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特開2022-177575キャップおよびそれを備えたプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177575
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】キャップおよびそれを備えたプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083936
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA12
2C056FA10
2C056JA01
2C056JA08
2C056JA10
2C056JA17
(57)【要約】
【課題】インクヘッドからキャップを離間させたときに、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面に残るインクの量を減らす。
【解決手段】キャップ61は、ノズル26が形成されたノズル面25を有するインクヘッド24に着脱可能に取り付けられるものである。キャップ61は、上方に向かって開口した中空のキャップ本体70と、キャップ本体70内に配置された弾性体71および吸収部材72と、弾性体71は、キャップ本体70から上方に突出し、ノズル面25と接触可能なリップ部75を有する。吸収部材72の上端が、キャップ本体70の上端よりも上方、かつ、リップ部75の上端よりも下方に位置するように構成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、前記インクヘッドが設けられたキャリッジと、を有する印刷ユニットの前記インクヘッドに着脱可能に取り付けられるキャップであって、
上方に向かって開口した中空のキャップ本体と、
前記キャップ本体内に配置された弾性体と、
前記キャップ本体内に配置された吸収部材と、
を備え、
前記弾性体は、前記キャップ本体から上方に突出し、前記ノズル面と接触可能であり、かつ、弾性変形可能なリップ部を有し、
前記吸収部材の上端が、前記キャップ本体の上端よりも上方、かつ、前記リップ部の上端よりも下方に位置するように構成された、キャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体の外面に設けられ、前記ノズル面と前記吸収部材との間隔を調整する間隔調整部材を備え、
前記間隔調整部材の上端は、前記リップ部の上端よりも下方、かつ、前記吸収部材の上端よりも上方に位置している、請求項1に記載されたキャップ。
【請求項3】
前記間隔調整部材は、前記キャップ本体の外面に3つ以上設けられている、請求項1または2に記載されたキャップ。
【請求項4】
前記間隔調整部材は、上端に平らな上面を有する、請求項1から3までの何れか1つに記載されたキャップ。
【請求項5】
前記リップ部は、上端に向かうにしたがって幅が小さい、請求項1から4までの何れか1つに記載されたキャップ。
【請求項6】
前記間隔調整部材は、前記リップ部よりも硬い材料によって形成されている、請求項1から5までの何れか1つに記載されたキャップ。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか1つに記載されたキャップと、
ノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、前記インクヘッドが設けられたキャリッジとを有する印刷ユニットと、
を備えた、プリンタ。
【請求項8】
前記印刷ユニットは、前記インクヘッドまたは前記キャリッジに設けられ、前記間隔調整部材に当て付けられる当て付け面を有する、請求項7に記載されたプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップおよびそれを備えたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されたインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを備えている。インクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出口が形成された吐出面を有している。この吐出面には、インクの液滴やミストが付着することがある。吐出面に付着したインクが増粘し、増粘したインクがインクジェットヘッド内に入り込むことで、吐出不良が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、吐出不良の発生を抑制するため、上記インクジェットプリンタには、吸引回復装置が設けられている。吸引回復装置は、吐出口を覆うようにインクジェットヘッドに装着されるキャップ部材と、キャップ部材に接続されたポンプとを備えている。ここでは、インクジェットヘッドにキャップ部材を装着させた状態で、ポンプを駆動させて、キャップ部材内を負圧にするという吸引処理が行われる。この吸引処理によって、インクジェットヘッド内のインクを吸引し、キャップ部材内に排出することができる。その結果、例えば増粘したインクもキャップ部材に排出されるため、吐出不良の発生が抑制される。
【0004】
ところで、キャップ部材内には、異なる色のインクが混ざり合った状態で収容される。この異なる色が混ざり合った混色インクは、吸引処理のときに、吐出面に付着することがあり得る。吐出面に付着した混色インクは、インクジェットヘッド内に入り込むことがある。その結果、混色インクが吐出口から吐出されるという混色印刷不具合が発生することがあった。
【0005】
混色印刷不具合を解消するため、例えば印刷に先立って、インクジェットヘッドの吐出口からインクを吐出する予備吐出が行われる。また、上記インクジェットプリンタでは、吐出面に付着する混色インクの量を減らすために、キャップ微小離間方式が採用されている。キャップ微小離間方式とは、上記吸引処理の後、キャップ部材を吐出面から0.3mm~2.0mm程度に微小に離間させて負圧をかけることで、吐出面に付着した混色インクを吸引する方式である。このことで、吐出面に残る混色インクを減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-142332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記予備吐出を採用することで、インクの消費量が多くなる。キャップ微小離間方式の場合、キャップ部材を吐出面から微小に離間させるための構造が複雑化する。そのため、上記の予備吐出やキャップ微小離間方式を採用すると、生産性が低下するおそれがある。よって、生産性を低下させずに、吐出面に付着するインクの量を出来るだけ減らすことが好ましい。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクヘッドからキャップを離間させたときに、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面に残るインクの量を減らすことが可能なキャップおよびそれを備えたプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るキャップは、ノズルが形成されたノズル面を有するインクヘッドと、前記インクヘッドが設けられたキャリッジとを有する印刷ユニットにおいて、前記インクヘッドに着脱可能に取り付けられるキャップである。前記キャップは、上方に向かって開口した中空のキャップ本体と、前記キャップ本体内に配置された弾性体と、前記キャップ本体内に配置された吸収部材と、間隔調整部材と、を備えている。前記間隔調整部材は、前記キャップ本体の外面に設けられ、前記ノズル面と前記吸収部材との間隔を調整する。前記弾性体は、前記キャップ本体から上方に突出し、前記ノズル面と接触可能であり、かつ、弾性変形可能なリップ部を有している。前記吸収部材の上端は、前記リップ部の上端よりも下方に位置している。前記間隔調整部材は、前記リップ部が弾性変形したときに、前記吸収部材が前記ノズル面から離間するように前記印刷ユニットに当て付けられるように構成されている。
【0010】
ノズル面に残るインクを吸収するためには、キャップの吸収部材を、ノズル面に接触しない程度にノズル面に接近させるとよい。上記キャップによれば、吸収部材の上端は、キャップ本体の上端よりも上方、かつ、リップ部の上端よりも下方に位置している。そのため、リップ部がノズル面に接触したとき、吸収部材は、ノズル面に接触しない程度に、ノズル面に接近(言い換えると、キャップ本体の上端よりもノズル面に接近)させることができる。このように、吸収部材をノズル面に接近させることができるため、より多くのインクを吸収でき、ノズル面に残るインクの量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクヘッドからキャップを離間させたときに、インクを吐出するノズルが形成されたノズル面に残るインクの量を減らすことが可能なキャップおよびそれを備えたプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るプリンタを模式的に示す正面図である。
図2図1のII-II断面におけるプリンタの断面図である。
図3】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図4】キャリッジの底面の構成を模式的に示す底面図である。
図5】印刷ユニットおよびキャップユニットを模式的に示す正面図である。
図6】印刷ユニットおよびキャップユニットを模式的に示す正面図である。
図7】実施形態に係るキャップを模式的に示す平面図である。
図8】インクヘッドおよびキャップの断面図であり、ノズル面からキャップが離間している状態を模式的に示す図である。
図9】インクヘッドおよびキャップの断面図であり、インクヘッドにキャップが装着された状態を模式的に示す図である。
図10】インクヘッドおよびキャップの断面図であり、吸引処理の状態を模式的に示す図である。
図11】インクヘッドおよびキャップの断面図であり、空吸引処理の状態を模式的に示す図である。
図12】印刷ユニットおよびワイパーユニットを模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。なお、ここで説明される実施の一形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0014】
図1は、本実施形態に係るプリンタ10を模式的に示す正面図である。図2は、図1のII-II断面におけるプリンタ10の断面図である。図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図面において、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を示している。また、符号Yは主走査方向を示し、符号Xは副走査方向を示している。符号Zは高さ方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは、平面視において主走査方向Yと交差しており、ここでは主走査方向Yと直交している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。高さ方向Zは上下方向である。ただし、これら方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0015】
プリンタ10は、いわゆるインクジェット方式のプリンタである。しかしながら、プリンタ10の方式は、インクジェット方式に限定されない。プリンタ10は、例えばドットインパクト方式のプリンタであってもよいし、レーザプリンタやサーマルプリンタであってもよい。
【0016】
図1に示すように、プリンタ10は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。ただし、媒体5の種類は特に限定されない。媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙であってもよいし、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10は、筐体11と、ガイドレール18と、印刷ユニット20と、ヘッド移動機構30と、プラテン40と、媒体移動機構50とを備えている。
【0018】
筐体11は、主走査方向Yに延びている。図2に示すように、筐体11は中空であり、内部空間12を有している。この内部空間12において媒体5に対して印刷が行われる。なお、図1において、プリンタ10の内部構成を図示するため、筐体11の一部(ここでは、筐体11の前部の中央部分)の図示は省略されている。筐体11には、筐体11を支持する脚13が設けられている。脚13は、筐体11の下面から下方に延びている。なお、図2では、脚13の図示は省略されている。
【0019】
図1に示すように、筐体11には、ユーザが印刷に関する操作を行う操作パネル15が設けられている。操作パネル15は、例えば解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ10のステータスなどが表示される表示画面16と、印刷に関する情報を入力するための入力ボタン17とを有している。
【0020】
図2に示すように、ガイドレール18は、筐体11の内部空間12に配置されており、筐体11に固定されている。図1に示すように、ガイドレール18は、主走査方向Yに延びている。
【0021】
印刷ユニット20は、インクを吐出するユニットである。印刷ユニット20は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。図4は、印刷ユニット20のキャリッジ22の底面の構成を模式的に示す底面図である。図4に示すように、印刷ユニット20は、キャリッジ22と、インクヘッド24とを有している。
【0022】
図1に示すように、キャリッジ22は、ガイドレール18に摺動自在に係合しており、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能である。インクヘッド24は、インクを吐出するものである。ここでは、インクヘッド24は、プラテン40に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。インクヘッド24は、キャリッジ22に設けられている。インクヘッド24は、キャリッジ22と共にガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0023】
インクヘッド24の数は特に限定されない。本実施形態では、図4に示すように、インクヘッド24の数は4つである。4つのインクヘッド24は、主走査方向Yに並んで配置されている。ここでは、4つのインクヘッド24について、左から順に第1インクヘッド24A、第2インクヘッド24B、第3インクヘッド24C、第4インクヘッド24Dとも称することとする。以下の説明では、第1インクヘッド24A~第4インクヘッド24Dの全てのインクヘッドに対する共通の説明の場合には、インクヘッド24という文言を適宜使用する。
【0024】
本実施形態では、第1インクヘッド24A~第4インクヘッド24Dは、それぞれノズル面25を有している。ノズル面25は、インクヘッド24の底面を構成している。1つのノズル面25には、複数のノズル26が形成されている。本実施形態では、1つのノズル面25における複数のノズル26は、副走査方向Xに並んで配置されている。ここでは、副走査方向Xに並んだ複数のノズル26の列のことをノズル列27という。本実施形態では、1つのノズル面25におけるノズル列27の数は2つである。2つのノズル列27を、ノズル列27a、27bとする。1つのノズル面25における2つのノズル列27a、27bは、主走査方向Yに並んでいる。なお、1つのノズル面25におけるノズル列27の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0025】
本実施形態では、1つのノズル面25における2つのノズル列27a、27bから異なる色のインクが吐出される。しかしながら、1つのノズル面25における2つのノズル列27a、27bから同じ色のインクが吐出されてもよい。各ノズル列27を構成するノズル26から吐出されるインクは、例えばプロセスカラーインクまたは特色インクである。プロセスカラーインクには、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが含まれる。特色インクには、例えばホワイトインク、クリアインク、オレンジインクなどが含まれる。
【0026】
なお、本実施形態では、例えば第1インクヘッド24Aのノズル列27aを構成する複数のノズル26が、第1ノズルの一例である。第1インクヘッド24Aのノズル列27aを構成する複数のノズル26から吐出されるインクが、第1のインクの一例である。また、第1インクヘッド24Aのノズル列27bを構成する複数のノズル26が、第2ノズルの一例である。そして、第1インクヘッド24Aのノズル列27bを構成する複数のノズル26から吐出されるインクが、第1のインクとは色が異なる第2のインクの一例である。
【0027】
図1に示すように、ヘッド移動機構30は、印刷ユニット20をプラテン40に対して相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。ここでは、ヘッド移動機構30は、印刷ユニット20を主走査方向Yに移動させる。なお、ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。ヘッド移動機構30は、例えば左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを有している。左のプーリ31aは、ガイドレール18の左端部の周囲に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール18の右端部の周囲に設けられている。ベルト32は、例えば無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ22が取り付け固定されている。
【0028】
スキャンモータ33は、例えば右のプーリ31bに接続されている。ここでは、スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転する。右のプーリ31bが回転することで、左右のプーリ31a、31bとの間においてベルト32が走行する。このことで、印刷ユニット20(ここではキャリッジ22およびインクヘッド24)は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動する。
【0029】
図2に示すように、プラテン40は媒体5を支持するものである。媒体5への印刷はプラテン40上で行われる。プラテン40は、ガイドレール18および印刷ユニット20の下方に配置されている。ここでは、プラテン40は、支持面41と、第1エプロン42と、第2エプロン43とを有している。支持面41は、媒体5を支持するものであり、側面視において印刷ユニット20の真下に位置する。支持面41は、プラテン40の上面を構成している。支持面41は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がった平らな面である。支持面41上で媒体5への印刷が行われる。
【0030】
第1エプロン42は、支持面41の後方に配置されている。第1エプロン42は、例えば横断面円弧状に形成されている。第1エプロン42は、支持面41から離れるほど下方に向かうように湾曲している。第2エプロン43は、支持面41の前方に配置されている。第2エプロン43は、例えば横断面円弧状に形成されている。第2エプロン43は、支持面41から離れるほど下方に向かうように湾曲している。
【0031】
図1に示す媒体移動機構50は、プラテン40に支持された媒体5を印刷ユニット20に対して相対的に副走査方向Xに移動させる機構である。ここでは、媒体移動機構50は、プラテン40に支持された媒体5を副走査方向Xに移動させる。なお、媒体移動機構50の構成は特に限定されない。本実施形態では、媒体移動機構50は、一部が露出するようにプラテン40に設けられたグリットローラ51と、グリットローラ51の上方において媒体5を押さえ付けるピンチローラ52と、グリットローラ51に接続されたフィードモータ53と、を備えている。ここでは、グリットローラ51とピンチローラ52との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ53が駆動することで、グリットローラ51が回転する。グリットローラ51が回転することで、プラテン40に支持された媒体5が副走査方向Xに移動する。
【0032】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10は、キャップユニット60を備えている。キャップユニット60は、印刷ユニット20のクリーニング時に使用されるものである。キャップユニット60は、主走査方向Yにおいてプラテン40と重ならない位置に配置されている。ここでは、キャップユニット60は、ガイドレール18の右端部の下方であって、プラテン40の右方に配置されている。ただし、キャップユニット60は、例えばガイドレール18の左端部の下方であって、プラテン40の左方に配置されてもよい。本実施形態では、キャップユニット60は、いわゆるホームポジションHPに配置されている。ここで、ホームポジションHPとは、印刷待機中に印刷ユニット20が待機する位置であり、ここではガイドレール18の右端部の周囲に設定されている。
【0033】
図5、6は、印刷ユニット20およびキャップユニット60を模式的に示す正面図である。図5に示すように、キャップユニット60は、キャップ61と、キャッピング機構62と、吸引ポンプ63とを有している。キャップ61は、印刷ユニット20の1つのインクヘッド24の複数のノズル26(図4参照)を覆うようにインクヘッド24に着脱可能に取り付けられるものである。1つのキャップ61は、1つのインクヘッド24に装着される。キャップ61の数は特に限定されないが、インクヘッド24の数と同じであり、ここでは4つである。4つのキャップ61は、主走査方向Yに並んで配置されている。キャップ61は、上部が開口した箱状のものである。
【0034】
なお、キャップ61の構成は特に限定されない。本実施形態では、4つのキャップ61は、同じ構成を有している。図7は、キャップ61を模式的に示した平面図である。図8図11は、インクヘッド24およびキャップ61の断面図である。ここでは、図7および図8に示すように、キャップ61は、キャップ本体70と、弾性体71と、吸収部材72と、間隔調整部材73とを備えている。キャップ本体70は、上方に開口した箱状のものであり、中空のものである。キャップ本体70の形状は特に限定されるものではないが、ここでは、図7に示すように、平面視において主走査方向Yよりも副走査方向Xに長い長円形状である。
【0035】
図8に示すように、弾性体71は、キャップ本体70内に配置されている。本実施形態では、弾性体71は、上方に向かって開口しており、中空のものである。図7に示すように、弾性体71は、キャップ本体70の内周面に沿った形状を有している。ここでは、弾性体71は、平面視において主走査方向Yよりも副走査方向Xに長い長円形状である。
【0036】
本実施形態では、図8に示すように、弾性体71の一部は、キャップ本体70から上方に突出している。このキャップ本体70から上方に突出した部分は、リップ部75である。弾性体71は、リップ部75を有している。このリップ部75は、弾性体71の上端部分を構成している。図7に示すように、リップ部75は、キャップ本体70の内周面に沿って配置されており、平面視において主走査方向Yよりも副走査方向Xに長い環状のものである。図8に示すように、リップ部75は、上端に向かうにしたがって幅が小さくなっている。ここで、リップ部75の幅とは、リップ部75の周方向に対して直交する方向の長さのことをいう。ここでは、リップ部75は先細り形状を有している。本実施形態では、図9に示すように、リップ部75は、インクヘッド24のノズル面25に接触可能なものである。
【0037】
リップ部75は、弾性変形可能なものである。そのため、リップ部75がインクヘッド24のノズル面25に接触したときに、弾性変形することがあり得る。リップ部75が弾性変形するものであれば、リップ部75を形成する材料は特に限定されない。本実施形態では、リップ部75は、ゴム製である。ここでは、リップ部75以外の弾性体71の部分もゴム製である。
【0038】
吸収部材72は、インクヘッド24からキャップ61に向かってインクが吐出されたときに、インクヘッド24から吐出されたインクを受ける部材である。吸収部材72が受けたインクは、吸収部材72に吸収される。ここでは、吸収部材72は、図8に示すように、キャップ本体70内に配置されており、更に弾性体71内に配置されている。言い換えると、吸収部材72は、キャップ本体70に収容されている。ここでは、弾性体71は、キャップ本体70と吸収部材72との間に配置されている。
【0039】
本実施形態では、図8に示すように、吸収部材72がキャップ本体70に収容された状態において、吸収部材72の上端は、弾性体71のリップ部75の上端よりも下方に位置している。ここでは、リップ部75は、吸収部材72よりも上方に突出している。吸収部材72の上端は、キャップ本体70の上端よりも上方に位置している。すなわち、吸収部材72は、キャップ本体70から上方に向かって突出している。
【0040】
なお、吸収部材72の形状は特に限定されない。ここでは、吸収部材72は、キャップ本体70や、弾性体71の形状に対応した形状を有しており、図7に示すように、例えば平面視において主走査方向Yよりも副走査方向Xに長い長円形状である。吸収部材72を形成する材料は、インクを吸収するものであれば特に限定されない。ここでは、吸収部材72は、多孔質の材料によって形成されている。吸収部材72は、例えばサンファインAQ90(ポリエチレン多孔質焼結体)や、スポンジ(例えばウレタンフォーム)である。
【0041】
図10に示すように、間隔調整部材73は、インクヘッド24のノズル面25にキャップ61を装着して、弾性体71のリップ部75が弾性変形したときに、吸収部材72がノズル面25から離間するように、吸収部材72とノズル面25との間隔を調整するものである。間隔調整部材73は、ノズル面25にキャップ61が装着されたときに、印刷ユニット20に当て付けられるものである。
【0042】
本実施形態では、図7に示すように、間隔調整部材73は、キャップ本体70の外面(ここでは弾性体71が設けられた面とは反対側の面)に設けられている。言い換えると、間隔調整部材73は、キャップ本体70を挟んで、弾性体71のリップ部75および吸収部材72と離間するように配置されている。間隔調整部材73の形状は特に限定されないが、ここでは直方体形状である。また、間隔調整部材73の数も特に限定されず、少なくとも3つ以上であることが好ましい。ここでは、間隔調整部材73の数は4つである。詳しくは、キャップ本体70の左側の外面に、2つの間隔調整部材73が副走査方向Xに並ぶように設けられている。キャップ本体70の右側の外面に、残りの2つの間隔調整部材73が副走査方向Xに並ぶように設けられている。
【0043】
本実施形態では、図8に示すように、間隔調整部材73の上端は、リップ部75の上端よりも下方に位置している。すなわち、リップ部75は、間隔調整部材73よりも上方に突出している。また、間隔調整部材73の上端は、吸収部材72の上端よりも上方に位置している。すなわち、間隔調整部材73は、吸収部材72よりも上方に突出している。本実施形態では、間隔調整部材73の上端は、キャップ本体70の上端よりも上方に位置している。間隔調整部材73は、キャップ本体70よりも上方に突出している。
【0044】
間隔調整部材73は、弾性体71のリップ部75よりも硬い材料によって形成されている。ここでは、間隔調整部材73は、樹脂によって形成されている。例えば間隔調整部材73は、PBT-GF30(ポリブチレンテレフタレート(ガラス繊維30%))によって形成されている。
【0045】
上述のように、インクヘッド24にキャップ61が装着されたときに、図10に示すように、間隔調整部材73は、印刷ユニット20に当て付けられるものである。ここでは、印刷ユニット20に当て付けられる間隔調整部材73の面は、上面74である。この上面74は、平らな面であり、間隔調整部材73の上端に位置している。間隔調整部材73の上面74は、水平方向(ここでは主走査方向Yおよび副走査方向X)に広がった面である。
【0046】
本実施形態では、印刷ユニット20は、ノズル面25にキャップ61が装着されたときに、間隔調整部材73の上面74に当て付けられる当て付け面21を有している。当て付け面21は、水平方向に広がった平らな面である。本実施形態では、当て付け面21は、インクヘッド24に設けられているが、例えばキャリッジ22に設けられてもよい。当て付け面21は、インクヘッド24のノズル面25とは異なる面である。当て付け面21は、ノズル面25と別体である。ここでは、インクヘッド24の側面には、当て付け部材23が設けられている。当て付け面21は、当て付け部材23の下面を構成している。
【0047】
ここでは、図4に示すように、1つのインクヘッド24に設けられる当て付け面21の数、すなわち当て付け部材23の数は、間隔調整部材73の数と同じであり、ここでは4つである。ここでは、1つのインクヘッド24の左面に、2つの当て付け部材23が副走査方向Xに並んで配置されている。また、1つのインクヘッド24の右面に、残りの2つの当て付け部材23が副走査方向Xに並んで配置されている。
【0048】
図5および図6に示すように、キャッピング機構62は、インクヘッド24のノズル面25に対してキャップ61のリップ部75を接触させたり離間させたりする機構である。本実施形態では、キャッピング機構62は、キャップ61を昇降させるものである。キャップ61がノズル面25の下方に位置している状態で、図5の矢印のようにキャップ61が上昇することで、図6に示すように、インクヘッド24にキャップ61が装着される。一方、キャップ61がインクヘッド24に装着された状態でキャップ61が下降することで、図5に示すように、ノズル面25からキャップ61が離間する。
【0049】
なお、キャッピング機構62の構成は、特に限定されない。ここでは、キャッピング機構62は、4つのキャップ61を支持する支持部材65と、支持部材65に接続された昇降モータ67とを有している。支持部材65は、例えば板状のものである。ここでは、昇降モータ67が駆動することで、支持部材65が昇降する。支持部材65の昇降に伴い、支持部材65に支持された4つのキャップ61も昇降する。
【0050】
吸引ポンプ63は、キャップ61内のインクや、キャップ61に装着されたインクヘッド24内のインクを吸引するものである。吸引ポンプ63は、キャップ61に接続されている。ここでは、1つの吸引ポンプ63は、1つのキャップ61に接続されている。吸引ポンプ63の数は、キャップ61の数と同じ4つである。本実施形態では、図8に示すように、キャップ61のキャップ本体70の底部には、排出孔77が形成されている。この排出孔77には、チューブ78が接続されている。図5に示すように、吸引ポンプ63は、チューブ78の途中部分に設けられている。ここでは、チューブ78の一端が排出孔77に接続されており、チューブ78の他端は、例えば廃液タンク(図示せず)に接続されている。
【0051】
吸引ポンプ63の種類は特に限定されないが、例えば真空ポンプである。吸引ポンプ63は、駆動時、対応するインクヘッド24内の圧力(負圧)よりも低い圧力を形成するように構成されている。ここでは、図10に示すように、キャップ61のリップ部75がノズル面25に接触しているとき、キャップ61のキャップ本体70と、ノズル面25とに囲まれた空間が負圧になるように構成されている。図6に示すように、例えばキャップ61がインクヘッド24に装着された状態で、吸引ポンプ63が駆動すると、図4に示すノズル26からインクが吸い出される。吸引ポンプ63に吸引されたインクは、図10に示す排出孔77からチューブ78を通り、図示しない廃液タンクに排出される。
【0052】
図1に示すように、プリンタ10は、ワイパーユニット80を備えている。ワイパーユニット80は、インクヘッド24のノズル面25(図4参照)をワイピングするものである。ワイパーユニット80は、キャップユニット60の近傍に配置されており、ホームポジションHPの周囲に配置されている。図12は、印刷ユニット20およびワイパーユニット80を模式的に示す正面図である。図12に示すように、ワイパーユニット80は、ワイパー81と、ワイピング機構82と、洗浄液が貯留される洗浄液槽83とを備えている。
【0053】
ワイパー81は、ノズル面25に対して移動可能なものであり、ノズル面25を拭く部材である。ここでは、ワイパー81は、前後および上下に延びる平板状の部材である。ワイパー81は、例えばゴムで形成されている。
【0054】
ワイピング機構82は、ワイパー81がノズル面25を拭くように、ワイパー81を移動させる機構である。ワイピング機構82は、回転軸85と、回転モータ86とを有している。回転軸85は、前後に延びており、ワイパー81の一端に接続されている。回転軸85には回転モータ86が接続されている。回転モータ86が駆動することで、ワイパー81は回転軸85を中心に回転可能である。ワイパー81が、回転軸85から遠い方の端部を上にするような回転位置に配置されるとき、当該端部は、ノズル面25よりもわずかに高い位置に位置する。このような状態で、印刷ユニット20を主走査方向Yに移動させることで、ワイパー81によってノズル面25が拭かれる。一方、ワイパー81が、回転軸85から遠い方の端部を下にするような回転位置に配置されるとき、回転軸85の下方に設置された洗浄液槽83中の洗浄液に浸漬される。
【0055】
本実施形態では、図1に示すように、プリンタ10は、制御装置90を備えている。制御装置90は、媒体5への印刷に関する制御を行う装置である。また、制御装置90は、キャップユニット60やワイパーユニット80を使用して、クリーニングに関する制御を行う装置でもある。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置90は、筐体11の内部に設けられている。ただし、制御装置90は筐体11の内部に設けられていなくてもよい。例えば制御装置90は、筐体11の外部に設置されたコンピュータなどで実現されてもよい。この場合、制御装置90は、有線または無線を介して筐体11内に配置された基板(図示せず)などと通信可能に接続されているとよい。
【0056】
図3に示すように、制御装置90は、操作パネル15(詳しくは表示画面16および入力ボタン17)と、インクヘッド24と、ヘッド移動機構30(詳しくはスキャンモータ33)と、媒体移動機構50(詳しくはフィードモータ53)と、キャップユニット60のキャッピング機構62(詳しくは昇降モータ67)と、吸引ポンプ63と、ワイパーユニット80のワイピング機構82(詳しくは回転モータ86と)とに通信可能に、かつ、電気的に接続されている。制御装置90は、操作パネル15、インクヘッド24、ヘッド移動機構30、媒体移動機構50、キャッピング機構62、吸引ポンプ63およびワイピング機構82を制御する。
【0057】
本実施形態では、制御装置90は、記憶部91と、印刷制御部92と、待機制御部93と、吸引制御部94と、空吸引制御部95と、ワイピング制御部96とを備えている。なお、上述した制御装置90の各部91~96は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置90の各部91~96は、プロセッサによって実現されるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0058】
図3に示す印刷制御部92は、プラテン40に支持された媒体5に、インクヘッド24からインクを吐出させて、媒体5に印刷する制御を行う。例えば図3に示す記憶部91には、図示しない印刷画像データが記憶されている。印刷制御部92は、記憶部91に記憶された印刷画像データに基づいた画像を媒体5に印刷する。ここでは、印刷制御部92は、まずインクヘッド24を主走査方向Yへ移動させるようにヘッド移動機構30を制御する。インクヘッド24が主走査方向Yに移動している間において、プラテン40に支持された媒体5上を通過するときに、印刷制御部92は、インクヘッド24から媒体5に向かってインクを吐出させて、1ライン分の印刷を行う。
【0059】
1ライン分の印刷の後、印刷制御部92は、プラテン40に支持された媒体5を副走査方向Xに所定の距離移動させるように媒体移動機構50を制御する。媒体5を副走査方向Xに移動させた後、次の1ライン分の印刷を行う。このように、1ライン分の印刷と、媒体5の副走査方向Xへの移動とを繰り返し行うことで、媒体5に印刷画像データに基づいた画像を印刷することができる。
【0060】
図3に示す待機制御部93は、印刷待機時において、キャップ61をインクヘッド24に装着する制御を行う。ここでは、印刷終了後に印刷待機中となる。図9は、印刷待機中の状態を示す図である。待機制御部93は、まず印刷ユニット20をホームポジションHPに移動させるようにヘッド移動機構30を制御する。印刷ユニット20がホームポジションHPに到着した後において、図8に示すように、インクヘッド24のノズル面25は、キャップ61の真上に配置される。
【0061】
このような状態で、待機制御部93は、キャップユニット60のキャッピング機構62を制御して、キャップ61を上昇させる。キャップ61が上昇すると、キャップ61とノズル面25との間の距離が短くなり、図10に示すように、インクヘッド24にキャップ61が装着される。
【0062】
なお、印刷待機時において、キャップ61がインクヘッド24に装着されたとき、キャップ61のリップ部75は、ノズル面25に接触している。しかしながら、印刷待機時において、キャップ61の吸収部材72はノズル面25に接触しない。また、キャップ61の間隔調整部材73は、印刷ユニット20(詳しくは当て付け面21)に当て付けられていない。言い換えると、印刷待機時において、吸収部材72はノズル面25から離間しており、間隔調整部材73の上面74は、印刷ユニット20の当て付け面21から離間している。
【0063】
図3に示す吸引制御部94は、吸引処理を行う。ここで吸引処理とは、キャップ61をインクヘッド24に装着させた状態で、インクヘッド24内のインクをキャップ61に吐出する処理のことをいう。図10は、吸引処理の状態を示す図である。ここでは、吸引制御部94は、キャップ61のリップ部75がノズル面25に接触した状態で、吸引ポンプ63を駆動させる。まず吸引制御部94は、印刷ユニット20をホームポジションHPへ移動させるためにヘッド移動機構30を制御する。そして、ホームポジションHPにおいて、図8に示すように、キャップ61の真上にインクヘッド24のノズル面25が配置された後、吸引制御部94は、キャッピング機構62を制御し、キャップ61を上昇させる。その後、図10に示すように、キャップ61のリップ部75がノズル面25に接触し、キャップ61がインクヘッド24に装着される。
【0064】
キャップ61がインクヘッド24に装着された後、吸引制御部94は、吸引ポンプ63を駆動させる。吸引ポンプ63が駆動すると、キャップ61とノズル面25によって囲まれた空間の圧力が、インクヘッド24内の圧力よりも小さくなり、負圧となる。このとき、インクヘッド24内のインクが吸引ポンプ63によって引っ張られて、ノズル26からキャップ本体70内に吐出される。キャップ本体70内に吐出されたインクは、吸収部材72に吸収される。
【0065】
ところで、吸引処理において吸引ポンプ63が駆動すると、上述のように、キャップ61とノズル面25によって囲まれた空間が負圧になる。このとき、図10に示すように、キャップ61のリップ部75が撓むことがあり得る。リップ部75が撓むと、吸収部材72がノズル面25に接近し、接触しようとする。しかしながら、本実施形態では、吸収部材72がノズル面25に接触する前に、間隔調整部材73の上面74が、印刷ユニット20の当て付け面21に接触して当て付けられる。ここで、間隔調整部材73が当て付け面21に当て付けられることで、キャップ61による上方への移動が規制されるため、吸収部材72がノズル面25に接触することが防止される。よって、本実施形態では、吸収部材72がノズル面25に接触することなく吸引処理が行われる。
【0066】
図3に示す空吸引制御部95は、空吸引処理を行う。この空吸引処理は、例えば上記の吸引処理の後に行われる処理である。空吸引処理は、吸引処理の後、ノズル面25からキャップ61を離間させて、キャップ61内のインクを吸引する処理である。図11は、空吸引処理の状態を示す図である。空吸引制御部95は、図11に示すように、キャップ61のリップ部75がノズル面25から離間した状態で、吸引ポンプ63を駆動させる。ここでは、まず空吸引制御部95は、図10に示すような吸引処理の後、キャップ61を下降させるようにキャッピング機構62を制御する。このことで、図11に示すように、キャップ61のリップ部75がノズル面25から離間する。このときのノズル面25からリップ部75までの距離は、例えば0.5mm~1mm程度である。このとき、間隔調整部材73も印刷ユニット20の当て付け面21から離間する。
【0067】
このように、キャップ61がノズル面25から離間した後、空吸引制御部95は、吸引ポンプ63を駆動させる。このことで、キャップ61内のインクや、吸収部材72に吸収されたインクは、キャップ本体70に形成された排出孔77からチューブ78を通って廃液タンクに排出される。なお、本実施形態では、吸収部材72の毛細管力によって、キャップ61内のインク以外に、ノズル面25に付着したインクの少なくとも一部も吸引することができる。
【0068】
図3に示すワイピング制御部96は、ワイピング処理を行う。このワイピング処理は、例えば上記の空吸引処理の後に行われる処理である。空吸引処理では、ノズル面25に付着したインクの少なくとも一部が吸引されるが、ノズル面25には、多少のインクが付着したままのことがあり得る。そこで、ワイピング処理では、ノズル面25をワイパー81で拭くことで、ノズル面25に付着したインクを拭う。ワイピング制御部96は、図12に示すように、ワイパー81がノズル面25を拭くようにワイピング機構82を制御する。ここでは、まずワイピング制御部96は、ワイパー81が、回転軸85から遠い方のワイパー81の端部が上になるように、ワイパー81を回転させる。その後、ワイピング制御部96は、ヘッド移動機構30を制御し、印刷ユニット20を主走査方向Yに移動させる。このとき、インクヘッド24のノズル面25がワイパー81を通過するとき、ワイパー81が撓みながらノズル面25上を移動し、ノズル面25が拭かれる。本実施形態では、全てのインクヘッド24のノズル面25がワイパー81で拭かれるまで、印刷ユニット20を主走査方向Yに移動させる。
【0069】
以上、本実施形態では、図5に示すように、プリンタ10は、キャップ61と、印刷ユニット20とを備えている。印刷ユニット20は、図4に示すように、ノズル26が形成されたノズル面25を有するインクヘッド24と、インクヘッド24が設けられたキャリッジ22とを有している。図5および図6に示すように、キャップ61は、印刷ユニット20のインクヘッド24に着脱可能に取り付けられるキャップである。図8に示すように、キャップ61は、上方に向かって開口した中空のキャップ本体70と、キャップ本体70内に配置された弾性体71と、キャップ本体70内に配置された吸収部材72と、を備えている。図10に示すように、弾性体71は、キャップ本体70から上方に突出し、ノズル面25と接触可能であり、かつ、弾性変形可能なリップ部75を有している。吸収部材72の上端が、キャップ本体70の上端よりも上方、かつ、リップ部75の上端よりも下方に位置している。
【0070】
例えばノズル面25に残るインクを吸収するためには、キャップ61の吸収部材72を、ノズル面25に接触しない程度にノズル面25に接近させるとよい。本実施形態では、吸収部材72の上端は、キャップ本体70の上端よりも上方、かつ、リップ部75の上端よりも下方に位置しているため、リップ部75がノズル面25に接触したとき、吸収部材72は、ノズル面25に接触しない程度に、ノズル面25に接近(言い換えると、キャップ本体70の上端よりもノズル面25に接近)させることができる。このように、吸収部材72をノズル面25に接近させることができるため、より多くのインクを吸収でき、ノズル面25に残るインクの量を減らすことができる。
【0071】
本実施形態では、キャップ61は、キャップ本体70の外面に設けられ、ノズル面25と吸収部材72との間隔を調整する間隔調整部材73を備えている。間隔調整部材73は、リップ部75が弾性変形したときに、吸収部材72がノズル面25から離間するように印刷ユニット20に当て付けられるように構成されている。図8に示すように、間隔調整部材73の上端は、リップ部75の上端よりも下方、かつ、吸収部材72の上端よりも上方に位置している。図10に示すように、例えばインクヘッド24にキャップ61を装着したときに、キャップ61のリップ部75が撓み、吸収部材72がノズル面25に接触する可能性があり得る。また、リップ部75は経年劣化して伸縮することがあり得る。例えばリップ部75は、ゴム製であり、ゴムの種類によって硬さが異なる。また、ゴムの種類によっては、リップ部75は、インクと接することで膨張、伸縮、硬化、軟化などの経時変化が起きることがあり得る。これら、経年劣化や経時変化によって、吸収部材72がノズル面25に接触することもあり得る。
【0072】
しかしながら、本実施形態では、リップ部75が撓んだ場合であっても、間隔調整部材73は、吸収部材72がノズル面25から離間するように印刷ユニット20に当て付けられている。そのため、ノズル面25に接触しないように設計している吸収部材72を、ノズル面25により近づけて設置することができる。また、リップ部75が撓んだ場合であっても、吸収部材72がノズル面25に接触することを防ぎつつ、ノズル面25の近くに吸収部材72を配置することができる。よって、リップ部75が撓んだり、経年劣化や経時変化したりした場合であっても、間隔調整部材73が当て付けられることで、吸収部材72がノズル面25から一定の距離を保ちながら離間させることができる。
【0073】
本実施形態では、図5に示すように、プリンタ10は、キャップ61に接続された吸引ポンプ63を備えている。図10に示すように、キャップ61のリップ部75がノズル面25に接触しているとき、キャップ61のキャップ本体70と、ノズル面25とに囲まれた空間は、負圧になるように構成されている。このように、キャップ本体70とノズル面25とに囲まれた空間が負圧になることで、リップ部75が撓み易くなる。よって、上記の負圧の状態であっても、間隔調整部材73が印刷ユニット20に当て付けられることで、吸収部材72がノズル面25に接触することを防ぐことができる。
【0074】
本実施形態では、図5および図6に示すように、プリンタ10は、ノズル面25に対してキャップ61のリップ部75を接触させたり離間させたりするキャッピング機構62と、制御装置90(図3参照)とを備えている。制御装置90は、キャップ61のリップ部75がノズル面25に接触した状態で、吸引ポンプ63を駆動させる吸引制御部94(図3参照)を備えている。このように、吸引制御部94によって吸引処理が行われているときに吸引ポンプ63が駆動することで、キャップ本体70とノズル面25とに囲まれた空間が負圧になる。よって、図10に示すように、吸引処理において、リップ部75が撓んだ場合であっても、間隔調整部材73が印刷ユニット20に当て付けられることで、吸収部材72がノズル面25に接触することを防ぐことができる。
【0075】
本実施形態では、図7に示すように、間隔調整部材73は、キャップ本体70の外面に3つ以上(ここでは4つ)設けられている。このことによって、間隔調整部材73を印刷ユニット20に当て付けたときに、ノズル面25と吸収部材72との間隔を管理し易い。
【0076】
本実施形態では、図8に示すように、間隔調整部材73は、上端に平らな上面74を有している。このことによって、間隔調整部材73が印刷ユニット20に当て付けられるとき、上面74が印刷ユニット20に当て付けられる。上面74を平らな面にすることで、印刷ユニット20に当て付けられる面積を大きくすることができる。よって、間隔調整部材73を印刷ユニット20により安定して当て付けることができる。
【0077】
本実施形態では、印刷ユニット20は、インクヘッド24またはキャリッジ22に設けられ、間隔調整部材73に当て付けられる当て付け面21を有している。このことによって、図10に示すように、間隔調整部材73の上面74を、印刷ユニット20の当て付け面21に当て付けることで、リップ部75が撓んだ場合であっても、吸収部材72をノズル面25から離間させることができる。
【0078】
本実施形態では、当て付け面21は、平らな面である。このことによって、間隔調整部材73の上面74が、当て付け面21に当て付けられるとき、互いに平らな上面74と当て付け面21とが接触する。よって、間隔調整部材73を当て付け面21により安定して当て付けることができる。
【0079】
本実施形態では、図8に示すように、リップ部75は、上端に向かうにしたがって幅が小さい。このことによって、キャップ61がインクヘッド24に装着されたときに、リップ部75は、ノズル面25に押さえ付けられて撓み易くなる。このように、撓み易いリップ部75であっても、リップ部75が撓んだときに、間隔調整部材73が印刷ユニット20に当て付けられるため、吸収部材72がノズル面25に接触することを防ぐことができる。よって、間隔調整部材73の構成は、撓み易いリップ部75を使用する場合に特に有用である。
【0080】
本実施形態では、間隔調整部材73は、リップ部75よりも硬い材料によって形成されている。例えば間隔調整部材73は樹脂(ABS樹脂)によって形成され、リップ部75はゴムによって形成されている。このことによって、キャップ61がインクヘッド24に装着されてリップ部75が撓んだ場合であっても、間隔調整部材73が印刷ユニット20に当て付けられたときに、間隔調整部材73自体は、撓み難い。よって、リップ部75が撓んだときに、間隔調整部材73によって、キャップ61のリップ部75とノズル面25とを離間させた状態にすることができる。
【0081】
本実施形態では、図8に示すように、吸収部材72の上端は、キャップ本体70の上端よりも上方に位置している。制御装置90は、キャップ61のリップ部75がノズル面25から離間した状態で、吸引ポンプ63を駆動させる空吸引制御部95(図3参照)を備えている。このことによって、空吸引制御部95による空吸引処理のときに、図11に示すように、吸収部材72は、ノズル面25に接触しない程度に、ノズル面25に近づけることができる。そのため、空吸引処理のときに、ノズル面25に付着したインクの多くを、吸収部材72に吸収させることができる。よって、空吸引処理後のノズル面25に付着するインクの量を少なくすることができる。
【0082】
本実施形態では、図4に示すように、ノズル26は、例えば第1インクヘッド24のノズル列27aを構成するノズル26と、第1インクヘッド24のノズル列27bを構成するノズル26とを有している。ノズル列27aのノズル26は、第1のインクを吐出する。ノズル列27bのノズル26は、第1のインクとは色が異なる第2のインクを吐出する。このことによって、ノズル面25には、複数の色が混色したインクが付着することになる。混色したインクは、ノズル26内に入り込まない方が好ましい。本実施形態では、空吸引処理のときに、吸収部材72は、ノズル面25に近づいて配置されるため、ノズル面25に付着した混色したインクの多くを、吸収部材72に吸収させることができる。よって、空吸引処理後のノズル面25に付着する混色したインクの量を少なくすることができる。
【0083】
本実施形態では、図12に示すように、プリンタ10は、ノズル面25に対して移動可能なワイパー81と、ワイパー81がノズル面25を拭くように、ワイパー81を移動させるワイピング機構82とを備えている。制御装置90は、ワイパー81がノズル面25を拭くようにワイピング機構82を制御するワイピング制御部96(図3参照)を有している。ワイピング制御部96によるワイピング処理は、空吸引処理の後に行われる処理である。ノズル面25に付着しているインクであって、付着しているインクの量が多いと、ワイピング処理時(例えばノズル面25をワイパー81が通過した際)に、ワイパー81の弾性力により、インクを飛散させ、プリンタ10内が汚れるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、上記のように空吸引処理のときに、ノズル面25に付着したインクの多くを、吸収部材72に吸収させることができる。したがって、ワイピング処理のときに、インクが飛散し難くすることができる。また、ノズル面25に付着しているインクにおいて、混色しているインクが多いと、ワイピング処理のときに、混色したインクがノズル26に入り込み易くなる。しかしながら、本実施形態では、上記のように空吸引処理のときに、ノズル面25に付着した混色したインクの多くを、吸収部材72に吸収させることができる。よって、ワイピング処理のときに、ノズル面25に付着している混色したインクの量を少なくすることができる。したがって、ワイピング処理のときに、混色したインクがノズル26に入り込み難くすることができる。
【0084】
本実施形態では、図7に示すように、間隔調整部材73は、キャップ本体70の左面および右面に設けられていた。しかしながら、キャップ本体70に対する間隔調整部材73の位置は特に限定されない。例えば間隔調整部材73は、キャップ本体70の前面または後面に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 プリンタ
20 印刷ユニット
21 当て付け面
22 キャリッジ
24 インクヘッド
25 ノズル面
26 ノズル
60 キャップユニット
61 キャップ
62 キャッピング機構
63 吸引ポンプ
70 キャップ本体
71 弾性体
72 吸収部材
73 間隔調整部材
74 上面
75 リップ部
80 ワイパーユニット
81 ワイパー
82 ワイピング機構
90 制御装置
94 吸引制御部
95 空吸引制御部
96 ワイピング制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12