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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177366
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】エレベータのかご内殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20221124BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B66B11/02 C
B66B1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083559
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】小寺 利幸
(72)【発明者】
【氏名】下方 稔久
【テーマコード(参考)】
3F306
3F502
【Fターム(参考)】
3F306AA11
3F306CB05
3F306CB50
3F306CB60
3F502HB15
3F502JA36
3F502KA18
3F502KA37
3F502KA41
3F502KA44
3F502MA26
(57)【要約】
【課題】エレベータのかごの内部の殺菌を安全且つ確実に行うことができるエレベータのかご内殺菌装置を得る。
【解決手段】エレベータのかご内殺菌装置1は、エレベータのかごの内部に存在する菌の殺菌動作を実施する殺菌実施部11と、殺菌実施部11によって殺菌動作が実施されたことによるかごの内部の殺菌状態を監視する監視部14と、かごに設けられ、かごの内部の乗客を検知する検知部9と、検知部9による乗客の検知結果を契機として殺菌動作を開始させ、監視部14により監視される殺菌状態に応じて殺菌動作を継続させるか停止させるかを制御するCPU部21と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごの内部に存在する菌の殺菌動作を実施する殺菌実施部と、
前記殺菌実施部によって前記殺菌動作が実施されたことによる前記かごの内部の殺菌状態を監視する監視部と、
前記かごに設けられ、前記かごの内部の乗客を検知する検知部と、
前記検知部による前記乗客の検知結果を契機として前記殺菌動作を開始させ、前記監視部により監視される前記殺菌状態に応じて前記殺菌動作を継続させるか停止させるかを制御する制御部と、
を備えているエレベータのかご内殺菌装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記かごを休止させる休止信号を受信した際に、前記検知結果として前記乗客の存在が検知されなかったことを確認できた場合、前記殺菌動作を開始させる、
請求項1に記載のエレベータのかご内殺菌装置。
【請求項3】
前記殺菌動作は、物理作用により殺菌させる動作であり、
前記監視部は、前記殺菌状態として、前記物理作用に基づく物理量を監視し、
前記制御部は、前記監視部により監視された前記物理量が物理制御目標値である物理量閾値を満たした場合、前記殺菌実施部による前記殺菌動作を停止させる、
請求項1又は2に記載のエレベータのかご内殺菌装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記殺菌動作を実施しているときに前記かごの呼びが発生した場合、前記殺菌動作を一時停止させる、
請求項1~3の何れか一項に記載のエレベータのかご内殺菌装置。
【請求項5】
前記検知部は、
前記乗客の体温を検知する人感センサと、
前記乗客の重量を検知する秤センサと、
を備え、
前記制御部は、前記殺菌動作を実施しているときに前記かごの呼びが発生し、前記人感センサにより検知された前記乗客の体温が予め設定された体温閾値未満であり、前記秤センサにより検知された前記乗客の重量が予め設定された重量閾値未満である場合、前記殺菌動作を一時停止させ、
前記制御部は、前記殺菌動作を実施しているときに前記かごの呼びが発生し、前記人感センサにより検知された前記乗客の体温が前記体温閾値以上である場合、又は、前記殺菌動作を実施しているときに前記かごの呼びが発生し、前記秤センサにより検知された前記乗客の重量が前記重量閾値以上である場合、前記殺菌動作を一時停止させずに前記殺菌動作を継続させる、
請求項1~3の何れか一項に記載のエレベータのかご内殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータのかご内殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータが全自動運転であり、且つかごの扉が閉じたままで待機の状態が所定時間継続した場合に、かごの内部が無人であると判定し、殺菌灯から照射される紫外線により、エレベータのかごの内部を殺菌する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、かごの呼びが発生していると判定した後にかごの重量を検知し、その検知結果に基づいてかごの内部が無人であると判定した場合に、医療用エタノールのような消毒液をかごの内部に噴霧することにより、エレベータのかごの内部を殺菌する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-163231号公報
【特許文献2】特開2011-051715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のような従来の技術では、殺菌灯の照射時間を管理して殺菌を行っている。このため、予め決められた照射時間にわたって紫外線を照射したとしても、かごの内部に必要な量の紫外線が供給されていない場合があった。
【0006】
また、特許文献1に記載のような従来の技術では、かごの床に乗客が倒れている場合には、かごの内部にいる乗客を検知することができなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載のような従来の技術では、噴霧した消毒液によってかごの内部を十分に殺菌できているか否かを判別できなかった。
【0008】
従って、従来の技術では、エレベータのかごの内部の殺菌状態を定量的に検知することは難しかった。
【0009】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、エレベータのかごの内部の殺菌状態を定量的に検知することができるエレベータのかご内殺菌装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るエレベータのかご内殺菌装置は、エレベータのかごの内部に存在する菌の殺菌動作を実施する殺菌実施部と、殺菌実施部によって殺菌動作が実施されたことによるかごの内部の殺菌状態を監視する監視部と、かごに設けられ、かごの内部の乗客を検知する検知部と、検知部による乗客の検知結果を契機として殺菌動作を開始させ、監視部により監視される殺菌状態に応じて殺菌動作を継続させるか停止させるかを制御する制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、エレベータのかごの内部の殺菌状態を定量的に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1におけるエレベータの全体構成図である。
図2図1のエレベータのかごの内部を示す図である。
図3図2のかごに設けられているかご内殺菌装置のハードウェア構成図である。
図4図3のかご内殺菌装置の動作例を説明するフローチャートである。
図5】実施の形態2におけるかご内殺菌装置の動作例を説明するフローチャートである。
図6】実施の形態3におけるかごの内部を示す図である。
図7図6のかごに設けられているかご内殺菌装置のハードウェア構成図である。
図8図7のかご内殺菌装置の動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベータの全体構成図である。図1に示すように、エレベータは、かご2、主ロープ3、釣り合いおもり4、及び、巻上機5を備えている。
【0014】
主ロープ3の一端は、かご2の上端に接続されている。主ロープ3の他端は、釣り合いおもり4の上端に接続されている。主ロープ3の中間部は、巻上機5に巻き掛けられている。
【0015】
巻上機5の駆動は、制御装置6により制御される。制御装置6は、例えば、エレベータの機械室、エレベータの昇降路内等に設けられたエレベータの制御盤に備えられている。
【0016】
巻上機5の駆動により、かご2及び釣り合いおもり4のそれぞれは、エレベータの昇降路内を互いに相反する方向に昇降させられる。これにより、かご2は、各階の階床8に昇降可能である。また、制御装置6は、かご2が各階の階床8に到達したときには、各階の乗場扉7を開閉制御する。
【0017】
図2は、図1のエレベータのかご2の内部を示す図である。図3は、図2のかご2に設けられているかご内殺菌装置1のハードウェア構成図である。図2に示すように、かご2には、かご内操作機器15が設けられている。かご内操作機器15が乗客16に操作されることにより、かご内操作機器15は、乗客16の操作内容を制御装置6に送信する。制御装置6は、かご内操作機器15から送信された乗客16の操作内容に基づいて、巻上機5の駆動を制御し、かご2を昇降制御する。
【0018】
また、図2に示すように、かご2の内部の天井には、かご内殺菌装置1が取り付けられている。かご内殺菌装置1は、図3に示すように、殺菌実施部11、CPU部21、記憶部22、I/F部23及び殺菌制御部24を備えている。かご内殺菌装置1には、制御装置6からの各種制御信号の他に、人感センサ12、秤センサ13及び監視部14から各種検知信号が入力される。
【0019】
殺菌実施部11は、かご2の内部に存在する菌の少なくとも一部を殺菌させる殺菌動作を実施する。殺菌実施部11は、例えば、殺菌灯から構成されている。殺菌灯は、紫外線をかご2の内部に照射することによりかご2の内部に存在する菌を殺菌する。すなわち、殺菌動作は、電磁波及び圧力等のような物理作用により殺菌させる動作である。
【0020】
また、かご内殺菌装置1は、かご2の内部の殺菌をできる場所であれば、どこに設けられていてもよいが、かご2の内部の乗客16が利用するかご内操作機器15又は乗場の出入口の近くにあることが望ましい。
【0021】
なお、殺菌動作は物理作用による殺菌に限定されるわけではない。殺菌動作は、医療用エタノールのような薬理作用により殺菌させる動作であってもよい。この場合には、殺菌実施部11は、例えば、噴霧装置から構成されている。噴霧装置は、医療用エタノールをかご2の内部に噴霧することによりかご2の内部に存在する菌を殺菌する。
【0022】
また、人感センサ12は、かご2の内部の乗客16の存在を検知するセンサである。人感センサ12は、光検知、熱検知、超音波検知、静電容量検知、カメラ認識等のように乗客16の存在を検知できるセンサであれば特に限定されるものではない。人感センサ12は、複数の種類の物理量を検知可能なセンサを組み合わせて構成されてもよい。
【0023】
なお、人感センサ12は、かご2の内部の乗客16の存在を検知できる場所であれば、どこに設けられていてもよい。
【0024】
秤センサ13は、かご2の床下に設けられている。秤センサ13は、かご2の床面に対する積載荷重を検知するセンサである。秤センサ13は、例えば、かご2に乗客16が存在していないときのかご2の重量と、かご2に乗客16が存在しているときのかご2の重量との差分により乗客16の重量を検知する。
【0025】
また、本開示では、人感センサ12及び秤センサ13のことを検知部9と称する。
【0026】
監視部14は、かご2の内部の床面に設けられ、殺菌実施部11の殺菌動作による菌の殺菌状態を監視する。
【0027】
例えば、監視部14は、分光器と、演算部とから構成されている。分光器は、殺菌実施部11から照射された光の波長を検知する。演算部は、分光器により検知された光の波長から光の波長に反比例する光の振動数を算出する。光のエネルギーは、光の振動数に比例するものである。そこで、演算部は、プランク定数と、光の振動数とから光のエネルギーを算出する。演算部は、算出した光のエネルギーに基づいて、光のエネルギー量を積算する。演算部により積算された光のエネルギー量は、菌の殺菌状態として監視可能な物理作用に基づく物理量である。つまり、本実施の形態においては、かご2の内部に存在する菌そのものの量は計測されない。菌を殺菌するために使用された物理量が増加するほど、菌は殺菌されて菌が減少するという関係が利用されている。すなわち、菌を殺菌するために使用された物理量から殺菌効果を推定したものが殺菌状態である。
【0028】
なお、薬理作用により殺菌させる場合には、殺菌液の濃度によって菌の死滅時間が異なる。このため、監視部14は、殺菌液の散布量、殺菌液の濃度、殺菌液を散布後の時間等を監視する。例えば、監視部14は、半導体センサと、分光器と、演算部と、から構成されていてもよい。半導体センサは、半導体表面での空気中に噴霧された殺菌液の吸着と反応とにより電気伝導度変換を半導体センサの両端部の抵抗値変化として測定する。よって、監視部14は、半導体センサの出力値の変化により、殺菌液の散布量を監視する。また、監視部14は、分光器により分光された光の反射強度の違いにより殺菌液の濃度を測定する。監視部14は、演算部により菌の死滅時間を算出する。
【0029】
監視部14は、物理量が制御目標値である物理量閾値を満たしたか否かを判定し、判定結果をI/F部23を介してCPU部21に送信する。物理量閾値は、紫外光のような殺菌光のエネルギー量とその殺菌光による殺菌効果との相関関係から決まる殺菌光のエネルギー量である。
【0030】
なお、監視部14は、上記ではかご2の内部の床面に設けられる一例について説明したが、殺菌実施部11による菌の殺菌状態を監視できる場所であれば、どこに設けられていてもよい。また、殺菌実施部11による殺菌動作が樹脂材料及び部品を劣化させる場合には、監視部14は、樹脂材料及び部品の近くに設けられることにより、樹脂材料及び部品の劣化状況をより把握することができる。
【0031】
また、人感センサ12及び秤センサ13によって検知された信号、及び、監視部14によって監視された信号のそれぞれは、有線又は無線によりかご内殺菌装置1に送信される。
【0032】
また、かご内操作機器15は、戸開釦、戸閉釦、行先登録釦等を備え、かご2の内部の乗客16が目的階の階床8に移動する際に使用され、制御装置6と各種信号を送受信する。
【0033】
CPU部21は、かご内殺菌装置1の制御部として機能する。CPU部21は、検知部9による乗客16の検知結果を契機として殺菌動作を開始させる。また、CPU部21は、監視部14により監視される殺菌状態に応じて殺菌動作を継続させるか停止させるかを制御する。
【0034】
具体的には、CPU部21は、かご2を休止させる休止信号を制御装置6から受信した際に、検知部9によりかご2の内部の乗客16の存在が検知されなかったことを確認できた場合、殺菌動作を開始させる。
【0035】
例えば、CPU部21が休止信号を制御装置6から受信した段階では、かご2の床面に乗客16が倒れていても、制御装置6は、かご2の内部に乗客16が存在しないと判断している。そこで、CPU部21は、検知部9による乗客16の検知結果を利用することで、かご2の内部の乗客16の存在を見落とさない処理を実行可能である。
【0036】
なお、CPU部21は、かご2の休止を解除する休止解除信号を制御装置6から受信した場合に、殺菌動作を行わない。
【0037】
また、CPU部21は、監視部14による殺菌状態の監視結果、殺菌実施部11による殺菌動作の動作積算時間等を制御装置6に送信する。CPU部21から制御装置6に送信された殺菌状態の監視結果、殺菌動作の動作時間等の情報は、殺菌動作により劣化する樹脂材料及び部品等の保守点検又は交換スケジュールの策定に活用される。
【0038】
記憶部22は、SRAM(Static Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等から構成されている。記憶部22は、殺菌状態を特定させるものとして、物理量及び殺菌動作の動作時間を記憶する。
【0039】
なお、記憶部22は、データを記憶し、その記憶したデータを読み出せる構成であればその具体的な構成は限定されない。
【0040】
I/F部23は、制御装置6から受信したかご2の休止信号又は休止解除信号をCPU部21に送る。また、I/F部23は、人感センサ12、秤センサ13及び監視部14から受信した各種信号をCPU部21に送る。
【0041】
殺菌制御部24は、I/F部23を介して、CPU部21から受信した信号に基づいて、殺菌実施部11に対して、殺菌動作の実施、殺菌動作の停止、殺菌動作の一時停止、殺菌動作の再開等のような殺菌動作に関する制御を行う。
【0042】
図4は、図3のかご内殺菌装置1の動作例を説明するフローチャートである。
【0043】
ステップS1において、CPU部21は、制御装置6から信号を受信する。制御装置6から送信される信号は、例えば、かご2の休止信号又はかご2の休止解除信号である。かご2の休止信号は、制御装置6が生成し、制御装置6からかご内殺菌装置1に送信された信号である。かご2の休止解除信号は、制御装置6が生成し、制御装置6からかご内殺菌装置1に送信された信号である。次に、ステップS1の処理は、ステップS2の処理に進む。
【0044】
ステップS2において、CPU部21は、かご2の休止信号を受信したか否かを判定する。CPU部21は、かご2の休止信号を受信した場合、ステップS2の処理をステップS3の処理に進める。一方、CPU部21は、かご2の休止信号を受信していない場合、処理を終了させる。
【0045】
ステップS3において、CPU部21は、かご2の内部の乗客16の存在が検知されなかったかことを確認できたか否かを判定する。かご2の内部の乗客16の存在は、人感センサ12と秤センサ13とにより検知される。例えば、人感センサ12により乗客16の存在が検知され、秤センサ13により乗客16の重量が検知された場合には、かご2の内部の乗客16の存在が検知される。CPU部21は、かご2の内部の乗客16の存在が検知されなかったことを確認できた場合、ステップS3の処理をステップS4の処理に進める。一方、CPU部21は、かご2の内部の乗客16の存在が検知されなかったことを確認できなかった場合、処理を終了させる。
【0046】
ステップS4において、CPU部21は、殺菌動作を開始させる。具体的には、CPU部21は、かご2を殺菌させる殺菌信号を生成する。CPU部21は、生成した殺菌信号を殺菌制御部24に送信する。殺菌制御部24は、殺菌信号に基づいて、殺菌実施部11に殺菌動作を実施させる。具体的には、CPU部21は、殺菌制御部24を介してかご2の内部に紫外線を照射させる殺菌動作を殺菌実施部11に実施させる。
【0047】
すなわち、CPU部21は、かご2を休止させる休止信号を受信した際に、検知部9によりかご2の内部の乗客16の存在が検知されなかったことを契機として殺菌実施部11による殺菌動作を開始させる。
【0048】
ステップS5において、CPU部21は、殺菌状態を確認する。具体的には、CPU部21は、殺菌状態として、物理作用に基づく物理量を監視部14から取得する。
【0049】
ステップS6において、CPU部21は、殺菌状態が制御目標値を満たしたか否かを判定する。CPU部21は、殺菌状態が制御目標値を満たした場合、ステップS6の処理をステップS7の処理に進める。一方、CPU部21は、殺菌状態が制御目標値を満たしていない場合、ステップS6の処理をステップS5の処理に戻す。
【0050】
ステップS7において、CPU部21は、殺菌動作を停止させ、処理を終了させる。具体的には、CPU部21は、殺菌動作を停止させる殺菌停止信号を生成する。CPU部21は、生成した殺菌停止信号を殺菌制御部24に送信する。殺菌制御部24は、殺菌停止信号に基づいて、殺菌実施部11に殺菌動作を停止させる。
【0051】
すなわち、CPU部21は監視部14により監視された物理量が制御目標値である物理量閾値を満たした場合、殺菌実施部11による殺菌動作を停止させる。
【0052】
以上のように、本実施の形態1に係るかご内殺菌装置1は、検知部9による乗客16の検知結果を契機として殺菌動作を開始させる。これにより、かご2の内部に乗客16が存在していないことを検知部9を利用して確認してから殺菌動作を行うことができる。また、本実施の形態1に係るかご内殺菌装置1は、監視部14により監視される殺菌状態に応じて殺菌動作を継続させるか停止させるかを制御する。これにより、エレベータのかご2の内部の殺菌状態を定量的に検知することができ、必要な分のみ殺菌できる。
【0053】
また、本実施の形態1に係るかご内殺菌装置1において、CPU部21は、かご2を休止させる休止信号を受信した際に、乗客16の検知結果として乗客16の存在が検知されなかったことを確認できた場合、殺菌動作を開始させる。これにより、エレベータが乗客16を乗せていない状態であるときに殺菌動作を開始させることができる。
【0054】
また、本実施の形態1に係るかご内殺菌装置1において、CPU部21は、監視部14により監視された物理量が物理制御目標値である物理量閾値を満たした場合、殺菌実施部11による殺菌動作を停止させる。これにより、フィードバック制御により物理量が監視されるため、必要な物理量が正確にかご2の内部に供給されると共に、必要以上には殺菌動作は行われない。従って、効率良く殺菌動作を行うことができる。
【0055】
実施の形態2.
実施の形態2においては、かご2の呼びが発生した場合についての処理が追加されている点が実施の形態1と異なる。
【0056】
図5は、実施の形態2におけるかご内殺菌装置1の動作例を説明するフローチャートである。
【0057】
ステップS11~ステップS14の処理は、実施の形態1の図4におけるステップS1~ステップS4の処理と同様であるので、それらの説明については省略する。
【0058】
ステップS15において、CPU部21は、殺菌状態を確認する。なお、後述するように、かご2の呼びが発生していないことを確認できず、すなわち、かご2の呼びが発生しているときには、殺菌動作が一時停止される。このとき、殺菌動作が一時停止される際、殺菌状態が記憶部22に記憶される。よって、ステップS15における殺菌状態の確認処理は、ステップS15に至る前に殺菌状態が一時停止していたことがある場合には、監視部14により監視された殺菌状態と、記憶部22に記憶されている殺菌状態とを積算したものを殺菌状態とする。これにより、CPU部21は、現在の殺菌状態を過去から現在までの積分として、すなわち、積算した物理量として殺菌状態を確認する。ここで、殺菌動作が一時停止したとしても、殺菌動作の一時停止期間が予め想定される時間内であれば、殺菌状態はさほど劣化していないと仮定している。よって、CPU部21は、このような仮定に基づいて、過去の殺菌状態に現在の殺菌状態を積算して殺菌状態を評価することができる。
【0059】
ステップS16において、CPU部21は、かご2の呼びが発生していないことを確認
できたか否かを判定する。CPU部21は、かご2の呼びが発生していないことを確認できた場合、ステップS16の処理をステップS17の処理に進める。一方、CPU部21は、かご2の呼びが発生していないことを確認できなかった場合、ステップS16の処理をステップS19の処理に進める。すなわち、ステップS19の処理に進む場合とは、かご2の呼びが発生している場合である。
【0060】
具体的には、ステップS16の処理として、CPU部21は、かご2の呼びが発生したことに起因する休止解除信号を受信したか否かを判定する。CPU部21は、かご2の呼びが発生したことに起因する休止解除信号を受信していない場合、ステップS16の処理をステップS17の処理に進める。一方、CPU部21は、かご2の呼びが発生したことに起因する休止解除信号を受信した場合、ステップS16の処理をステップS19の処理に進める。
【0061】
ステップS17において、CPU部21は、殺菌状態が制御目標値を満たしたか否かを判定する。CPU部21は、殺菌状態が制御目標値を満たした場合、ステップS17の処理をステップS18の処理に進める。一方、CPU部21は、殺菌状態が制御目標値を満たしていない場合、ステップS17の処理をステップS11の処理に戻す。
【0062】
ステップS18において、CPU部21は、殺菌動作を停止させ、処理を終了させる。
【0063】
ステップS19において、CPU部21は、殺菌状態を記憶させる。具体的には、CPU部21は、監視部14から取得した殺菌状態を記憶部22に記憶させる。このように、殺菌動作を一時停止させる直前の殺菌状態を記憶部22に記憶させておくことで、CPU部21は、殺菌動作が再開した際の殺菌状態を求める際に、一時停止前の殺菌動作を考慮した上で、正確な殺菌状態を評価することができる。次に、ステップS19の処理は、ステップS20の処理に進む。
【0064】
ステップS20において、CPU部21は、殺菌動作を一時停止させる。具体的には、CPU部21は、殺菌動作を停止させる殺菌停止信号を殺菌制御部24に送信する。殺菌制御部24は、殺菌停止信号に基づいて、殺菌実施部11に殺菌動作を一時停止させる。次に、ステップS20の処理は、ステップS11の処理に戻る。
【0065】
以上のように、本実施の形態2に係るかご内殺菌装置1は、殺菌動作を実施しているときにかご2の呼びが発生した場合、殺菌動作を一時停止させ、かご2の呼びに対応した動作を優先して実行する。このため、殺菌動作の停止と、殺菌動作との繰り返しにより、かご2の内部の殺菌状態は変化する。そこで、本実施の形態2に係るかご内殺菌装置1は、殺菌の一時停止が解除され殺菌動作を再開するごとに、殺菌状態の確認を行うことで、エレベータのかご2の内部の殺菌状態を定量的に検知することができ、必要な分のみ殺菌できる。従って、殺菌動作の継続時間に依存しない殺菌を行うことができる。
【0066】
実施の形態3.
実施の形態3においては、実施の形態1、2と比べ、乗客16の体温を検知するセンサが新たに追加された点が異なる。
【0067】
図6は、実施の形態3におけるかご2の内部を示す図である。図6の説明において、図2と同様の構成には同一の符号を付記し、それらの説明については省略する。
【0068】
図6に示すように、かご2には、乗客16の体温を検知するセンサとして、サーモセンサ17が設けられている。サーモセンサ17は、かご2の内部にいる乗客16の体温を検知するセンサである。
【0069】
なお、人感センサ12が熱を検知する方式であれば、人感センサ12の熱を検知する機能をサーモセンサ17の代わりに利用してもよい。
【0070】
図7は、図6のかご2に設けられているかご内殺菌装置1のハードウェア構成図である。図7の説明において、図3と同様の構成には同一の符号を付記し、それらの説明については省略する。
【0071】
I/F部23は、サーモセンサ17から受信した信号をCPU部21に送る。
【0072】
図8は、図7のかご内殺菌装置1の動作例を説明するフローチャートである。
【0073】
ステップS21の処理は、実施の形態2の図5におけるステップS11の処理と同様であるのでその説明については省略する。
【0074】
ステップS22において、CPU部21は、秤値及びかご2の内部の乗客16の検温結果を記憶させる。具体的には、CPU部21は、秤センサ13から取得したかご2の内部の乗客16の重量を記憶部22に記憶させる。また、CPU部21は、サーモセンサ17から取得したかご2の内部の乗客16の体温を記憶部22に記憶させる。次に、ステップS22の処理は、ステップS23の処理に進む。
【0075】
ステップS23~ステップS25の処理は、ステップS12~ステップS14の処理と同様であるのでそれらの説明については省略する。
【0076】
ステップS26において、CPU部21は、かご2の呼びが発生していないか否かを判定する。CPU部21は、かご2の呼びが発生していない場合、ステップS26の処理をステップS27の処理に進める。一方、CPU部21は、かご2の呼びが発生している場合、ステップS26の処理をステップS30の処理に進める。
【0077】
ステップS27の処理は、ステップS15の処理と同様であるのでその説明については省略する。次に、ステップS27の処理は、ステップS28の処理に進む。
【0078】
ステップS28及びステップS29の処理は、ステップS17及びステップS18の処理と同様であるのでそれらの説明については省略する。
【0079】
ステップS30において、CPU部21は、秤値が予め設定された重量閾値未満であり、且つ検温結果が予め設定された体温閾値未満であるか否かを判定する。CPU部21は、秤値が重量閾値未満であり、且つ検温結果が体温閾値未満である場合、ステップS30の処理をステップS31の処理に進める。一方、CPU部21は、秤値が重量閾値以上である場合、又は、検温結果が体温閾値以上である場合、ステップS30の処理をステップS33の処理に進める。
【0080】
ステップS31及びステップS32の処理は、ステップS19及びステップS20の処理と同様であるのでこれらの説明については省略する。
【0081】
ステップS33において、CPU部21は、かご2の休止時間を延長する。具体的には、制御装置6は、CPU部21からかご2の休止時間の延長が要求された場合、かご2の内部の殺菌動作の時間を確保させるようにかご2の昇降を制御する。例えば、制御装置6は、かご2の呼びがされた階床8へのかご2の移動速度を遅くする。具体的には、制御装置6は、かご2の移動速度を定格速度の例えば50%~70%に減速させることにより、エレベータの利用者に対し、エレベータのかご2の呼びの応答していない不安を避けさせることができる。次に、ステップS33の処理は、ステップS34の処理に進む。
【0082】
ステップS34の処理は、ステップS27の処理と同様であるのでその説明については省略する。次に、ステップS34の処理は、ステップS35の処理に進む。
【0083】
ステップS35において、CPU部21は、現在の殺菌状態が制御目標値を満たしたか否かを判定する。CPU部21は、現在の殺菌状態が制御目標値を満たした場合、ステップS35の処理をステップS36の処理に進める。一方、CPU部21は、現在の殺菌状態が制御目標値を満たしていない場合、ステップS35の処理をステップS34の処理に戻す。
【0084】
ステップS36において、CPU部21は、殺菌動作を停止させ、延長終了を制御装置6に知らせる。これにより、制御装置6は、殺菌動作の停止と、殺菌状態が制御目標値を満たしたこととを確認できるので、かご2の昇降制御を再開させることができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態3に係るかご内殺菌装置1は、かご2の呼びに対し、秤値及び検温結果に基づいて、殺菌動作を一時停止させるかさせないかを制御する。よって、エレベータのかご2の内部の乗客16の利用状況によって、かご2の呼びに対応して殺菌動作を直ちに一時停止するよりも、かご2の内部の殺菌を優先させることができる。
【0086】
なお、本実施の形態1から3においては、物理作用により殺菌させるものとして紫外線を照射する殺菌灯の一例について説明しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、深紫外線を照射可能な深紫外線LED(Light Emitting Diode)により殺菌実施部11が構成されていてもよい。
【0087】
また、本実施の形態1から3においては、光の波長のエネルギー量が物理量として利用される一例について説明しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、光の明るさを表す物理量である照度と、照射時間とから求めた積算光量とが、物理量として利用されてもよい。この場合には、照度と照射時間とが殺菌実施部11で測定可能であるため、監視部14の機能を殺菌実施部11に担わせることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 かご内殺菌装置、2 かご、3 主ロープ、4 釣り合いおもり、5 巻上機、6 制御装置、9 検知部、11 殺菌実施部、12 人感センサ、13 秤センサ、14 監視部、15 かご内操作機器、16 乗客、17 サーモセンサ、21 CPU部、22 記憶部、23 I/F部、24 殺菌制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8