(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177382
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成装置におけるレジスト調整プログラムおよびレジスト調整方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/01 20060101AFI20221124BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20221124BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20221124BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221124BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G03G15/01 Y
G03G15/16
G03G21/14
G03G21/00 512
B41J29/393 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083587
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】明星 敏之
【テーマコード(参考)】
2C061
2H200
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2C061AP07
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AR03
2C061AS02
2C061KK01
2C061KK03
2C061KK18
2C061KK26
2C061KK28
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA47
2H200GB11
2H200GB22
2H200GB23
2H200JA02
2H200JC03
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2H200JC20
2H200PA10
2H200PA11
2H200PB18
2H270LA18
2H270LA24
2H270LD14
2H270LD15
2H270MB16
2H270MB25
2H270MB29
2H270MB32
2H270MB39
2H270MB41
2H270MB43
2H270MC40
2H270MC78
2H270MD05
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2H270RC14
2H270RC18
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC06
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC02
2H300EC15
2H300EF03
2H300EH16
2H300EH17
2H300EJ09
2H300EK03
2H300EL01
2H300GG21
2H300QQ10
2H300RR10
2H300RR32
2H300RR38
(57)【要約】
【課題】 タンデム方式の画像形成装置において、トナーの消費量を削減しつつ、簡素かつ安価な構成によりレジストずれを補正する。
【解決手段】 本発明に係る複合機(10)によれば、とりわけ簡易的なレジスト調整によれば、イエロー用の画像形成ステーション32により中間転写ベルト40上に単色パターン画像(300)が形成される。そして、単色パターン画像(300)が形成された時点ty1から当該単色パターン画像(300)がパターン画像センサ38により検出される時点tdまでの単色パターン画像検出時間Tdyに基づいて、各画像形成ステーション32,32,…による画像形成開始タイミングが補正され、詳しくは各タイミング差時間Ty,TmおよびTcが補正される。すなわち、イエローのトナーのみ消費される。また、中間転写ベルト40の回転位置を検出するための特別な要素も必要ない。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回移動可能に懸架された転写ベルト、
前記転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられ、当該転写ベルト上に単色の画像を個別に形成する複数の単色画像形成手段、
前記複数の単色画像形成手段を制御する制御手段、および、
前記転写ベルト上に形成された所定画像を検出する画像検出手段を備え、
前記制御手段は、前記複数の単色画像形成手段のうちの1つである特定画像形成手段に前記所定画像としての第1パターン画像を形成させるとともに、前記画像検出手段による当該第1パターン画像の検出結果に基づいて、当該複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する、第1レジスト調整処理を実行する、画像形成装置。
【請求項2】
前記画像検出手段による前記第1パターン画像の検出結果は、前記制御手段が前記特定画像形成手段に前記第1パターン画像を形成させた時点から当該第1パターン画像が当該画像検出手段により検出された時点までの画像検出時間を含む、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記画像検出手段による前記第1パターン画像の検出結果に加えて、前記転写ベルトの移動方向における前記複数の単色画像形成手段の相互間距離、および、当該転写ベルトの移動方向における当該複数の単色画像形成手段の少なくともいずれかと当該画像検出手段による当該第1パターン画像の検出位置との相互間距離に基づいて、当該複数の単色画像形成手段のそれぞれによる前記画像形成開始タイミングを調整する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1レジスト調整処理において、前記複数の単色画像形成手段のうちの1つである基準画像形成手段による前記画像形成開始タイミングを基準として、当該複数の単色画像形成手段のうちの当該基準画像形成手段以外のそれぞれの当該単色画像形成手段による当該画像形成開始タイミングを、前記転写ベルトの移動方向における当該基準画像形成手段以外のそれぞれの当該単色画像形成手段と当該基準画像形成手段との相互間距離に応じて調整する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像検出手段は、前記転写ベルトの移動方向における前記複数の単色画像形成手段の並びよりも下流側に設けられ、
前記特定画像形成手段は、前記複数の単色画像形成手段のうちの前記転写ベルトの移動方向における最も上流側に設けられた当該単色画像形成手段である、請求項1から4までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、所定条件が満足されたときに前記第1レジスト調整処理を実行する、請求項1から5までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記所定条件は、装置内温度が所定時点に比べて所定の閾値以上に変化するという温度変化条件を含む、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記所定時点は、前回の前記第1レジスト調整処理が実行された時点を含む、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記複数の単色画像形成手段は、互いに共通の部材により支持される、請求項1から8までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記複数の単色画像形成手段のそれぞれに前記所定画像としての第2パターン画像を形成させるとともに、前記画像検出手段によるそれぞれの当該第2パターン画像の検出結果に基づいて、当該複数の単色画像形成手段のそれぞれによる前記画像形成開始タイミングを調整する、第2レジスト調整処理と、前記第1レジスト調整処理と、を選択的に実行する、請求項1から9までのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
周回移動可能に懸架された転写ベルト、当該転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられ、当該転写ベルト上に単色の画像を個別に形成する複数の単色画像形成手段、および、当該転写ベルト上に形成された所定画像を検出する画像検出手段を備える画像形成装置におけるレジスト調整プログラムであって、
前記画像形成装置のコンピュータに、前記複数の単色画像形成手段を制御する制御手順を実行させ、
前記制御手順において、前記複数の単色画像形成手段のうちの1つである特定画像形成手段に前記所定画像としての第1パターン画像を形成させるとともに、前記画像検出手段による当該第1パターン画像の検出結果に基づいて、当該複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する、第1レジスト調整処理を実行する、レジスト調整プログラム。
【請求項12】
周回移動可能に懸架された転写ベルト、当該転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられ、当該転写ベルト上に単色の画像を個別に形成する複数の単色画像形成手段、および、当該転写ベルト上に形成された所定画像を検出する画像検出手段を備える画像形成装置におけるレジスト調整方法であって、
前記複数の単色画像形成手段を制御する制御ステップを含み、
前記制御ステップにおいて、前記複数の単色画像形成手段のうちの1つである特定画像形成手段に前記所定画像としての第1パターン画像を形成させるとともに、前記画像検出手段による当該第1パターン画像の検出結果に基づいて、当該複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する、第1レジスト調整処理を実行する、レジスト調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成装置におけるレジスト調整プログラムおよびレジスト調整方法に関し、特に、周回移動(走行)可能に懸架された転写ベルトと、当該転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられ、当該転写ベルト上に単色の画像を個別に形成(転写)する複数の単色画像形成手段と、を備える、いわゆるタンデム方式の画像形成装置、画像形成装置におけるレジスト調整プログラムおよびレジスト調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンデム方式の画像形成装置においては、転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられた複数の単色画像形成手段により当該転写ベルト上に単色の画像が個別に形成されることで、当該転写ベルト上にカラー画像が形成される。ここで、高品質なカラー画像を得るには、各単色画像形成手段により転写ベルト上に形成される各画像の位置が互いに一致することが、つまりはそうなるようにそれぞれの単色画像形成手段による画像形成開始タイミングが計られることが、必要である。その一方で、画像形成装置の経時変化や周囲環境の変化、画像形成装置内の温度変化などの種々の要因によって、各単色画像形成手段により転写ベルト上に形成される各画像の位置がずれることがあり、いわゆるレジストずれが生ずることがある。このレジストずれを補正するための技術の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された技術によれば、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4つの色の画像を個別に形成するための4つの単色画像形成手段としての4つの画像形成ステーションが設けられる。そして、転写ベルトとしての中間転写ベルトに機械的な目印であるタブ部が設けられる。併せて、それぞれの画像形成ステーションによる転写ベルト上への画像形成位置の近傍に、転写ベルトのタブ部を検出するためのベルト位置センサが設けられ、つまり計4つのベルト位置センサが設けられる。加えて、各ベルト位置センサとは別に、転写ベルトのタブ部を検出するための垂直同期センサが設けられる。さらに、次に説明するレジストパターンを検出するためのレジストセンサが設けられる。
【0004】
その上で、まず、垂直同期センサにより転写ベルトのタブ部が検出された時点を基準として、それぞれの画像形成ステーションごとに予め定められたタイミングで、当該それぞれの画像形成ステーションにより転写ベルト上にレジストパターンが形成され、つまり4つの色のレジストパターンが個別に形成される。そして、レジストセンサによるそれぞれの色のレジストパターンの検出結果と、それぞれのベルト位置センサによる転写ベルトのタブ部の検出結果と、に基づいて、それぞれの画像形成ステーションによる転写ベルト上への画像形成開始タイミングが調整される。これにより、レジストずれが補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、特許文献1に開示された技術では、レジストずれを補正するために、転写ベルトにタブ部が設けられ、言わばタブ部という特別な要素が設けられる。併せて、タブ部を検出するための4つのベルト位置センサと、当該4つのベルト位置センサとは別の垂直同期センサと、が設けられる。このように、タブ部という特別な要素が設けられるとともに、当該タブ部を検出するための複数の(比較的に多数の)センサが設けられると、その分、装置の構成が複雑化し、かつ、高コスト化する。また、特許文献1に開示された技術では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4つの色のレジストパターンが個別に形成され、つまりレジストパターンの原料であるトナーが当該4つの色の全てについて消費される。すなわち、レジストずれを補正するための処理が行われるたびに、4つの色の全てについてトナーが消費され、不経済である。
【0007】
そこで、本発明は、トナーの消費量を削減しつつ、簡素かつ安価な構成によりレジストずれを補正することができる、新規な画像形成装置、画像形成装置におけるレジスト調整プログラムおよびレジスト調整方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、画像形成装置に係る第1発明、画像形成装置におけるレジスト調整プログラムに係る第2発明、および、画像形成装置におけるレジスト調整方法に係る第3発明を、含む。
【0009】
このうちの画像形成装置に係る第1発明は、転写ベルト、複数の単色画像形成手段、制御手段、および、画像検出手段を備える。転写ベルトは、周回移動可能に懸架される。複数の単色画像形成手段は、転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられる。そして、複数の単色画像形成手段は、転写ベルト上に単色の画像を個別に形成する。制御手段は、複数の単色画像形成手段を制御する。画像検出手段は、転写ベルト上に形成された所定画像を検出する。さらに、制御手段は、第1レジスト調整処理を実行する。この第1レジスト調整処理において、制御手段は、複数の単色画像形成手段のうちの1つである特定画像形成手段に所定画像としての第1パターン画像を形成させる。併せて、制御手段は、第1レジスト調整処理において、画像検出手段による第1パターン画像の検出結果に基づいて、複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する。
【0010】
具体的には、ここで言う画像検出手段による第1パターン画像の検出結果は、制御手段が特定画像形成手段に第1パターン画像を形成させた時点から当該第1パターン画像が画像検出手段により検出された時点までの画像検出時間を含む。すなわち、制御手段は、特定画像形成手段に第1パターン画像を形成させた時点から当該第1パターン画像が画像検出手段により検出された時点までの画像検出時間に基づいて、複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する。
【0011】
これに加えて、制御手段は、転写ベルトの移動方向における複数の単色画像形成手段の相互間距離、および、当該転写ベルトの移動方向における複数の単色画像形成手段の少なくともいずれかと画像検出手段による第1パターン画像の検出位置との相互間距離に基づいて、複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整してもよい。
【0012】
また、制御手段は、第1レジスト調整処理において、複数の単色画像形成手段のうちの1つである基準画像形成手段による画像形成開始タイミングを基準として、当該複数の単色画像形成手段のうちの基準画像形成手段以外のそれぞれの単色画像形成手段による画像形成開始タイミングを調整してもよい。この場合、制御手段は、複数の単色画像形成手段のうちの基準画像形成手段以外のそれぞれの単色画像形成手段による画像形成開始タイミングを、転写ベルトの移動方向における当該基準画像形成手段以外のそれぞれの単色画像形成手段と当該基準画像形成手段との相互間距離に応じて調整する。
【0013】
本第1の発明における画像検出手段は、たとえば転写ベルトの移動方向における複数の単色画像形成手段の並びよりも下流側に設けられる。そして、特定画像形成手段は、複数の単色画像形成手段のうちの転写ベルトの移動方向における最も上流側に設けられた当該単色画像形成手段である。
【0014】
なお、制御手段は、所定条件が満足されたときに、第1レジスト調整処理を実行してもよい。
【0015】
ここで言う所定条件は、たとえば画像形成装置内の温度が所定時点に比べて所定の閾値以上に変化する、という温度変化条件を含む。
【0016】
また、ここで言う所定時点は、たとえば前回の第1レジスト調整処理が実行された時点を含む。
【0017】
本第1の発明における複数の単色画像形成手段は、互いに共通の部材により支持されてもよい。
【0018】
さらに、制御手段は、第1レジスト調整処理と第2レジスト調整処理とを選択的に実行してもよい。ここで、第2レジスト調整処理において、制御手段は、複数の単色画像形成手段のそれぞれに所定画像としての第2パターン画像を形成させる。併せて、制御手段は、第2レジスト調整において、複数の画像形成手段のそれぞれにより形成された第2パターン画像の画像検出手段による検出結果に基づいて、当該複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する。
【0019】
本発明のうちの画像形成装置におけるレジスト調整プログラムに係る第2発明は、当該画像形成装置のコンピュータに、制御手順を実行させる。ここで、画像形成装置は、転写ベルト、複数の単色画像形成手段、および、画像検出手段を備える。転写ベルトは、周回移動可能に懸架される。複数の単色画像形成手段は、転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられる。そして、複数の単色画像形成手段は、転写ベルト上に単色の画像を個別に形成する。画像検出手段は、転写ベルト上に形成された所定画像を検出する。その上で、制御手順では、複数の単色画像形成手段を制御する。加えて、制御手順では、第1レジスト調整処理を実行する。この第1レジスト調整処理においては、複数の単色画像形成手段のうちの1つである特定画像形成手段により所定画像としての第1パターン画像を形成させる。併せて、第1レジスト調整処理においては、画像検出手段による第1パターン画像の検出結果に基づいて、複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する。
【0020】
本発明のうちの画像形成装置におけるレジスト調整方法に係る第3発明は、制御ステップを含む。ここで、画像形成装置は、転写ベルト、複数の単色画像形成手段、および、画像検出手段を備える。転写ベルトは、周回移動可能に懸架される。複数の単色画像形成手段は、転写ベルトの移動方向に沿って互いに間隔を置いて設けられる。そして、複数の単色画像形成手段は、転写ベルト上に単色の画像を個別に形成する。画像検出手段は、転写ベルト上に形成された所定画像を検出する。その上で、制御ステップでは、複数の単色画像形成手段を制御する。加えて、制御ステップでは、第1レジスト調整処理を実行する。この第1レジスト調整処理においては、複数の単色画像形成手段のうちの1つである特定画像形成手段により所定画像としての第1パターン画像を形成させる。併せて、第1レジスト調整処理においては、画像検出手段による第1パターン画像の検出結果に基づいて、複数の単色画像形成手段のそれぞれによる画像形成開始タイミングを調整する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トナーの消費量を削減しつつ、簡素かつ安価な構成によりレジストずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例に係る複合機の内部の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施例に係る複合機の画像形成部を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施例に係る複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施例における画像形成部の各感光体ドラムへの静電潜像の書き込み開始タイミングおよび当該各感光体ドラムから転写ベルト上への各単色トナー画像の形成工程を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1実施例における全色パターン画像を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施例における単色パターン画像を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施例における簡易レジスト調整の要領を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第1実施例における主記憶部のRAM内の構成を概念的に示すメモリマップである。
【
図9】
図9は、第1実施例における高精度レジスト調整タスクの流れを示すフロー図である。
【
図10】
図10は、第1実施例における簡易レジスト調整タスクの流れを示すフロー図である。
【
図11】
図11は、本発明の第2実施例における高精度レジスト調整タスクの流れを示すフロー図である。
【
図12】
図12は、第2実施例における簡易レジスト調整タスクの流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施例]
本発明の第1実施例について、
図1に示される複合機10を例に挙げて説明する。
【0024】
本第1実施例に係る複合機10は、画像形成装置の一種であり、コピー機能、プリンタ機能、イメージスキャナ機能、ファクス機能などの複数の機能を有する。なお、
図1は、使用可能な状態に設置された複合機10の内部の構成を当該複合機10の前方側から見た図である。すなわち、
図1における上下方向は、複合機10の上下方向に対応する。また、
図1における左右方向は、複合機10の左右方向に対応する。さらに、
図1の紙面の手前側は、複合機10の前方に対応する。そして、
図1の紙面の奥側は、複合機10の後方に対応する。
【0025】
この複合機10の上部には、画像読取手段の一例としての画像読取部12が設けられる。画像読取部12は、不図示の原稿の画像を読み取って、当該原稿の画像に応じた2次元の読取画像データを出力する、画像読取処理を担う。このため、画像読取部12は、原稿が載置される原稿台14を有する。原稿台14は、概略矩形平板状のガラスなどの透明部材により形成され、その両主面を水平方向に沿わせるように設けられる。そして、原稿台14の下方に、画像読取ユニット16が設けられる。詳しい説明は省略するが、画像読取ユニット16は、光源、ミラー、レンズ、ラインセンサなどを有し、原稿台14の上面に複合機10の前後方向に沿って延伸する直線状の画像読取位置Prを形成する。さらに、原稿台14の下方には、画像読取ユニット16の画像読取位置Prを複合機10の左右方向に沿って移動(走査)させるための不図示の駆動機構が設けられる。すなわち、原稿台14に原稿が載置された状態で、画像読取ユニット16の画像読取位置Prが駆動機構により移動されることで、当該原稿の画像が読み取られ、いわゆる固定読み方式により読み取られる。なお、複合機10の前後方向は、主走査方向と呼ばれる。そして、複合機10の左右方向は、副走査方向と呼ばれる。
【0026】
また、原稿台14の上方には、当該原稿台14に載置された原稿を押さえるための原稿押さえカバーを兼ねる自動原稿送り装置(ADF)18が設けられる。自動原稿送り装置18は、原稿台14の上面を外部に露出させる状態と、当該原稿台14の上面を覆う状態と、に遷移可能に設けられる。このため、自動原稿送り装置18は、ヒンジなどの不図示の適当な可動支持部材を介して複合機10の本体(筐体)に結合される。なお、
図1は、自動原稿送り装置18が原稿台14の上面を覆った状態を示す。また、自動原稿送り装置18は、
図1に示される如く原稿台14の上面を覆った状態にあり、かつ、原稿台14に(自動原稿送り装置18自体を除いて)何らの物体が載置されていない状態にあるときに、それ本来の機能を発揮する。
【0027】
自動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20を有する。この原稿載置トレイ20には、原稿が、厳密にはシート状の原稿が、載置可能であり、とりわけ複数枚の原稿が積層状に載置可能である。詳しい説明は省略するが、自動原稿送り装置18は、原稿載置トレイ20に載置された原稿を1枚単位で(1枚ずつ)取り込み、当該自動原稿送り装置18内の原稿搬送路22を搬送させる。その途中で、原稿は、画像読取位置Prを通過し、厳密には固定された状態にある画像読取位置Prを通過する。これにより、原稿の画像が読み取られ、いわゆる流し読み方式で読み取られる。その後、原稿は、原稿排出トレイ24に排出される。
【0028】
画像読取部12の下方には、カラー画像形成手段の一例としての画像形成部28が設けられる。この画像形成部28は、不図示のシート状の画像記録媒体としての用紙に前述の読取画像データなどの適宜の画像データに基づく画像を形成する印刷処理、つまり画像形成処理、を行う。この画像形成処理は、公知の電子写真方式(カールソンプロセス方式)により行われ、画像形成部28は、カラーの画像形成処理を行うために、タンデム方式を採用している。
【0029】
具体的には、画像形成部28は、互いに異なる複数の色、たとえばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4つの色の、単色トナー画像を個別に形成するための4つの単色画像形成手段の一例としての画像形成ステーション(「プロセスユニット」と呼ばれることもある。)32,32,…を有している。併せて、画像形成部28は、各画像形成ステーション32,32,…による単色トナー画像の形成に必要な露光を行う露光手段としての露光装置34、各画像形成ステーション32,32,…により形成された単色トナー画像の合成像であるカラーのトナー画像を用紙上に転写するための転写手段としての転写ユニット30、および、用紙上に転写されたトナー画像を当該用紙上に定着させるための定着手段としての定着装置36を有している。さらに、画像形成部28は、各画像形成ステーション32,32,…により形成された単色トナー画像を検出するための画像検出手段の一例としてのパターン画像センサ38を有している。
【0030】
この画像形成部28について、さらに
図2を参照して、より具体的に説明する。まず、転写ユニット30は、転写ベルトの一例としての中間転写ベルト(「1次転写ベルト」と呼ばれることもある。)40、この中間転写ベルト40を回転させる駆動ローラ42、当該駆動ローラ42とともに中間転写ベルト40を張架する従動ローラ44、中間転写ベルト40の内側における各画像形成ステーション32,32,…と対応する位置に設けられた4つの中間転写ローラ(「1次転写ローラ」と呼ばれることもある。)46,46,…、2次転写ローラ48などを有する。
【0031】
中間転写ベルト40は、駆動ローラ42および従動ローラ44によって張架され、駆動ローラ42は、不図示のベルト用駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、反時計回りに回転する。これに伴い、中間転写ベルト40が周回移動するとともに、従動ローラ44が回転する。中間転写ベルト40における駆動ローラ42と従動ローラ44との間の領域のうちの下方の領域は、水平方向に張架されており、この水平方向に張架された領域と対向するように、各画像ステーション32,32…が配置される。この中間転写ベルト42における各画像ステーション32,32…と対向する領域のことを、1次転写領域40aと呼ぶこととする。中間転写ベルト40は、1次転写領域40aにおいて、
図2に矢印100で示される如く複合機10の左側から右側へ向かって、つまり副走査方向に沿って、移動する。
【0032】
なお、中間転写ベルト40は、可撓性を持つ無端帯状体であり、カーボンブラックなどの導電性材料が適宜に配合された合成樹脂またはゴムにより形成される。また、詳しい説明は省略するが、従動ローラ44は、中間転写ベルト40に適宜の張力を付与することにより、当該中間転写ベルト40の弛みを防止する機能を兼ね備える。各中間転写ローラ46,46,…および2次転写ローラ48については、後で詳しく説明する。
【0033】
次に、各画像形成ステーション32,32,…について、説明する。各画像形成ステーション32,32,…は、中間転写ベルト40の1次転写領域40aの下方において、当該1次転写領域40aにおける中間転写ベルト40の移動方向100に沿って、つまり副走査方向に沿って、一定の間隔L(
図4~
図6参照)を置いて設けられる。これら各画像形成ステーション32,32,…は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)という4つの色の単色トナー画像を中間転写ベルト40上に個別に形成する。ここで、各画像形成ステーション32,32,…は、1次転写領域40aにおける中間転写ベルト40の移動方向100の上流側から下流側へ向かって、イエロー用、マゼンタ用、シアン用およびブラック用の順番で設けられる。なお、各画像形成ステーション32,32,…は、互いに異なる色の単色トナー画像を中間転写ベルト40上に形成する以外は、互いに同じ構造である。
【0034】
それぞれの画像形成ステーション32は、像担持体としての感光体ドラム50、帯電手段としての帯電装置52、現像手段としての現像装置54、クリーニング手段としてのクリーニング装置56、不図示の除電装置などを有する。感光体ドラム50は、アルミニウムなどの導電性材料により形成された円筒状の導電性部材である基体を有し、この基体の表面(外周面)に、光が照射されていない領域については絶縁性を示し、光が照射された領域については導電性を示す、感光層が形成される。そして、感光体ドラム50は、自身(基体)の表面を中間転写ベルト40の外側面に当接させるように設けられる。その上で、感光体ドラム50は、不図示のドラム用駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、時計回りに回転する。なお、感光体ドラム50は、中間転写ベルト40の移動速度(周速度)に合わせた速度で回転し、厳密には自身の周速度が中間転写ベルト40の移動速度よりも僅かに、たとえば0.1%~0.3%ほど、低くなる速度で回転する。これは、感光体ドラム50の表面に形成(担持)された単色トナー画像が中間転写ベルト40の外側面に転写され易くするためであり、換言すれば当該単色トナー画像が感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に転写されない現象、いわゆる中抜け、を防止するためである。
【0035】
帯電装置52は、感光体ドラム50の表面に静電気を与えて、当該感光体ドラム50の表面を所定の電位に帯電させる。このようにして帯電された感光体ドラム50の表面に対して、露光装置34による露光が行われることで、光が照射された箇所が導電性を示して、当該箇所の表面電位がゼロ(0)となる。その結果、画像形成処理に供される画像データに応じた静電潜像が、感光体ドラム50の表面に形成される。なお、露光装置34は、発光手段としての不図示のレーザダイオード、偏向手段としてのポリゴンミラー60などを有するレーザスキャニングユニットであり、各画像形成ステーション32,32,…の並びの下方に設けられる。そして、露光装置34は、それぞれの画像形成ステーション32の感光体ドラム50の表面に対して、たとえば下方からレーザ光を照射することで、露光を行う。なお、露光装置34として、レーザスキャニングユニットではなく、光源としてLEDが並べられたLEDアレイを採用するLEDユニットが用いられてもよい。
【0036】
このようにして静電潜像が形成された感光体ドラム50の表面に対して、現像装置54による現像が行われる。すなわち、現像装置54は、所定の極性に帯電させたトナーを感光体ドラム50の表面に形成された静電潜像に付着させることで、当該静電潜像を顕像化する。これにより、感光体ドラム50の表面に単色トナー画像が形成される。この感光体ドラム50の表面に形成された単色トナー画像は、感光体ドラム50の表面と中間転写ベルト40の外側面との当接位置において、当該感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に転写(1次転写)される。これに際して、それぞれの中間転写ローラ46から中間転写ベルト40に静電気が付与される。
【0037】
すなわち、各中間転写ローラ46,46,…は、各画像形成ステーション32,32,…に対応して設けられる。より詳しくは、それぞれの中間転写ローラ46は、1次転写領域40aにおいて、中間転写ベルト40を挟んで自身に対応する画像形成ステーション32の感光体ドラム50と対向するように設けられる。また、それぞれの中間転写ローラ46は、自身の表面(外周面)を中間転写ベルト40の内側面に当接させるように設けられる。そして、それぞれの中間転写ローラ46は、中間転写ベルト40が周回移動することによる駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、反時計回りに回転する。その上で、それぞれの中間転写ローラ46に所定の電圧(1次転写電圧)が印加される。これにより、中間転写ローラ46から中間転写ベルト40に静電気が付与され、感光体ドラム50の表面と中間転写ベルト40の外側面との間に転写電界が形成される。この転写電界の作用により、感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に単色トナー画像が転写される。
【0038】
この結果、中間転写ベルト40上にイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4つの色の単色トナー画像が個別に、換言すれば順次、形成される。そして、これら4つの色の単色トナー画像が互いに重なり合うことで、中間転写ベルト40上にカラーのトナー画像が形成される。
【0039】
それぞれの画像形成ステーション32において、前述の如く感光体ドラム50の表面から中間転写ベルト40の外側面に単色トナー画像が転写された後、当該感光体ドラム50の表面に残っているトナーがクリーニング装置56により除去される。その後、不図示の除電装置により感光体ドラムの表面の静電気が除去された上で、帯電装置52による帯電以降の工程が繰り返される。
【0040】
中間転写ベルト40上に形成されたトナー画像は、当該中間転写ベルト40と2次転写ローラ48との間の転写ニップ部62において、不図示の用紙に転写される。具体的には、2次転写ローラ48は、中間転写ベルト40を挟んで駆動ローラ42と対向する位置において、当該駆動ローラ42との間で中間転写ベルト40を押圧するように設けられる。また、2次転写ローラ48は、中間転写ベルト40が周回移動することによる駆動力を受けて回転し、たとえば
図2において、時計回りに回転する。その上で、2次転写ローラ48にトナー画像の極性とは反対の極性の所定の電圧(2次転写電圧)が印加される。これにより、中間転写ベルト40と2次転写ローラ48との間に転写電界が形成される。この状態で、中間転写ベルト40と2次転写ローラ48との間の転写ニップ部62を用紙が通過すると、中間転写ベルト40上に形成されたトナー画像が当該用紙に転写(2次転写)される。
【0041】
パターン画像センサ38は、中間転写ベルト40上に形成された単色トナー画像を検出するためのセンサであり、厳密には後述する全色パターン画像200または単色パターン画像300を検出するためのセンサである。このパターン画像センサ38については、後で詳しく説明するが、当該パターン画像センサ38は、たとえば反射型の光電センサである。そして、パターン画像センサ38は、1次転写領域40aの下方であって、中間転写ベルト40の移動方向における各画像形成ステーション32,32,…の並びよりも下流側の位置に設けられる。併せて、パターン画像センサ38は、自身の検出部(投光部および受光部)を上方(真上)に向けた状態で、つまり中間転写ベルト40の1次転写領域40aに向けた状態で、設けられる。なお、
図1および
図2からは分からないが、パターン画像センサ38は、駆動ローラ42の回転軸の延伸方向において、つまり主走査方向において、互いに適当な間隔を置いて2つ設けられる。
【0042】
図1に注目して、複合機10の内部には、後述する給紙部64から転写ニップ部62を介して排紙トレイ26(厳密には排紙トレイ26への排紙口)に至る用紙搬送路66が設けられる。そして、用紙搬送路66の適宜の位置には、給紙部64から排紙トレイ26に向けて用紙を搬送させるための複数の搬送ローラ(厳密にはローラ対)68,68,…が設けられる。すなわち、画像形成部28による画像形成処理の対象となる用紙は、用紙搬送路66に沿って搬送され、その途中で、転写ニップ部62を通過する。
【0043】
また、用紙搬送路66における用紙の搬送方向の転写ニップ部62よりも上流側であって、当該転写ニップ部62に最も近い位置に設けられた搬送ローラ68は、レジストローラ(「ペーパストップローラ」と呼ばれることもある。)70である。このレジストローラ70は、用紙が転写ニップ部62を通過するタイミングを計り、そのために、用紙の搬送を一時的に停止する。そして、レジストローラ70は、転写ユニット30と同期して用紙の搬送を開始する。このとき、レジストローラ70は、中間転写ベルト40の移動速度と同じ周速度で回転する。
【0044】
そして、用紙搬送路66における転写ニップ部62と排紙トレイ26との間の位置に、換言すれば当該用紙搬送路66における用紙の搬送方向の転写ニップ部62よりも下流側の位置に、定着装置36が設けられる。定着装置36は、ヒートローラ72および加圧ローラ74を有する。これらヒートローラ72および加圧ローラ74は、互いの表面(外周面)を密着させるように設けられる。そして、ヒートローラ72は、所定の温度(定着温度)に加熱される。併せて、ヒートローラ72は、不図示の定着ローラ駆動手段としてのモータからの駆動力を受けて駆動し、たとえば
図1において、反時計回りに回転する。これに伴い、加圧ローラ74もまた回転し、たとえば
図1において、時計回りに回転する。そして、転写ニップ部62を通過した用紙は、ヒートローラ72および加圧ローラ74によって挟まれた定着ニップ部76を通過する。これにより、用紙上のトナー像が当該用紙上に定着される。これをもって、画像形成部28による一連の画像形成処理が終了する。
【0045】
この画像形成処理が施された後の用紙、言わば印刷物は、排紙トレイ26に排出される。なお、排紙トレイ26は、画像形成部28と画像読取部12との間に設けられ、いわゆる複合機10の胴内空間に設けられる。これに代えて、排紙トレイ26は、複合機10の外側に設けられてもよい。
【0046】
さらに、複合機10の下部に、給紙手段としての給紙部64が設けられる。給紙部64は、1つまたは複数の給紙カセット78を有する。それぞれの給紙カセット78には、複数枚の用紙が積層状に収容可能である。併せて、給紙部64は、手差しトレイ80を有する。手差しトレイ80は、たとえば複合機10の右側面部に設けられる。この手差しトレイ80には、複数の用紙が積層状に載置可能である。そして、給紙部64は、いずれかの給紙カセット78または手差しトレイ80を給紙元として、当該給紙元から用紙を1枚単位で用紙搬送路66へ供給する。
【0047】
加えて、複合機10の内部には、両面印刷用の搬送路82が設けられる。この両面印刷用の搬送路82は、一旦、定着ニップ部76を通過した用紙を、つまり画像形成処理が施された後の用紙を、取り込んで、改めて当該用紙を画像形成処理に供するための搬送路である。すなわち、両面印刷用の搬送路82に取り込まれた用紙は、改めて用紙搬送路66に供給され、詳しくはレジストローラ70の上流側に供給される。その際、用紙の表裏が反転される。これにより、用紙の裏面に画像形成処理が施され、両面印刷が実現される。なお、両面印刷用の搬送路82の適宜の位置にも搬送ローラ84が設けられる。
【0048】
図3は、複合機10の電気的な構成を示すブロック図である。この
図3に示されるように、複合機10は、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部28および給紙部64の他に、制御部86、補助記憶部88などを備える。これらは、互いに共通のバス90を介して接続される。なお、複合機10は、これら以外にも、不図示の操作ユニットなどの種々の要素を備えるが、ここでは、当該操作ユニットを含め、本発明の本旨に直接的に関係しない要素については、それらの図示および詳しい説明を省略する。また、画像読取部12、自動原稿送り装置18、画像形成部28および給紙部64については、前述の通りある。
【0049】
制御部86は、複合機10の全体的な制御を司る、主制御手段の一例である。このため、制御部86は、制御実行手段としてのコンピュータ、たとえばCPU86aを、有する。併せて、制御部86は、CPU86aが直接的にアクセス可能な主記憶手段としての主記憶部86bを有する。主記憶部86bは、不図示のROMおよびRAMを含む。このうちのROMには、CPU86aの動作を制御するための制御プログラム、いわゆるファームウェアが、記憶される。そして、RAMは、CPU86aが制御プログラムに基づく処理を実行する際の作業領域およびバッファ領域を構成する。
【0050】
補助記憶部88は、補助記憶手段の一例である。すなわち、補助記憶部88には、前述の読取画像データなどの種々のデータが適宜に記憶される。この補助記憶部88は、たとえば不図示のハードディスクドライブを有する。併せて、補助記憶部88は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリを有する場合がある。
【0051】
ここで、
図4を参照して、画像形成部28の各画像形成ステーション32,32,…による中間転写ベルト40上への単色トナー画像の形成工程について、説明する。
【0052】
図4に示されるように、各画像形成ステーション32,32,…は、各感光体ドラム50,50,…が1次転写領域40aにおける中間転写ベルト40の移動方向100に沿って、つまり副走査方向に沿って、一定の間隔(中心軸間距離)Lを置くように設けられる。また、図示は省略するが、各感光体ドラム50,50,…は、一定の間隔Lを精度良く保つために、互いに共通の部材である金属製または硬質樹脂製のシャーシにより支持される。なお、パターン画像センサ38もまた、同じシャーシにより支持され、厳密には適宜の部材を介して、言わば間接的に、当該シャーシにより支持される。
【0053】
併せて、
図4には、各感光体ドラム50,50,…への静電潜像の書き込み開始タイミングを規定するイエロー用、マゼンタ用、シアン用およびブラック用の書き込み開始信号Sy,Sm,ScおよびSkを表すタイミング図が示されている。各書き込み開始信号Sy,Sm,ScおよびSkは、単発パルス信号であり、露光装置34に入力される。露光装置34は、各書き込み開始信号Sy,Sm,ScおよびSkの立ち上がりに合わせて、各感光体ドラム50,50,…への静電潜像の書き込みを開始する。
【0054】
本第1実施例においては、ブラック用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングである時点tk1を基準にして、他のイエロー用、マゼンタ用およびシアン用の各感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングが計られる。具体的には、時点tk1からTyという所定の時間だけ遡った時点ty1が、イエロー用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングとして設定される。そして、時点t1からTmという所定の時間だけ遡った時点tm1が、マゼンタ用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングとして設定される。さらに、時点t1からTcという所定の時間だけ遡った時点tc1が、シアン用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングとして設定される。
【0055】
すなわち、時点ty1において、イエロー用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込みが開始される。言い換えれば、時点ty1において、イエロー用の感光体ドラム50の表面における露光位置Py1に対して、露光装置34による露光が開始される。
【0056】
この時点ty1でイエロー用の感光体ドラム50の表面に書き込まれた静電潜像は、厳密には1主走査分のライン画像(主走査方向に沿って延伸する細長い直線状の静電潜像)は、当該イエロー用の感光体ドラム50が回転することに伴って移動し、現像装置54によってイエローの単色トナー画像に顕像化される。顕像化されたイエローの単色トナー画像は、時点ty2において、中間転写ベルト40の外周面との当接位置Py2に到達し、当該中間転写ベルト40上に転写される。中間転写ベルト40上に転写されたイエローの単色トナー画像は、当該中間転写ベルト40の回転に伴って1次転写領域40aを移動し、時点tk2において、ブラック用の感光体ドラム50との当接位置Pk2に到達する。
【0057】
一方、時点ty2から時点tk2までの間の時点tk1において、ブラック用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込みが開始される。これにより、ブラック用の感光体ドラム50の表面における露光位置Pk1に対して、露光装置34による露光が開始される。
【0058】
この時点tk1でブラック用の感光体ドラム50の表面に書き込まれた静電潜像は、厳密には1主走査分のライン画像は、当該ブラック用の感光体ドラム50が回転することに伴って移動し、現像装置54によってブラックの単色トナー画像に顕像化される。顕像化されたブラックの単色トナー画像は、時点tk2において、中間転写ベルト40の外周面との当接位置Pk2に到達し、中間転写ベルト40上に転写される。このとき、ブラックの単色トナー画像は、1次転写領域40aを移動してきたイエローの単色トナー画像と重なるように、つまり両者の位置が互いに一致するように、中間転写ベルト40上に転写される。
【0059】
このように、イエロー用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングである時点ty1は、当該静電潜像が顕像化されたイエローの単色トナー画像が、当接位置Pk2において、ブラック用の感光体ドラム50から中間転写ベルト40上に転写されるブラックの単色トナー画像と重なるように、設定される。つまりはそうなるように、Tyという言わばイエロー用のタイミング差時間が設定される。ちなみにたとえば、中間転写ベルト40の移動速度がVであるとして、時点ty1がTxという時間だけ遅れる、とすると、イエローの単色トナー画像は、ブラックの単色トナー画像よりも、中間転写ベルト40の移動方向100における上流側へD(=V・Tx)という距離だけ離れた位置に形成される。言い換えれば、イエローの単色トナー画像を、ブラックの単色トナー画像よりも、中間転写ベルト40の移動方向100における上流側へDという距離だけ離れた位置に形成する場合には、時点ty1をTx(=D/V)という時間だけ遅らせればよい。
【0060】
また、時点tm1において、マゼンタ用の感光体ドラム50に対する静電潜像の書き込みが開始される。言い換えれば、時点tm1において、マゼンタ用の感光体ドラム50の表面における露光位置Pm1に対して、露光装置34による露光が開始される。
【0061】
この時点tm2でマゼンタ用の感光体ドラム50の表面に書き込まれた静電潜像は、厳密には1主走査分のライン画像は、当該マゼンタ用の感光体ドラム50が回転することに伴って移動し、現像装置54によってマゼンタの単色トナー画像に顕像化される。顕像化されたマゼンタの単色トナー画像は、時点tm2において、中間転写ベルト40の外周面との当接位置Pm2に到達し、当該中間転写ベルト40上に転写される。このとき、マゼンタの単色トナー画像は、1次転写領域40aを移動してきたイエローの単色トナー画像と重なるように、つまり両者の位置が互いに一致するように、中間転写ベルト40上に転写される。
【0062】
中間転写ベルト40上に転写されたマゼンタの単色トナー画像は、イエローの単色トナー画像とともに、当該中間転写ベルト40の回転に伴って1次転写領域40aを移動し、時点tk2において、ブラック用の感光体ドラム50との当接位置Pk2に到達する。そして、当接位置Pk2において、これらイエローの単色トナー画像およびマゼンタの単色トナー画像と重なるように、ブラックの単色トナー画像が形成される。
【0063】
このように、マゼンタ用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングである時点tm1は、当該静電潜像が顕像化されたマゼンタの単色トナー画像が、当接位置Pk2において、ブラック用の感光体ドラム50から中間転写ベルト40上に転写されるブラックの単色トナー画像と重なるように、設定される。つまりはそうなるように、Tmというマゼンタ用のタイミング差時間が設定される。
【0064】
さらに、時点tc1において、シアン用の感光体ドラム50に対する静電潜像の書き込みが開始される。言い換えれば、時点tc1において、シアン用の感光体ドラム50の表面における露光位置Pc1に対して、露光装置34による露光が開始される。
【0065】
この時点tc2でシアン用の感光体ドラム50の表面に書き込まれた静電潜像は、厳密には1主走査分のライン画像は、当該シアン用の感光体ドラム50が回転することに伴って移動し、現像装置54によって顕像化される。顕像化されたシアンの単色トナー画像は、時点tc2において、中間転写ベルト40の外周面との当接位置Pc2に到達し、当該中間転写ベルト40上に転写される。このとき、シアンの単色トナー画像は、1次転写領域40aを移動してきたイエローの単色トナー画像およびマゼンタのトナー画像と重なるように、つまりこれらの位置が一致するように、中間転写ベルト40上に転写される。
【0066】
中間転写ベルト40上に転写されたシアンの単色トナー画像は、イエローの単色トナー画像およびマゼンタの単色トナー画像とともに、当該中間転写ベルト40の回転に伴って1次転写領域40aを移動し、時点tk2において、ブラック用の感光体ドラム50との当接位置Pk2に到達する。そして、当接位置Pk2において、これらイエローの単色トナー画像、マゼンタの単色トナー画像およびシアンの単色トナー画像と重なるように、ブラックの単色トナー画像が形成される。
【0067】
このように、シアン用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングである時点tc1は、当該静電潜像が顕像化されたシアンの単色トナー画像が、当接位置Pk2において、ブラック用の感光体ドラム50から中間転写ベルト40上に転写されるブラックの単色トナー画像と重なるように、設定される。つまりはそうなるように、Tcというシアン用のタイミング差時間が設定される。
【0068】
なお、時点ty1から時点ty2までの時間Tayは、イエロー用の感光体ドラム50の周速度と、当該イエロー用の感光体ドラム50の表面における露光位置Py1から中間転写ベルト40の外周面との当接位置Py2までの円弧長(厳密にはイエロー用の感光体ドラム50の回転方向に沿う円弧長)と、に従う。このことは、時点tm1から時点tm2までの時間Tam、時点tc1から時点tc2までの時間Tac、および、時点tk1から時点tk2までの時間Takについても、同様である。
【0069】
また、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcは、厳密には当該各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの初期値(規定値)Tiy,TimおよびTicは、予め定められ、たとえば設計値または実測値に基づいて定められる。すなわち、各画像形成ステーション32,32,…により中間転写ベルト40上に形成される各単色トナー画像の位置が互いに一致するように、各初期値Tiy,TimおよびTicが定められる。
【0070】
ただし、複合機10の経時変化や周囲環境の変化、複合機10内の温度変化などの種々の要因によって、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの適切値が変わることがあり、つまり各感光体ドラム50,50,…への静電潜像の書き込み開始タイミングがずれることがある。そうなると、各画像形成ステーション32,32,…により中間転写ベルト40上に形成される各単色トナー画像の位置がずれて、線幅が太くなったり、色目が変わったりするなどの、不都合が生ずる。このいわゆるレジストずれを補正するために、本第1実施例によれば、複合機10内の温度が所定温度以上に上昇したときや、画像形成部28による画像形成処理の実行回数(累積回数)が所定回数に達したときなどの適当な時期に、レジスト調整が自動的に行われる。
【0071】
このレジスト調整においては、
図5に示されるような全色パターン画像200が中間転写ベルト40上に形成される。なお、
図5は、全色パターン画像200が形成された中間転写ベルト40を下方から見た状態を示し、換言すれば画像形成部28の一部を下方から見た状態を示す。
【0072】
この
図5に示されるように、全色パターン画像200は、中間転写ベルト40の主走査方向における両側縁部のそれぞれに近い位置に形成され、つまり2つ、厳密には2組、形成される。これら2組の全色パターン画像200および200は、互いに同じ態様である。
【0073】
それぞれの全色パターン画像200は、直線状パターン画像群210および斜めパターン画像群250を含む。直線状パターン画像群210は、イエローの直線状パターン画像212、マゼンタの直線状パターン画像214、ブラックの直線状パターン画像216、および、シアンの直線状パターン画像218を含む。これらの直線状パターン画像212,214,216および218のそれぞれは、主走査方向に沿って延伸する直線状の単色トナー画像であり、厳密には細長い矩形状の単色トナー画像である。そして、各直線状パターン画像212,214,216および218は、副走査方向において、つまり1次転写領域40aにおける中間転写ベルト40の移動方向100に沿って、互いに一定の間隔を置きつつ、互いに平行を成した状態で、一列に形成される。
【0074】
なお、各直線状パターン画像212,214,216および218は、イエロー用、マゼンタ用、ブラック用およびシアン用の各画像形成ステーション32,32,…により個別に形成される。本第1実施例においては、中間転写ベルト40の移動方向100の上流側から下流側へ向かって、イエロー、マゼンタ、ブラックおよびシアンの各直線状パターン画像212,214,216および218が、この順番で形成されるが、この順番に限らない。また、各直線状パターン画像212,214,216および218の形成タイミングは、前述の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの初期値Tiy,TimおよびTicに基づく。さらに厳密に言えば、各直線状パターン画像212,214,216および218のそれぞれは、対応する画像形成ステーション32よりも上流側では形成されない。言い換えれば、ブラック用の画像形成ステーション32よりも下流側でなければ、各直線状パターン画像212,214,216および218の全てが揃わない。
図5においては、説明の便宜上、中間転写ベルト40上の位置に拘らず、全ての直線状パターン画像212,214,216および218が形成された状態を示す。
【0075】
一方、斜めパターン画像群250は、イエローの斜めパターン画像252、マゼンタの斜めパターン画像254、ブラックの斜めパターン画像256、および、シアンの斜めパターン画像258を含む。これらの斜めパターン画像252,254,256および258のそれぞれは、主走査方向および副走査方向の両方に対して斜め方向に沿って延伸する直線状の単色トナー画像であり、厳密には細長い平行四辺形状の単色トナー画像である。そして、各斜めパターン画像252,254,256および258は、副走査方向において、互いに一定の間隔を置きつつ、互いに平行を成した状態で、一列に形成される。併せて、各斜めパターン画像252,254,256および258は、各直線状パターン画像212,214,216および218とともに、副走査方向に沿って列を成すように形成される。
【0076】
なお、各斜めパターン画像252,254,256および258もまた、イエロー用、マゼンタ用、ブラック用およびシアン用の各画像形成ステーション32,32,…により個別に形成される。本第1実施例においては、中間転写ベルト40の移動方向100の上流側から下流側へ向かって、イエロー、マゼンタ、ブラックおよびシアンの各斜めパターン画像252,254,256および258が、この順番で形成されるが、この順番に限らない。また、各斜めパターン画像252,254,256および258の形成タイミングは、前述の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの初期値Tiy,TimおよびTicに基づく。さらに厳密に言えば、各斜めパターン画像252,254,256および258についても、対応する画像形成ステーション32よりも上流側では形成されない。言い換えれば、ブラック用の画像形成ステーション32よりも下流側でなければ、各斜めパターン画像252,254,256および258の全てが揃わない。
図5においては、説明の便宜上、中間転写ベルト40上の位置に拘らず、全ての斜めパターン画像252,254,256および258が形成された状態を示す。
【0077】
これらの直線状パターン画像群210および斜めパターン画像群250は、副走査方向において、複数、たとえば2つずつ、交互に形成される。本第1実施例においては、中間転写ベルト40の移動方向100の上流側から下流側へ向かって、直線状パターン画像群210、斜めパターン画像群250、直線状パターン画像群210および斜めパターン画像群250という順番で、これらが形成される。ただし、この順番は、逆であってもよい。
【0078】
このような2組の全色パターン画像200および200を個別に検出するために、2つのパターン画像センサ38および38が設けられる。すなわち、一方のパターン画像センサ38は、一方の全色パターン画像200を検出するために、副走査方向において、当該一方の全色パターン画像200に対応する位置に、つまり当該一方の全色パターン画像200が通過する位置に、設けられる。そして、他方のパターン画像センサ38は、他方の全色パターン画像200を検出するために、副走査方向において、当該他方の全色パターン画像200に対応する位置に、つまり当該他方の全色パターン画像200が通過する位置に、設けられる。
【0079】
その上で、レジスト調整においては、各パターン画像センサ38および38による各全色パターン画像200および200の検出結果に基づいて、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcが調整され、言わば補正される。
【0080】
たとえば、一方の全色パターン画像200および一方のパターン画像センサ38に注目すると、一方のパターン画像センサ38によって一方の全色パターン画像200が検出され、詳しくは直線状パターン画像群210に含まれる各直線状パターン画像212,214,216および218、ならびに、斜めパターン画像群250に含まれる各斜めパターン画像252,254,256および258が検出される。そして、図示は省略するが、たとえばブラックの直線状パターン画像216が検出された時点tk’と、イエローの直線状パターン画像212が検出された時点ty’と、の時間差ΔTy’(=ty’-tk’)が求められる。この時間差ΔTy’(厳密には時間差ΔTy’にブラックの直線状パターン画像216とイエローの直線状パターン画像212との副走査方向における相互間距離を加味した時間)がゼロ(0)となるように、イエロー用のタイミング差時間Tyが補正され、詳しくは当該時間差ΔTy’と等価な補正値ΔTyが初期値Tiyから差し引かれた値が、補正後のイエロー用のタイミング差時間Tyとして設定される。なお、ブラックの直線状パターン画像216が検出された時点tk’と、イエローの直線状パターン画像212が検出された時点ty’と、の時間差ΔTy’に代えて、ブラックの斜めパターン画像256が検出された時点tk”と、イエローの斜めパターン画像252が検出された時点ty”と、の時間差ΔTy”(=ty”-tk”)が用いられてもよい。
【0081】
これと同様に、ブラックの直線状パターン画像216が検出された時点tk’と、マゼンタの直線状パターン画像214が検出された時点tm’と、の時間差ΔTm’(=tm’-tk’)が求められる。この時間差ΔTm’(厳密には時間差ΔTm’にブラックの直線状パターン画像216とマゼンタの直線状パターン画像214との副走査方向における相互間距離を加味した時間)がゼロとなるように、マゼンタ用のタイミング差時間Tmが補正され、詳しくは当該時間差ΔTm’と等価な補正値ΔTmが初期値Timから差し引かれた値が、補正後のマゼンタ用のタイミング差時間Tyとして設定される。なお、ブラックの直線状パターン画像216が検出された時点tk’と、マゼンタの直線状パターン画像214が検出された時点ty’と、の時間差ΔTy’に代えて、ブラックの斜めパターン画像256が検出された時点tk”と、マゼンタの斜めパターン画像254が検出された時点tm”と、の時間差ΔTy”(=tm”-tk”)が用いられてもよい。
【0082】
併せて、ブラックの直線状パターン画像216が検出された時点tk’と、シアンの直線状パターン画像218が検出された時点tc’と、の時間差ΔTc’(=tc’-tk’)が求められる。この時間差ΔTc’(厳密には時間差ΔTc’にブラックの直線状パターン画像216とシアンの直線状パターン画像218との副走査方向における相互間距離を加味した時間)がゼロとなるように、シアン用のタイミング差時間Tcが補正され、詳しくは当該時間差ΔTc’と等価な補正値ΔTcが初期値Ticから差し引かれた値が、補正後のシアン用のタイミング差時間Tyとして設定される。なお、ブラックの直線状パターン画像216が検出された時点tk’と、シアンの直線状パターン画像218が検出された時点tc’と、の時間差ΔTy’に代えて、ブラックの斜めパターン画像256が検出された時点tk”と、シアンの斜めパターン画像258が検出された時点tc”と、の時間差ΔTc”が用いられてもよい。
【0083】
すなわち、次の式1に基づいて、各補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcが求められる。
【0084】
《式1》
ΔTy=ΔTy’=ty’-tk’ または ΔTy=ΔTy”=ty”-tk”
ΔTm=ΔTm’=tm’-tk’ または ΔTm=ΔTm”=tm”-tk”
ΔTc=ΔTc’=tc’-tk’ または ΔTc=ΔTc”=tc”-tk”
このようにして求められた補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcにより各タイミング差時間Ty,TmおよびTcが補正されることをもって、レジスト調整が終了する。この補正後の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcは、次の式2によって表される。この補正後の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcに基づいて、各感光体ドラム50,50,…への静電潜像の書き込み開始タイミングが計られることで、レジストずれが補正され、ひいては高品質なカラー画像が得られる。
【0085】
《式2》
Ty=Tiy-ΔTy
Tm=Tim-ΔTm
Tc=Tic-ΔTc
なお、このような要領によるレジスト調整が実現されるには、2つの全色パターン画像200および200が形成される必要はなく、いずれか一方の全色パターン画像200が形成されることで足りる。この場合、パターン画像センサ38もまた、1つで足りる。さらに、斜めパターン画像群250が設けられなくても、直線状パターン画像群210のみが設けられることで足り、とりわけ当該直線状パターン画像群210が1つのみ設けられることで足りる。しかしながら、本第1実施例においては、レジスト調整用のサンプルとしての2つの全色パターン画像200および200が形成されるとともに、2つのパターン画像センサ38が設けられることで、当該レジスト調整の高精度化が図られる。また、斜めパターン画像群250が設けられることで、主走査方向における画像の位置ずれをも認識することができるが、これについては、本発明の本旨に直接関係しないので、詳しい説明を省略する。
【0086】
このような言わば高精度なレジスト調整によれば、レジストずれを精確に補正することができる。その一方で、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4色の各トナーが一様に消費されるために、この高精度なレジスト調整が頻繁に実行されると、不経済である。
【0087】
そこで、本第1実施例においては、高精度な(正規あるいは通常の)レジスト調整とは別に、簡易的なレジスト調整も用意される。そして、多少のレジストずれは生じている(その可能性はある)ものの、高精度なレジスト調整を行う必要がない場合には、これに代えて、簡易的なレジスト調整が行われる。たとえば、画像形成部28による画像形成処理が比較的に長い時間(たとえば30分間以上)にわたって継続して実行された後、当該画像形成部28による画像形成処理が実行されない状態(いわゆる放置状態)が比較的に短い時間(たとえば数分間ほど)にわたって継続した場合に、簡易的なレジスト調整が行われる。
【0088】
この簡易的なレジスト調整においては、
図6に示されるような単色パターン画像300が中間転写ベルト40上に形成される。なお、
図6は、
図5と同様、単色パターン画像300が形成された中間転写ベルト40を下方から見た状態を示す。
【0089】
図6に示されるように、単色パターン画像300は、全色パターン画像200と同様、中間転写ベルト40の主走査方向における両側縁部のそれぞれに近い位置に形成され、つまり2つ形成される。これら2つの単色パターン画像300および300は、互いに同じ態様である。
【0090】
それぞれの単色パターン画像300は、全色パターン画像200におけるイエローの直線状パターン画像212と同じ態様の単色トナー画像であり、イエロー用の画像形成ステーション32により形成される。また、単色パターン画像300は、副走査方向においては、1つのみ形成され、つまり全部で2つのみ形成される。そして、一方の単色パターン画像300は、一方のパターン画像センサ38により検出され、他方の単色パターン画像300は、他方のパターン画像センサ38により検出される。
【0091】
その上で、簡易的なレジスト調整においては、各パターン画像センサ38および38による各単色パターン画像300および300の検出結果に基づいて、各画像形成ステーション32,32,…による画像形成開始タイミングが補正される。
【0092】
たとえば、一方の単色パターン画像300および一方のパターン画像センサ38に注目すると、
図7に示されるように、当該一方の単色パターン画像300(イエローの単色トナー画像)を形成するためのイエロー用の感光体ドラム50への静電潜像の書き込み開始タイミングである時点ty1から当該一方の単色パターン画像300が一方のパターン画像センサ38により検出される時点tdまでの時間、言わば単色パターン画像検出時間Tdyが、測定される。ここで、一方のパターン画像センサ38は、一方の単色パターン画像300を含む何らの画像も検出していないときにローレベルとなり、当該一方の単色パターン画像300を含む何らかの画像を検出したときにハイレベルとなる、画像検出信号Sdを出力する。すなわち、
図7においては、画像検出信号Sdがローレベルからハイレベルに遷移する時点が、つまり当該画像検出信号Sdの立ち上がり時点が、一方のパターン画像センサ38により一方の単色パターン画像300が検出された時点tdとされる。これらのことは、他方の単色パターン画像300および他方のパターン画像センサ38についても、同様である。なお、本第1実施例においては、両方の単色パターン画像検出時間Tdyの平均値が求められる。
【0093】
ところで、前述の如く画像形成部28による画像形成処理が比較的に長い時間にわたって継続して実行された後、当該画像形成部28による画像形成処理が実行されない状態が比較的に短い時間にわたって継続した場合には、各感光体ドラム50,50,…を支持するフレームが複合機10内の温度変化によって熱伸縮することで、レジストずれが発生する場合がある。この場合、各感光体ドラム50,50,…の間隔Lは、当該各感光体ドラム50,50,…を支持するフレームの線膨張係数に応じて変化する、と考えられる。さらに、ブラック用の感光体ドラム50(の中心軸)とパターン画像センサ38(の検出部)との副走査方向(中間転写ベルト40の移動方向100)における相互間距離L’もまた、フレームの線膨張係数に応じて変化する、と考えられる。これらのことに着目して、簡易的なレジスト調整においては、単色パターン画像検出時間Tdyの変化分に基づいて、厳密には次に説明する指標時間Tbの変化分ΔTに基づいて、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcが補正される。
【0094】
指標時間Tbとは、単色パターン画像検出時間Tdyのうちの時間Tayが差し引かれた時間である。すなわち、指標時間Tbは、次の式3によって表される。
【0095】
《式3》
Tb=Tdy-Tay
この式3における時間Tayは、実際に測定することはできない。ただし、時間Tayは、前述の如くイエロー用の感光体ドラム50の周速度と、当該イエロー用の感光体ドラム50の表面における露光位置Py1から中間転写ベルト40の外周面との当接位置Py2までの円弧長と、に従う。ここで、イエロー用の感光体ドラム50の表面における露光位置Py1から中間転写ベルト40の外周面との当接位置Py2までの円弧長は、換言すれば当該イエロー用の感光体ドラム50の周長は、複合機10内の温度変化によっては変わらない、つまり一定である、と考えられる。そして、イエロー用の感光体ドラム50の回転速度もまた、複合機10内の温度変化によっては変わらない、つまり一定である、と考えられる。そうすると、イエロー用の感光体ドラム50の周速度もまた、複合機10内の温度変化によっては変わらない、つまり一定である、と考えられる。これらのことから、時間Tayについては、実際に測定することはできないものの、イエロー用の感光体ドラム50の周速度と、当該イエロー用の感光体ドラム50の表面における露光位置Py1から中間転写ベルト40の外周面との当接位置Py2までの円弧長と、に基づいて求めることができる。しかも、時間Tayは、一定である、と見なすことができる。
【0096】
ゆえに、単色パターン画像検出時間Tdyのうちの時間Tayが差し引かれた指標時間Tbのみが、複合機10内の温度変化によって変わる、と見なすことができる。そして、次の式4に基づいて、指標時間Tbの変化分ΔTが求められる。
《式4》
ΔT=Ts-Tb
この式4におけるTsは、指標時間Tbの変化分ΔTを求める際の基準となる基準時間である。たとえば、前回の簡易的なレジスト調整が行われたときの指標時間Tbが、今回の簡易的なレジスト調整における基準時間Tsとされる。または、今回の簡易的なレジスト調整が行われる前に、簡易的なレジスト調整ではなく、高精度なレジスト調整が行われた場合には、当該高精度なレジスト調整が行われたときの指標時間Tbが、今回の簡易的なレジスト調整における基準時間Tsとされる。すなわち、高精度なレジスト調整が行われるときにも、式3に基づいて、指標時間Tbが求められる。
【0097】
そして、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcについては、ブラック用の画像形成ステーション32とそれ以外の各画像形成ステーション32,32,…との副走査方向における相互間距離に基づいて、補正される。具体的には、次の式5に基づいて、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcが求められる。
【0098】
《式5》
ΔTy=[ΔT/{3+(L’/L)}]×3
ΔTm=[ΔT/{3+(L’/L)}]×2
ΔTc=[ΔT/{3+(L’/L)}]
この式5から分かるように、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcは、ブラック用の画像形成ステーション32とそれ以外の各画像形成ステーション32,32,…との副走査方向における相互間距離に応じた比率で変化する、という想定を基に、各補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcが求められる。特に、各感光体ドラム50,50,…が(設計上)一定の間隔Lを置いて設けられることから、各補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcは、指標時間Tbの変化分ΔTを基準として、詳しくは[ΔT/{3+(L’/L)}]という要素を基準として、等比的(案分的)に求められる。
【0099】
このようにして求められた補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcにより各タイミング差時間Ty,TmおよびTcが補正されることをもって、簡易的なレジスト調整が終了する。この補正後の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcは、前述の式2によって表される。この補正後の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcに基づいて、各感光体ドラム50,50,…への静電潜像の書き込み開始タイミングが計られることで、レジストずれが補正され、ひいては高品質なカラー画像が得られる。
【0100】
このように、簡易的なレジスト調整によれば、イエローという1色のみについて、トナーが消費される。ゆえに、高精度なレジスト調整に比べて、経済的である。
【0101】
図8に、主記憶部86bのRAM内の構成を概念的に表すメモリマップ400を示す。このメモリマップ400に示されるように、RAMは、プログラム記憶領域410およびデータ記憶領域450を有する。
【0102】
このうちのプログラム記憶領域410には、前述の制御プログラムが記憶される。具体的には、制御プログラムは、画像読取制御プログラム412、画像形成制御プログラム414、給紙制御プログラム416、補助記憶制御プログラム418などを含む。併せて、制御プログラムは、高精度レジスト調整プログラム420および簡易レジスト調整プログラム422を含む。
【0103】
画像読取制御プログラム412は、画像読取部12を制御するためのプログラムである。この画像読取制御プログラム412には、自動原稿送り装置18を制御するためのプログラムが含まれる。画像形成制御プログラム414は、画像形成部28を制御するためのプログラムである。給紙制御プログラム416は、給紙部64を制御するためのプログラムである。補助記憶制御プログラム418は、補助記憶部88を制御するためのプログラムである。高精度レジスト調整プログラム420は、高精度なレジスト調整を実現するためのプログラムであり、詳しくはCPU86aに後述する高精度レジスト調整タスクを実行させるためのプログラムである。そして、簡易レジスト調整プログラム422は、簡易的なレジスト調整を実現するためのプログラムであり、詳しくはCPU86aに後述する簡易レジスト調整タスクを実行させるためのプログラムである。
【0104】
一方、データ記憶領域450には、各種のデータが記憶される。この各種のデータとしては、初期値データ452、調整値データ454などがある。
【0105】
初期値データ452は、前述の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの初期値Tiy,TimおよびTicを表すデータである。そして、調整値データ454は、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcを表すデータである。また、調整値データ454には、前述の基準時間Tsを表すデータも含まれる。
【0106】
さて、高精度なレジスト調整において、CPU86aは、高精度レジスト調整プログラム420に従って、高精度レジスト調整タスクを実行する。この高精度レジスト調整タスクの流れを、
図9に示す。なお、CPU86aは、高精度なレジスト調整を実行する時期が到来したときに、高精度レジスト調整タスクを実行する。
【0107】
この高精度レジスト調整タスクによれば、CPU86aは、まず、ステップS1において、全色パターン画像200および200を形成し、厳密にはそうするように画像形成部28を制御する。そして、CPU86aは、処理をステップS3へ進める。
【0108】
ステップS3において、CPU86aは、各パターン画像センサ38および38により各全色パターン画像200および200が検出されるのを待つ(ステップS3:NO)。そして、各パターン画像センサ38および38により各全色パターン画像200および200が検出されると(ステップS3:YES)、CPU86aは、処理をステップS5へ進める。
【0109】
ステップS5において、CPU86aは、ステップS3における検出結果に基づいて、詳しくは前述の式1に基づいて、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcを算出する。そして、CPU86aは、処理をステップS7へ進める。
【0110】
ステップS7において、CPU86aは、ステップS5で算出された補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcを記憶し、詳しくは調整値データ454として主記憶部86bのRAM内のデータ記憶領域450に記憶する。そして、CPU86aは、処理をステップS9へ進める。
【0111】
ステップS9において、CPU86aは、前述の式3に基づいて、指標時間Tbを算出する。この指標時間Tbの算出に際しては、ステップS3における検出結果が用いられる。すなわちたとえば、イエローの直線状パターン画像212または斜めパターン画像252が形成された時点から当該イエローの直線状パターン画像212または斜めパターン画像252がパターン画像センサ38により検出される時点までの時間が、単色パターン画像検出時間Tdy(
図7参照)として用いられる。そして、CPU86aは、処理をステップS11へ進める。
【0112】
ステップS11において、CPU86aは、ステップS9で算出された指標時間Tbを基準時間Tsとして記憶し、詳しくは調整値データ454の1つとして主記憶部86bのRAM内のデータ記憶領域450に記憶する。このステップS11の実行をもって、CPU86aは、高精度レジスト調整タスクを終了する。
【0113】
この高精度レジスト調整タスクを終了した後、CPU86aは、画像形成部28による画像形成処理の実行に際して、前述の式2によって表される補正後の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcに基づいて、各感光体ドラム50,50,…への静電潜像の書き込み開始タイミングが計られるように、当該画像形成部28を制御する。これにより、レジストずれが補正され、ひいては高品質なカラー画像が得られる。
【0114】
一方、簡易的なレジスト調整において、CPU86aは、簡易レジスト調整プログラム422に従って、簡易レジスト調整タスクを実行する。この簡易レジスト調整タスクの流れを、
図10に示す。なお、CPU86aは、簡易レジスト調整を実行する時期が到来したときに、つまり前述の如く画像形成部28による画像形成処理が比較的に長い時間にわたって継続して実行された後、当該画像形成部28による画像形成処理が実行されない状態が比較的に短い時間にわたって継続したときなどに、簡易レジスト調整タスクを実行する。
【0115】
この簡易レジスト調整タスクによれば、CPU86aは、まず、ステップS101において、単色パターン画像300および300を形成し、厳密にはそうするように画像形成部28を制御する。そして、CPU86aは、処理をステップS103へ進める。
【0116】
ステップS103において、CPU86aは、各パターン画像センサ38および38により各単色パターン画像300および300が検出されるのを待つ(ステップS103:NO)。そして、各パターン画像センサ38および38により各単色パターン画像300および300が検出されると(ステップS103:YES)、CPU86aは、処理をステップS105へ進める。
【0117】
ステップS105において、CPU86aは、前述の式3に基づいて、指標時間Tbを算出する。この指標時間Tbの算出に際しては、ステップS103における検出結果が、つまり単色パターン画像検出時間Tdy(
図7参照)が、用いられる。そして、CPU86aは、処理をステップS107へ進める。
【0118】
ステップS107において、CPU86aは、前述の式4に基づいて、指標時間Tbの変化分ΔTを求める。そして、CPU86aは、処理をステップS109へ進める。
【0119】
ステップS109において、CPU86aは、指標時間Tbの変化分ΔTの絶対値|ΔT|と所定の時間閾値Th1とを比較する。時間閾値Th1は、簡易的なレジスト調整を行うのが適当であるかどうかの判断基準となる時間値であって、設計値または実測値に基づいて定められる。ここで、たとえば指標時間Tbの変化分ΔTの絶対値|ΔT|が時間閾値Th1よりも大きい場合(S109:YES)、CPU86aは、処理をステップS111へ進める。一方、指標時間Tbの変化分ΔTの絶対値|ΔT|が時間閾値Th1以下である場合は(S109:NO)、CPU86aは、簡易レジスト調整タスクを終了する。
【0120】
ステップS111において、CPU86aは、前述の式5に基づいて、各タイミング差時間Ty,TmおよびTcの補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcを算出する。そして、CPU86aは、処理をステップS113へ進める。
【0121】
ステップS113において、CPU86aは、ステップS111で算出された補正値ΔTy,ΔTmおよびΔTcを調整値データ454として主記憶部86bのRAM内のデータ記憶領域450に記憶する。そして、CPU86aは、処理をステップS115へ進める。
【0122】
ステップS115において、CPU86aは、前述のステップS5で算出された指標時間Tbを基準時間Tsとして記憶し、詳しくは調整値データ454の1つとして主記憶部86bのRAM内のデータ記憶領域450に記憶する。このステップS115の実行をもって、CPU86aは、簡易レジスト調整タスクを終了する。
【0123】
この簡易レジスト調整タスクを終了した後、CPU86aは、画像形成部28による画像形成処理の実行に際して、前述の式2によって表される補正後の各タイミング差時間Ty,TmおよびTcに基づいて、各感光体ドラム50,50,…への静電潜像の書き込み開始タイミングが計られるように、当該画像形成部28を制御する。これにより、レジストずれが補正され、ひいては高品質なカラー画像が得られる。
【0124】
以上のように、本第1実施例によれば、高精度なレジスト調整とは別に、簡易的なレジスト調整が用意され、これら2種類のレジスト調整が選択的に行われる。そして特に、簡易的なレジスト調整によれば、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックという4つの色のうちのイエローという1色のみについて、トナーが消費される。ゆえに、高精度なレジスト調整に比べて、トナーの消費量が抑制され、経済的である。さらに、高精度なレジスト調整および簡易的なレジスト調整のいずれにおいても、前述の特許文献1に開示された技術におけるようなタブ部という特別な要素が設けられず、また、当該タブ部を検出するためのセンサも設けられない。したがって、特許文献1に開示された技術に比べて、簡素かつ安価な構成により、レジスト調整を実現することができる。
【0125】
なお、本第1実施例におけるイエロー用の画像形成ステーション32は、本発明に係る特定画像形成手段の一例である。そして、本第1実施例における単色パターン画像300は、本発明に係る第1パターン画像の一例である。さらに、本第1実施例における簡易レジスト調整タスクは、本発明に係る第1レジスト調整処理の一例である。また、本第1実施例における全色パターン画像200は、本発明に係る第2パターン画像の一例である。加えて、本第1実施例における高精度レジスト調整タスクは、本発明に係る第2レジスト調整処理の一例である。そして、本第1実施例におけるCPU86aは、厳密には当該CPU86aを含む制御部86は、本発明に係る制御手段の一例である。さらにまた、本第1実施例における単色パターン画像検出時間Tdyは、本発明に係る画像検出時間の一例である。そして、本第1実施例におけるブラック用の画像形成ステーション32は、本発明に係る基準画像形成手段の一例である。
【0126】
ちなみに、イエロー用の画像形成ステーション32以外の画像形成ステーション32が、特定画像形成手段として取り扱われてもよい。すなわち、イエロー用の画像形成ステーション32以外の画像形成ステーション32によって、単色パターン画像300が形成されてもよい。ただし、簡易的なレジスト調整を精確に行うには、各画像形成ステーション32,32,…のうちの中間転写ベルト40の移動方向100における最も上流側にある画像形成ステーション32が、つまり本第1実施例の場合は、パターン画像センサ38から最も離れた位置にある当該イエロー用の画像形成ステーション32が、特定画像形成手段として取り扱われるのが、好ましい。
【0127】
また、ブラック用の画像形成ステーション32以外の画像形成ステーション32が、基準画像形成手段として取り扱われてもよい。ただし、簡易的なレジスト調整および高精度なレジスト調整のいずれにおいても、それらを精確に行うには、各画像形成ステーション32,32,…のうちの中間転写ベルト40の移動方向100における最も下流側にある画像形成ステーション32が、つまり本第1実施例の場合は、パターン画像センサ38に最も近い位置にある当該ブラック用の画像形成ステーション32が、基準画像形成手段として取り扱われるのが、好ましい。
【0128】
さらに、前述の式5における指標時間Tbの変化分ΔTに代えて、単色パターン画像検出時間Tdyの変化分(=Tsy-Tdy;Tsyは、前回の簡易的なレジスト調整または高精度なレジスト調整が行われたときの単色パターン画像検出時間Tdyである。)が用いられてもよい。ただし、簡易的なレジスト調整を精確に行うには、式5の通り、指標時間Tbの変化分ΔTが用いられるのが、好ましい。
【0129】
そして、各画像形成ステーション32,32,…の並びについては、ここで説明した順番に限らない。加えて極端には、ブラック用の画像形成ステーション32が設けられなくてもよい。この場合は、いずれかの画像形成ステーション32が、基準ステーションとされる。
【0130】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について、説明する。
【0131】
本第2実施例においては、画像形成部28による画像形成処理の実行の開始を指示するコマンド、いわゆる印刷ジョブの開始コマンド、が発せられたときであって、複合機10内の温度θaが比較的に大きく変化したときに、簡易的なレジスト調整が行われる。なお、複合機10内の温度θaは、複合機10内の適宜の位置に設けられた温度検出手段としての不図示の適当な温度センサによって測定され、たとえば露光装置34内の温度を検出するために当該露光装置34内に設けられた温度センサによって測定される。また、複合機10内の温度θaが比較的に大きく変化したかどうかは、前回の簡易的なレジスト調整が行われたときの複合機10内の温度θa、あるいは、印刷ジョブの開始コマンドが発せられる前に(簡易的なレジスト調整ではなく)高精度なレジスト調整が行われた場合には、当該高精度なレジスト調整が行われたときの複合機10内の温度、との比較に基づいて、判断される。
【0132】
そのために、本第2実施例においては、
図11に示される流れに従って、高精度レジスト調整タスクが実行される。なお、本第2実施例における高精度レジスト調整タスクによれば、第1実施例(
図9)における高精レジスト度調整タスクに対して、ステップS51およびステップS53が設けられ、詳しくはステップS11の後に当該ステップS51およびステップS53がこの順番でCPU86aにより実行される。
【0133】
すなわち、本第2実施例における高精度レジスト調整タスクによれば、CPU86aは、ステップS11の実行後、処理をステップS51へ進める。このステップS51において、CPU86aは、複合機10内の温度θaを前述の温度センサから取得する。そして、CPU86aは、処理をステップS53へ進める。
【0134】
ステップS53において、CPU86aは、ステップS51で取得された温度θaを基準温度θsとして記憶し、詳しくは調整値データ454の1つとして主記憶部86bのRAM内のデータ記憶領域450に記憶する。このステップS11の実行をもって、CPU86aは、高精度レジスト調整タスクを終了する。
【0135】
また、本第2実施例においては、
図12に示される流れに従って、簡易レジスト調整タスクが実行される。なお、本第2実施例における簡易レジスト調整タスクによれば、第1実施例(
図10)における簡易レジスト調整タスクに対して、ステップS151~ステップS155が設けられ、詳しくはステップS1の前に当該ステップS151~ステップS155がこの順番でCPU86aにより実行される。併せて、本第2実施例における簡易レジスト調整タスクによれば、第1実施例における簡易レジスト調整タスクに対して、ステップS157が設けられ、詳しくはステップS115の後に当該ステップS157がCPU86aにより実行される。
【0136】
すなわち、本第2実施例における簡易レジスト調整タスクによれば、CPU86aは、まず、ステップS101において、複合機10内の温度θaを前述の温度センサから取得する。そして、CPU86aは、処理をステップS153へ進める。
【0137】
ステップS153において、CPU86aは、次の式6に基づいて、複合機10内の温度θaの変化分Δθを算出する。
【0138】
《式6》
Δθ=θs-θa
そして、ステップS153の実行後、CPU86aは、処理をステップS155へ進める。
【0139】
ステップS155において、CPU86aは、ステップS153で算出された温度変化分Δθの絶対値|Δθ|と所定の温度閾値Th2とを比較する。温度閾値Th2は、簡易的なレジスト調整を行うのか適当であるかどうかの判断基準となる温度値であって、設計または実測により定められる。ここで、たとえば温度変化分Δθの絶対値|Δθ|が温度閾値Th2よりも大きい場合(S155:YES)、CPU86aは、処理をステップS101へ進める。一方、温度変化分Δθの絶対値|Δθ|が温度閾値Th2以下である場合は(S155:NO)、CPU86aは、簡易レジスト調整タスクを終了し、つまり簡易的なレジスト調整を行わない。
【0140】
さらに、CPU86aは、ステップS115の実行後、処理をステップS157へ進める。このステップS157において、CPU86aは、前述のステップS151で取得された温度θaを基準温度θsとして記憶し、詳しくは調整値データ454の1つとして主記憶部86bのRAM内のデータ記憶領域450に記憶する。このステップS157の実行をもって、CPU86aは、簡易レジスト調整タスクを終了する。
【0141】
このように、本第2実施例によれば、印刷ジョブの開始コマンドが発せられたときであって、複合機10内の温度θaが比較的に大きく変化したときに、厳密には当該温度θaが温度閾値Th2よりも大きく変化したときに、簡易的なレジスト調整が行われる。これにより、簡易的なレジスト調整を行うのに適当な時期に、当該簡易的なレジスト調整が行われる。
【0142】
なお、本第2実施例においては、前述の如く印刷ジョブの開始コマンドが発せられたときであって、複合機10内の温度θaが温度閾値Th2よりも大きく変化する、という言わば温度変化条件が満足されたときに、簡易的なレジスト調整が行われるが、これに限らない。たとえば、画像形成部28による画像形成処理の実行回数が所定の回数閾値に達する、という言わば回数条件や、画像形成部28による画像形成処理が所定の時間にわたって継続して行われる、という言わば処理時間条件などの、所定の条件が満足されたときに、簡易的なレジスト調整が行われてもよい。
【0143】
[その他の適用例]
以上の各実施例は、本発明の具体例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。これら各実施例以外の局面にも、本発明を適用することができる。
【0144】
たとえば、各実施例においては、複合機10に本発明が適用される場合について、説明したが、これに限らない。すなわち、コピー機やプリンタ、ファクス装置などの複合機10以外の画像形成装置にも、本発明を適用することができる。
【0145】
また、本発明は、画像形成装置という装置の形態に限らず、画像形成装置におけるレジスト調整プログラムというプログラムの形態、および、画像形成装置におけるレジスト調整方法という方法の形態によっても、提供することができる。
【0146】
さらに、本発明は、画像形成装置におけるレジスト調整プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体という形態によっても、提供することができる。ここで言う記録媒体としては、たとえばSDメモリカードやUSBメモリなどの半導体メディア、あるいは、CDやDVDなどのディスクメディアがある。これらの可搬型の記憶媒体に限らず、ROMやハードディスクドライブなどのような装置組込み型(内蔵型)の記憶媒体もまた、ここで言う記録媒体として適用可能である。
【符号の説明】
【0147】
10 … 複合機
28 … 画像形成部
30 … 転写ユニット
32 … 画像形成ステーション
34 … 露光装置
38 … パターン画像センサ
40 … 転写ベルト
42 … 駆動ローラ
44 … 従動ローラ
50 … 感光体ドラム
86 … 制御部
86a … CPU
86b … 主記憶部
200 … 全色パターン画像
300 … 単色パターン画像