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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177558
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】車載表示制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20221124BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083905
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
【テーマコード(参考)】
3D020
5C054
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BB01
3D020BC02
3D020BD05
3D020BE03
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054FC12
5C054FC14
5C054FC15
5C054FE12
5C054FF03
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】ウインドシールドに投影する映像データの位置をより高精度に補正できる車載表示制御装置を提供する。
【解決手段】物体検出部6は車両の前方の画像を撮像するカメラ3より入力される画像データから車両の前方に存在する物体を検出し、検出した物体の位置に合わせて車両のフロントガラス10に表示させる映像データを生成する。歪み補正部7はその映像データをフロントガラス10の形状に合わせて補正する。位置ずれ補正部8は映像データをフロントガラス10に投影する位置を補正し、AR-HUD重畳部9は位置ずれ補正部8により補正された位置の映像データをフロントガラス10に投影する。位置ずれ補正部8は、位置の補正に車両情報を用いると共に、AR-HUD重畳部9がフロントガラス10に投影している映像データとカメラ3より入力される画像データとを比較して投影する位置を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方の画像を撮像する撮像部(3)と、
この撮像部より入力される画像データから車両の前方に存在する物体を検出し、検出した物体の位置に合わせて車両のウインドシールドに表示させる映像データを生成する映像データ生成部(6)と、
前記映像データを、前記ウインドシールドの形状に合わせて補正する歪み補正部(7)と、
前記車両の走行に関する走行情報を取得する走行情報取得部(11)と、
前記映像データを前記ウインドシールドに投影する位置を補正する位置補正部(8)と、
この位置補正部により補正された位置の映像データを前記ウインドシールド(10)に投影する映像投影部(9)とを備え、
前記位置補正部は、前記走行情報を用いると共に、前記映像投影部が前記ウインドシールドに投影している映像データと前記撮像部より入力される画像データとを比較することで、前記ウインドシールドに投影する位置を補正する車載表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールドに映像データを投影する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるAR-HUD(Augmented Reality Head Up Display)装置では、カメラにより撮像した画像から信号機や標識等の物体を検出し、その物体に対応した線や枠などの画像を生成すると、画像をウインドシールドに投影して実風景中の物体に重畳させる。その際に、車両の走行中でも画像を投影する位置にずれを発生させることなく、画像が運転者に自然に見えるように、投影位置を補正する技術も様々に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-58544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、単に車速等の走行情報を用いるだけでは画像の投影位置を十分に補正できず、実風景中の物体とのずれが生じてドライバーに違和感を与えることがあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウインドシールドに投影する映像データの位置をより高精度に補正できる車載表示制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車載表示制御装置によれば、映像データ生成部は、車両の前方の画像を撮像する撮像部より入力される画像データから車両の前方に存在する物体を検出し、検出した物体の位置に合わせて車両のウインドシールドに表示させる映像データを生成する。歪み補正部は、その映像データをウインドシールドの形状に合わせて補正する。位置補正部は、映像データをウインドシールドに投影する位置を補正し、映像投影部は、位置補正部により補正された位置の映像データをウインドシールドに投影する。
【0007】
また、位置補正部は、位置の補正に走行情報取得部が取得した車両の走行に関する走行情報を用いると共に、映像投影部がウインドシールドに投影している映像データと撮像部より入力される画像データとを比較することでウインドシールドに投影する位置を補正する。このように、映像データの位置補正に車両の走行情報を用いるだけなく、映像データの位置を撮像部より入力される画像データの位置と比較することにより、実風景中の物体とのずれを十分に解消できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態であり、車載表示制御装置の構成を示す機能ブロック図
図2】制御内容を示すフローチャート
図3】オブジェクト映像の投影位置を補正する一例を示す図(その1)
図4】オブジェクト映像の投影位置を補正する一例を示す図(その2)
図5】オブジェクト映像の投影位置を補正する一例を示す図(その3)
図6】オブジェクト映像の投影位置を補正する一例を示す図(その4)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、AR-HUD装置である本実施形態の車載表示制御装置1は、マイクロコンピュータ等が搭載されるSoC(System on Chip)2を中心に構成されている。撮像部の一例であるカメラ3は、車両の前方の画像を撮像した映像データをSoC2に入力する。SoC2は、DRAMコントローラ4を備えており、DRAMコントローラ4は、SoC2によるDRAM5に対するアクセスを制御する。
【0010】
また、SoC2は、ハードウェア及びソフトウェアにより実現される機能ブロックである物体検出部6,歪み補正部7,位置ずれ補正部8,AR-HUD重畳部9を備えている。カメラ3より入力された映像データは、DRAM5のエリア5Aに格納される。
【0011】
映像データ生成部に相当する物体検出部6は、エリア5Aより読み出した映像データより、道路上にある例えば白線や信号機,標識等の物体を検出し、その物体の形状を加工して、車両のウインドシールドであるフロントガラス10に映像として投影するオブジェクトデータを生成する。生成したオブジェクトデータは、DRAM5のエリア5Bに格納される。ここで「オブジェクトデータ」は、例えば物体が道路上の白線であれば、その白線に沿う線の映像であり、物体が信号機や標識等であれば、その外周側を取り囲むような枠線の映像である。
【0012】
歪み補正部7は、エリア5Bより読み出したオブジェクトデータの形状を、フロントガラス10の形状に合わせて歪み補正する。補正されたオブジェクトデータは、DRAM5のエリア5Cに格納される。
【0013】
走行情報取得部の一例であるサブマイコン11は、車両の各部に配置されているECU(Electronic Control Unit)等と、例えばCAN(登録商標)等の車載LANより通信を行い、ECUが車速センサ等から取得した車速や、ジャイロセンサより取得される角速度,GPS(Global Positioning System)/GNSS(Global Navigation Satellite System)等により取得される車両の位置情報等を含む車両情報を受信する。そして、受信した車両情報を位置ずれ補正部8に入力する。車両情報は走行情報に相当する。
【0014】
位置補正部に相当する位置ずれ補正部8は、エリア5Cよりオブジェクトデータを読み出すと、車速等に基づいて、フロントガラス10に投影するオブジェクトデータの位置が実風景の対応する物体の位置に重なるように補正する。位置が補正されたオブジェクトデータは、DRAM5のエリア5Dに格納される。映像投影部に相当するAR-HUD重畳部9は、エリア5Dよりオブジェクトデータを読み出すと、そのオブジェクトデータの映像をフロントガラス10に投影する。
【0015】
また、位置ずれ補正部8は、エリア5Aより映像データ読み出すと共に、AR-HUD重畳部9がフロントガラス10に投影したオブジェクトデータを取得して、これらのデータも上記の補正を行う際に利用する。
【0016】
次に、本実施形態の作用について説明する。図2において、カメラ3が撮像した車両前方の映像データをDRAM5のエリア5Aに格納する処理を「Video入力キャプチャ」として示している(S1)。物体検出部6は、エリア5Aより読み出した映像データより、上述した白線や信号機,標識等の物体を検出し、その物体の形状を加工してオブジェクトデータを生成する(S2)。
【0017】
歪み補正部7は、エリア5Bより読み出したオブジェクトデータの形状を、フロントガラス10の形状に合わせて歪み補正する(S3)。サブマイコン11より車両情報が得られる場合(S4;YES)、位置ずれ補正部8はその車両情報を取り込む(S5)。また、位置ずれ補正部8は、その時点でカメラ3が撮像した映像データが存在すれば(S6;YES)、エリア5Aよりその映像データを取り込む(S7)。更に、その時点でAR-HUD重畳部9がフロントガラス10に投影しているオブジェクトデータの出力情報を取り込む(S8)。
【0018】
そして、位置ずれ補正部8は、車速等に基づいて、フロントガラス10を介して車両の乗員に視認される物体の移動位置を予測すると共に、エリア5Aより取り込んだ映像データと、フロントガラス10に投影されているオブジェクトデータとを比較することで、フロントガラス10に投影されるオブジェクトデータの位置が実風景の対応する物体の位置に重なるようにフィードバック補正する(S9)。位置ずれ補正部8は、エリア5Dを介して重畳位置が補正されたオブジェクトデータをAR-HUD重畳部9に出力する(S10)。AR-HUD重畳部9は、そのオブジェクトデータの映像をフロントガラス10に投影する(S11)。
【0019】
図3に示す一例のように、時刻t=t0にカメラ3により撮像された映像データについて、道路上の白線や信号機、標識等を強調して車両の運転者に視認させるため、白線に沿う線や、信号機、標識等を囲む枠線がオブジェクトデータとして生成される。そして、時刻t=(t0+Δt)において、フロントガラス10を介して運転車が実風景に重ねて視認するオブジェクトデータの各位置を車速等の車両情報に基づいて補正し、AR-HUD重畳部9によりフロントガラス10に投影させる。
【0020】
この段階で、投影された各オブジェクトの映像の位置と、実風景上の対応する物体の位置との間にずれが生じているとしても、位置ずれ補正部8が上記のように、両者の位置が重なるようにフィードバック補正することで、時刻t=(t0+2Δt)では、各オブジェクトの映像の位置と対応する物体の位置とが重なるように補正される。
【0021】
また、図4に示す一例のように、車両が縁石等を踏んで車体が傾いた際には、車両情報として得られるジャイロセンサの角速度に基づくと共に、併せてフィードバック補正を行うことで、オブジェクトの映像の横方向の傾きを補正する。また、図5に示す一例のように、車両が坂道を登る際には、同じくジャイロセンサの角速度に基づくと共に、併せてフィードバック補正を行うことで、オブジェクトの映像の縦方向の傾きを補正する。
【0022】
更に、図6に示す一例のように、車両情報として得られるGPS/GNSSの位置情報に誤差が含まれており、その位置情報に基づいてオブジェクト映像の投影位置を補正するだけではずれが生じる場合でも、併せてフィードバック補正を行うことでオブジェクト映像の位置ずれを補正できる。
【0023】
以上のように本実施形態によれば、車載表示制御装置1の物体検出部6は、車両の前方の画像を撮像するカメラ3より入力される画像データから車両の前方に存在する物体を検出し、検出した物体の位置に合わせて車両のフロントガラス10に表示させる映像データを生成する。歪み補正部7は、その映像データをフロントガラス10の形状に合わせて補正する。位置ずれ補正部8は、映像データをフロントガラス10に投影する位置を補正し、AR-HUD重畳部9は、位置ずれ補正部8により補正された位置の映像データをフロントガラス10に投影する。
【0024】
その際に、位置ずれ補正部8は、位置の補正にサブマイコン11が取得した車両の走行に関する車両情報を用いると共に、AR-HUD重畳部9がフロントガラス10に投影している映像データとカメラ3より入力される画像データとを比較することで投影する位置を補正する。このように、映像データの位置補正に車両情報を用いるだけなく、映像データの位置を撮像部より入力される画像データの位置と比較してフィードバック補正を行うことで、オブジェクト映像の位置と実風景中の物体の位置とのずれを十分に解消できるようになる。
【0025】
(その他の実施形態)
必ずしもSoc2を用いて車載表示制御装置1を構成する必要はない。
使用するメモリはDRAM5に限らない。
車両情報は、サブマイコン11を介して取得する必要はなく、車載通信のプロトコルに対応したデバイスであれば良い。
【0026】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0027】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0028】
図面中、1は車載表示制御装置、3はカメラ、6は物体検出部、7は歪み補正部、8は位置ずれ補正部、9はAR-HUD重畳部、10はフロントガラスである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6