(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177405
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】アンテナモジュール及びコイルパターン付き磁性シート
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/00 20060101AFI20221124BHJP
H01Q 19/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083624
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA03
5J020BC10
5J020BD03
5J020CA03
5J020CA05
(57)【要約】
【課題】アンテナモジュールを構成する一部のコイルを事後的に変更可能なアンテナモジュールを提供する。
【解決手段】本開示の一実施態様によるアンテナモジュール1は、アンテナコイル13が設けられた基板10と、ブースターコイル23及びブースターコイル23と重なる磁性シート27が設けられた基材20と、アンテナコイル13と磁性シート27が重なるよう、基板10と基材20を接着する接着層30とを備える。これにより、ブースターコイル23を事後的に変更することが可能となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルが設けられた基板と、
第2コイル及び前記第2コイルと重なる磁性シートが設けられた基材と、
前記第1コイルと前記磁性シートが重なるよう、前記基板と前記基材を接着する接着層と、を備えるアンテナモジュール。
【請求項2】
前記基材及び前記磁性シートがフレキシブル性を有する、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記第1コイルは前記基板の一方の表面に設けられ、
前記第2コイルは前記基材の一方の表面に設けられ、
前記磁性シートは前記基材の他方の表面に設けられ、
前記接着層は、前記基板の他方の表面と前記基材の前記一方の表面を接着し、
前記磁性シートと前記基板の前記他方の表面の距離は、前記第2コイルが設けられている領域における距離よりも前記第2コイルが設けられていない領域における距離の方が近い、請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記基材は前記基板よりも薄く、前記第2コイルと前記第1コイルの距離は、前記第2コイルと前記磁性シートの距離よりも大きい、請求項3に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記基材は前記第2コイルよりも薄く、前記第2コイルの一部は前記磁性シートによって径方向から覆われる、請求項4に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記基材の前記一方及び他方の表面にそれぞれ設けられ、前記基材を介して対向する一対のキャパシタ電極パターンをさらに備え、
前記第2コイルの内周端及び外周端は、前記一対のキャパシタ電極パターンに接続される、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記第1コイルは、前記基板の前記一方の表面から離れるにつれてパターン幅が太くなる断面形状を有し、
前記第2コイルは、前記基材の前記一方の表面から離れるにつれてパターン幅が細くなる断面形状を有する、請求項3乃至6のいずれか一項に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
フレキシブル性を有する基材と、
前記基材の表面に設けられた閉回路を構成するコイルパターンと、
前記コイルパターンと重なるよう、前記基材の表面に設けられたフレキシブル性を有する磁性シートと、を備え、
前記基材は、前記磁性シート及び前記コイルパターンの導体厚よりも薄い、コイルパターン付き磁性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアンテナモジュール及びコイルパターン付き磁性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたアンテナモジュールは、基板の表裏にアンテナコイルとブースターコイルが形成された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたアンテナモジュールのように、アンテナコイルが形成された基板の裏面にブースターコイルを形成すると、ブースターコイルを事後的に変更することができなかった。このように、複数のコイルを有する従来のアンテナモジュールにおいては、一部のコイルを事後的に設計変更することが困難であった。
【0005】
したがって、本開示は、一部のコイルの事後的な設計変更が変更可能なアンテナモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるアンテナモジュールは、第1コイルが設けられた基板と、第2コイル及び第2コイルと重なる磁性シートが設けられた基材と、第1コイルと磁性シートが重なるよう、基板と基材を接着する接着層とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、アンテナモジュールを構成する一部のコイルを事後的に変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態によるアンテナモジュール1の外観を示す略分解斜視図である。
【
図2】
図2は、基材20の一方の表面21から見たパターン形状を示す略平面図であり、(a)は基材20の一方の表面21に形成されたパターンを示し、(b)は基材20の他方の表面22に形成されたパターンを示している。
【
図3】
図3は、
図2(a)に示すA-A線に沿った略断面図である。
【
図4】
図4は、アンテナコイル13とブースターコイル23の位置関係を説明するための略平面図である。
【
図5】
図5は、アンテナモジュール1の部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態によるアンテナモジュール1の外観を示す略分解斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態によるアンテナモジュール1は、エポキシ樹脂などからなるリジッドな基板10と、PET樹脂などからなるフレキシブルな基材20と、基板10と基材20を接着する接着層30とを備えている。基板10の一方の表面11には、NFC(近距離無線通信)に用いる第1コイルの一例であるアンテナコイル13が形成されている。また、基材20の一方の表面21には、通信距離を拡大するためのコイルパターンであって第2コイルの一例であるブースターコイル23が形成されている。
【0012】
図2は、基材20の一方の表面21から見たパターン形状を示す略平面図であり、(a)は基材20の一方の表面21に形成されたパターンを示し、(b)は基材20の他方の表面22に形成されたパターンを示している。
図3は、
図2(a)に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0013】
図2(a)に示すように、基材20の一方の表面21には、複数ターンに亘って周回するブースターコイル23が形成されている。
図2(a)に示す例では、ブースターコイル23のターン数が5ターンであり、その外形が矩形であるが、ブースターコイル23のターン数や形状がこれに限定されるものではない。また、
図2(a)に示す例では、基材20の一方の表面21にブースターコイル23を設けているが、基材20の他方の表面22にブースターコイル23を設けても構わないし、基材20の一方の表面21及び他方の表面22の両方にブースターコイル23を設けても構わない。ブースターコイル23の内周端は、キャパシタ電極パターン24に接続されている。ブースターコイル23の外周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体25を介して、
図2(b)に示すキャパシタ電極パターン26に接続されている。
図3に示すように、キャパシタ電極パターン24とキャパシタ電極パターン26は基材20を介して対向しており、これによりキャパシタが構成される。このように、ブースターコイル23は、両端がキャパシタのキャパシタ電極パターン24,26に接続されることにより、外部回路に接続されない閉回路を構成する。
【0014】
図3に示すように、基材20の他方の表面22には磁性シート27が形成されており、これによりコイルパターン付き磁性シートSが構成される。磁性シート27は、パーマロイなどの金属磁性粉と樹脂を混合した複合磁性材料からなり、フレキシブル性を有している。上述の通り、基材20自体もフレキシブル性を有していることから、コイルパターン付き磁性シートSの全体がフレキシブル性を有する。磁性シート27は、平面視でブースターコイル23と重なるよう、基材20の他方の表面22の全面に設けられているとともに、キャパシタ電極パターン26を埋め込むよう、キャパシタ電極パターン26の上面及び側面を覆っている。キャパシタ電極パターン26と磁性シート27の間には、絶縁性を確保するための絶縁フィルムを設けても構わない。或いは、複合磁性材料からなる磁性シート27の代わりに、フレキシブル性を有するフィルム状の磁性シート27を用い、両面テープなどによって基材20の他方の表面22に貼り付けても構わない。
【0015】
このような構成を有するコイルパターン付き磁性シートSの表面21は、接着層30を介して基板10の他方の表面12に接着される。コイルパターン付き磁性シートSを基板10に接着すると、平面視でアンテナコイル13と磁性シート27が重なるとともに、
図4に示すように、平面視でアンテナコイル13の開口領域とブースターコイル23が重なる。アンテナコイル13の内周端14及び外周端15は、図示しないNFC回路に接続される。NFC回路は、基板10自体に実装されていても構わないし、基板10とは別の基板に実装されていても構わない。
【0016】
このように、本実施形態によるアンテナモジュール1は、アンテナコイル13が形成された基板10とブースターコイル23が形成された基材20が別部材であることから、ブースターコイル23をアンテナコイル13とは別に設計及び製造することができる。このため、アンテナコイル13を作製した後、ブースターコイル23の設計を事後的に変更することが可能となる。しかも、コイルパターン付き磁性シートSの全体がフレキシブル性を有していることから、基板10の他方の表面12に凹凸が存在する場合であっても、コイルパターン付き磁性シートSを基板10に密着させることが可能となる。
【0017】
図5は、本実施形態によるアンテナモジュール1の部分的な断面図である。
【0018】
図5に示すように、コイルパターン付き磁性シートSを基板10に接着すると、基材20及び磁性シート27のフレキシブル性により、ブースターコイル23が形成されている部分において基材20及び磁性シート27が変形する。つまり、ブースターコイル23が形成されていない領域においては、基材20の一方の表面21が接着層30と直接接する一方、ブースターコイル23が形成されている領域においては、基材20と接着層30の間にブースターコイル23が介在する。これにより、磁性シート27と基板10の他方の表面12の距離は、ブースターコイル23が形成されている領域における距離よりもブースターコイル23が形成されていない領域における距離の方が近くなる。その結果、アンテナコイル13と磁性シート27の距離が近くなることから、通信距離を拡大することができる。
【0019】
また、本実施形態においては、基板10の厚さT1よりも基材20の厚さT2の方が薄く、例えば基板10の厚さT1が約0.8mmであるのに対し、基材20の厚さT2は約23μm程度である。これにより、ブースターコイル23とアンテナコイル13の距離は、ブースターコイル23と磁性シート27の距離よりも大きくなることから、磁性シート27と向かい合うように配置されるバッテリーなどの金属部材40がアンテナコイル13に与える影響を低減することができる。しかも、基材20の厚さT2は、ブースターコイル23の厚さT3よりも薄く、これによりブースターコイル23の一部は磁性シート27によって径方向から覆われる。これにより、ブースターコイル23による通信距離の拡大効果をより高めることが可能となる。ブースターコイル23の厚さT3は例えば35μm程度である。磁性シート27の厚さT4については、十分な磁気特性とフレキシブル性が確保される厚さである必要があり、例えば100μm程度である。このように、基材20の厚さT2をブースターコイル23の厚さT3及び磁性シート27の厚さT4よりも薄くすることにより、十分なフレキシブル性を確保することが可能となる。
【0020】
さらに、基板10の一方の表面11に設けられたアンテナコイル13は、基板10の一方の表面11から離れるにつれてパターン幅が太くなる断面形状を有するのに対し、基材20の一方の表面21に設けられたブースターコイル23は、基材20の一方の表面21から離れるにつれてパターン幅が細くなる断面形状を有している。これにより、アンテナコイル13とブースターコイル23の間に生じる浮遊容量が低減することから、浮遊容量に起因する特性の変化を低減することが可能となる。
【0021】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0022】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0023】
本開示の一実施態様によるアンテナモジュールは、第1コイルが設けられた基板と、第2コイル及び第2コイルと重なる磁性シートが設けられた基材と、第1コイルと磁性シートが重なるよう、基板と基材を接着する接着層とを備える。これによれば、第2コイルを事後的に変更することが可能となる。
【0024】
また、基材及び磁性シートはフレキシブル性を有していても構わない。これによれば、基板が凹凸を有している場合であっても、基材を基板に密着させることが可能となる。
【0025】
また、第1コイルは基板の一方の表面に設けられ、第2コイルは基材の一方の表面に設けられ、磁性シートは基材の他方の表面に設けられ、接着層は基板の他方の表面と基材の一方の表面を接着し、磁性シートと基板の他方の表面の距離は、第2コイルが設けられている領域における距離よりも第2コイルが設けられていない領域における距離の方が近くても構わない。これによれば、第1コイルと磁性シートの距離を近づけることができる。
【0026】
また、基材は基板よりも薄く、これにより第2コイルと第1コイルの距離は、第2コイルと磁性シートの距離よりも大きくても構わない。これによれば、磁性シートと向かい合うように配置される金属部材の影響を低減することができる。
【0027】
また、基材は第2コイルよりも薄く、第2コイルの一部は磁性シートによって径方向から覆われても構わない。これによれば、第2コイルによる通信距離の拡大効果をより高めることが可能となる。
【0028】
また、アンテナモジュールは、基材の一方及び他方の表面にそれぞれ設けられ、基材を介して対向する一対のキャパシタ電極パターンをさらに備え、第2コイルの内周端及び外周端は、一対のキャパシタ電極パターンに接続されていても構わない。これによれば、チップコンデンサなどを用いることなく、共振周波数を調整することが可能となる。
【0029】
また、第1コイルは、基板の一方の表面から離れるにつれてパターン幅が太くなる断面形状を有し、第2コイルは、基材の一方の表面から離れるにつれてパターン幅が細くなる断面形状を有していても構わない。これによれば、浮遊容量に起因する特性の変化を低減することが可能となる。
【0030】
本開示の一実施態様によるコイルパターン付き磁性シートは、フレキシブル性を有する基材と、基材の表面に設けられた閉回路を構成するコイルパターンと、コイルパターンと重なるよう、基材の表面に設けられたフレキシブル性を有する磁性シートとを備え、基材は、磁性シート及びコイルパターンの導体厚よりも薄い。これによれば、アンテナコイルが設けられた基板に接着することによって、通信距離を拡大することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 アンテナモジュール
10 基板
11 基板の一方の表面
12 基板の他方の表面
13 アンテナコイル
14 アンテナコイルの内周端
15 アンテナコイルの外周端
20 基材
21 基材の一方の表面
22 基材の他方の表面
23 ブースターコイル
24,26 キャパシタ電極パターン
25 ビア導体
27 磁性シート
30 接着層
40 金属部材
S コイルパターン付き磁性シート