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2022-177336電源装置とこれを備える蓄電装置及び電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177336
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電源装置とこれを備える蓄電装置及び電動車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/20 20210101AFI20221124BHJP
   H01M 50/572 20210101ALI20221124BHJP
【FI】
H01M2/10 M
H01M2/34 A
H01M2/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019196489
(22)【出願日】2019-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】市座 智之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 基二
【テーマコード(参考)】
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H040AA37
5H040AS07
5H040AY06
5H040DD08
5H040DD09
5H040DD14
5H040DD22
5H040DD26
5H040NN03
5H040NN05
5H043AA04
5H043BA11
5H043CA28
5H043FA06
5H043FA22
5H043FA32
5H043FA33
5H043FA38
5H043GA03
5H043JA03F
5H043JA28F
5H043KA44F
5H043KA45F
5H043LA02F
5H043LA31F
(57)【要約】
【課題】水没時の漏れ電流による弊害を防止して、電源装置の水没時の安全性を確保する。
【解決手段】電源装置は、充電できる複数の電池1を直列に接続してなる電池ブロック10と、電池ブロック10を構成してなる電池1の正負の電極端子11に接続してなる複数の電圧ライン3とを備える。電圧ライン3は、直列に接続してなる各々の電池1の正負の電極端子11に接続されて、接続された電極端子11と同一電位にある。電池1の正負の電極端子11に接続してなる電圧ライン3は、電池1の正負の電極端子11の間隔よりも互いに接近して配置してなる近接露出部4を有し、電圧ライン3は近接露出部4の漏れ電流で溶断する電流ヒューズ5を有し、この電流ヒューズ5を防水絶縁構造としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電できる複数の電池を直列に接続してなる電池ブロックと、
前記電池ブロックを構成してなる前記電池の正負の電極端子に接続してなる複数の電圧ラインとを備える電源装置であって、
前記電圧ラインは、
直列に接続してなる各々の前記電池の正負の前記電極端子に接続されて、
接続された前記電極端子と同一電位にあり、
前記電池の正負の電極端子に接続してなる前記電圧ラインは、
前記電池の正負の電極端子の間隔よりも互いに接近して配置してなる近接露出部を有し、
前記電圧ラインは前記近接露出部の漏れ電流で溶断する電流ヒューズを有し、
前記電流ヒューズが防水絶縁構造であることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電源装置であって、
前記電圧ラインが、
前記近接露出部において導電部を露出してなることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載する電源装置であって、
前記電圧ラインが、
コネクタ接続部を有し、
前記コネクタ接続部が前記近接露出部であることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載する電源装置であって、
前記電圧ラインの少なくとも一部を配線パターンとしてなる回路基板を備え、
前記回路基板が、
前記コネクタ接続部を有することを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載する電源装置であって、
前記電池ブロックを構成してなる各々の前記電池の電圧を検出する電圧検出回路を備え、
前記電圧ラインが、
前記電圧検出回路と前記電池の前記電極端子を接続してなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載する電源装置であって、
前記電流ヒューズの溶断電流が、
前記近接露出部の漏れ電流で溶断する電流容量であることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
前記電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備えており、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
前記電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と
を備えることを特徴とする電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置と、この電源装置を備える蓄電装置及び電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電できる電池を直列に接続した充放電容量の大きい電源装置は、太陽光発電や風力発電等の自然エネルギーの発電装置や深夜電力の蓄電装置に使用され、また、車両を走行させるモータに電力を供給する電動車両の電源装置として使用されている。この電源装置は、多数の電池を直列に接続して出力電圧を高くしているが、あらゆる使用環境において高い安全性が要求され、特に水没する状態においても、高い安全性が要求される。複数の電池を直列に接続している電源装置は、直列接続する電池の個数が増加するに従って出力電圧が高くなるので、水没して流れる漏れ電流による安全性を確保する対策を必要とする。
【0003】
さらに、複数の電池を直列に接続している電源装置は、各々の電池の状態を管理するために、各電池の電圧を検出している。(特許文献1)
特許文献1の電源装置は、各電池を長期にわたって安全に使用し、また、劣化を少なくするために、各電池の電圧を検出し、検出電圧で電池の状態を判定しながら充放電をコントロールしている。この電源装置は、例えば電池の電圧を、電圧検出回路等の電子回路で検出して監視し、電圧が一定の範囲を超えると充放電の電流値を制限したり、充放電を停止して電池を保護している。この電源装置は、直列に接続している電池の正負の電極端子に電圧ラインを接続して、この電圧ラインを介して電池を電圧検出回路に接続している。
【0004】
電圧ラインは、各々の電池の正負の電極端子に接続されるので電極端子と同電位となる。複数の電池を直列に接続している電源装置は、直列に接続している電池の個数に比例して電圧ラインが多くなる。たとえば、10個の電池を直列に接続している電源装置は、全ての電池の電極端子に電圧ラインを接続して、各々の電池電圧を検出するために11本の電圧ラインを必要とする。11本の電圧ラインは、電源装置の正負の出力端子に接続している電極端子に接続している2本と、互いに直列に接続している電極端子に接触される9本の電圧ラインからなり、電圧ラインは、各々の電池の正負の電極端子を電圧検出回路に接続して、全ての電池の電圧を電圧検出回路に入力する。
【0005】
複数の電圧ラインは、限られた狭いスペースに配線するために、互いに接近して配線される近接部ができる。近接部で、電圧ラインを完全に絶縁できない電源装置は、水没すると近接部に漏れ電流が流れる。とくに、電圧ラインは、電極端子に接続されて電極端子と同電位にあるので、近接部の漏れ電流が大きくなる。とくに、電圧ラインは、正負の電極端子の間隔よりも接近している近接部の漏れ電流が大きくなる。近接部の漏れ電流は、電池の安全性を低下させるばかりでなく、過熱による焼損が原因で安全性を低下させる原因となる。漏れ電流は、電位差のある電圧ラインの近接部が接近するほど大きくなるので、近接部で電圧ラインを離して配置することで漏れ電流を小さくできるが、全ての電圧ラインを離して配線することは、スペースを有効利用することから難しく、多数の電圧ラインを備える電源装置は、近接部を設けて電圧ラインを配置している。さらに、電池の電極端子に接続している電圧ラインは、各々の電池の電圧を検出するために使用されるので、ワイヤーハーネスを介して電圧検出回路に接続されるが、ワイヤーハーネスは、コネクタを介して接続され、コネクタの接続部において電圧ラインは近接部となる。コネクタは、オスメスの金属接点を脱着できるように接続するが、電圧ラインに接続している金属接点が互いに接近して近接部となるからである。コネクタは防水絶縁構造として金属接点を絶縁できるが、現実的には、長期間にわたって完全な絶縁状態を保持するのは極めて難しい。
【0006】
この弊害を防止するために、水没状態で電源装置を保護する構造が開発されている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-187915号公報
【特許文献2】特開2012-176669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の公報に記載される水没対策の電源装置は、密閉ケースの上部に空気溜まりができる構造として、ここに電池を収納している。この密閉ケースは、下部を開口して引出線を配線して上部を密閉するので、水没状態で内部の空気が上部に溜まり、この部分に電池を配置して、電池を水没から防止できる。この構造の電源装置は、空気溜まりを設けて、ここに電池や電圧ラインを配置することで、防水絶縁構造を実現できるが、この構造では電源装置全体が大きく、重くなる欠点がある。また、電源装置が転倒する状態で防水絶縁構造を実現できない欠点もある。電源装置が水没する状態は、種々の状態で発生し、たとえば、蓄電装置や電動車両の電源装置にあっては、地震による津波や台風による高潮等で導電性の高い海水が浸入して水没することがあり、さらに電動車両は海中に落下して水没することがある。
【0009】
本発明は、さらに以上の欠点を解決するためになされたものである。本発明の目的の一は、水没時の漏れ電流による弊害を防止して、水没時の安全性を確保する電源装置と、この電源装置を備える蓄電装置及び電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様に係る電源装置は、充電できる複数の電池を直列に接続してなる電池ブロックと、電池ブロックを構成してなる電池の正負の電極端子に接続してなる複数の電圧ラインとを備えている。電圧ラインは、直列に接続してなる各々の電池の正負の電極端子に接続されて、接続された電極端子と同一電位にあり、電池の正負の電極端子に接続してなる電圧ラインは、電池の正負の電極端子の間隔よりも互いに接近して配置してなる近接露出部を有し、電圧ラインは近接露出部の漏れ電流で溶断する電流ヒューズを有し、電流ヒューズを防水絶縁構造としている。
【0011】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置と、電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えて、電源コントローラでもって、外部からの電力により電池セルへの充電を可能とすると共に、電池セルに対し充電を行うよう制御している。
【0012】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置と、電源装置から電力供給される走行用のモータと、電源装置及びモータを搭載してなる車両本体と、モータで駆動されて車両本体を走行させる車輪とを備えている。
【発明の効果】
【0013】
以上の電源装置は、水没時の漏れ電流による安全性の低下を防止できる特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の概略ブロック図である。
図2図1に示す電源装置の電流ヒューズの接続部分を示す拡大断面図である。
図3】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図4】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図5】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、以下の構成によって特定されてもよい。
本発明の第1の実施形態の電源装置は、充電できる複数の電池を直列に接続してなる電池ブロックと、電池ブロックを構成してなる電池の正負の電極端子に接続してなる複数の電圧ラインとを備える。電圧ラインは、直列に接続してなる各々の電池の正負の電極端子に接続されて、接続された電極端子と同一電位にあり、電池の正負の電極端子に接続してなる電圧ラインは、電池の正負の電極端子の間隔よりも互いに接近して配置してなる近接露出部を有し、電圧ラインは近接露出部の漏れ電流で溶断する電流ヒューズを有し、電流ヒューズを防水絶縁構造としている。
【0016】
以上の電源装置は、水没が原因で発生する漏れ電流で電流ヒューズを確実に溶断して、水没時の安全性を高くできる特長がある。とくに、以上の電源装置は、電圧ラインに電流ヒューズを設けて、さらに、この電流ヒューズを防水絶縁構造とするので、水没時には電流ヒューズを確実に溶断できる特長がある。電源装置は、電圧ラインに電流ヒューズを設けて、この電流ヒューズで電圧ラインの電流を遮断して安全性を確保できるが、電源ラインに設けたヒューズは、つねに安定して水没状態で溶断することが難しい。それは、電流ヒューズが水没すると、表面にバイパス電流が流れて、このバイパス電流が電流ヒューズの電流を分流して減少させるからである。とくに、電源装置が導電率の高い水に水没されると、電流ヒューズのバイパス電流が導電率の高い水で増加して電流ヒューズの溶断を阻害して安全性を確保できない。電源装置が、導電率の高い水に水没すると漏れ電流が大きくなって安全性は更に低下するので、この状態で電流ヒューズを確実に溶断することは、極めて大切である。以上の電源装置は、電流ヒューズを防水絶縁構造とするので、導電率の高い水に水没しても大きなバイパス電流が流れることがなく、電圧ラインの近接部に発生する漏れ電流をバイパスすることなく電流ヒューズに流して確実に溶断して高い安全性を確保する。
【0017】
本発明の第2の実施態様の電源装置は、電圧ラインが、近接露出部において導電部を露出している。
【0018】
本発明の第3の実施態様の電源装置は、電圧ラインが、コネクタ接続部を有し、コネクタ接続部を近接露出部としている。
【0019】
以上の電源装置は、コネクタ接続部における漏れ電流による弊害を効果的に抑制して安全性を高くできる特徴がある。
【0020】
本発明の第4の実施態様の電源装置は、電圧ラインの少なくとも一部を配線パターンとしてなる回路基板を備え、回路基板がコネクタ接続部を有している。
【0021】
以上の電源装置は、回路基板に設けているコネクタ接続部の漏れ電流による弊害を抑制して、安全性を高くできる特徴がある。回路基板にコネクタ接続部を設けている従来の電源装置は、水没して水中に配置される状態において、コネクタ接続部に漏れ電流が流れても、漏れ電流で発熱する熱エネルギーは水に吸収されるが、水没状態が解消されて回路基板の表面に水が付着した半乾きの状態になると、水を介して漏れ電流が流れて発熱し、この熱エネルギーが回路基板を炭化し、さらに炭化した回路基板は導電部となって漏れ電流が流れ、この漏れ電流のジュール熱で回路基板が発火して、安全性を著しく阻害することがある。以上の電源装置は、水没すると電流ヒューズを確実に溶断して、電圧ラインの漏れ電流を遮断できるので、従来の電源装置のように、水没して半乾きの状態となっても、回路基板の導電部が漏れ電流で加熱されて炭化することがなく、さらに炭化した導電部が漏れ電流で発火するなどの弊害を確実に防止できる特長がある。
【0022】
本発明の第5の実施態様の電源装置は、電池ブロックを構成してなる各々の電池の電圧を検出する電圧検出回路を備え、電圧ラインが、電圧検出回路と電池の電極端子を接続している。
【0023】
本発明の第6の実施態様の電源装置は、電流ヒューズの溶断電流を、近接露出部の漏れ電流で溶断する電流容量としている。
【0024】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0025】
(実施の形態1)
電源装置は、自然エネルギーや深夜電力の蓄電装置や車載用の電源装置の例を示している。具体的には、この電源装置は、主として蓄電装置、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両の走行モータに電力を供給する電源、無停電電源装置などに使用される。ただ、本発明の電源装置は、蓄電装置、電動車両、無停電電源装置以外の電源、例えば大出力が要求される他の用途にも使用できる。電動車両に搭載される電源装置は、車両に浸水して水没することがあり、また、蓄電装置や無停電装置の電源装置は、集中豪雨などで建物内に浸水して水没することがある。電源装置が水没する最大の原因は集中豪雨による。集中豪雨による水没は、水面レベルが地面から次第に上昇して電源装置が浸水する状態で発生する。
【0026】
(電源装置100)
図1の概略ブロック図に示す電源装置100は、充電できる複数の電池1を直列に接続して電池ブロック10とし、この電池ブロック10を構成している各々の電池1の電極端子11に電圧ライン3を接続している。直列接続している電池1は、全ての電池1の電圧を検出するように電圧ライン3を接続している。図1の電池ブロック10は、複数の電池1を積層して、隣接して積層している電池1をバスバー12で直列に接続している。バスバー12は、隣接して積層している電池1の正負の電極端子11に接続されて、電池1を直列に接続している。電源装置100は、隣接電池1を直列に接続している全てのバスバー12と、電池ブロック10の両端面に配置されて出力端子13に接続される電極端子11とに電圧ライン3を接続している。この電源装置100は、電圧ライン3を介して全ての電池1の電圧を検出できる。電源装置100は、電圧ライン3を介して各々の電池1を電圧検出回路20に接続している。この電源装置100は、電圧検出回路20で各々の電池1の電圧を検出して、電池1の電圧をコントロールしながら充放電できる。
【0027】
(電圧検出回路20)
電源装置100は、電圧検出回路20で電池電圧を検出して、電池1の電圧が設定範囲となるように充放電をコントロールする。電圧検出回路20は、電池1の充放電をコントロールする制御回路(図示せず)に各々の電池電圧を出力する。制御回路は、電池1の電圧が設定範囲となるように電池1の充放電電流をコントロールする。制御回路は、電池電圧を設定範囲に保持して、電池1の過充電や過放電を防止する。この状態で充放電される電池1は、電気特性の低下が抑制されて安全性も高くなる。制御回路は、充電している電池電圧があらかじめ設定している最大電圧まで上昇すると充電電流を遮断あるいは減少し、反対に放電している電池電圧が設定している最低電圧まで低下すると、放電電流を遮断あるいは減少して、電池電圧を設定範囲に維持する。
【0028】
(電圧ライン3)
電源装置100は、電圧ライン3を配線パターン21とする回路基板2を電池ケース9内に配置している。回路基板2は、図1の概略図に示すように、直列に接続している電池1の積層方向に延びる細長い形状で、電圧ライン3の配線パターン21を直列接続している電池1の電極端子11に接続している。この図の電圧ライン3は、配線パターン21の一端を、リード線14を介して電池1の電極端子11に接続している。リード線14は、直接に電極端子11に接続され、あるいはバスバー12を介して電極端子11に接続される。
【0029】
配線パターン21で構成される複数の電圧ライン3は、限られたスペースに配置して各々の電池電圧を検出するために、電池1の正負の電極端子11の間隔よりも互いに接近して配置される近接露出部4ができる。電極端子11よりも互いに接近する近接露出部4は、電源装置100が水没する状態で、漏れ電流が大きくなる。電源装置100が水没する状態で、近接露出部4の漏電抵抗が、電池1の電極端子11間の漏電抵抗よりも小さくなるからである。近接露出部4の間隔を広くして漏れ電流を減少できるが、複数の電圧ライン3を限られたスペースに配置できなくなる。
【0030】
図1に示す回路基板2は、複数の接続ピン6aのあるコネクタ接続部6を固定して、接続ピン6aに配線パターン21を接続している。コネクタ接続部6の接続ピン6aは、電池1の正負の電極端子11よりも接近して配置されるので、電圧ライン3の近接露出部4となる。接続ピン6aの間隔を広くすると、コネクタ接続部6が大きくなって回路基板2の限られたスペースに配置できないからである。コネクタ接続部6の接近する接続ピン6aは、近接露出部4となって、水没状態では導電性の水に流れる漏れ電流が大きくなる。大きな漏れ電流は、ジュール熱を大きくして過熱による種々の弊害の要因となる。発生するジュール熱の熱エネルギーが漏れ電流の二乗に比例して大きくなるからである。
【0031】
たとえば、回路基板2に近接露出部4がある電源装置100は、水没すると近接露出部4に漏れ電流が流れる。漏れ電流は、電源装置100が完全に水没された状態のみでなく、水没状態が解消されて回路基板2の表面に水が付着した半乾きの状態で回路基板2を発火させる等の原因となる。半乾きの状態で、回路基板2の近接露出部4に流れる漏れ電流がジュール熱で発熱して、回路基板2を炭化し、さらに炭化した回路基板2が、漏れ電流のジュール熱で発熱して発火することがあるからである。以上の弊害を防止するために、電圧ライン3は電流ヒューズ5を設けている。電流ヒューズ5は、水没して流れる漏れ電流で溶断される。
【0032】
(電流ヒューズ5)
図1の回路基板2は、水没して流れる漏れ電流を遮断する電流ヒューズ5を電圧ライン3の途中に設けている。この回路基板2は、全ての電圧ライン3に電流ヒューズ5を設けている。電流ヒューズ5は、電圧ライン3の配線パターン21の途中に設けている。電圧ライン3の電流ヒューズ5は、水没して流れる漏れ電流で溶断する電流容量に設定しているが、回路基板2が水没して確実に溶断されないことがある。それは、水没した回路基板2の表面を流れる電流が電流ヒューズ5にバイパスして流れて、電流ヒューズ5の電流を減少させるからである。とくに、水没する水の導電性が高いとバイパス電流が増加して、電流ヒューズ5の確実な溶断が阻害される。
【0033】
電流ヒューズ5は、バイパス電流による溶断不良を解消するために防水絶縁構造としている。図2の要部拡大断面図に示す電流ヒューズ5は、表面全体を被覆するように回路基板2に防水層7を設けて防水絶縁構造としている。防水層7は絶縁材で、回路基板2の表面に隙間なく水密構造に密着されて、電流ヒューズ5の全面を絶縁材の防水層7で被覆している。この防水絶縁構造は、回路基板2の表面に、電流ヒューズ5の全体を被覆するように、絶縁性のプラスチックを塗布して防水層7を設けている。防水層7のプラスチックは、たとえば未硬化状態でペースト状ないし液状で硬化して防水層7となるプラスチック好ましくはウレタン樹脂が使用できる。ただし、回路基板2の表面に塗布して防水層7とする絶縁性のプラスチックは、ウレタン樹脂のみでなく、シリコン樹脂、エポキシ樹脂なども使用できる。
【0034】
図2の回路基板2は、回路基板2の表面の配線パターン21の途中に、電流ヒューズ5をハンダ付けなどの方法で接続して、回路基板2の表面に電流ヒューズ5を固定している。この回路基板2は、ガラスエポキシ等の絶縁基板の表面に、銅箔の配線パターン21を設けて電圧ライン3を設け、さらに絶縁基板の表面を絶縁性のレジスト層22で被覆して、配線パターン21の表面を絶縁している。レジスト層22は、表面に電圧ライン3の配線パターン21を設けた状態で、電流ヒューズ5の接続部を除く領域に塗布して設けられる。電流ヒューズ5は、レジスト層22で被覆されない配線パターン21にハンダ付けして固定される。電流ヒューズ5を固定した回路基板2の表面に防水層7を設けて、電流ヒューズ5は防水層7で被覆された防水絶縁構造で回路基板2に配置される。
【0035】
以上の電源装置100は、回路基板2の表面にレジスト層22を設けて電流ヒューズ5を固定し、この状態で電流ヒューズ5全面を被覆するように防水層7を設けて、電流ヒューズ5を防水絶縁構造とする。電流ヒューズ5をこの構造で防水絶縁構造とする電源装置100は、回路基板2に設けた配線パターン21と電流ヒューズ5の両方を防水絶縁構造として、水没状態で確実に電流ヒューズ5を溶断できる。それは、電流ヒューズ5と配線パターン21の両方を介して流れる漏れ電流による電流ヒューズ5のバイパス電流を抑制して、水没して流れる漏れ電流で電流ヒューズ5を確実に溶断できるからである。ただ、本発明の電源装置は、電流ヒューズ5の防水絶縁構造を以上の構造に特定するものでなく、電流ヒューズ5のバイパス電流を抑制する全ての防水絶縁構造、たとえば、リード線14の途中に接続している電流ヒューズ5を絶縁材の熱収縮チューブで水密構造に被覆する構造などによっても、電流ヒューズ5を防水絶縁構造として、電流ヒューズ5のバイパス電流を抑制できるからである。
【0036】
さらに、以上の電源装置100は、回路基板2に設けたコネクタ接続部6を近接露出部4としているが、本発明の電源装置は、近接露出部をコネクタ接続部6に特定するものでなく、電圧ライン3が電池1の正負の電極端子11よりも互いに接近して露出する全ての領域、たとえば図示しないが、電圧ラインのリード線をハンダ付けするために、回路基板に互いに接近して配置している複数のハンダ端子、あるいは、複数の電圧ラインからなるワイヤーハーネスを接続するためのコネクタ接続部、さらに複数の回路基板をコネクタで直接に接続するコネクタ接続部などの電圧ラインが互いに接近する部分等を近接露出部とすることもある。
【0037】
以上の電源装置100は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置100を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、電動車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置100を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築した例として説明する。
【0038】
(ハイブリッド車用電源装置)
図3は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池1を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池1を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池1を充電する。なお、車両HVは、図3に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0039】
(電気自動車用電源装置)
また、図4は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置100を搭載する例を示す。この図に示す電源装置100を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池1を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池1を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0040】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池1を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図5は、電源装置100の電池1を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0041】
図5に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池1を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池1を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0042】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池1を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0043】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る電源装置は、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。また、本発明に係る電源装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0045】
100…電源装置
1…電池
2…回路基板
3…電圧ライン
4…近接露出部
5…電流ヒューズ
6…コネクタ接続部
6a…接続ピン
7…防水層
9…電池ケース
10…電池ブロック
11…電極端子
12…バスバー
13…出力端子
14…リード線
20…電圧検出回路
21…配線パターン
22…レジスト層
81…建物
82…太陽電池
83…充電回路
84…充電スイッチ
85…DC/ACインバータ
86…負荷
87…放電スイッチ
88…電源コントローラ
91…車両本体
93…モータ
94…発電機
95…DC/ACインバータ
96…エンジン
97…車輪
98…充電プラグ
HV、EV…車両
図1
図2
図3
図4
図5