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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177341
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】温度センサの補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/20 20210101AFI20221124BHJP
   G01K 1/024 20210101ALI20221124BHJP
   G01K 15/00 20060101ALI20221124BHJP
   G01K 7/25 20060101ALI20221124BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01K7/00 361C
G01K1/02 E
G01K15/00
G01K7/25 D
A61B5/01 100
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019199233
(22)【出願日】2019-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】514146748
【氏名又は名称】株式会社トライアンドイー
(74)【代理人】
【識別番号】100167416
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 佳男
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬博
【テーマコード(参考)】
2F056
4C117
【Fターム(参考)】
2F056AE01
2F056AE05
2F056AE07
2F056RD01
2F056RD03
2F056RD05
2F056XA01
2F056XA07
4C117XB01
4C117XC12
4C117XC15
4C117XD15
4C117XE23
4C117XG05
4C117XG19
4C117XG20
4C117XH02
4C117XH16
4C117XJ16
4C117XJ46
4C117XJ47
4C117XJ52
(57)【要約】
【課題】本発明は、温度センサを体温計本体に着脱自在とし、温度センサを取り替えるたびに当該温度センサを補正することによりウェアラブル体温計の体温計本体の再利用を可能とし、温度センサのみを使い捨てにすることが可能となる、温度センサの補正方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る温度センサの補正方法は、該温度センサは対応する情報記録媒体を構成要素とし、温度センサ毎に恒温槽内でサンプリングした元抵抗値を取得する元抵抗値取得行程と、該温度センサにおいて、元抵抗値と、サンプリング時における恒温槽内で標準温度計で計測した実温度からB定数を用いて導き出される抵抗値との差に基づいて、補正係数を指定する値を算出する算出行程と、該補正係数を指定する値を情報記録媒体に記録する記録行程と、情報記録媒体から、体温を端末に補正係数を指定する値を読み込ませる読込行程と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスデータ通信を行うウェアラブル体温計の体温計本体に着脱自在に取り付けられ、標的対象の体温を感知して温度を測定するための温度センサの補正方法において、
前記ウェアラブル体温計は、体温計本体と、NTCサーミスタからなる温度センサとからなり、
前記温度センサは対応する情報記録媒体を構成要素として持ち、
温度センサ毎に恒温槽内でサンプリングした元抵抗値を取得する元抵抗値取得行程と、
前記温度センサにおいて、前記元抵抗値と、前記サンプリング時における前記恒温槽内で標準温度計で計測した実温度からB定数を用いて導き出される抵抗値との差に基づいて、補正係数を指定する値を算出する算出行程と、
前記補正係数を指定する値を前記情報記録媒体に記録する記録行程と、
前記情報記録媒体から、体温を使用者が視覚的及び/又は聴覚的に確認できる端末に前記補正係数を指定する値を読み込ませる読込行程と、
を備えることを特徴とする温度センサの補正方法。
【請求項2】
前記情報記録媒体は、アンテナと該アンテナを介して電波を送信する無線通信ICとからなるタグであって、前記読込行程は、前記タグから、標準的なNFC通信プロトコルを利用して、前記端末に前記補正係数を指定する値を送信する行程であることを特徴とする請求項1に記載の温度センサの補正方法。
【請求項3】
前記タグは、前記ウェアラブル体温計に取付ける前記温度センサの任意の場所又は前記ウェアラブル体温計に取付ける前記温度センサのパッケージ上又は同梱物の任意の場所に備えることを特徴とする請求項2に記載の温度センサの補正方法。
【請求項4】
前記情報記録媒体は、バーコードであって、前記読込行程は、前記バーコードを、前記端末の読込部で、前記端末に前記補正係数を指定する値を読み込ませる行程であることを特徴とする請求項1に記載の温度センサの補正方法。
【請求項5】
前記端末の演算媒体において、前記補正係数を指定する値に基づき、前記元抵抗値と実温度との関係を算出して抵抗・温度変換テーブルを作成し、作成した該抵抗・温度テーブルを前記端末の情報記録媒体に記録することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の温度センサの補正方法。
【請求項6】
前記抵抗・温度変換テーブルは、前記補正係数を指定する値に応じて演算し再作成され、書き換え可能な前記端末の情報記録媒体に記録することを特徴とする請求項5に記載の温度センサの補正方法。
【請求項7】
前記端末の演算媒体において、予め予測した補正係数を指定する値に基づき、前記元抵抗値と実温度との関係を算出し、複数の抵抗・温度変換テーブルを作成し、作成した複数の該抵抗・温度テーブルを前記端末の情報記録媒体に記録することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の温度センサの補正方法。
【請求項8】
前記読込行程は、前記タグから、標準的なNFC通信プロトコルを利用して、前記端末に前記抵抗・温度変換テーブルを指定する情報を送信することにより行われることを特徴とする請求項7に記載の温度センサの補正方法。
【請求項9】
前記読込行程は、前記バーコードを、前記端末の読込部で、前記端末に前記抵抗・温度変換テーブルを指定する情報を読み込ませることにより行われることを特徴とする請求項7に記載の温度センサの補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスデータ通信を行う体温計本体に着脱自在に取り付けられ、標的対象の体温を感知して温度を測定するための温度センサの補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等医療機関では、定期的に患者の体温を測定し、測定結果の管理を行なっている。一般に、体温の測定に際して、体温計を被検者の測定部位に装着し、測定が完了するまでの一定期間、静止した状態を維持させ、測定が完了すると、測定者が測定結果を確認し記録する。しかしながら、被検者が幼児や重病の患者の場合、体温計を測定部位に装着させ続けることは困難であり、正確な体温測定を行うことは容易ではなく、また、新生児や幼児において夜間などに体温が急激に変化する場合、経時的に体温を計測することでこれらの変化を客観的に捉える必要がある。さらに、測定結果を確認し記録する作業は、測定者にとって負荷が高く、測定者の手間を軽減することが望まれる。
【0003】
近年、ポータブルコンピュータ、スマートフォン、又はタブレットを活用する医療技術への関心が高まっているが、すでに、いわゆるウェアラブルの体温計測デバイスが開発され、無線通信手段を介して、体温を測定した測定結果を確認し記録することが可能になっている。
【0004】
特許文献1に記載する体温測定記録装置は、ウェアラブル体温計であってメモリに患者の体温を経時的に収集する、体温ロギング用パッチ(以下、「パッチ」という。)を提案している。この体温測定装置は、パッチを患者の身体上、たとえば額、胴部、腕部、脚部、または他の身体上の位置に着用することができ、複数のセンサを通して、患者の同じ位置または異なる位置における複数の温度を感知することができ、さらに、無線通信手段を介して、体温を測定した測定結果を確認し記録することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2016-505808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係るパッチは、使い捨ての製品であるが、利用者にとって使い捨てにするにはコスト高となる。そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、温度センサを体温計本体に着脱自在とし、温度センサを取り替えるたびに当該温度センサからの出力を補正して正しい計測温度を得られるようにすることにより、ウェアラブル体温計の温度センサ以外の部分の再利用を可能とし、使い捨てによるコストを低減させることが可能な、温度センサの補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る温度センサの補正方法は、ワイヤレスデータ通信を行うウェアラブル体温計の体温計本体に着脱自在に取り付けられ、標的対象の体温を感知して温度を測定するための温度センサの補正方法において、
ウェアラブル体温計は、体温計本体と、NTCサーミスタからなる温度センサとからなり、
該温度センサは対応する情報記録媒体を構成要素として持ち、
温度センサ毎に恒温槽内でサンプリングした元抵抗値を取得する元抵抗値取得行程と、該温度センサにおいて、元抵抗値と、サンプリング時における恒温槽内で標準温度計で計測した実温度からB定数を用いて導き出される抵抗値との差に基づいて、補正係数を指定する値を算出する算出行程と、該補正係数を指定する値を情報記録媒体に記録する記録行程と、情報記録媒体から、体温を使用者が視覚的及び/又は聴覚的に確認できる端末に補正係数を指定する値を読み込ませる読込行程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
なお、情報記録媒体は、アンテナと該アンテナを介して電波を送信する無線通信ICとからなるタグであって、読込行程は、該タグから、標準的なNFC通信プロトコルを利用して、端末に補正係数を指定する値を送信する行程であるようにしてもよい。また、タグは、ウェアラブル体温計に取付ける温度センサの任意の場所又はウェアラブル体温計に取付ける前記温度センサのパッケージ上又は同梱物の任意の場所に備えることができる。
【0009】
また、情報記録媒体は、バーコードであって、読込行程は、該バーコードを、端末の読込部で、端末に補正係数を指定する値を読み込ませる行程であるように構成してもよい。
【0010】
さらに、端末の演算媒体において、補正係数を指定する値に基づき、元抵抗値と実温度との関係を算出して抵抗・温度変換テーブルを作成し、作成した該抵抗・温度テーブルを端末の情報記録媒体に記録するようにしてもよい。そして、抵抗・温度変換テーブルは、補正係数を指定する値に応じて演算し再作成され、書き換え可能な端末の情報記録媒体に記録することも可能である。またさらに、端末の演算媒体において、予め予測した補正係数を指定する値に基づき、前記元抵抗値と実温度との関係を算出し、複数の抵抗・温度変換テーブルを作成し、作成した複数の該抵抗・温度テーブルを端末の情報記録媒体に記録するようにしてもよい。
この場合、読込行程は、タグから、標準的なNFC通信プロトコルを利用して、端末に前記抵抗・温度変換テーブルを指定する情報を送信するようにしてもよいし、バーコードを、端末の読込部で、端末に前記抵抗・温度変換テーブルを指定する情報を読み込ませるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る温度センサの補正方法によれば、温度センサを体温計本体に着脱自在とした場合に、温度センサを取り替えるたびに当該温度センサを補正してウェアラブル体温計の再利用を可能とし、数回の使用後に体温計本体を使い捨てにすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る温度センサの補正方法のフロー図である。
図2】体温計本体と、ウェアラブル体温計の構造を示す図である。
図3】体温計本体の通信送受信部において、体温の測定温度を受信するシステムを示す概略図である。
図4】体温計本体の通信送受信部において、体温の測定温度を受信する別のシステムを示す概略図である。
図5】体温計本体の通信送受信部において、体温の測定温度を受信するさらに別のシステムを示す概略図である。
図6】本発明に係る温度センサの補正方法の実施例2に係るフロー図である。
図7】本発明に係る温度センサの補正方法の実施例3に係るフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施の形態に限定されるものではない。
【実施例0014】
実施例1を図面を参照して詳細に説明する。
上述したとおり、電子体温計の温度センサの特性には個体差があることから、個々の電子体温計ごとに補正(キャリブレーション)、すなわち個体差のある各々の温度センサの補正係数を求め、内蔵するメモリへの書き込みを行う必要がある。一般的に温度センサに用いられるサーミスタには、抵抗値の変化の仕方により、NTCサーミスタとPTCサーミスタがあるが、NTCサーミスタは、温度が上がると抵抗値が下がり、PTCサーミスタは、ある温度まで抵抗値が一定で、ある温度を境に急激に抵抗値が高くなる。
実施例1において、ウェアラブル体温計1に用いられる温度センサ20はNTCサーミスタを用いることを前提に説明する。
【0015】
図1を参照する。図1は、本発明に係る温度センサ20の補正方法のフロー図である。図1に示すとおり、本発明に係る温度センサ20の補正方法は、ワイヤレスデータ通信を行うウェアラブル体温計1に着脱自在に取り付けられ、標的対象の体温を感知して温度を測定するために、温度センサ毎に元抵抗値をサンプリングし、その元抵抗値を取得する元抵抗値取得行程(S01)と、取得した元抵抗値と、サンプリング時における恒温槽内で標準温度計で計測した実温度からB定数を用いて導き出される抵抗値との差に基づいて、補正係数を指定する値を算出する算出行程(S02)と、温度センサの情報記録媒体に補正係数を記録する記録行程(S03)と、を備え、補正係数を使用者が体温を視覚的及び/又は聴覚的に確認できる端末に送信する(S04)ことを特徴とする。
【0016】
図2を参照する。図2は、体温計本体と、ウェアラブル体温計1の構造を示す図である。ここで、ウェアラブル体温計1について、詳細に説明する。図2(b)に示すとおり、実施例1に係るウェアラブル体温計1は、腕時計型の仕様で、体温計本体10と、体温計本体10を保持する体温計保持部30とを備える。該体温計保持部30は、体温計本体留めベルト32とベルト31とを備える。ベルト31は、内側の任意の場所に標的対象の温度を感知するように構成された温度センサ20を着脱自在に取り付けることができる。したがって、使用者は、ベルト31、体温計本体留めベルト32、後述する温度センサ20をひとまとめで使い捨てすることが可能である。また、温度センサ20のみを着脱自在とすることもできる。
なお、前記ウェアラブル体温計は、その任意の場所に、アンテナと該アンテナを介して電波を送受信する無線通信ICとからなるタグと、NTCサーミスタからなる温度センサとを備える。タグは、後述する図3~5に示す、ウェアラブル体温計1で測定された体温を受信して確認することができる端末2にNFCを通じて送信することができる。NFCは、送信側では電力の供給は必要とすることなく、あらかじめ書き込まれた情報を、受信側(読み取り側)に送信できることを特徴とする通信方式である。実施例1では、温度センサ20の備える情報記録媒体に補正係数があらかじめ書き込まれている(図1のS03工程)。
また、図2(a)に示すとおり、体温計本体10は、基本的に、電池と、演算媒体と記憶媒体とを備えるマイクロプロセッサと、ワイヤレス通信送信部と、アンテナと、を内蔵し、なお、電池は、マイクロプロセッサおよび温度センサに電力を供給する。
なお、本発明において、体温計本体10は体温確認部を備えていても備えていなくてもよく、補正係数が送信された端末2に体温確認部が備えられていればよい。
【0017】
図3は、ウェアラブル体温計1から体温の測定温度情報(計測された抵抗値そのもの、あるいは、計測された抵抗値に相当する温度データ)を送信し、端末2においてその体温測定温度情報を受信する例示的なシステムを示す概略図である。
端末2は、少なくとも体温確認部と演算媒体と情報記録媒体とを備える。端末2はさらに、タグから送信される補正係数を受信するNFC読み取り部と、補正前の温度データ(計測された抵抗値そのもの、あるいは、計測された抵抗値に相当する温度データ)を受信するワイヤレス通信受信部とを備える。
端末2において体温測定時には、NFC読み取り部で受信した補正係数を用い、ワイヤレス通信受信部で受信した補正前の温度データに演算を施すことにより、補正された正しい実温度値を得ることができる。
【0018】
端末2の演算媒体において、温度センサ20のNFC送信部分から送信された補正係数に基づき、予め元抵抗値と実温度との関係を算出して抵抗・温度変換テーブルを作成し、この抵抗・温度変換テーブルを端末2の情報記録媒体に記録する。このようなテーブルを作成しておけば、体温測定時、端末2はその都度演算することなく、このテーブルを参照するだけで、実温度の値を得ることができるので、温度確認までの時間短縮やコストの低減を図ることができる。
なお、前記のように単一の抵抗・温度変換テーブルを作成し記録する場合は、補正係数の値に応じて演算し、抵抗・温度変換テーブルを再作成され、書き換え可能な記録装置に記録されることが望ましい。すなわち、情報記録媒体に記録されているテーブルを上書きすることが望ましい。
【0019】
また、予め予測した補正係数に基づいて、元抵抗値と実温度との関係を算出し、複数の抵抗・温度変換テーブルを作成して記録する。このように複数のテーブルを作成しておけば、タグから送信された補正係数に適する抵抗・温度変換テーブルを選択することで、送信された補正係数の値に応じて演算して抵抗・温度変換テーブルを再作成する必要が無くなり、演算コストの低減が可能になる。なお、「補正係数に適する抵抗・温度変換テーブル」は、複数あるテーブルのうちの一番近似するテーブルのことを意味し、近似値で代用すると言い換えてもよい。
【0020】
また、実施例1では、ベルト31、体温計本体留めベルト32、温度センサ20をひとまとめで着脱可能であり、使い捨てにする構成にしていたが、温度センサ20のみを着脱可能にして使い捨てにする構成も可能であり、これらに限定されない。
【0021】
また、実施例1では、温度センサ20とタグとはひとまとまりの構成であるが、ベルト31、体温計本体留めベルト32、温度センサ20をひとまとめに使い捨てにできるようにしている場合、ベルト31、あるいは、体温計本体留めベルト32にタグだけを備える構成も可能であるし、使い捨て部分(実施例1の場合、ベルト31、体温計本体留めベルト32、温度センサ20をひとまとめにしたもの)を取り換えるときに、新しいもののパッケージや取扱説明書にタグを備えることも可能である。上記の例に限らず、温度センサ20の個体を指定できる部分にタグを備える構成が可能である。
【0022】
前述したとおり、測定された温度データ(計測された抵抗値そのもの、あるいは、計測された抵抗値に相当する温度データ)は、体温を確認する端末2に送信されて実温度が算出され、使用者は当該端末で確認し、経時的に実温度をチャートに出力(印刷やメール等)することができるとともに、日時設定による過去トレンドグラフの呼出しを可能にしてもよい。また、患者ごとに音若しくは視覚的に又はその両方のアラームを設定することもできる。例えば、音は端末システム内蔵の音の中から選択したり、色は画面の一部または背景を赤色(黄色)に変えたり、所望の設定をするとよい。また、複数の患者の体温データをソフトウェアで一元管理すると使い勝手がよい。
【0023】
図4~5は、体温計本体10の通信送受信部において、体温の測定温度を受信する例示的なシステムを示す概略図である。図4~5に示すとおり、測定された温度データ(計測された抵抗値そのもの、あるいは、計測された抵抗値に相当する温度データ)は、専用の端末2で受信し得るが、端末2としては、適合する無線通信プロトコルを用いて動作できる、PC、スマートフォン、タブレットなどが例示されている。端末は、アプリケーションを実行できるプログラム可能なマイクロプロセッサと、電源と、ディスプレイと、体温計本体10と双方向通信可能なワイヤレス送信送受信部と、を備える。好ましくは、インターネット等、ローカルネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)上で通信できることが望ましい。測定温度データ(計測された抵抗値そのもの、あるいは、計測された抵抗値に相当する温度データ)または補正されて得られた実温度は、要求に応じておよび/または事前設定された間隔で得ることができ、読み取りデバイス(たとえば、スマートフォン、タブレット、ポータブルコンピュータ、センサ等)のメモリにローカルに格納され得る。
【0024】
送信される補正係数(補正係数を指定する情報)は、適合する高周波/近距離無線通信NFC無線プロトコルおよびIS0-15693RFID無線プロトコルを用いて動作できる、標準的なスマートフォン、タブレット、PC等によって読み取られ得る。例えば、ウェアラブル体温計1をある人に装着し、その後、別の人に装着したい場合、人肌に接する部分である、ベルトを含めた温度センサを取り換えることを考える。高周波/近距離無線通信NFCおよびIS0-15693RFID対応のスマートフォン2を用いて、新しい温度センサに対する補正係数を読み取ることにより、新しい温度センサを持つウェアラブル体温計1を装着した患者の体温(補正された実温度)の推移を、そのスマートフォン2において計測することができるようになる。近距離無線通信(NFC)により、スマートフォン等が、それらを共に接触させるかまたはそれらを近接させることによって互いの無線通信を確立することができる。NFC規格は、通信プロトコルおよびデータ交換フォーマットを包含しており、ISO/IEC14443、ISO/IEC15693およびFeliCa(登録商標)を含む既存の無線周波数識別(RFID)規格に基づいている。NFCは、ISO/IEC18000-3エアインターフェースに基づく13.56MHzで、106kbit/sから424kbit/sの範囲の速度で動作する。
このように、ウェアラブル体温計1を別の患者に装着しようとするとき、全体を使い捨てにすることなく、温度センサを含む人肌に触れる部分だけを使い捨てにすることが可能になり、コストの低減を図ることができる。
【0025】
ウェアラブル体温計1は、そのワイヤレス通信送受信部にBluetooth(登録商標)とNFCを搭載するようにして、温度データ(計測された抵抗値そのもの、あるいは、計測された抵抗値に相当する温度データ)の出力はBluetooth(登録商標)で、温度センサ20の補正(キャリブレーション)はNFCで行うようにする。このようにNFCを活用すれば、いくつかの手順を踏んだり、パスコードを入力したりする必要がなく、タグに、例えばスマートフォンでタッチするだけで、温度センサ20の補正を容易に行うことが可能となる。
【0026】
温度データ(計測された抵抗値そのもの、あるいは、計測された抵抗値に相当する温度データ)の送受信するワイヤレスデータ通信について記載してきたが、そのプロトコルに関して、規格に基づいたプロトコルおよび独自仕様のプロトコルをも含め、様々な他のワイヤレス通信プロトコルも使用可能であることが理解されるであろう。例えば、RFID、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等のうちのいずれかまたは全てを利用することができる。
【0027】
端末2のディスプレイ(体温確認部)について説明する。まず、画面構成は、デバイス登録及び患者パラメータ入力画面、一覧モニタリング画面、現時刻表示、体温の表示、アラーム設定値、患者名、部屋番号、床番号表示、アラーム中断ボタン、選択モニタリング画面、現時刻表示、トレンドグラフ、アラーム設定の有/無、アラーム中断ボタン、全患者パラメータの表示、日時設定による過去トレンドグラフ呼出し、各種設定画面として、アラーム音選択、アラーム中断時間の設定等が表示され、使用者は視覚的に確認することができる。
また、端末2の体温確認部は、視覚的に確認するのではなく、スピーカによって音声を発生させて聴覚的に確認可能なようにしてもよい。例えば、端末2は、体温確認部として、スピーカを含む音声発生部を備えてもよいし、又は外付スピーカを端末2に接続するようにしてもよい。該音声発生部は、上述した画面構成要素を音声として出力させて、使用者は聴覚的に確認するようにしてもよい。
【0028】
再度、本発明に係る温度センサ20の補正方法のフローを説明する。まず、元抵抗値取得行程(S01)は、温度センサ毎に元抵抗値をサンプリングし、その元抵抗値を取得する行程である。このサンプリングは、ウェアラブル体温計1に取り付ける温度センサを、標準温度計とともに、37℃の恒温槽内で行なうとよい。
【0029】
次に、補正係数を算出する算出行程(S02)は、温度センサ20の元抵抗値取得行程(S01)で取得した元抵抗値と、サンプリング時における恒温槽内で標準温度計で計測した実温度からB定数を用いて導き出される抵抗値との差に基づいて、温度を補正するための補正係数を算出する行程である。これは、サーミスタのB定数を使って温度から抵抗値を求めることができ、逆に抵抗値から温度を求めることができることを利用するものである。
【0030】
そして、算出行程(S02)で算出した補正係数を温度センサの情報記録媒体に記録する(S03)。実施例1において、タグに補正係数を書き込むことに相当する工程である。
【0031】
記録行程(S03)で情報記録媒体に記録した補正係数を、使用者が体温を視覚的及び/又は聴覚的に確認できる端末に送信する(S04)。
【実施例0032】
実施例2を図面を参照して詳細に説明する。実施例2は実施例1と異なる部分のみ説明を記載する。実施例2に記載部分以外は、実施例1と同じである。
【0033】
図6を参照する。図6は、本発明に係る温度センサ20の補正方法の図1とは別のフロー図である。
図6に示すとおり、本発明に係る温度センサ20の補正方法は、
標的対象の体温を感知して温度を測定するために、
予め、端末2の演算媒体において、補正係数に基づいた元抵抗値と実温度との関係を算出して抵抗・温度変換テーブルを作成しておき、
その上で、温度センサ毎に元抵抗値をサンプリングし、その元抵抗値を取得する元抵抗値取得行程(S21)と、取得した元抵抗値と標準温度計で計測した抵抗値との差に基づいて、温度を補正するための補正係数を算出する算出行程(S22)と、情報記録媒体に補正係数に対応する抵抗・温度変換テーブルを指定する情報を記録する記録行程(S23)と、を備え、
NFC部分が端末に当該抵抗・温度変換テーブルを指定する情報を送信する(S24)ことを特徴とする。
すなわち、図6に示すとおり、タグから送信される補正係数の代わりに、テーブルを指定する情報とする構成としてもよい。図1のS03工程において、タグに補正係数をあらかじめ書き込む代わりに、テーブルを指定する情報を書き込むことで、その構成が可能である。このように、タグから送信される値が、必ずしも補正係数そのものでなくてもよく、実温度を得るために用いる補正係数を指定できる値であればよい。
【実施例0034】
実施例3を図面を参照して詳細に説明する。なお、実施例1と実施例2は、情報記録媒体に相当するものを電子的な媒体、例えば、タグを選択して説明したが、実施例3は、情報記録媒体に相当するものを非電子的な媒体、例えば、数字やバーコード等を採用するものである。
【0035】
図7に示すとおり、本発明に係る温度センサ20の補正方法は、標的対象の体温を感知して温度を測定するために、
温度センサ毎に元抵抗値をサンプリングし、その元抵抗値を取得する元抵抗値取得行程(S31)と、取得した元抵抗値と、サンプリング時における恒温槽内で標準温度計で計測した実温度からB定数を用いて導き出される抵抗値との差に基づいて、補正係数を指定する値を算出する算出行程(S32)と、
補正係数は、バーコードに補正係数を記録する記録行程(S33)と、を備え、使用者が体温を視覚的及び/又は聴覚的に確認できる端末は、その読込部(バーコードリーダ)で該バーコードを読み込むことにより補正係数を指定する値を読み込む(S34)。
さらに、実施例2のように、予め、端末2の演算媒体において、補正係数に基づいた元抵抗値と実温度との関係を算出して抵抗・温度変換テーブルを作成しておく場合、読込行程は、バーコードを、端末の読込部で、端末に前記抵抗・温度変換テーブルを指定する情報を読み込ませるようにしてもよい。
なお、情報記録媒体がバーコードではなく、温度センサのパッケージ又は説明書に補正係数を指定する値が数字で記入してあり、これを手入力で端末に入力するようにしてもよいし、文字認識(OCR)で端末に入力するようにしてもよい。
【0036】
以上、本発明の温度センサの補正方法における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の温度センサの補正方法は、病院等医療施設のみならず、家庭用体温計としても広く利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ウェアラブル体温計
2 端末
10 体温計本体
20 温度センサ
30 体温計保持部
31 ベルト
32 体温計本体留めベルト
S01 S21 S31 元抵抗値取得行程
S02 S22 S32 補正係数算出行程
S03 S23 S33 記録行程
S04 S24 S34 読込行程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7