強度ジアミンとの混合物を用いることが多い。一般的に使用するアミン化合物の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミンなどの一級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミンなどの二級アミン;ジエチレントリアミンなどの複合アミンが挙げられる。本発明では、ケチミン基またはジケチミン基を有するアミン化合物は使用しない方が良いが、使用できないわけではなく、上記の密着官能基数と溶解性パラメータ(SP)を満足すれば使用することも可能である。使用できるケチミン基またはジケチミン基を有するアミン化合物はアミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどが挙げられる。また、必要に応じて用いてもよい三級アミンを使用してもよく、その具体例として、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミンなどが挙げられる。これらのアミン類は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
アミン変性工程において、エポキシ樹脂と反応させるアミン化合物の量は、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量に対して0.9~1.2当量となる量で用いるのが好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させアミン変性する反応条件は、反応スケールなどに応じて適宜選択することができる。反応条件として、例えば80~150℃で0.1~5時間、より好ましくは120~150℃で0.5~3時間反応させる条件などが挙げられる。
【0021】
本発明のアミン化エポキシ樹脂は、密着官能基数2.9~3.9meq/solid gおよび溶解性パラメータ(SP)10.2~11.6を有することを必要とする。密着官能基数はアミン化エポキシ樹脂中に存在する密着官能基数を求めたもので、各原料に含まれる官能基数、配合量から理論計算で求めることができる。密着官能基数は、好ましくは3.2~3.9meq/solid gであり、より好ましくは3.6~3.9meq/solid gである。密着官能基数が2.9meq/solid gより少ないと、塗膜の密着性が不足する。一方、密着官能基数が3.9meq/solid gより多いと、樹脂の疎水性が不足する。溶解性パラメータ(SP)は、樹脂の溶解性を表す指数であって、SP値の高い貧溶媒である水とSP値の低い貧溶媒であるn-ヘキサンを用いた濁点滴定法によって求めることができる。溶解性パラメータ(SP)の詳細は、この明細書の実施例に記載している。溶解性パラメータ(SP)値は、好ましくは10.2~11.3であり、より好ましくは10.2~10.9である。本発明のアミン化エポキシ樹脂の溶解性パラメータ(SP)が10.2より小さくすることは密着官能基数との両立の観点から困難であり、溶解性パラメータ(SP)が11.6より高いと、樹脂の疎水性が不足する。
【0022】
アミン化エポキシ樹脂の数平均分子量は、1,000~7,000の範囲であるのが好ましい。数平均分子量が1,000以上であることにより、得られる硬化電着塗膜の耐溶剤性および耐食性などの物性が良好となる。一方で、数平均分子量が7,000以下であることにより、アミン化エポキシ樹脂の粘度調整が容易となって円滑な合成が可能となり、また、得られたアミン化エポキシ樹脂の乳化分散の取扱いが容易になる。アミン化エポキシ樹脂の数平均分子量は1,500~4,000の範囲であるのがより好ましい。
【0023】
アミン化エポキシ樹脂のアミン価は、20~100mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。アミン化エポキシ樹脂のアミン価が20mgKOH/g以上であることにより、電着塗料組成物中におけるアミン化エポキシ樹脂の乳化分散安定性が良好となる。一方で、アミン価が100mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中のアミノ基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがなくなる。アミン化エポキシ樹脂のアミン価は、20~80mgKOH/gの範囲内であるのがより好ましい。
【0024】
アミン化エポキシ樹脂の水酸基価は、150~650mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。水酸基価が150mgKOH/g以上であることにより、硬化電着塗膜において硬化が良好となり、塗膜外観も向上する。一方で、水酸基価が650mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中に残存する水酸基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがなくなる。アミン化エポキシ樹脂の水酸基価は、150~400mgKOH/gの範囲内であるのがより好ましい。
【0025】
本発明の電着塗料組成物において、数平均分子量が1,000~7,000の範囲内であり、アミン価が20~100mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が150~650mgKOH/g、より好ましくは150~400mgKOH/gであるアミン化エポキシ樹脂(A)を用いることによって、被塗物に優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
【0026】
なおアミン化エポキシ樹脂としては、必要に応じて、アミン価および/または水酸基価の異なるアミン化エポキシ樹脂を併用してもよい。2種以上の異なるアミン価、水酸基価のアミン化エポキシ樹脂を併用する場合は、使用するアミン化エポキシ樹脂の質量比に基づいて算出する平均アミン価および平均水酸基価が、上記の数値範囲であるのが好ましい。また、併用するアミン化エポキシ樹脂としては、アミン価が20~50mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50~300mgKOH/gであるアミン化エポキシ樹脂と、アミン価が50~200mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が200~500mgKOH/gであるアミン化エポキシ樹脂との併用が好ましい。このような組合せを用いると、エマルションのコア部がより疎水となりシェル部が親水となるため優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
【0027】
なおアミン化エポキシ樹脂は、必要に応じて、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂などを含んでもよい。
【0028】
<ブロック化ポリイソシアネート硬化剤>
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(以下、単に「硬化剤」ということがある)は、電着塗膜を構成する塗膜形成樹脂である。ブロック化ポリイソシアネート硬化剤は、ポリイソシアネートを、封止剤でブロック化することによって調製することができる。
【0029】
ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環式ポリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
封止剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;およびε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。
【0031】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤のブロック化率は100%であるのが好ましい。これにより、電着塗料組成物の貯蔵安定性が良好になるという利点がある。
【0032】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤は、脂肪族ジイソシアネートを封止剤でブロック化することによって調製された硬化剤と、芳香族ジイソシアネートを封止剤でブロック化することによって調製された硬化剤とを併用することが好ましい。
【0033】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤は、アミン化エポキシ樹脂の1級アミンと優先的に反応し、さらに水酸基と反応して硬化する。硬化剤としては、メラミン樹脂またはフェノール樹脂などの有機硬化剤、シランカップリング剤、金属硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化剤を、ブロックイソシアネート硬化剤と併用してもよい。
【0034】
樹脂エマルションの調製
樹脂エマルションは、アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤それぞれを有機溶媒中に溶解させて、溶液を調製し、これらの溶液を混合した後、中和酸を用いて中和することにより、調製することができる。中和酸として、例えば、メタンスルホン酸、スルファミン酸、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ギ酸、酢酸などの有機酸が挙げられる。本発明においては、アミン化エポキシ樹脂および硬化剤を含む樹脂エマルションを、ギ酸、酢酸および乳酸からなる群から選択される1種またはそれ以上の酸によって中和するのがより好ましい。
【0035】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤の含有量は、硬化時にアミン化エポキシ樹脂中の、1級アミノ基、2級アミノ基または水酸基などの活性水素含有官能基と反応して、良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましい硬化剤の含有量は、アミン化エポキシ樹脂と硬化剤との固形分質量比(アミン化エポキシ樹脂/硬化剤)で表して90/10~50/50、より好ましくは80/20~65/35の範囲である。アミン化エポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート硬化剤との固形分質量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度が改良され、塗装外観が向上する。
【0036】
樹脂エマルションの固形分量は、通常、樹脂エマルション全量に対して25~50質量%、特に35~45質量%であるのが好ましい。ここで「樹脂エマルションの固形分」とは、樹脂エマルション中に含まれる成分であって、溶媒の除去によっても固形となって残存する成分全ての質量を意味する。具体的には、樹脂エマルション中に含まれる、アミン化エポキシ樹脂、硬化剤および必要に応じて添加される他の固形成分の質量の総量を意味する。
【0037】
中和酸は、アミン化エポキシ樹脂が有するアミノ基の当量に対する中和酸の当量比率として、10~100%となる量で用いるのがより好ましく、20~70%となる量で用いるのがさらに好ましい。本明細書において、アミン化エポキシ樹脂が有するアミノ基の当量に対する中和酸の当量比率を、中和率とする。中和率が10%以上であることにより、水への親和性が確保され、水分散性が良好となる。
【0038】
<顔料分散ペースト>
本発明のカチオン電着塗料組成物は、必要に応じて顔料分散ペーストを含んでもよい。顔料分散ペーストは、電着塗料組成物中に任意に含まれる成分であり、一般に顔料分散樹脂および顔料を含む。
【0039】
顔料分散樹脂
顔料分散樹脂は、顔料を分散させるための樹脂であり、水性媒体中に分散されて使用される。顔料分散樹脂として、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基および1級アミノ基から選択される少なくとも1種またはそれ以上を有する変性エポキシ樹脂などの、カチオン基を有する顔料分散樹脂を用いることができる。顔料分散樹脂の具体例として、例えば4級アンモニウム基含有エポキシ樹脂、3級スルホニウム基含有エポキシ樹脂などが挙げられる。水性溶媒としてはイオン交換水または少量のアルコール類を含む水などを用いる。
【0040】
顔料
顔料は、電着塗料組成物において一般的に用いられる顔料である。顔料として、例えば、通常使用される無機顔料および有機顔料、例えば、チタンホワイト(二酸化チタン)、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、およびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料など、が挙げられる。
【0041】
顔料分散ペーストの製造
顔料分散ペーストは、顔料分散樹脂および顔料を混合して調製される。顔料分散ペースト中の顔料分散樹脂の含有量は特に限定されないが、例えば、顔料100質量部に対して樹脂固形分比で20~100質量部となる量で用いることができる。
【0042】
顔料分散ペーストの固形分量は通常、顔料分散ペースト全量に対して40~70質量%、特に50~60質量%であるのが好ましい。
【0043】
本明細書中において「顔料分散ペーストの固形分」とは、顔料分散ペースト中に含まれる成分であって、溶媒の除去によっても固形となって残存する成分全ての質量を意味する。具体的には、顔料分散ペースト中に含まれる、顔料分散樹脂および顔料および必要に応じて添加される他の固形成分の質量の総量を意味する。
【0044】
<他の成分など>
本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記成分に加えて、さらに亜硝酸金属塩を含んでもよい。亜硝酸金属塩として、アルカリ金属の亜硝酸塩またはアルカリ土類金属の亜硝酸塩が好ましく、アルカリ土類金属の亜硝酸塩がより好ましい。亜硝酸金属塩として、例えば、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸亜鉛などが挙げられる。
【0045】
カチオン電着塗料組成物が亜硝酸金属塩を含むことによって、耐食性が向上し、特にエッジ部の耐食性(エッジ防錆性)がより向上するという利点がある。カチオン電着塗料組成物が亜硝酸金属塩を含む場合における含有量は、塗膜形成樹脂の全質量に対して、金属成分の金属元素換算で0.001~0.2質量%の量で含むのが好ましい。
【0046】
上記亜硝酸金属塩は、カチオン電着塗料組成物中に任意の方法によって加えることができる。例えば、亜硝酸金属塩の水溶液を予め調製し、カチオン電着塗料組成物に加えるなどの方法が挙げられる。また、亜硝酸金属塩を予め顔料と混合しておき、顔料と同様にして分散させることもできる。
【0047】
<カチオン電着塗料組成物の製造>
本発明のカチオン電着塗料組成物は、アミン化エポキシ樹脂およびブロック化ポリイソシアネート硬化剤を含む樹脂エマルション、そして顔料分散ペーストおよび添加剤などを、通常用いられる方法により混合することによって、調製することができる。
【0048】
本明細書中において「電着塗料組成物の固形分」とは、電着塗料組成物中に含まれる成分であって、溶媒の除去によっても固形となって残存する成分全ての質量を意味する。具体的には、電着塗料組成物中に含まれる、アミン化エポキシ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤、そして必要に応じて含まれる顔料分散樹脂、顔料、他の固形成分の固形分質量の総量を意味する。
【0049】
本発明のカチオン電着塗料組成物の固形分量は、電着塗料組成物全量に対し、1~30質量%であるのが好ましい。カチオン電着塗料組成物の固形分量が1質量%未満である場合は、電着塗膜析出量が少なくなり、十分な耐食性を確保することが困難となるおそれがある。またカチオン電着塗料組成物の固形分量が30質量%を超える場合は、つきまわり性または塗装外観が悪くなるおそれがある。
【0050】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、pHが4.5~7であることが好ましい。カチオン電着塗料組成物のpHが4.5未満である場合は、カチオン電着塗料組成物中に存在する酸の量が過剰量となり、塗膜外観または塗装作業性が劣ることとなるおそれがある。一方で、pHが7を超える場合は、カチオン電着塗料組成物のろ過性が低下し、硬化電着塗膜の水平外観が低下する場合がある。カチオン電着塗料組成物のpHは、用いる中和酸の量、遊離酸の添加量などの調整によって、上記範囲に設定することができる。上記pHは、5~7であるのがより好ましい。
【0051】
カチオン電着塗料組成物のpHは、温度補償機能を有する市販のpHメーターを用いて測定することができる。
【0052】
カチオン電着塗料組成物の固形分100gに対する酸のミリグラム当量(MEQ(A))は10~50であるのが好ましい。なお、カチオン電着塗料組成物の樹脂固形分100gに対する酸のミリグラム当量(MEQ(A))は、中和酸量および遊離酸の量によって調整することができる。
【0053】
ここでMEQ(A)とは、mg equivalent(acid)の略であり、塗料の固形分100g当たりのすべての酸のmg当量の合計である。このMEQ(A)は、電着塗料組成物の固形分を約10g精秤し約50mlの溶剤(THF:テトラヒドロフラン)に溶解した後、1/10NのNaOH溶液を用いて電位差滴定を行うことによって、カチオン電着塗料組成物中の含有酸量を定量して測定することができる。
【0054】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、塗料分野において一般的に用いられている添加剤、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなどの有機溶媒、乾き防止剤、消泡剤などの界面活性剤、アクリル樹脂微粒子などの粘度調整剤、はじき防止剤、バナジウム塩、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム塩などの無機防錆剤など、を必要に応じて含んでもよい。またこれら以外に、目的に応じて公知の補助錯化剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などを配合してもよい。これらの添加剤は、樹脂エマルション製造の際に添加されてもよいし、顔料分散ペーストの製造時に添加されてもよいし、または樹脂エマルションと顔料分散ペーストとの混合時または混合後に添加されてもよい。
【0055】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記アミン化エポキシ樹脂以外にも、他の塗膜形成樹脂成分を含んでもよい。他の塗膜形成樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。電着塗料組成物に含まれうる他の塗膜形成樹脂成分として、フェノール樹脂、キシレン樹脂が好ましい。フェノール樹脂、キシレン樹脂として、例えば、2以上10以下の芳香族環を有するキシレン樹脂が挙げられる。
【0056】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、アミン化エポキシ樹脂と前記ブロック化ポリイソシアネート硬化剤を混合した混合物の溶解性パラメータ(SP)も電着塗料の性能を見る一つの指標となる。本発明では、アミン化エポキシ樹脂と前記ブロック化ポリイソシアネート硬化剤を混合した混合物の溶解性パラメータ(SP)は9.9~11.3、好ましくは9.9~11.2、より好ましくは9.9~11.1であることを必要とする。アミン化エポキシ樹脂と前記ブロック化ポリイソシアネート硬化剤を混合した混合物の溶解性パラメータ(SP)が、9.9より小さいと、密着性が低下し、逆に11.3より大きいと、親水性が増加し、塗膜の遮断性が低下する。
【0057】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、本発明のカチオン電着塗料組成物を鋼板に乾燥膜厚で15μmになるように塗装し170℃で20分焼き付けた後の残存密着官能基数が1.4~2.4meq/solid gであることも必要である。これは塗料組成物を得た後の塗膜の性能を規定するもので、残存密着官能基数は理論値であり、計算で算出することができ、アミン化エポキシ樹脂の官能基量、具体的には水酸基量(meq/solid g)と一級アミン量(meq/solid g)の合計から、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤のイソシアネート基量(meq/solid g)を減ずることで求めた。残存密着官能基数は、好ましくは1.6~2.2meq/solid gで、より好ましくは1.7~2.1meq/solid gである。この条件で塗装した塗膜の残存密着官能基数が1.4meq/solid gより少ないと、塗膜に十分な密着性能を付与できず、2.4meq/solid gより大きいと塗膜の親水性が増加し、塗膜の遮断性が低下する欠点を有する。
【0058】
<電着塗装および電着塗膜形成>
本発明のカチオン電着塗料組成物を用いて被塗物に対し電着塗装することによって、電着塗膜を形成することができる。本発明のカチオン電着塗料組成物を用いる電着塗装においては、被塗物を陰極とし、陽極との間に、電圧を印加する。これにより、電着塗膜が被塗物上に析出する。
【0059】
本発明のカチオン電着塗料組成物を塗装する被塗物としては、通電可能な種々の被塗物を用いることができる。使用できる被塗物として例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛-鉄合金系めっき鋼板、亜鉛-マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム-シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板などが挙げられる。
【0060】
電着塗装工程において、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬した後、50~450Vの電圧を印加することによって、電着塗装が行われる。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となるおそれがあり、450Vを超えると、塗膜外観が劣ることとなるおそれがある。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10~45℃に調節される。
【0061】
電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2~5分とすることができる。
【0062】
本発明のカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗装において、析出させる電着塗膜の膜厚は、加熱硬化により最終的に得られる電着塗膜の膜厚が好ましくは5~60μm、より好ましくは10~25μmとなるような膜厚であるのが好ましい。電着塗膜の膜厚が5μm未満であると、防錆性が不十分となるおそれがある。
【0063】
上述のようにして析出させた電着塗膜は、必要に応じて水洗した後、例えば120~260℃、好ましくは140~220℃で、10~30分間加熱することによって、硬化させることができる。これにより、硬化電着塗膜が形成される。
【0064】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、エッジ部を有する被塗物上に硬化電着塗膜を設ける場合であっても、エッジ部防錆性に優れた硬化電着塗膜を設けることができる利点がある。本発明のカチオン電着塗料組成物は、析出した電着塗膜を留まらせることができる機能を有するため、エッジ部を有する被塗物上に硬化電着塗膜を設ける場合などにおいて、好適に用いることができる。
【0065】
本明細書において、エッジ部を有する被塗物に形成された硬化電着塗膜の耐食性評価は、JIS Z 2371(2000)に準拠した塩水噴霧試験(35℃×72時間)によって行う。例えば膜厚25~50μmといった高膜厚硬化電着塗膜を、塩水噴霧試験した場合において、エッジ部を有する被塗物に形成された硬化電着塗膜のエッジ塗装部における錆発生個数が、エッジ部1cmあたりに対して例えば3個/cm未満である場合は、エッジ部の耐食性(防錆性)に優れた塗膜であるということができ、錆発生個数がエッジ部1cmあたりに対して1個/cm未満である場合はエッジ部耐食性が極めて優れた塗膜であるということができる。
【実施例0066】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0067】
製造例1-A アミン化エポキシ樹脂(樹脂A)の製造
ブチルセロソルブ12部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA254部、フェノール80部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が700g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン90部、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン44部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂A)を得た。
【0068】
製造例1-Bアミン化エポキシ樹脂(樹脂B)の製造
ブチルセロソルブ12部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA228部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が400g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン212部、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン44部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂B)を得た。
【0069】
製造例1-Cアミン化エポキシ樹脂(樹脂C)の製造
ブチルセロソルブ12部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA254部、フェノール70部ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が650g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン100部、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン49部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂C)を得た。
【0070】
製造例1-Dアミン化エポキシ樹脂(樹脂D)の製造
ブチルセロソルブ28部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA342部、フェノール104部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1500g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)116部とN-メチルエタノールアミン30部、ジエタノールアミン9部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂D)を得た。
【0071】
製造例1-Eアミン化エポキシ樹脂(樹脂E)の製造
ブチルセロソルブ27部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA254部、フェノール47部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が570g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ジエタノールアミン214部を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂F)を得た。
【0072】
製造例1-Fアミン化エポキシ樹脂(樹脂F)の製造
ブチルセロソルブ27部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA254部、フェノール19部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が490g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ジエタノールアミン242部を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂F)を得た
【0073】
製造例1-Gアミン化エポキシ樹脂(樹脂G)の製造
ブチルセロソルブ28部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER-331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA228部、フェノール188部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1400g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)212部とN-メチルエタノールアミン5の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化エポキシ樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂G)を得た
【0074】
製造例2-1ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(1)の製造
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(MDI)1370部およびMIBK732部を反応容器に仕込み、これを60℃まで加熱した。ここに、ブチルジグリコールエーテル300部、ブチルセロソルブ1330を60℃で2時間かけて滴下した。さらに75℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK27部を加えてブロック化ポリイソシアネート硬化剤(1)を得た。
【0075】
製造例3-顔料分散樹脂の製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂385部、ビスフェノールA120部、オクチル酸95部、2-エチル-4-メチルイミダゾール1%溶液1部を仕込んで、窒素雰囲気下160~170℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2-エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)198部を加えた。反応混合物を120~130℃で1時間保持した後、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル157を加えた。そして85~95℃に冷却して均一化させた。つぎにジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)277部を加え120℃で1時間撹拌しエチレングリコールモノn-ブチルエーテル13部を加え、アミン化樹脂を製造した。ついで18部のイオン交換水とギ酸8部を仕込み上記アミン化樹脂を混合し15分撹拌し、イオン交換水200部を混合して、顔料分散樹脂(平均分子量2,200)の樹脂溶液(樹脂固形分25%)を得た。
【0076】
製造例4-A電着塗料樹脂エマルション(EmA)の製造
製造例1-Aで得た樹脂(樹脂A)400g(固形分)と、製造例2-1で得たブロック化ポリイソシアネート硬化剤(1)160g(固形分)とを混合し、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15g)になるように添加した。次にギ酸を中和率40%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈して電着塗料樹脂エマルション(EmA)を得た。
【0077】
製造例5-B~G電着塗料樹脂エマルション(EmB~G)の製造
製造例1-B~製造例1-Gで得たアミン化エポキシ樹脂(樹脂B~G)に関しても製造例4-Aと同様に電着塗料樹脂エマルション(EmB~EmG)を得た。
【0078】
製造例6電着塗料用顔料分散ペーストの製造
サンドミルを用いて、製造例3で得られた顔料分散樹脂を含む以下の表1に示す配合に基づき、得られた混合物を40℃において、体積平均粒子径D50が0.6μmとなるまで分散し、調製して、顔料分散ペースト(固形分49%)を得た。体積平均粒子径D50の測定は、レーザードップラー式粒度分析計(日機装社製、「マイクロトラックUPA150」)を用いて、分散体を信号レベルが適性になるようイオン交換水で希釈して、体積平均粒子径D50を測定した。
【0079】
実施例1
ステンレス容器に、イオン交換水1394g、樹脂エマルション(EmA)560gおよび製造例6で得られた顔料分散ペースト41gを添加しその後40℃で16時間エージングして、電着塗料組成物を形成した。
【0080】
実施例2、3及び比較例1~4
実施例2、3(EmB、EmC)及び比較例1、2、3および4(EmD、EmE、EmFおよびEmG)も実施例1と同様に電着塗料組成物を得た。
【0081】
冷延鋼板(JISG3141、SPCC-SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して、脱脂処理した。次いで、ZrFを0.005%含み、NaOHを用いてpH4に調整したジルコニウム化成処理液中に、40℃で90秒間浸漬して、ジルコニウム化成処理を行った。次いで、実施例または比較例で得られた電着塗料組成物を、硬化後の電着塗膜の膜厚が15μmとなるように2-エチルヘキシルグリコールを必要量添加し、その後に鋼板を浸漬して、30秒昇圧180Vに達してから150秒間保持するという条件で電圧を印加して、被塗物上に未硬化の電着塗膜を析出させた。
【0082】
こうして得られた未硬化の電着塗膜を、170℃で15分間焼き付け硬化させて、硬化電着塗膜を有する電着塗装板を得た。得られた硬化電着塗膜に下記の評価を行った。結果を表1に示す。表1には、各電着塗料組成物の特徴(密着官能基量、焼き付け塗膜の残存密着官能基量、アミン化エポキシ樹脂の溶解性パラメータ(SP)およびアミン化エポキシ樹脂にBI(ブロック化ポリイソシアネート硬化剤)を混合した塗料のSP)も記載した。
【0083】
<アミン化エポキシ樹脂の密着官能基量>
密着官能基量(m eq/solid g)=当量(eq)/固形分量(g)×1000
【0084】
<焼付塗膜の残存密着官能基量>
アミン化エポキシ樹脂の水酸基量(meq/solid g)と一級アミン量(meq/solid g)の合計から、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤のイソシアネート基量(meq/solid g)を減ずることで求めた。
【0085】
<アミン化エポキシ樹脂の溶解性パラメータ(SP)>および<アミン化エポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート硬化剤(BI)との混合時の溶解性パラメータ(SP)>
溶解性パラメータ(SP値)は次の方法によって実測することができる。
参考文献SUH,CLARKE〔J.P.S.A-1,5,1671-1681(1967)〕
・測定温度:20℃
・サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
・溶媒:良溶媒:ジオキサン、アセトン
・貧溶媒:n-ヘキサン、イオン交換水
・濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
・計算:樹脂のSP値δは次式によって与えられる。
δ=(Vml 1/2δml+Vmh 1/2δmh)/(Vml 1/2 +Vmh 1/2
Vm=V12/(φ12+φ2
δm=φ1δ1+φ2δ2
i:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0086】
<VOC量>
{溶剤配合量(g)×Em比重(1.05(g/cm3))/Em総重量(g)}×1000=VOC量(g/L)
評価基準
○:30g/L以下
△:30~40g/L以下
×:40g/Lを超える
【0087】
上記実施例により得られた電着塗料組成物および塗装板を用いて、下記評価試験を行った。
【0088】
硬化性(ラビング性)
MIBKに浸したガーゼで塗膜を50回擦り、塗膜の表面状態により硬化性を判定した。評価の基準は下記の通りである。
○:塗膜変化なし。
△:塗膜スジあり。
×:ガーゼに着色あり。
【0089】
サイクル腐食試験(Cycle Corrosion Test(CCT))
冷延鋼板を用いた硬化後の電着塗装板の塗膜に、基材に達するようにナイフでクロスカット傷を入れ、JASOM609-91「自動車用材料腐食試験方法」を100サイクル行った。その後、クロスカット部からの錆やフクレ発生を観察し、実際の腐食環境に即した耐食性を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm未満(両側)
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上7.5mm未満(両側)カット部以外にブリスターなし
○△:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上7.5mm未満(両側)カット部以外もブリスターあり
△:錆またはフクレの最大幅がカット部より7.5mm以上10mm未満(両側)
△×:錆またはフクレの最大幅がカット部より10mm以上12.5mm未満(両側)
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より12.5mm以上(両側)
【0090】
エッジ腐食試験
本試験の評価は、上記冷延鋼板ではなく、L型専用替刃(LB10K:オルファ株式会社製)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)中に50℃で2分間浸漬して脱脂処理し、サーフファインGL-1(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)で表面調整し、次いでリン酸亜鉛化成処理液であるサーフダインSD-5000(日本ペイント・サーフケミカルズ社製、リン酸亜鉛化成処理液)中に40℃で2分間浸漬して、リン酸亜鉛化成処理を行ったものを用いた。これに実施例1~3、比較例1~4の塗料を上記電着塗装と同様の条件で電着塗装し硬化電着塗膜を形成したのち、ソルトスプレーテスト35℃×168h試験後のL型専用替刃先端部錆個数を調べた。
評価基準
◎:10個未満
○:10個以上~20個未満
○△:20個以上~50個未満
△:50個以上~100個未満
×:100個以上
【0091】
塗装作業性(研ぎムラ性)
砥石を用いて研いだ鋼板に電着塗装した際の研ぎ部の外観荒れを目視判定した。
○:均一な塗膜外観を有している
○△:ややムラがあると視認される部分があるものの、全体としてほぼ均一な塗膜外観を有している
△:ムラが視認される
×:塗膜外観が明らかに不均一である
【0092】
電着塗料組成物の安定性(塗料安定性)
電着塗料組成物を静置した状態または撹拌した状態において、塗料組成物の状態を目視にて判定し、塗料安定性を評価した。評価基準は以下の通りとした。ここでいう安定であるとは、攪拌停止後、15分以内に顔料が沈降しないことをいう。
評価基準
○:電着塗料組成物を静置した状態で安定である
○△:電着塗料組成物を静置した状態では安定ではないものの、再度撹拌することによってすぐに安定化する
△:電着塗料組成物を連続的に撹拌し続けた状態では安定である
×:電着塗料組成物を連続的に撹拌し続けた状態でも安定化しない
【0093】
【表1】
【0094】
上記表1から明らかなように、アミン化エポキシ樹脂A~Cのもの(実施例1~3)は、密着官能基数と溶解性パラメータが所定範囲内にあるので、電着塗膜の性能が全て良い基準を満足している。しかも、実施例の塗料は、VOC量が〇の評価で少なく、環境に対する配慮が優れている。一方、比較例1では、ジケチミンを使用したカチオン電着塗料であり、VOC量が×と大きく、しかも密着官能基量が不足していて、腐食試験などに不足点がみられる。比較例2では、アミン化エポキシ樹脂の溶解性パラメータが高すぎていて、やはり腐食試験などに不足がみられる。比較例3では、密着官能基量やアミン化エポキシ樹脂の溶解性パラメータ(SP)だけでなく、焼き付け塗膜の残存密着官能基数およびアミン化エポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート硬化剤とを混合したものの溶解性パラメータ(SP)の両方の値が所定値を離れているので、塗膜性能に欠陥がみられる。比較例2および3では、ジケチミンをアミン化樹脂製造時のアミン化合物として使用しておらず、ジエタノールアミンを多用する結果、中和能が低く、塗料の安定性が不足する。比較例4では、比較例1と同じようにジケチミンを使用しているだけでなく、密着官能基量やアミン化エポキシ樹脂の溶解性パラメータ(SP)、焼き付け塗膜の残存密着官能基数およびアミン化エポキシ樹脂とブロック化ポリイソシアネート硬化剤とを混合したものの溶解性パラメータ(SP)の全てが所定値を外れているので、VOC量が×と大きく、サイクル腐食試験やエッジ防錆が良くない結果が出ている。