(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177556
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】計測器及び計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 3/1003 20200101AFI20221124BHJP
G01B 3/1061 20200101ALI20221124BHJP
【FI】
G01B3/1003
G01B3/1061
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083903
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】山之内 眞悟
【テーマコード(参考)】
2F011
【Fターム(参考)】
2F011AA04
2F011AD01
(57)【要約】
【課題】測定結果の誤差を減らすことができる計測器及び計測方法を提供する。
【解決手段】計測器100は、長さ方向に配列された複数のパターンを有する第1列パターン31及び第2列パターン32を有し、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられており、第1列パターンは第2列パターンよりも同一の二進値が連続するパターン長が大きいメジャー7と、第1列パターンを読み取るフォトリフレクタ5(PR6~PR9)と、第2列パターンを読み取るフォトリフレクタ(PR1~PR5)と、メジャーの進行方向を検出するホールセンサ3と、メジャーの進行方向と、PR6~PR9の読取値と、PR1~PR5の読取値とに基づいて、測定対象の長さを測定するマイコン1とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に配列された複数のパターンを有する第1列パターン及び第2列パターンを有し、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられており、前記第1列パターンは前記第2列パターンよりも同一の二進値が連続するパターン長が大きいメジャーと、
前記第1列パターンを読み取る第1読取手段と、
前記第2列パターンを読み取る第2読取手段と、
前記メジャーの進行方向を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された前記メジャーの進行方向と、前記第1読取手段の読取値と、前記第2読取手段の読取値とに基づいて、測定対象の長さを測定する制御手段と
を備えることを特徴とする計測器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段で検出された前記メジャーの進行方向と、前記第1読取手段の読取値とに基づいて、前記測定対象の長さを測定する第1モードと、
前記制御手段が、前記第1読取手段の読取値と、前記第2読取手段の読取値とに基づいて、前記測定対象の長さを測定する第2モードと、を有することを特徴とする請求項1に記載の計測器。
【請求項3】
前記検出手段は、前記メジャーを巻き取るリールの角度を検出するセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の計測器。
【請求項4】
前記第1読取手段は前記第1列パターンに対向する少なくとも2つの読取器を備え、前記第2読取手段は前記第2列パターンに対向する少なくとも1つの読取器を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の計測器。
【請求項5】
前記第1読取手段は前記第1列パターンに対向する少なくとも2つの読取器を備え、
前記第1モードでは、前記第1読取手段が備える読取器のうち一つが使用され、前記第2モードでは、前記第1読取手段が備える読取器の全てが使用されることを特徴とする請求項2に記載の計測器。
【請求項6】
前記第1読取手段は、前記2つの読取器から長さ方向に所定距離だけそれぞれ離れた別の2つの読取器を備えていることを特徴とする請求項4に記載の計測器。
【請求項7】
長さ方向に配列された複数のパターンを有する第1列パターン及び第2列パターンを有し、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられており、前記第1列パターンは前記第2列パターンよりも同一の二進値が連続するパターン長が大きいメジャーを備える計測器の計測方法であって、
前記第1列パターンを読み取る第1工程と、
前記第2列パターンを読み取る第2工程と、
前記メジャーの進行方向を検出する第3工程と、
前記メジャーの進行方向と、前記第1列パターンの読取値と、前記第2列パターンの読取値とに基づいて、測定対象の長さを測定する第4工程と
を備えることを特徴とする計測方法。
【請求項8】
前記計測器の動作モードは、
前記メジャーの進行方向と、前記第1列パターンの読取値とに基づいて、前記測定対象の長さを測定する第1モードと、
前記第1列パターンの読取値と、前記第2列パターンの読取値とに基づいて、前記測定対象の長さを測定する第2モードと、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測器及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻き取りリール上の切り溝が回路基板上の接点と接触することによって電気的パルスを発生し、そのパルス数に基づいて小さな間隔変位を測定する技術と、テープ片上のバーコードと光学式読み取り器とを使ってより大きな間隔変位を測定する技術と組み合わせた測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、主尺と、主尺とはスケールの異なる副尺とを有する副尺式エンコーダが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平8-30644号公報
【特許文献2】特開2001-16591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の測定装置では、電気的パルスを使用するため、ノイズの影響を受けて測定結果に誤差が生じやすいという問題がある。また、切り溝と接点との接触不良により、測定結果に誤差が生じやすいという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、測定結果の誤差を減らすことができる計測器及び計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の計測器は、長さ方向に配列された複数のパターンを有する第1列パターン及び第2列パターンを有し、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられており、前記第1列パターンは前記第2列パターンよりも同一の二進値が連続するパターン長が大きいメジャーと、前記第1列パターンを読み取る第1読取手段と、前記第2列パターンを読み取る第2読取手段と、前記メジャーの進行方向を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された前記メジャーの進行方向と、前記第1読取手段の読取値と、前記第2読取手段の読取値とに基づいて、測定対象の長さを測定する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の計測方法は、長さ方向に配列された複数のパターンを有する第1列パターン及び第2列パターンを有し、各パターンには二進値のいずれかが割り当てられており、前記第1列パターンは前記第2列パターンよりも同一の二進値が連続するパターン長が大きいメジャーを備える計測器の計測方法であって、前記第1列パターンを読み取る第1工程と、前記第2列パターンを読み取る第2工程と、前記メジャーの進行方向を検出する第3工程と、前記メジャーの進行方向と、前記第1列パターンの読取値と、前記第2列パターンの読取値とに基づいて、測定対象の長さを測定する第4工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定結果の誤差を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本実施の形態に係る計測器の内部状態を示す図である。
【
図3】(A)は、メジャーに印刷されたパターンの一例を示す図である。(B)は、フォトリフレクタの配置の一例を示す図である。
【
図4】長さとパターンとの対応関係を示す情報の一例を示す図である。
【
図5】計測器で実行される処理を示すフローチャートである。
【
図6】(A)及び(B)は、計測器の分解能を下げる場合のフォトリフレクタの配置の変形例を示す図である。
【
図7】(A)及び(B)は、計測器の分解能を下げる場合のフォトリフレクタの配置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る計測器の構成図である。
図2は、本実施の形態に係る計測器の内部状態を示す図である。なお、
図2では、筐体15の一部が省略されているものとする。
【0012】
計測器100は、例えば、測定対象の長さを測定する装置である。
図1に示すように、計測器100は、測定対象の長さを算出するマイコン1と、算出された測定対象の長さのデータを無線で外部端末20に送信する無線通信部2と、リール8の回転角を測定するホールセンサ3と、測定の開始をマイコン1に指示するスイッチ4と、メジャー7に印刷されたパターンを光学的に読み取るフォトリフレクタ5と、マイコン1、無線通信部2、ホールセンサ3およびフォトリフレクタ5に電力を供給するバッテリ6と、複数のパターンが印刷されたメジャー7と、メジャー7が巻き付けられたリール8と、リール8の回転軸内に設けられた磁石9とを備えている。
【0013】
マイコン1、無線通信部2、ホールセンサ3及びスイッチ4は、基板11上に搭載されており、フォトリフレクタ5は基板12上に搭載されている。
図2に示すように、計測器100は、リール8、基板11、基板12を覆う筐体15を備えている。基板11は、リール8の側面に対向する位置に設けられており、基板12はメジャー7のパターンに対向する位置に設けられている。基板11と基板12は不図示のFPC(Flexible Printed Circuit)で接続されている。
【0014】
図1に戻り、マイコン1は、無線通信部2、ホールセンサ3、スイッチ4及びフォトリフレクタ5と電気的に接続されている。無線通信部2は、Bluetooth(登録商標)又は無線LAN(Local Area Network)などの通信部である。
【0015】
フォトリフレクタ(PR)5は、メジャー7に印刷されたパターンに光を照射する発光部5aと、パターンからの反射光を受光し、受光量に応じた値をもつ電流又は電圧に変換する受光部5bとを備えている。例えば、発光部5aは、赤外線、可視光線及び紫外線の少なくとも1つを照射するLED(Light Emitting Diode)であり、受光部5bはパターンで反射された赤外線、可視光線及び紫外線の少なくとも1つを受光するフォトトランジスタである。
図1では1つのフォトリフレクタ5が図示されているが、フォトリフレクタ5の個数は1つに限定されるものではない。
【0016】
ホールセンサ3は、リール8の回転軸内に設けられた磁石9の磁界に応じた電圧をマイコン1に出力する。磁石9は例えば円盤状であり、円盤の直径で2分割した一方がN極、他方がS極である。磁石9の円盤の中心がリール8の回転軸と同軸となるように設けられる。ホールセンサ3は例えば2つ設けられており、一方のホールセンサ3はリール回転軸を中心に他方のホールセンサ3が90°離れた位置に設けられる。ホールセンサ3の出力電圧は磁界強度に比例するので、マイコン1は2つのホールセンサ3からの出力電圧に基づいてリール8の回転角やメジャー7の進行方向(引き出し方向又は巻き取り方向)を検出することができる。例えば、一方のホールセンサ3の出力電圧と、一方の出力電圧に対して90°位相のずれた他方のホールセンサ3の出力電圧とに基づいてarctan計算することによって0°~360°の絶対角度を検出することができる。ホールセンサ3及びマイコン1はメジャー7の進行方向を検出する検出手段として機能する。メジャー7の進行方向やリール8の回転角を検出するセンサは、ホールセンサに限定されるものではない。例えば、リールの側面の外周縁にパターンを設けて、そのパターンを光学的に読み取るフォトリフレクタをリール8の回転角を検出するセンサとして使用してもよい。
【0017】
マイコン1(制御手段)は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。マイコン1は、長さのデータとパターンとの対応関係を示す情報(
図4参照)を格納するメモリ1aを備えている。マイコン1はフォトリフレクタ5のオン/オフを制御し、フォトリフレクタ5から出力される電流値又は電圧値を読み取る。パターンの色によって反射率が異なり、フォトリフレクタ5の受光量は反射率に応じて変動するため、マイコン1はフォトリフレクタ5から出力される電流値又は電圧値によって読み取ったパターンの色の判断が可能である。
【0018】
また、マイコン1は、読み取られたパターンの色を、メモリ1aに格納された長さとパターンとの対応関係を示す情報に照合することによって、測定対象の長さを算出する。長さとパターンとの対応関係を示す情報は、例えば
図4に示す、長さとパターンの色の組み合わせとを関連付けしたテーブルである。長さとパターンとの対応関係を示す情報は、メモリ1aに格納されているが、外部端末20に格納し、必要に応じてマイコン1が外部端末20から読み出してもよい。
【0019】
メジャー7は、金属製のコンベックスメジャーである。
図2に示すように、メジャー7の先端には、ストッパー7aが取り付けられている。メジャー7のおもて面はリール8の回転軸側であり、メジャー7のおもて面には、長さを示す目盛り及びパターンが印刷されており、裏面には何も印刷されていない。フォトリフレクタ5はメジャー7のおもて面に対向するように設けられている。目盛りはメジャーの幅方向の両端部に印刷されており、パターンは目盛りで長さを目測するとき妨げになりにくいよう、両端部に印刷された目盛りの間に配置されている。パターンは一定の長さ毎に印刷されている。パターンは白又は黒であり、二進値のいずれかに対応している。なお、パターンの色は白及び黒に限定されるものではなく、読み取り時に2種類のパターンが区別できるのであれば、他の色の組合せや、同一色相で濃度や明度の異なるパターン、反射率の異なる2種のパターンなどを用いてもよい。ここでは便宜上、これらも「異なる色」として扱う。
【0020】
外部端末20は、コンピュータ又はスマートホンのような無線の通信機能を有する通信端末であり、測定対象の長さのデータを無線通信部2から受信して管理する。
【0021】
図3(A)は、メジャー7に印刷されたパターンの一例を示す図である。
図3(B)は、フォトリフレクタ5の配置の一例を示す図である。
図3(B)では、フォトリフレクタ5は、PR1~PR9として示されている。黒色はハッチングで示されている。
【0022】
図3(A)に示すように、メジャー7に印刷されたパターンは、メジャー7の長さ方向に延びる第1列パターン31及び第2列パターン32を備えている。メジャー7に印刷されたパターンは、メジャー7の長さ方向に沿って複数の行パターン25を備えている。1つの行パターンは、同じ行に配置された第1列パターン31と第2列パターン32とを含む。第1列パターン31及び第2列パターン32の各々に含まれる1つのパターンはパターン21とする。メジャー7の長さ方向の各パターン21の長さは1mmである。各パターン21には二進値のいずれか(白又は黒)が割り当てられている。なお、
図3(A)では理解を容易にするために各パターン21の境界に線を付しているが、メジャーには境界線を付さなくてもよい。
【0023】
メジャー7には、
図3(A)に示す40行の第1列パターン31及び第2列パターン32が繰り返し印刷されている。第1列パターン31は、白及び黒のパターンが4cm周期で配置されている。第2列パターン32は、白及び黒のパターンが10mm周期で配置されている。このように、第1列パターン31は、第2列パターン32よりも同一の二進値が連続するパターン長が大きい。好ましくは、長さ方向において、同一の二進値が連続する第1列パターン31のパターン長は、同一の二進値が連続する第2列パターン32のパターン長のN倍(N=2以上の整数)である。
図3(A)の例では、長さ方向において、同一の二進値が連続する第1列パターン31のパターン長(2cm)は、同一の二進値が連続する第2列パターン32のパターン長(5mm)の4倍である。
【0024】
図3(B)に示すように、PR6~PR9(第1読取手段)は第1列パターン31に対向して配置されており、PR1~PR5(第2読取手段)は第2列パターン32に対向して配置されている。PR1~PR9の各々は対向する1つのパターン21の色を読み取る。PR6とPR7との間隔及びPR8とPR9との間隔は10mmであり、PR6とPR8との間隔及びPR7とPR9との間隔は4mmである。PR1とPR2との間隔、PR2とPR3との間隔、PR3とPR4との間隔及びPR4とPR5との間隔は2mmである。
【0025】
図4は、長さとPR1~PR9の読取値との対応関係を示す情報の一例を示す図である。
図4の左側に記載した0~39mmのスケールT1は
図3(A)に示すメジャーに印刷されたパターンの長さを示しており、
図4の右側に記載した0~19mmが繰り返すスケールT2は測定対象の長さを算出する際に利用する長さを示しており、PR1~PR9の読取値を基にスケールT2から算出に利用する0~19mmのいずれかの長さを特定することができる。
図3(B)で示されるように配置されたフォトリフレクタによって
図3(A)に示すパターンを読み取るため、同じ0~19mmのいずれかの長さに対応するPR1~PR9の読取値が2種類生じる。上述したように、
図4の情報はメモリ1aに格納されている。
【0026】
図4において、「1」は白を示し、「0」は黒を示すが、実際のパターンには「1」や「0」などの数値は記載されていない。パターンの反射率は、白が黒よりも高い。例えば、白及び黒のパターンを読み取った場合、PR1~PR9の各々から出力される電圧値は、例えばそれぞれ2.0V及び1.0Vである。
【0027】
例えば、PR4及びPR5で読み取った色が黒であり、PR1~PR3及びPR6~9で読み取った色が白である場合、PR1~PR9の値は、
図4の1行目の0mmを示す。この場合、マイコン1は、測定対象の長さが
図4の1行目の0mmとN×20mmとの合計値であると判断する。なお、NはPR6とホールセンサ3で読み取られる(後述)、測定対象の長さまでに存在する第1列パターン31の黒と白との変化の回数を示す。第1列パターン31では、2cm周期で黒と白との変化が生じるので、測定対象の長さまでに存在する第1列パターン31の黒と白との変化の回数Nに20mmを乗算した値と、PR1~PR9の色及び
図4の情報から得られる値とを加算することで、測定対象の長さを測定することができる。
【0028】
例えば、PR1~PR3で読み取った色が黒であり、PR4~PR9で読み取った色が白であり、変化の回数Nが4である場合には、マイコン1は、測定対象の長さが85mm(=4×20+5mm)であると判断する。またPR1~PR3及びPR6~PR9で読み取った色が黒であり、PR4及びPR5で読み取った色が白であり、変化の回数Nが1である場合には、マイコン1は、測定対象の長さが25mm(=1×20+5mm)であると判断する。
【0029】
次に、測定方法について説明する。
【0030】
本実施の形態においては、計測器100は、常時監視モード(第1モード)と測定時監視モード(第2モード)の2つの動作モードを有する。
【0031】
常時監視モードでは、電源投入後、スイッチ4が押下されていない場合に、マイコン1がホールセンサ3の出力電圧に基づくリール8の回転角(即ちメジャー7の進行方向)と、PR6による第1列パターン31の読取値とに基づいて、測定対象の長さを概測する。ここで、概測する長さは、第1列パターン31の周期に対応する2cm毎に増減する長さであり、粗い精度の長さである。
【0032】
測定時監視モードでは、スイッチ4が押下されてから所定期間(例えば3秒)が経過するまで、マイコン1が、PR6~PR9による第1列パターン31の読取値と、PR1~PR5による第2列パターン32の読取値とに基づいて、測定対象の長さを精測する。ここで、精測する長さは、長さ方向の各パターン21の長さに対応する1mm毎に増減する長さであり、常時監視モードで測定する長さよりも高い精度の長さである。
【0033】
測定時監視モードにおいて、PR6による第1列パターン31の読取値を利用する理由は以下のとおりである。
【0034】
例えば、PR6による第1列パターン31の読取値を利用しない場合には、マイコン1は、リール8の回転角(即ちメジャー7の進行方向)および回転数に応じて算出された回転量と、PR1~PR5による第2列パターン32の読取値に応じて算出された長さとに基づいて測定対象の長さを測定することになる。第2列パターン32では、5mm周期で白又は黒のパターンが交互に配置されているので、ある位置でのPR1~PR5の読取値は、その位置から±Qcm(Q=1以上の整数)ずれた位置でのPR1~PR5の読取値と同一になってしまう。このため、実際の測定対象の長さから数センチ以上の誤差が生じる場合がある。特に、コンベックスメジャーは、テープ状のメジャーよりも厚くて硬いため、リール8へ緩く巻かれてリール8の回転量とコンベックスメジャーの引き出し量又は巻き取り量が合致しない場合があり、誤差が生じやすい。本実施の形態では、PR6により第1列パターン31における白と黒とのパターン変化をカウントしてN値とし、PR1~PR5から得られる情報とを組み合わせて長さを算出している。このようにメジャー7に印刷された第1列パターン31に基づいてメジャーの引き出し量又は巻き取り量を測定しているため、メジャー7がリール8に緩く巻かれていても測定誤差が生じない。
【0035】
PR6~PR9を設けている理由は、以下の通りである。PR1~PR5による第2列パターン32の読取値は10mm周期で同じ読取値となる。PR6~PR9による第1列パターン31の読取値を測定時監視モードの長さ測定に利用しない場合、第1列パターン31は10mm周期で白又は黒のパターンを交互に配置することになる。本実施の形態では、PR6~PR9の読取値を測定時監視モードの長さ測定に利用しており、第1列パターン31の白又は黒の周期を20mmとすることができる。第1列パターン31の白又は黒の周期を20mmとすることにより常時監視モードにおける第1列パターン31の読み飛ばしを抑制でき、リール8の回転角の増減を容易に検出できるようになり測定誤差が減少する。
【0036】
2つの監視モードを設けている理由は、以下の通りである。測定対象の長さを精測するためには9個のフォトリフレクタ(PR1~PR9)を使用する必要がある。9個のフォトリフレクタ5を常時使用する場合、消費電力が大きくなるという問題がある。本実施形態においては、9個のフォトリフレクタ5のうちPR6のみを用いる常時監視モードと、9個のフォトリフレクタ5を使用する測定時監視モードの2つの動作モードを設けている。常時監視モードでは、電源投入後、スイッチ4が押下されていない場合に、測定対象の長さを概則するので、測定時監視モードよりも長い期間測定が行われる。常時監視モードで使用されるフォトリフレクタ5はPR6のみであるので、9個のフォトリフレクタ5を使用する場合に比べて消費電力を抑制することができる。また、測定時監視モードでは、9個のフォトリフレクタ5(PR1~PR9)を使用するが、本実施形態においては、使用期間をスイッチ4が押下されてから所定期間(例えば3秒)が経過するまでの短期間に制限されているので、消費電力を更に抑制することができる。
【0037】
また、
図3(B)では、PR1~PR9の9個のフォトリフレクタ5が設けられているが、
図3(A)のパターンに対してフォトリフレクタ5はPR1~PR7の7個で測定可能である。PR8~PR9は、測定誤差を抑制し、測定精度を向上させるために設けられている。例えば、
図3(B)に示すように、PR1~PR9がパターン同士の境界上に位置せず、それぞれのパターン上に位置する場合には、PR1~PR7のみで正確に測定対象の長さを測定することができる。
【0038】
一方、PR1~PR7がパターン同士の境界上に位置した場合には、測定誤差が生じる可能性があるので、このような測定誤差を抑制するためにPR8~PR9が設けられている。以下、PR8~PR9が設けられている理由を詳細に説明する。
【0039】
図4に示すように、長さとパターンとの対応関係は一対一の対応であり、PR1~PR5は長さが1mmずれると、1つのフォトリフレクタ5の値が変化する。色の読み取りを間違える可能性があるのは色が変化している個所であるため、1つのフォトリフレクタ5が色を読み間違えても、最大誤差は±1mmである。
【0040】
しかし、
図4のスケールT1の9mmと10mmのPR1~PR7の値は、PR7とPR1の値が同時に変化している。
図4のスケールT1の19mmと20mmのPR1~PR7の値は、PR6とPR1の値が同時に変化している。
図4のスケールT1の29mmと30mmのPR1~PR7の値は、PR7とPR1の値が同時に変化している。
図4のスケールT1の39mmと0mm(40mm)のPR1~PR7の値は、PR6とPR1の値が同時に変化している。
【0041】
上記の複数の境界では、両方のフォトリフレクタ5の値が同時に変化するとは限らないため、一方のフォトリフレクタ5の値のみが変化し、他方のフォトリフレクタ5の値は変化しない可能性がある。この場合、PR1~PR7から出力される値が、読み取り位置とは異なる位置のパターンと一致してしまい、大きな測定誤差が生じる。
【0042】
例えば、
図4のスケールT1の9mmと10mmとの境界を読み取った際のPR1~PR6の出力が「011001」であるときにPR7からの出力が「1」ではなく「0」となってしまうと、PR1~PR7から出力される値はスケールT1の19mmの位置のパターンと同一になってしまう。そのため、マイコン1は19mmの位置を読み取っていると判断してしまい、約10mmの誤差が生じることになる。
【0043】
このような測定誤差を抑制するために、PR8~PR9が設けられている。スケールT1の19mmの位置を読み取っているときにはPR8とPR9の読み取り結果が「10」とはならないため、上記例でPR1~PR7の読み取り結果が「0110010」のときにPR8とPR9の値が「1」と「0」の場合には、マイコン1は読み取り位置が
図4のスケールT1の9mmと10mmの境界であると判断できる。同様に、PR8とPR9の値が「0」と「0」の場合には、マイコン1は読み取り位置が
図4の19mmと20mmの境界であると判断できる。
【0044】
次に、計測器100で実行される処理を説明する。
【0045】
図5は、計測器100で実行される処理を示すフローチャートである。計測器100は、電源投入後、スイッチ4が押下される前は、常時監視モードであるとする。
【0046】
まず、マイコン1は、スイッチ4が押下されたか否かを判別する(S1)。スイッチ4が押下されてない場合には(S1でNO)、常時監視モードで、PR6が常時動作し、第1列パターン31の色を読み取り、マイコン1に読み取り色に対応する電流値又は電圧値を出力する(S2)。マイコン1は、PR6の電流値又は電圧値に基づいて、黒と白との変化を判定する(S3)。マイコン1は、黒と白との変化の回数Nをカウントしている。黒と白との変化がない場合には(S3でNO)、手順はS1に戻る。
【0047】
黒と白との変化がある場合には(S3でYES)、マイコン1はホールセンサ3からの出力電圧に基づいてリール8の回転角やメジャー7の進行方向を検出する(S4)。なお、メジャー7が引き出される又はメジャー7が巻き取られると、ホールセンサ3がリール8の回転軸内に設けられた磁石9の磁界に応じた電圧をマイコン1に出力する。これにより、マイコン1はホールセンサ3からの出力電圧に基づいてリール8の回転角やメジャー7の進行方向を検出することができる。例えば、メジャー7が引き出されているとリール8の回転角が増加し、メジャー7が巻き取られているとリール8の回転角は減少する。
【0048】
マイコン1は、メジャー7の進行方向が引き出し方向ならば、黒と白との変化の回数Nのカウント値を1増加し(S5)、手順はS1に戻る。マイコン1は、メジャー7の進行方向が巻き取り方向ならば、変化の回数Nのカウント値を1減少し(S6)、手順はS1に戻る。
【0049】
スイッチ4が押下された場合には(S1でYES)、マイコン1は動作モードを測定時監視モードに切替え、スイッチ4が押下されてから所定期間(例えば3秒)が経過するまで、PR1~PR9を動作させる(S7)。PR1~PR9は第1列パターン31及び第2列パターン32の色を読み取り、マイコン1に読み取り色に対応する電流値又は電圧値を出力する(S7)。
【0050】
マイコン1は、
図4の情報を参照して、PR1~PR9の読み取り色に対応する値を算出し(S8)、S5又はS6でカウントされた変化の回数Nに20mmを乗算した値と、S8で算出された値とを加算することで、測定対象の長さを測定する(S9)。測定された長さは、メモリ1aに格納され、外部端末20に出力される(S10)。以上により、本処理を終了する。
【0051】
以下、計測器100の分解能を下げる場合のセンサの個数と各パターン21の長さについて説明する。
【0052】
計測器100が測定可能な最小単位の長さ、すなわち計測器100の分解能を1つのパターン21の長さである1mmとする場合、
図3(B)に示すように、PR1~PR5が2mm間隔で第2列パターン32に対向するように配列される。
【0053】
図6(A)、(B)及び
図7(A)、(B)は、計測器100の分解能を下げる場合のフォトリフレクタ5の配置の変形例を示す図である。なお、
図6(A)、(B)及び
図7(A)、(B)の第1列パターン31に対向するフォトリフレクタ5の最小個数(PR6及びPR7)は、
図3(B)の第1列パターン31に対向するフォトリフレクタ5の最小個数と同じである。なお、
図6(A)、(B)及び
図7(A)、(B)では、PR8及びPR9を省略しているが、PR8及びPR9が設けられていてもよい。
【0054】
図6(A)では、4つのフォトリフレクタ5(PR1~PR4)が2.5mm間隔で第2列パターン32に対向するように配列される。この場合、計測器100の分解能及び1つのパターン21の長さは1.25mmである。
図6(B)では、3つのフォトリフレクタ5(PR1~PR3)が10/3mm間隔で第2列パターン32に対向するように配列される。この場合、計測器100の分解能及び1つのパターン21の長さは5/3mmである。
図7(A)では、2つのフォトリフレクタ5(PR1~PR2)が2.5mm間隔で第2列パターン32に対向するように配列される。この場合、計測器100の分解能及び1つのパターン21の長さは2.5mmである。
図7(B)では、PR1のみが第2列パターン32に対向するように配列される。この場合、計測器100の分解能及び1つのパターン21の長さは5mmである。
【0055】
このように、計測器100の分解能を下げる場合には、第2列パターン32に対向するフォトリフレクタ5の個数を減らすことができる。
図7(B)のように、計測器100の分解能を5mmにする場合には、必要なフォトリフレクタ5の個数を3個(PR1、PR6及びPR7)に減らすことができる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態によれば、計測器100は、メジャー7の進行方向と、PR6の読取値とに基づいて、測定対象の長さを概測し、PR6~PR9の読取値と、PR1~PR5の読取値とに基づいて、測定対象の長さを精測し、概測した長さと精測した長さとに基づいて、誤差の少ない測定対象の長さを測定することができる。より具体的には、計測器100は、第1列パターン31の連続する白又は黒の長さを大きくし分解能を低下させる代わりにPR6による読取精度を向上させ、第2列パターン32を使ってより短い間隔の長さを読み取ることで低下した分解能を補うので、測定結果の誤差を減らすことができる。また、特許文献1に記載されている切り溝と接点との接触により生じる電気的パルスを使用しないので、ノイズの影響を受けて測定結果に誤差が生じることを回避できる。また、切り溝と接点との接触不良により、測定結果に誤差が生じることを回避できる。
【0057】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 マイコン、2 無線通信部、3 ホールセンサ、4 スイッチ、5 フォトリフレクタ、 6 バッテリ、7 メジャー、8 リール、9 磁石、20 外部端末、100 計測器