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  • 特開-眼科処置装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177347
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】眼科処置装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20221124BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
A61F9/007 200Z
A61L2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083535
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】安川 力
(72)【発明者】
【氏名】山内 知房
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA28
4C058BB07
4C058EE26
4C058JJ06
4C058JJ21
4C058JJ27
(57)【要約】
【課題】眼科処置を清潔に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】空間を形成する第1空間形成部と、開閉可能な第1開閉部を介して第1空間形成部に隣接して設けられ、消毒液を注入するための空間を形成する第2空間形成部と、を備え、第1空間形成部は、使用者の指を外部から挿入するための第1グローブを有し、第2空間形成部は、患者の眼の周囲を覆う開口部を有し、患者の眼の周囲を開口部に密着させた状態で、第1グローブを用いて眼科処置が行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科処置装置であって、
空間を形成する第1空間形成部と、
開閉可能な第1開閉部を介して前記第1空間形成部に隣接して設けられ、消毒液が注入される空間を形成する第2空間形成部と、
を備え、
前記第1空間形成部は、使用者の指を外部から挿入するための第1グローブを有し、
前記第2空間形成部は、患者の眼の周囲を覆う開口部を有し、
前記患者の眼の周囲を前記開口部に密着させた状態で、前記第1グローブを用いて眼科処置が行われる、
眼科処置装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科処置装置において、
前記第1空間形成部は、フィルターを含む第1吸気口を有し、前記第1吸気口を介して外部から気体が入ることによって容積が増大する、
眼科処置装置。
【請求項3】
請求項2に記載の眼科処置装置において、
前記第1空間形成部は、前記第1空間形成部の骨格を形成する骨格形成部を備え、
前記骨格形成部は、第2吸気口を有し、
前記第2吸気口を介して外部から前記骨格形成部に気体が封入されることによって、前記第1空間形成部の形状が維持される、
眼科処置装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の眼科処置装置において、さらに、
前記眼科処置に使用する第1の道具が収容される空間を形成する第3空間形成部を備え、
前記第3空間形成部は、開閉可能な第2開閉部を介して前記第1空間形成部に隣接して設けられている、
眼科処置装置。
【請求項5】
請求項4に記載の眼科処置装置において、
前記第3空間形成部には、開閉可能な第1シール部が形成されており、前記第1シール部を介して前記第1の道具が外部から搬入される、
眼科処置装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の眼科処置装置において、さらに、
開閉可能な第2シール部を介して前記第3空間形成部に隣接して設けられ、空間を形成する第4空間形成部を備え、
前記第4空間形成部は、前記指を外部から挿入するための第2グローブを有し、
前記第4空間形成部には、開閉可能な第3開閉部が形成されており、前記第3開閉部には、前記眼科処置に使用する第2の道具が入ったパックを外部から貼り付けることができ、
前記第2グローブを用いて、前記パックから前記第2の道具を取り出して前記第3空間形成部へと移動させることができる、
眼科処置装置。
【請求項7】
請求項6に記載の眼科処置装置において、
前記第4空間形成部は、フィルターを含む第3吸気口を有し、前記第3吸気口を介して外部から気体が入ることによって容積が増大する、
眼科処置装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の眼科処置装置において、
前記第2空間形成部には、注入される前記消毒液を含んだ消毒液収納部が設けられている、
眼科処置装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の眼科処置装置において、
前記第1空間形成部には、前記患者の眼と対向する位置に、拡大ルーペが設けられている、
眼科処置装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の眼科処置装置において、
前記第1空間形成部には、光源が設けられている、
眼科処置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科処置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性や近視性脈絡膜新生血管、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫等の眼科疾患に対する治療を目的として、血管内皮増殖因子阻害薬などの硝子体内注射が実施されることがある。眼内は硝子体ゲルで満たされており、血管網膜関門によって、血球や抗体による細胞免疫や液性免疫機能から隔絶されている。このため、細菌が外部から硝子体腔に入ると、容易に感染を起こし、細菌の種類によっては数時間から数日で不可逆的な高度の視機能障害に至るおそれがある。このような感染性眼内炎は、内眼手術に限らず、硝子体内注射手技を行う場合においても、低頻度ではあるが起こり得る重大な合併症である。このため、硝子体内注射は、眼内炎を発症するリスクを低減するために、手術室等の無菌室や、人通りが少なく空気清浄機が設置されたスペース等、病院内で実施されている。
【0003】
しかしながら、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫等の眼科疾患は、高齢者の発症が多く、他の全身疾患が併存している場合や、歩行困難な場合では付き添いの家族の事情等で、患者が治療施設へ通院することが困難な場合がある。また、COVID-19等の感染拡大が懸念される状況や、被災地等においても、治療施設への通院が困難であり、また、清潔な治療スペースを確保できない事態が想定される。この結果、治療を断念せざるを得ない事例もあり、その眼科疾患によって視覚障害に至った患者のQOL(Quality of Life)が低下し、さらには介護者等の負担が増える等の問題がある。
【0004】
ここで、例えば、特許文献1には、患者と施術者との間に実質的な密閉された空間を形成し、その密閉空間内で手術を施行できるように構成された密閉テント様構造物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/095849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、手術中の患者の出血に起因して術者が血液感染することを抑制することを目的としている。このため、特許文献1の技術を、眼科疾患に対する硝子体内注射の施行にそのまま適用することはできない。したがって、清潔ではない環境においても、硝子体内注射を清潔に行うことができる技術が求められていた。このような課題は、硝子体内注射に限らず、外眼部手術(眼瞼縫合、眼瞼下垂手術、内反症手術、眼瞼腫瘍摘出術など)や、結膜縫合、結膜下注射、後部テノン嚢下投与、翼状片手術、涙道手術等の種々の眼科処置を行う場合においても共通の課題であった。すなわち、眼科処置を清潔に行うことができる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、眼科処置装置が提供される。この形態の眼科処置装置は、空間を形成する第1空間形成部と、開閉可能な第1開閉部を介して前記第1空間形成部に隣接して設けられ、消毒液が注入される空間を形成する第2空間形成部と、を備え、前記第1空間形成部は、使用者の指を外部から挿入するための第1グローブを有し、前記第2空間形成部は、患者の眼の周囲を覆う開口部を有し、前記患者の眼の周囲を前記開口部に密着させた状態で、前記第1グローブを用いて眼科処置が行われる。この形態の眼科処置装置によれば、第1グローブを有する第1空間形成部と、第1開閉部を介して第1空間形成部に隣接して設けられて消毒液が注入される第2空間形成部とを備え、第2空間形成部に形成された開口部を患者の眼の周囲に密着させた状態で、第1グローブを用いて眼科処置が行われるので、患者の眼を消毒した状態で、第1グローブを用いて眼科処置を清潔に行うことができる。このため、眼内炎を発症するリスクを抑制しつつ眼科処置を実施できる。
【0009】
(2)上記形態の眼科処置装置において、前記第1空間形成部は、フィルターを含む第1吸気口を有し、前記第1吸気口を介して外部から気体が入ることによって容積が増大してもよい。この形態の眼科処置装置によれば、第1吸気口を介して外部から気体が入ることによって第1空間形成部の容積が増大するので、眼科処置装置の運搬時や収納時において第1空間形成部を小型化できる結果、眼科処置装置を小型化できる。
【0010】
(3)上記形態の眼科処置装置において、前記第1空間形成部は、前記第1空間形成部の骨格を形成する骨格形成部を備え、前記骨格形成部は、第2吸気口を有し、前記第2吸気口を介して外部から前記骨格形成部に気体が封入されることによって、前記第1空間形成部の形状が維持されてもよい。この形態の眼科処置装置によれば、第2吸気口が設けられた骨格形成部を第1空間形成部が備え、第2吸気口を介して外部から骨格形成部に気体が封入されることによって第1空間形成部の形状が維持されるので、眼科処置装置の使用時に第1空間形成部内のスペースを安定的に確保でき、眼科処置を行う際の安全性を向上できる。
【0011】
(4)上記形態の眼科処置装置において、さらに、前記眼科処置に使用する第1の道具が収容される空間を形成する第3空間形成部を備え、前記第3空間形成部は、開閉可能な第2開閉部を介して前記第1空間形成部に隣接して設けられていてもよい。この形態の眼科処置装置によれば、眼科処置に使用する第1の道具を収容する第3空間形成部が、開閉可能な第2開閉部を介して第1空間形成部に隣接して設けられているので、眼科処置に使用する道具を、第1空間形成部側から第2開閉部を介して清潔に取り出すことができ、この結果、眼科処置を行う際の利便性を向上できる。また、眼科処置に用いる道具を含む眼科処置装置全体を予め滅菌できるので、眼科処置装置の利便性を向上できる。
【0012】
(5)上記形態の眼科処置装置において、前記第3空間形成部には、開閉可能な第1シール部が形成されており、前記第1シール部を介して前記第1の道具が外部から搬入されてもよい。この形態の眼科処置装置によれば、第1シール部が第3空間形成部に形成されており、眼科処置に使用する道具を外部から第3空間形成部へと搬入できるので、眼科処置装置に含まれていない道具を外部から第3空間形成部内に搬入して配置できる。この結果、眼科処置を行う際の利便性を向上できる。
【0013】
(6)上記形態の眼科処置装置において、さらに、開閉可能な第2シール部を介して前記第3空間形成部に隣接して設けられ、空間を形成する第4空間形成部を備え、前記第4空間形成部は、前記指を外部から挿入するための第2グローブを有し、前記第4空間形成部には、開閉可能な第3開閉部が形成されており、前記第3開閉部には、前記眼科処置に使用する第2の道具が入ったパックを外部から貼り付けることができ、前記第2グローブを用いて、前記パックから前記第2の道具を取り出して前記第3空間形成部へと移動させることができてもよい。この形態の眼科処置装置によれば、第2シール部を介して第3空間形成部に隣接して設けられた第4空間形成部を備え、眼科処置に使用する道具が入ったパックを外部から貼り付けることができる第3開閉部が第4空間形成部に形成されており、第4空間形成部が有する第2グローブを用いて、パックから道具を取り出して第3空間形成部へと移動させることができるので、パック内の第2の道具を第3空間形成部へと清潔に移動させることができる。このため、滅菌処理に適さない道具等についても、外部から第3空間形成部へと移動させて、その後、第1空間形成部内で用いることができる。この結果、滅菌処理に適さない道具等を用いた眼科処置を清潔に行うことができるので、眼内炎を発症するリスクをより抑制できる。
【0014】
(7)上記形態の眼科処置装置において、前記第4空間形成部は、フィルターを含む第3吸気口を有し、前記第3吸気口を介して外部から気体が入ることによって容積が増大してもよい。この形態の眼科処置装置によれば、第3吸気口を介して外部から気体が入ることによって第4空間形成部の容積が増大するので、眼科処置装置の運搬時や収納時において第4空間形成部を小型化できる結果、眼科処置装置を小型化できる。
【0015】
(8)上記形態の眼科処置装置において、前記第2空間形成部には、注入される前記消毒液を含んだ消毒液収納部が設けられていてもよい。この形態の眼科処置装置によれば、消毒液を含んだ消毒液収納部が第2空間形成部に設けられているので、第2空間形成部の内部に消毒液を容易に注入できる結果、眼科処置を行う際の利便性をより向上できる。
【0016】
(9)上記形態の眼科処置装置において、前記第1空間形成部には、前記患者の眼と対向する位置に、拡大ルーペが設けられていてもよい。この形態の眼科処置装置によれば、第1空間形成部に、患者の眼と対向する位置に拡大ルーペが設けられているので、細かい操作等を容易に行うことができ、また、眼科処置を行う際の安全性を向上できる。
【0017】
(10)上記形態の眼科処置装置において、前記第1空間形成部には、光源が設けられていてもよい。この形態の眼科処置装置によれば、第1空間形成部に光源が設けられているので、照度が不十分な環境等においても、眼科処置を安全に行うことができる。
【0018】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、眼科処置装置の製造方法、眼科処置装置の使用方法、眼科処置装置を用いて眼科処置を補助するための方法、眼科処置装置を用いた眼科処置方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】眼科処置装置の概略構成を模式的に示す説明図。
図2】眼科処置装置の使用方法の一例を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.実施形態
A-1.全体構成
図1は、本開示の一実施形態としての眼科処置装置100の概略構成を模式的に示す説明図である。眼科処置装置100は、眼科処置を清潔に行うために用いられる。眼科処置としては、例えば、硝子体内注射や、外眼部手術(眼瞼縫合、眼瞼下垂手術、内反症手術、眼瞼腫瘍摘出術など)、結膜縫合、結膜下注射、後部テノン嚢下投与、翼状片手術、涙道手術等の種々の処置が想定される。本実施形態の眼科処置装置100は、簡易的に無菌空間を提供できるので、硝子体内注射を行う際に特に好適に用いられる。なお、図1では、各構成要素を模式的に示しているため、各構成要素や部材等の大きさは、実際の大きさとは異なっている。
【0021】
眼科処置装置100は、使用前または販売前等に、予めガンマ線滅菌や電子線滅菌、ガス滅菌、加熱滅菌等によって滅菌されることにより、内部空間が無菌的に構成されている。眼科処置装置100は、例えばポリエチレン等の透明なシート状の部材によって主に形成されることにより、眼科処置装置100の外部から眼科処置装置100の内部を視認可能に構成されている。また、本実施形態の眼科処置装置100は、後述するように、折り畳み可能に構成されている。
【0022】
本実施形態の眼科処置装置100は、第1空間形成部10と、第2空間形成部20と、第3空間形成部30と、第4空間形成部とを備える。第2空間形成部20と、第1空間形成部10と、第3空間形成部30と、第4空間形成部とは、患者の眼200に近い側からこの順番に互いに隣接して設けられている。なお、図1では、図示の便宜上、患者の眼200および第2空間形成部20を紙面上側に記載している。実際の眼科処置装置100において、患者の眼200および第2空間形成部20は、後述する拡大ルーペ18と対向するように紙面奥側に位置している。
【0023】
第1空間形成部10は、空間を形成する。後述するように、眼科処置装置100の使用者、すなわち眼科処置を実施する術者は、第1空間形成部10によって形成される空間において眼科処置を実行できる。第1空間形成部10は、第1グローブ11と、第1吸気口12と、骨格形成部13とを有する。
【0024】
第1グローブ11は、眼科処置装置100の使用者の指を外部から挿入するために用いられる。第1グローブ11は、ゴム等により形成された手袋状の部材であり、第1空間形成部10の外縁において開口するように固定されている。このような構成により、第1空間形成部10は、いわゆるグローブボックスのように機能する。本実施形態の第1グローブ11は、右手用と左手用との一対のグローブにより構成されているが、右手用または左手用の1つのグローブにより構成されていてもよい。眼科処置を実施する術者は、外部から第1グローブ11の中に手を挿入することにより、第1空間形成部10の内部において無菌的に眼科処置を行うことができる。本実施形態の第1グローブ11は、使用者の手を挿入可能に構成されているが、使用者の指のみを挿入可能に構成されていてもよい。
【0025】
第1吸気口12は、第1空間形成部10の外縁に設けられている。第1吸気口12は、フィルターを含んで構成されている。第1空間形成部10は、第1吸気口12を介して外部から第1空間形成部10の内部へと気体が入ることによって、容積が増大する。このような構成により、第1空間形成部10は、眼科処置装置100の運搬時や収納時には折り畳まれたコンパクトな状態となり、使用時、すなわち眼科処置時には処置空間を形成する。本実施形態の第1空間形成部10は、術者または補助者等の使用者の手によって、折り畳まれた状態から開かれることにより、第1吸気口12を介して自動的に空気が入る。なお、自動的に空気が入ることに限らず、例えばポンプ等の器具を用いること等によって気体が入れられてもよい。第1吸気口12がフィルターを含むことにより、第1空間形成部10の内部は、無菌状態が保たれる。
【0026】
骨格形成部13は、第1空間形成部10の骨格を形成する。骨格形成部13は、例えば柔軟なチューブや袋状に形成されたシート等により形成されている。骨格形成部13は、第2吸気口14を有する。第2吸気口14は、活栓を含んで構成されている。第2吸気口14を介して外部から骨格形成部13に気体が入れられ、その後、活栓が塞がれることによって骨格形成部13に気体が満たされる。このように、骨格形成部13に気体が封入されることによって、第1空間形成部10の形状、すなわち第1空間形成部10によって形成される3次元空間が安定的に維持される。第2吸気口14を介して封入される気体は、注射器や手動ポンプ、電動ポンプ等の器具を用いて入れられる空気であってもよく、ボンベに収納された気体であってもよく、使用者の呼気等であってもよい。なお、骨格形成部13は、省略されていてもよい。
【0027】
第1空間形成部10には、第1開閉部16と、第2開閉部17とが形成されている。第1空間形成部10は、第1開閉部16を介して第2空間形成部20と隣接し、第2開閉部17を介して第3空間形成部30と隣接している。第1開閉部16と第2開閉部17とは、例えばシール状の部材等で開口が塞がれることにより、それぞれ開閉可能に構成されている。本実施形態では、第1開閉部16の開口を取り囲む位置において第1空間形成部10の内側面に接着テープ81が設けられており、さらに、その接着テープ81が設けられた部分と第1開閉部16の開口とを覆うカバー82が設けられている。また、第2開閉部17の開口を取り囲む位置において第1空間形成部10の内側面に接着テープ83が設けられており、さらに、その接着テープ83が設けられた部分と第2開閉部17の開口とを覆うカバー84が設けられている。本実施形態において、カバー82,84は、透明なシート状の部材により形成されている。なお、透明なシート状の部材に限らず、例えば不透明な部材により形成されていてもよく、紙状の部材等により形成されていてもよい。
【0028】
本実施形態の第1空間形成部10には、拡大ルーペ18と、光源19とがさらに設けられている。なお、拡大ルーペ18と光源19とは、少なくとも一方が省略されていてもよい。
【0029】
拡大ルーペ18は、患者の眼200と対向する位置に設けられている。本実施形態において、拡大ルーペ18は、第1空間形成部10の外側面に設けられている。このような構成により、眼科処置装置100の使用者は、必要に応じて拡大ルーペ18を使用して眼科処置を実行できる。拡大ルーペ18は、例えば、骨格形成部13によって支持される平面に設置されていてもよく、バンド等によって第1空間形成部10に固定されていてもよい。なお、拡大ルーペ18は、第1空間形成部10の内側面に設けられていてもよく、省略されていてもよい。拡大ルーペ18が省略された態様においては、汎用の拡大ルーペを設置するための拡大ルーペ設置部が第1空間形成部10に設けられていてもよい。
【0030】
光源19は、第1空間形成部10の内部を照らすことができる位置に設けられている。光源19としては、例えば、LED等のライトを好適に使用することができる。眼科処置装置100の使用者は、必要に応じて光源19を用いて第1空間形成部10の内部を照らした状態で眼科処置を実行できる。光源19は、例えば、第1空間形成部10の外縁において外側面から内側面に向かって形成された窪みに配置されていてもよく、バンド等によって第1空間形成部10に固定されていてもよい。なお、光源19は、第1空間形成部10の内側面に設けられていてもよく、省略されていてもよい。光源19が省略された態様においては、汎用の光源を設置するための光源設置部が第1空間形成部10に設けられていてもよい。
【0031】
第2空間形成部20は、第1開閉部16を介して第1空間形成部10に隣接して設けられている。第2空間形成部20は、消毒液が注入される空間を形成する。第2空間形成部20によって形成される空間の容積は、第1空間形成部10によって形成される空間の容積に比べて極めて小さい。第2空間形成部20によって形成される空間の容積は、例えば第1空間形成部10によって形成される空間の容積の100分の1以下であってもよく、例えば5mL以下であってもよい。第2空間形成部20は、眼科処置を行う際に第1開閉部16が開かれることにより、第1空間形成部10と連通する。
【0032】
第2空間形成部20は、患者の眼200の周囲を覆う開口部21を有する。開口部21は、患者の眼200の周囲に貼り付け可能に構成されている。本実施形態の開口部21は、患者の眼200のうちの片方の周囲を覆う大きさに形成されているが、患者の眼200の両方の周囲を覆う大きさに形成されていてもよい。すなわち、本実施形態の開口部21は、患者の眼200のうちの片方が第2空間形成部20側に露出するように形成されているが、患者の眼200の両方が第2空間形成部20側に露出する大きさに形成されていてもよい。本実施形態では、開口部21を取り囲む位置において第2空間形成部20の外側面に接着テープ85が設けられており、さらに、その接着テープ85が設けられた部分を覆うカバー86が設けられている。カバー86は、いわゆる剥離紙のように機能し、接着テープの接着面を保護する。
【0033】
本実施形態において、第2空間形成部20は、眼科処置装置100の使用前の状態において、第1開閉部16を覆うカバー82と、開口部21を覆うカバー86とによって挟まれて構成される。また、第2空間形成部20は、患者の眼200の周囲に開口部21を密着させた状態において、患者の眼200およびその周辺と、開口部21を覆うカバー86とによって挟まれて構成される。
【0034】
開口部21が患者の眼200の周囲を覆って貼り付けられた状態において、第2空間形成部20には、眼科処置のための消毒液を満たすことができる。眼科処置のための消毒液としては、例えばPA・ヨード点眼・洗眼液や、イソジン(登録商標)等の消毒液を適宜希釈して使用することができる。なお、消毒液は、液状に限らず、例えばジェル状等であってもよい。眼科処置装置100の使用者は、患者の眼200の周囲を開口部21に密着させた状態で、第1グローブ11を用いて眼科処置を行うことができる。
【0035】
本実施形態において、第2空間形成部20には、消毒液収納部23が設けられている。消毒液収納部23は、第2空間形成部20によって形成される空間に注入される消毒液を含んでいる。本実施形態の消毒液収納部23は、活栓付きの容器を含んで構成されているが、第2空間形成部20の内部に消毒液を注入可能な任意の構成であってもよい。なお、消毒液収納部23は、省略されていてもよい。消毒液収納部23が省略された態様において、眼科処置装置100の使用者は、外部から第2空間形成部20の内部へと、例えば注射器等を用いて消毒液を注入してもよく、スポイトや綿球等を用いて開口部21を介して消毒液を注入してもよい。
【0036】
第3空間形成部30は、第2開閉部17を介して第1空間形成部10に隣接して設けられている。第3空間形成部30は、眼科処置に使用する道具が収容される空間を形成する。以下の説明では、第3空間形成部30に収容される道具を、「第1の道具75」とも呼ぶ。第1の道具75としては、例えば、30G等の注射針、綿棒、開瞼器、ガーゼ、スケール、抗生剤点眼、抗生剤眼軟膏、注射器等が挙げられる。第3空間形成部30には、第1の道具75を設置するための仕切りやフック、溝等が形成されていてもよい。また、第1の道具75のうち、例えば注射針や綿棒、開瞼器、ガーゼ、スケール等の滅菌処理が可能な道具については、予め第3空間形成部30に収容されて滅菌されていてもよい。第3空間形成部30に収容される第1の道具75は、単数であってもよく、複数であってもよい。第3空間形成部30は、例えば透明なシート状の部材によって折り畳み可能に構成されていてもよく、折り畳むことができない透明な箱状の部材等によって構成されていてもよい。
【0037】
本実施形態において、第3空間形成部30には、第1シール部31と、第2シール部32とが形成されている。第1シール部31と第2シール部32とは、いずれも開閉可能に構成されており、閉じられた状態においてシールされる。
【0038】
第1シール部31は、第3空間形成部30と外部とを連通させる位置に設けられている。本実施形態では、第1シール部31の開口を取り囲む位置において第3空間形成部30の外側面に接着テープ87が設けられており、さらに、その接着テープ87が設けられた部分と第1シール部31の開口とを覆うカバー88が設けられている。開閉可能な第1シール部31が第3空間形成部30に形成されていることにより、第1シール部31を介して、眼科処置に使用する第1の道具75を外部から第3空間形成部30へと搬入することができる。第3空間形成部30の内部を清潔な状態に保つために、第1シール部31は、滅菌ルームやクリーンベンチ内等の無菌的な環境下において開閉されることが望ましい。このような構成により、眼科処置装置100に元々含まれていない道具についても、眼科処置の実行前に、外部から第3空間形成部30の内部へと入れておくことができる。また、眼科処置のための第1の道具75のうち、例えば抗生剤点眼や抗生剤眼軟膏、薬剤を含む注射器等の滅菌処理に適さない道具についても、外部から第3空間形成部30の内部へと入れることができる。また、第1シール部31が封止可能に構成されていることにより、第1シール部31を介して外部から第3空間形成部30の内部へと第1の道具75を搬入した後の状態においても、第3空間形成部30の内部を清潔な状態に保つことができる。
【0039】
第2シール部32は、第3空間形成部30と第4空間形成部40とを連通させる位置に設けられている。本実施形態では、第2シール部32の開口を取り囲む位置において第3空間形成部30の外側面に接着テープ89が設けられており、さらに、その接着テープ89が設けられた部分と第2シール部32の開口とを覆うカバー90が設けられている。
【0040】
第4空間形成部40は、第2シール部32を介して第3空間形成部30に隣接して設けられている。第4空間形成部40は、空間を形成する。第4空間形成部40は、第2グローブ41と、第3吸気口42とを有する。
【0041】
第2グローブ41は、第1グローブ11と同様な構成を有する。第2グローブ41は、眼科処置装置100の使用者の指を外部から挿入するために用いられる。第2グローブ41は、ゴム等により形成された手袋状の部材であり、第4空間形成部40の外縁において開口するように固定されている。このような構成により、第4空間形成部40は、いわゆるグローブボックスのように機能する。本実施形態の第2グローブ41は、右手用と左手用との一対のグローブにより構成されているが、右手用または左手用の1つのグローブにより構成されていてもよい。使用者は、外部から第2グローブ41の中に手を挿入することにより、第4空間形成部40の内部における清潔状態を維持したまま、後述する動作を行うことができる。本実施形態の第2グローブ41は、使用者の手を挿入可能に構成されているが、使用者の指のみを挿入可能に構成されていてもよい。
【0042】
第3吸気口42は、第4空間形成部40の外縁に設けられている。第3吸気口42は、フィルターを含んで構成されている。第4空間形成部40は、第3吸気口42を介して外部から第4空間形成部40の内部へと気体が入ることによって、容積が増大する。このような構成により、第4空間形成部40は、眼科処置装置100の運搬時や収納時には折り畳まれたコンパクトな状態となり、使用時には内部空間を形成する。本実施形態の第4空間形成部40は、術者または補助者等の使用者の手によって、折り畳まれた状態から開かれることにより、第3吸気口42を介して自動的に空気が入る。なお、自動的に空気が入ることに限らず、例えばポンプ等の器具を用いること等によって気体が入れられてもよい。第3吸気口42がフィルターを含むことにより、第4空間形成部40の内部は、無菌状態が保たれる。
【0043】
第4空間形成部40には、開閉可能な第3開閉部43が形成されている。第3開閉部43は、例えばシール状の部材等で開口が塞がれることにより、開閉可能に構成されている。第3開閉部43には、眼科処置に使用する道具が入ったパック73を外部から貼り付けることができる。以下の説明では、パック73に収納されている道具を、「第2の道具76」とも呼ぶ。第2の道具76は、例えば、薬剤を含む注射器等、滅菌処理に適さない道具であってもよい。第2の道具76は、単数であってもよく、複数であってもよい。パック73としては、例えば、第2の道具76を無菌的に梱包した袋等の容器が想定される。また、眼科処置装置100は、第2の道具76が入ったパック73を備えていてもよい。
【0044】
本実施形態では、第3開閉部43の開口を塞ぐように第4空間形成部40の内側面において接着テープ91が設けられている。また、その接着テープ91が設けられた部分を、第4空間形成部40の内側から覆うカバー92と、第4空間形成部40の外側から覆うカバー93とがそれぞれ設けられている。このため、外部からカバー93を剥がすことによって、第2の道具76が入ったパック73を接着テープ91の外側面に貼り付けることができる。後述する動作を行う際にも第4空間形成部40の内部における清潔状態を維持するために、第3開閉部43に貼り付けられたパック73全体を、外部からさらにカバー94で覆うことが望ましい。カバー94は、例えば、第3開閉部43の開口を取り囲む位置に設けられた接着テープ95を介して貼り付けられてもよい。眼科処置装置100は、接着テープ95を含むカバー94を、第4空間形成部40と一体化された状態で備えていてもよい。また、眼科処置装置100は、接着テープ95を含むカバー94を、第4空間形成部40とは別体として備えていてもよい。また、パック73の外面がカバー94によって予め覆われている態様であってもよい。
【0045】
眼科処置装置100の使用者は、第4空間形成部40側から、第2グローブ41を用いて、第3開閉部43に貼り付けられたパック73に含まれる第2の道具76を取り出し、第3空間形成部30へと移動させることができる。より具体的には、例えば以下のように行うことができる。まず、一方の手で外部からパック73を支えつつ、他方の手を第2グローブ41に挿入し、その第2グローブ41を用いて、第4空間形成部40側からパック73を破りつつ第3開閉部43を開く。その後、外部からパック73を支えていた方の手を第2グローブ41に挿入し、その第2グローブ41を用いて、パック73に入っている第2の道具76を第4空間形成部40へと取り出す。その後またはパック73から第2の道具76を取り出す前に、第2グローブ41を用いて第2シール部32を開く。そして、取り出した第2の道具76を、第2グローブ41を用いて第3空間形成部30へと移動させ、第2シール部32を封止する。このように、眼科処置装置100の使用者は、パック73の外側面に触れることによって清潔状態が保たれなくなるおそれがある手と、パック73の外側面に触れずに清潔状態が保たれる手とを、一対のグローブにより構成される第2グローブ41において使い分けることにより、パック73内の第2の道具76を第3空間形成部30へと清潔に移動させることができる。
【0046】
A-2.眼科処置装置の使用方法
図2は、眼科処置装置100の使用方法の一例を示す工程図である。この方法は、眼科処置装置100を用いて眼科処置を補助するための方法とも言える。以下の説明では、眼科処置の一例として、眼科処置装置100を用いて硝子体内注射を行う方法を説明する。なお、本発明は、この方法に限定されるものではない。
【0047】
まず、使用者は、眼科処置装置100を準備する(工程S110)。本実施形態において、眼科処置装置100は、眼科処置に使用する第1の道具75が第3空間形成部30に収容された状態で、予め装置全体が滅菌されている。工程S110において、使用者は、必要に応じて、第1の道具75を外部から第3空間形成部30へと搬入することができる。また、工程S110における眼科処置装置100の準備には、折り畳まれた状態の眼科処置装置100を開いて、第1空間形成部10および第4空間形成部40の容積を増大させることが含まれていてもよい。
【0048】
使用者は、薬剤を含む注射器等の第2の道具76が入ったパック73を、外部から第3開閉部43に貼り付ける(工程S120)。工程S120において、使用者は、必要に応じて、第3開閉部43に貼り付けられたパック73の全体を覆うように、外部からカバー94を貼り付けてもよい。
【0049】
使用者は、第3開閉部43に貼り付けられたパック73内の第2の道具76を、第2グローブ41を用いて取り出し、第3空間形成部30へと移動させ、第2シール部32を封止する(工程S130)。工程S130によって、使用者は、薬剤を含む注射器等を、清潔な状態で第3空間形成部30へと移動させることができる。
【0050】
使用者は、患者の治療部位である眼瞼を消毒液によって消毒し、拭い取って乾いた状態にしておく。その後、使用者は、第2空間形成部20に形成された開口部21を、患者の眼200の周囲に密着させる(工程S140)。より具体的には、工程S140において、使用者は、カバー86を剥がして、患者の眼200を取り囲む位置に接着テープ85を貼り付ける。
【0051】
使用者は、第2空間形成部20に、眼科処置のための消毒液を注入する(工程S150)。工程S150において、使用者は、消毒液収納部23の活栓を開くことにより、例えば4~8倍希釈のPA・ヨード点眼・洗眼液を、第2空間形成部20に満たしてもよい。
【0052】
使用者は、第2吸気口14を介して外部から骨格形成部13に気体を封入する(工程S160)。これにより、第1空間形成部10の形状が維持され、第1空間形成部10によって形成される3次元空間の形態が保たれる。
【0053】
使用者は、第1グローブ11を用いて、第2開閉部17を開く(工程S170)。工程S170により、第3空間形成部30に収容されている第1の道具75を、第1空間形成部10側から第1グローブ11を用いて取り出すことができる。
【0054】
使用者は、第1グローブ11を用いて、第1開閉部16を開く(工程S180)。使用者は、第1グローブ11を用いて、工程S180の実行前または実行後に、第3空間形成部30に収容されているガーゼを取り出して、工程S180の実行後に、第2空間形成部20に満たされていた消毒液のうちの余分な部分を清拭してもよい。
【0055】
使用者は、第1グローブ11を用いて、工程S130において第3空間形成部30へと移動させた注射器等の第2の道具76を使用して、第1空間形成部10において硝子体内注射等の眼科処置を行う(工程S190)。その後、使用者は、眼科処置装置100を患者から剥がし、創にガーゼ等を当ててもよい。以上により、眼科処置装置100の使用を完了する。
【0056】
以上説明した本実施形態の眼科処置装置100によれば、第1グローブ11を有する第1空間形成部10と、第1開閉部16を介して第1空間形成部10に隣接して設けられて消毒液が注入される第2空間形成部20とを備え、第2空間形成部20に形成された開口部21を患者の眼200の周囲に密着させた状態で、第1グローブ11を用いて眼科処置が行われる。このため、予め滅菌された眼科処置装置100を用いて、患者の眼200を消毒した状態で、第1グローブを用いて眼科処置を清潔に行うことができる。したがって、例えば病院等の治療施設に通院することが困難な患者や、感染症の罹患等により隔離されている患者等に対しても、眼内炎を発症するリスクを抑制しつつ眼科処置を実施できる。また、眼科処置装置100を用いることにより、在宅医療や介護施設、医療派遣車内等において眼科処置を実施することが容易となり、また、病院内の外来スペースで眼科処置を行う場合においても、眼内炎を発症するリスクをより抑制することができる。また、眼科処置装置100を用いることにより、治療スペースの確保が困難な被災地や避難所等にいる患者に対しても、眼内炎を発症するリスクを抑制しつつ眼科処置を実施できる。また、眼科処置装置100を用いることにより、使用者の手指が清潔ではない状況下においても、眼科処置を清潔に行うことができる。このように、眼内炎を発症するリスクを抑制しつつ眼科処置を実施できる結果、患者が眼科疾患によって視覚障害に至ることを抑制できるので、患者本人のQOL(Quality of Life)が低下することを抑制でき、また、患者の介護者等の負担が増えることを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態の眼科処置装置100は、開閉可能な第2開閉部17を介して第1空間形成部10に隣接して設けられた第3空間形成部30をさらに備え、第3空間形成部30には、眼科処置に使用する第1の道具75が収納されている。このため、眼科処置に用いる第1の道具75を、第1空間形成部10側から第2開閉部17を介して清潔に取り出すことができるので、眼科処置を行う際の利便性を向上できる。また、眼科処置に用いる第1の道具75を眼科処置装置100に含ませることができ、また、第1の道具75を含む眼科処置装置100全体を予め滅菌できるので、眼科処置装置100の利便性を向上できる。また、第3空間形成部30には、開閉可能な第1シール部31が形成されており、眼科処置に使用する第1の道具75を外部から搬入することができる。このため、眼科処置装置100に含まれていない道具を、必要に応じて第3空間形成部30内に配置することができるので、眼科処置を行う際の利便性を向上できる。
【0058】
また、本実施形態の眼科処置装置100は、開閉可能な第2シール部32を介して第3空間形成部30に隣接して設けられた第4空間形成部40をさらに備え、第4空間形成部40は、使用者の指を外部から挿入するための第2グローブ41を有する。そして、第4空間形成部40には、開閉可能な第3開閉部43が形成されおり、第3開閉部43には、眼科処置に使用する第2の道具76が入ったパック73を外部から貼り付けることができ、第2グローブ41を用いて、パック73から第2の道具76を取り出して第3空間形成部30へと移動させることができる。このため、パック73内の第2の道具76を第3空間形成部30へと清潔に移動させることができるので、例えば滅菌処理に適さない薬剤を含む注射器等の道具を、外部から第3空間形成部30へと移動させて、その後、第1空間形成部10内で用いることができる。したがって、第2の道具76を用いた眼科処置を清潔に行うことができるので、眼内炎を発症するリスクをより抑制できる。
【0059】
また、本実施形態の眼科処置装置100において、第2空間形成部20には、消毒液を含んだ消毒液収納部23が設けられているので、第2空間形成部20の内部に消毒液を容易に注入できる。このため、患者の眼200の周りを容易に消毒することができるので、眼科処置を行う際の利便性をより向上できる。
【0060】
また、本実施形態の眼科処置装置100において、第1空間形成部10は、フィルターを含む第1吸気口12を有し、第1吸気口12を介して外部から気体が入ることによって容積が増大する。このため、眼科処置装置100の運搬時や収納時において第1空間形成部10を小型化でき、使用時において眼科処置を行う空間を確保できる。したがって、眼科処置装置100を小型化できる。また、眼科処置装置100の使用時に第1空間形成部10を膨張させる構成であるため、第1空間形成部10をシート状の部材によって形成でき、この結果、眼科処置装置100の製造コストが増大することを抑制できる。
【0061】
また、本実施形態の眼科処置装置100において、第4空間形成部40は、フィルターを含む第3吸気口42を有し、第3吸気口42を介して外部から気体が入ることによって容積が増大する。このため、眼科処置装置100の運搬時や収納時において第4空間形成部40を小型化でき、使用時において第4空間形成部40内の空間を確保できる。したがって、眼科処置装置100を小型化できる。また、眼科処置装置100の使用時に第4空間形成部40を膨張させる構成であるため、第4空間形成部40をシート状の部材によって形成でき、この結果、眼科処置装置100の製造コストが増大することを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態の眼科処置装置100において、第1空間形成部10は、第2吸気口14を有する骨格形成部13を備え、第2吸気口14を介して外部から骨格形成部13に気体が封入されることによって、自身の形状が維持される。このため、眼科処置装置100の使用時に第1空間形成部10内のスペースを安定的に確保でき、眼科処置を行う際の安全性を向上できる。
【0063】
また、本実施形態の眼科処置装置100において、第1空間形成部10には、患者の眼200と対向する位置に拡大ルーペ18が設けられている。このため、例えば顕微鏡がない環境等においても、細かい操作等を容易に行うことができ、また、眼科処置を行う際の安全性を向上できる。また、第1空間形成部10に光源19が設けられているので、例えば暗い部屋や車内、被災施設等の照明の照度が不十分な環境等においても、眼科処置を安全に行うことができる。
【0064】
B.他の実施形態
上記実施形態の眼科処置装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、第4空間形成部40が省略されていてもよく、第3空間形成部30が省略されていてもよい。また、例えば、眼科処置装置100は、予め第1空間形成部10や第4空間形成部40が膨張した態様であってもよく、また、折り畳めない態様であってもよい。より具体的には、例えば、箱状の部材によって構成される態様であってもよい。かかる態様において、第1吸気口12や第3吸気口42は、省略されていてもよい。また、眼科処置装置100は、外部から内部を視認可能に構成されていたが、眼科処置の実行を妨げない範囲において、一部が不透明な部材により構成されていてもよい。また、第1開閉部16や第2開閉部17、第1シール部31、第2シール部32、第3開閉部43は、それぞれ接着テープ81,83,87,89,91を含んで構成されていたが、接着テープ81,83,87,89,91に限らず、例えば、粘着剤や、面ファスナー、スナップボタン等によって構成されていてもよい。このような構成によっても、第1空間形成部10において眼科処置を清潔に行うことができる。
【0065】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
10…第1空間形成部、11…第1グローブ、12…第1吸気口、13…骨格形成部、14…第2吸気口、16…第1開閉部、17…第2開閉部、18…拡大ルーペ、19…光源、20…第2空間形成部、21…開口部、23…消毒液収納部、30…第3空間形成部、31…第1シール部、32…第2シール部、40…第4空間形成部、41…第2グローブ、42…第3吸気口、43…第3開閉部、73…パック、75…第1の道具、76…第2の道具、81,83,85,87,89,91,95…接着テープ、82,84,86,88,90,92,93,94…カバー、100…眼科処置装置、200…患者の眼
図1
図2