(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177507
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】車両用主電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20221124BHJP
H02K 5/18 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H02K9/06 E
H02K5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083813
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】柴田 美里
(72)【発明者】
【氏名】谷村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】芝野 修
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD12
5H605DD31
5H609BB19
5H609PP01
5H609PP05
5H609QQ02
5H609QQ12
5H609RR02
5H609RR16
5H609RR24
5H609RR27
5H609RR35
5H609RR38
5H609RR42
5H609RR43
5H609RR63
(57)【要約】
【課題】複数のフィン通風路を流れる冷却空気の速度を増大させ、複数のフィン通風路を流れる冷却空気の流量のアンバランスを改善することでステータの冷却効率を高める車両用主電動機を提供する。
【解決手段】ハウジング周壁2aに固定されたステータ3と、回転軸4に固定されたロータ5と、回転軸の一端側に固定された冷却ファン6と、冷却ファン及びハウジング2を外側から覆うカバー7のカバー周壁7b,7cの内周面及びハウジング周壁の外周面の間に設けられ、複数のフィン16が周方向に所定間隔をあけて形成されてなる複数のフィン通風路14cと、複数のフィンの所定の軸方向位置に形成した切欠き17、18と、カバー周壁の内周面から軸方向に直交する方向に延在して突出し、ハウジング周壁との間にギャップT1を設けて複数のフィンの切欠きに挿入され、複数のフィン通風路を軸方向に少なくとも2分する風制御板19、20と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状のハウジングと、
前記ハウジングのハウジング周壁に固定されているステータコイルを埋設したステータと、
前記ステータの内部に配置され、回転軸に固定されたロータと、
前記回転軸の一端側に固定された冷却ファンと、
前記冷却ファン及び前記ハウジングを外側から覆うカバーと、
前記カバーのカバー周壁の内周面及び前記ハウジング周壁の外周面の間に設けられ、前記外周面から突出して軸方向に延在する複数のフィンが周方向に所定間隔をあけて形成されてなる複数のフィン通風路と、
前記複数のフィンの所定の軸方向位置に形成した切欠きと、
前記カバー周壁の内周面から軸方向に直交する方向に延在して突出し、前記ハウジング周壁との間にギャップを設けて前記複数のフィンの前記切欠きに挿入され、前記複数のフィン通風路を軸方向に少なくとも2分する風制御板と、を備えていることを特徴とする車両用主電動機。
【請求項2】
前記風制御板は、前記複数の通風路の前記冷却ファンから冷却空気が送り込まれる上流側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の車両用主電動機。
【請求項3】
前記風制御板は、前記複数の通風路を流れる冷却空気の流量が増大し、前記ハウジング周壁に沿って冷却空気を流す形状を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用主電動機。
【請求項4】
前記風制御板の前記ハウジング周壁に対向する長手方向の端面形状は、前記ハウジング周壁とのギャップが均一な曲面形状であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用主電動機。
【請求項5】
前記風制御板の前記ハウジング周壁に対向する長手方向の端面形状は、長手方向の中央部が前記ハウジング周壁に近接して小さなギャップを有し、長手方向の両端部に向うに従い前記ハウジング周壁から離間して大きなギャップを有する形状であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用主電動機。
【請求項6】
前記風制御板の前記ハウジング周壁に対向する長手方向の端面形状は、前記軸方向に直交して水平方向に延在する水平端面に形成されていることを特徴とする請求項5記載の車両用主電動機。
【請求項7】
前記風制御板の前記ハウジング周壁に対向する長手方向の端面形状は、長手方向の中央部に形成されている前記軸方向に直交して水平方向に延在する水平端面と、前記水平端面から長手方向の両端に向うに従い前記ハウジング周壁に近接する側に傾斜する一対の傾斜端面と、を備えていることを特徴とする請求項5記載の車両用主電動機。
【請求項8】
前記風制御板と前記ハウジング周壁との間のギャップは、通風路の圧力損失と冷却空気の速度および冷却空気流量に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の車両用主電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両を駆動する車両用主電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、車体の床下に配置された台車に車輪を駆動する車両用主電動機が取り付けられている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の車両用主電動機は、円筒形状のハウジング周壁に固定されたステータと、ステータの内部に配置されて回転軸に固定されたロータと、回転軸の一端側に固定された冷却ファンと、冷却ファン及びハウジングを外側から覆うカバーと、を備えている。ハウジング周壁の外周面には、周方向に所定間隔をあけてカバー周壁の内周面に向けて延在する複数のフィンが形成されており、隣接するフィンの間に複数のフィン通風路が形成されている。また、複数のフィン通風路に、カバー周壁の内周面からハウジング周壁の外周面に向けて突出する流速制御突起部が設けられており、冷却ファンから送り込まれて複数のフィン通風路を流れる冷却空気が流速制御突起部に衝突することで速度が増大し、ハウジング周壁の外周面に存在する温度境界層が薄くすることで、ステータの冷却効率を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車両用主電動機は、冷却ファンから複数のフィン通風路に流れ込む冷却空気の流量がアンバランスになり、ステータの冷却効率が低下するおそれがある。
すなわち、1方向に回転する冷却ファンから複数のフィン通風路に冷却空気が流れ込むが、冷却ファンの回転方向の下流側に位置している下流側フィン通風路に流れ込む冷却空気の流量は増大し、冷却ファンの回転方向の上流側に位置している上流側フィン通風路への冷却空気の流量が減少する。これにより、冷却空気の流量が減少する上流側フィン通風路は、熱が伝わった冷却空気が外気に放出されにくくなるので、ステータの冷却効率が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、複数のフィン通風路を流れる冷却空気の速度を増大させ、複数のフィン通風路を流れる冷却空気の流量のアンバランスを改善することでステータの冷却効率を高めることができる車両用主電動機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る車両用主電動機は、円筒形状のハウジングと、ハウジングのハウジング周壁に固定されているステータコイルを埋設したステータと、ステータの内部に配置され、回転軸に固定されたロータと、回転軸の一端側に固定された冷却ファンと、冷却ファン及びハウジングを外側から覆うカバーと、カバーのカバー周壁の内周面及びハウジング周壁の外周面の間に設けられ、外周面から突出して軸方向に延在する複数のフィンが周方向に所定間隔をあけて形成されてなる複数のフィン通風路と、複数のフィンの所定の軸方向位置に形成した切欠きと、カバー周壁の内周面から軸方向に直交する方向に延在して突出し、ハウジング周壁との間にギャップを設けて複数のフィンの切欠きに挿入され、複数のフィン通風路を軸方向に少なくとも2分する風制御板と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用主電動機によれば、複数のフィン通風路を流れる冷却空気の速度を増大させ、複数のフィン通風路を流れる冷却空気の流量のアンバランスを改善することでステータの冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の車両用主電動機の外観を示す図である。
【
図3】第1実施形態の車両用主電動機に設けた通風路を出側開口部側から示した図である。
【
図4】本発明に係る第2実施形態の車両用主電動機に設けた通風路を出側開口部側から示した図である。
【
図5】本発明に係る第3実施形態の車両用主電動機に設けた通風路を出側開口部側から示した図である。
【
図6】第1~第3実施形態の複数のフィン通風路を流れる冷却空気の静圧を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の第1から第12実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す第1から第12実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「左」、「右」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0011】
[第1実施形態の車両用主電動機]
図1から
図3は、本発明に係る第1実施形態の車両用主電動機1及びその要部を示すものである。
図2に示すように、本実施形態の車両用主電動機1は、円筒形状のハウジング周壁2a及びハウジング周壁2aの両端で連続する一対のハウジング側壁2b,2cからなる金属製のハウジング2と、ハウジング周壁2aの内周面に固定されているステータ3と、ステータ3の内側に配置されて回転軸4(軸線P)に同軸に固定されているロータ5と、一方のハウジング側壁2b側に配置され、回転軸4の左側軸端に固定した冷却ファン6と、冷却ファン6、ハウジング周壁2a及び一方のハウジング側壁2bを覆っている金属製のカバー7と、を備えている。
【0012】
ステータ3は、ステータコア(図示しない)とステータコイル9を備えている。ステータコアは、環状の磁性鋼板が軸方向に複数枚積層されることで、軸方向に沿うように延びる筒状に形成されている。そして、ステータコアの内周部分に、径方向の内側に向かって突出する複数のティースが周方向に間隔をあけて形成されており、ティース間にスロットが形成され、スロットにステータコイル9が巻回されている。ロータ5は、環状の磁性鋼板が軸方向に沿って複数枚積層されることで筒状に形成されている。
冷却ファン6は、ハウジング2のハウジング側壁2bに設けた開口部2dの径方向内側に配置されており、一端が回転軸4に固定されて他端が放射状に延在している複数の羽根支持部6bと、羽根支持部6bの他端に設けられている羽根6aと、を備えている。
【0013】
カバー7は、
図2に示すように、冷却ファン6を外側から囲むようにハウジング側壁2bの外側に配置されてファン収納空間12を形成するカバー側壁7aと、
図1に示すように、ハウジング周壁2aの一部(
図1に示すようにハウジング周壁2aの上部)を覆って配置した第1カバー周壁7bと、ハウジング周壁2aの他部(
図1に示すようにハウジング周壁2aの下方)に配置した第2カバー周壁7cと、を備えている。カバー側壁7aには、
図2に示すように、外部からファン収納空間12に冷却空気を取り入れる空気取り入れ孔7dが形成されている。
【0014】
図1に示すように、ハウジング周壁2aの上部に連続して外側に張り出す膨出部2e,2fが形成されており、ハウジング周壁2aの上部及び膨出部2e,2fを覆うように第1カバー周壁7bを配置することで、それらの内部空間に通風路14が形成されている。複数の通風路14は、
図2に示すように、ファン収納空間12に連通する入側開口部14aと、外気に開口する出側開口部14bとを有する。また、ハウジング周壁2aの下部に連続して外側に張り出す膨出部2e,2fが形成されており、ハウジング周壁2aの下部及び膨出部2e,2fを覆うように第2カバー周壁7cを配置することで、それらの内部空間に通風路15が形成されている。
【0015】
図3に示すように、通風路14を形成しているハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fには、周方向に所定間隔をあけて複数のフィン16が形成されている。これら複数のフィン16の先端が第1カバー周壁7bに向けて延在することで、通風路14には、複数のフィン16により周方向に分割された複数のフィン通風路14cが形成される。
【0016】
図2に示すように、複数のフィン16には、入側開口部14aに寄った軸線Pに沿う同一位置に、ハウジング周壁2aまで切欠いた第1切欠き17が形成されており、出側開口部14bに寄った軸線Pに沿う同一位置にも、ハウジング周壁2aまで切欠いた第2切欠き18が形成されている。
また、第1カバー周壁7bの内壁から第1風制御板19及び第2風制御板20が突出して形成されており、第1風制御板19が複数の第1切欠き17に挿入され、第2風制御板20は複数の第2切欠き18に挿入されている。
【0017】
図3に示すように、第2風制御板20の下端形状は、ハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fに沿った形状であり、隣接するフィン16,16間のハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fと第2風制御板20の下端とのギャップは均一の寸法T1に設定されている。そして、第1風制御板19の下端形状も、ハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fに沿った形状であり、隣接するフィン16,16間のハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fと第1風制御板19の下端とのギャップも寸法T1に設定されている。
【0018】
図1においてハウジング周壁2aの下部に形成されている通風路15にも、前述したハウジング周壁2aの上部に形成した通風路14と同一形状の複数のフィン16、第1風制御板19及び第2風制御板20が配置されている。
そして、
図1の矢印R方向に冷却ファン6の羽根6aが回転することで、空気取り入れ孔7dからファン収納空間12に取り入れた冷却空気が、通風路14(通風路15)の入側開口部14aから出側開口部14b向けて通過する。
【0019】
次に、第1実施形態の車両用主電動機1の動作について説明する。
車両用主電動機1の駆動時には、ステータコイル9が発熱するので、ステータコイル9が埋設されているステータ3が発熱部となる。
冷却ファン6は、回転軸4から回転力が伝達されて羽根6bが
図1の矢印R方向に回転することで、空気取り入れ孔7dから冷却空気をファン収納空間12に取り込み、通風路14の複数のフィン通風路14cの入側開口部14a及び複数の通風路15の入側開口部に冷却空気を送り出す。
【0020】
通風路14の複数のフィン通風路14cに流れ込んだ冷却空気は、
図2の破線で示すように、入側開口部14aから第1カバー周壁7bに沿って流れていく。そして、冷却空気は、第1風制御板19に衝突することで、ハウジング周壁2aに流れ方向が変わり、ハウジング周壁2aに沿って出側開口部14bに向けて流れていく。また、出側開口部14bに向けて流れる冷却空気は、第2風制御板20に衝突することで、ハウジング周壁2aから離れて第1カバー周壁7b側へ流れようとするのが矯正され、ハウジング周壁2aに沿って流れていく。
このように、通風路14の複数のフィン通風路14cに流れ込んだ冷却空気は、第1風制御板19及び第2風制御板20に衝突することで、ハウジング周壁2aに沿って流れていくので、ハウジング周壁2aの外周面に形成される温度境界層が薄くなり、通風路14の複数のフィン通風路14cを流れる冷却空気が、熱を外気に放出しやすくなる。
【0021】
ここで、複数のフィン16が入側開口部14aから出側開口部14bまで一体形状のフィン形状であると(前述した特許文献1の構造)、通風路14の複数のフィン通風路14cに流れこむ冷却空気の流量は、冷却ファン6の羽根6aの回転方向(
図1の矢印R方向の回転)の下流側のフィン通風路14c(
図3の左側のフィン通風路14c)の流量が増大し、上流側のフィン通風路14c(
図3の右側のフィン通風路14c)の流量が減少する。冷却空気の流量が減少したフィン通風路14cは、熱を外気に放出しにくくなる。
【0022】
これに対して、本実施形態の通風路14は、複数のフィン16が入側開口部14aに寄った位置に第1切欠き17が形成され、出側開口部14bに寄った位置に第2切欠き18が形成され、入側開口部14aから出側開口部14bまで分割されたフィン形状であり、周方向に隣接するフィン通風路14c、14cを流れる冷却空気は第1切欠き17及び第2切欠き18を介して合流するので、周方向に隣接するフィン通風路14c、14cの流量のアンバランス(流量の増減)は無くなる。このように、本実施形態の通風路14は、複数のフィン通風路14cを流れる冷却空気の流量増減が発生しないので、熱が外気に放出しやすくなる。
【0023】
なお、通風路15も、通風路14と略同一構成なので、通風路14の冷却動作と同様の冷却動作を行う。
したがって、第1実施形態の車両用主電動機1は、通風路14(通風路15も同様)の複数のフィン通風路14cに流れ込んだ冷却空気が、第1風制御板19及び第2風制御板20に衝突することでハウジング周壁2aに沿って流れていき、ハウジング周壁2aの外周面に形成される温度境界層が薄くなり、複数のフィン通風路14cを流れる冷却空気に伝達された熱が外気に放出しやすくなるので、ステータ3の温度を効率よく低下することができる。
【0024】
また、本実施形態は、複数のフィン16に設けた第1切欠き17及び第2切欠き18が、複数のフィン通風路14cを流れる冷却空気を合流させて冷却空気の流量のアンバランスを無くして流量が減少したフィン通風路14cが存在しないので、さらに熱を外気に放出しやすくなり、ステータ3の温度をさらに効率よく低下することができる。
【0025】
また、本実施形態は、複数のフィン16に設けた第1切欠き17及び第2切欠き18に、第1カバー周壁7bの内壁から突出した第1風制御板19及び第2風制御板20を挿入して配置されており、複数のフィン通風路の間にカバー周壁から突出する流速制御突起部を設ける前述した特許文献1と比較して、組立の簡素化を図ることができ、製造コストの低減化を図ることができる。
ここで、第1風制御板21及び第2風制御板20の下端と、ハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fとのギャップT1は、通風路14の圧力損失と冷却空気の速度および冷却空気流量のバランスを考慮して、ステータ3の冷却効率が高くなる値に設定される。
【0026】
[第2実施形態の風制御板]
次、
図4に示すものは、第2実施形態の第2風制御板21であり、複数のフィン16に形成した第2切欠き18に挿入される。また、第2実施形態の第1風制御板も、第2風制御板21と同一形状である。また、車両用主電動機1の他の構成も第1実施形態と同一構成である。
【0027】
本実施形態の第2風制御板21は、第1カバー周壁7bの内壁から突出しており、第2風制御板21の下端形状は、回転軸4の軸線Pに対して水平方向に直交する水平端面21aが延在する形状である。このため、隣接するフィン16,16間のハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fと第2風制御板21の水平端面21aとのギャップは、第2風制御板21の長手方向の中央部のギャップT1が小さく、第2風制御板21の長手方向の両端側のギャップT2が大きく設定されている(T1<T2)。ギャップT1は、第1実施形態の第2風制御板20の下端とハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fとのギャップと同一寸法である。また、第2風制御板21に対して同一形状の第1風制御板21も、第1カバー周壁7b及び膨出部2e,2fに対して同一寸法のギャップT1、T2を有している。また、
図1においてハウジング周壁2aの下部に形成されている通風路15にも、同一形状の第1及び第2風制御板21が配置されている。なお、ギャップT1は、第1実施形態の第2風制御板20の下端とハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fとのギャップと異なる寸法であってよい。
【0028】
第2実施形態の第1及び第2風制御板21を備えた車両用主電動機1は、冷却ファン6の回転により冷却空気が通風路14の複数のフィン通風路14cに流れると、第1及び第2風制御板21の両端側の水平端面21aと、ハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fとの間のギャップT2がギャップT1より大きく設定されているので、第1風制御板19及び第2風制御板20を配置した第1実施形態と比較して、複数のフィン通風路14cを流れる冷却空気の速度が増大してハウジング周壁2aの外周面に形成されている温度境界層を薄くすることができる。
【0029】
したがって、第2実施形態の第1及び第2風制御板21を備えた車両用主電動機1は、複数のフィン通風路14cを流れる冷却空気の速度が増大してハウジング周壁2aの外周面に形成されている温度境界層を薄くすることができるので、さらにステータ3の温度を効率よく低下することができる。
また、本実施形態の第1及び第2風制御板21の下端形状は水平端面21aが延在し、第1実施形態の第1及び第2風制御板19,20よりさらに簡便な形状なので、さらに製造コストの低減化を図ることができる。
また、本実施形態のギャップT1、T2も、第1実施形態で記載したと同様に、通風路14の圧力損失と冷却空気の速度および冷却空気流量のバランスを考慮して、ステータ3の冷却効率が高くなる値に設定される。
【0030】
[第3実施形態の風制御板]
次、
図5に示すものは、第3実施形態の第2風制御板22であり、複数のフィン16に形成した第2切欠き18に挿入される。また、第3実施形態の第1風制御板も、第2風制御板22と同一形状である。
本実施形態の第2風制御板22の下端形状は、長手方向の中央部に、回転軸4の軸線Pに対して水平方向に直交する水平端面22aが形成され、長手方向の両端部に、水平端面22aから離間するに従いハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fに近接する方向に傾斜する傾斜端面22b,22cが形成されている。
【0031】
第2風制御板22の水平端面22aと、隣接するフィン16,16間のハウジング周壁2aとのギャップはT1であり、傾斜端面22b,22cとハウジング周壁2aとのギャップはT3に設定されている。なお、ギャップT1は、第1実施形態の第2風制御板20の下端とハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fとのギャップと同一寸法であり、ギャップT3は、第2実施形態の第2風制御板21の長手方向の両端側とハウジング周壁2aとのギャップT2より小さく設定されている(T2>T3)。なお、ギャップT1は、第1実施形態の第2風制御板20の下端とハウジング周壁2a及び膨出部2e,2fとのギャップと異なる寸法であってよい。
また、第2風制御板22に対して同一形状の第1風制御板22も、第1カバー周壁7bに対して同一のギャップT2、3を有している。また、
図1においてハウジング周壁2aの下部に形成されている通風路15にも、同一形状の第1及び第2風制御板22が配置されている。
【0032】
第3実施形態の第1及び第2風制御板22を備えた車両用主電動機1は、冷却ファン6の回転により冷却空気が通風路14の複数のフィン通風路14cに流れると、第1及び第2風制御板21の両端側の傾斜端面22b,22cとハウジング周壁2aとの間のギャップT3が大きく設定されているので、第1風制御板19及び第2風制御板20を配置した第1実施形態と比較して、複数のフィン通風路14cを流れる冷却空気の速度が増大する。
【0033】
また、本実施形態の第1及び第2風制御板22の長手方向の両端部に設けた傾斜端面22b,22cとハウジング周壁2aとの間のギャップT3は、第2実施形態の第1及び第2風制御板21の長手方向の両端側とハウジング周壁2aとのギャップT2より小さく設定されているので(T2>T3) 、第1及び第2風制御板22に衝突することでハウジング周壁2aに向けて流れる冷却空気が増大し、ハウジング周壁2aの外周面の温度境界層を薄くする効果が高まる。したがって、第3実施形態もステータ3の温度を効率よく低下することができる。
また、本実施形態のギャップT2、T3も、第1実施形態で記載したと同様に、通風路14の圧力損失と冷却空気の速度および冷却空気流量のバランスを考慮して、ステータ3の冷却効率が高くなる値に設定される。
【0034】
[第1~3実施形態の静圧比較]
図6は、第1実施形態の車両用主電動機1の冷却空気の静圧の変化に対して、第2,3実施形態の車両用主電動機1の冷却空気の静圧を比較した結果を示すものである。
第1実施形態は、ハウジング周壁2aと下端とのギャップT1が均一の第1風制御板19及び第2風制御板20を備えている。また、第2実施形態は、長手方向に水平端面21aが延在する第1及び第2風制御板21を備えている。また、第3実施形態は、長手方向の両端部に傾斜端面22b,22cを設けた第1及び第2風制御板22を備えている。
【0035】
静圧の測定点は、
図2に示す冷却ファン6の近傍(計測点A)、通風路14の入側開口部14aの近傍(計測点B)、第1風制御板及び第2風制御板の間(計測点C)の3箇所である。そして、第1実施形態の車両用主電動機1の冷却空気の静圧を基準として、第2,3実施形態の車両用主電動機1の冷却空気の静圧を比較した。
図5の静圧比較から、第2、第3実施形態は、第1実施形態と比較して、計測点Bにおいて1/2以上の静圧が低下しており、第1実施形態と比較して大幅に冷却空気の流量が増大していることが分かる。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用主電動機
2 ハウジング
2a ハウジング周壁
2b,2c ハウジング側壁
2d 開口部
2e,2f 膨出部
3 ステータ
4 回転軸
5 ロータ
6 冷却ファン
6a 羽根
6b 羽根支持部
7 カバー
7a カバー側壁
7b 第1カバー周壁
7c 第2カバー周壁
7d 空気取り入れ孔
9 ステータコイル
12 ファン収納空間
14,15 通風路
14a 入側開口部
14b 出側開口部
14c フィン通風路
16 フィン
17 第1切欠き
18 第2切欠き
19 第1風制御板
20 第2風制御板
21 第1風制御板、第2風制御板
21a 水平端面
22 第1風制御板、第2風制御板
22a 水平端面
22b,22c 傾斜端面
R 冷却ファンの羽根の回転方向