(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177519
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】バリア性熱可塑性樹脂成型体及び包装材
(51)【国際特許分類】
C08J 5/00 20060101AFI20221124BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221124BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20221124BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20221124BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20221124BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221124BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C08J5/00 CER
C08J5/00 CEZ
C08L101/00
C08L23/02
C08L29/04 C
B29C48/08
B65D65/40 D
B65D65/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083830
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小沼 健太
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 徹三
(72)【発明者】
【氏名】藤井 愛沙子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優絵
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】酸素バリア性を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体の分散状態を制御することにより、装材に必要な酸素バリア性を有し、かつ包装材に必要な水蒸気バリア性を有する、熱可塑性樹脂成型体を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂成型体は、水蒸気バリア性を有する樹脂(A)、及び酸素バリア性を有する樹脂(B)を含み、樹脂(B)は樹脂(A)の中に島として扁平状に存在する分散相を形成し、その分散相の重なり率が35%以上、55%以下であり、重なり率は、変動係数0.5以上、0.8以下の範囲であり、樹脂(B)の質量割合が、熱可塑性樹脂成型体全体の質量に対して15質量%以上50質量%以下の範囲内である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気バリア性を有する樹脂(A)、及び酸素バリア性を有する樹脂(B)を含み、
前記酸素バリア性を有する樹脂が前記水蒸気バリア性を有する樹脂の中に島として扁平状に存在する分散相を形成された熱可塑性樹脂成型体であって、
前記分散相は、前記熱可塑性樹脂成型体の成形方向及び成形幅方向に直交する深さ方向に重なる複数の分散相の成形方向断面および幅方向断面における重なり長さをd1とし、前記複数の分散相の一方の断面方向の長さをd2としたときの重なり率(d1/d2)が35%以上、55%以下であり、
前記重なり率は、変動係数0.5以上、0.8以下の範囲であり、
前記酸素バリア性を有する樹脂(B)の質量割合が、前記熱可塑性樹脂成型体全体の質量に対して15質量%以上50質量%以下の範囲内であることを特徴とする熱可塑性樹脂成型体。
【請求項2】
前記酸素バリア性を有する樹脂(B)の質量割合が、前記熱可塑性樹脂成型体全体の質量に対して15質量%以上40質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂成型体。
【請求項3】
前記水蒸気バリア性を有する樹脂(A)は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂成型体。
【請求項4】
前記酸素バリア性を有する樹脂(B)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成型体。
【請求項5】
前記コアシェル構造体中における前記酸素バリア性を有する樹脂(B)は、前記酸素バリア性を有する樹脂の断面面積が4μm2以上400μm2以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成型体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂成型体に、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体を含む官能基を有する樹脂(C)をさらに含み、前記官能基を有する樹脂は、前記水蒸気バリア性を有する樹脂(A)と異なる樹脂であり、前記官能基は、前記酸素バリア性を有する樹脂と結合し得る反応基を有し、前記官能基を有する樹脂が前記酸素バリア性を有する樹脂(B)を包み込んだコアシェル構造体となることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成型体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成型体を用いたことを特徴とする包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂成型体及び包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材(包装フィルムや包装体、容器)には内容物保護の観点から、ガスバリア性に優れた各種の樹脂フィルムや樹脂成型体が用いられている。包装材に一般的に用いられる材料としてはポリエチレン(以下「PE」)、ポリプロピレン(以下「PP」)等のオレフィン系樹脂を主体とした材料構成であり、これらオレフィン系樹脂は水蒸気に対してのバリア性に優れるが、酸素に対してのバリア性に劣る。一方、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」)等の親水性樹脂では、酸素に対するバリア性に優れており、水蒸気に対しバリア性に劣る。
【0003】
包装材として求められるバリア性として、酸素バリア性と、水蒸気バリア性の両立が挙げられるが、従来は酸素バリア性を有する樹脂、水蒸気バリア性を有する樹脂を複数積層することで、酸素及び水蒸気を両立するバリア性を得てきた。
特許文献1においては、積層によりバリア性を両立する技術が開示されている。
また、特許文献2においては、表層にPEやPP等のポリオレフィン樹脂、中間層にEVOH、MXDナイロンに複合材として酸変性等の相溶化剤を組成とする積層体の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-080984号公報
【特許文献2】特開2008-150539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、積層によりバリア性を両立する場合、積層フィルムの各々の間の接着性、及び製造工手の複雑化する問題がある。
また、表層にPEやPP等のポリオレフィン樹脂、中間層にEVOH、MXDナイロンに複合材として酸変性等の相溶化剤を組成する場合も、積層フィルムの各々の間の接着性、及び製造工手の複雑化する問題がある。
また、酸素及び水蒸気のバリア性を両立する方法である、酸素バリア性を有する材料と水蒸気バリア性を有する材料の混合では、単純に混ぜ合わせた溶融ブレンドでは、酸素バリア性が十分に得られない問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、酸素バリア性に優れた材料を水蒸気バリア性に優れた材料に分散させ、かつ分散相である酸素バリア樹脂の形状を制御することで、酸素バリアに有効である迷路効果の最適化が可能な熱可塑性樹脂成型体及びこれを用いた包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る熱可塑性樹脂成型体及びこれを用いた包装材は、水蒸気バリア性を有する樹脂(A)、及び酸素バリア性を有する樹脂(B)を含み、前記酸素バリア性を有する樹脂は前記水蒸気バリア性を有する樹脂の中に島として扁平状に存在する分散相を形成し、
前記分散相は、前記熱可塑性樹脂成型体の成形方向及び成形幅方向に直交する深さ方向に重なる複数の分散相の成形方向断面および幅方向断面における重なり長さをd1とし、前記複数の分散相の一方の断面方向の長さをd2としたときの重なり率(d1/d2)が35%以上、55%以下であり、
前記重なり率は、変動係数0.5以上、0.8以下の範囲であり、
前記酸素バリア性を有する樹脂(B)の質量割合が、前記熱可塑性樹脂成型体全体の質量に対して15質量%以上50質量%以下の範囲内であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る熱可塑性樹脂成型体及びこれを用いた包装材であれば、酸素バリア性を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体の分散形状を制御することにより、包装材に必要な酸素バリア性を有し、かつ水蒸気バリア性を有する、熱可塑性樹脂成型体及びこれを用いた包装材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る熱可塑性樹脂成型体の一構成例を模式的に示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る熱可塑性樹脂成型体の一構成例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る熱可塑性樹脂成型体の一構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
以下、本発明について詳細に記述する。なお、図面に示す構成は模式的なものであり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするため適宜誇張して示している。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに限定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(熱可塑性樹脂成型体の構成)
本実施形態に係る熱可塑性樹脂成型体の基本構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る熱可塑性樹脂成型体1の一構成例を説明するための概略図である。
熱可塑性樹脂成型体1は、水蒸気バリア性を有する樹脂、官能基を有する樹脂、及び酸素バリア性を有する樹脂を含んでいる。特に、本実施形態における熱可塑性樹脂成型体1は、水蒸気バリア性を有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)と、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)と、酸素バリア性を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)とを備えている。
図1に示すように、熱可塑性樹脂成型体1は、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)がエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)を包み込んだコアシェル構造体が、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)を含む連続相3の中に島として存在する分散相2を形成する。
【0012】
また、
図2は、本実施形態に係る熱可塑性樹脂成型体1の一構成例を説明するための断面図である。なお、本実施形態の熱可塑性樹脂成型体1は、成形方向Dmにおける厚み部分の断面においても、成形幅方向Dwにおける厚み部分の断面においても、
図2に示すように、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)を内包するオレフィンと官能基含有単量体との共重合体(B)がベース相となるポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)の内部に分散している。
【0013】
熱可塑性樹脂成型体1には、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)以外に、造核剤及び補強フィラー等の添加剤を使用してもよい。造核剤及び補強フィラーとしては、タルク、シリカ、クレー、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、炭酸リチウムアルミナ、酸化チタン、アルミニウム、鉄、銀、銅等の金属、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、セルロースミクロフィブリル、酢酸セルロース等のセルロース類、ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリアクリレート繊維等の繊維状フィラー、カーボンナノチューブ等のカーボン類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0014】
また、熱可塑性樹脂成型体1には、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等の添加剤を配合してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系化合物、有機ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。熱安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。帯電防止剤としては、ノニオン系化合物、カチオン系化合物、アニオン系化合物等が挙げられる。難燃剤としては、ハロゲン系化合物、リン系化合物、窒素系化合物、無機化合物、ホウ素系化合物、シリコーン系化合物、硫黄系化合物、赤リン系化合物等が挙げられる。難燃助剤としては、アンチモン化合物、亜鉛化合物、ビスマス化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0015】
他にも、熱可塑性樹脂成型体1には、耐候剤、光安定剤、可塑剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、気泡防止剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックス等の添加材を用いても良い。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂成型体1は、単層で用いられるだけでなく、他種樹脂成型体との積層体として使用されても良い。
【0016】
(連続相)
連続相3は、水蒸気バリア性を有する樹脂を含み構成される。連続相3の主材料としては、熱可塑性樹脂成型体1が340℃まで加温可能な押出成形機により製膜されるため、一般的な熱可塑性樹脂であれば使用することが可能であるが、包装材料として好適に使用されるためには適度な柔軟性を持ちならびに加工性が良い必要がある。本実施形態において、連続相3は、水蒸気バリア性に優れたポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)を主材料としている。
【0017】
〈ポリオレフィン系熱可塑性樹脂〉
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)は、オレフィン由来の構成単位を有するポリマーであれば良く、オレフィンをベースとした、低密度ポリエチレン(LDPE)、α-オレフィンとエチレンを共重合した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等を持つポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンとオレフィンを共重合したシクロオレフィンコポリマー及び、上記オレフィンと酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン-酢酸ビニルコポリマーやオレフィンの側鎖を変性して得られる、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のうち単体並びに複数を選択し適宜使用することが可能である。
【0018】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)の配合割合は、熱可塑性樹脂成型体1全体の質量に対して40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)が40質量%の場合は、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)との合計が50質量%となることがさらに好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)の配合割合が85質量%以下である場合、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の配合量を十分に確保し、バリア性を向上させることができる。エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の割合が50質量%以上となった場合、いわゆる海島構造の海と島が逆転する。すなわち、EVOHが連続相となり水蒸気を吸収し易くなる。
【0019】
(分散相)
図1に示すように、分散相2は、連続相3の中に分散するように存在している。
分散相2は、
図1及び
図3に示すように、熱可塑性樹脂成型体1の成形方向Dm及び成形幅Dw方向に直交する深さ方向に重なる複数の分散相D1,D2の重なり率が35%以上、55%以下である。
この重なり率は、深さ方向に重なる複数の分散相D1,D2の成形方向断面および幅方向断面における重なり長さをd1とし、分散相D1,D2の一方の断面方向の長さをd2としたときの重なり率(d1/d2)が35%以上、55%以下である。d1は例えば、裏層1b側の分散相D2に対する表層1a側の分散相D1の重なり長さであり、d2は成形幅方向の断面、および成形方向断面両方における寸法を示し、例えば、裏層側の分散相D2の成形方向の長さである。
また、分散相2は、酸素バリア性を有する樹脂及び官能基を有する樹脂を備えている。本実施形態において分散相2は、酸素バリア性に優れたエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)単体と、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)とを含み構成されるコアシェル構造を取っても良い。
図1に示すように、分散相2は、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(B)がエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)を包み込んだコアシェル構造体、もしくはコアのみの構造となる。
【0020】
〈オレフィンと官能基含有単量体との共重合体〉
オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)は、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)と後述するエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)とが非相溶系の材料となるため、混合時に2種ポリマー間の界面張力を低下させ、相分離構造を安定化させる。オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)は、連続相3を構成するポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)とは異なる樹脂であって、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)と結合し得る反応基が付与された分子構造からなる共重合体熱可塑性樹脂であり、化学的相性が悪いオレフィン系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体の親和性を向上させる役目を担う相溶化剤として機能する。相溶化剤として機能する熱可塑性樹脂としては、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、マレイン酸変性ポリオレフィン(以下「PO-g-MAH」)等が挙げられる。なお、本実施形態においては、官能基を有する樹脂としてオレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)を使用しているがこれに限られない。例えば、官能基を有する樹脂として、水酸基やカルボニル基等を有する樹脂を使用することができる。
【0021】
熱可塑性樹脂成型体1におけるオレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)の配合割合、すなわちオレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)の含有量は、熱可塑性樹脂成型体1全体の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(B)の配合割合が0.5質量%以上である場合、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)との間の界面エネルギーが下がるのを防ぎ、またポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)とエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)との間におけるデラミネーションの発生を抑制し、バリア性を向上させることができる。オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)の配合割合が10質量%以下である場合、(B)の分散サイズが小さくなるのを防ぎ、迷路効果によるバリア性を獲得することにより、酸素バリア性が向上する。
【0022】
〈エチレン-ビニルアルコール共重合体〉
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(B)は、エチレン及び酢酸ビニルのラジカル重合等により得られるエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を鹸化することにより生成され得る。エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の酸素バリア性は、よりエチレン含有量の少なさ、または高い加水分解度もしくは鹸化度、高い結晶性により改善され、20~50mol%のエチレン成分比率、90%以上の加水分解度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体の使用が好ましい。
【0023】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の配合割合は、熱可塑性樹脂成型体全体の質量に対して、15質量%以上50質量%以下の範囲が好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の配合割合が50質量%以下であれば、連続相において島として分散相を形成することができる。また、15質量%未満であると、分散相の重なりが不十分になりやすくなり、その結果、迷路効果によるバリア性も不十分となる場合がある。
なお、前記酸素バリア性を有する樹脂(B)の質量割合は、前記熱可塑性樹脂成型体全体の質量に対して15質量%以上40質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0024】
分散相2のコアシェル構造体中におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)は、
図2に示すような熱可塑性樹脂成型体1の成形方向Dmにおける厚み部分の断面において、その断面面積が4μm
2以上400μm
2以下の範囲内である。同様に、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)は、熱可塑性樹脂成型体1の成形幅方向Dwにおける厚み部分の断面において、その断面面積が4μm
2以上400μm
2以下の範囲内である。エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の断面面積が4μm
2以上である場合、迷路効果により高いバリア性を獲得することができる。エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)の断面面積が400μm
2以上である場合、分散が不十分であり、分散相の個数が減ることで分散相間の距離が非常に大きくなり、有効な迷路構造を形成することが難しくなってくる為である。一方で、分散ユニットの面積Sが4~400μm
2の範囲であると、安定した迷路構造の形成が可能となる利点がある。
【0025】
分散相2のコアシェル構造体中におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)は、
図3に示すような製膜フィルム状の熱可塑性樹脂成型体1の片側を表面とした場合、深さ方向の表層側の扁平状分散相D1に対する深部側の扁平状分散相D2の重なりがD2を基準とし成形方向、及び成形幅方向において、重なり率(d1:D1に対するD2の重なり長さ、d2:D2の成形方向及び成形幅方向長さ、重なり率:d1/d2)35%以上、55%以下となり、前記重なり率が変動係数0.5以上、0.8以下の範囲で変動を持つ構造の場合、酸素バリア性に有効な迷路効果を得ることができる。
【0026】
(熱可塑性樹脂成型体の製造方法)
本実施形態の熱可塑性樹脂成型体を製作する方法は特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。
成型体の作製方法としては、射出成型機や、押出成形機、ならびにフィードブロックまたはマルチマニホールドを介しTダイで製膜する方法や、インフレーション法を用いた製膜方法を用いることが可能である。本実施形態では、押出成形機を用いたフィルム状の成形方法を説明する。
本実施形態では、押出成形機に上述した熱可塑性樹脂を混合し押出すことで、熱可塑性樹脂成型体1が作製される。押出成形機にはスクリューを樹脂が通過した後に、樹脂に負荷をかける昇圧を促すブレーカープレート等の圧縮機構を有する。
【0027】
フィルムの冷却方法に関しては、上述成形機に準じて使用することが可能であり、例えばTダイ法では、エアーチャンバー、バキュームチャンバー、エアナイフ等の空冷方式、冷水パンへ冷却ロールをディッピングする等の水冷方式等特に制限されることはないが、賦形による表面凹凸形状を付与する場合には、シリコーンゴム、NBRゴム、またはフッ素樹脂等を加工したニップロールと、金属を切削加工した冷却ロールとを0.1MPa以上の圧力を印加した接触部に溶融樹脂を流入し、冷却する方式が特に好ましい。
本実施形態によって得られる熱可塑性樹脂成型体のフィルム形状では、単体フィルム、または他基材と積層して包装材とすることができる。単体フィルムまたは積層体として用いる場合、スタンディングパウチの他に、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等に用いることが可能である。また、包装袋の製袋様式は特に制限されるものではない。
【0028】
上述の様に、単体フィルム及び他基材と積層するどちらの場合でも、適宜、後工程適性を向上する表面改質処理を実施することが可能である。例えば、単体フィルム使用時の印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために他基材と接触する面に対して表面改質処理を行うことが可能である。表面改質処理はコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質を好適に用いることが可能である。
【0029】
(包装材)
本発明の一態様としての包装材は、上述した熱可塑性樹脂成型体1を用いて形成される。このように構成することで、包装材に必要な酸素バリア性を備え、また、高い耐衝撃性及びヒートシール性を有する熱可塑性樹脂成型体を包装材の形態で有効に利用できる。
【実施例0030】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)に用いる樹脂として、(株)プライムポリマー社製ホモポリプロピレン樹脂F-300SPを使用した。また、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(B)として三井化学(株)社製無水マレイン酸変性ポリプロピレンのアドマーQE060を使用した。そしてエチレン-ビニルアルコール共重合体(B)として三菱ケミカル(株)社製EVOH樹脂ソアノールD2908(エチレン比29mol%)を使用した。ポリオレフィン系熱可塑性樹脂(A)、オレフィンと官能基含有単量体との共重合体(C)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(B)それぞれの混合割合(質量%)を、(A):(B):(C)=50:50:0に調整し、ドライブレンドして単軸押出機に投入した。スクリュー部以降に圧縮率65%の圧縮部を通過するよう流路を設定し、成形温度250℃でTダイキャスト法にて厚み100μmのフィルムを製膜した。
【0032】
(実施例2)
混合割合を(A):(B):(C)=49.5:50:0.5に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例2のフィルムを形成した。
(実施例3)
混合割合を(A):(B):(C)=40:50:10に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例3のフィルムを形成した。
(実施例4)
混合割合を(A):(B):(C)=85:15:0に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例4のフィルムを形成した。
(実施例5)
混合割合を(A):(B):(C)=84.5:15:0.5に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例5のフィルムを形成した。
【0033】
(実施例6)
混合割合を(A):(B):(C)=75:15:10に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例6のフィルムを形成した。
(実施例7)
混合割合を(A):(B):(C)=45:45:10に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例7のフィルムを形成した。
(実施例8)
(B)に宇部興産(株)社製PA6樹脂1122Bを用い、混合割合を(A):(B):(C)=40:50:10調整した以外は、実施例1と同様にして実施例8のフィルムを形成した。
【0034】
(比較例1)
混合割合を(A):(B):(C)=45:55:0に調整した以外は、実施例1と同様にして比較例1のフィルムを形成した。
(比較例2)
混合割合を(A):(B):(C)=90:10:0に調整した以外は、実施例1と同様にして比較例2のフィルムを形成した。
(比較例3)
混合割合を(A):(B):(C)=100:0:0に調整した以外は、実施例1と同様にして比較例3のフィルムを形成した。
【0035】
(比較例4)
混合割合を(A):(B):(C)=0:100:0に調整した以外は、実施例1と同様にして比較例4のフィルムを形成した。
(比較例5)
混合割合を(A):(B):(C)=50:50:0に調整し、分散相の重なり率の平均30%、変動係数0.7となるよう製膜条件を調整した以外は、実施例1と同様にして比較例5のフィルムを形成した。
(比較例6)
混合割合を(A):(B):(C)=50:50:0に調整し、分散相の重なり率の平均60%、変動係数0.6となるよう製膜条件を調整した以外は、実施例1と同様にして比較例6のフィルムを形成した。
【0036】
<評価>
上述した実施例1~8、比較例1~6で得られたフィルムについて、次の評価を実施した。
【0037】
〔エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の質量割合の分散形状測定〕
エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の長軸長さ、短軸長さ及びアスペクト比について測定した。日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡(SEM)S-4800により分散相の形状を観察し、倍率1000倍の画像を得た後、画像内の片側を表層とし、表層より厚み方向に重なりを持つ無作為に選択した20組の分散相の重なり率(
図3に記したd1/d2)の平均値及び変動係数を算出した。
【0038】
次に、エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の断面面積について測定した。エチレン-ビニルアルコール共重合体(C)の成形方向及び成形幅方向の断面観察は、2mm×5mm(観察部が2mm)になるように実施例及び比較例のフィルムを切り出し、日本電子株式会社製可視光硬化性包埋樹脂D-800で包埋したものを、ライカマイクロシステムズ製ウルトラミクロトームEM UC7iを用いてガラスナイフ並びにダイヤモンドナイフで断面出しすることで実施した。観察試験片切出し箇所は、各フィルム成形方向、成形幅方向共に無作為に選んだ10箇所とした。観察には、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡(SEM)S-4800を用い、3000倍観察画像及び10万倍観察画像を得た後、画像内の無作為に選択した20個の分散相の断面積を計測した。
【0039】
〔酸素バリア性評価〕
実施例及び比較例において得られたフィルムをA4サイズにカットし、GTRテック株式会社製高感度水蒸気透過度測定装置GTR-3000を使用し、30℃、ドライ環境下でのポリプロピレン単体比としての酸素透過度(cc/m2/day/atm)を測定した。測定した酸素透過度を以下の◎、〇、×の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:酸素透過度が0.02(1/50)以下となる場合。
〇:酸素透過度が0.05(1/20)以下となる場合。
×:酸素透過度が0.05より大きくなる場合。
【0040】
〔水蒸気バリア性〕
実施例及び比較例において得られたフィルムをA4サイズにカットし、GTRテック株式会社製高感度水蒸気透過度測定装置GTR-3000を使用し、40℃、90%RH環境下でのポリプロピレン単体比としての水蒸気透過度(g/m2/day)を測定した。測定した酸素透過度を以下の◎、〇、×の3段階で評価した。
<評価基準>
◎:酸素透過度が0.7以上となる場合。
〇:酸素透過度が0.5以上となる場合。
×:酸素透過度が0.5未満の範囲となる場合。
【0041】
(評価結果)
各実施例及び比較例の酸素バリア性、水蒸気バリア性の評価結果を表1及び表2に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
実施例1~8では酸素バリア性を有し、かつ水蒸気バリア性を有することが確認された。
一方、比較例1では分散相とベース相の対応が逆転し、ホモポリプロピレン樹脂が島(分散相)となるため、水蒸気バリア性が得られない。
比較例2では、エチレン-ビニルアルコール共重合体の量が少なく、分散相の重なり率及び、重なり率の変動係数が小さく迷路効果が得られず酸素バリア性が得られていない。
比較例3~4では、単一樹脂相となっており、酸素バリア性または水蒸気バリア性が得られていない。
比較例5~6では、分散相の重なり率が小さい、または大きく十分な迷路効果を発現しない構造となり、酸素バリア性が得られていない。
【0045】
なお、本開示の熱可塑性樹脂成型体及び熱可塑性樹脂成型体を用いた包装材は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。