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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177524
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】モールド及び樹脂成型体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/26 20060101AFI20221124BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B29C39/26
B29C39/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083838
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 晶晶
(72)【発明者】
【氏名】神野 博實
(72)【発明者】
【氏名】中川 亜弥
(72)【発明者】
【氏名】後藤 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸也
(72)【発明者】
【氏名】山内 孝弘
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AJ02
4F202AJ03
4F202CA09
4F202CB01
4F202CD22
4F202CK07
4F202CK13
4F202CK18
4F202CM29
4F204AA21
4F204AJ02
4F204AJ03
4F204EA03
4F204EB01
4F204EK13
4F204EK24
4F204EK25
(57)【要約】
【課題】樹脂成型体を容易に取り出すことができるモールドを提供すること。
【解決手段】モールドは、熱可塑性樹脂を硬化させることにより樹脂成型体を製造するためのモールドであって、前記熱可塑性樹脂が充填される凹部を有するキャビティと、前記凹部に挿入されて前記凹部内の熱可塑性樹脂を押圧することにより前記熱可塑性樹脂を成型するコアと、を備え、前記キャビティは、前記凹部の開口以外の部分に形成された取出用開口から前記樹脂成型体を取り出すことができるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を硬化させることにより樹脂成型体を製造するためのモールドであって、
前記熱可塑性樹脂が充填される凹部を有するキャビティと、
前記凹部に挿入されて前記凹部内の熱可塑性樹脂を押圧することにより前記熱可塑性樹脂を成型するコアと、を備え、
前記キャビティは、前記凹部の開口以外の部分に形成された取出用開口から前記樹脂成型体を取り出すことができるように構成されている、
モールド。
【請求項2】
前記キャビティは、前記凹部の開口及び前記取出用開口を有する筒状の本体と、前記取出用開口を塞ぐ閉塞体と、を備える、
請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
前記キャビティには、前記凹部に充填された余剰な前記熱可塑性樹脂を前記キャビティの外部に排出するための排出孔が形成されている、
請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項4】
前記キャビティにおける前記凹部の開口の周囲の少なくとも一部に配置可能なスペーサを更に備え、
前記コアは、前記凹部に挿入される押圧部と、前記スペーサ又は前記凹部の開口の周囲に当接する当接部と、を備え、前記当接部が前記スペーサに当接するまで前記コアが押されることにより、前記熱可塑性樹脂を成型し、前記当接部が前記凹部の開口の周囲に当接するまで前記コアが押されることにより、前記樹脂成型体の少なくとも一部を前記取出用開口から前記キャビティの外部に出すように構成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のモールド。
【請求項5】
前記キャビティ及び前記コアにおける少なくとも前記樹脂成型体に接触する部分は、フッ素樹脂で構成されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のモールド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のモールドを用いて樹脂成型体を製造する、
樹脂成型体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド及び樹脂成型体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成型体を製造するモールドが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のモールドは、固定金型と、移動金型とを備える。樹脂成型体を製造する際には、固定金型と移動金型により形成された空間内に溶融樹脂を射出して、成型品を製造し、移動金型を固定金型から離してから、成形品を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013―132826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の記載のような構成では、固定金型における移動金型が挿入される開口から成型品を取り出すため、成型品を容易に取り出すことができないおそれがある。
【0005】
本発明は、樹脂成型体を容易に取り出すことができるモールド及び樹脂成型体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るモールドは、熱可塑性樹脂を硬化させることにより樹脂成型体を製造するためのモールドであって、前記熱可塑性樹脂が充填される凹部を有するキャビティと、前記凹部に挿入されて前記凹部内の熱可塑性樹脂を押圧することにより前記熱可塑性樹脂を成型するコアと、を備え、前記キャビティは、前記凹部の開口以外の部分に形成された取出用開口から前記樹脂成型体を取り出すことができるように構成されている。
【0007】
本発明に係る樹脂成型体の製造方法は、上述のモールドを用いて樹脂成型体を製造する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモールド及び樹脂成型体の製造方法によれば、樹脂成型体を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1実施形態及び第2実施形態に係る第1例の樹脂成型体である短冊状の樹脂成型体を示す平面図及び側面図
図1B】第1実施形態及び第2実施形態に係る第2例の樹脂成型体であるダンベル形状の樹脂成型体を示す平面図及び側面図
図2】第1実施形態に係るモールドの斜視図
図3】第1実施形態に係る樹脂成型体の製造方法の説明図
図4】第2実施形態に係るモールドの斜視図
図5】第2実施形態に係る樹脂成型体の製造方法の説明図
図6】キャビティを構成する本体の変形例を示す平面図
図7A】スペーサの変形例を示す斜視図
図7B】スペーサの他の変形例を示す斜視図
図7C】スペーサのさらに他の変形例を示す斜視図
図8】排出孔形状の第1~第6変形例を示す側面図
図9】排出孔が2個の場合における第1~第3変形例の第1~第4側板部を示す図
図10】排出孔が3個の場合における第1~第4変形例の第1~第4側板部を示す図
図11】排出孔が3個の場合における第5~第6変形例及び4個の場合における第1~第2変形例の第1~第4側板部を示す図
図12】排出孔が4個の場合における第3~第6変形例の第1~第4側板部を示す図
図13】排出孔が5個の場合における第1~第4変形例の第1~第4側板部を示す図
図14】排出孔が5個の場合における第5~第7変形例及び6個の場合における第1変形例の第1~第4側板部を示す図
図15】排出孔が6個の場合における第2~第5変形例の第1~第4側板部を示す図
図16】排出孔が6個の場合における第6~第7変形例及び7個の場合における第1~第2変形例の第1~第4側板部を示す図
図17】排出孔が7個の場合における第3~第6変形例の第1~第4側板部を示す図
図18】排出孔が7個の場合における第7変形例及び8個の場合における第1~第3変形例の第1~第4側板部を示す図
図19】排出孔が8個の場合における第4~第7変形例の第1~第4側板部を示す図
図20】樹脂成型体が円柱形状の場合における排出孔形状の第1~第7変形例を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について説明する。本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(樹脂成型体の構成)
まず、第1実施形態の樹脂成型体の構成について説明する。図1Aは、第1実施形態及び第2実施形態に係る第1例の樹脂成型体である短冊状の樹脂成型体を示す平面図及び側面図である。図1Bは、第1実施形態及び第2実施形態に係る第2例の樹脂成型体であるダンベル形状の樹脂成型体を示す平面図及び側面図である。
【0013】
図1Aに示すように、第1例の樹脂成型体9は、短冊状(直方体)に形成されている。樹脂成型体9の長さL1は、20mm~200mmであることが好ましく、40mm~100mmであることがより好ましい。樹脂成型体9の幅W1は、5mm~50mmであることが好ましく、6mm~20mmであることがより好ましい。樹脂成型体9の厚さT1は、2mm~20mmであることが好ましく、2mm~10mmであることがより好ましい。
【0014】
図1Bに示すように、第2例の樹脂成型体9Aは、ダンベル形状に形成されている。ダンベル形状としては、ASTM D638-14に準拠する形状を例示することができる。樹脂成型体9Aの狭い部分の幅Wは、3mm~40mmであることが好ましく、6mm~20mmであることがより好ましい。平行部分の長さLは、10mm~170mmであることが好ましく、30mm~100mmであることがより好ましい。両端の幅WOは、4mm~60mmであることが好ましく、8mm~30mmであることがより好ましい。全長LOは、30mm~500mmであることが好ましく、60mm~300mmであることがより好ましい。標準間距離Gは、10mm~150mmであることが好ましく、30mm~100mmであることがより好ましい。つかみ部間距離Dは、20mm~350mmであることが好ましく、40mm~200mmであることがより好ましい。肩部の丸みの半径Rは、15mm~150mmであることが好ましく、30mm~100mmであることがより好ましい。厚さTは、2mm~20mmであることが好ましく、2mm~10mmであることがより好ましい。
【0015】
なお、樹脂成型体の形状は、上述の短冊状、ダンベル形状に限らず、円柱等、他の形状であってもよい。
【0016】
樹脂成型体9,9Aは、熱可塑性樹脂TR(例えば、図3参照)を硬化させることにより製造される。熱可塑性樹脂TRとしては、特に制限はなく、一般用ポリスチレン樹脂、耐衝撃用ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、変性PPO樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファルド樹脂等の熱可塑性樹脂、若しくはそれらの材料の複合によるアロイ系樹脂、さらにはガラス繊維の添加による強化樹脂を適用することができる。特に好適な樹脂としては、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PMA(ポリメタクリル酸)、PEMA(ポリエチルメタクリレート)、PMMA-St(非架橋ポリメタクリル酸メチル・スチレン共重合体)、PMA-St(非架橋ポリメタクリル酸・スチレン共重合体)、PEMA-St(非架橋ポリエチルメタクリレート・スチレン共重合体)含有組成物を例示することができる。また、特に好適な樹脂として例示したPMMA等の樹脂は、例えば骨セメントを構成する材料として適用することができる。
【0017】
樹脂成型体9,9Aとしては、樹脂の各種試験片を例示することができる。試験としては、曲げ試験、クリープ試験(曲げ、引張、圧縮)、疲労試験(曲げ、引張、圧縮)、引張試験、圧縮試験、破壊靭性試験を例示することができる。樹脂成型体9,9Aの物性測定に係る規格としては、ISO 5833、JIS K7116、JIS K7118、ASTM D638-14、ASTM D5405-14を例示することができる。
【0018】
(モールドの構成)
次に、樹脂成型体を製造するためのモールドの構成について説明する。なお、第1実施形態では、図1Aに示す第1例の樹脂成型体9を製造するためのモールドを例示するが、図1Bに示す第2例の樹脂成型体9A又は他の形状の樹脂成型体を製造するためのモールドにも、以下に説明するモールドの構成を適用することができる。図2は、第1実施形態に係るモールドの斜視図である。なお、モールドを構成する各部材の位置関係等を図2に示す方向で説明する場合がある。
【0019】
図2に示すモールド1は、それぞれ実線で示す、熱可塑性樹脂TRが充填される凹部20を有するキャビティ2と、凹部20に挿入されて凹部20内の熱可塑性樹脂TRを押圧することにより熱可塑性樹脂TRを成型するコア3と、を備える。モールド1は、キャビティ2の凹部20の開口201(以下、「コア側開口201」という)以外の部分に形成された取出用開口210から、樹脂成型体9を取り出すことができるように構成されている。このように、キャビティ2におけるコア3が挿入されるコア側開口201とは別の位置に取出用開口210を形成することにより、例えばコア側開口201側から樹脂成型体9を押して、樹脂成型体9を容易に取り出すことができる。
【0020】
キャビティ2及びコア3は、変形すると所望の形状の樹脂成型体9を製造できなくなるため、加熱及び加圧に対して変形が少ない硬質の材料、例えば、硬質樹脂又はステンレスで形成されていることが好ましい。また、キャビティ2及びコア3の少なくとも樹脂成型体9に接触する部分は、樹脂成型体9をキャビティ2から取り出し易くするために、濡れ難い性質を有するフッ素樹脂で形成されていることが好ましい。
【0021】
キャビティ2は、コア側開口201および樹脂成型体9を取り出すための取出用開口210を有する本体21と、取出用開口210を塞ぐことにより凹部20の底部を構成する閉塞体22と、を備える。
【0022】
本体21は、図2に2点鎖線で示すように、第1側板211と、第2側板212と、第3側板213と、第4側板214と、を組み合わせることにより四角筒状に形成される。本体21の上側の開口は、コア側開口201である。本体21の下側の開口は、取出用開口210である。取出用開口210は、下側から見た樹脂成型体9の形状と同じ形状に形成され、当該取出用開口210を介して樹脂成型体9を本体21から取り出せるように構成されている。
【0023】
閉塞体22は、外形が本体21の平面視の形状と同じ形の長方形板状に形成されている。閉塞体22は、本体21の下面(第1側板211、第2側板212、第3側板213及び第4側板214の下面)に、取り外し可能に固定される。ここで、閉塞体22を本体21に固定する方法としては、ねじ、クランプ又はバンドを用いる方法を例示することができるが、作業性を良くするために、ねじを用いる方法が好ましい。なお、閉塞体22に取出用開口210に嵌め込まれる嵌合部を設け、当該嵌合部を取出用開口210に嵌め込むことにより、閉塞体22を本体21に固定しても良い。この場合、作業性を良くするために、しばりばめで固定することが好ましい。しばりばめとは、取出用開口210の最大許容寸法よりも閉塞体22の嵌合部の最小許容寸法が大きい場合の嵌め合いを意味する。
【0024】
コア3は、キャビティ2の凹部20に挿入される押圧部31と、本体21の上面(第1側板211、第2側板212、第3側板213及び第4側板214の上面)、つまりコア側開口201の周囲に当接することにより、凹部20に挿入された押圧部31の上下方向(挿入方向)の位置を決める当接部32と、を備える。押圧部31の平面視の形状は、凹部20の開口201の平面視の形状と同じである。このような構成により、押圧部31は、コア側開口201に隙間なく嵌め込まれる。当接部32は、押圧部31の上端から前後左右に板状に突出するように設けられている。なお、コア3に当接部32を設けなくても良い。
【0025】
(樹脂成型体の製造方法)
次に、上述のモールド1を用いる樹脂成型体の製造方法について説明する。図3は、第1実施形態に係る樹脂成型体の製造方法の説明図である。なお、第1実施形態及び第2実施形態における全ての製造工程は、作業者により行われても良いし、製造装置により行われても良い。また、一部の製造工程が作業者により行われ、残りの製造工程が製造装置により行われても良い。
【0026】
まず、図3の一番上の図に示すように、本体21に閉塞体22が固定されることにより凹部20が形成されたキャビティ2を準備する。次に、凹部20内に熱可塑性樹脂TRを充填する。熱可塑性樹脂TRとして、PMMAで構成された骨セメントを用いる場合、軟塊(生地)状態の熱可塑性樹脂TRを充填する。
【0027】
ここで、軟塊状態とは、以下のように定義される。骨セメントは、通常、使用の現場(例えば施術の現場)において、使用直前に複数の成分を混合することにより調製される。この混合直後の骨セメントは、スラリー状である。骨セメントを使用者(例えば施術者)のラテックス製手袋に付着させて手を動かすと、骨セメントは糸を引くように伸びる。そして、調製後しばらく経つと、骨セメントは、軟塊状態になる。この軟塊状態になる時点は、具体的には、使用者のラテックス製手袋に骨セメントを付着させて手を動かしたときに、骨セメントがラテックス製手袋から糸を引かずに離れる時点として定性的に識別されている。この軟塊状態になった骨セメントは、適度な粘度と流動性を有するので取扱い易く、埋植後も良好な固定力を発現する。なお、レオメーター(HAAKE社製、MARS3)を用いて測定した軟塊状態の骨セメントの粘度は、10,000~500,000Pa・sである。測定条件は、温度25℃、周波数1.0Hz、せん断応力100Paである。
【0028】
次に、図3の上から2番目の図に示すように、押圧部31をコア側開口201に嵌めた後、当接部32が本体21の上面に当接するまで、コア3を押すことにより、熱可塑性樹脂TRを成型する。そして、コア3で熱可塑性樹脂TRを押した状態を維持したまま、熱可塑性樹脂TRが冷えて硬化するまで待機する。なお、コア3への加圧は手技的に加圧しても良いし、錘でも良いし、バイス等の加圧装置でも良い。
【0029】
図3の上から3番目の図に示すように、熱可塑性樹脂TRが硬化して樹脂成型体9が製造されたら、キャビティ2の本体21から閉塞体22を取り外す。
【0030】
最後に、図3の上から4番目の図に示すように、例えば、コア3を本体21から取り外し、本体21の上側から樹脂成型体9を手又は治具で押すことにより、本体21の取出用開口210から樹脂成型体9を取り出す。なお、コア3が嵌められた本体21を振動させることにより樹脂成型体9を取り出すことができる場合、コア3を本体21から取り外さなくても良い。
【0031】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第2実施形態では、図1Aに示す第1例の樹脂成型体9を製造するためのモールドを例示するが、図1Bに示す第2例の樹脂成型体9A又は他の形状の樹脂成型体を製造するためのモールドにも、以下に説明するモールドの構成を適用することができる。
【0032】
(モールドの構成)
まず、モールドの構成について説明する。なお、ここでは、図1Aに示す第1例の樹脂成型体9を製造するためのモールドを例示するが、図1Bに示す第2例の樹脂成型体9A又は他の形状の樹脂成型体を製造するためのモールドにも、以下に説明するモールドの構成を適用することができる。図4は、第2実施形態に係るモールドの斜視図である。なお、モールドを構成する各部材の位置関係等を図4に示す方向で説明する場合がある。また、第1実施形態と同様の構成については、同一名称を付して、説明を簡略にする又は省略する場合がある。
【0033】
図4に示すモールド1Aは、熱可塑性樹脂TRが充填される凹部20Aを有するキャビティ2Aと、キャビティ2Aにおけるコア側開口201Aの周囲の少なくとも一部に配置可能なスペーサ4Aと、凹部20Aに挿入されて凹部20A内の熱可塑性樹脂TRを押圧することにより熱可塑性樹脂TRを成型するコア3Aと、を備える。モールド1Aは、第1実施形態のモールド1と同様に、キャビティ2Aにおけるコア側開口201A以外の部分に形成された取出用開口210Aから、樹脂成型体9を取り出すことができるように構成されている。このように、キャビティ2Aにおけるコア側開口201Aとは別の位置に取出用開口210Aを形成することにより、例えばコア側開口201A側から樹脂成型体9を押して、樹脂成型体9を容易に取り出すことができる。
【0034】
キャビティ2A及びコア3Aは、変形すると所望の形状の樹脂成型体9を製造できなくなるため、第1実施形態のキャビティ2及びコア3と同様に、加熱及び加圧に対して変形が少ない硬質の材料、例えば、硬質樹脂又はステンレスで形成されていることが好ましい。キャビティ2A及びコア3Aの少なくとも樹脂成型体9に接触する部分は、樹脂成型体9をキャビティ2Aから取り出し易くするために、濡れ難い性質を有するフッ素樹脂で形成されていることが好ましい。
【0035】
キャビティ2Aは、コア側開口201A及び取出用開口210Aを有する本体21Aと、取出用開口210Aを塞ぐことにより凹部20Aの底部を構成する閉塞体22Aと、を備える。
【0036】
本体21Aは、第1側板部211Aと、第2側板部212Aと、第3側板部213Aと、第4側板部214Aと、を有する四角筒状に形成されている。つまり、第1実施形態の本体21が4枚の側板(第1~第4側板211~214)を組み合わせて四角筒状に形成されていたのに対し、第2実施形態の本体21Aは、1個の四角筒状の部材により構成されている。第1側板部211A、第2側板部212A、第3側板部213A及び第4側板部214Aは、それぞれ本体21Aの左面、右面、前面及び後面を構成する。本体21Aの上側の開口は、コア側開口201Aである。本体21Aの下側の開口は、取出用開口210Aである。取出用開口210Aは、下側から見た樹脂成型体9の形状と同じ形状に形成されている。
【0037】
また、本体21Aの第1側板部211A及び第2側板部212Aには、凹部20Aに充填された余剰な熱可塑性樹脂TRを本体21Aの外部に排出するための排出孔215Aが、それぞれ1個ずつ形成されている。このような構成により、樹脂成型体9の体積よりも多い量の熱可塑性樹脂TRを凹部20Aに充填し、コア3Aにより熱可塑性樹脂TRを押圧することにより、コア3A及び凹部20Aで区画される空間全体に熱可塑性樹脂TRを広げつつ、余剰な熱可塑性樹脂TRを本体21Aの外部に排出することができる。したがって、モールド1Aの内圧の増加を抑制することができ、樹脂成型体9の寸法精度を高めることができる。なお、本体21Aに、排出孔215Aから排出された熱可塑性樹脂TRを所定の位置に導くチューブ等を取り付けても良い。
【0038】
各排出孔215Aは、平面視における本体21Aの対角の近くの位置に形成されることが好ましい。このような構成にすれば、余剰の熱可塑性樹脂TRを2箇所からほぼ均等に排出しつつ、凹部20A内に熱可塑性樹脂TRを隙間なく充填することができ、樹脂成型体9に欠損が発生することを抑制できる。
【0039】
各排出孔215Aは、本体21Aの下端に形成されることが好ましい。このような構成にすれば、余剰の熱可塑性樹脂TRを効率よく排出することができる。
【0040】
各排出孔215Aは、側面視で(右側又は左側から見て)半円状に形成されることが好ましい。このような構成にすれば、熱可塑性樹脂TRを排出し易くすることができる。また、モールド1Aを加工し易くすることができる上、モールド1Aの耐久性も向上させることができる。
【0041】
各排出孔215Aの側面視における面積は、樹脂成型体9の側面視における面積の5%~60%の大きさであることが好ましく、10%~50%の大きさであることがより好ましく、15%~40%の大きさであることがさらに好ましい。このような大きさにすれば、熱可塑性樹脂TRの粘度が高い場合、熱可塑性樹脂TRを排出孔215Aから排出し易くすることができる一方で、熱可塑性樹脂TRの粘度が低い場合、熱可塑性樹脂TRを排出孔215Aから適度に排出され難くすることができる。
【0042】
なお、排出孔215Aの個数、位置、形状、側面視における面積は、上述したものに限られない。
【0043】
閉塞体22Aは、外形が本体21Aの平面視の形状と同じ形の長方形板状に形成され、本体21Aの下面に取り外し可能に固定される。閉塞体22Aを本体21Aに固定する方法としては、第1実施形態で説明したように、ねじ、クランプ又はバンドを用いる方法を例示することができる。また、閉塞体に取出用開口210Aに嵌め込まれる嵌合部を設け、当該嵌合部を取出用開口210Aに嵌め込むことにより、閉塞体を本体21Aに固定しても良い。この場合、しばりばめで固定することが好ましい。
【0044】
スペーサ4Aは、本体21Aにおける上面の一部、つまりコア側開口201Aの周囲の一部に配置可能に構成されている。スペーサ4Aは、コア3Aの当接部32Aとの当接により、凹部20A内に挿入された押圧部31Aの位置決めをする。スペーサ4Aは、変形するとコア3Aの位置が所望の位置からずれてしまい、所望の形状の樹脂成型体9を製造できなくなるために、加熱及び加圧に対して変形が少ない硬質の材料、例えば、硬質樹脂又はステンレスで形成されていることが好ましい。
【0045】
スペーサ4Aは、第2側板部212Aの上面に接触する基部41Aと、基部41Aの前側の端部から左側に延びるように設けられ、第3側板部213Aの上面に接触する第1延出部42Aと、基部41Aの後側の端部から左側に延びるように設けられ、第4側板部214Aの上面に接触する第2延出部43Aと、を備えるU字状に形成されている。このように、スペーサ4Aに第1側板部211Aの上面に接触する部分を設けない構成にすることにより、コア3Aがキャビティ2Aの凹部20Aに挿入された状態であっても、スペーサ4Aを右側にスライドさせることにより、スペーサ4Aをキャビティ2Aとコア3Aの間から取り外すことができる。
【0046】
また、スペーサ4Aの高さは、詳しくは後述するが、本体21Aから樹脂成型体9を取り出すために、コア3Aの後述する当接部32Aが本体21Aの上面に当接するまでコア3Aが押されたときに、本体21Aの外部に出る樹脂成型体9の高さと同じになる。つまり、スペーサ4Aの高さを調整することにより、コア3Aによるキャビティ2Aからの樹脂成型体9の押し出し量を調整することができる。キャビティ2Aから樹脂成型体9を取り出し易くするために、スペーサ4Aの高さは、樹脂成型体9の高さの半分以上の高さであることが好ましく、樹脂成型体9の高さと同じであることがより好ましい。
【0047】
コア3Aは、押圧部31Aと、当接部32Aと、を備える。押圧部31Aの平面視の形状は、コア側開口201Aの平面視の形状と同じである。このような構成により、押圧部31Aは、コア側開口201Aに隙間なく嵌め込まれる。当接部32Aは、押圧部31Aの上端から前後左右に板状に突出するように設けられている。
【0048】
コア3Aは、本体21Aの上面に配置されたスペーサ4Aに当接部32Aが当接するまで押されることにより、熱可塑性樹脂TRを成型し、当接部32Aが本体21Aの上面に当接するまで押されることにより、樹脂成型体9の一部を取出用開口210Aから本体21Aの外部に出すように構成されている。このような構成により、熱可塑性樹脂TRの硬化後、スペーサ4Aを本体21Aと当接部32Aとの間からと共に、閉塞体22Aを本体21Aから取り外し、コア3Aを押すだけの簡単な方法で、樹脂成型体9を本体21Aから取り出すことができる。
【0049】
(樹脂成型体の製造方法)
次に、上述のモールド1Aを用いる樹脂成型体の製造方法について説明する。図5は、第2実施形態に係る樹脂成型体の製造方法の説明図である。
【0050】
まず、図5の一番上の図に示すように、本体21Aに閉塞体22Aが固定されることにより凹部20Aが形成されたキャビティ2を準備し、凹部20A内に熱可塑性樹脂TRを充填する。熱可塑性樹脂TRとして、PMMAで構成された骨セメントを用いる場合、軟塊状態の熱可塑性樹脂TRを充填する。
【0051】
次に、図5の上から2番目の図に示すように、本体21Aの上面にスペーサ4Aを配置する。そして、押圧部31Aをコア側開口201Aに嵌めた後、当接部32Aがスペーサ4Aの上面に当接するまで、コア3Aを押すことにより、熱可塑性樹脂TRを成型する。このとき、余剰な熱可塑性樹脂TRは、排出孔215Aから排出される。その後、コア3Aで熱可塑性樹脂TRを押した状態を維持したまま、熱可塑性樹脂TRが冷えて硬化するまで待機する。なお、コア3への加圧は手技的に加圧しても良いし、錘でも良いし、バイス等の加圧装置でも良い。
【0052】
図5の上から3番目の図に示すように、熱可塑性樹脂TRが硬化して樹脂成型体9が製造されたら、キャビティ2Aの本体21Aから閉塞体22Aを取り外す。さらに、スペーサ4Aを右側にスライドさせて、本体21Aの上面と当接部32Aとの間から、スペーサ4Aを取り外す。なお、スペーサ4Aを取り外してから、又はスペーサ4Aを取り外すのとほぼ同時に、閉塞体22Aを取り外しても良い。
【0053】
次に、図5の上から4番目の図に示すように、当接部32Aが本体21Aの上面に当接するまで、つまりコア側開口201Aの周囲に当接するまで、コア3Aを押すことにより、樹脂成型体9の一部を取出用開口210から本体21の外側に出す。最後に、樹脂成型体9の本体21から出ている部分を手又は治具で掴んで、樹脂成型体9を取り出す。
【0054】
[変形例]
本発明は、これまでに説明した実施形態に示されたものに限られないことは言うまでもなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の変形を加えることができる。
【0055】
例えば、図6に示すように、第1実施形態の本体21の第1側板211及び第2側板212の前後両端部と、第3側板213及び第4側板214の左右両端部をそれぞれ折り曲げ、当該折り曲げられた部分同士を重ねるように、第1側板211、第2側板212、第3側板213及び第4側板214をねじ等により固定しても良い。
【0056】
第2実施形態において、図7Aに示すように、スペーサ4Aの代わりに、スペーサ4Aに第1側板部211Aの上面に接触する部分をさらに設けた四角枠状のスペーサ4Bを用いても良い。また、図7Bに示すように、スペーサ4Aの代わりに、第2側板部212Aと同じ形状の2個のスペーサ4Cを、第3側板部213A及び第4側板部214Aにそれぞれ接触するように配置しても良い。さらに、図7Cに示すように、スペーサ4Aの代わりに、スペーサ4Cよりも小さい例えば2個のスペーサ4Dを、第1~第4側板部211A~214Aのうち2つにそれぞれ接触するように配置しても良いし、2個以上のスペーサ4Dを第1~第4側板部211A~214Aのうち2つにそれぞれ接触するように配置しても良い
【0057】
第2実施形態において、側面視で半円状の排出孔215Aを例示したが、図8にそれぞれ「排出孔形状の第1~第6変形例」として示す、四角形、三角形、円形、五角形、十字型、平行四辺形の排出孔215Aを本体21Aに形成しても良い。
【0058】
第2実施形態において、本体21Aに2個の排出孔215Aが、第1側板部211A及び第2側板部212Aにそれぞれ形成されていたが、図9にそれぞれ「排出孔が2個の場合の第1~第3変形例」として示すように、第1~第4側板部211A~214Aの所定の位置に、2個の排出孔215Aが形成されていても良い。
【0059】
図10及び図11にそれぞれ「排出孔が3個の場合の第1~第6変形例」として示すように、第1~第4側板部211A~214Aの所定の位置に、3個の排出孔215Aが形成されていても良い。
【0060】
図11及び図12にそれぞれ「排出孔が4個の場合の第1~第6変形例」として示すように、第1~第4側板部211A~214Aの所定の位置に、4個の排出孔215Aが形成されていても良い。
【0061】
図13及び図14にそれぞれ「排出孔が5個の場合の第1~第7変形例」として示すように、第1~第4側板部211A~214Aの所定の位置に、5個の排出孔215Aが形成されていても良い。
【0062】
図14図15及び図16にそれぞれ「排出孔が6個の場合の第1~第7変形例」として示すように、第1~第4側板部211A~214Aの所定の位置に、6個の排出孔215Aが形成されていても良い。
【0063】
図16図17及び図18にそれぞれ「排出孔が7個の場合の第1~第7変形例」として示すように、第1~第4側板部211A~214Aの所定の位置に、7個の排出孔215Aが形成されていても良い。
【0064】
図18及び図19にそれぞれ「排出孔が8個の場合の第1~第7変形例」として示すように、第1~第4側板部211A~214Aの所定の位置に、8個の排出孔215Aが形成されていても良い。
【0065】
図9図19に示す変形例において、1つの側板部に複数の排出孔215Aが形成されている場合、これらの排出孔215Aはつながっていても良い。さらに、1つの側板部に3個以上の排出孔215Aが形成されている場合、互いに隣り合う排出孔215Aの間隔は同じであっても良いし、違っていても良い。これらの排出孔215Aはつながっていても良い。
【0066】
円柱形状の樹脂成型体を形成するために、図20に示すように、モールドを構成するキャビティの本体21Bを円筒状に形成する場合、本体21Bの凹部に充填された余剰な熱可塑性樹脂TRを本体21Bの外部に排出するための排出孔215Bを、「第1~第7変形例」として示す、半円形、四角形、三角形、円形、五角形、十字型、平行四辺形に形成しても良い。この場合、本体21Bに複数の排出孔215Bを形成しても良く、余剰の熱可塑性樹脂TRをほぼ均等に排出しつつ、凹部内に熱可塑性樹脂TRを隙間なく充填するために、本体21Bの外周方向に等間隔で排出孔215Bを形成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、モールド及び樹脂成型体の製造方法に適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A モールド
2,2A キャビティ
3,3A コア
4A,4B,4C,4D スペーサ
9,9A 樹脂成型体
20,20A 凹部
21,21A,21B 本体
22,22A 閉塞体
31,31A 押圧部
32,32A 当接部
41A 基部
42A 第1延出部
43A 第2延出部
201,201A 開口(コア側開口)
210,210A 取出用開口
211 第1側板
211A 第1側板部
212 第2側板
212A 第2側板部
213 第3側板
213A 第3側板部
214 第4側板
214A 第4側板部
215A,215B 排出孔
TR 熱可塑性樹脂
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20