(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177372
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】管用テーパねじ用タップ
(51)【国際特許分類】
B23G 5/06 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
B23G5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083570
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】高見 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】栗田 祐希
(57)【要約】
【課題】配管等へのテーパめねじ加工において、切り屑詰まりや切り屑の噛み込みの低減によるねじ加工面へのむしれを抑制できる管用テーパねじ用タップを提供する。
【解決手段】
少なくとも、軸方向に向かってらせん状に形成された主切れ刃10,11,12、主切れ刃10,11,12に隣接して配置されており、らせん状に形成された主溝20,21,22、主溝20,21,22に隣接して配置されており、らせん状に形成された副切れ刃30,31,32、副切れ刃30,31,32に隣接して配置されており、らせん状に形成された副溝40,41,42を有する管用テーパねじ用タップ1において、管用テーパねじ用タップ1の中心軸Oから主切れ刃10,11,12までの距離d1は、管用テーパねじ用タップ1の中心軸Oから副切れ刃30,31,32までの距離d2よりも長くする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、軸方向に向かってらせん状に形成された主切れ刃と、前記主切れ刃に隣接して配置されており、らせん状に形成された主溝と、前記主溝に隣接して配置されており、らせん状に形成された副切れ刃と、前記副切れ刃に隣接して配置されており、らせん状に形成された副溝と、を有する管用テーパねじ用タップであって、前記管用テーパねじ用タップの中心軸から前記主切れ刃までの距離は、前記管用テーパねじ用タップの中心軸から前記副切れ刃までの距離よりも長いことを特徴とする管用テーパねじ用タップ。
【請求項2】
前記管用テーパねじ用タップの回転方向の前方から後方に向けて、前記副溝、前記副切れ刃、前記主溝、前記主切れ刃の順に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の管用テーパねじ用タップ。
【請求項3】
前記管用テーパねじ用タップの中心軸から前記副溝の溝底までの距離は、前記管用テーパねじ用タップの中心軸から前記主溝の溝底までの距離よりも長いことを特徴とする請求項1または2に記載の管用テーパねじ用タップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管類に対してねじ加工(管用テーパねじ加工)を行うタップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリル等の切削工具を用いて円筒状に開けた下穴にテーパ状のタップを通すことでテーパ状のめねじを成形していた。成形されためねじの内径の一部は、タップの谷部でも加工されて、テーパ状のめねじとなる(特許文献1および2参照)。従来の3溝タイプの管用テーパねじ用タップ100における断面形態を
図5に示す。なお、
図5において、符号101,102,103は切れ刃を示し、符号111,112,113は溝(ねじれ溝)示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6672332号公報
【特許文献2】特許第6589045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、配管等に対してねじ加工(テーパめねじの加工)する際に使用する管用タップの谷部が作用する箇所では、加工時に発生する切り屑が管用タップの長手方向に長く伸びた状態で発生する。このように長手方向に延びた切り屑が切り屑詰まりや切り屑の噛み込みなどにより、ねじ加工面におけるむしれの原因となっていた。
【0005】
そこで、本発明では、配管等へのテーパめねじ加工において、切り屑詰まりや切り屑の噛み込みの低減によるねじ加工面のむしれの抑制を行える管用テーパねじ用タップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するために、本発明の管用テーパねじ用タップは、少なくとも、軸方向に向かってらせん状に形成された主切れ刃、当該主切れ刃に隣接して配置されており、らせん状に形成された主溝、当該主溝に隣接して配置されており、らせん状に形成された副切れ刃、当該副切れ刃に隣接して配置されており、らせん状に形成された副溝を備えており、かつ管用テーパねじ用タップの中心軸から主切れ刃までの距離を同中心軸から副切れ刃までの距離よりも長くする。
【0007】
また、管用テーパねじ用タップの回転方向の前方から後方に向けて、副溝、副切れ刃、主溝、主切れ刃の順に配置する。管用テーパねじ用タップの中心軸から副溝の溝底までの距離を同中心軸から主溝の溝底までの距離よりも長くすることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の管用テーパねじ用タップによって、配管等へのテーパめねじ加工に際して、切り屑詰まりや切り屑の噛み込みの低減によるねじ加工面へのむしれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態を示す管用テーパねじ用タップ1の正面図である。
【
図2】
図1に示す管用テーパねじ用タップ1の左側面図である。
【
図3】
図1に示す管用テーパねじ用タップ1の斜視図である。
【
図4】
図1に示す管用テーパねじ用タップ1のX-X線位置での断面図である。
【
図5】従来の管用テーパねじ用タップ100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明であるタップの形態について図面を用いて説明する。本発明の一実施形態である管用テーパねじ用タップ(以下、タップという)1の正面図を
図1、左側面図を
図2、斜視図を
図3、
図1のX―X線断面図を
図4にそれぞれ示す。タップ1は、
図1および
図3に示すように先端側(
図1の左側)より、被削材に対してねじ加工を行うねじ加工部2と工作機械にチャッキング(取り付ける)する際に把持されるシャンク3を備えている。
【0011】
タップ1のねじ加工部2には、
図2および
図3に示すように6条の溝(ねじれ溝)を有し、このねじれ溝は、3条の主溝20,21,22と3条の副溝40,41,42から構成されている。副溝40,41,42は、
図2に示すように主溝20,21,22よりも回転方向Aの前方側に配置されていて、副溝40,41,42の溝深さは、主溝20,21,22の溝深さよりも浅い。
【0012】
言い換えると、
図4に示す様にタップ1の軸方向に対して垂直な断面視において、タップ1の中心軸Oから副溝40の底(副溝底)までの距離d12は、タップ1の中心軸Oから主溝20の底(主溝底)までの距離d11よりも長い。
【0013】
また、タップ1のねじ加工部2には、
図1ないし
図4に示す様にこれらの主溝20,21,22や副溝40,41,42に隣接して、3枚の主切れ刃10,11,12と3枚の副切れ刃30,31,32を有している。3枚の主切れ刃10,11,12の回転方向Aの前方側には、
図2および
図4に示す様に3条の主溝20,21,22が形成されており、3枚の主切れ刃10,11,12により切削加工された切り屑は、これらの主溝20,21,22を通り、タップ1の外部へ排出される。
【0014】
同様に、3枚の副切れ刃30,31,32の回転方向Aの前方側には、
図2および
図4に示す様に3条の副溝40,41,42が形成されており、3枚の副切れ刃30,31,32により切削加工された切り屑はこれらの副溝40,41,42を通り、タップ1の外部へ排出される。また、
図4に示す様に、3枚の副切れ刃30,31,32は、いずれも3枚の主切れ刃10,11,12に対して回転方向Aの前方側に配置されている。
【0015】
さらに、タップ1の中心軸Oから副切れ刃30,31,32までの距離d2を、
図4に示す様に中心軸Oから主切れ刃10,11,12までの距離d1よりも短くしている。これは、被削材へのねじ加工時において、まず副切れ刃30,31,32によりねじ加工部におけるめねじのねじ内径部を加工し、次いで主切れ刃10,11,12によりめねじのねじ内径部以外の箇所の加工を行うためである。
【0016】
つまり、ねじ内径部とそれ以外の箇所の加工を主切れ刃と副切れ刃でそれぞれ分担して行うことでねじ加工時に発生する切り屑を分断(細分化)させて、テーパめねじ加工における切り屑詰まりや切り屑の噛み込みを低減し、ねじ加工面へのむしれを抑制できる。
【0017】
なお、本実施形態では
図1ないし
図4で示すように主溝と副溝が各3条の計6条の溝(主切れ刃と副切れ刃の全切れ刃の枚数は溝数と同数存在)を有するタップを示しているが、この形態の他に、4条の溝(主溝と副溝が各2条ずつ)を有するタップや8条の溝(主溝と副溝が各4条ずつ)を有するタップであっても構わない。
【符号の説明】
【0018】
1,100 管用テーパねじ用タップ
2 ねじ加工部
3 シャンク
10,11,12 主切れ刃
20,21,22 主溝
30,31,32 副切れ刃
40,41,42 副溝
O 管用テーパねじ用タップの中心軸
d1 中心軸から主切れ刃までの距離
d2 中心軸から副切れ刃までの距離
d11 中心軸から主溝の底までの距離
d12 中心軸から副溝の底までの距離