(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177418
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20221124BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20221124BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20221124BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20221124BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221124BHJP
B60W 20/19 20160101ALI20221124BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20221124BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20221124BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20221124BHJP
F02D 41/10 20060101ALI20221124BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20221124BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20221124BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20221124BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20221124BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60W10/26 900
B60W10/08 900
B60W20/19
B60W20/16
B60W20/00 900
F01N3/18 D
F02D41/10
F02D45/00 364Z
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083657
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 紳介
【テーマコード(参考)】
3D202
3G091
3G301
3G384
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB01
3D202BB09
3D202BB11
3D202BB18
3D202BB53
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3D202FF02
3G091AA02
3G091AA14
3G091AB01
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3G091CB08
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3G091EA07
3G091EA18
3G301JA03
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3G301KA12
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3G384AA28
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3G384FA06Z
3G384FA46Z
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3G384FA79Z
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC05
5H125BD17
5H125CA02
5H125EE27
5H125EE31
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】ドライバビリティと排気浄化性能を両立できる電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】電動車両は、電動車両に搭載される内燃機関と、電動車両の駆動軸を駆動可能な第1回転電機と、第1回転電機に電力を供給する駆動用電池と、を有する。電動車両の制御装置は、内燃機関の暖機完了前に、駆動軸に伝達する駆動出力が増大することで駆動用電池から第1回転電機に供給する第1電力によって第1回転電機を駆動する第1駆動出力が、駆動出力に対して不足する場合、第1電力を、駆動用電池が供給可能な電力の最大値である電池出力最大値に所定期間維持し、駆動出力に対して不足する出力を、内燃機関を用いた第2駆動出力によって補う第1出力制御を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両に搭載される内燃機関と、前記電動車両の駆動軸を駆動可能な第1回転電機と、前記第1回転電機に電力を供給する駆動用電池と、を有する電動車両の制御装置であって、
前記内燃機関の暖機完了前に、前記駆動軸に伝達する駆動出力が増大することで前記駆動用電池から前記第1回転電機に供給する第1電力によって前記第1回転電機を駆動する第1駆動出力が、前記駆動出力に対して不足する場合、
前記第1電力を、前記駆動用電池が供給可能な電力の最大値である電池出力最大値に所定期間維持し、
前記駆動出力に対して不足する出力を、前記内燃機関を用いた第2駆動出力によって補う第1出力制御を実行する、
電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関により駆動されて発電する発電機を備え、
前記第1出力制御は、前記内燃機関により前記発電機を駆動させることで発生する電力を用いて前記第1回転電機を駆動する、
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記第2駆動出力は、前記駆動出力と、前記電池出力最大値時の前記第1駆動出力との差分である、
請求項1または2に記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
前記所定期間が経過した場合、前記第1電力を減少させることによって前記第1駆動出力を減少させ、前記第1駆動出力の減少に対応して前記内燃機関を用いた前記第2駆動出力を増加させる第2出力制御を実行する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
前記第1出力制御中の前記内燃機関の出力増加率を第1増加率に設定し、
前記第2出力制御中の、前記出力増加率を前記第1増加率よりも小さい第2増加率に設定する、
請求項4に記載の電動車両の制御装置。
【請求項6】
前記所定期間が経過したのち、前記駆動出力がさらに増大した場合、
前記第1電力を前記電池出力最大値にするとともに、前記内燃機関の出力を増加させる第3出力制御を実行する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【請求項7】
前記電動車両は、前記内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置を有し、
前記排気浄化装置の温度を取得し、
前記排気浄化装置が活性化する所定温度未満の場合、前記第1出力制御を実行し、
前記排気浄化装置が前記所定温度以上の場合、前記内燃機関を用いた前記第2駆動出力を優先する第4出力制御を実行する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関を搭載する電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関を搭載する電動車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置として触媒を搭載する電動車両を開示している。このような触媒は、排気浄化性能を発揮するために暖機して活性化する必要がある。特許文献1は、触媒の活性化が必要なときには、モータの上限出力を短期間だけ高め、触媒の活性が促進可能な活性促進モードで内燃機関を運転する電動車両の制御装置をさらに開示している。特許文献1の電動車両の制御装置は、排気浄化性能の悪化と燃費の悪化を回避することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電動車両は、排気浄化装置を暖機している最中であっても、電動車両のユーザのアクセル操作に合わせて電動車両を加速させるドライバビリティが必要である。このようなドライバビリティを電動車両が発揮するためには、内燃機関およびモータが安定して出力する必要がある。特許文献1の電動車両の制御装置は、モータの上限出力を短期間だけ高める点を開示しているが、モータおよび内燃機関からの出力を安定的に出力するための制御方法については開示していない。
【0005】
本開示の課題は、ドライバビリティと排気浄化性能とを両立できる電動車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電動車両は、電動車両に搭載される内燃機関と、電動車両の駆動軸を駆動可能な第1回転電機と、第1回転電機に電力を供給する駆動用電池と、を有する。電動車両の制御装置は、内燃機関の暖機完了前に、駆動軸に伝達する駆動出力が増大することで駆動用電池から第1回転電機に供給する第1電力によって第1回転電機を駆動する第1駆動出力が、駆動出力に対して不足する場合、第1電力を、駆動用電池が供給可能な電力の最大値である電池出力最大値に所定期間維持し、駆動出力に対して不足する出力を、内燃機関を用いた第2駆動出力によって補う第1出力制御を実行する。
【0007】
この電動車両の制御装置によれば、駆動出力に対して第1駆動出力が不足する場合、所定期間、第1電力を電池出力最大値に維持しつつ、内燃機関を用いた第2駆動出力によって第1駆動出力を補う。これによって、電動車両として安定した出力が得られる一方、内燃機関の負荷は抑制できる。この結果、この電動車両の制御装置は、ドライバビリティと排気浄化性能とを両立できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ドライバビリティと排気浄化性能とを両立できる電動車両の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の実施形態による電動車両に搭載された内燃機関のシステム図。
【
図3】本開示の実施形態による電動車両の制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【
図4】本開示の実施形態による電動車両の排気浄化装置暖機中の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による電動車両1は、四輪駆動型のハイブリッド自動車である。電動車両1は、内燃機関(ENG)2と、発電機(GEN)4と、フロントモータ(第1回転電機の一例:FrM)6と、リアモータ(RM)8と、駆動用電池(BT)10と、制御装置(HVECU)20と、アクセルペダル21と、外部給電装置22と、を有する。
【0012】
本実施形態の電動車両1は、フロントモータ6がトランスアクスル16を介して前輪12の前輪駆動軸12aを駆動する。リアモータ8は、減速機8cを介して後輪14の後輪駆動軸14aを駆動する。フロントモータ6は、フロントインバータ18を介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第1電力)が供給される。
【0013】
フロントインバータ18は、フロントモータ制御装置(FrMCU)6aと、発電機4を制御する発電機制御装置(GCU)4aと、を有する。フロントモータ制御装置6aは、制御装置20から信号を取得し、フロントモータ6が所望の運転状態となるようにフロントモータ6の回生と力行を制御する。リアモータ8も同様に、リアインバータ8bを介して駆動用電池10と接続され、駆動用電池10から電力(第1電力)が供給される。リアインバータ8bは、リアモータ制御装置(RMCU)8aを有する。リアモータ制御装置8aは、制御装置20から信号を取得し、リアモータ8が所望の運転状態となるようにリアモータ8の回生と力行を制御する。
【0014】
内燃機関2は、トランスアクスル16を介して発電機4を駆動する。内燃機関2は、燃料タンク(Fuel TANK)23から供給される燃料が燃焼することで駆動する。内燃機関2の各種装置および各種センサは、エンジン制御装置(ENG-ECU)2aと電気的に接続される。エンジン制御装置2aは、制御装置20からの信号を取得し、内燃機関2が所望の運転状態となるように制御する。トランスアクスル16は、内燃機関2の回転速度を増幅し発電機4に伝達する。また、本実施形態のトランスアクスル16は、クラッチ16aを有する。クラッチ16aは、内燃機関2とフロントモータ6との間および内燃機関2と前輪駆動軸12aとの間で動力を伝達および遮断する。内燃機関2は、トランスアクスル16のクラッチ16aを介して前輪駆動軸12aに接続され、前輪駆動軸12aを駆動する。
【0015】
図2に示すように、内燃機関2は、少なくとも、スロットル弁2bと、燃料噴射弁2cと、排気管2dと、排気浄化装置2eと、を有する。本実施形態では、内燃機関2は、排気管2dが内燃機関2から電動車両1の後方に向かって延びる後方排気型のものである。内燃機関2は、排気管2dを介して排気浄化装置2eに接続される。また、本実施形態では、内燃機関2は、マルチインジェクション方式のガソリンエンジンである。内燃機関2は、吸気ポート2fに配置された燃料噴射弁2cによって燃料を噴射し、スロットル弁2bによって吸入空気量を調整することにより出力を調整する。しかし、内燃機関2は、気筒2gに直接燃料を噴射する直噴方式のガソリンエンジンやディーゼルエンジンであってもよい。さらに、内燃機関2は、マルチインジェクション方式および直噴方式を併用するガソリンエンジンであってもよい。また、内燃機関2は、このほか排気循環弁2iおよび排気循環通路2jを含む排気循環装置などの装置を含んでもよい。
【0016】
排気浄化装置2eは、内燃機関2の排気を浄化する。本実施形態では、排気浄化装置2eは、排気に含まれる炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物を酸化または還元させて浄化する三元触媒である。このような三元触媒は、少なくとも排気浄化装置2eの上流に配置されたセンサ(本実施形態ではリニア空燃比センサまたは酸素センサ)2hによって、浄化状態を検知する。しかし、排気浄化装置2eは、このほか酸素吸蔵機能、窒素吸蔵機能を有する触媒を含んでもよい。また、排気浄化装置2eは、燃料の燃え残りを吸蔵するガソリンパーティキュレートフィルタ、またはディーゼルパーティキュレートフィルタなどの装置を含んでもよい。
【0017】
図1に示すように、発電機4は、内燃機関2と接続され、内燃機関2によって駆動されることにより発電する。発電機4によって発電された電力(第2電力)は、駆動用電池10を充電可能であるとともに、フロントインバータ18およびリアインバータ8bを介してフロントモータ6およびリアモータ8(以下明細書において各モータと記す)に供給可能である。本実施形態では、発電機4はモータジェネレータであり、発電に加えて内燃機関2を回転駆動することによって内燃機関2をモータリングすることができる。発電機4は、内燃機関2から駆動される場合、発電機4に負荷を与えることで発電する。一方、発電機4は、駆動用電池10から電力が供給され力行することによって内燃機関2を駆動しモータリングさせる。発電機4は、フロントインバータ18に設けられた発電機制御装置4aによって制御される。発電機制御装置4aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20からの信号を取得し、発電機4が所望の運転状態となるように発電と力行を制御する。
【0018】
駆動用電池10は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルで構成された図示しない電池モジュールを有する。駆動用電池10は、各モータの電源として機能する。さらに駆動用電池10は、電池モジュールの充電率(State Of Charge、以下SOC)の算出、電池モジュールの劣化状態(State Of Health 以下SOH)、および電池モジュールの電圧Bvおよび電池温度Btmpの検出を行う電池モニタリングユニット(BMU)10aを有する。電池モニタリングユニット10aは、駆動用電池10の電圧Bv、充電率SOC、劣化状態SOH、および電池温度Btmpを取得し、制御装置20に送信する。
【0019】
制御装置20は、少なくとも走行モードの切り替えをする制御と、各走行モードにおいて、内燃機関2に発電させる発電制御と、内燃機関2を発電機4によって駆動するモータリング制御と、を実行する。
【0020】
本実施形態では、制御装置20は、速度V、充電率SOC、およびアクセル開度Thなどの情報に基づいて、クラッチ16aを制御することによって、パラレルモード、シリーズモード、およびEVモードの中から、いずれかにひとつの走行モードに切り替える。パラレルモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを接続し、内燃機関2とフロントモータ6の両方によって前輪駆動軸12aを駆動する。このとき、フロントモータ6には、駆動用電池10から出力される電力(第1電力)、および発電機4で発電した電力(第2電力)のいずれか一方、または両方が供給される。リアモータ8も同様に駆動用電池10からの電力(第1電力)、および発電機4で発電した電力(第2電力)のいずれか一方、または両方が供給され、後輪駆動軸14aを駆動する。EVモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、駆動用電池10の電力(第1電力)を各モータに供給し、各モータが前輪駆動軸12aおよび後輪駆動軸14a(以下明細書において各駆動軸と記す)を駆動する。
【0021】
シリーズモードでは、制御装置20は、クラッチ16aを開放し、内燃機関2で発電機4を駆動し、発電機4で発電した第2電力を各モータに供給する。また、制御装置20は、第2電力によっては各モータが各駆動軸を駆動する駆動力が不足する場合、駆動用電池10からも各モータに第1電力を供給する。なお、パラレルモード、およびシリーズモードにおいて、内燃機関2によって発電した発電電力の一部を駆動用電池10に供給することによって駆動用電池10を充電してもよい。
【0022】
制御装置20は、パラレルモード、シリーズモード、およびEVモードの各走行モードにおいて、内燃機関2に要求するエンジン要求トルクETqを演算し、エンジン制御装置2aに送信する。エンジン制御装置2aは、エンジン要求トルクETqを取得し、エンジン要求トルクETqを達成できるように、内燃機関2を制御する。制御装置20は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。制御装置20は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両1が、所望の運転状態となるように各装置を制御する。
【0023】
また、本実施形態では、エンジン制御装置2a、発電機制御装置4a、フロントモータ制御装置6a、リアモータ制御装置8a、および電池モニタリングユニット10aを含む各種制御装置が、それぞれ制御装置20と別に設けられる。各種制御装置は、それぞれ制御装置20と電気的に接続される。しかし、各種制御装置は、制御装置20と一体で設けられてもよい。各種制御装置は、制御装置20と同様に、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等と、を含むマイクロコンピュータによって構成される。
【0024】
アクセルペダル21は、電動車両1のドライバが踏み込み操作することで、電動車両1の加減速を制御するペダルである。アクセルペダル21には、踏み込み位置を検知するアクセルポジションセンサ21aが設けられる。アクセルポジションセンサ21aは、制御装置20と電気的に接続され、制御装置20にアクセル踏み込み位置(アクセル開度Th)を送信する。
【0025】
外部給電装置22は、駆動用電池10の電力を、電動車両1のユーザが電動車両1と別に用意する電気機器(外部機器の一例、例えば家電機器等)に供給するための装置である。外部給電装置22はインバータを含み、駆動用電池10からの直流電流を、電気機器に適した交流電流に変換する。
【0026】
次に
図3のフローチャートおよび
図4のタイミングチャートを用いて、制御装置20が実行する制御手順について説明する。制御装置20は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることで、制御動作を開始する。
【0027】
図3に示すように、ステップS1では、制御装置20は、内燃機関2の始動要求を取得する。制御装置20は、始動要求を取得すると、アクセル開度Thを取得し、各駆動軸に伝達する駆動出力となるドライバ要求トルクDTqを演算する。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが増大している場合、内燃機関2が出力すべきトルクであるエンジン要求トルクETq(第2駆動出力の一例)を演算する。
【0028】
図4の時刻0から時刻t1に示すように、本実施形態では、ドライバ要求トルクDTqが上昇し続ける。時刻0から時刻t1は内燃機関2の始動前であり、制御装置20は、EVモードによって電動車両1を走行させている。制御装置20は、時刻0から時刻t1の間は、駆動用電池10から各モータに供給する第1電力によって、各モータを駆動する。しかし、時刻t1において、電動車両1のユーザがさらにアクセルを踏み込むことによって、ドライバ要求トルクDTqがさらに増加する。このような場合、制御装置20は、内燃機関2を時刻t1において始動させ、ステップS2に処理を進める。このとき、制御装置20は、走行モードをシリーズモードに切り替える。
【0029】
図3に示すように、ステップS2では、制御装置20は、排気浄化装置2eの暖機が必要か否か判断する。制御装置20は、暖機が必要か否かの判断を、内燃機関2の冷却水の水温、内燃機関2の潤滑油の油温、内燃機関2を停止させていた時間、などのパラメータから推定してもよい。あるいは、制御装置20は、排気管2dに温度センサを配置する場合、この温度センサから触媒の温度を取得してもよい。いずれにせよ、制御装置20は、排気浄化装置2eの触媒の温度が、触媒が活性化するライトオフ温度(所定温度の一例)未満と判断した場合、排気浄化装置2eの暖機が必要と判断する。
【0030】
制御装置20は、ステップS2で排気浄化装置2eの暖機が必要と判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進め、第1出力制御を実行する。ステップS3の第1出力制御において、制御装置20は、駆動用電池10から各モータに供給する第1電力を、駆動用電池10が供給可能な電力の最大値である電池出力最大値Bmaxに所定期間Tの間、維持する。また、第1出力制御中において制御装置20は、所定期間Tの間、駆動用電池10から電池駆動トルクBTq(第1駆動出力の一例)が、ドライバ要求トルクDTqに対して不足する場合、ドライバ要求トルクDTqに対して不足する分をエンジン要求トルクETqによって補うように内燃機関2を制御する。電池駆動トルクBTqは、駆動用電池10から各モータに供給される第1電力によって、各モータを駆動することができるトルクである。制御装置20は、電池駆動トルクBTqを、充電率SOCを基準に演算し取得してもよい。
【0031】
本実施形態では
図4の時刻t1から時刻t2に示すように、制御装置20は、駆動用電池10の出力を、電池出力最大値Bmaxに時刻t1から時刻t2までの期間維持する。これによって、電池駆動トルクBTqは、時刻t1から時刻t2における駆動用電池10が出力可能な最大値である、最大電池駆動トルクBTqmaxに維持される。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqに対して最大電池駆動トルクBTqmaxが不足する場合、ドライバ要求トルクDTqに対して最大電池駆動トルクBTqmaxが不足する分をエンジン要求トルクETqによって補う。より具体的には、制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqと最大電池駆動トルクBTqmaxの差分を演算し、この差分をエンジン要求トルクETqによって補うように演算する。これによって、電動車両1のユーザが求める加速性能(ドライバビリティ)が実現できる。
【0032】
なお、時刻t1から時刻t2のエンジン要求トルクETqおよび電池駆動トルクBTqに示す破線は、従来のエンジン暖機前に係る制御を説明するためのものであり、エンジン要求トルクETqおよび電池駆動トルクBTqを示すグラフである。
図4の破線に示すように、従来は時刻t2においてドライバ要求トルクDTqをすべて内燃機関2によって出力できるよう、制御装置20は、エンジン要求トルクETqを上昇させつつ電池駆動トルクBTqを下降させる。このような場合、内燃機関2は出力(トルク)を急上昇させるため、排気が悪化する傾向がある。さらに、内燃機関2は、排気浄化装置2eを暖機するための出力を、ドライバ要求トルクDTqを達成するための出力に使用するため、排気浄化装置2eの暖機も僅かにしかできない。このため、排気浄化装置2eの排気浄化性能が上昇せず、さらに排気が悪化しやすい。
【0033】
しかし、本実施形態では、制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqのうち最大電池駆動トルクBTqmaxが不足する分をエンジン要求トルクETqで補うように演算する。これによって、内燃機関2にかかる負荷が少なく、結果として内燃機関2の出力を排気浄化装置2eの暖機に振り分けやすい。このため、この制御装置20を搭載した電動車両1は、排気が悪化しづらく、ドライバビリティと排気浄化性能を両立しやすい。
【0034】
図3に示すように、制御装置20は、第1出力制御を実行するとステップS4に処理を進める。ステップS4では、制御装置20は、第1出力制御を実行してから所定期間T経過したか否か判断する。制御装置20は、第1出力制御を実行してから所定期間T経過したと判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進める。本実施形態では、所定期間Tは時刻t1から時刻t2までの期間である。所定期間Tは、例えば、駆動用電池10のSOCが高いほど長く定めてもよい。また、所定期間Tは、ドライバ要求トルクDTqの増加率が高いほど、長く設定してもよい。
【0035】
ステップS5では、制御装置20は、第2出力制御を実行する。第2出力制御において制御装置20は、第1電力を減少させることによって電池駆動トルクBTqを減少させる。制御装置20は、電池駆動トルクBTqの減少に対応してエンジン要求トルクETqを増加させる。
【0036】
図4の時刻t2から時刻t3に示すように、ドライバ要求トルクDTqが増加後、一定になった場合、制御装置20は、電池駆動トルクBTqを下降させる。また、制御装置20は、電池駆動トルクBTqの下降に合わせてエンジン要求トルクETqを上昇させる。このとき、制御装置20は、エンジン要求トルクETqの増加率(出力増加率の一例)を、第1出力制御中のエンジン要求トルクETqの増加率(第1増加率の一例)よりも第2出力制御中の増加率(第2増加率の一例)の方を小さくする。これによって、制御装置20は、内燃機関2の出力の急上昇を抑制し、排気の悪化を抑制する。
【0037】
なお、制御装置20は、第1出力制御中に内燃機関2のスロットル弁2bの開度を一旦大きく開けて、内燃機関2の出力をエンジン要求トルクETqに追従させやすくしてもよい。一方、第2出力制御中は、第1出力制御中のスロットル弁2bの開度よりも一旦閉じ、その後徐々に開いてもよい。あるいは、第1出力制御中にスロットル弁2bを開いた位置から徐々に開いてもよい。いずれにせよ、第1出力制御中のスロットル弁2bが開く速度は、第2出力制御中のスロットル弁2bが開く速度よりも速い。制御装置20は、第2出力制御を実行するとステップS6に処理を進める。
【0038】
図3に示すように、ステップS6では、制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqがさらに増加したか否か判断する。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqがさらに増加したと判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0039】
ステップS7では、制御装置20は、第3出力制御を実行する。第3出力制御において、制御装置20は、第1電力を電池出力最大値Bmaxにするとともに、内燃機関2の出力を増加させる。
【0040】
図4の時刻t3から時刻t4に示すように、電動車両1のユーザが再びアクセルを踏み込むことによってドライバ要求トルクDTqが上昇する。制御装置20は、駆動用電池10が各モータに供給する第1電力を瞬間的に電池出力最大値Bmaxにする。これによって、瞬間的に電池駆動トルクBTqが最大電池駆動トルクBTqmaxになる。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqを一時的に電池駆動トルクBTqで補うことによって、内燃機関2の出力が急激に上昇することを抑制する。その後、制御装置20は、エンジン要求トルクETqを上昇させ、電池駆動トルクBTqを下降させることによって、ドライバ要求トルクDTqを達成できるように内燃機関2の出力および駆動用電池10の出力を調整する。なお、第3出力制御において、エンジン要求トルクETqの増加率は、第1出力制御中よりも小さく、第2出力制御中よりも大きくてしてもよい。
【0041】
図3に示すように、制御装置20は、第3出力制御を実行すると、ステップS8に処理を進める。ステップS8では、制御装置20は、排気浄化装置2eの暖機が完了したか否か判断する。制御装置20は、暖機が完了したか否かをライトオフ温度以上か否かによって判断してもよい。制御装置20は、排気浄化装置2eの暖機が完了したと判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進める。
【0042】
ステップS9では、制御装置20は、第4出力制御を実行する。第4出力制御は、排気浄化装置2eの暖機後に実行される通常の出力制御である。第4出力制御において、制御装置20は、シリーズモードを維持してもよいし、パラレルモードに切り替えてもよい。第4出力制御において制御装置20は、シリーズモードでは、第2電力を優先的に利用し第2電力を用いた場合に不足する出力を、第1電力を用いて補う。第2電力を発生するために内燃機関2は燃費効率点で運転した上で、不足した出力を第1電力で補うようにしてもよい。
図4の時刻t4移行に示すように、制御装置20は、第4出力制御中は、ドライバ要求トルクDTqを内燃機関2の出力によって達成するように、エンジン要求トルクETqを演算する。制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqがさらに増加した場合、エンジン要求トルクETqを優先的に増加させる。制御装置20は、エンジン要求トルクETqがドライバ要求トルクDTqに不足する場合、電池駆動トルクBTqによって補うことにより、エンジン要求トルクETqと電池駆動トルクBTqの和がドライバ要求トルクDTqに近づくように演算する。このとき、排気浄化装置2eの暖機が完了しているため、内燃機関2からの排気が十分浄化される。第4出力制御において制御装置20は、パラレルモードに切り替えた場合、内燃機関2の出力によって直接前輪駆動軸12aを駆動するための出力(トルク)をエンジン要求トルクETqに含んで演算してもよい。制御装置20は、第4出力制御を実行すると処理をステップS1に戻す。
【0043】
ステップS2において、制御装置20は、排気浄化装置2eの暖機が必要ないと判断した場合(ステップS2 NO)、ステップS9に処理を進めて第4出力制御を実行する。ステップS4において、制御装置20は、所定期間T経過していないと判断した場合(ステップS4 NO)、ステップS3に処理を戻し、所定期間T経過するまで第1出力制御を継続する。ステップS6において、制御装置20は、ドライバ要求トルクDTqが増加していないと判断した場合(ステップS6 NO)、ステップS8に処理を進め、第2出力制御を継続する。ステップS8において、制御装置20は、排気浄化装置2eの暖機が完了していないと判断した場合(ステップS8 NO)、ステップS6に処理を戻し、第2出力制御または第3出力制御を実行する。
【0044】
以上説明した通り、本開示によれば、ドライバビリティと排気浄化性能を両立できる電動車両1の制御装置20を提供できる。
【0045】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0046】
(a)上記実施形態では、四輪駆動型のハイブリッド自動車を例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。電動車両1は、前輪駆動のハイブリッド型およびプラグインハイブリッド型の自動車であってもよい。また、電動車両1は、四輪駆動型のプラグインハイブリッド自動車であってもよい。
【0047】
(b)上記実施形態では、クラッチ16aを用いて、内燃機関2と前輪駆動軸12aを接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と前輪駆動軸12aは遊星ギヤを介して接続してもよい。
【0048】
(c)上記実施形態では、内燃機関2と発電機4をギヤで接続する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関2と発電機4は遊星ギヤを介して接続してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:電動車両,2:内燃機関,2e:排気浄化装置
6:フロントモータ(第1回転電機),
10:駆動用電池,12a:前輪駆動軸,20:制御装置
DTq:ドライバ要求トルク(駆動出力)
BTq:電池駆動トルク(第1駆動出力)
ETq:エンジン要求トルク(第2駆動出力)
Bmax:電池出力最大値,
T:所定期間