(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177377
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】エンジンの補助制動装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20221124BHJP
B60H 1/03 20060101ALI20221124BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F02D29/02 F
B60H1/03 G
F02D29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083582
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 悟
(72)【発明者】
【氏名】宮田 昌明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信博
【テーマコード(参考)】
3G093
3L211
【Fターム(参考)】
3G093AA01
3G093BA00
3G093CA08
3G093EC03
3L211BA46
3L211DA49
(57)【要約】
【課題】エンジンブレーキの制動力をより増大させるとともに、ビスカスヒータを有効活用することができるエンジンの補助制動装置の提供にある。
【解決手段】車両に搭載されているエンジン11によるエンジンブレーキの制動力を補助するエンジンの補助制動装置30であって、粘性流体を収容する発熱室および粘性流体を剪断するロータを備え、剪断により発熱される粘性流体とエンジン11の冷却水との間で熱交換を行うビスカスヒータ13と、エンジン11の駆動力をロータに伝達する動力伝達機構と、動力伝達機構による動力伝達と遮断とを切り換えるクラッチと、クラッチを制御する制御装置14と、を備え、制御装置14は、エンジン11がエンジンブレーキにより制動されたときにビスカスヒータ13を駆動するように前記クラッチをONとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されているエンジンによるエンジンブレーキの制動力を補助するエンジンの補助制動装置であって、
粘性流体を収容する発熱室および前記粘性流体を剪断するロータを備え、剪断により発熱される前記粘性流体と前記エンジンの冷却水との間で熱交換を行うビスカスヒータと、
前記エンジンの駆動力を前記ロータに伝達する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構による動力伝達と遮断とを切り換えるクラッチと、
前記クラッチを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記エンジンがエンジンブレーキにより制動されたときに前記ビスカスヒータを駆動するように前記クラッチをONとすることを特徴とするエンジンの補助制動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記エンジンが低速ギヤで運転され、かつ、前記車両の運転席に備えられるアクセルペダルが踏み込み状態から戻されるときに前記クラッチをONとすることを特徴とする請求項1記載のエンジンの補助制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの補助制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用暖房装置は、水冷式のエンジンを冷却する冷却水をダクト内のヒータコアに供給して、このヒータコアを通過することにより加熱された空気を送風機によって車室内に送り込んで、車室内の暖房を行うものが知られている。例えば、ディーゼルエンジン車のように、エンジンの発熱量が少なくてエンジンの排熱により冷却水を充分に加熱することができない車両では、ビスカスヒータが備えられることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ビスカスヒータは、エンジンにより回転されるロータと、高粘性流体を収容した発熱室と、を備えている。ロータが回転されることで、剪断力により高粘性流体が発熱し、発熱室内の高粘性流体の発生熱を冷却水に吸熱する。ビスカスヒータは、エンジン始動時にエンジンにより駆動され、冷却水回路内の冷却水温が所定冷却水温(例えば80℃)に上昇されると停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、車両が下り坂を走行するときにはエンジンブレーキを用いて制動する場合がある。この場合、エンジンブレーキの制動力は大きいほど制動の効果は高くなる。一方、特許文献1に開示されたビスカスヒータは、冷却水の温度上昇を促進するためにエンジン始動時の限定的な使用にならざるを得ないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、エンジンブレーキの制動力をより増大させるとともに、ビスカスヒータを有効活用することができるエンジンの補助制動装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車両に搭載されているエンジンによるエンジンブレーキの制動力を補助するエンジンの補助制動装置であって、粘性流体を収容する発熱室および前記粘性流体を剪断するロータを備え、剪断により発熱される前記粘性流体と前記エンジンの冷却水との間で熱交換を行うビスカスヒータと、前記エンジンの駆動力を前記ロータに伝達する動力伝達機構と、前記動力伝達機構による動力伝達と遮断とを切り換えるクラッチと、前記クラッチを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記エンジンがエンジンブレーキにより制動されたときに前記ビスカスヒータを駆動するように前記クラッチをONとすることを特徴とする。
【0008】
本発明では、エンジンがエンジンブレーキにより制動されたときに、制御装置はクラッチをONにする。このため、エンジンブレーキの制動時にビスカスヒータが駆動される。したがって、エンジンブレーキの制動時にエンジンにより駆動されるビスカスヒータでは、ロータによって粘性流体を剪断することでエンジンに対する負荷が加わる。その結果、ビスカスヒータの駆動によりエンジンブレーキによる制動力を増大できる。また、ビスカスヒータを始動時以外の状況で用いることができ、ビスカスヒータの有効活用を図ることができる。
【0009】
また、上記のエンジンの補助制動装置において、前記制御装置は、前記エンジンが低速ギヤで運転され、かつ、前記車両の運転席に備えられるアクセルペダルが踏み込み状態から戻されるときに前記クラッチをONとする構成としてもよい。
この場合、エンジンが低速ギヤで運転され、かつ、車両の運転席に備えられるアクセルペダルが踏み込み状態から戻されるとき、エンジンはエンジンブレーキにより制動されるので、エンジンブレーキの制動時にビスカスヒータを駆動することができる。なお、エンジンが高速ギヤで運転される場合や、アクセルペダルが踏み込み状態から戻されている場合では、ビスカスヒータは駆動されない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エンジンブレーキの制動力をより増大させるとともに、ビスカスヒータを有効活用することができるエンジンの補助制動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用空気調和装置の冷却水回路を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るエンジンの概略正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るビスカスヒータの縦断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るエンジンの補助制動装置の作動の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るエンジンの補助制動装置について図面を参照して説明する。本実施形態のエンジンは、車両に搭載されるディーゼルエンジンである。
【0013】
図1に示す車両用空調装置10は、水冷式のディーゼルエンジン(以下、「エンジン」と表記する)11を搭載する車両に設けられ、エアコンユニット12を備えている。また、車両用空調装置10には、エンジン11により駆動され、エンジン11を冷却する冷却水を加熱するビスカスヒータ13と、車両の各部を制御する制御装置14が設けられている。
【0014】
エンジン11は、車両に設けられたエンジンルーム(図示せず)内に搭載されている。エンジン11は、出力軸としてのクランク軸15を備えており、クランク軸15にはクランクプーリー16が取り付けられている。
図2に示すように、クランクプーリー16には伝動ベルト17が掛装されている。エンジン11は、補機類として、ウォーターポンプ20と、ビスカスヒータ13と、を備えている。また、エンジン11は、ウォーターポンプ20およびビスカスヒータ13のほか、コンプレッサと、オルタネータと、オイルポンプと、を備えている。
【0015】
図2に示すように、ウォーターポンプ20およびビスカスヒータ13には、対応するベルトプーリー23、26が備えられている。伝動ベルト17は、ベルトプーリー23、26に掛装されている。エンジン11には、伝動ベルト17の張力を調整するためのテンションローラ27が備えられている。したがって、クランク軸15の回転により、伝動ベルト17を介してウォーターポンプ20、ビスカスヒータ13が駆動される。
【0016】
エンジン11には、冷却水を通すウォータージャケット(図示せず)が備えられている。
図1に示すように、エンジン11のウォータージャケットには、冷却水が一方向へ向けて循環する冷却水回路29が接続されている。エンジン11は運転されると排熱を発生するので、エンジン11のウォータージャケットを通る冷却水とエンジン11との熱交換により、冷却水は温められる。冷却水回路29の冷却水は、ウォーターポンプ20の駆動により冷却水回路29において一方向へ向けて循環される。なお、冷却水としては、エチレングリコール水溶液等の不凍液を添加した冷却水のほか、不凍液や防錆剤等の混合したロングライフクーラント(LLC)などを用いてもよい。
【0017】
エアコンユニット12について説明すると、エアコンユニット12は、車両の車室内を冷房または暖房により空気調和する空調ユニットである。エアコンユニット12には、車室内に向けて空気を送るための空調ダクト(図示せず)が備えられている。空調ダクトには、ファン、冷凍サイクルのエバポレータ、冷却水回路29のヒータ等が設置されている。空調ダクトでは、選択的に開閉される複数の外気吸込口が開口しているほか、選択的に開閉される複数の吹出口が開口している。ファンは、モータの駆動により回転され、空調ダクト内において車室内へ向かう空気流を発生する。エバポレータは、コンプレッサ等とともに冷凍サイクルの一部を構成し、空調ダクト内を流れる空気を冷却する空気冷却手段である。
【0018】
制御装置14は、車両用空調装置10やエンジン11等を電子制御するコンピュータであり、所謂、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置14は、エアコンユニット12と接続されている。また、車両各部に設けられたセンサ類と接続されている。制御装置14は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。制御装置14は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。
【0019】
本実施形態では、エンジン11によるエンジンブレーキの制動力を補助するエンジンの補助制動装置(以下、「補助制動装置」と表記する)30が備えられている(
図1を参照)。補助制動装置30は、ビスカスヒータ13と、エンジン11の回転力をビスカスヒータ13に伝達する動力伝達機構31と、動力伝達機構31による動力伝達と遮断とを切り換える電磁クラッチ32と、電磁クラッチ32を制御する制御装置14と、を備える。ビスカスヒータ13のベルトプーリー26および伝動ベルト17は、動力伝達機構31に相当する。
【0020】
図3に示すように、ビスカスヒータ13は、第1ハウジング本体36および第1プレート37から構成される第1ハウジング35と、第2プレート39および第2ハウジング本体40から構成される第2ハウジング38と、を備えている。第1ハウジング35および第2ハウジング38の内部には、第1プレート37および第2プレート39により、発熱室41が形成されている。
【0021】
第1ハウジング本体36には、一方へ向けて突出するボス42が形成されている。ボス42内には回転軸43が挿通され、軸受44によって回転可能に支持されている。回転軸43の第2ハウジング38側の端部には、発熱室41内で回転可能な平板状のロータ45が固定されている。回転軸43および第1プレート37の間には、回転軸43と第1プレート37との間を閉塞し、発熱室41を密封するシール部材46が設けられている。発熱室41には、粘性流体としてシリコンオイルが充填されている。
【0022】
第1ハウジング35において、第1ハウジング本体36の内面と第1プレート37の端面との間に、発熱室41に隣接する第1ウォータージャケット47が形成されている。また、第2ハウジング38において、第2プレート39の端面と第2ハウジング本体40の内面との間に、発熱室41に隣接する第2ウォータージャケット48が形成されている。さらに、第1ウォータージャケット47と第2ウォータージャケット48とは互いに連通している。第2ハウジング本体40には、第2ウォータージャケット48と連通するように、入口ポート49および出口ポート(図示せず)が隣接して設けられている。入口ポート49は冷却水回路29から冷却水を取り入れるためのポートであり、出口ポートは冷却水回路29へ冷却水を送り出すためのポートである。
【0023】
回転軸43には、電磁クラッチ32を介してベルトプーリー26が設けられている(
図1を参照)。電磁クラッチ32は、クラッチに相当し、伝動ベルト17により伝達されるエンジン11の回転力の回転軸43への伝達と遮断とを切り換える。電磁クラッチ32は制御装置14により制御される。電磁クラッチ32が制御装置14の指令によりONになると、エンジン11の回転が回転軸43に伝達され、ロータ45が回転し、電磁クラッチ32がOFFのときエンジン11の回転は回転軸43に伝達されない。つまり、電磁クラッチ32は、エンジン11の駆動力をロータ45に伝達する伝動ベルト17およびベルトプーリー26による動力伝達と遮断とを切り換える。ロータ45が回転するとき、シリコンオイルが撹拌されて発熱し、シリコンオイルと冷却水との熱交換により冷却水が温められる。なお、
図3ではベルトプーリー26および電磁クラッチ32の図示を省略している。
【0024】
制御装置14は、運転席に設けたパワーヒータスイッチ52と接続されている。パワーヒータスイッチ52は、車両の運転者の操作によりON・OFFされるスイッチである。例えば、低温下でのエンジン11の始動時に運転者がパワーヒータスイッチ52をONとし、ビスカスヒータ13を起動させ、冷却水を温めるようにする。
【0025】
本実施形態では、走行中の車両がエンジンブレーキを用いて制動されるとき、ビスカスヒータ13が駆動され、ビスカスヒータ13の駆動によりエンジンブレーキの制動力を増大させる構成が採用されている。制御装置14は、
図4に示す一連のステップに従い、車両がエンジンブレーキを用いて制動されるときビスカスヒータ13を駆動するように制御する。
【0026】
図4に示すように、制御装置14は、エンジン11が低速ギヤで運転されているか否かを判別する(ステップS101)。エンジン11が低速ギヤで運転されているか、あるいは、高速ギヤで運転されているかは、制御装置14がエンジン11のギヤポジションを検出するギヤポジションセンサ53の信号の伝達を受けることで可能である(
図1を参照)。
【0027】
ステップS101において制御装置14がエンジン11のエンジン11が低速ギヤで運転されていると判別すると、制御装置14は、次に、アクセルペダル(図示せず)が踏み込み状態から戻されている状態か否かを判別する(ステップS102)。アクセルペダルが踏み込み状態から戻されている状態か否かは、制御装置14がアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ54の信号の伝達を受け、アクセルペダルセンサ54の信号から踏み込み量の変化を認識することで可能となる。
【0028】
ステップS102において制御装置14が、アクセルペダルが踏み込み状態から戻されている状態であると判別すると、電磁クラッチ32をONとする(ステップS103)。電磁クラッチ32がONとされることで、ビスカスヒータ13が駆動される(ステップS104)。なお、制御装置14が、ステップS101でエンジン11が低速ギヤで運転されていない判別した場合と、ステップS102でアクセルペダルが踏み込み状態から戻されていないと判別した場合とでは、ビスカスヒータ13は駆動されない。
【0029】
次に、本実施形態の補助制動装置30による作用について説明する。高速ギヤで運転中の車両がエンジンブレーキの制動力により制動されるとき、運転者はアクセルペダルを踏み込み状態から戻すので、制御装置14はアクセルペダルが踏み込み状態から戻されている状態であると判別する。また、アクセルペダルが戻されることで、エンジン11が高速ギヤから低速ギヤでの運転となり、制御装置14はエンジン11のエンジン11が低速ギヤで運転されていると判別する。なお、シフトレバー等の運転者の操作により、高速ギヤから低速ギヤへの運転であってもよい。
【0030】
したがって、制御装置14は、アクセルペダルが踏み込み状態から戻され、かつ、エンジン11が低速ギヤで運転されているので、エンジン11がエンジンブレーキにより制動されていると認識し、電磁クラッチ32をONとする。電磁クラッチ32のONにより、ビスカスヒータ13が駆動され、ビスカスヒータ13が駆動されると、ロータ45が発熱室41の粘性流体を剪断し、ロータ45の運動エネルギーが粘性流体の剪断による熱エネルギーに変換される。このため、粘性流体の剪断に必要な動力がエンジン11の負荷として追加され、エンジンブレーキによる制動力が増大する。なお、アクセルペダルが再び踏み込まれる場合や、エンジン11が低速ギヤから高速ギヤで運転される場合では、制御装置14は、電磁クラッチ32をOFFとする。このため、ビスカスヒータ13を停止する。
【0031】
次に、本実施形態の補助制動装置30は以下の効果を奏する。
(1)エンジン11がエンジンブレーキにより制動されたときに、制御装置14は電磁クラッチ32をONにする。このため、エンジンブレーキの制動時にビスカスヒータ13が駆動される。したがって、エンジンブレーキの制動時にエンジン11により駆動されるビスカスヒータ13では、ロータ45によって粘性流体を剪断することでエンジン11に対する負荷が加わる。その結果、ビスカスヒータ13の駆動によりエンジンブレーキの制動力をより増大できる。また、ビスカスヒータ13を始動時以外の状況で用いることができるので、ビスカスヒータ13の使用頻度が高まり、ビスカスヒータ13の有効活用を図ることができる。
【0032】
(2)エンジン11が低速ギヤで運転され、かつ、車両の運転席に備えられるアクセルペダルが踏み込み状態から戻されるとき、エンジン11はエンジンブレーキにより制動されるので、エンジンブレーキの制動時にビスカスヒータ13を駆動することができる。なお、高速ギヤで運転され、かつ、アクセルペダルが踏み込み状態から戻されても、電磁クラッチ32はOFFであり、ビスカスヒータ13は駆動されない。
【0033】
(3)エンジンブレーキによる制動時にビスカスヒータ13を作動させるが、特に、機器や部材を追加することなくエンジンブレーキによる制動時にビスカスヒータ13を作動させることができる。このため、補助制動装置30はスペースを必要とせず、製作コストを抑制することができる。
【0034】
(4)エンジンブレーキによる制動時にビスカスヒータ13が作動されることで、エンジンブレーキによる制動時に冷却水をさらに温めることができる。このため、車両用空調装置10が車室を暖房している場合には、ビスカスヒータ13の発熱を有効活用することができる。
【0035】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0036】
○ 上記の実施形態では、動力伝達機構として伝動ベルトとベルトプーリーを用いたので、ビスカスヒータがエンジンの回転を受けて作動するとき、エンジン回転数に応じてロータが回転する構成であるが、これに限らない。動力伝達機構は、例えば、複数のギヤを用い、エンジンの回転数とは別にビスカスヒータの回転数を変更して負荷を調整できるようにしてもよい。この場合、エンジン回転数に関わらずビスカスヒータの負荷を調整できるので、補助的な制動力を必要とするときに最大の制動力を得ることができるようになる。したがって、ビスカスヒータの負荷が調整できない場合と比較して、急激な制動を抑制でき、例えば、車両の乗り心地が向上する。また、エンジンブレーキによる制動時に荷重を受ける伝動ベルトへの負荷を緩和することができ、伝動ベルトの耐久性を向上することも可能である。
○ 上記の実施形態では、エンジンが低速ギヤで運転され、かつ、車両の運転席に備えられるアクセルペダルが踏み込み状態から戻されるときに、ビスカスヒータが作動されるとしたが、これに限らない。例えば、アクセルペダルが踏み込み状態から戻されるだけで、ビスカスヒータを作動させてもよく、あるいは、エンジンが低速ギヤでなく高速ギヤで運転され、かつ、アクセルペダルが踏み込み状態から戻されるときにビスカスヒータを作動させてもよい。
○ 上記の実施形態では、車両がエンジンブレーキにより制動されているか否かを、運転時のエンジンのギヤおよびアクセルペダルの状態に基づいて判別したが、これに限らない。例えば、エンジンのギヤポジションセンサと車両の加速度を検出する加速度センサとを組み合わせてエンジンブレーキによる制動を判別してもよい。
○ 上記の実施形態では、ディーゼルエンジンに駆動されるビスカスヒータを用いる例を示したが、ビスカスヒータはディーゼルエンジン以外のエンジン、例えば、ガソリンエンジンにより駆動されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用空調装置
11 エンジン
12 エアコンユニット
13 ビスカスヒータ
14 制御装置
15 クランク軸
16 クランクプーリー
17 伝動ベルト
23、26 ベルトプーリー
29 冷却水回路
30 補助制動装置
31 動力伝達機構
32 電磁クラッチ
41 発熱室
43 回転軸
45 ロータ
52 パワーヒータスイッチ
53 ギヤポジションセンサ
54 アクセルペダルセンサ