(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177540
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 15/16 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
F24C15/16 Y
F24C15/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083879
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本間 満
(72)【発明者】
【氏名】松井 康博
(72)【発明者】
【氏名】山下 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(57)【要約】
【課題】 調理中は従来の引き出し式ドアの利便性を維持し、調理過程での焼き具合の確認ができるとともに、調理後は引き出した後に、調理パンを載置した架台をプルアップさせ、使用者の食品の取り出しを容易にし、使い勝手の良いグリル庫を提供できる。
【解決手段】 本体上面に鍋載置部を備え、本体前面にグリル庫を備えた、加熱調理器であって、前記グリル庫は、前面に開口部を設けた加熱室と、前後にスライドすることで前記開口部を開閉するドアと、該ドアと連動して前後にスライドする架台と、該架台に載置した調理パンまたは食品を加熱するヒータと、前記ドアを引き出した後に、前記架台を上昇させる昇降機構と、を具備することを特徴とする加熱調理器。
【選択図】
図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体上面に鍋載置部を備え、本体前面にグリル庫を備えた、加熱調理器であって、
前記グリル庫は、
前面に開口部を設けた加熱室と、
前後にスライドすることで前記開口部を開閉するドアと、
該ドアと連動して前後にスライドする架台と、
該架台に載置した調理パンまたは食品を加熱するヒータと、
前記ドアを引き出した後に、前記架台を上昇させる昇降機構と、
を具備することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記ドアを前後にスライドさせるドアレールと、
該ドアレールに回動可能に取り付けた支持アームと、
を更に備えており、
前記昇降機構は、前記支持アームが回動したときに、前記支持アームの端部が前記架台を上昇させる機構であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記昇降機構は、前記支持アームと前記ドアの連結部を前記ドアレールの先端に回転可能に取り付けた機構であり、前記連結部を支点として前記ドアを回動させる使用者の操作力を利用して前記架台を上昇させる機構であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱調理器において、
前記ドアの上部に使用者が把持するハンドルを配置したことを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記昇降機構は、前記ドアを下方向にスライドさせる使用者の操作力を利用して前記架台を上昇させる機構であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記昇降機構は、前記ドアに設けた操作部への操作入力により駆動する電動モータの駆動力を利用して前記架台を上昇させる機構であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
請求項2から請求項6の何れか一項に記載の加熱調理器において、
前記支持アームは、前記ドアを引き出し終える前は回動が阻害されており、前記ドアを引き出し終えた後は回動が許容されることを特徴とする加熱調理器。
【請求項8】
請求項7に記載の加熱調理器において、
前記昇降機構は、前記架台を任意の高さで停止することを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体上面に鍋載置部を備え、本体前面にグリル庫を備えた、システムキッチンに組み込むタイプの加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンに組み込むタイプの加熱調理器が内蔵するグリル庫は、加熱室の上下に配置したシーズヒーターやガスバーナー等の熱源により、食品の両面を同時に加熱できるものが主流となっている。このグリル庫は、熱源の放射熱で肉や魚等を加熱するグリル調理に加え、加熱室内の温度を細やかに制御することで、煮込み料理からケーキ等まで多様に対応できるオーブン調理にも利用されている。
【0003】
このグリル庫は、前面側に加熱室の開口部を設けており、その前面開口部を前後に移動可能なドアで開閉している。このため、ドアを手前側に引き出したときに、食品を載置する架台もドアと連動して水平に引き出される構成が一般的である。
【0004】
ここで、組込みタイプの加熱調理器は、本体上面の鍋載置部がシステムキッチンの天板と略同じ高さになるよう設置されるため、本体前面のグリル庫は必然的にキッチン天板よりも低い位置になる。従って、グリル庫から水平に引き出した架台はキッチン天板より低くなり、平均身長の使用者が腰を曲げて作業する必要があるなど、利用しづらい場合もあった。このため、使用者の身体面の負担軽減のために食品の取り出し易さの向上を図る技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1の請求項1には、「前面側に開口部を有し、両側壁の内面の下部に固定ガイドレールが取付けられたほぼ箱状のグリル室と、グリル室の開口部を開閉するグリル扉と、固定ガイドレールに摺動自在に支持される摺動レールと、略矩形状に組まれグリル皿を載置する載置枠と、一端が摺動レールに回動自在に軸支され、他端が載置枠の側面に固定されたプルアップアームと、グリル扉をグリル室の開口部を開成するように前方に移動したときにプルアップアームと協働して載置枠を上昇させるプルアップ機構と、を備えたことを特徴とするグリルユニット」の記載があり、グリル扉(以下「ドア」と称する)の引き出し動作と協働してグリル皿(以下「調理パン」と称する)を上昇させるグリルユニット(以下「グリル庫」と称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、特許文献1では、ドアを引き出すと調理パンが上昇するプルアップ機構を採用していた。この結果、ドアの引き出し速度と、調理パンの上昇速度が連動するため、使用者が特段の注意を払うことなくドアを引き出すと、調理パンが意図せぬ高速度で上昇する可能性のある構造であった。従って、特許文献1のグリル庫を利用すると、例えば、水分の多い食材の調理後に、ドアを素早く引き出すと調理パンが急上昇して水分がこぼれたり、転がり易い貝類などの食材の調理後であれば、ドアを素早く引き出すと調理パンが急上昇して食材が落下したりする可能性もあった。
【0008】
また、特許文献1のグリル庫では、ドアの引き出し量と調理パンの高さが連動するため、ドア全開時の調理パンの高さは一定であり、使用者が使い易い高さに調理パンの高さを調整することができなかった。
【0009】
さらに、グリル庫の調理時には、ドアを引き出して食材の焼き具合を目視したいこともあるが、特許文献1のグリル庫では、ドアの引き出し動作と連動して調理パンが上昇し、調理パンと加熱室天面の隙間が狭くなるため、使用者から調理パン内の食品状態が見え難くなる場合もあった。その際、食品を見ようとドアの引き出し量を増やすと、前面開口部からの熱漏洩が多くなり、庫内温度の低下を招いて調理性能を悪化させる可能性があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ドアの引き出し機構と架台や調理パンの上昇機構を分離することで、ドアの引き出し速度や引き出し量と、架台や調理パンの上昇速度や高さを個別に調整できる、使い易いグリル庫を備えた加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の加熱調理器は、本体上面に鍋載置部を備え、本体前面にグリル庫を備えた、加熱調理器であって、前記グリル庫は、前面に開口部を設けた加熱室と、前後にスライドすることで前記開口部を開閉するドアと、該ドアと連動して前後にスライドする架台と、該架台に載置した調理パンまたは食品を加熱するヒータと、前記ドアを引き出した後に、前記架台を上昇させる昇降機構と、を具備するものとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明の加熱調理器によれば、ドアの引き出し速度や引き出し量と、架台や調理パンの上昇速度や高さを個別に調整できる、使い易いグリル庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6B】
図6Aのグリル庫のドアを引き出した状態の側面断面図
【
図6C】
図6Bのグリル庫の架台を上昇させた状態の側面断面図
【
図7B】
図7Aのグリル庫の架台を上昇させた状態の側面断面図
【
図8B】
図8Aのグリル庫の架台を上昇させた状態の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の加熱調理器の実施例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、加熱調理器の一例として、グリル庫を備えたビルトインタイプのIHクッキングヒータを例示するが、グリル庫を備えた調理器であれば、据え置きタイプのIHクッキングヒータ、或いは、ビルトインタイプや据え置きタイプのガスコンロにも、本発明を適用することができる。
【実施例0015】
まず、本発明の実施例1に係る加熱調理器100の全体構成を概説した後、グリル庫5の詳細構造を説明する。
【0016】
<加熱調理器100の全体構成>
本実施例の加熱調理器100は、上面に載置した金属鍋の鍋底に渦電流を発生させ、渦電流によるジュール熱によって金属鍋自体を発熱させるIH(Induction Heating)機能と、加熱室内に収納した食品をヒータの放射熱で加熱するグリル機能を備えた調理器である。なお、
図1等に示すように、以下では、加熱調理器100に相対した使用者の視線を基準として、前後・上下・左右の各方向を定義する。
【0017】
図1は加熱調理器100の斜視図であり、
図2は加熱調理器100の分解斜視図である。両図に示すように、加熱調理器100は、本体1、トッププレート2、加熱コイル3、基板ケース8等を備え、さらに、本発明を適用したグリル庫5を内蔵した調理器である。
【0018】
本体1は、加熱調理器100が設置される空間(所定の左右幅・前後幅・高さ)に対応した外郭を有する筐体であり、上方が開放した箱状(凹状)を呈している。この本体1の内部には、左側にグリル庫5、右側に基板ケース8が配置される。また、グリル庫5と基板ケース8の上方には加熱コイル3や、表示部P1等が設置され、さらに、本体1の上面開口を覆うようにトッププレート2を設置している。
【0019】
トッププレート2は、三つの加熱コイル3の設置位置に対応した三口の鍋載置部21と、鍋載置部21に載置された金属鍋の加熱具合を設定するための操作部P0と、排気口H2とを有している。なお、排気口H2は、後述するグリル庫5の排気ダクト59や、吸気口H1を起点とする風路の出口であり、トッププレート2の後方(右側・左側)に配置される。
【0020】
本体1の前面左側には、前後にスライドすることでグリル庫5を開閉するドア6を配置している。なお、ドア6の詳細については後述する。また、本体1の前面右側には、主にグリル庫5の加熱具合を設定するための操作パネルP2と、主電源をオンオフする電源スイッチP3を配置している。
【0021】
基板ケース8は、内部に基板7等の電気部品を収納したケースである。基板ケース8の背面側には、冷却用のファン装置9が設けられており、本体1背面の吸気口H1から外気を吸い込み、基盤ケース8内に積層された基板7や、その下流に配置された加熱コイル3に冷却風を供給する構成となっている。
【0022】
<グリル庫5の構成>
図3は、加熱調理器100を、
図1に示すA-A線で切断した正面断面図であり、
図4は、加熱調理器100を、
図1に示すB-B線で切断した側面断面図である。両図に示すように、本実施例のグリル庫5は、食品57を出し入れする前面開口に設けた、箱型の加熱室50を備えている。この加熱室50は、例えば、アルミニウム合金製の板をプレス加工によりそれぞれ所定の形状に成形した複数の部材をビスねじ等で組み立てて構成したものである。
【0023】
この加熱室50では、架台54に載置した深皿状の調理パン58に食品57を収納して調理を行う。調理パン58は、例えば、アルミニウム等の材料により上面視矩形状に形成された深皿であり、表面にフッ素コート剤などがコーティングされたものである。
【0024】
加熱室50内には、調理パン58を挟むように、上ヒータ51と下ヒータ52を設置しており、両ヒータのオンオフを制御することで、調理パン58内の食品57の上下面を同時に、あるいは、交互に加熱することができる。なお、上ヒータ51と下ヒータ52は、シーズヒーターや電熱ヒータ―などの放射熱を利用する熱源である。
【0025】
このグリル庫5では、加熱室50の左右下側に設けた一対のドアレール56により、加熱室50の前面開口を封鎖するためのドア6が前後方向にスライドして移動する。このドア6は、加熱室50前面開口より幅と高さが大きく、また、加熱室50の前面側は、フランジ状となっており、ドア6と略面接触させることで、加熱室50の前面開口を気密できる構造となっている。なお、ドアレール56を利用したドア6のスライドと連動し、調理パン58を載置するための架台54も前後方向にスライドする。
【0026】
加熱室50の背面側上方には加熱室50内の油煙や蒸気などを排出する排気ダクト59を設けており、トッププレート2の後方に設けた排気口H2から排気する構成(
図2参照)となっている。排気口H2に連通する排気ダクト59内には、脱煙・脱臭処理を行う触媒55を設けている。
【0027】
<ドア6の構成>
次に、本実施例のドア6の詳細構造について、グリル庫の正面断面の模式図である
図5と、グリル庫のドア閉鎖時の側面断面の模式図である
図6Aを用いて説明する。
【0028】
各図に示すように、ドア6は、調理パン58を載置した架台54を略水平に引き出すドアレール56の先端に取り付けられている。このドアレール56は、加熱室50の外殻の左下と右下に固定した一対のアウターメンバー56bと、各々のアウターメンバー56bの内側を前後方向に摺動するインナーメンバー56aで構成される。また、各々のインナーメンバー56aの外側には、支持アーム65と補強アーム66を回動可能に取り付けている。本実施例では、支持アーム65と補強アーム66の幅(
図6Aでは上下方向高さ)をドアレール56の高さより低くすることで、架台54の左右幅を支持アーム65や補強アーム66の上方まで拡張しているため(
図5参照)、例えばピザなどの大きい食材であっても架台54に載置して調理できるなど、使用者に使い易い構成となっている。なお、本実施例では、ドアレール56を加熱室50の左右下隅に配置したが、加熱室50を略直方体で構成し、加熱室50の左右に配置しても差し支えない。
【0029】
また、本実施例では、
図6Aに示すように、インナーメンバー56aと前方の支持アーム65aを支点S1で連結し、支持アーム65aと補強アーム66を支点S2で連結し、インナーメンバー56aと後方の支持アーム66bを支点S3で連結し、支持アーム65bと補強アーム66を支点S4で連結している。これにより、インナーメンバー56aの外側に設けた支持アーム65a、65bと補強アーム66は、各支点(S1~S4)の周りを回動するリンク機構を構成している。
【0030】
さらに、支持アーム65aの前端をドア6の下部に固定することで、支点S1を回転軸としてドア6を回動させた時に、支持アーム65aがドア6と同じ角度で回動するように構成している。なお、支点S1から離れたドア6の上部に、力点となるハンドル6aを設けているため、てこを利用して架台54上の調理パン58を上昇させる際の使用者の負荷を低減している。
【0031】
上記した、ドア6、支持アーム65、補強アーム66、架台54から構成された、調理パン58の昇降機構を利用することで、食品57が取り出しやすく、使い勝手の良いグリル庫5となる。
【0032】
<架台54のリフトアップ方法>
次に、上記した昇降機構を用いて、架台54を上昇させる具体的な方法について、ドア6を最後まで引き出した状態のグリル庫5の側面断面の模式図である
図6Bと、引き出した架台54を上昇させた状態のグリル庫5の側面断面の模式図である
図6Cを用いて説明する。
【0033】
図6Bに示すように、使用者がハンドル6aを引きながらドア6を手前に引き出すと、ドア6に固定した支持アーム65a、支点S1を介して支持アーム65aと連結したインナーメンバー56a、支点S2を介して支持アーム65aと連結した補強アーム66、支点S3を介してインナーメンバー56aと連結した支持アーム65b、が連動して略水平に引き出される。また、ドア6を手前に引き出すと、ドア6と連結した架台54や架台上の調理パン58も同時に略水平に引き出される。
【0034】
本実施例の加熱調理器100では、
図6Bに示すドア6を引いた状態が、従来の一般的な加熱調理器におけるドア開状態と同じであるため、調理中にドア6を少し引いて調理パン58上の食品57の焼け具合を目視したりすることができる。また、使用者の身長や慣習によっては、
図6Bのドア6を引いた状態の架台54の高さが使い易ければ、このまま調理パン58や食品57を取り出して使用することもできる。
【0035】
図6Cは、ドア6を最後まで引き出して
図6Bの状態にした後、更に、ハンドル6aを斜め下方に引いて、支点S1を軸にドア6を回動させ傾斜させた状態を示している。
図5と
図6Aから明らかなように、ドア閉時の支持アーム65の上方には加熱室50の外殻が存在しており、ハンドル6aを支点S1周りに回動させようとしても支持アーム65aの回動が阻害されるため、ハンドル6aは回動しない。従って、ドアの全開前にハンドル6aを操作しても調理パン58は上昇しない。
【0036】
これに対し、
図6Bに示す位置までドア6を引き出し終えた、ドア全開後であれば、
図6Cに示すように、ドア6の回動とともにドア6に固定した前方の支持アーム65aが回動し、支持アーム65aと連結した補強アーム66を上方に移動させることができる。また、補強アーム66によって後方の支持アーム65bが回動して前方向に回動する。この結果、インナーメンバー56aを静止節、支持アーム65aを原動節、補強アーム66を中間節、支持アーム65bを従動節とした、いわゆる1自由度連鎖のリンク機構となり、原動節(支持アーム65a)の動きが決まれば、他(補強アーム66、支持アーム65b)の動きが決まる機構となる。
【0037】
ここで、
図6Bに示したように、支持アーム65aと支持アーム65bは、支点S2,S4より後方に伸びた節であるため、ドア6を回動させると、グリル庫5の左右に設けた支持アーム65aと支持アーム65bの後端で、架台54の左右端を四点支持することができる。なお、ドア6や架台54の重量、および、各支点の摺動抵抗などを適切に設定することで、ハンドル6aの操作に要する力を適切に調整したり、ドア6の回動を所望角度で止めたときに架台54が任意の高さで停止するようにしたりすることができる。また、ドア6を引き出して安定してリンク機構の動きができるように、ストッパーやガイドなどを配置してもよい。
【0038】
以上で説明したように、本実施例のグリル庫5では、ドア6の引き出し完了後に、架台54や調理パン58の上昇操作を開始できるようにした。このように、引き出し動作と上昇動作の2つの動作を分離したことで、ドア6の引き出し速度や引き出し量と、架台54や調理パン58の上昇速度や高さを個別に調整することができる。
【0039】
このため、特許文献1のグリル庫で発生した種々の不利益を回避することができる。すなわち、(1)調理中にドア6を少しだけ開いて食品を目視したい場合に、調理パン58がドア6の開動作と連動して加熱室天面に接近し、調理パン58内の食品が見づらくなることがない。(2)調理後にドア6を開く際、調理パン58が意図せぬ高速度で上昇することがない。(3)調理後にドア6を全開にした後、架台54や調理パン58を所望の高さに持ち上げ、食品57や調理パン58を容易に取り出すことができる。
【0040】
<グリル調理時の動作>
次に、実際のグリル調理過程における、ドア6の開閉について、
図1から
図6Cを参照しながら具体的に説明する。ここでは、加熱室50の調理パン58に載置された食品57を加熱調理する場合を例に説明する。
【0041】
まず、使用者は、ドア6を前方に引いて加熱室50から架台54を引き出し、食品57を入れた調理パン58を架台54に載置する。次に、ドア6を戻して加熱室50の前面開口を閉鎖した後、操作パネルP2で調理温度や時間を設定し、操作パネルP2の調理ボタンを押してグリル調理を開始する。ここでは、後述する調理パン58のリフトアップが、火傷の心配がない常温以下の食品57の取り扱いに必ずしも行うという訳でもないので、従来一般のドア開閉と同様に調理パン58を加熱室50内に配置させている。また、調理パン58を架台54に載置する作業は短時間であり、例えば高齢者であっても姿勢による体の負荷など小さいと考えられる。
【0042】
調理の開始とともに、上ヒータ51或いは下ヒータ52が通電し、食品57が加熱される。加熱中は加熱室50の壁面温度が上昇し、その室内の熱気や壁面からの輻射熱により調理パン58および食品57の温度も上昇する。加熱室50で加熱される食品57は、同じ食材であっても、大きさや重量は不揃いであり、設定した調理温度や調理時間が使用者の嗜好に合った仕上がりになるとは限らない。そのため、調理過程で、使用者がドア6を開いて加熱具合を確認する場合がある。その際、少しだけドア6を引き、ドア6に連動して調理パン58が略水平に手前側に移動することで、加熱室50の開口部で天井面と調理パン58の間隙が保持されるため、ドア6を手前に大きく開けなくとも、食品57の状態を確認し、すぐドア6を閉め、加熱調理が続けられる。ドア6を大きく開くと、熱気が逃げ、加熱室50の全体温度の低下や、手前と奥で温度分布が出やすくなるなど、消費電力量の増加、調理性能の悪化が生じる場合がる。
【0043】
また、食品57の加熱調理の完了は、設定した時間でのブザー報知による場合や、使用者の嗜好に合わせてドア6を開くなどの場合がある。調理後のドア6は表面温度が上昇するため、ハンドル6a以外に触れないことが望ましいと考えられる。ハンドル6aを引くことで、ドア6に接続した架台54と、架台54に載置した調理パン58が加熱室50から引き出すことができる。
【0044】
例えば、調理済みの食品57を別の容器に移し替える際、調理パン58の高さがキッチン天板より低い位置にあるため、体を屈めた姿勢で作業することになる。特に食品57が箸で掴みにくいものであったり、数量が多かったり、大きく重いものであったり、であれば、無理な体勢での作業時間が長くなる。そこで、ドア6のハンドル6aを更に引くことで、架台54を上昇させることができる。ドア6の回動量により、架台54の上昇量も使用者が任意に調整でき、使い易い高さで食品57を移し替えることができる。
【0045】
或いは、調理済みの食品57を載置した調理パン58を、例えばキッチン天板に移動させた後、食品57を別の容器に移し替えるような作業では、架台54のリフトアップにより、キッチン天板と調理パン58の距離が近くなるため、キッチン天板への移動が容易となる。
【0046】
以上で説明したように、本実施例の加熱調理器100によれば、調理中は従来の引き出し式ドアの利便性を維持し、調理過程での焼き具合の確認ができるとともに、調理後は引き出した後に、使用者が使い易いように、調理パン58を載置した架台54を任意の高さにプルアップさせ、使用者の食品の取り出しを容易にすることができる。
このような動作を実現するため、本実施例のグリル庫5は、ドア6とインナーメンバー56aは上下方向にスライドできる摺動部6cを有している。また、インナーメンバー56aには、ドア6内部に挿入した支点S0を設けており、支点S0および支点S1は回転可能なギア(図示せず)を備え、ギアを介して支点S0と支点S1がベルト6dで連結されている。支点S0のギアはドア6内のラックギア6bと噛み合う構成となっているため、ドア6が下方にスライドすることで、支点S0およびベルト6dで接続した支点S1、つまり支持アーム65aも回転する。従って、実施例1と同様にインナーメンバー56aを静止節、支持アーム65aを原動節、補強アーム66を中間節、支持アーム65bを従動節とした1自由度連鎖のリンク機構が構成され、支持アーム65aと支持アーム65bが補強アーム66の上方で上昇する動きをする架台54を支持する。
これにより、ドア6が、架台54と連動して、それぞれ上下方向に移動するため、リフトアップの早い段階で、ドア6の上端の高さが調理パン58の縁より低くなる。このため、使用者が使い易いリフトアップ途中の高さで、食品57の移し替えなどが容易となり、より使い勝手が良くなる。