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特開2022-177527固体撮像装置及び固体撮像装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177527
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】固体撮像装置及び固体撮像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20221124BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20221124BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20221124BHJP
   H01L 27/30 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H01L31/04 166
H01L31/08 T
H01L27/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083843
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 祐太
(72)【発明者】
【氏名】榎 修
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 修一
【テーマコード(参考)】
4M118
5F151
5F849
【Fターム(参考)】
4M118AB01
4M118BA07
4M118BA14
4M118CA14
4M118CB14
4M118CB20
4M118DD04
4M118DD12
4M118FA06
4M118FA33
5F151AA11
5F849AB11
5F849BA30
5F849BB03
5F849CB05
5F849EA04
5F849FA04
5F849FA05
5F849GA04
5F849XA01
5F849XA52
5F849XA54
(57)【要約】
【課題】電子輸送層の密着性並びに塗膜剥がれを改善することができる光電変換素子を含む固体撮像装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固体撮像装置は、第1電極と、電子輸送層と、光電変換層とを含む光電変換素子を備えている。第1電極は基板上に配設され、光電変換層は第1電極上に配設されている。電子輸送層は、第1電極と光電変換層との間に配設され、バッファ層と微粒子層とを有する。バッファ層は、イオン化ポテンシャルが第1電極の仕事関数よりも大きく、電子親和力が光電変換層よりも大きい。そして、微粒子層は、主成分として導電性酸化亜鉛を含有する微粒子を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配設された第1電極と、
前記第1電極上に配設された光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に配設され、イオン化ポテンシャルが前記第1電極の仕事関数よりも大きく、電子親和力が前記光電変換層よりも大きいバッファ層、及び前記バッファ層と前記光電変換層との間に配設され、主成分として導電性酸化亜鉛を含有する微粒子を含む微粒子層を有する電子輸送層と
を含む光電変換素子を備えている固体撮像装置。
【請求項2】
前記光電変換素子は、前記光電変換層上に配設された第2電極を更に含む
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記導電性酸化亜鉛は、硼素ドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛及びガリウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1つである
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記バッファ層は、前記第1電極に対して正孔注入障壁を有し、
前記バッファ層では、電子の移動度が正孔の移動度より高い
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記バッファ層は、n半導体又はn型有機半導体を主成分として含む
請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記n型半導体は、TiO2、ZnO、ZnS、SrTiO3、Nb2O5、WO3、In2O3、CuTiO3、SnO2、InGaZnO4、InTiO2及びβ-Ga2O3の群より選ばれる少なくとも1つの無機材料である
請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記n型有機半導体は、フタロシアニン亜鉛(II)に代表される遷移金属イオンと有機材料とにより錯形成された有機金属色素、フラーレン若しくはフラーレンの誘導体、ITIC、又はBTP誘導体に代表される非フラーレンアクセプターである
請求項5に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記微粒子層では、発光スペクトルのバンド端発光強度に対する欠陥発光強度の発光強度比が1以上である
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
前記光電変換層、前記微粒子層、前記バッファ層の順に、伝導体又は最低非占有分子軌道のエネルギレベルが深い
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項10】
前記微粒子層の前記微粒子の平均一次粒子径が1nm以上20nm以下である
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
前記微粒子層は、前記バッファ層の厚さよりも大きな厚さを有する
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
前記電子輸送層は、400nm以下の厚さを有する
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項13】
前記微粒子の表面に有機官能基が結合されている
請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項14】
基板上に第1電極を形成し、
前記第1電極上に亜鉛の前駆体を溶解したインク液を塗布し、前記インク液を加熱して、n半導体又はn型有機半導体を主成分とするバッファ層を形成し、
前記バッファ層上に導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子を含む微粒子層を形成して、前記バッファ層と前記微粒子層とを含む、光電変換素子の電子輸送層を形成する
固体撮像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像装置及び固体撮像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、光電変換素子及びその製造方法が開示されている。光電変換素子は、基板上に、下部電極、酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子層、光電変換層、正孔輸送層、上部電極のそれぞれを順次積層した構造を備えている。酸化亜鉛ナノ粒子層は電子輸送層である。酸化亜鉛ナノ粒子層は、溶液中に酸化亜鉛ナノ粒子を合成し、この溶液を塗布し、加熱することにより成膜されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-220333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記光電変換素子及びその製造方法では、酸化亜鉛ナノ粒子層が塗布法を用いて形成されているので、下地の下部電極と酸化亜鉛ナノ粒子層との塗れ性にばらつきが生じる。このため、電気伝導性や酸化亜鉛ナノ粒子の分散性に影響を及ぼすことがなく、下部電極に対して、酸化亜鉛ナノ粒子層の密着性を改善し、酸化亜鉛ナノ粒子層の塗膜剥がれを改善することが望まれていた。
【0005】
本開示は、電気伝導性や微粒子の分散性に影響を及ぼすことがなく、電極に対して電子輸送層の密着性並びに塗膜剥がれを改善することができる光電変換素子を含む固体撮像装置及び固体撮像装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1実施態様に係る固体撮像装置は、基板上に配設された第1電極と、第1電極上に配設された光電変換層と、第1電極と光電変換層との間に配設され、イオン化ポテンシャルが第1電極の仕事関数よりも大きく、電子親和力が光電変換層よりも大きいバッファ層、及びバッファ層と光電変換層との間に配設され、主成分として導電性酸化亜鉛を含有する微粒子を含む微粒子層を有する電子輸送層とを含む光電変換素子を備えている。
【0007】
本開示の第2実施態様に係る固体撮像装置の製造方法は、基板上に第1電極を形成し、第1電極上に亜鉛の前駆体を溶解したインク液を塗布し、インク液を加熱して、n半導体又はn型有機半導体を主成分とするバッファ層を形成し、バッファ層上に導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子を含む微粒子層を形成して、バッファ層と微粒子層とを含む、光電変換素子の電子輸送層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施の形態に係る固体撮像装置の要部の断面図である。
図2図1に示される固体撮像装置の光電変換素子を拡大した拡大概略断面図である。
図3図2に示される光電変換素子の各層の位置とイオン化ポテンシャルのエネルギとの関係を示す図である。
図4図2に示される光電変換素子の電子輸送層の発光スペクトルを示す図である。
図5】第1実施の形態に係る固体撮像装置の製造方法を説明するフローチャートである。
図6A図2に示される電子輸送層のバッファ層の高温アニール前における表面状態を説明する斜視図である。
図6B図6Aに示されるバッファ層の表面状態を説明する平面図である。
図7A図6Aに示されるバッファ層の高温アニール後の表面状態を説明する、図6Aに対応する斜視図である。
図7B図7Aに示されるバッファ層の表面状態を説明する、図6Bに対応する平面図である。
図8A図2に示される電子輸送層の微粒子層において微粒子に有機官能基を結合させた状態を説明する概略斜視図である。
図8B図8Aに示される微粒子に有機化合物を結合させた後の状態を説明する、図8Aに対応する概略斜視図である。
図9】微粒子の表面にパッシベーション処理を施した後の発光スペクトルを示す図である。
図10】バンド端発光強度に対する欠陥発光強度を説明する図である。
図11】比較例に係る光電変換素子、第1実施の形態の実施例に係る光電変換素子の特性評価結果を表形式において示す図である。
図12A図2に示される光電変換素子の第1電極に対する電子輸送層の密着性を説明する図である。
図12B図2に示される光電変換素子の第1電極に対する電子輸送層の塗膜剥がれを説明する図である。
図13A】比較例に係る電極に対する電子輸送層の密着性を説明する図12Aに対応する図である。
図13B】比較例に係る電極に対する電子輸送層の塗膜剥がれを説明する図12Bに対応する図である。
図14】第1実施の形態に係る電子機器の概略構成を説明するブロック図である。
図15】本開示の第2実施の形態に係るCMOS撮像装置の一例を示す概略構成図である。
図16】本開示の実施の形態に係る第1応用例であって、車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図17】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
図18】本開示の実施の形態に係る第2応用例であって、内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
図19】カメラヘッド及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1実施の形態
第1実施の形態は、固体撮像装置に、本技術を適用した例を説明する。
2.第2実施の形態
第2実施の形態は、CMOS撮像装置に、本技術を適用した例を説明する。
3.移動体への応用例
移動体制御システムの一例である車両制御システムに本技術を適用した例を説明する。
4.内視鏡手術システムへの応用例
内視鏡手術システムに本技術を適用した例を説明する。
5.その他の実施の形態
【0010】
<1.第1実施の形態>
図1図14を用いて、本開示の第1実施の形態に係る固体撮像装置1を説明する。
【0011】
ここで、図中、適宜、示される矢印X方向は、便宜的に平面上に載置された固体撮像装置1の1つの平面方向を示している。矢印Y方向は、矢印X方向に対して直交する他の1つの平面方向を示している。また、矢印Z方向は、矢印X方向及び矢印Y方向に対して直交する上方向を示している。つまり、矢印X方向、矢印Y方向、矢印Z方向は、丁度、三次元座標系のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に各々一致している。
なお、これらの各方向は、説明の理解を助けるために示されており、本技術の方向を限定するものではない。
【0012】
[固体撮像装置1の構成]
(1)固体撮像装置1の概略構成
図1は、固体撮像装置1の光電変換素子20及び制御回路11を含む要部の断面構成の一例を示している。
固体撮像装置1は、基板10と、基板10に配設された制御回路11と、光電変換素子20とを備えている。
【0013】
基板10には、例えば単結晶珪素(Si)からなる半導体基板が使用されている。
制御回路11は基板10の主面部に配設されている。ここで、基板10の主面MCは、図1では上側の面であり、トランジスタ、抵抗、容量等の半導体素子を形成する主要な表面である。制御回路11は光電変換素子20に接続されている。制御回路11は、電荷蓄積部111と、増幅トランジスタ112と、リセットトランジスタ113と、選択トランジスタ114とを備えている。
【0014】
増幅トランジスタ112は、素子分離領域101に周囲を囲まれた領域内において、基板10の主面部に配設されている。増幅トランジスタ112は、チャネル形成領域と、ゲート絶縁膜103と、ゲート電極104と、ソース領域及びドレイン領域として使用される一対の主電極102とを備えている。チャネル形成領域は、基板10の主面部、又は基板10の主面部に形成された図示省略のウエル領域の主面部に形成されている。主電極102はn型半導体領域である。つまり、増幅トランジスタ112はnチャネル絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(IGFET)である。
ここで、IGFETは、少なくとも金属/酸化膜/半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)及び金属/絶縁体/半導体型電界効果トランジスタ(MISFET)を含む意味において使用されている。
【0015】
リセットトランジスタ113、選択トランジスタ114は、いずれも、素子分離領域101に周囲を囲まれた領域内において、基板10の主面部に配設されている。リセットトランジスタ113、選択トランジスタ114のそれぞれは、増幅トランジスタ112と同様に、チャネル形成領域、ゲート絶縁膜103及び一対の主電極102を備え、nチャネルIGFETにより構成されている。
【0016】
増幅トランジスタ112の一方の主電極102はリセットトランジスタ113の一方の主電極102に接続されている。増幅トランジスタ112のゲート電極104及びリセットトランジスタ113の他方の主電極102は光電変換素子20に接続されている。ここで、リセットトランジスタ113の他方の主電極102と基板10とのpn接合部には電荷蓄積部111が構成されている。
また、増幅トランジスタ112の他方の主電極は選択トランジスタ114の一方の主電極102に接続され、選択トランジスタ114の他方の主電極102は図示省略の信号線に接続されている。
【0017】
基板10の主面MC上には配線層12が配設されている。制御回路11は配線層12に配設された複数層の配線121、配線122、配線123、配線124のそれぞれを通して光電変換素子20に接続されている。なお、配線層12には、上下配線間を絶縁する複数層の絶縁膜により形成された絶縁体125を備えている。
【0018】
配線層12上には光電変換素子20が配設され、光電変換素子20上には保護膜30が配設されている。光電変換素子20に対応する領域において、保護膜30上には受光レンズ40が配設されている。
【0019】
(2)光電変換素子20の構成
図2は、光電変換素子20の縦断面構成の一例を表している。
光電変換素子20は、第1電極(下部電極)21と、電子輸送層22と、光電変換層23と、第2電極(上部電極)24とを備えている。
【0020】
第1電極21は基板10上に配設されている。詳細には、第1電極21は、基板10上に配線層12を介して配設されている。第1電極21は、配線層12の配線121~配線124を通して制御回路11に接続されている。第1電極21では、光電変換層23において発生した信号電荷(電子)が取り出される。
【0021】
第1電極21は、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)及びアルミニウム(Al)の群から選択される少なくとも1つの導電材料により形成されている。この場合、第1電極21の厚さは、例えば10nm以上100nm以下に設定されている。
【0022】
また、第1電極21は、光透過性の導電材料により形成してもよい。光透過性の導電材料には、例えばITO(Indium-Tin-Oxide)を使用することができる。
さらに、第1電極21は、例えば酸化錫(SnO2)系材料又は酸化亜鉛(ZnO)系材料により形成してもよい。酸化錫系材料は、酸化錫にドーパントを添加した材料である。酸化亜鉛系材料としては、例えば、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)を実用的に使用することができる。アルミニウム亜鉛酸化物は、酸化亜鉛にドーパントとしてアルミニウムを添加している。ガリウム亜鉛酸化物は、酸化亜鉛にドーパントとしてガリウム(Ga)を添加している。インジウム亜鉛酸化物は、酸化亜鉛にドーパントとしてインジウム(In)を添加している。
上記例示された材料以外に、第1電極21は、IGZO、CuI、InSbO4、ZnMgO、CuInO2、MgIn2O4、CdO及びZnSnO3から選択される1つ以上の材料により形成してもよい。
光透過性の導電材料により形成される場合、第1電極21の厚さは、例えば50nm以上500nm以下に設定されている。
【0023】
電子輸送層22は、第1電極21と光電変換層23との間に配設され、第1電極21上に形成されている。電子輸送層22は、第1電極21上に配設されたバッファ層221と、バッファ層221上に配設された微粒子層222とを備えている。
【0024】
図3は、光電変換素子20の各層の位置とイオン化ポテンシャルのエネルギとの一例の関係を表している。横軸は、左側から右側に向かって、第1電極21、電子輸送層22のバッファ層221及び微粒子層222、光電変換層23のそれぞれの位置を示している。縦軸は、エネルギ[eV]を示している。
バッファ層221は、イオン化ポテンシャルが第1電極21の仕事関数よりも大きく、電子親和力が光電変換層23よりも大きい構成とされている。表現を代えれば、バッファ層221では、第1電極21からの正孔注入障壁が大きく、更に光電流キャリアである電子の移動度が正孔の移動度よりも高い。さらに、光電変換素子20では、光電変換層23、微粒子層222、そしてバッファ層221の順に、伝導体又は最低非占有分子軌道(LUMO:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)のエネルギレベルが深く形成されている。
【0025】
バッファ層221は、例えばn型半導体により形成されている。n型半導体としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛(ZnS)、SrTiO3、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO3)、酸化インジウム(In2O3)、CuTiO3、酸化スズ(SnO2)、InGaZnO4、InTiO2及びβ-Ga2O3から選択される少なくとも1つの無機材料が含まれる。
また、バッファ層221は、例えばn型有機半導体により形成してもよい。n型有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン亜鉛(II)に代表される遷移金属イオンと有機材料により錯形成された有機金属色素、フラーレン若しくはフラーレンの誘導体、ITIC、又はBTP誘導体に代表される非フラーレンアクセプター等を実用的に使用することができる。
【0026】
バッファ層221の厚さは、例えば10nm以上50nm以下に設定されている。
バッファ層221は、例えばゾル-ゲル(Sol-gel)法を用いて成膜される。具体的には、バッファ層221は、例えば酸化亜鉛が使用される場合、亜鉛(Zn)の前駆体を溶解したインク液を第1電極21の表面上に塗布し、インク液を加熱することにより成膜される。
【0027】
微粒子層222は、導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子222Pを含んでいる。微粒子222Pの平均一次粒子径は、例えば1nm以上20nm以下に設定されている。また、微粒子層222は、バッファ層221の厚さよりも厚く形成されている。そして、バッファ層221及び微粒子層222を含む電子輸送層22の厚さは例えば400nm以下に設定されている。
導電性酸化亜鉛には、例えば硼素(B)ドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛及びガリウム(Cd)ドープ酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つを使用することができる。
【0028】
図4は、電子輸送層22の発光スペクトルの一例を表している。横軸は波長を示している。縦軸は発光強度を示している。符号Aは、酸化亜鉛により形成されたバッファ層221の、波長に対する発光強度である。符号Bは、導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子222Pにより形成された微粒子層222の、波長に対する発光強度である。
微粒子層222では、符号Aに示されるように、350nmから400nmの波長の範囲にバンド端発光強度が見られ、400nmから700nmの波長の範囲に欠陥発光強度が見られる。
ここで、バンド端発光強度を強度L1とし、欠陥発光強度を強度L2とすると、微粒子層222の発光強度比(L1/L2)は1以上に形成されている。つまり、微粒子層222は、光電変換層23との界面の欠陥を減少させ、光電変換効率並びに光応答性を向上する構成とされている。
【0029】
光電変換層23は、選択的な波長域の光を吸収して光電変換を行い、又他の波長域の光を透過させる構成とされている。光電変換層23には、例えば有機色素が含まれている。有機色素には、例えばキナクリドン(QD)及びその誘導体、又はサブフタロシアニン及びその誘導体を実用的に使用することができる。
また、例えば、青色の有機色素としては、クマリン誘導体、シロール誘導体及びフルオレンを使用することができる。緑色の有機色素としては、例えば、ローダミン誘導体を使用することができる。赤色の有機色素としては、例えば、亜鉛フタロシアニを使用することができる。
【0030】
光電変換層23は、有機色素の他に、無機半導体を含んでもよい。無機半導体としては、例えばTiO2、ZnO、WO3、NiO、MoO3、CuO、Ga2O3、SrTiO3、SnO2、InSnOx、Nb2O3、MnO2、V2O3、CrO、CuInSe2、CuInS2、AgInS2、Si、PbS、PbSe、PbTe、CdS、CdSe、CdTe、Fe2O3、GaAs、GaP、InP、InAs、Ge、In2S3、Bi2S3、ZnSe、ZnTe及びZnSから選択される1つを使用することができる。
また、光電変換層23は、コロイド量子ドット、或いは、例えばCH3NH3PbX3(X:ハロゲン)により表される有機無機ペロブスカイト化合物を含んでもよい。光電変換層23の厚みは、例えば0.05μm以上10μm以下に設定されている。
【0031】
光電変換層23は、スピンコート塗布法、ブレードコート塗布法、スリットダイコート塗布法、スクリーン印刷塗布法、バーコーター塗布法、鋳型塗布法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、スプレー法及び真空蒸着法のいずれかの成膜法を用いて形成されている。厚みの制御、配向制御等、目的とする特性に応じて、適宜、光電変換層23の成膜法が選択されている。
【0032】
第2電極24では、光電変換層23において発生した信号電荷(正孔)が取り出される。第2電極24は、第1電極21と同様に、光透過性の導電材料、例えばITOにより形成されている。また、第2電極24は、第1電極21と同様に、SnO2系材料、ZnO系材料等により形成してもよい。第2電極24の厚さは、例えば50nm以上500nm以下に設定されている。
【0033】
(3)固体撮像装置1の製造方法
図5は、固体撮像装置1の製造方法、特に光電変換素子20の製造方法の一例を表している。
まず、基板10が準備され、基板10に制御回路11、配線層12等が形成される(ステップS1。図1参照。)。
【0034】
次に、配線層12上に、光電変換素子20の第1電極21が形成される(ステップS2。図2参照。)。
次に、第1電極21上に電子輸送層22が形成される(ステップS3)。
電子輸送層22は、最初にバッファ層221が形成される(ステップS31)。バッファ層221は、例えば酸化亜鉛が使用される場合、ゾル-ゲル法を用い、亜鉛の前駆体を溶解したインク液を第1電極21の表面上に塗布し、インク液を加熱することにより成膜される。加熱は150℃以上250℃以下の温度に設定される。
そして、バッファ層221上に微粒子層222が形成される(ステップS32)。微粒子層222は例えば塗布法により成膜される。
微粒子層222が形成されると、バッファ層221及び微粒子層222を備えた電子輸送層22が完成する。
【0035】
次に、電子輸送層22上に光電変換層23が形成される(ステップS4)。引き続き、光電変換層23上に第2電極24が形成される(ステップS5)。これにより、光電変換素子20が完成する。
【0036】
次に、光電変換素子20上に保護膜30が形成される(ステップS6。図1参照。)。保護膜30上に受光レンズ40が形成される(ステップS7。図1参照。)。これにより、固体撮像装置1が完成する。
【0037】
(4)第1実施例
図6A及び図6Bは、第1実施例に係る電子輸送層22のバッファ層221の表面の一例を表している。ここで、第1実施例に係る光電変換素子20は「光電変換素子20(1)」と説明する場合がある。
バッファ層221は、例えば酸化亜鉛により形成され、高温アニール前の状態である。バッファ層221は非晶質である。バッファ層221の表面の算術平均粗さRaは0.8以上1.0以下である。
【0038】
(5)第2実施例
図7A及び図7Bは、第2実施例に係る電子輸送層22のバッファ層221の表面の一例を表している。同様に、第2実施例に係る光電変換素子20は「光電変換素子20(2)」として説明する場合がある。
バッファ層221は、例えば酸化亜鉛により形成され、高温アニール後の状態である。バッファ層221は、高温アニールにより結晶化され、多結晶とされている。バッファ層221の表面の算術平均粗さRaは8以上12以下である。
【0039】
(6)第3実施例
図8Aは、第3実施例に係る電子輸送層22の微粒子層222であって、微粒子222Pに有機官能基を結合させた状態の一例を表している。同様に、第3実施例に係る光電変換素子20は「光電変換素子20(3)」として説明する場合がある。有機官能基は例えばヒドロキシ(OH)基である。
そして、図8Bは、第3実施例に係る微粒子層222であって、微粒子222Pの表面にパッシベーション処理を施した一例を表している。パッシベーション処理により、例えばシランカップリング剤といった有機化合物OCが微粒子222Pの表面に結合される。
【0040】
図9は、微粒子222Pの表面にパッシベーション処理を施す前及び施した後の発光スペクトルを表している。横軸は波長であり、縦軸は発光強度である。波長360nmにおいて発光強度のピークは微粒子222Pのバンド端発光である。波長600nm付近の発光強度は欠陥準位からの発光強度である。
符号「As」はパッシベーション処理前の発光スペクトルである。符号「SC」、符号「Cl」、符号「EDT」はそれぞれパッシベーション処理後の発光スペクトルである。「SC」は、シランカップリング剤を用いてパッシベーション処理を施した後の発光スペクトルである。「Cl」は、塩化アンモニウムを電離した塩素(Cl)を用いてパッシベーション処理を施した後の発光スペクトルである。「EDT」は、1,2-エタンジチオールを用いてパッシベーション処理を施した後の発光スペクトルである。
「As」に示されるパッシベーション処理を施す前よりも、パッシベーション処理を施した後では、欠陥準位からの発光強度が減少されている。
【0041】
図10は、図9のバンド端発光強度と欠陥準位からの発光強度との比を表している。発光強度比が小さいほど、欠陥準位からの発光が抑制されている。つまり、微粒子222Pの表面の欠陥がパッシベーション処理を施すことにより減少されている。欠陥を減少させることにより、デバイスの光電変換効率や光応答速度を減少させることができる。ここでは、符号「Cl」を付したパッシベーション処理を施した後において、欠陥抑制の効果が大きい。
【0042】
(7)第1比較例及び第2比較例
ここで、第1比較例に係る光電変換素子20A及び第2比較例に係る光電変換素子20Bについて説明する。
図11は、第1実施例~第3実施例に係る光電変換素子20(1)~光電変換素子20(3)、第1比較例に係る光電変換素子20A、第2比較例に係る光電変換素子20Bの特性評価結果の一例を表している。
第1比較例に係る光電変換素子20Aは、第1電極21と、微粒子層222と、光電変換層23と、第2電極24とを備えている。つまり、電子輸送層22は微粒子層222により形成されている。
一方、第2比較例に係る光電変換素子20Bは、第1電極21と、バッファ層221と、光電変換層23と、第2電極24とを備えている。つまり、電子輸送層22はバッファ層221により形成されている。
【0043】
(8)比較例に対する実施例の特性評価結果
第1比較例に係る光電変換素子20Aでは、塗れ性、テープ剥離、電子輸送層22の表面粗さの各項目が評価された。
塗れ性は、外観検査による第1電極21と電子輸送層22との密着性の評価である。100%の密着性がある場合、評価結果は、「優良」であり、記号「○」により示されている。90%以上100%未満の密着性がある場合、評価結果は、「良好」であり、記号「△」により示されている。90%未満の密着性の場合、評価結果は、「不良」であり、記号「×」により示されている。評価結果の「優良」、「良好」、「不良」における記号の使い方は、以下、同様である。
テープ剥離は、電子輸送層22にポリイミドフィルムの粘着テープを貼り付け、粘着テープを90度の角度において剥がした際に、電子輸送層22の残っている面積の割合を評価する。100%の面積が残っている場合、評価結果は記号「○」により示されている。90%以上100%未満の面積が残っている場合、評価結果は記号「△」により示されている。90%未満の面積が残っている場合、評価結果は記号「×」により示されている。
電子輸送層22の表面粗さは、最終的には微粒子層222の表面の算術平均粗さRaである。なお、第2比較例に係る光電変換素子20Bでは、微粒子層222が形成されていないので、バッファ層221の表面の算術平均粗さRaが評価される。
図13Aは、第1比較例に係る光電変換素子20Aにおいて、第1電極21上に微粒子層222を塗布した状態を表している。微粒子層222には塗布斑が生じており、密着性は良くない。また、図13Bは、光電変換素子20Aにおいて、第1電極21からテープ剥離により微粒子層222を剥がした状態を表している。微粒子層222の一部が剥がれている。
このため、第1比較例に係る光電変換素子20Aでは、密着性は「×」、テープ剥離は「×」という評価結果が得られた。微粒子層222の表面の算術平均粗さRaは0.9であった。
【0044】
第2比較例に係る光電変換素子20Bでは、密着性は「△」、テープ剥離は「△」という評価結果が得られた。バッファ層221の表面の算術平均粗さRaは0.8であった。
光電変換素子20Bでは、更に電気特性の評価が実施された。電気特性は、電流電圧特性、外部量子効率(EQE:External Quantum Efficiency)及び応答性である。
電流電圧特性は、第1電極21と第2電極24との間に-0.5V~1.0Vの電圧を印加し、電流値を測定した。測定は暗所及び940nmの波長の光照射下において実施され、暗電流値(破線)及び明電流値(実線)が測定された。
外部量子効率は暗電流値と明電流値とから算出された。第1電極21と第2電極24との間に0Vの電圧が印加されているとき、外部量子効率が50%以上の場合、評価結果は記号「○」により示されている。外部量子効率が30%以上50%未満の場合、評価結果は記号「△」により示されている。外部量子効率が30%未満の場合、評価結果は記号「×」により示されている。
応答性は、オン時間を10ms、オフ時間を20msとする940nmの波長の光パルスを照射し、照射をオフにしてから明電流値がオン時の5%になるまでの平均値を算出した。応答性が0.3ms以下の場合、評価結果は記号「○」により示されている。応答性が0.1ms以下の場合、評価結果は記号「△」により示されている。そして、応答性が1.0ms未満の場合、評価結果は記号「×」により示されている。
第2比較例に係る光電変換素子20Bでは、外部量子効率は「×」、応答性は「×」という評価結果が得られた。
【0045】
第1比較例に係る光電変換素子20A及び第2比較例に係る光電変換素子20Bに対して、第1実施例に係る光電変換素子20(1)~第3実施例に係る光電変換素子20(3)では以下の評価結果が得られた。
【0046】
ここで、図12Aは、第1実施例に係る光電変換素子20(1)において、第1電極21上に電子輸送層22を塗布した状態を表している。電子輸送層22には、塗布斑が無く、塗れ性は良好である。また、図12Bは、光電変換素子20(1)において、第1電極21からテープ剥離により電子輸送層22を剥がした状態を表している。電子輸送層22は殆ど剥がれていない。
このため、第1実施例に係る光電変換素子20(1)では、密着性は「△」、テープ剥離は「△」という評価結果が得られた。電子輸送層22の微粒子層222の表面の算術平均粗さRaは0.9であった。さらに、第1実施例に係る光電変換素子20(1)では、外部量子効率は「△」、応答性は「△」という評価結果が得られた。
【0047】
第2実施例に係る光電変換素子20(2)では、密着性は「△」、テープ剥離は「○」という評価結果が得られた。電子輸送層22のバッファ層221の成膜に高温アニールが実施されているので、バッファ層221の結晶性が進み、バッファ層221の表面の粗さは大きくなる。このバッファ層221の表面の粗さは微粒子層222の表面の粗さとして伝達され、微粒子層222の表面の算術平均粗さRaは10.0であった。さらに、第2実施例に係る光電変換素子20(2)では、外部量子効率は「○」、応答性は「△」という評価結果が得られた。
【0048】
第3実施例に係る光電変換素子20(3)では、密着性は「△」、テープ剥離は「○」という評価結果が得られた。電子輸送層22のバッファ層221の成膜に高温アニールが実施されているので、バッファ層221の結晶性が進み、バッファ層221の表面の粗さは大きくなる。このバッファ層221の表面の粗さは微粒子層222の表面の粗さとして伝達され、微粒子層222の表面の算術平均粗さRaは10.0であった。さらに、第3実施例に係る光電変換素子20(3)では、微粒子222Pの表面に有機官能基が結合され、微粒子222Pの表面の欠陥が修復されている。このため、外部量子効率は「○」、応答性は「○」という評価結果が得られた。
【0049】
(9)電子機器50の概略構成
図1に示される第1実施の形態に係る固体撮像装置1は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像システム、撮像機能を備えた携帯電話機、又は撮像機能を備えた他の機器等の各種の電子機器50に適用可能である。
【0050】
図14は、電子機器50の構成例を示すブロック図である。
図14に示されるように、電子機器50は、光学系51、固体撮像装置1、DSP(Digital Signal Processor)53、表示装置54、操作系55、メモリ56、記録装置57及び電源系58を備えている。これらはバス59を介して相互に接続されている。電子機器50は、静止画像及び動画像を撮像可能である。
【0051】
光学系51は1枚又は複数枚のレンズにより構成されている。光学系51は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像装置1に導き、固体撮像装置1の受光面(センサ部)に結像させる。
【0052】
固体撮像装置1では、光学系51を通して受光面に結像される像に応じて、一定期間、電子が蓄積される。そして、固体撮像装置1に蓄積された電子に応じた信号がDSP53に供給される。
【0053】
DSP53は、固体撮像装置1からの信号に対して各種の信号処理を施して画像を取得する。DSP53は、取得された画像のデータをメモリ56に一時的に記憶させる。メモリ56に記憶された画像のデータは、記録装置57に記録されたり、表示装置54に供給されて画像を表示させる。
また、操作系55は、ユーザによる各種の操作を受け付けて電子機器50の各ブロックに操作信号を供給する。電源系58は、電子機器50の各ブロックの駆動に必要な電力を供給する。
【0054】
[作用効果]
第1実施の形態に係る固体撮像装置1は、図1及び図2に示されるように、第1電極21と、電子輸送層22と、光電変換層23とを含む光電変換素子20を備える。さらに、光電変換素子20は第2電極24を備える。第1電極21は基板10上に配設される。光電変換層23は第1電極21上に配設される。電子輸送層22は、第1電極21と光電変換層23との間に配設され、バッファ層221と微粒子層222とを有する。バッファ層221は、イオン化ポテンシャルが第1電極21の仕事関数よりも大きく、電子親和力が光電変換層23よりも大きい。そして、微粒子層222は、導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子222Pを含む。すなわち、第1電極21上にバッファ層221を介して微粒子層222が配設される。
このため、電気伝導性や微粒子222Pの分散性に影響を及ぼすことがなく、第1電極21に対して、電子輸送層22の密着性並びに塗膜剥がれを改善することができる光電変換素子20を提供することができる。
【0055】
また、光電変換素子20では、図4に示されるように、電子輸送層22の微粒子層222は、発光スペクトルのバンド端発光強度L1に対する欠陥発光強度L2の発光強度比が1以上である。
このため、電子輸送層22の光電変換層23に接する微粒子層222の欠陥を減少させることができる。これにより、欠陥が減少された電子輸送層22と光電変換層23との界面を形成することができるので、光電変換素子20の光電変換効率並びに応答性を向上させることができる。
【0056】
さらに、光電変換素子20では、図3に示されるように、光電変換層23、微粒子層222、バッファ層221の順に、伝導体又は最低非占有分子軌道のエネルギレベルが深い。このため、光電変換層23において生成された電子が障壁ブロックを介在せずに第1電極21に取り出されるので、光電変換素子20の光電変換効率並びに応答性を向上させることができる。
【0057】
また、光電変換素子20では、図2に示される微粒子層222の微粒子222Pの平均一次粒子径が1nm以上20nm以下とされる。つまり、微粒子222Pの径が小さいので、微粒子層222と光電変換層23とが隙間無く接すことができる。このため、光電変換層23において生成された電子が電子輸送層22を介在させて第1電極21に取り出されるので、光電変換素子20の光電変換効率並びに応答性を向上させることができる。
【0058】
さらに、光電変換素子20では、図2に示されるように、電子輸送層22の微粒子層222はバッファ層221よりも厚い。このため、欠陥が減少された微粒子層222が厚いので、光電変換素子20の光電変換効率並びに応答性を向上させることができる。
加えて、電子輸送層22は400nm以下に形成されているので、光電変換層23において生成された電子を効率良く第1電極21に取り出すことができる。このため、光電変換素子20の光電変換効率並びに応答性を向上させることができる。
【0059】
また、光電変換素子20では、微粒子層222の微粒子222Pの表面に有機官能基が結合される。有機官能基を結合させることにより、微粒子222Pの表面の欠陥を減少させることができる。このため、光電変換素子20の発光強度比を大きくすることができる。これにより、光電変換素子20の光電変換効率並びに応答性を向上させることができる。
【0060】
さらに、固体撮像装置1の製造方法では、図5に示されるように、まず基板10上に第1電極21が形成される。次に、第1電極21上に亜鉛の前駆体を溶解したインク液を塗布し、インク液を加熱して、n半導体又はn型有機半導体を主成分とするバッファ層221が形成される。バッファ層221上には導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子222Pを含む微粒子層222が形成される。これにより、バッファ層221と微粒子層222とを含む電子輸送層22が形成される。
このため、バッファ層221が塗布プロセスにより形成されるので、バッファ層221及び微粒子層222を含む電子輸送層22が塗布プロセスにより形成可能となる。これにより、固体撮像装置1の製造プロセスが簡単になる。また、製造費用を減少することができる。
【0061】
<2.第2実施の形態>
図15は、本開示の第2実施の形態に係るCMOS撮像装置2の一例を示す概略構成図である。第1実施の形態に係る固体撮像装置1が第2実施の形態に係るCMOS撮像装置2として構成されている。
【0062】
CMOS撮像装置2は、図15に示されるように、半導体基板6に画素領域7と周辺回路部とを備えている。半導体基板6は例えば単結晶珪素基板である。画素領域7は撮像領域である。画素領域7では、複数の光電変換素子を含む画素70が2次元的に規則的に配列されている。画素70は、光電変換素子例えばフォトダイオードと、複数の画素トランジスタとを備えている。複数の画素トランジスタには、例えば転送トランジスタ、リセットトランジスタ及び増幅トランジスタの3つのトランジスタが含まれている。また、複数の画素トランジスタには、その他に選択トランジスタを追加して4つのトランジスタが含まれてもよい。これらのトランジスタは例えばMOSトランジスタである。
単位画素の等価回路は通常と同様であるので、詳細な説明は省略する。画素70は、共有画素構造としてもよい。この画素共有構造は、複数のフォトダイオードと、複数の転送トランジスタと、共有する1つのフローティングディフージョンと、共有する1つずつの他の画素トランジスタとから構成されている。
【0063】
周辺回路部は、垂直駆動回路81、カラム信号処理回路82、水平駆動回路83、出力回路84、制御回路85等を備えている。
制御回路85は、入力クロックと、動作モード等を指令するデータを受け取り、又CMOS撮像装置2の内部情報等のデータを出力する。すなわち、制御回路85では、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路81、カラム信号処理回路82及び水平駆動回路83等の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成する。そして、これらの信号は垂直駆動回路81、カラム信号処理回路82及び水平駆動回路83等に入力される。
【0064】
垂直駆動回路81は、例えばシフトレジスタによって構成されている。垂直駆動回路81は、画素駆動配線を選択し、選択された画素駆動配線に画素70を駆動するパルスを供給し、行単位において画素70を駆動する。すなわち、垂直駆動回路81は、画素領域7の各画素70を行単位において順次垂直方向に選択走査し、垂直信号線71を通して各画素70の光電変換素子の受光量に応じて生成された信号電荷に基づく画素信号をカラム信号処理回路82に供給する。
【0065】
カラム信号処理回路82は、画素70の例えば列毎に配置されている。カラム信号処理回路82は、1行分の画素70から出力される信号に対して、画素列毎にノイズ除去等の信号処理を行う。すなわち、カラム信号処理回路82は、画素70固有の固定パターンノイズを除去するためのCDSや、信号増幅、AD変換等の信号処理を行う。カラム信号処理回路82の出力段には、図示省略の水平選択スイッチが水平信号線72との間に接続されて設けられている。
水平駆動回路83は、例えばシフトレジスタによって構成されている。水平駆動回路83は、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路82の各々を順番に選択し、カラム信号処理回路82の各々から画素信号を水平信号線72に出力させる。
【0066】
出力回路84は、カラム信号処理回路82の各々から水平信号線72を通して順次に供給される信号に対して、信号処理を行って出力する。出力回路84は、例えば、バファリングだけする場合もあるし、黒レベル調整、列ばらつき補正、各種デジタル信号処理等を行う場合もある。入出力端子86は、外部と信号のやりとりをする。
【0067】
<3.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0068】
図16は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0069】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図16に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0070】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0071】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0072】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0073】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0074】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0075】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0076】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0077】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12030に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0078】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図16の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0079】
図17は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0080】
図17では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0081】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0082】
なお、図17には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0083】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0084】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0085】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0086】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0087】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、より簡易な構成の撮像部12031を実現できる。
【0088】
<4.内視鏡手術システムへの応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0089】
図18は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0090】
図18では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0091】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0092】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0093】
カメラヘッド11102の内部には光学系及び撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU: Camera Control Unit)11201に送信される。
【0094】
CCU11201は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって構成され、内視鏡11100及び表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0095】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0096】
光源装置11203は、例えばLED(light emitting diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0097】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率及び焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0098】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保及び術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0099】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度及び出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0100】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれ及び白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0101】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光及び/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0102】
図19は、図18に示すカメラヘッド11102及びCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0103】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0104】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズ及びフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0105】
撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(dimensional)表示に対応する右目用及び左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0106】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0107】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズ及びフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率及び焦点が適宜調整され得る。
【0108】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0109】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率及び焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0110】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能及びAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0111】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0112】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0113】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0114】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0115】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、及び、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0116】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0117】
カメラヘッド11102及びCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0118】
ここで、図示する例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0119】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、カメラヘッド11102の撮像部11402に適用され得る。撮像部11402に本開示に係る技術を適用することにより、構造の簡素化を実現しつつ、良好な術部画像を得ることができる。
【0120】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0121】
<5.その他の実施の形態>
本技術は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更可能である。
【0122】
本開示では、固体撮像装置は、第1電極と、電子輸送層と、光電変換層とを含む光電変換素子を備える。第1電極は基板上に配設される。光電変換層は第1電極上に配設される。電子輸送層は、第1電極と光電変換層との間に配設され、バッファ層と微粒子層とを有する。バッファ層は、イオン化ポテンシャルが第1電極の仕事関数よりも大きく、電子親和力が光電変換層よりも大きい。そして、微粒子層は、導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子を含む。すなわち、第1電極上にバッファ層を介して微粒子層が配設される。
このため、電気伝導性や微粒子の分散性に影響を及ぼすことがなく、第1電極に対して、電子輸送層の密着性並びに塗膜剥がれを改善することができる光電変換素子を含む固体撮像装置及びその製造方法を提供することができる。
【0123】
<本技術の構成>
本技術は、以下の構成を備えている。以下の構成の本技術によれば、電気伝導性や微粒子の分散性に影響を及ぼすことがなく、第1電極に対して、電子輸送層の密着性並びに塗膜剥がれを改善することができる光電変換素子を含む固体撮像装置及びその製造方法を提供することができる。
(1)基板上に配設された第1電極と、
前記第1電極上に配設された光電変換層と、
前記第1電極と前記光電変換層との間に配設され、イオン化ポテンシャルが前記第1電極の仕事関数よりも大きく、電子親和力が前記光電変換層よりも大きいバッファ層、及び前記バッファ層と前記光電変換層との間に配設され、主成分として導電性酸化亜鉛を含有する微粒子を含む微粒子層を有する電子輸送層と
を含む光電変換素子を備えている固体撮像装置。
(2)前記光電変換素子は、前記光電変換層上に配設された第2電極を更に含む
前記(1)に記載の固体撮像装置。
(3)前記導電性酸化亜鉛は、硼素ドープ酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛及びガリウムドープ酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1つである
前記(1)又は(2)に記載の固体撮像装置。
(4)前記バッファ層は、前記第1電極に対して正孔注入障壁を有し、
前記バッファ層では、電子の移動度が正孔の移動度より高い
前記(1)から(3)のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
(5)前記バッファ層は、n半導体又はn型有機半導体を主成分として含む
前記(4)に記載の固体撮像装置。
(6)前記n型半導体は、TiO2、ZnO、ZnS、SrTiO3、Nb2O5、WO3、In2O3、CuTiO3、SnO2、InGaZnO4、InTiO2及びβ-Ga2O3の群より選ばれる少なくとも1つの無機材料である
前記(5)に記載の固体撮像装置。
(7)前記n型有機半導体は、フタロシアニン亜鉛(II)に代表される遷移金属イオンと有機材料とにより錯形成された有機金属色素、フラーレン若しくはフラーレンの誘導体、ITIC、又はBTP誘導体に代表される非フラーレンアクセプターである
前記(5)に記載の固体撮像装置。
(8)前記微粒子層は、発光スペクトルのバンド端発光強度に対する欠陥発光強度の発光強度比が1以上である
前記(1)から(7)のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
(9)前記光電変換層、前記微粒子層、前記バッファ層の順に、伝導体又は最低非占有分子軌道のエネルギレベルが深い
前記(1)から(8)のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
(10)前記微粒子層の前記微粒子の平均一次粒子径が1nm以上20nm以下である
前記(1)から(9)のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
(11)前記微粒子層は、前記バッファ層の厚さよりも大きい厚さを有する
前記(1)から(10)のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
(12)前記電子輸送層は、400nm以下の厚さを有する
前記(1)から(11)のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
(13)前記微粒子の表面に有機官能基が結合されている
前記(1)から(12)のいずれか1つに記載の固体撮像装置。
(14)基板上に第1電極を形成し、
前記第1電極上に亜鉛の前駆体を溶解したインク液を塗布し、前記インク液を加熱して、n半導体又はn型有機半導体を主成分とするバッファ層を形成し、
前記バッファ層上に導電性酸化亜鉛を主成分とする微粒子を含む微粒子層を形成して、前記バッファ層と前記微粒子層とを含む、光電変換素子の電子輸送層を形成する
固体撮像装置の製造方法。
【符号の説明】
【0124】
1、2…固体撮像装置、10…基板、20…光電変換素子、21…第1電極、22…電子輸送層、221…バッファ層、222…微粒子層、222P…微粒子、23…光電変換層、24…第2電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19