(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177390
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221124BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20221124BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20221124BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/457
H01M50/489
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083597
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】九澤 昌宏
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
【Fターム(参考)】
5H021BB11
5H021CC04
5H021EE04
5H021HH00
5H021HH10
5H028AA05
5H028BB03
5H028CC08
5H028CC10
5H028CC11
5H028HH00
(57)【要約】
【課題】短絡を防止すると共に、セパレータの破断を抑制可能な二次電池の製造方法及び二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る電極シート10,20及びセパレータ30が積層される二次電池1の製造方法は、セパレータ30を形成する複数の絶縁層31,32,33を重ねる第1の工程と、電極シートの集電箔を集箔した場合に、電極シート10,20と対向しないセパレータ30の部分である非対向部の少なくとも一部が剥離するように、セパレータ30の複数の絶縁層31,32,33を互いに着ける第2の工程とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極シート及びセパレータが積層される二次電池の製造方法であって、
前記セパレータを形成する複数の絶縁層を重ねる第1の工程と、
前記電極シートの集電箔を集箔した場合に、前記電極シートと対向しない前記セパレータの部分である非対向部の少なくとも一部が剥離するように、前記セパレータの複数の絶縁層を互いに着ける第2の工程と
を含む、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程は、
前記電極シートの集電箔を集箔した場合に、前記複数の絶縁層が剥離していない状態において前記電極シートの積層方向と垂直な幅方向に前記電極シートの縁部から前記セパレータに加わる応力よりも、前記非対向部の少なくとも一部の剥離強度が小さくなるように、前記セパレータの複数の絶縁層を互いに着けることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記非対向部の少なくとも一部の剥離強度は、0よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記セパレータは、前記セパレータの破断強度が前記応力よりも大きくなるように構成される、請求項2又は3に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程は、
前記電極シートと対向する前記セパレータの部分の絶縁層の剥離強度が、前記非対向部の剥離強度よりも大きくなるように、前記複数の絶縁層を互いに着けることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記複数の絶縁層が3層以上である場合、前記第2の工程は、
前記非対向部の最内側の絶縁層と、前記最内側の絶縁層に隣接する絶縁層との間の剥離強度が、前記最内側の絶縁層以外の絶縁層の間の剥離強度よりも小さいことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
電極シート及びセパレータが積層された二次電池であって、
前記セパレータは、複数の絶縁層で形成されており、
前記電極シートと対向しない前記セパレータの部分である非対向部の少なくとも一部が剥離していることを特徴とする、二次電池。
【請求項8】
前記電極シートと対向する前記セパレータの部分の前記複数の絶縁層の剥離強度は、前記非対向部の前記複数の絶縁層の剥離強度よりも大きいことを特徴とする、請求項7に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電気を利用する車両では、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が採用されている。このような二次電池では、通常、短絡を防止するために、セパレータが正極板と負極板の間に配置される。
【0003】
このような二次電池の一例として、特許文献1が開示する二次電池は、正極板と負極板の間にセパレータを配置すると共に、正極の活物質層の端部に絶縁層を形成することにより、短絡を防止することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する二次電池では、正極板と負極板がずれた状態で積層された場合、正極の金属箔が負極の活物質層に接触して短絡が生じるおそれがある。この問題を解決する方法として、セパレータを幅方向に延長して正極の金属箔と負極の活物質層の接触を防ぐ方法が考えられる。
【0006】
通常、電極の金属箔は集電のために束ねられ、セパレータが、束ねられた一方の電極の金属箔と他方の電極の活物質層に挟まれた状態で固定される。そのため、電極の縁部からセパレータに応力が加わることにより、セパレータが破断するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、短絡を防止すると共に、セパレータの破断を抑制可能な二次電池の製造方法及び二次電池を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る電極シート及びセパレータが積層される二次電池の製造方法は、
セパレータを形成する複数の絶縁層を重ねる第1の工程と、
電極シートの集電箔を集箔した場合に、電極シートと対向しないセパレータの部分である非対向部の少なくとも一部が剥離するように、セパレータの複数の絶縁層を互いに着ける第2の工程とを含む。
【0009】
第2の工程は、電極シートの集電箔を集箔した場合に、複数の絶縁層が剥離していない状態において電極シートの積層方向と垂直な幅方向に電極シートの縁部からセパレータに加わる応力よりも、非対向部の少なくとも一部の剥離強度が小さくなるように、セパレータの複数の絶縁層を互いに着けることができる。非対向部の少なくとも一部の剥離強度は、0よりも大きい。
【0010】
セパレータは、セパレータの破断強度が当該応力よりも大きくなるように構成することができる。
【0011】
第2の工程は、電極シートと対向するセパレータの部分の絶縁層の剥離強度が、非対向部の剥離強度よりも大きくなるように、複数の絶縁層を互いに着けることができる。
【0012】
複数の絶縁層が3層以上である場合、第2の工程は、非対向部の最内側の絶縁層と、最内側の絶縁層に隣接する絶縁層との間の剥離強度が、最内側の絶縁層以外の絶縁層の間の剥離強度よりも小さくすることができる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る電極シート及びセパレータが積層された二次電池では、
セパレータは、複数の絶縁層で形成されており、
電極シートと対向しないセパレータの部分である非対向部の少なくとも一部が剥離していることを特徴とする。
【0014】
電極シートと対向するセパレータの部分の複数の絶縁層の剥離強度は、非対向部の複数の絶縁層の剥離強度よりも大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、短絡を防止すると共に、セパレータの破断を抑制可能な二次電池の製造方法及び二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池を示す概略図である。
【
図2】
図1の断面線I-Iに沿った二次電池の水平断面を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るセパレータの剥離前後の二次電池の水平断面を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るセパレータの一部が剥離した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池1を示す概略図である。二次電池1は、電極体(図示せず)と、正極集電部2と、負極集電部3とを備える。
【0018】
電極体は、正極シート、負極シート及びセパレータを積層して形成される。電極体は、1つの正極シート、1つの負極シート及び1つのセパレータを重ねて捲回することによって形成することができる。また、電極体は、複数の正極シート、複数の負極シート及び複数のセパレータを積層して形成することもできる。
【0019】
正極集電部2は、二次電池1内で正極集電側の正極シートを束ねる集箔部(図示せず)に接続され、当該集箔部から集電する。同様に、負極集電部3は、二次電池1内で負極集電側の負極シートを束ねる集箔部(図示せず)に接続され、当該集箔部から集電する。
【0020】
図2は、
図1の断面線I-Iに沿った二次電池の水平断面を示す図であり、正極集電側の電極体の一部を示す。電極体の負極集電側も同様の構成を有する。
【0021】
正極シート10は、正極の集電箔11(アルミ等)に正極活物質12(コバルト酸リチウム等)が塗布されて形成される。負極シート20は、負極の集電箔21(銅等)に負極活物質22(グラファイト等)が塗布されて形成される。
【0022】
セパレータ30は、ポリオレフィン等の複数の絶縁層で形成される。
図2には、3層の絶縁層で形成されたセパレータ30が示されている。なお、セパレータ30は、2層又は4層以上の絶縁層で形成することもできる。
【0023】
セパレータ30は、複数の絶縁層を重ねる第1の工程と、セパレータ30の複数の絶縁層を互いに着ける第2の工程を実施することによって形成される。第2の工程では、電極シートの集電箔を集箔した場合に、非対向部の少なくとも一部が剥離するように、複数の絶縁層が互いに着けられる。非対向部とは、電極シートと対向しないセパレータ30の部分である。複数の絶縁層は、熱を加えながら押圧することによって互いに着けることができる。また、複数の絶縁層は、接着剤を用いて互いに着けることもできる。
【0024】
図3は、
図1の断面線I-Iに沿った二次電池の水平断面を示す図であり、セパレータ30の剥離前後の正極集電側の電極体に加わる応力を示す。負極集電側の電極体にも同様の応力が加わる。
【0025】
セパレータ30の絶縁層31,32,33が剥離していない状態では、正極シート10の集電箔11を集箔した場合、負極シート20の縁部23から、非対向部におけるセパレータ30の面に垂直な方向に、応力Aがセパレータ30に加わる。この場合、応力Asinθが、負極シート20の縁部23から、積層方向に垂直な幅方向にセパレータ30に加わる。ここで、θは、対向部におけるセパレータ30の面と、非対向部におけるセパレータ30の面とが成す角度である。対向部とは、電極シートと対向するセパレータ30の部分である。
【0026】
例えば、応力Aが10Nであり、θが30°である場合、セパレータ30には、幅方向に5Nの応力が加わる。この場合、第2の工程では、絶縁層31,32,33を剥離し得る最小限の力に相当する剥離強度Xが、5Nよりも小さくなるように、絶縁層31,32,33を互いに着ける。換言すると、第2の工程では、非対向部の少なくとも一部の剥離強度Xが、応力Asinθよりも小さくなるように(X<Asinθ)、絶縁層31,32,33を互いに着けることができる。なお、剥離強度Xは、0よりも大きい(0<X)。
【0027】
このように絶縁層31,32,33を互いに着けてセパレータ30を形成することにより、電極シートの集電箔の集箔によって幅方向の応力Asinθがセパレータ30に加わった場合、セパレータ30の絶縁層31,32,33の少なくとも一部が剥離する。
図4は、セパレータ30の絶縁層の一部が剥離した状態を示す概略断面図である。
図4に示す例では、セパレータ30の絶縁層31と絶縁層32の一部が剥離した状態を示す。
【0028】
セパレータ30の絶縁層31,32の少なくとも一部が剥離すると、最内側の絶縁層31が幅方向外側に滑動し得るため、負極シート20の縁部23からセパレータ30に加わる応力が
図3のように変化する。
図3は、負極シート20の縁部23から加わる応力Aの方向が、積層方向内側にα°変化した状態を示す。この場合、非対向部におけるセパレータ30の面に垂直な方向において、応力Acosαが負極シート20の縁部23からセパレータ30に加わる。例えば、応力Aが10Nであり、αが30°である場合、セパレータ30には、セパレータ30の面に垂直な方向に約8.6Nの応力が加わる。
【0029】
従って、セパレータ30の絶縁層31,32の少なくとも一部が剥離した場合にセパレータ30の面の垂直方向に加わる応力Acosαは、絶縁層31,32が剥離する前に加わっていた応力Aよりも小さくなる。このため、セパレータ30が破断するリスクを低減することができる。
【0030】
なお、電極シートの集電箔の集箔によってセパレータ30の絶縁層31,32,33が剥離しない場合であっても、電極シートが膨張することによって絶縁層31,32,33が剥離する場合がある。この場合でも、セパレータ30の面の垂直方向に加わる応力Acosαは、絶縁層31,32が剥離する前に加わっていた応力Aよりも小さくなるため、セパレータ30が破断するリスクを低減することができる。
【0031】
さらに、セパレータ30は、電極シートの集電箔の集箔時にセパレータ30を破断し得る最小限の力に相当する破断強度Yが、応力Asinθよりも大きくなるように構成することができる(Asinθ<Y)。例えば、応力Aが10Nであり、θが30°である場合、セパレータ30の破断強度Yが5Nよりも大きくなるように、セパレータ30を構成することができる。セパレータ30の破断強度Yは、セパレータ30の各絶縁層31,32,33の厚みや密度、構成成分の含有量等を調整することにより高めることができる。このように、セパレータ30の破断強度Yを高めることにより、セパレータ30が破断するリスクを一層低減することができる。特に、非対向部の最内側の絶縁層31の破断を防ぐことにより、電極体が膨張した場合であっても、最内側の絶縁層31が滑動し得るため、絶縁層31,32,33の破断を防止することができる。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、他の実施形態に係る第2の工程では、電極シートと対向するセパレータ30の部分、すなわち、対向部の絶縁層の剥離強度が、非対向部の剥離強度よりも大きくなるように、セパレータ30の複数の絶縁層を互いに着けることができる。このようにして製造された二次電池1では、
図3に示すように、セパレータ30の対向部の絶縁層31,32,33の剥離強度は、非対向部の絶縁層31,32,33の剥離強度よりも大きい。これにより、セパレータ30の対向部の絶縁層が剥離するのを防ぐことができる。
【0033】
さらに、セパレータ30の複数の絶縁層が3層以上である場合、第2の工程では、非対向部の最内側の絶縁層と、最内側の絶縁層に隣接する絶縁層との間の剥離強度が、最内側の絶縁層以外の複数の絶縁層の間の剥離強度よりも小さくなるように、セパレータ30の複数の絶縁層を互いに着けることができる。例えば、
図3に示すセパレータ30の絶縁層31と絶縁層32との間の剥離強度が、絶縁層32と絶縁層33との間の剥離強度よりも小さくなるように、絶縁層31,32,33を互いに着けることができる。これにより、非対向部の最内側の絶縁層31と、絶縁層31に隣接する絶縁層32との間に剥離が生じ易くなる。
【符号の説明】
【0034】
1 二次電池
2 正極集電部
3 負極集電部
10 正極シート
11 正極の集電箔
12 正極活物質
20 負極シート
21 負極の集電箔
22 負極活物質
23 縁部
30 セパレータ
31 絶縁層
32 絶縁層
33 絶縁層