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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177449
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20221124BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083710
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】土橋 佑司
(72)【発明者】
【氏名】村松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤野 日出海
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DA01
3B084DB01
3B084DC01
3B084DD01
3B087BD04
(57)【要約】
【課題】シートバックの座り心地を悪化させることなくシートバックの前部に高さ調節可能なクッション体を設けることができるシート装置を提供すること。
【解決手段】シート装置1は、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、シートバック2の前部に設けられるクッション体10と、クッション体10をシートバック2に対して高さ方向に位置調節可能なように連結する高さ調節機構20と、を有する。高さ調節機構20が、シートバック2のシート幅方向の各側部に設けられる高さ方向に延びる各ガイド部材21と、クッション体10に設けられて各ガイド部材21に対して高さ方向に摺動可能なように組み付けられる各スライダ22と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート装置であって、
着座者の背凭れ部となるシートバックと、
該シートバックの前部に設けられるクッション体と、
該クッション体を前記シートバックに対して高さ方向に位置調節可能なように連結する高さ調節機構と、を有し、
前記高さ調節機構が、前記シートバックのシート幅方向の各側部に設けられる高さ方向に延びる各ガイド部材と、前記クッション体に設けられて各前記ガイド部材に対して高さ方向に摺動可能なように組み付けられる各スライダと、を有するシート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート装置であって、
前記シートバックが、その前面下部に、後方に向かって凹む凹部を有し、
前記クッション体が、前記高さ調節機構により、前記凹部内に収納されて着座者の腰部を支える収納位置と、前記凹部より引き上げられて着座者の腰部より上方の身体部位を支える展開位置と、に位置調節可能とされるシート装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシート装置であって、
前記シートバックの各前記側部を覆う各カマチカバーピースが、互いに前後に並んで縫合される前カバーピースと後カバーピースとを有し、
前記後カバーピースは、その前記前カバーピースと縫合される前縁が、該後カバーピース一般面とシート幅方向の内側から重なるように後方に折り返されて、前記一般面と共に前記前カバーピースの後縁と縫合されることで、前記前カバーピースとの縫合部から前方に延出する延出部を備え、
各前記ガイド部材が、対応する前記各カマチカバーピースにおける前記後カバーピースの前記前縁と前記前カバーピースの前記後縁との間に挟まれて前記縫合部にて共縫いされることで、前記延出部によりシート幅方向の外側から覆われるシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート装置に関する。詳しくは、着座者の背凭れ部となるシートバックと、シートバックの前部に設けられるクッション体と、を有するシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて、シートバックの前部に高さ調節可能なネックレストが設けられた構成が知られている(特許文献1)。上記ネックレストは、シートバックの背凭れ面上に設けられた左右一対の線ファスナの各スライダと結合されている。それにより、ネックレストは、各スライダを各線ファスナのエレメントに沿って上下スライドさせることで、シートバックに対する高さ調節を行える構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3138274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各エレメントがシートバックの背凭れ面上に設けられているため、座り心地が損なわれやすい。そこで、本発明は、シートバックの座り心地を悪化させることなくシートバックの前部に高さ調節可能なクッション体を設けることができるシート装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシート装置は次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシート装置は、着座者の背凭れ部となるシートバックと、シートバックの前部に設けられるクッション体と、クッション体をシートバックに対して高さ方向に位置調節可能なように連結する高さ調節機構と、を有する。高さ調節機構が、シートバックのシート幅方向の各側部に設けられる高さ方向に延びる各ガイド部材と、クッション体に設けられて各ガイド部材に対して高さ方向に摺動可能なように組み付けられる各スライダと、を有する。
【0007】
上記構成によれば、クッション体を高さ方向に位置調節可能なようにガイドする各ガイド部材が、シートバックの背凭れ面上から外れた各側部に設けられることとなる。したがって、シートバックの座り心地を悪化させることなく、クッション体をシートバックの前部に高さ調節可能なように設けることができる。
【0008】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。シートバックが、その前面下部に、後方に向かって凹む凹部を有する。クッション体が、高さ調節機構により、凹部内に収納されて着座者の腰部を支える収納位置と、凹部より引き上げられて着座者の腰部より上方の身体部位を支える展開位置と、に位置調節可能とされる。
【0009】
上記構成によれば、クッション体を凹部内に収納することで、クッション体をシートバックからの張り出しを抑えた収納状態としつつ、シートバックの一部として合理的に機能させることができる。
【0010】
また、本発明のシート装置は、更に次のように構成されていても良い。シートバックの各側部を覆う各カマチカバーピースが、互いに前後に並んで縫合される前カバーピースと後カバーピースとを有する。後カバーピースは、その前カバーピースと縫合される前縁が、後カバーピースの一般面とシート幅方向の内側から重なるように後方に折り返されて、一般面と共に前カバーピースの後縁と縫合されることで、前カバーピースとの縫合部から前方に延出する延出部を備える。各ガイド部材が、対応する各カマチカバーピースにおける後カバーピースの前縁と前カバーピースの後縁との間に挟まれて縫合部にて共縫いされることで、延出部によりシート幅方向の外側から覆われる。
【0011】
上記構成によれば、各ガイド部材をシートバックの各カマチカバーピースの縫合部に合理的に取り付けることができる。また、各ガイド部材を各カマチカバーピースの延出部によりシート幅方向の外側から覆ってシートバックの見栄え品質を崩しにくい状態に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るシート装置の概略構成を表す斜視図である。
図2】シートバックの正面図である。
図3】シートバックの側面図である。
図4】クッション体を引き上げた状態を表す側面図である。
図5】クッション体を子どものヘッドレストとして使用する状態を表す側面図である。
図6図3のVI-VI線断面図である。
図7】第2の実施形態に係るシート装置の概略構成を表す図6に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
《第1の実施形態》
(シート装置1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシート装置1の構成について、図1図6を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」等、各方向に「シート」を付して示す場合には、後述するシート装置1の向きを基準とした方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図6のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るシート装置1は、航空機の座席として構成される。上記シート装置1は、着座者の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備える。シートバック2は、その上部領域に着座者の頭凭れ部となるヘッドレスト部2Hが一体的に形成された、いわゆるハイバックタイプの構成とされる。
【0016】
シートバック2は、その背凭れ面となる天板面が、略平坦な面形状とされる。詳しくは、シートバック2は、そのヘッドレスト部2Hが形成される上部領域が、それより下側の領域に対して前方に僅かに折れ曲がる形状とされる。シートバック2は、上記ヘッドレスト部2Hを含む上部領域から下側の領域が、略一定の横幅で高さ方向に寸胴状に延びる形状とされる(図2参照)。
【0017】
シート装置1は、更に、着座者の肘置き部となる左右一対のアームレスト4を備える。また、シート装置1は、シートバック2の前部に設けられるクッション体10を有する。また、シート装置1は、クッション体10をシートバック2に対して高さ方向に位置調節可能なように連結する高さ調節機構20を備える。
【0018】
シートバック2は、その下端部が、不図示のリクライニング機構を介してシートクッション3の後端部と連結されている。それにより、シートバック2は、着座者が左右どちらかのアームレスト4の内側部に設けられた不図示のボタンを押し込む操作をすることにより、シートクッション3に対する背凭れ角度をシート前後方向に自由に調節することができる構成とされる。
【0019】
シートクッション3は、フロア上に一体的に固定されている。左右一対のアームレスト4は、それぞれ、シートバック2の左右両サイドから前方へ延び出す形に設けられている。各アームレスト4は、それらの基部が、シートクッション3の左右両サイドの後端部からシートバック2の左右両側部に沿って上方へと延び出す対応する各ベース5に回転可能なように連結されている。
【0020】
それにより、各アームレスト4は、それらの不使用時には、各ベース5との連結部を支点に後方へと跳ね上げて、シートバック2の左右両側部に沿った起立位置へと格納することができるようになっている。クッション体10は、シートバック2の前部に設けられて、シートバック2による着座者の姿勢支持を補うサポート部材として構成される。
【0021】
上記クッション体10は、図3図5に示すように、高さ調節機構20により、シートバック2に対する取付位置を高さ方向に自由に調節することができるようになっている。以下、クッション体10及び高さ調節機構20の各部の具体的な構成について、シートバック2の構成と共に詳しく説明する。
【0022】
(シートバック2について)
図1及び図6に示すように、シートバック2は、その内部骨格を成す金属製のバックフレーム2Fと、バックフレーム2Fの前部に組み付けられて着座者の荷重を弾性的に支持する発泡ウレタン製のバックパッド2Pと、シートバック2の表面全体を覆うファブリック製のバックカバー2Cと、を有する。バックフレーム2Fは、シートバック2の周囲に沿った縦長な正面視枠状に組まれた角パイプ材から成る。
【0023】
バックパッド2Pは、バックフレーム2Fの枠全域に前方から被せられる形にセットされる高さ方向に長尺な平板状の部材から成る。バックカバー2Cは、バックフレーム2Fの前部に組み付けられたバックパッド2Pに対し、前方から被せられる形に組み付けられる。
【0024】
そして、上記バックカバー2Cは、その上下左右の各周縁部が、バックフレーム2Fの背裏側(後側)へと引き込まれて、図示しない面ファスナやフック等によりシートバック2の背裏部に固定されている。上記バックカバー2Cの背裏側へと引き込まれた各端末は、シートバック2の背裏部に被せられる不図示のバックボードにより外部に対して被覆されている。
【0025】
上記バックカバー2Cは、シートバック2の各面の形に合わせてカットされた複数枚のカバーピースが1枚に縫合されて形成されている。上記バックカバー2Cのうち、シートバック2の左右の各側部を覆う各カマチカバーピースCAは、図6に示すように、バックパッド2Pを側方から覆う前カバーピースCA1と、その後ろにあるバックフレーム2Fの枠側部を側方から覆う後カバーピースCA2と、の2枚のカバーピースにより構成される。これら前カバーピースCA1と後カバーピースCA2とは、互いに前後にひと続き状に並ぶ形に縫合されている。
【0026】
詳しくは、後カバーピースCA2は、その前カバーピースCA1と縫合される前縁が、後カバーピースCA2の一般面とシート幅方向の内側から重なるように後方に折り返されて、一般面と共に前カバーピースCA1の後縁と縫合されている(縫合部CA3)。上記縫合により、後カバーピースCA2は、前カバーピースCA1との縫合部CA3から前方に延出する延出部CA4を備えた構成とされる。
【0027】
図3に示すように、シートバック2の前面下部には、シート幅方向の全域に亘って後方に凹む凹部2Aが形成されている。上記凹部2Aは、クッション体10をシートバック2の下部へと下げることで、クッション体10を内部に収納することができる凹形状とされている。上記収納により、クッション体10を、シートバック2の背凭れ面からの張り出しを抑えた状態にしておくことができる。
【0028】
(クッション体10について)
クッション体10は、発泡ウレタン製のクッションパッド11と、クッションパッド11の表面全体を覆うファブリック製のクッションカバー12と、を有する。上記クッション体10は、シートバック2と略同一の横幅を備える平板状の部材から成る。上記クッション体10は、高さ調節機構20によりシートバック2の背凭れ面上に高さ調節可能なように設けられる。
【0029】
具体的には、クッション体10は、使用者による手動操作により、シートバック2の高さ方向の略全域に亘って位置調節することができる構成とされる。それにより、クッション体10は、図3に示すように、シートバック2の前面下部に形成された凹部2A内に収納される位置と、図4図5に示すように凹部2Aより上方に引き上げられる位置と、の間で高さ方向に位置調節することができる構成とされる。
【0030】
図3に示すように、クッション体10は、シートバック2の前面下部の凹部2A内に収納された状態では、シートバック2の背凭れ面よりも前方に僅かに膨らむサポート形状を張り出させた状態とされる。それにより、クッション体10は、着座者の腰部を他の部位よりも強く後方から支持するランバーサポートとして機能する状態となる。
【0031】
また、図4に示すように、クッション体10は、上記凹部2Aよりも上方に引き上げられることで、シートバック2の背凭れ面上に部分的に前方に膨らむサポート形状を張り出させた状態とされる。それにより、クッション体10は、その高さ位置に応じて、着座者の肩甲骨等の身体部位を他の部位よりも強く後方から支持する上部サポートとして機能する状態となる。
【0032】
また、図示は省略されているが、クッション体10は、着座者の首部に後側から当てられる位置へと合わされることにより、着座者の頭部の重さを支えて、首部や肩部をリラックスした姿勢で支えることのできるネックレストとして機能する状態となる。また、クッション体10は、着座者の頭部に後側から当てられる位置へと合わされることにより、頭部をヘッドレスト部2Hよりも前方の位置で支持することが可能なヘッドレストとして機能する状態となる。
【0033】
また、図5に示すように、クッション体10は、着座者が小柄な子どもの場合であっても、その人の体格に合わせた所望の位置へと動かすことで、同図に示すようなヘッドレストや図示しないネックレスト、上部サポート等として適切に機能することができる状態となる。
【0034】
(高さ調節機構20について)
高さ調節機構20は、図6に示すように、各カマチカバーピースCAに縫合された高さ方向に延びる各ガイド部材21と、クッション体10のシート幅方向の両端部に設けられて各ガイド部材21に対して高さ方向に摺動可能なように組み付けられる各スライダ22と、を有する。各ガイド部材21は、高さ方向に延びる布製帯状のテープ21Aと、テープ21Aの前縁に沿って設けられた複数の歯が並ぶエレメント21B(務歯)と、で構成される。
【0035】
各スライダ22は、各ガイド部材21のエレメント21Bに対して上端或いは下端から通されることで、各エレメント21Bに沿って高さ方向に摺動することはできるが、各エレメント21Bからは剥離されない状態に組み付けられている。上記組み付けにより、クッション体10を、各スライダ22のスライドによって、シートバック2の背凭れ面に沿って高さ方向に摺動させることができる。
【0036】
各スライダ22は、各ガイド部材21に沿って高さ方向に動かされた任意の位置で、これらの各ガイド部材21に対する摺動摩擦抵抗力や、クッション体10がシートバック2の表面に接触することに伴う摺動摩擦抵抗力により係止されるようになっている。したがって、使用者がクッション体10を掴んで上下に動かすことにより、クッション体10を高さ方向の所望の位置へと簡便に動かすことができると共に、その位置に簡便に係止させることができる。
【0037】
各ガイド部材21は、各カマチカバーピースCAに対して、それぞれ次のように縫合部CA3に共縫いされて設けられている。すなわち、各ガイド部材21は、それらのテープ21Aの後縁が、対応する各カマチカバーピースCAにおける後カバーピースCA2の前縁と前カバーピースCA1の後縁との間に挟まれて、これらの縫合部CA3と共縫いされている。それにより、各ガイド部材21は、それらのテープ21Aが、各カマチカバーピースCAの縫合部CA3から前方に延出する後カバーピースCA2の延出部CA4によりシート幅方向の外側から覆われた状態として設けられている。
【0038】
各ガイド部材21は、図3等に示すように、シートバック2の左右両側部に沿って、各アームレスト4よりも下方の位置、すなわち、各ベース5により外側から覆われる下方の位置まで延びるように配設されている。このようなシートバック2の左右両側部が各ベース5により外側から覆われる領域では、これらの間の隙間が狭く、使用者が手指を入れて各スライダ22に触れることが難しい。
【0039】
しかし、高さ調節機構20は、使用者が各スライダ22に触れなくても、クッション体10を掴んで上下に動かすことで、各スライダ22を各ガイド部材21に沿って高さ方向に摺動させることができる構成とされる。したがって、上記高さ調節機構20により、クッション体10を、シートバック2の各ベース5により外側から覆われる下方の領域も含めた高さ方向の広い範囲に亘って位置調節することができる。
【0040】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシート装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0041】
すなわち、シート装置(1)は、着座者の背凭れ部となるシートバック(2)と、シートバック(2)の前部に設けられるクッション体(10)と、クッション体(10)をシートバック(2)に対して高さ方向に位置調節可能なように連結する高さ調節機構(20)と、を有する。高さ調節機構(20)が、シートバック(2)のシート幅方向の各側部に設けられる高さ方向に延びる各ガイド部材(21)と、クッション体(10)に設けられて各ガイド部材(21)に対して高さ方向に摺動可能なように組み付けられる各スライダ(22)と、を有する。
【0042】
上記構成によれば、クッション体(10)を高さ方向に位置調節可能なようにガイドする各ガイド部材(21)が、シートバック(2)の背凭れ面上から外れた各側部に設けられることとなる。したがって、シートバック(2)の座り心地を悪化させることなく、クッション体(10)をシートバック(2)の前部に高さ調節可能なように設けることができる。
【0043】
また、シートバック(2)が、その前面下部に、後方に向かって凹む凹部(2A)を有する。クッション体(10)が、高さ調節機構(20)により、凹部(2A)内に収納されて着座者の腰部を支える収納位置と、凹部(2A)より引き上げられて着座者の腰部より上方の身体部位を支える展開位置と、に位置調節可能とされる。
【0044】
上記構成によれば、クッション体(10)を凹部(2A)内に収納することで、クッション体(10)をシートバック(2)からの張り出しを抑えた収納状態としつつ、シートバック(2)の一部として合理的に機能させることができる。
【0045】
また、シートバック(2)の各側部を覆う各カマチカバーピース(CA)が、互いに前後に並んで縫合される前カバーピース(CA1)と後カバーピース(CA2)とを有する。後カバーピース(CA2)は、その前カバーピース(CA1)と縫合される前縁が、後カバーピース(CA2)の一般面とシート幅方向の内側から重なるように後方に折り返されて、一般面と共に前カバーピース(CA1)の後縁と縫合されることで、前カバーピース(CA1)との縫合部(CA3)から前方に延出する延出部(CA4)を備える。
【0046】
各ガイド部材(21)が、対応する各カマチカバーピース(CA)における後カバーピース(CA2)の前縁と前カバーピース(CA1)の後縁との間に挟まれて縫合部(CA3)にて共縫いされることで、延出部(CA4)によりシート幅方向の外側から覆われる。上記構成によれば、各ガイド部材(21)をシートバック(2)の各カマチカバーピース(CA)の縫合部(CA3)に合理的に取り付けることができる。また、各ガイド部材(21)を各カマチカバーピース(CA)の延出部(CA4)によりシート幅方向の外側から覆ってシートバック(2)の見栄え品質を崩しにくい状態に設けることができる。
【0047】
《第2の実施形態》
続いて、本発明の第2の実施形態に係るシート装置1について、図7を用いて説明する。本実施形態では、クッション体10をシートバック2に対して高さ方向に位置調節可能なように連結する高さ調節機構30が次のように構成されている。
【0048】
すなわち、高さ調節機構30は、各カマチカバーピースCAに縫合された高さ方向に延びる各ガイド部材31と、クッション体10のシート幅方向の両端部に設けられて各ガイド部材31に対して高さ方向に摺動可能なように組み付けられる各スライダ32と、を有する。各ガイド部材31は、高さ方向に延びる板状の基部31Aと、基部31Aの前縁に沿って玉縁状に膨らむ形に形成された芯部31Bと、を有する樹脂部材により形成されている。
【0049】
各スライダ32は、各ガイド部材31の芯部31Bに対して上端或いは下端から通されることで、各芯部31Bに沿って高さ方向に摺動可能となるように各芯部31Bに嵌合した状態に組み付けられている。上記組み付けにより、クッション体10を、各スライダ32のスライドによって、シートバック2の背凭れ面に沿って高さ方向に摺動させることができる。
【0050】
各スライダ32は、各ガイド部材31に沿って高さ方向に動かされた任意の位置で、これらの各ガイド部材31に対する摺動摩擦抵抗力や、クッション体10がシートバック2の表面に接触することに伴う摺動摩擦抵抗力により係止されるようになっている。したがって、使用者がクッション体10を掴んで上下に動かすことにより、クッション体10を高さ方向の所望の位置へと簡便に動かすことができると共に、その位置に簡便に係止させることができる。
【0051】
各ガイド部材31は、各カマチカバーピースCAに対して、それぞれ次のように縫合部CA3に共縫いされて設けられている。すなわち、各ガイド部材31は、それらの基部31Aの後縁が、対応する各カマチカバーピースCAにおける後カバーピースCA2の前縁と前カバーピースCA1の後縁との間に挟まれて、これらの縫合部CA3と共縫いされている。
【0052】
それにより、各ガイド部材31は、それらの基部31Aが、各カマチカバーピースCAの縫合部CA3から前方に延出する後カバーピースCA2の延出部CA4によりシート幅方向の外側から覆われた状態として設けられている。上記以外の構成は、第1の実施形態で示した構成と実質的に同一の構成となっているため、具体的な構成についての説明は省略することとする。
【0053】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を2つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0054】
1.本発明のシート装置は、航空機のシートの他、自動車や鉄道等の車両に適用されるシートや、船舶に適用されるシートとされても良い。また、シート装置は、乗物の他、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の様々な施設に設置される観覧席や、マッサージシート等の非乗物用のシートに適用されるものであっても良い。
【0055】
2.各ガイド部材は、各カマチカバーピースにおける後カバーピースの前縁と前カバーピースの前縁との間に挟まれて縫合されるものの他、各カマチカバーピースの外側部に当てられて縫合されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 シート装置
2 シートバック
2A 凹部
2H ヘッドレスト部
2F バックフレーム
2P バックパッド
2C バックカバー
3 シートクッション
4 アームレスト
5 ベース
10 クッション体
11 クッションパッド
12 クッションカバー
20 高さ調節機構
21 ガイド部材
21A テープ
21B エレメント
22 スライダ
30 高さ調節機構
31 ガイド部材
31A 基部
31B 芯部
32 スライダ
CA カマチカバーピース
CA1 前カバーピース
CA2 後カバーピース
CA3 縫合部
CA4 延出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7