(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177432
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】錠ユニット
(51)【国際特許分類】
E05B 65/10 20060101AFI20221124BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
E05B65/10 L
E05B65/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083678
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000131038
【氏名又は名称】株式会社オプナス
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(72)【発明者】
【氏名】大谷 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】前沢 夏樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い防犯性は維持しつつも、緊急時においては早急に係止を解除可能である錠ユニットを提供する。
【解決手段】電子錠とドアガードを備える錠ユニットであって、アーム回転軸22を中心に第一の方向R1に回動して係止状態となり、第二の方向R2に回動して係止解除状態となるアーム21と、室内ケース10に設けられ、係止状態のアーム21と係合するとともに係止状態のアーム21と係合するとともにアーム21の第二の方向R2への回動を規制するケース側係止部と、ケース側係止部から離間するようにアーム回転軸22を移動させることが可能な駆動手段30と、制御手段と、通信手段と、を有し、制御手段は、通信手段を介して受信する緊急時解錠信号に基づき電子錠を解錠する制御を行うとともに、駆動手段30を制御し、アーム回転軸22をケース側係止部から離間するように移動させる係止解除動作を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子錠とドアガードとを備える錠ユニットであって、
扉の室内側に取り付けられるケースと、
前記ケースに対して相対移動可能に取り付けられる前記ドアガードの回転軸と、
前記回転軸を中心に第一の方向に回動して係止状態となり、第二の方向に回動して係止解除状態となる前記ドアガードのアームと、
前記ケースに設けられ、係止状態の前記アームと係合するとともに該アームの前記第二の方向への回動を規制するケース側係止部と、
前記ケース側係止部から離間するように前記回転軸を移動させることが可能な駆動手段と、
前記回転軸が前記ケース側係止部に近接するように付勢する第一付勢手段と、
前記アームが前記第二の方向に回動するように付勢する第二付勢手段と、
制御手段と、
通信手段と、を有し、
前記制御手段は、前記通信手段を介して受信する緊急時解錠信号に基づき前記電子錠を解錠する制御を行うとともに、前記駆動手段を制御し、前記回転軸を前記ケース側係止部から離間するように移動させる係止解除動作を行う、
ことを特徴とする錠ユニット。
【請求項2】
前記回転軸を支持する支持手段を有し、
前記第一付勢手段は前記支持手段に付勢力を付与する手段であり、
前記駆動手段は、前記緊急時解錠信号に基づき前記支持手段を移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の錠ユニット。
【請求項3】
前記アームはアーム側係止部とアーム側当接部を有し、
前記ケースは、ケース側当接部を有し、
係止状態においては前記アーム側係止部が前記ケース側係止部と係合し、
係止解除状態においては前記アーム側当接部が前記ケース側当接部と接触することで前記第一付勢手段による前記回転軸の移動が規制される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の錠ユニット。
【請求項4】
前記アーム側係止部と前記アーム側当接部は隣接した位置に設けられ、
前記ケース側係止部と前記ケース側当接部は隣接した位置に設けられ、
前記アームの第一方向に向かう回動によって前記アーム側当接部と前記ケース側当接部とが離間した場合に、前記アーム側係止部と前記ケース側係止部とが近接するように構成される、
ことを特徴とする請求項3に記載の錠ユニット。
【請求項5】
前記制御手段は、通常時の解錠操作において、前記通信手段を介して受信する通常時解錠信号に基づき前記電子錠を解錠する制御を行う一方、前記アームを係止解除状態にする制御は行わない、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の錠ユニット。
【請求項6】
前記制御手段は、施錠操作において、前記通信手段を介して受信する施錠信号に基づき前記電子錠を施錠する一方、前記アームを係止状態にする制御は行わない、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の錠ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玄関扉において錠と併用される防犯設備の一つとして、ドアガードが知られている。また、電子錠の普及に伴い、外出時などに室外からの操作により電子錠の操作に加えてドアガードも係止および係止解除(施解錠)可能な技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、室外からドアガードが係止可能な構成は、不在時における二重の防犯としては確かに効果的であるが、同時に日常的な(通常時の)操作として室外からドアガードの係止解除も可能となり、この点においては防犯機能が高いとは言えない。つまりドアガードは、本質的には室内側からのみ係止/係止解除可能な構成とすることが望ましい。
【0005】
一方で、緊急時においては別の観点がある。すなわち、居住者が在室時にドアガードを係止したまま要救護状態となり、居住者自身でドアガードの係止が解除できない場合、救助者が合鍵などで錠を解錠したとしてもドアが容易には開けられず、救助不可あるいは救助に時間を要するといった問題がある。
【0006】
このように、高い防犯性は維持しつつも、緊急時においては早急に係止を解除可能であるという相反する要望を実現するドアガードの開発が望まれている。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたものであって、高い防犯性は維持しつつも、緊急時においては早急に係止を解除可能である、錠とドアガードの錠ユニットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子錠とドアガード20を備える錠ユニットであって、扉に取り付けられるケースと、前記ケースに対して相対移動可能に取り付けられる前記ドアガードの回転軸と、前記回転軸を中心に第一の方向に回動して係止状態となり、第二の方向に回動して係止解除状態となる前記ドアガードのアームと、前記ケースに設けられ、係止状態の前記アームと係合するとともに該アームの前記第二の方向への回動を規制するケース側係止部と、前記ケース側係止部から離間するように前記回転軸を移動させることが可能な駆動手段と、前記回転軸が前記ケース側係止部に近接するように付勢する第一付勢手段と、前記アームが前記第二の方向に回動するように付勢する第二付勢手段と、制御手段と、通信手段と、を有し、前記制御手段は、前記通信手段を介して受信する緊急時解錠信号に基づき前記電子錠を解錠する制御を行うとともに、前記駆動手段を制御し、前記回転軸を前記ケース側係止部から離間するように移動させる係止解除動作を行う、ことを特徴とする錠ユニットに係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る錠ユニットによれば、高い防犯性は維持しつつも、緊急時においては早急に係止を解除可能であるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る錠ユニットの取り付け例を示した図であり、(A)斜視図、(B)斜視図、(C)上面図である。
【
図2】本実施形態に係るドアガードユニットについて説明する斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るドアガードユニットについて説明する斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るドアガードユニットについて説明する図であり、(A)正面図、(B)斜視図、(C)背面図、(D)斜視図である。
【
図5】本実施形態に係るドアガードユニットについて説明する斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る錠ユニットの動作を説明する表である。
【
図7】本実施形態に係る錠ユニットを採用した施解錠システムの概要を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る錠ユニットの動作を説明する斜視図である。
【
図9】本実施形態に係る錠ユニットの動作を説明する斜視図である。
【
図10】本実施形態に係る錠ユニットの動作を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る錠ユニット1について詳細に説明する。
【0012】
<全体構成>
図1を用いて、本実施形態に係る錠ユニット1の全体構成について説明する。
図1(A)、同図(B)は、本実施形態に係る錠ユニット1の取り付け例を室内側から見た外観斜視図であり、
図1(C)は、上面図である。
【0013】
図1(A)~同図(C)に示すように本実施形態の錠ユニット1は、居室(住居)などの玄関や部屋などの扉DRに内装される錠ケース(錠装置)50と、扉DRの室内側に取り付けられるケース(室内ケース)10と、扉DRの室外側に取り付けられるケース(室外ケース60)と、を有する。
【0014】
室外ケース60は、電子錠(電気錠)64を備え、室内ケース10は、サムターン11とドアガードユニット20Uを有する。
【0015】
この錠ユニット1は、室外側からの電子錠64の施解錠操作、または、室内側からのサムターン11の施解錠操作によって、錠ケース50のデッドボルト52を突出または後退させることが可能である。電子錠64の構成は従来既知の構成と同様であるので、ここでは簡単に説明する。
【0016】
図1(C)に示すように、電子錠64またはサムターン11を解錠状態から施錠状態に移行させると、デッドボルト52が、扉DRの戸先から突出し、玄関や部屋などに設けられたストライク(凹部)に嵌入して施錠状態となり、扉DRが施錠された状態となる。一方、電子錠64またはサムターン11を施錠状態から解錠状態に移行させると、デッドボルト52がストライクから錠ケース50内に退出して解錠状態となり、扉DRが解錠された状態となる。なお、図示は省略するが錠ケース50のデッドボルト52の鉛直方向上方(または下方)には、仮施錠が可能なラッチが設けられている。
【0017】
また、これも図示は省略するが、室外側には室外ハンドルが、室内側には室内ハンドルがそれぞれ設けられ、室外ハンドルの引き操作(室外ハンドルを手前に引っ張る操作)、または、室内側からの室内ハンドルの押し操作(室内ハンドルを奥側に押す操作)によって、錠ケース50のラッチによる仮施錠を解除することが可能である。具体的に、室外ハンドルまたは室内ハンドルの操作を行っていない状態では、ラッチは、バネに付勢されてストライクに嵌入するとともに錠ケース50内への後退が規制され、扉DRがラッチで仮施錠された状態となる。一方、室外ハンドルの引き操作、または、室内ハンドルの押し操作を行うと、ラッチは、錠ケース50内への後退が可能となって解錠状態となり、デッドボルト52が解錠状態であれば、扉DRを開くことができる。
【0018】
なお、本例では、室外ハンドルの引き操作または室内ハンドルの押し操作を行った場合に、ラッチによる仮施錠が解除され、扉DRを室外側に開くことができるように構成したが、本発明はこれに限定されず、室外ハンドルの押し操作または室内ハンドルの引き操作を行った場合に、ラッチによる仮施錠が解除され、扉DRを室内側に開くことができるように構成してもよい。また、錠ユニット1は、右勝手の錠装置であってもよいし、左勝手の錠装置であってもよい。
【0019】
錠ユニット1は、更に錠ユニット1の各構成の制御を行う制御手段15と、外部との信号の送受信を行う通信手段16を有する(同図(C))。制御手段15は、CPU、RAM、及びROM等から構成され、各種制御を実行する。なお、制御手段15は、錠ユニット1と一体に設けられてもよいし別体でもよい。また通信手段16は、錠ユニット1と一体に設けられてもよいし別体でもよい。
【0020】
錠ケース50の構成も従来既知の構成と同様であるので詳細な説明は省略するが、錠ケース50は、デッドボルト52を施錠状態または解錠状態にすることが可能なデッドボルト駆動部と、ラッチを仮施錠状態または解錠状態にすることが可能なラッチ駆動部が収容されている。
【0021】
電子錠64は、信号の受信により施解錠動作を行う。本実施形態では電子錠64の信号として、施錠信号と、通常時解錠信号と、緊急時(非常時)解錠信号を用いる。電子錠64は施錠信号を受信した場合に施錠動作を行う。また通常時解錠信号および緊急時解錠信号を受信した場合に解錠動作を行う。
【0022】
施錠信号は、例えば操作者(居室の使用者、入居者)による錠の施錠操作に基づき発信される信号であり、電子錠64を施錠するための暗証番号(施錠番号)を含む信号である。通常時解錠信号は、通常時において操作者による錠の通常解錠操作に基づき発信される信号であり、電子錠64を解錠するための暗証番号(通常時解錠番号)を含む信号である。緊急時解錠信号は、緊急時において例えば他の操作者(入居者以外の第三者)などによる錠の緊急解錠操作により発信される信号であり電子錠64を緊急解錠するための暗証番号(緊急時解錠番号)を含む信号である。
【0023】
本実施形態における施錠操作、通常時解錠操作および緊急時解錠操作は、例えば、携帯端末および通信回線を介して行うことができる。具体的には、錠ユニット1の施解錠アプリケーションがインストールされた携帯端末(スマートフォン、タブレット端末など)の操作に応じて発信される施錠信号、通常時解錠信号および緊急時(非常時)解錠信号を、通信回線を介して錠ユニット1の通信手段16が受信し、これに基づき制御手段15が施錠操作、通常時解錠操作および緊急時解錠操作の各動作を行う。この場合、各居室の錠ユニット1とそれに対応する操作者とは、固有識別番号(利用者ID)にて対応づけられ、施解錠アプリケーションの利用時にはユーザ認証(ログインなど)が必須である。このような構成では、錠ユニット1の操作者は、扉DR付近または居室内にいる者であってもよいし、遠隔地にいる者であってもよい。
【0024】
また、上記の操作、通常時解錠操作および緊急時解錠操作に加えて(またはこれらに代えて)、例えば錠ユニット1が不図示の入力手段(操作ボタンやタッチパネルなど)を含む場合には、入力手段の操作(各番号の入力操作や携帯端末の接触操作など)によって施錠操作、通常時解錠操作および緊急時解錠操作を可能としてもよい。以下、本実施形態では主に携帯端末の施解錠アプリケーションによって施解錠操作を行う場合を例に説明する。
【0025】
施錠操作は、施解錠アプリケーションにおける例えば施錠ボタンのタップや、施錠番号の入力などである。また、通常時解錠操作は施解錠アプリケーションにおける例えば通常時解錠ボタンのタップや、通常時解錠番号の入力などである。施錠番号や通常時解錠番号を用いる場合、これらは操作者が任意に設定・変更可能であると望ましい。
【0026】
これに対し、緊急時解錠操作は、施解錠アプリケーションにおける例えば緊急時解錠ボタンのタップや、緊急時解錠番号の入力などである。緊急時解錠番号を用いる場合、当該番号は例えば、予め設定された固有値(例えば「0119」など)とすると望ましい。なお、緊急時解錠番号は単一の値(例えば「0119」など)に限らず、複数の所定の固有値(例えば「0119」と「0911」など)から選択し、設定可能としてもよい。
【0027】
また、錠ユニット1は室内側にアーム21および受け部材23を有するドアガード20を有している。
【0028】
<ドアガードユニット>
図2から
図5を参照してドアガードユニット20Uについて説明する。なお、以下の図はいずれも適宜説明に必要な主要部を抜き出し、あるいは透視して示す。
図2はドアガードユニット20Uを説明する図であり、同図(A)が係止状態のドアガードユニット20Uの主要部を示す図、同図(B)が係止解除状態のドアガードユニット20Uの主要部を抜き出して示す図、同図(C)が同図(A)の一部拡大図、同図(D)が係止状態と係止解除状態の間の(状態遷移中の)図であり、いずれも室内側から見た斜視図である。
【0029】
図2(A)を参照して、本実施形態の錠ユニット1は、例えば、室内ケース10内にその一部が収容されるドアガードユニット20Uを備える。ドアガードユニット20Uは、ドアガード20のアーム21と、回転軸(アーム回転軸22)と、支持手段24および駆動手段30を有する。錠ユニット1は、通常時においては室内側からのみドアガード20(のアーム21)の係止および係止解除が可能である。一方、緊急時において緊急時解錠操作が行われた場合に限り、錠ユニット1の通信手段16(
図1(C)参照)が緊急時(非常時)解錠信号(例えば、電子錠64の緊急解錠信号と同一信号)を受信し、係止解除が可能である。本実施形態では例えば、操作者が遠隔地にいる場合であっても緊急時においてはドアガード20(のアーム21)の係止解除動作が可能である。
【0030】
アーム21は長手方向の一方が開放端となる略U字状のロック金具であり、その開放端に挿通されるアーム回転軸22を中心に回動可能に構成される。
図1(C)、
図2(A)に示すように、アーム21はアーム回転軸22を中心に第一の方向R1に回動し、室内側の扉枠DFなどに設けられた受け部材(係止杵)23と係合することにより係止状態となる。またアーム21は第二の方向R2に回動して受け部材23から離反することで係止解除状態となる。アーム21、アーム回転軸22および受け部材23によりドアガード20が構成される。
【0031】
図2(B),同図(C)を参照して、アーム回転軸22は、その軸方向が鉛直方向に延び、支持手段24に支持されて室内ケース10に対して相対移動可能となるように当該室内ケース10内に取り付けられる。より詳細には、支持手段24はアーム21の長手方向(水平方向)に細長の略矩形状の部材であり、その長手方向の一端部にアーム回転軸22が挿通される。アーム回転軸22の両端(上下端)は支持手段24から露出し、アーム21の開放端に鉛直方向に脱落しないように固定される。アーム21とアーム回転軸22は、支持手段24に対して第一の方向R1,第二の方向R2に回動可能である。
【0032】
また、支持手段24の長手方向の他端部には支持手段回転軸25が挿通される。支持手段回転軸25もその軸方向が鉛直方向に延び、両端(上下端)は支持手段24から露出して、室内ケース10内側の固定部材10Aに固定される。これにより、支持手段24は、支持手段回転軸25を中心に第三の方向R3と第四の方向R4に回動可能となっている。第三の方向R3は、支持手段24の一端部に支持するアーム回転軸22が扉DRに近づく方向であり、第四の方向R4は、第三の方向R3とは逆方向であってアーム回転軸22が扉DRから離れる方向である(
図2(C)、同図(D)、
図1(C))。このような構成により、アーム回転軸22は、室内ケース10に対して相対移動可能となる。具体的には、室内ケース10内において扉DRに近づく第三の方向R3と扉DRから離れる第四の方向R4に移動可能である。
【0033】
また、支持手段24は対向する2つの側面241、242を有し、一方の側面241が扉DRと対向し、他方の側面242が室内ケース10の内壁101と対向するように当該室内ケース10内に収容される(
図1(C)、
図2(A),同図(C))。そして、他の側面242のアーム回転軸22の近傍には、第一付勢手段26が設けられる(
図2(B),同図(C))。同図(C)に詳細に示すように、第一付勢手段26は、側面242に設けられた凹部243に収容される例えばコイルばねであり、コイルの巻回の一端側が凹部243と当接し他端側が室内ケース10の内壁101に当接する(
図2(A))。この第一付勢手段26により支持手段24は常時、第三の方向R3に回動するように付勢され、その結果アーム回転軸22は常時、扉DRに近づく方向に(第三の方向R3に移動するように)付勢される。
【0034】
また、
図2(C)、同図(D)に示すように、アーム21は第二付勢手段27により、常時、当該アーム21が第二の方向R2に回動するように(係止解錠される方向に)付勢される。第二付勢手段27は例えばトーションばねであり、支持手段24の上面に突出するアーム回転軸22に回装されてアーム21と支持手段24の間に配置され、その一端が支持手段24の上面に設けられた突起部244に固定され、他端がアーム21の内壁に設けられた凹部211に固定される。
【0035】
また、本実施形態のアーム21は、室内ケース10の一部と係合する。
図2(C)に示すように、アーム21の頭部(アーム回転軸22の挿通領域)21Hの平面視形状は、略円(略楕円)形状であるがその周面の一部は、径方向(アーム回転軸22を中心とする半径方向)の長さが変化することにより、周方向において段差が形成される。つまり頭部21Hは、径方向の長さが長い大径領域21HBと径方向の長さが短い小径領域21HSとを含み、大径領域21HBの周面(曲面)と、小径領域21HSの周面(曲面)とは平面を介して連続する。この平面を含む段差部分はアーム側係止部212であり、アーム側係止部212に隣接(連続)する大径領域21HBの周面の一部は、アーム側当接部213である。
【0036】
図3は、室内ケース10の上方を抜き出して示す、室内側から見た斜視図である。同図(A)においてはアーム21の記載を省略している。室内ケース10は、その上面102にアーム21が回動可能に配置される。そして、上面102のアーム21と扉DRの間に、鉛直方向上方に突出する隔壁部111が設けられる。隔壁部111は一部においてアーム21の頭部21Hに沿う形状に形成される。すなわち、頭部21Hの近傍において、アーム21側に突出する段差状のケース側係止部112と、これに隣接(連続)するケース側当接部113が形成される。
【0037】
ケース側係止部112は、同図(D)、同図(E)に示すように係止状態のアーム21と係合するとともにアーム21の第二の方向R2への回動を規制するものであり、アーム側係止部212と十分に係止(係合)可能な形状を有する。また、同図(B)に示すように、ケース側当接部113は係止解除状態のアーム側当接部213と当接可能な例えば曲面形状を有する。
【0038】
すなわち、同図(B)に示すようにアーム21が係止解除状態にある場合にはケース側当接部113とアーム側当接部213とが当接する。また、同図(C)に示すようにアーム21が第一の方向R1に回動すると、ケース側当接部113とアーム側当接部213とが離間する方向に頭部21Hが摺動し、ケース側当接部113と対向する頭部21Hの間に隙間が生じるとともに、ケース側当接部113に隣接するケース側係止部112と、アーム側当接部213に隣接するアーム側係止部212とが近接し、ケース側係止部112と、アーム側係止部212とが係合可能となる(同図(C)、同図(D))。
【0039】
更に説明すると、同図(B)に示す係止解除状態では、支持手段24は第一付勢手段26によって支持手段回転軸25を中心に第三の方向R3に回動するように付勢され、その結果アーム回転軸22がケース側係止部112に近接するように付勢されているものの、ケース側当接部113とアーム側当接部213とが当接することにより、支持手段24の第三の方向R3への回動が規制されている。
【0040】
この状態から操作者がアーム21を、第二付勢手段27の付勢力に抗って第一の方向R1に回動させると、ケース側当接部113とアーム側当接部213が相対的に摺動し、ケース側当接部113と対向する頭部21Hの間に隙間が生じる(同図(C))。これにより支持手段24の第三の方向R3への回動の規制が解除される。ここで、支持手段24は第一付勢手段26の付勢力を受けており、操作者によるアーム21の保持力のうち第三の方向R3の力が第一付勢手段26の付勢力より小さくなると、第二付勢手段27の付勢力により支持手段24が第三の方向R3へ回動する。あるいは、操作者はアーム21を保持した状態で第三の方向R3へアーム21を(わずかに)押し込んでもよい。
【0041】
これにより支持手段24に支持されるアーム回転軸22がケース側係止部112に近接し、その結果ケース側係止部112と、アーム側係止部212とが係合する(同図(D))。これにより、操作者がアーム21の保持を解除しても、アーム21が起立状態を保持し、ここでは不図示の受け部材23に係止された係止状態(
図8(C)参照)。
【0042】
このように、本実施形態では、ケース側係止部112と、アーム側係止部212の係合によりアーム21の係止状態が保持される。すなわち、第二付勢手段27による、アーム21の第二の方向R2への回動が規制される(同図(D))。つまり操作者は同図(C)から同図(D)の間でアーム21の保持力は緩めるものの、アーム21が第二方向R2に回動しない様、アーム21を支持するか上記のようにアーム21を保持した状態で第三の方向R3へアーム21を(わずかに)押し込む。
【0043】
一方、係止解除状態(同図(B))においてはアーム側当接部213がケース側当接部113と接触することで第一付勢手段26によるアーム回転軸22の第三の方向R3への移動が規制される。
【0044】
次に
図4および
図5を参照して、駆動手段30について説明する。
図4(A)、同図(B)は、駆動手段30が駆動していない状態のドアガードユニット20Uを示す図であり、同図(A)が室内側から見た正面図、同図(B)が扉DR側から見た斜視図である。また、同図(C)、同図(D)は、駆動手段30が駆動している状態のドアガードユニット20Uを示す図であり、同図(C)が室内側から見た正面図、同図(D)が扉DR側から見た斜視図である。また、
図5(A)~同図(C)は、駆動手段30が駆動している状態のドアガードユニット20Uを示す図であり、扉DR側から見た斜視図である。また、
図5(D)は係止状態のアーム21の頭部21H付近を室内側から示す斜視図である。
【0045】
本図の説明において、説明の便宜上、鉛直方向(
図4(A)の上下方向)を支持手段24の高さ方向H,高さ方向Hに直交する方向であって扉DRの面に平行な方向を支持手段の幅方向W,高さ方向Hと幅方向Wに直交する方向を支持手段24の厚み方向Dと称する。
【0046】
駆動手段30は、第一付勢手段26の付勢力に抗って、支持手段24を第四の方向R4に回動させるものである。
【0047】
図4(A)、同図(B)に示すように、駆動手段30は、例えば支持手段24の下方の室内ケース10内壁に固定され、モーター31と、モーター31の回転動力を直線動力に変換する動力変換手段32と、動力変換手段32により水平方向に移動可能に構成されたスライダー33を有する。同図(A)に詳細に示すように、動力変換手段32は例えば、モーター31の回転軸311に設けられたウォーム321と、ウォームホイール322、ギア323およびギア(ピニオン)324からなる歯車列と、ラック325などを含む。モーター31の回転軸311の回転動力はウォーム321により方向が変換、減速され、ウォームホイール322を含む歯車列を介してラック325に伝達されて直線動力となる。なお、動力変換手段32の構成はこれに限らない。
【0048】
この例ではラック325は、スライダー33と一体的に設けられ、スライダー33は鉛直方向上方(支持手段24の高さ方向H)に突出する押し出しバー331を有する。これによりモーター31が回転すると、スライダー33が水平方向(支持手段24の幅方向W、図示左右方向)に往復移動する。
【0049】
また、
図4(B)に示すように、支持手段24の扉DRと対向する側面271には傾斜凸部275が設けられる。傾斜凸部275は支持手段回転軸25側からアーム回転軸22側に向かって高さ(支持手段24の厚み方向Dの高さ)が高くなるように傾斜する傾斜面275Aと、それに連設され、支持手段24の側面271とほぼ平行な押し出し面275Bを有する略四角錐台形状の突起部である。押し出し面275Bは、スライダー33がアーム回転軸22に最も近接した場合に押し出しバー331の表面(前面)が当接する位置に設けられる。
【0050】
スライダー33は、初期位置から押し出し位置まで水平方向(支持手段24の幅方向W)に往復移動する。初期位置とは同図(A),同図(B)に示すように、押し出しバー331が傾斜凸部275より支持手段回転軸25に近く、押し出しバー331の表面(前面)が支持手段24の側面271と当接または近接する位置であり、押し出し位置は、同図(C),同図(B)に示すように、押し出しバー331の表面(前面)傾斜凸部275の押し出し面275Bと当接する位置である。
【0051】
スライダー33が初期位置にある場合(同図(A)、(B))にモーター31が回転すると、動力変換手段32を介してスライダー33が初期位置から移動を開始する。これにより押し出しバー331は傾斜凸部275に乗り上げるようになるが、ここで、第一付勢手段26の付勢力は、スライダー33の水平方向の移動により支持手段24を押し出す力より小さく設定されている。このため押し出しバー331は第一付勢手段26の付勢力に抗って傾斜面275Aを摺動し(同図(C))、押し出し面275Bに到達する。これにともない、支持手段24は室内側に押し出されるようになり、支持手段回転軸25を中心に第四の方向R4に回動する(同図(D))。そして、支持手段24の第四の方向R4への回動により、これに支持されるアーム回転軸22が扉DRから離れる方向、すなわちケース側係止部112から離間するように移動し、アーム側係止部212とケース側係止部112の係合が外れる(同図(D))。つまり、傾斜凸部275の高さ(支持手段24の厚み方向Dの高さ)は、アーム側係止部212を構成する平面の径方向の長さL(
図2(C)参照)より高く設定されている。
【0052】
図5(A)に示すように、アーム側係止部212とケース側係止部112の係合が外れ、操作者によるアーム21の保持がない場合、第二付勢手段27の付勢力によりアーム21は第二の方向R2に回動する。そして、アーム21は受け部材(ここでは不図示)から離脱し、同図(B)に示すようにドアガード20は係止解除状態となる。
【0053】
ドアガードユニット20Uはさらに不図示の検出手段(例えば、センサやパルスカウンタなど)を有し、当該検出手段によりスライダー33の押し出し位置への到達が検出されたことに基づき、駆動手段30はスライダー33を初期位置に移動させる(同図(C))。スライダー33が初期位置に移動すると、押し出しバー331による支持手段24の押出も解除される。これにより再び支持手段24には第一付勢手段26の付勢力が付与され、支持手段24は支持手段回転軸25を中心に第三の方向R3に回動し、押し出し前の状態に戻る。支持手段24の第三の方向R3への回動は、アーム側当接部213とケース側当接部113の当接により所定位置で規制されて停止する(同図(D))。
【0054】
なお、以上は駆動手段30によるアーム21の係止解除の動作を説明したが、これは緊急時解錠信号を受信した場合のみの動作となる。つまり本実施形態では、通常時においては手動によってアーム21の係止解除を行う。以下、
図4および
図5において駆動手段30が動作していない(スライダー33が初期位置にある)ものとして説明する。操作者はアーム21を保持し、
図4(D)に示すようにアーム21を室内側に引き戻す。このとき少なくとも傾斜凸部275の高さを超えるまで引き戻す。
【0055】
これにより支持手段24は、支持手段回転軸25を中心に第四の方向R4に回動する。そして、支持手段24の回動により、これに支持されるアーム回転軸22が扉DRから離れる方向、すなわちケース側係止部112から離間するように移動し、アーム側係止部212とケース側係止部112の係合が外れる。
【0056】
そして
図5(A)に示すようにアーム側係止部212とケース側係止部112の係合が外れた状態で、操作者がアーム21の保持を解除すると(操作者はアーム21をわずかに第二の方向R2に回動させてもよい)、同図(B)に示すようにドアガード20は係止解除状態となる。アーム21が第二の方向R2に回動を開始した場合、操作者はアーム21に触れる必要はない。その後は駆動手段30による移動と同様に支持手段24は、第三の方向R3に回動して押し出し前の状態に戻り、アーム側当接部213とケース側当接部113の当接により所定位置で規制されて停止する(同図(D))。
【0057】
<錠ユニットの施解錠動作>
図6~
図10を参照して、本実施形態の錠ユニット1の施解錠動作について具体的に説明する。
図6は、錠ユニット1におけるサムターン11の施解錠操作の可否とドアガード20の係止操作の可否について一覧で示す表である。
【0058】
まず、本実施形態の錠ユニット1は、第一の操作者である居室の使用者(入居者)が在室時に要救護状態となった場合に室外から救助者の入室を可能とするものである。つまり、緊急時の操作としては、室内側および室外側からのサムターン11の施錠操作、室内側および室外側からのドアガード20の係止操作、室内側からのサムターン11の解錠操作、室内側からのドアガード20の係止解除操作については想定されていない(常識的に考えて想定する必要がない)。
【0059】
すなわち、通常時における施錠・係止操作について、室内側からのサムターン11の施錠操作およびドアガード20の係止操作は可能である。また、通常時において、室外側からの電子錠64操作に基づき、通信手段16を介した施錠信号の受信によってサムターン11(電子錠64)を施錠操作することは可能である。一方、通常時において室外側からドアガード20を係止する操作は行えない。
【0060】
次に、解錠・係止解除操作について、まず、通常時における室内側からのサムターン11の解錠操作およびドアガード20の係止解除操作は可能である。また、通常時において、室外側からの電子錠64操作に基づき、通信手段16を介した解錠信号の受信によってサムターン11(電子錠64)を解錠操作することは可能である。一方、通常時において室外側からドアガード20を係止解除する操作は行えない。
【0061】
緊急時においては、室外側からの電子錠64操作に基づき、通信手段16を介した緊急時解錠信号の受信によってサムターン11(電子錠64)を解錠操作することは可能である。これに加えて、通信手段16を介した緊急時解錠信号の受信によって、室外側からドアガード20を係止解除する操作を行うことができる。以下、具体的に説明する。
【0062】
図7は、遠隔にて錠ユニット1の施解錠操作が可能な施解錠システム200の一例を示す概要図である。本実施形態の錠ユニット1は、このような施解錠システムに適用可能である。
【0063】
施解錠システム200は例えば、上述の錠ユニット1とこれと通信可能に接続する通信回線201、第一の操作者,すなわち錠ユニット1が設置されている居室(住宅など)の居住者Aが有する携帯端末202、第二の操作者、すなわち居住者Aの関係者B(同居家族、別居家族などの関係者)が有する携帯端末203、サーバ装置(クラウドサーバ装置)204を含んで構成される。なお、この場合錠ユニット1の制御手段15は、サーバ装置204が備えていてもよい。なお、操作者は3以上であってもよい。
【0064】
携帯端末202、203はそれぞれ、錠ユニット1の施解錠アプリケーションAPがインストールされた携帯可能な端末(スマートフォン、タブレット端末など)であり、施解錠アプリケーションAPにより、通常時の施解錠操作、緊急時の解錠操作が可能である。なお、各居室の錠ユニット1とそれに対応する第一の操作者A、第二の操作者Bとは、固有識別番号(利用者ID)にて対応づけられ、施解錠アプリケーションAPの利用時にはログイン認証が必須である。
【0065】
第一の操作者Aおよび/または第二の操作者Bにより施解錠アプリケーションAPを介して施錠操作が行われた場合、サーバ装置204は施錠信号を発信し、これを受信した錠ユニット1は電子錠64の施錠動作を行う。施錠信号は、電子錠64を施錠するための暗証番号(施錠番号)を含む信号である。施錠番号は操作者が任意に設定・変更可能である。この施錠動作については従来既知の方法が採用できる。
【0066】
また、第一の操作者Aおよび/または第二の操作者Bにより施解錠アプリケーションAPを介して通常時の解除操作が行われた場合、サーバ装置204は通常時解錠信号を発信し、これを受信した錠ユニット1は電子錠64の解錠動作を行う。解錠信号は、電子錠64を解錠するための暗証番号(通常時解錠番号)を含む信号である。通常時解錠番号は操作者が任意に設定・変更可能である。この解錠動作については従来既知の方法が採用できる。
【0067】
また、これらに加え、本実施形態の施解錠アプリケーションAPは、緊急時の動作として、救護が必要となった第一の操作者(居住者、要救護者)Aによる1クリック操作などに基づき第二の操作者(関係者)Bに救護が必要である旨の通知(例えばプッシュ通知)が送信可能である。またこれに加えて、要救護者Aの携帯端末202から緊急時解錠信号が錠ユニット1に発信可能に構成される。また、要救護者Aの救護が必要であると判断した関係者Bによる関係者Bの携帯端末203からの緊急時の解錠操作に基づき、サーバ装置204から緊急時解錠信号が錠ユニット1に発信可能に構成される。緊急時解錠信号は、電子錠64を緊急解錠するための暗証番号(緊急時解錠番号)を含む信号であり、固定の値(例えば、「0119」など)である。この場合、緊急時の解除操作から所定時間(例えば1時間など)経過後は、制御手段15によって施錠動作が行われるようにすると好ましい。
【0068】
通信回線201は、第一の操作者Aおよび/または第二の操作者Bの各種操作に基づいて送信される施錠信号および通常時および緊急時の解錠信号を錠ユニット1の通信手段16に送信できる回線の総称であり、有線、無線を問わずどのようなものであってもよい。例えば、無線の場合例えば移動体通信網や無線LAN方式など他の方式、規格の無線データ通信網、省電力(低電力)かつ広域(遠距離)の無線通信技術を利用した通信回線(例えば、LPWA(Low Power Wide Area)や、LPWAN(Low Power Wide Area Network)など)であってもよい。あるいはまた、通信回線は、LAN、インターネット、または専用通信回線(例えば、CATV(Community Antenna Television)回線)、及びゲートウェイ等により構築される通信回線などであってもよく、これらの複数の回線により通信経路が構成される回線であってもよい。つまり本実施形態では操作者A,Bは、施解錠操作を行う場合、扉DRの直近にいても操作可能であるし、遠隔地にいても操作可能である。
【0069】
なお、上述の施解錠システム200に限らず(上記の方法に代えて、または加えて)、扉DRの近傍での電子キーのボタン操作によって施錠信号や解錠信号が発信されるものであってもよい。また、例えば錠ユニット1の室外ケース60に入力手段(操作ボタンやタッチパネルなど)が含まれ、入力手段の操作(所定のボタン操作や施錠番号や解錠番号の入力操作、あるいは携帯端末の接触操作など)により施錠信号や解錠信号が発信される構成であってもよい。解錠番号の入力操作によって解錠可能な構成の場合、緊急時においては例えば操作者Bが救助者C(救急隊員など)に緊急時解錠番号(例えば「0119」など)を口頭で伝え、救助者Cによる緊急時解錠番号の入力操作に基づき、緊急時解除動作を行うようにしてもよい。この場合、緊急時解錠番号は所定時間経過後(例えば、1時間後など)には無効(解錠不可)になるようにすると望ましい(救助者Cには時限付である旨も伝える)。
【0070】
あるいはまた、救助者Cによる緊急時解錠番号の入力操作に基づき、補助的な緊急時解錠番号として時限付のパスコード(ワンタイムパスワード)を発行・表示手段に表示するなどし、当該パスコードの入力操作により錠ユニット1の緊急時解除動作を行うようにしてもよい。つまりこの場合、補助的な緊急時解錠番号(時限付のパスコード)も本実施形態の「緊急時解錠番号」に含まれる。
【0071】
<<通常時室内側施錠動作>>
図8は、通常時の室内側からの施錠・係止操作、及びそれに基づく錠ユニット1の施錠・係止動作を説明する錠ユニット1を示す斜視図である。
【0072】
同図(A)は、サムターン11が解錠状態にあり、ドアガード20(アーム21と受け部材23)が係止解除状態にある場合を示す。この状態で室内からサムターン11を施錠状態にする場合、同図(B)に示すように室内にいる操作者(居住者など)はサムターン11を所定方向(
図7では反時計回り方向)に回転させる。これにより、デッドボルト52が、扉DRの戸先から突出し、ストライク(凹部)に嵌入して扉DRが施錠状態となる。
【0073】
また、ドアガード20について、この例では室内ケース10の表面にはアーム収容溝210が設けられている。そしてドアガード20が係止解除状態にある場合には、そのアーム21は同図(A)に示すように扉DRの面に対して平行となるように倒れ(畳まれ)、アーム収容溝210に収容されている。支持手段24は常時、第一付勢手段26により第三の方向R3に回動するように付勢されているものの、ドアガード20が係止解除状態にある場合には、ケース側当接部113とアーム側当接部213とが当接し、支持手段24の第三の方向R3への移動は規制されている(
図3(B)参照)。
【0074】
このような係止解除状態にあるドアガード20を、室内から係止状態にする場合、操作者はアーム21を保持し、
図7(C)に示すように第一の方向R1に回動させて扉DRに対して起立状態とする。アーム21の回転により、ケース側当接部113とアーム側当接部213が相対的に離間し(
図3(B))、両者の離間により支持手段24の第三の方向R3への回動の規制が解除される。そして操作者によるアーム21の保持力のうち第三の方向R3への力が第一付勢手段26の付勢力より小さくなると、第一付勢手段26の付勢力により支持手段24が第三の方向R3へ回動する。これによりアーム回転軸22がケース側係止部112に近接し、ケース側係止部112とアーム側係止部212とが係合してアーム21と受け部材23とが(ドアガード20が)係止状態となる(
図3(D))。アーム21は常時、第二付勢手段27によって第二の方向R2(アーム21の係止が解除される方向)に付勢されているものの、ケース側係止部112とアーム側係止部212とが係合することにより、係止状態が維持(ロック)される(
図8(C)、
図3(E))。
【0075】
このように本実施形態によれば、アーム21を手動で起立させると、第一付勢手段26の付勢力によりアーム回転軸22が移動し(アーム21自体が室内側から押される方向に移動し)、ケース側係止部112とアーム側係止部212との係合によってアーム21が起立状態(係止状態)で保持される。アーム21には第二付勢手段27によってこれを倒す(係止を解除する)方向への付勢力が働いているが、アーム21の係止状態はケース側係止部112とアーム側係止部212との物理的な接触(係合)によって保持される。
【0076】
ここで例えば、アームを倒す(係止解除する)方向に働く第二付勢手段と、アームを起立状態で保持する方向に働く第一付勢手段とが同時にアームに直接的に作用する構成を考える。具体的には、相反する第一付勢手段と第二付勢手段の付勢力のバランスでアームを係止状態に保持する構成である。この場合、両者の付勢力のバランスを適切に調整する必要があり、部品(各ばね)自体のコストや製造工程が煩雑になるなどの問題がある。また、経年劣化によるばねの付勢力の低下や各部品の摩耗などによって動作が鈍ることなどによりアームの起立状態での保持が困難となる可能性がある。つまり、相反する付勢力のバランスに頼る構成では、耐久性の観点からすると望ましくない。
つまり、第一付勢手段26の付勢力と第二付勢手段27の付勢力のバランスを厳密に調整することなく、確実にアーム21を起立状態で保持できる。
【0077】
これに対し、本実施形態では、アーム21を倒す(係止解除する)方向に働く第二付勢手段27と、アームを起立状態で保持する(係止する)方向に働く(そのために支持手段24を室内ケース10の内面に押し付けるように働く)第一付勢手段26を有する構成であるがアーム21の係止状態はケース側係止部112とアーム側係止部212との物理的な接触(係合)によって保持される。つまり、第一付勢手段26の付勢力と第二付勢手段27の相反する付勢力のバランスに頼る必要はなく、経年劣化による不具合を回避して、確実にアーム21を起立状態で保持できる。
【0078】
<<通常時室外側施錠動作>>
次に、サムターン11が解錠状態にあり、ドアガード20(アーム21と受け部材23)が係止解除状態にある場合の、室外からのサムターン11の施錠操作について説明する。これは通常の外出時などの施錠操作である。操作者は扉DRを閉め、室外から電子錠64の施錠操作を行う。この施錠操作は既知の電子錠64の操作と同様であり、ここでは、操作者の保持する携帯端末により室外からの施解錠操作が可能である構成を例に簡単に説明する。すなわち操作者は、錠ユニット1の施解錠アプリケーションがインストールされた携帯端末において施解錠アプリケーションの施錠操作を行う。これに基づきサーバ装置204が施錠信号を発信する。通信回線201を介して送信された施錠信号を錠ユニット1の通信手段16が受信すると、制御手段15はサムターン11を制御し、この例では反時計回り方向に回転させ、扉DRを施錠する。
【0079】
一方、このサムターン11の施錠信号によってはドアガード20は動作しない。また、この例では通常時において室外からの操作でドアガード20を係止状態にすることはできない。例えば、ドアガード20を係止するための信号(係止信号)は存在しないか、あるいは錠ユニット1の通信手段16が何らかの信号を受信した場合であっても、それによって制御手段15がドアガードユニット20Uを制御することはなく、すなわちアーム21を係止状態にする制御は行わない。ドアガード20は係止解除状態のまま、サムターン11のみが施錠状態(例えば
図9(B)の状態)となる。
【0080】
<<通常時室内側解錠動作>>
図8は、通常時の室内側からの解錠・係止解除操作、お及びそれに基づく錠ユニット1の解錠・係止解除動作を説明する図であり、錠ユニット1を室内側から見た斜視図である。
【0081】
まず例えば
図7(C)に示す施錠状態およびドアガード20の係止状態から、室内にいる操作者はサムターン11を所定方向(
図7の時計回り方向)に回転させる。これにより、デッドボルト52が、扉DRの戸先に引き込まれて扉DRが解錠状態となる(
図9(A))。ドアガード20を係止状態としたまま、サムターン11を解錠すると、同図(A)に示すようにアーム21と受け部材23が係合した状態で、アーム21の内周の長さ分、扉DRを開くことが可能となる。
【0082】
続いて
図8(B)および同図(C)を参照してドアガード20の係止解除について説明する。両図ではサムターン11は施錠状態となっているが、室内側からの操作する場合、サムターン11の操作とドアガード20の操作は操作者の任意で、それぞれ独立して行うことができる。
【0083】
アーム21が係止状態となっている場合、アーム21は、第二付勢手段27によって第二の方向R2(係止が解除される方向)に付勢されているものの、ケース側係止部112と、アーム側係止部212とが係合することにより、係止状態が維持(ロック)されている。
【0084】
これを解除するには、操作者はまずアーム21を保持し、室内側(手前)に僅かに引き込む引き込み動作を行う(
図9(B),
図4(D)参照)。これにより支持手段24は、第一付勢手段26による付勢力に抗って第四の方向R4に回動し、ケース側係止部112とアーム側係止部212とが離間し、両者の係合が解除される(
図5(A))。そしてアーム21は、第二付勢手段27の付勢力により折りたたまれ(操作者は、アーム21を僅かに第二の方向R2(折りたたむ方向)に回動させてもよい)、アーム収容溝210に収容され、係止解除状態となる(
図9(C)、
図5(B),同図(C))。なお、既に述べたように、室内からの操作者による引き込み動作は、
図4および
図5に示すスライダー33(の押し出しバー331)による支持手段24の押し込み動作と同様に機能する(スライダー33は移動しない)。
【0085】
本実施形態では上述したように、アーム21の係止状態はケース側係止部112とアーム側係止部212との物理的な接触(係合)によって保持され、第一付勢手段26の付勢力と第二付勢手段27の相反する付勢力のバランスに頼ることなく確実にアーム21を起立状態で保持できる。従って、室内から手動によりアーム21の係止解除を行うには、引き込み動作を行う必要があるが、この引き込み動作を行うことが必須の構成とすることで、防犯性を高めることもできる。
【0086】
例えば、居住者が換気目的等でドアガード20を係止状態としつつ、扉DRを開けた状態で保持する場合がある(
図8(A)参照)。このような場合、従来の一般的なドアガードでは、犯罪目的で、ドアガードを不正に解除できてしまう恐れがある。具体的には、室外から手を指し込み、ドアガードのアーム先端に伸縮可能な部材を引っ掛け、当該部材を室外側に引っ張りながら扉を閉めることでアームを倒し、ドアガードを不正に解除する手口がある。これに対し本実施形態では、ドアガード20の解除する場合には、アーム21を室内側に引き込む必要があるため、このような不正な解除を防止できる。
【0087】
なお、室内側からの操作に限り、サムターン11の操作とドアガード20の操作(特に施錠操作と係止操作)を連動させてもよい。例えば、サムターン11の施錠操作に連動して、制御手段15によって(自動で)ドアガード20を係止状態にしてもよい。
【0088】
<<通常時室外側解錠動作>>
通常時における室外からのサムターン11の解錠操作は、錠ユニット1に送信する信号が通常時解錠動作信号である以外は、上述の室外からのサムターン11の施錠操作と同様であるので詳細な説明は省略する。すなわち通常の帰宅時などの解錠操作であり、操作者は操作者の保持する携帯端末において施解錠アプリケーションの解錠操作が行われると、通常時解錠信号が発信される。通信回線を介して送信された通常時解錠信号を錠ユニット1の通信手段16が受信すると、制御手段15はサムターン11を制御し、この例では時計回り方向に回転させ、扉DRを解錠する。
【0089】
一方、このサムターン11の通常時解錠信号によってはドアガード20は動作しない。つまり制御手段15は、アーム21を係止解除状態にする制御は行わない。例えば、室内に居住者の一人がいてドアガード20が係止状態にあり、別の居住者が通常時解錠信号によって室外からサムターン11を解錠できたとしても、ドアガード20の係止により扉DRを全開することはできない。
【0090】
<<緊急時室外側解錠動作>>
次に、緊急時において、室外側からサムターン11の解錠操作とともにドアガード20の係止解除操作を行う場合について説明する。例えば、
図7に示す第一の操作者(居住者)Aがサムターン11を施錠状態とし、ドアガード20も係止状態としたまま、室内で例えば意識がない、動けないなどでいずれの操作も不可の要救護状態に陥っていたとする。
【0091】
このような状態において、第一の操作者(要救護の居住者、以下「要救護者A」)は、可能であれば自身の携帯端末202により施解錠アプリケーションAPの緊急解錠操作を行う。当該操作に基づきサーバ装置204は、緊急時解除信号を発信する。また、当該操作に基づき施解錠アプリケーションAPはサーバ装置204を介して、認証済みの第二の操作者(以下、関係者B)に緊急時である旨の通知(例えば、プッシュ通知など)を行う。
【0092】
また、要救護者が緊急解錠操作を行えず、要救護者本人と連絡がつかないことなどにより、関係者Bが緊急解錠の必要があると判断した場合、関係者Bは例えば、自身の保持する携帯端末203により施解錠アプリケーションの緊急解錠操作を行う。
【0093】
要救護者Aおよび/または関係者Bによる緊急時解除操作により通信回線201を介して送信された緊急時解除信号を錠ユニット1の通信手段16が受信すると、制御手段15はサムターン11を制御し、この例では時計回り方向に回転させ、扉DRを解錠する(
図9(A))。
【0094】
また、制御手段15は、通信手段16を介して受信する(同一の)緊急時解錠信号に基づき駆動手段30を制御し、ドアガード20の係止解除動作を行う。
【0095】
緊急時解錠信号の受信前(すなわち通常時)においては、手動でドアガード20を操作しても駆動手段30のスライダー33は移動せず、すなわちスライダー33は初期位置にある(
図4(A)、同図(B))。この状態において通信手段16が緊急時解錠信号を受信すると制御手段15は駆動手段30を制御し、アーム21の係止を解除させる。すなわち、制御手段15はモーター31を回転させ、スライダー33を初期位置から移動させる。これにより押し出しバー331は第一付勢手段26の付勢力に抗って傾斜面275Aを摺動し(
図4(C))、押し出し面275Bに到達する。支持手段24は、支持手段回転軸25を中心に第四の方向R4に回動して室内側に押し出される(
図4(D))。これによりアーム回転軸22がケース側係止部112から離間するように移動し、アーム側係止部212とケース側係止部112の係合が外れる(
図5(A))。アーム21は第二付勢手段27の付勢力により第二の方向R2に回動し、受け部材23から離脱してドアガード20は係止解除状態となる(
図5(B))。ドアガードユニット20Uの検出手段(不図示)がスライダー33の押し出し位置への到達を検出すると、制御手段15は駆動手段30によってスライダー33を初期位置に移動させる(
図5(C))。
【0096】
これにより、扉DRは全開可能となるので、駆け付けた関係者Bが室内に入ることができる。また、例えば関係者Bが遠方にいる場合などには(当該関係者からの通報を受けた)救助者Cなどが先に当該居室に到着する可能性もある。このような場合であっても例えば要救護者A自身の操作により、あるいは、関係者Bによる遠隔操作にて電子錠64の解錠ともにドアガード20の係止を解除する構成であれば関係者Bの到着を待機することなく、先に到着した救助者Cによって早急な手当てが可能となる。
【0097】
また、上述の施解錠システム200の施解錠アプリケーションAPを用いる構成の場合、緊急時も含め錠ユニット1の施解錠操作をすべて単一の携帯端末202、103で行うことができる。従って、特に緊急時の解錠操作に関し、別途緊急時の解錠操作用の鍵の形態や、別途設定される暗証番号を覚えておく必要がなくなる。つまり鍵の紛失や暗証番号の失念の恐れもなく、また鍵を携帯している者の到着を待つ必要もないため緊急時の早急に対応が可能となる。
【0098】
このように、本実施形態によれば、制御手段15が外部から送信される緊急時解錠信号を受信した場合にのみ、電子錠64の解錠とともに、ドアガード20の係止解除を行う。これにより高い防犯性は維持しつつも、緊急時においては早急に係止を解除することができる。
【0099】
また、室外からドアガード20の係止解除を可能とするために、ドアガード20の起立状態を維持するようにアーム回転軸22を扉DR側に押し込む方向に付勢する第一付勢手段26と、アーム21を倒す方向に付勢力を与える第二付勢手段27とを備えている。この場合、第一付勢手段26と第二付勢手段27とは相反する付勢力を生じさせる構成ではあるが、アーム21の係止状態はケース側係止部112とアーム側係止部212との物理的な接触(係合)によって保持される。つまり、第一付勢手段26の付勢力と第二付勢手段27をアーム21に直接的に作用させる構成ではないため、両者の相反する付勢力のバランスに頼る必要はなく、経年劣化による不具合を回避して、確実にアーム21を起立状態で保持できる。
【0100】
さらに、緊急時解除信号によらずにドアガード20を解除するには、ケース側係止部112とアーム側係止部212を離間させるためにアーム21を室内側に引き込む必要がある。従って、従来の一般的なドアガードで懸念されるドアガードの不正解除の方法ではドアガード20を解除することはできず、防犯効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 錠ユニット
10 室内ケース
10A 固定部材
11 サムターン
15 制御手段
16 通信手段
20 ドアガード
20U ドアガードユニット
21 アーム
21H 頭部
21HB 大径領域
21HS 小径領域
22 アーム回転軸
23 受け部材(係止杵)
24 支持手段
25 支持手段回転軸
26 第一付勢手段
27 第二付勢手段
30 駆動手段
31 モーター
32 動力変換手段
33 スライダー
50 錠ケース(錠装置)
52 デッドボルト
60 室外ケース
64 電子錠(電気錠)
101 内壁
102 上面
111 隔壁部
112 ケース側係止部
112 結果ケース側係止部
113 ケース側当接部
122 ケース側係止部
200 施解錠システム
201 通信回線
202、203 携帯端末
204 サーバ装置(クラウドサーバ装置)
210 アーム収容溝
211 凹部
212 アーム側係止部
213 アーム側当接部
241、242 側面
243 凹部
244 突起部
271 側面
275 傾斜凸部
275A 傾斜面
275B 面
311 回転軸
321 ウォーム
322 ウォームホイール
323 ギア
324 ギア(ピニオン)
325 ラック
331 押し出しバー