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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177397
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】交通管制装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221124BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083611
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 佑太
(72)【発明者】
【氏名】樋口 徹
(72)【発明者】
【氏名】西村 僚将
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 敏英
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA15
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の優先度を考慮して、適切な交通を確保できる交通管制装置を提供する。
【解決手段】対向車線に進入することを要求する対象車両200から回避許可要求を受信する回避要求受信部41と、対象車両201および対向車線を走行する近隣車両201から走行車両情報を受信する走行車両情報受信部43と、走行車両情報に含まれる各目標走行経路情報から対象車両200と近隣車両201の走行経路の重複を判定する走行経路重複判定部44と、走行車両情報に含まれる各車両情報からどちらの車両を優先するかを判定する優先度判定部45と、その判定結果に基づいて対象車両200と近隣車両201に走行指示を与える走行指示生成部46と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通管制装置と、無線通信により前記交通管制装置に接続され、その走行経路が前記交通管制装置で管制される複数の車両と、を備える交通管制システムに用いられる交通管制装置において、
走行車線を走行する第1の車両から、前記走行車線から対向車線に進入して走行することを要求する第1要求を受信する第1要求受信部と、
前記第1の車両から第1の走行車両情報を受信し、前記対向車線を走行する第2の車両から第2の走行車両情報を受信する走行車両情報受信部と、
前記第1の走行車両情報に含まれる第1の目標走行経路情報および前記第2の走行車両情報に含まれる第2の目標走行経路情報から前記第1の車両の走行経路と前記第2の車両の走行経路の重複を判定する走行経路重複判定部と、
前記第1の走行車両情報に含まれる第1の車両情報および前記第2の走行車両情報に含まれる第2の車両情報から前記第1の車両と前記第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定する優先度判定部と、
前記優先度判定部の判定結果に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両に走行指示を与える走行指示生成部と、を備える交通管制装置。
【請求項2】
前記優先度判定部は、優先度に応じてそれぞれの評価点が設定されている複数のルールを備え、前記第1の車両と前記第2の車両に対して、前記第1の車両情報および前記第2の車両情報に基づいて、前記ルールが満たされるか否かを判定し、満たされたルールの前記評価点を合計して優先度評価値とし、前記第1の車両の優先度評価値および前記第2の車両の優先度評価値に基づいて、前記第1の車両および前記第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定する請求項1に記載の交通管制装置。
【請求項3】
前記走行経路重複判定部は、前記第1の車両の前記走行経路と前記第2の車両の前記走行経路とが重複すると判定した場合は、
前記走行指示は、前記第1の車両の優先度評価値の方が前記第2の車両の優先度評価値よりも高い場合は、前記第1の車両に対向車線に侵入して走行することを許可するとともに、前記第2の車両と前記第1の車両との距離が前記第1の車両と前記第2の車両の走行速度を考慮した所定の距離よりも短い場合は前記第2の車両に停止を指示するものであり、前記第2の車両と前記第1の車両との距離が前記所定の距離よりも長い場合は、前記第2の車両に減速を指示するものであり、
前記第2の車両の優先度評価値の方が前記第1の車両の優先度評価値よりも高い場合は、前記第1の車両に停止を指示し、前記第2の車両に走行を継続する指示を行うものであり、
前記走行経路重複判定部は、前記第1の車両の前記走行経路と前記第2の車両の前記走行経路とが重複しないと判定した場合は、
前記走行指示は、前記第1の車両に対向車線に侵入して走行することを許可し、前記第2の車両に走行を継続する指示を行う、請求項2に記載の交通管制装置。
【請求項4】
前記第1の車両および前記第2の車両から受信する前記目標走行経路情報は、少なくとも前記第1の車両および前記第2の車両の将来の各時刻における車両の位置、車両の進行方向、車両の速度、走行車線、車線変更を行う位置の内の1つを含む時系列の走行計画情報である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交通管制装置。
【請求項5】
前記優先度判定部は、さらに前記第1の車両の後続車の優先度評価値、および前記第2の車両の後続車の優先度評価値を含めて、前記第1の車両と前記第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定し、
前記走行指示生成部は、前記優先度判定部が判定した結果に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両に前記走行指示を与える請求項1に記載の交通管制装置。
【請求項6】
さらに、前記走行車線を監視する監視機器、および前記走行車線上の障害物から受信した車両情報に基づいて、
前記障害物が自己走行可能かどうか、および前記障害物に対して命令可能かを判断する、障害物情報取得部を備えた請求項1に記載の交通管制装置。
【請求項7】
前記第1の車両が前記走行車線から前記対向車線に進入して走行することを要求する原因が、自己走行可能な障害物である場合、前記障害物情報取得部は、前記自己走行可能な障害物が命令可能であると判定し、
前記自己走行可能な障害物が前記第1の車両の待機時間なしに走行を開始する場合は、
前記第1の車両に前記対向車線に侵入せずに、前記走行車線を継続して、前記自己走行可能な障害物に追従して走行する指示を行い、
前記第2の車両に走行を継続する指示を行い、
前記自己走行可能な障害物に対して、走行を開始する指示を行い、
前記自己走行可能な障害物が、前記第1の車両の許容待機時間内に走行を開始する場合は、
前記第1の車両に前記対向車線に侵入せずに、一旦待機し、前記自己走行可能な障害物が走行を開始した場合、前記自己走行可能な障害物に追従して走行する指示を行い、
前記第2の車両に走行を継続する指示を行い、
前記自己走行可能な障害物に対して、前記許容待機時間内に走行を開始する指示を行う請求項6に記載の交通管制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、交通管制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動運転車の走行のための交通管理システムに関して、自動運転車が障害物により優先レーンの走行継続が困難な場合に、交通管理装置により仮想的に限定専用レーンを形成することで、自動運転車が安全に追い越し走行させる交通管理装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-194782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の交通管理装置は、自動運転車を常に優先するようになっており、対向車両が緊急車両等、車両の優先度を適切に考慮する交通管理装置にはなっていない。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、車両の優先度を考慮して、適切な交通を確保できる交通管制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される交通管制装置は、交通管制装置と、無線通信により交通管制装置に接続され、その走行経路が交通管制装置で管制される複数の車両と、を備える交通管制システムに用いられる交通管制装置において、走行車線を走行する第1の車両から、走行車線から対向車線に進入して走行することを要求する第1要求を受信する第1要求受信部と、第1の車両から第1の走行車両情報を受信し、対向車線を走行する第2の車両から第2の走行車両情報を受信する走行車両情報受信部と、第1の走行車両情報に含まれる第1の目標走行経路情報および第2の走行車両情報に含まれる第2の目標走行経路情報から第1の車両の走行経路と第2の車両の走行経路の重複を判定する走行経路重複判定部と、第1の走行車両情報に含まれる第1の車両情報および第2の走行車両情報に含まれる第2の車両情報から第1の車両と第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定する優先度判定部と、優先度判定部の判定結果に基づいて第1の車両と第2の車両に走行指示を与える走行指示生成部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される交通管制装置は、車両の優先度を考慮して、適切な交通を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による交通管制装置を含む交通管制システムの全体構成図である。
図2】実施の形態1による交通管制装置の構成図である。
図3】実施の形態1による交通管制装置のハードウエア構成図である。
図4】実施の形態1による交通管制装置に係る車両のシステム構成図である。
図5】実施の形態1による交通管制装置に係る車両の自動運転制御装置の構成図である。
図6】実施の形態1による交通管制装置に係る目標走行経路情報の説明図である。
図7】実施の形態1による交通管制装置に係る車両の自動運転制御装置のハードウエア構成図である。
図8】実施の形態1による交通管制装置に係る対象車両、近隣車両の走行パターン例の説明図である。
図9】実施の形態1による交通管制装置に係る対象車両、近隣車両の走行パターン例の説明図である。
図10】実施の形態1による交通管制装置に係る対象車両、近隣車両の走行パターン例の説明図である。
図11】実施の形態1による交通管制装置に係るフローチャートである。
図12】実施の形態1による交通管制装置に係る対象車両のフローチャートである。
図13】実施の形態1による交通管制装置に係る近隣車両のフローチャートである。
図14】実施の形態2による交通管制装置に係る対象車両、近隣車両、障害物の走行パターン例の説明図である。
図15】実施の形態2による交通管制装置に係る対象車両、近隣車両、障害物の走行パターン例の説明図である。
図16】実施の形態2による交通管制装置の構成図である。
図17】実施の形態2による交通管制装置に係るフローチャートである。
図18】実施の形態2による交通管制装置に係るフローチャートである。
図19】実施の形態2による交通管制装置に係る対象車両のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1は、交通管制装置と、無線通信により交通管制装置に接続されてその走行経路が管制される複数の車両と、から構成される交通管制システムにおいて、走行車線を走行する第1の車両から、走行車線から対向車線に進入して走行することを要求する回避許可要求を受信する回避要求受信部と、対象車両から走行車両情報を受信し、対向車線を走行する近隣車両から走行車両情報を受信する走行車両情報受信部と、走行車両情報に含まれる各目標走行経路情報から対象車両と近隣車両の走行経路の重複を判定する走行経路重複判定部と、走行車両情報に含まれる各車両情報から対象車両と近隣車両のどちらの車両を優先するかを判定する優先度判定部と、優先度判定部の判定結果に基づいて対象車両と近隣車両に走行指示を与える走行指示生成部と、を備える交通管制装置に関するものである。
なお、対象車両と近隣車両の走行経路の重複については、後で説明する。
【0010】
以下、実施の形態1に係る交通管制装置について、交通管制装置を含む交通管制システムの全体構成図である図1、交通管制装置の構成図である図2、交通管制装置のハードウエア構成図である図3、車両のシステム構成図である図4、車両の自動運転制御装置の構成図である図5、目標走行経路情報の説明図である図6、車両の自動運転制御装置のハードウエア構成図である図7、交通管制装置に係る対象車両、近隣車両の走行パターン例の説明図である図8図10、交通管制装置に係るフローチャートである図11、対象車両のフローチャートである図12、および近隣車両のフローチャートである図13に基づいて説明する。
なお、各図において、同一部分もしくは相当部分は、同一符号で示し、重複する説明は、省略する。
【0011】
まず、実施の形態1の交通管制装置1を含む交通管制システム1000の全体構造を図1に基づいて説明する。
交通管制システム1000は、交通管制装置1、ネットワーク網2、複数の基地局3、および複数の車両20から構成されている。交通管制装置1は、ネットワーク網2に接続されている。
複数の車両20は、無線通信により、近隣の基地局3に接続されている。複数の基地局3が道路網をカバーできるように、各地点に分散して設けられている。基地局3は、4G、5G等のセルラー方式の無線通信の規格を用いて、通信圏内に存在する車両20に搭載された移動端末機器と無線通信を行う無線局であり、ネットワーク網2に接続されている。
したがって、複数の車両20と交通管制装置1とは、基地局3およびネットワーク網2を介して通信接続される。
なお、図1の交通管制システム1000の説明では、複数の車両、複数の基地局をそれぞれ区別する必要がないため、車両20、基地局3と記載している。
以降の説明において、各車両の区別をする必要がある場合は、例えば第一の車両200、第二の車両201と記載する。
【0012】
実施の形態1では、第一の車両200の走行先に障害物202があるとき、第一の車両200と対向車線に進入すればこの障害物を回避することが可能な場合について説明する。
交通管制装置1は、第一の車両200が対向車線に進入した場合、対向車線を走行中の第二の車両201の走行経路が重複しないかどうか確認する。
第一の車両200と第二の車両201の走行経路が重複する場合、交通管制装置1は、第一の車両200および第二の車両201のどちらの車両を優先するかを判定し、第一の車両200あるいは第二の車両201の一方を優先走行させる走行指示を送信する。その結果、優先走行させるべき車両を優先走行させて、適切な交通を確保できる交通管制が実現できる。
なお、以降の説明では、わかりやすいように、適宜第一の車両を「対象車両」、第二の車両を「近隣車両」と記載する。
また、対象車両200とは、障害物202が存在する車線を走行する車両を表し、近隣車両201とは、対象車両200の対向車線を走行する車両を表す。
【0013】
まず、交通管制装置1の構成とこれを実現するためのハードウエア構成を図2図3に基づいて説明する。その後、車両20のシステム構成と自動運転制御装置25の構成を図4図5に基づいて説明する。
【0014】
図2は交通管制装置1の構成図である。交通管制装置1の各構成要素とその機能を合わせて説明する。
交通管制装置1は、通信部40、回避要求受信部41、走行車両情報要求部42、走行車両情報受信部43、走行経路重複判定部44、優先度判定部45、走行指示生成部46を備える。
【0015】
通信部40は、複数の車両(例えば、200、201)と通信する。実施の形態1の通信部40は、ネットワーク網2に接続されており、ネットワーク網2および基地局3を介して、管制対象の車両20と通信する。管制対象の車両20は、例えば、交通管制装置1が管制している地域に位置している車両20である。
【0016】
第1要求受信部である回避要求受信部41は、対象車両200から、対向車線に進入すれば障害物を回避可能であることを示す第1要求である回避許可要求を受信する。
【0017】
走行車両情報要求部42は、対象車両200から回避許可要求がある場合には、対象車両200および近隣車両201に目標走行経路および車両の情報の送信要求を送信する。
【0018】
走行車両情報受信部43は、各車両(例えば、200、201)から目標走行経路情報および車両情報を含む走行車両情報を受信する。
目標走行経路情報は、将来の各時刻の車両の位置等を示す時系列の走行計画データである。
また、車両情報には、車両の種別、車両の輪郭形状、自動車制動時の最大許容減速度などの車両の基本情報、および車両の緊急性等の情報が含まれる。緊急性等の情報には、後で説明する車両の優先度の判定に必要な情報(例えば、急病の搭乗者の有無、乗車人数など)も含まれる。
【0019】
走行経路重複判定部44は、詳細は後述するが、対象車両200と近隣車両201から受信した目標走行経路情報から、それぞれの目標走行経路が相互に重なるか否かを判定する。
【0020】
優先度判定部45は、対象車両200と近隣車両201から受信した車両情報から対象車両200と近隣車両201との間の優先度を判定する。
実施の形態1では、優先度判定部45は、以下に詳細を説明する複数のルールを組み合わせて、車両間の優先度を判定する。
【0021】
例えば、各ルールには評価点が設定されており、より優先度の高いルールにはより高い評価点が設定されている。優先度判定部45は、対象車両200と近隣車両201について、各ルールが満たされるか否かを判定する。優先度判定部45は、満たされたルールの評価点を合計し、合計値を対象車両200および近隣車両201のそれぞれの優先度評価値とする。
そして、優先度判定部45は、対象車両200と近隣車両201のどちらの優先度評価値が高いかを判断する。対象車両200と近隣車両201の優先度評価値が同じ場合には、近隣車両201を優先させる。
【0022】
優先度判定部45が保持する複数のルールの例を説明する。なお、以下のルールは例示であり、これ以外の任意のルール、評価点を用いることができる。また、各ルールの判定に必要な情報は、各車両20から受信する走行車両情報に含まれる車両情報、および交通管制装置1が備える高精度地図データ等から取得する。また、他の運用システムからルールの判定に必要な情報を取得することもできる。
ルール1:急病の搭乗者の車両を優先する(100点)。
ルール2:課金した搭乗者の車両を優先する(10点)。
ルール3:乗車人数が多い車両を優先する(5点)。
ルール4:予定到着時刻から遅れている車両を優先する(1点)。
ルール5:目的地までの予定走行距離が長い車両を優先する(1点)。
ルール6:充電残量が少ない車両を優先する(1点)。
ルール7:交通量が多い方向の車両を優先する(1点)。
ルール8:進行方向の交通事情が悪いために、優先しても意味がない車両(-100点)。
ルール9:近隣車両201が、対象車両200の走行経路を阻害しない位置で停止することができない(対象車両のみに適用、-1000点)。
なお、ルール9は近隣車両201に最大許容減速度があり、その最大許容減速度と停止位置204までの距離を用いて、対象車両200の走行経路を阻害しない位置で停止することができない場合が該当する。
【0023】
なお、これらの車両の優先度判定のルールおよび評価点の内容は、交通管制システム1000として決定されており、各通行車両に周知されているものとする。
【0024】
走行指示生成部46は、対象車両200が対向車線に回避した場合、対象車両200と近隣車両201の目標走行経路が相互に重複すると走行経路重複判定部44により判定された場合は、対象車両200と近隣車両201のどちらが優先されるかの優先度判定部45の判定結果に従って、車両200、201に対してそれぞれの走行指示を生成する。
【0025】
図3は、交通管制装置1の機能を実現するためのハードウエア構成図である。
交通管制装置1の各機能は、交通管制装置1が備えた処理回路により実現される。交通管制装置1は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置70(コンピュータ)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等の記憶装置71、データ通信を行う通信装置72等を備えている。通信装置72は、ネットワーク2に接続され、データ通信を行う。
交通管制装置1のハードディスク等の記憶装置71には、交通管制装置1の各機能のためのプログラムが記憶されている。交通管制装置1の各機能は、演算処理装置70が、記憶装置71に記憶されたプログラムを実行し、記憶装置71、通信装置72等のハードウエアと協働することにより実現される。
【0026】
なお、図1の交通管制システム1000では、交通管制装置1単独で図3で説明したハードウエアを備える構成としているが、例えば、サーバ内に交通管制装置1と他の道路交通情報システム(図示なし)とが共存する構成とすることもできる。
【0027】
次に、車両20のシステム構成を、各構成要素とその機能を合わせて図4に基づいて説明する。
車両20は、車載ネットワーク21、通信装置22、ロケータ23、ナビゲーション装置24、自動運転制御装置25、動力制御装置26、ブレーキ制御装置27、自動操舵制御装置28、およびライト制御装置29を備えている。
【0028】
車載ネットワーク21は、各装置(通信装置22~ライト制御装置29)の相互の通信を行うネットワークである。CAN(Controller Area Network)、Ethernet、Flexrayなどの通信規格が用いられる。
【0029】
通信装置22は、アンテナ22aを用いて、通信圏内に存在する基地局3と無線通信を行い、交通管制装置1とデータ通信を行う装置である。
【0030】
ロケータ23は、自車両の位置を認識する装置であり、GPS(Global Positioning System)アンテナ、加速センサ、方位センサ等を有している。
ロケータ23は、GPSアンテナ等から得た自車両の位置情報(緯度、経度、標高)および自動運転制御装置25が備える周辺監視装置25aから得た情報等と、高精度の地図データとをマッチングし、自車両の高精度な位置情報を認識する。
【0031】
ナビゲーション装置24は、ロケータ23から得た自車両の現在位置、搭乗者が設定した目標地点、地図データ、および道路状況に基づいて、現在位置から目標地点までの目標経路を決定する。ナビゲーション装置24は、ヒューマンインターフェイス24aを備えており、搭乗者による目標地点の設定を受け付ける。ナビゲーション装置24は、ナビゲーション情報を、スピーカ24bおよびディスプレイ24cに出力し、搭乗者に提示することができる。
【0032】
自動運転制御装置25は、自動運転のための認知、判断、および制御を行う装置である。
自動運転制御装置25の構成、および機能については、後で説明する。
【0033】
動力制御装置26は、自車両の速度が目標速度に追従するように、内燃機関、モータ等の動力機26aの出力を制御する。
ブレーキ制御装置27は、自車両の速度が目標速度に追従するように、電動ブレーキ装置27aのブレーキ動作を制御する。
自動操舵制御装置28は、操舵角が目標操舵角に追従するように、電動操舵装置28aを制御する。
ライト制御装置29は、自動運転制御装置25からの操作指令に従って、方向指示器29aを制御する。
【0034】
ここで、自動運転制御装置25の構成、および機能を図5に基づいて説明する。
自動運転制御装置25は、センサ情報取得部251、認知部252、通信部253、目標走行経路生成部254、管理部255、および車両制御指令生成部256を備えている。
【0035】
センサ情報取得部251は、周辺監視装置25aから周辺情報を取得する。周辺監視装置25aは、自車両の周辺を監視するカメラおよびレーダ等である。レーダには、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波レーダ等が用いられる。
【0036】
認知部252は、ロケータ23から得た自車両の位置情報、高精度の地図データ、周辺監視装置25aから得た周辺情報に基づいて、周辺車両の走行状態および走行道路の状態等の周辺の走行状況を認知する。周辺車両の走行状態として、周辺車両の位置、速度、走行方向、走行車線、大きさ、および種別等が認知される。
走行道路の状態として、道路の形状、車線、障害物の有無、歩行者の有無、道路標識情報、車線変更の禁止区間等の道路の交通ルール、信号情報、および渋滞情報等が認知される。
【0037】
通信部253は、車載ネットワーク21を介して他の車載装置と通信する。
【0038】
目標走行経路生成部254は、ナビゲーション装置24により設定された目標地点までの目標経路に沿って走行するために、認知した周辺の走行状況に合わせた、近距離の目標走行経路を決定する。近距離の目標走行経路とは、前述の目標走行経路情報に含まれる近い将来の各時刻の車両の位置等を示す時系列の走行計画データであり、現在から所定距離前方、または所定時間先までの目標走行経路とされる。どれだけ将来の目標走行経路を決定するかは、任意であるが、例えば、周辺監視装置25aにより検知できる範囲に対応した範囲内の目標走行経路を決定する。
【0039】
また、目標走行経路生成部254は、自車両の前方に障害物として、他車両、歩行者等が検出された場合は、対向車線に進入して障害物が回避可能かどうか判断する。障害物が回避可能な場合には、対向車線に進入して障害物を回避する目標走行経路を生成する。
【0040】
よって、目標走行経路情報には、将来の各時刻における車両の位置(緯度、経度、標高)、車両の進行方向、車両の向き、車両の速度等の情報に加えて、走行車線、および車線変更を行う位置等の情報も含まれる。管理部255は、交通管制装置1の要求に基づいて、決定した目標走行経路情報を、走行車両情報に含めて通信装置22を介して交通管制装置1に送信する。
【0041】
図6に、走行車両情報に含まれる目標走行経路情報の時系列データの例を示す。図6の例では、時刻、緯度、経度、車速、および車両の向き(例えば、車両の前後方向の方位)からなる時系列データである。
交通管制装置1の要求に基づかずに、走行車両情報を常に送信するように構成してもよい。
【0042】
また、管理部255は、対向車線に進入すれば障害物を回避可能であるとき、回避許可要求を、通信装置22を介して交通管制装置1に送信する。
交通管制装置1は、受信した各車両の目標走行経路情報と回避許可要求に基づいて、各車両に走行指示を送信する。自動運転制御装置25は、交通管制装置1から受信したどちらの車両を優先するかを含む走行指示に従って、車両の自動運転を行う。
【0043】
たとえば、管理部255は、交通管制装置1から受信した走行指示が、回避許可指示である場合には、対向車線に進入して障害物を回避する目標経路を車両制御指令生成部256に出力する。
走行指示が停止指示の場合には、特定地点の手前で停止する目標経路を車両制御指令生成部256に出力する。
なお、近隣車両201に対しても、減速指示、継続走行指示等の走行指示を出す場合もある。
走行指示が減速指示の場合には、特定地点を所定時刻以後に所定速度以下で通過する目標経路を車両制御指令生成部256に出力する。
継続走行指示の場合には、現在の速度を保って走行を継続する。
【0044】
管理部255は、交通管制装置1からの走行指示に応じて、通信部253およびナビゲーション装置24を介して、スピーカ24bおよびディスプレイ24cの一方または両方を用いて、走行状況を搭乗者に通知する。
【0045】
車両制御指令生成部256は、管理部255から出力された目標経路の指令に従って走行するように、目標速度、目標操舵角、方向指示器の操作指令等を決定し、目標速度を動力制御装置26およびブレーキ制御装置27に指令し、目標操舵角を自動操舵制御装置28に指令し、方向指示器の操作指令をライト制御装置29に指令する。
【0046】
なお、自動運転機能を有する車両20の構成は、車両製造メーカによって異なるため、本実施の形態1で説明した構成から異なってもよい。しかし、少なくとも、交通管制装置1に走行車両情報および回避許可要求を送信し、交通管制装置1から送信された走行指示に従って自動運転を行う機能を有する車両であれば、実施の形態1の交通管制システム1000を構成することができる。
【0047】
次に、自動運転制御装置25の各機能を実現するハードウエア構成を図7に基づいて説明する。
自動運転制御装置25が備えた処理回路により実現される。自動運転制御装置25は、図7に示すように、CPU等の演算処理装置80(コンピュータ)、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置81、データ通信を行う通信装置82等を備えている。
通信装置82は、車載ネットワーク21、アンテナ22aに接続され、データ通信を行う。
自動運転制御装置25の記憶装置81には、各機能のためのプログラムが記憶されている。自動運転制御装置25の各処理は、演算処理装置80が記憶装置81に記憶されたプログラムを実行し、記憶装置81、通信装置82等の他のハードウエアと協働することにより実現される。
【0048】
ここで、交通管制装置1の走行指示について、対象車両200と近隣車両201の3つの走行パターンについて図8図10に基づいて説明する。
【0049】
(1)対象車両停止-近隣車両通過
交通管制装置1により、近隣車両201が優先されると判定されたケースを図8で説明する。このとき、対象車両200には停止指示が送信される。停止指示で指定する停止位置203は、対象車両200が移動できる範囲で、障害物202との接触を回避できる位置に設定される。近隣車両201には、継続走行指示が送信される。
【0050】
(2)対象車両回避-近隣車両停止
交通管制装置1により、対象車両200が優先されると判定されたケースであって、近隣車両201が対象車両200に対して近くの位置にあるケースを図9で説明する。このとき、近隣車両201には、停止指示が送信され、対象車両200には回避許可指示が送信される。なお、停止指示で指定する停止位置204は、対象車両200が近隣車両201との接触を回避できる範囲で、設定される。
ここで、近隣車両201が対象車両200に対して近くの位置にあるとは、対象車両200と近隣車両201との距離が対象車両200と近隣車両201の走行速度を考慮した所定の距離よりも短い場合をいう。
【0051】
(3)対象車両回避-近隣車両減速
交通管制装置1により、対象車両200が優先されると判定されたケースであって、近隣車両201が対象車両200に対して、遠くの位置にあるケースを図10で説明する。このとき、近隣車両201には、減速指示が送信され、対象車両200には回避許可指示が送信される。なお、対象車両200の走行経路が阻害されないように、減速指示に基づく減速を開始する位置である減速位置205と速度が設定される。
ここで、近隣車両201が対象車両200に対して遠くの位置にあるとは、対象車両200と近隣車両201との距離が対象車両200と近隣車両201の走行速度を考慮した所定の距離よりも長い場合をいう。
【0052】
次に、図8図10で説明した対象車両200、近隣車両201の通行パターン例に対応する交通管制装置1の処理を図11のフローチャートに基づいて説明する。
この処理は、例えば一定の演算周期毎に、繰り返し実行される。
【0053】
ステップ101(S101)で、回避要求受信部41は対象車両200から回避許可要求の受信有無を判定する。回避許可要求がある場合には、ステップ102(S102)に進み、回避許可要求がない場合には処理を終了する。
【0054】
ステップ102(S102)で、走行車両情報要求部42は対象車両200および近隣車両201に走行車両情報の送信要求を送信する。近隣車両201として、対象車両200の対向車線を走行しており、最も近くにいる車両を選択することができる。すでに走行車両情報を受信している場合には、このステップ102(S102)をスキップするように構成してもよい。
【0055】
ステップ103(S103)で、走行車両情報受信部43は対象車両200および近隣車両201から走行車両情報を受信する。
【0056】
ステップ104(S104)で、走行経路重複判定部44は、対象車両200と近隣車両201の走行経路が重複する箇所があるか、すなわち、対象車両200が対向車線に進入した場合に、対象車両200と近隣車両201とが衝突するかを判定する。重複する箇所がない場合はステップ105(S105)に進み、重複する箇所がある場合にはステップ106(S106)に進む。
【0057】
ステップ105(S105)で、走行指示生成部46は、対象車両200に回避許可指示を送信して処理を終了する。
【0058】
ステップ106(S106)で、先に説明したように、優先度判定部45は対象車両200と近隣車両201間の優先度を判定する。
【0059】
ステップ107(S107)で、走行指示生成部46は、対象車両200と近隣車両201のそれぞれに走行指示を送信する。送信する走行指示は、先に図8図10で説明した通りである。
具体的には、対象車両200の優先度評価値が高い場合は、対象車両200に対して、回避許可指示を送信するとともに、衝突を回避するために近隣車両201に対して停止指示、または減速指示を送信する。
近隣車両201の優先度評価値が高い場合は、対象車両200に対して、停止指示を送信し、近隣車両201に対して、継続走行指示を送信する。
【0060】
なお、ステップ107(S107)で停止指示を送信する場合に、消防署の出口等、通常車両の停止が禁止されている場所を回避するように停止位置を設定するように構成することができる。
【0061】
なお、ステップ106(S106)で、対象車両200および近隣車両201の後方一定距離内に存在する後続車両の優先度評価値を用いて判定してもよい。その場合には、判定したうち最も優先度評価値の高い車両の優先度評価値を用いて以降の処理を行う。これにより、対象車両200のより後方に優先度評価値の高い車両が存在した場合でも、適切な交通を得ることができる。
【0062】
次に、車両が対象車両200である場合の自動運転制御装置25の処理を図12のフローチャートに基づいて説明する。
この処理は、例えば一定の演算周期毎に、繰り返し実行される。
【0063】
ステップ201(S201)で、センサ情報取得部251は、周辺監視装置25aから情報を取得する。この情報から、走行車線上に障害物202があるかどうか判定する。障害物202がある場合には、ステップ202(S202)に進み、障害物202がない場合にはステップ206(S206)に進む。
【0064】
ステップ202(S202)で、管理部255は、対向車線に進入して障害物202を回避できるか判定する。障害物202を回避できる場合は、ステップ203(S203)に進む。なお、障害物202を回避できない場合は、走行不可であることをナビゲーション装置24等により搭乗者に通知し、ステップ207(S207)に進む。
【0065】
ステップ203(S203)で、管理部255は、通信部253と通信装置22を通じて、対向車線に進入して障害物202を回避する目標走行経路情報および車両情報を含む走行車両情報と、回避許可要求を交通管制装置1に送信する。
【0066】
ステップ204(S204)で、管理部255は、交通管制装置1からの走行指示の指令を待機する。交通管制装置1から走行指示の指令があった場合にはステップ205(S205)に進む。一定時間以内に交通管制装置1からの指令なかった場合には、ステップ207(S207)に進む。
【0067】
ステップ205(S205)で、管理部255は、交通管制装置1からの走行指示の指令内容を判定する。停止指示の場合はステップ207(S207)に進み、回避許可指示の場合はステップ208(S208)に進む。
【0068】
ステップ206(S206)で、管理部255は、車両制御指令生成部256に、現状の車線を継続走行するように指令して処理を終了する。
【0069】
ステップ207(S207)で、管理部255は、車両制御指令生成部256に、障害物202の手前で停止するように指令して処理を終了する。停止する位置は、対象車両200が移動できる範囲で、障害物202を回避できる位置に設定される。停止指示に停止位置が含まれていた場合には、それに従ってもよい。
【0070】
ステップ208(S208)で、管理部255は、車両制御指令生成部256に、対向車線に進入して障害物202を回避するように指示して処理を終了する。
回避許可指示に近隣車両201に対する対向車線の停止位置の情報が含まれていた場合には、その地点を回避するように走行させる。
【0071】
次に、車両が近隣車両201である場合の自動運転制御装置25の処理を図13のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
ステップ301(S301)で、近隣車両201の自動運転制御装置25の管理部255は、交通管制装置1からの走行車両情報の送信要求の有無を判定する。走行車両情報の送信要求がない場合、ステップ305(S305)に進み、ある場合にはステップ302(S302)に進む。
【0073】
ステップ302(S302)は、管理部255は、通信部253と通信装置22を介して、交通管制装置1に自車の走行車両情報を送信する。
【0074】
ステップ303(S303)で、管理部255は、交通管制装置1からの走行指示の指令を待機する。交通管制装置1から走行指示の指令があった場合にはステップ304(S304)に進む。一定時間以内に交通管制装置1から指令がなかった場合には、ステップ305(S305)に進む。
【0075】
ステップ304(S304)で、管理部255は、交通管制装置1からの走行指示の指令内容を判定する。継続走行指示の場合はステップ305(S305)に進み、停止指示の場合はステップ306(S306)に進み、減速指示の場合はステップ307(S307)に進む。
【0076】
ステップ305(S305)で、管理部255は、車両制御指令生成部256に、現状の車線を継続走行するように指令して処理を終了する。
【0077】
ステップ306(S306)で、管理部255は、車両制御指令生成部256に、停止指示が示す停止位置に停止するように指令して処理を終了する。
【0078】
ステップ307(S307)で、管理部255は、車両制御指令生成部256に、減速指示が示す減速位置を所定の時刻に所定の速度を通過するように指令して処理を終了する。
【0079】
上記説明のように、実施の形態1の交通管制装置は、交通管制装置と、無線通信により交通管制装置に接続されてその走行経路が管制される複数の車両と、から構成される交通管制システムにおいて、走行車線を走行する第1の車両から、走行車線から対向車線に進入して走行することを要求する回避許可要求を受信する回避要求受信部と、対象車両から走行車両情報を受信し、対向車線を走行する近隣車両から走行車両情報を受信する走行車両情報受信部と、走行車両情報に含まれる各目標走行経路情報から対象車両と近隣車両の走行経路の重複を判定する走行経路重複判定部と、走行車両情報に含まれる各車両情報から対象車両と近隣車両のどちらの車両を優先するかを判定する優先度判定部と、優先度判定部の判定結果に基づいて対象車両と近隣車両に走行指示を与える走行指示生成部と、を備えるものである。
このため、実施の形態1では、車両の優先度を考慮し、適切な交通を確保できる交通管制装置が得られる。
【0080】
実施の形態2.
実施の形態2は、障害物が自己走行可能である場合に対応する交通管制装置に関するものである。
【0081】
実施の形態2の交通管制装置について、交通管制装置に係る対象車両、近隣車両、障害物の走行パターン例の説明図である図14図15、交通管制装置のハードウエア構成図である図16、交通管制装置に係るフローチャートである図17図18、および交通管制装置に係る対象車両のフローチャートである図19に基づいて、実施の形態1との差異を中心に説明する。
実施の形態2の図14図16において、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
【0082】
実施の形態2の交通管制装置1を含む交通管制システム1000の全体構成は、実施の形態1と同様図1である。
実施の形態1では、障害物は固定で移動しなかったが、実施の形態2では、障害物は自己走行可能である場合を想定している。
自己走行可能な障害物206の例として、例えば、通常の車両と同様の速度で走行車線を走行できる物流配送ロボット車、および乗客を乗せることができる自動運転バス等が挙げられる。
自己走行可能な障害物206は、交通管制装置1とネットワーク網2および基地局3を介して、通信可能であり、交通管制装置1に対して、走行車両情報を送信することを前提とする。また、交通管制装置1は、自己走行可能な障害物206が走行車線に沿って走行可能か判定でき、走行指示ができることを前提とする。例えば、路肩に寄って、後続車両を通過させることは、想定していない。
交通管制装置1で障害物が移動可能か判断できない、または走行指示できない場合は、実施の形態1で説明したように、障害物は固定で移動しないとして扱う。
なお、以降の説明では、自己走行可能な障害物206を、適宜障害物206と記載する。
【0083】
なお、第一の車両200、第二の車両201が交通管制装置1に送信する走行車両情報には、交通管制装置1の判定に必要な車両が待機できる許容待機時間を含む。
また、自己走行可能な障害物206が交通管制装置1に送信する走行車両情報には、少なくとも交通管制装置1の判定に必要な車両の種別、乗降に必要な停車時間を含む。
【0084】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に、第一の車両200が対向車線に進入すれば、自己走行可能な障害物206を回避可能な場合も想定している。
交通管制装置1は、第一の車両200が自己走行可能な障害物206が停止状態から走行車線に沿って走行方向に移動するのを待機できるか、および自己走行可能な障害物206に走行指示を送信して走行させることができることについても判定する。
なお、以降の説明では、わかりやすいように、実施の形態1と同様に、適宜第一の車両を「対象車両」、第二の車両を「近隣車両」と記載する。
【0085】
ここで、交通管制装置1の走行指示について、対象車両200、近隣車両201、および自己走行可能な障害物206に関する2つの走行パターンについて説明する。
【0086】
(1)自己走行可能な障害物206に走行を指示
交通管制装置1により障害物206が自己走行可能と判定された場合であって、障害物206に走行指示を出すケースを図14で説明する。このとき、対象車両200には自己走行可能な障害物206の走行に合わせて追従するように追従指示が送信される。近隣車両201には継続走行指示が送信される。
【0087】
(2)自己走行可能な障害物206の走行開始を待機
交通管制装置1により障害物206が自己走行可能と判定された場合であって、自己走行可能な障害物206の走行開始を待機するケースを図15で説明する。このとき、対象車両200には自己走行可能な障害物206から適切な距離だけ離れた待機位置207で停止するよう、待機指示が送信される。近隣車両201には継続走行指示が送信される。
【0088】
次に、図16に示す交通管制装置1の構成図について、実施の形態1の図2との差異を説明する。
実施の形態2における交通管制装置1では、障害物情報取得部47が追加されている。 通信部40~走行指示生成部46の機能については、実施の形態1と同様である。
障害物情報取得部47は、走行車線を監視するカメラ等の監視機器から得る障害物206の種別、および自己走行可能な障害物206から送信される走行車両情報に基づいて、障害物206は自己走行が可能かどうか、走行を開始するタイミングはいつか、あるいは命令可能かを判断する。
【0089】
次に、車両20のシステム構成、および自動運転制御装置25の構成について、実施の形態1の図4図5との差異を説明する。
実施の形態2の車両20のシステム構成は、実施の形態1と同じである。実施の形態2の自動運転制御装置25の構成は、実施の形態1の図5と同じであるが、管理部255の機能が異なる。自己走行可能な障害物206に対する対応が追加されている。具体的な管理部255の機能については、対象車両200の自動運転制御装置25の処理のフローチャート(図19)の説明の中で記載する。
【0090】
次に、図14図15で説明した対象車両200、近隣車両201、自己走行可能な障害物206の通行パターン例に対応する交通管制装置1の処理を図17図18のフローチャートに基づいて説明する。
【0091】
図17図18のフローチャートにおいて、ステップ401(S401)、ステップ403(S403)~ステップ408(S408)の動作は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
具体的対応は、S401→S101、S403→S102、S404→S103、S405→S104、S406→S105、S407→S106、S408→S107である。
【0092】
ステップ402(S402)において、障害物206が自己走行可能かどうか判定する。自己走行不可である場合にはステップ403(S403)に、自己走行可能である場合には図18に示すステップ409(S409)に進む。
【0093】
ステップ409(S409)において、障害物206に対して命令可能であるかどうか判定する。障害物206が命令可能であるとき、ステップ410(S410)に進み、命令可能でないときステップ403(S403)に進む。
【0094】
ステップ409(S409)において、障害物206が命令可能である場合とは、自動運転バス以外でも、たとえば、車両が他の運用システムに管理されている車両である場合が挙げられる。また、障害物206が命令不可のときとは、自動運転機能を有しない一般車両である場合が挙げられる。
【0095】
ステップ410(S410)において、障害物206が対象車両200の走行車両情報に含まれる許容待機時間以内に走行を開始するかどうか判定する。待機時間なしに走行を開始する場合にはステップ411(S411)に進む。一時待機する必要はあるが、許容待機時間以内に走行を開始する場合にはステップ413(S413)に進む。許容待機時間以内に走行を開始しない場合にはステップ403(S403)に進む。いつ走行を開始するかわからない場合もステップ403(S403)に進む。
ステップ410(S410)において、許容待機時間以内かどうかは、例えば、障害物206が自動運転バスであるとき、対象車両200の許容待機時間と乗客が乗降を完了するまでの停車時間と比較して判定する。
【0096】
ステップ411(S411)において、交通管制装置1は、自己走行可能な障害物206に走行を開始するように走行指示を送信し、ステップ412(S412)に進む。
【0097】
ステップ412(S412)において、交通管制装置1は、対象車両200に対して、自己走行可能な障害物206の走行に合わせて追従するように追従指示を送信し、処理を終了する。
【0098】
ステップ413(S413)において、交通管制装置1は、対象車両200へ待機指示を送信し、処理を終了する。
【0099】
次に、車両が対象車両200である場合の自動運転制御装置25の処理を図19のフローチャートに基づいて説明する。
【0100】
ステップ501(S501)からステップ504(S504)、ステップ506(S506)からステップ508(S508)までの動作は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
具体的対応は、S501→S201、S502→S202、S503→S203、S504→S204、S506→S206、S507→S207、S508→S208である。
【0101】
ステップ505(S505)で、管理部255は、交通管制装置1からの指令内容を判定する。
停止指示の場合はステップ507(S507)に進む。回避許可指示の場合はステップ508(S508)に進む。待機指示の場合はステップ509(S509)に進む。追従指示の場合にはステップ510(S510)に進む。
【0102】
ステップ509(S509)では、管理部255は、車両制御指令生成部256に、障害物206の手前で待機するように指令して、処理を終了する。停止する位置は、安全を確保できる範囲で、障害物206の十分近くに設定される。
【0103】
ステップ510(S510)で、管理部255は、車両制御指令生成部256に、障害物206の走行を一定距離で追従するように、指令して処理を終了する。
【0104】
なお、車両が近隣車両201であった場合の自動運転制御装置25の処理は、実施の形態1と同様である。すなわち、実施の形態1の図13のフローチャートに基づいて、処理が行われる。
【0105】
以上説明したように、実施の形態2の交通管制装置は、障害物が自己走行可能である場合にも適切に対応できるものである。
したがって、実施の形態2の交通管制装置は、車両の優先度を考慮し、適切な交通を確保できる交通管制装置が得られる。さらに、実施の形態2の交通管制装置は、障害物が自己走行可能である場合にも適切に対応できる。
【0106】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるものではなく、単独で、または様々な組合せで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組合せる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0107】
1 交通管制装置、2 ネットワーク網、3 基地局、20 車両、
21 車載ネットワーク、22 通信装置、22a アンテナ、23 ロケータ、
24 ナビゲーション装置、24a ヒューマンインターフェイス、24b スピーカ、24c ディスプレイ、25 自動運転制御装置、25a 周辺監視装置、
26 動力制御装置、26a 動力機、27 ブレーキ制御装置、
27a 電動ブレーキ装置、28 自動操舵制御装置、28a 電動操舵装置、
29 ライト制御装置、29a 方向指示器、40 通信部、41 回避要求受信部、
42 走行車両情報要求部、43 走行車両情報受信部、44 走行経路重複判定部、
45 優先度判定部、46 走行指示生成部、47 障害物情報取得部、
70 演算処理装置、71 記憶装置、72 通信装置、80 演算処理装置、
81 記憶装置、82 通信装置、200 第一の車両、200 対象車両、
201 第二の車両、201 近隣車両、202 障害物、203 停止位置、
204 停止位置、205 減速位置、206 自己走行可能な障害物、
207 待機位置、251 センサ情報取得部、252 認知部、253 通信部、
254 目標走行経路生成部、255 管理部、256 車両制御指令生成部、
1000 交通管制システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2022-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通管制装置と、無線通信により前記交通管制装置に接続され、その走行経路が前記交通管制装置で管制される複数の車両と、を備える交通管制システムに用いられる交通管制装置において、
走行車線を走行する第1の車両から、前記走行車線から対向車線に進入して走行することを要求する第1要求を受信する第1要求受信部と、
前記第1の車両から第1の走行車両情報を受信し、前記対向車線を走行する第2の車両から第2の走行車両情報を受信する走行車両情報受信部と、
前記第1の走行車両情報に含まれる第1の目標走行経路情報および前記第2の走行車両情報に含まれる第2の目標走行経路情報から前記第1の車両の走行経路と前記第2の車両の走行経路の重複を判定する走行経路重複判定部と、
前記第1の走行車両情報に含まれる第1の車両情報および前記第2の走行車両情報に含まれる第2の車両情報から前記第1の車両と前記第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定する優先度判定部と、
前記優先度判定部の判定結果に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両に走行指示を与える走行指示生成部と、
さらに、前記走行車線を監視する監視機器、および前記走行車線上の障害物から受信した車両情報に基づいて、
前記障害物が自己走行可能かどうか、および前記障害物に対して命令可能かを判断する、障害物情報取得部と、を備える交通管制装置。
【請求項2】
前記優先度判定部は、優先度に応じてそれぞれの評価点が設定されている複数のルールを備え、前記第1の車両と前記第2の車両に対して、前記第1の車両情報および前記第2の車両情報に基づいて、前記ルールが満たされるか否かを判定し、満たされたルールの前記評価点を合計して優先度評価値とし、前記第1の車両の優先度評価値および前記第2の車両の優先度評価値に基づいて、前記第1の車両および前記第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定する請求項1に記載の交通管制装置。
【請求項3】
前記走行経路重複判定部は、前記第1の車両の前記走行経路と前記第2の車両の前記走行経路とが重複すると判定した場合は、
前記走行指示は、前記第1の車両の優先度評価値の方が前記第2の車両の優先度評価値よりも高い場合は、前記第1の車両に対向車線に侵入して走行することを許可するとともに、前記第2の車両と前記第1の車両との距離が前記第1の車両と前記第2の車両の走行速度を考慮した所定の距離よりも短い場合は前記第2の車両に停止を指示するものであり、前記第2の車両と前記第1の車両との距離が前記所定の距離よりも長い場合は、前記第2の車両に減速を指示するものであり、
前記第2の車両の優先度評価値の方が前記第1の車両の優先度評価値よりも高い場合は、前記第1の車両に停止を指示し、前記第2の車両に走行を継続する指示を行うものであり、
前記走行経路重複判定部は、前記第1の車両の前記走行経路と前記第2の車両の前記走行経路とが重複しないと判定した場合は、
前記走行指示は、前記第1の車両に対向車線に侵入して走行することを許可し、前記第2の車両に走行を継続する指示を行う、請求項2に記載の交通管制装置。
【請求項4】
前記第1の車両および前記第2の車両から受信する前記目標走行経路情報は、少なくとも前記第1の車両および前記第2の車両の将来の各時刻における車両の位置、車両の進行方向、車両の速度、走行車線、車線変更を行う位置の内の1つを含む時系列の走行計画情報である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交通管制装置。
【請求項5】
前記優先度判定部は、さらに前記第1の車両の後続車の優先度評価値、および前記第2の車両の後続車の優先度評価値を含めて、前記第1の車両と前記第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定し、
前記走行指示生成部は、前記優先度判定部が判定した結果に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両に前記走行指示を与える請求項1に記載の交通管制装置。
【請求項6】
前記第1の車両が前記走行車線から前記対向車線に進入して走行することを要求する原因が、自己走行可能な障害物である場合、前記障害物情報取得部は、前記自己走行可能な障害物が命令可能であると判定し、
前記自己走行可能な障害物が前記第1の車両の待機時間なしに走行を開始する場合は、
前記第1の車両に前記対向車線に侵入せずに、前記走行車線を継続して、前記自己走行可能な障害物に追従して走行する指示を行い、
前記第2の車両に走行を継続する指示を行い、
前記自己走行可能な障害物に対して、走行を開始する指示を行い、
前記自己走行可能な障害物が、前記第1の車両の許容待機時間内に走行を開始する場合は、
前記第1の車両に前記対向車線に侵入せずに、一旦待機し、前記自己走行可能な障害物が走行を開始した場合、前記自己走行可能な障害物に追従して走行する指示を行い、
前記第2の車両に走行を継続する指示を行い、
前記自己走行可能な障害物に対して、前記許容待機時間内に走行を開始する指示を行う請求項に記載の交通管制装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本願に開示される交通管制装置は、交通管制装置と、無線通信により交通管制装置に接続され、その走行経路が交通管制装置で管制される複数の車両と、を備える交通管制システムに用いられる交通管制装置において、走行車線を走行する第1の車両から、走行車線から対向車線に進入して走行することを要求する第1要求を受信する第1要求受信部と、第1の車両から第1の走行車両情報を受信し、対向車線を走行する第2の車両から第2の走行車両情報を受信する走行車両情報受信部と、第1の走行車両情報に含まれる第1の目標走行経路情報および第2の走行車両情報に含まれる第2の目標走行経路情報から第1の車両の走行経路と第2の車両の走行経路の重複を判定する走行経路重複判定部と、第1の走行車両情報に含まれる第1の車両情報および第2の走行車両情報に含まれる第2の車両情報から第1の車両と第2の車両のどちらの車両を優先するかを判定する優先度判定部と、優先度判定部の判定結果に基づいて第1の車両と第2の車両に走行指示を与える走行指示生成部と、さらに、走行車線を監視する監視機器、および走行車線上の障害物から受信した車両情報に基づいて、障害物が自己走行可能かどうか、および障害物に対して命令可能かを判断する、障害物情報取得部と、を備えるものである。