IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大林組の特許一覧

特開2022-177583表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム
<>
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図1
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図2
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図3
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図4
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図5
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図6
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図7
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図8
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図9
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図10
  • 特開-表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177583
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/10 20060101AFI20221124BHJP
   G01C 15/06 20060101ALI20221124BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
E21D9/10 Z
G01C15/06
G01C15/00 104D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083949
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】畑 浩二
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054GA62
2D054GA82
(57)【要約】
【課題】作業現場において表示される作業指標の視認性を高める。
【解決手段】建設機械のオペレータと作業対象物との間に位置する透明性を有する表示部25と、作業対象物の三次元データ、作業対象物に設定される複数の標準指標の標準位置データ37、及び建設機械の作業に用いる作業指標の作業指標データ38を含む三次元のモデルデータ35が記憶されたモデルデータ記憶部22と、作業対象物が存在する作業現場において、複数の標準指標の実像を検出して、実像の位置と標準指標の位置とを位置合わせして、作業指標データ38に応じた作業指標の表示位置を特定する位置特定部30と、表示部25を介して視認される作業対象物の実像に作業指標を重ねるように表示する表示制御部31と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のオペレータと作業対象物との間に位置する透明性を有する表示部と、
前記作業対象物の三次元データ、前記作業対象物に設定される複数の標準指標の標準位置データ、及び前記建設機械の作業に用いる作業指標の作業指標データが記憶されたモデルデータ記憶部と、
前記作業対象物が存在する作業現場において前記複数の標準指標を検出し、検出した前記標準指標の位置と前記標準位置データとを位置合わせして、前記作業指標データに応じた前記作業指標の表示位置を特定する位置特定部と、
前記オペレータに前記表示部を介して視認される前記作業対象物の実像に前記作業指標を重ねるように前記表示部に表示する表示制御部と、を備える
表示システム。
【請求項2】
前記オペレータの目の位置を検出する検出装置をさらに備え、
前記表示制御部は、前記表示部に表示する画像を前記検出した目の位置から見た画像に変換する
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記建設機械の制御データ及び前記作業現場に設置された外部装置が検出した検出データの少なくとも一方を外部データとして取得する外部データ取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記外部データに基づいて前記作業指標の表示態様を変更する
請求項1又は2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記作業指標は、前記建設機械の前記作業対象物上の作業位置を示す指標である
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記作業現場の前記オペレータを含む作業員に関する情報を取得する作業員情報取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記作業員の情報を前記表示部に表示する
請求項1~4のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
建設機械のオペレータと作業対象物との間に位置する透明性を有する表示部と、
前記作業対象物の三次元データ、前記作業対象物に設定される複数の標準指標の標準位置データ、及び前記建設機械の作業に用いる作業指標の作業指標データが記憶されたモデルデータ記憶部と、
前記作業指標を前記表示部に表示する制御部と、を用いる表示制御方法であって、
前記制御部が、
前記作業対象物が存在する作業現場において前記複数の標準指標を検出し、検出した前記標準指標の位置と前記標準位置データとを位置合わせして、前記作業指標データに応じた前記作業指標の表示位置を特定し、
前記オペレータに前記表示部を介して視認される前記作業対象物の実像に前記作業指標を重ねるように前記表示部に表示する
表示制御方法。
【請求項7】
建設機械のオペレータと作業対象物との間に位置する透明性を有する表示部と、
前記作業対象物の三次元データ、前記作業対象物に設定される複数の標準指標の標準位置データ、及び前記建設機械の作業に用いる作業指標の作業指標データが記憶されたモデルデータ記憶部と、
制御部と、を用いて前記作業指標を前記表示部に表示する表示制御プログラムであって、
前記制御部を、
前記作業対象物が存在する作業現場において前記複数の標準指標を検出し、検出した前記標準指標の位置と前記標準位置データとを位置合わせして、前記作業指標データに応じた前記作業指標の表示位置を特定する位置特定部と、
前記オペレータに前記表示部を介して視認される前記作業対象物の実像に前記作業指標を重ねるように前記表示部に表示する表示制御部、として機能させる
表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示システム、表示制御方法及び表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事等において、作業に関する各種の情報等をオペレータに提供するためにプロジェクションマッピングにより切羽に画像を投影することが行われている。一例として、トンネルを掘削する際に、掘削不足領域を示すマーカーを投影することが提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法では、コンピュータにより切羽の三次元形状を取り込み、設計上の切羽形状と比較し掘削の過不足度合いを算出する。そして、過不足度合いが大きく、掘削量が不足している座標を掘削不足領域として検出し、掘削不足領域と判定された部分に映像光であるマーカーを投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-15040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した方法では画像を投影する環境によっては画像が視認しにくい場合がある。例えば、照度が低い環境においては投影画像が鮮明に切羽に表示されるものの、照度が高い環境においては投影された画像が不鮮明となることがある。よって、オペレータに提示する画像の視認性を高めることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する表示システムは、建設機械のオペレータと作業対象物との間に位置する透明性を有する表示部と、前記作業対象物の三次元データ、前記作業対象物に設定される複数の標準指標の標準位置データ、及び前記建設機械の作業に用いる作業指標の作業指標データが記憶されたモデルデータ記憶部と、前記作業対象物が存在する作業現場において前記複数の標準指標を検出し、検出した前記標準指標の位置と前記標準位置データとを位置合わせして、前記作業指標データに応じた前記作業指標の表示位置を特定する位置特定部と、前記オペレータに前記表示部を介して視認される前記作業対象物の実像に前記作業指標を重ねるように表示する表示制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば作業現場において表示される作業指標の視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態の表示システムをトンネル作業現場に適用した例を示す模式図。
図2】同実施形態における表示システムの構成を示すブロック図。
図3】同実施形態における切羽、表示部及び撮像装置の位置関係を示す模式図。
図4】同実施形態の撮像装置が撮像した画像データを模式的に示す図。
図5】同実施形態において表示部に表示された作業指標を説明する図。
図6】第2実施形態の表示システムの一部を説明する図。
図7】他の実施形態における表示システムの一部を示す模式図。
図8】他の実施形態における表示システムの一部を示す模式図。
図9】他の実施形態における作業指標を示す模式図。
図10】他の実施形態における作業指標を示す模式図。
図11】他の実施形態におけるオペレータ情報を表示した表示部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して表示システム及び表示制御方法の第1実施形態について説明する。本実施形態では、表示システム及び表示制御方法を、山岳トンネル工事における作業の目標位置を表示するシステムに適用した例を示して説明する。
【0009】
図1に示すように、トンネル1内には、建設機械2が配設されている。建設機械2は、オペレータが操作を行うオペレータ室3を備えている。建設機械2は、切羽4に形成された複数の孔にロッド5の先端を挿入し、油圧ドリフタ6の駆動によって地山8を打撃し振動を付与する。切羽4に設けられた受振装置7は、地山8を伝播した振動を受振する。計測装置9は、ロッド5及び受振装置7に有線又は無線で接続されている。計測装置9は、ロッド5から受信した受振時刻と受振装置7から受振した受振時刻とに基づいて、伝播時間を算出する。さらに計測装置9は、複数の打撃位置について伝播時間を測定することにより地山8の弾性波分布を求める。ここでは、切羽4が本発明に係る作業対象物に対応する。
【0010】
また、トンネル1内には複数の投影装置11が設けられている。本実施形態では4つの投影装置11が所定位置に設置されている。投影装置11は、レーザ光Lを切羽4に向かって照射する。レーザ光Lは、例えば400nm~800nm程度の波長の可視光線である。4つの投影装置11は、予め測量等を行うことによって絶対座標が判明した位置にそれぞれレーザ光Lを照射する。絶対座標は、例えば、緯度、経度等の地理情報で表される座標である。
【0011】
レーザ光Lが照射された部分を標準指標12A~12Dという。なお、標準指標12A~12Dを区別しないで説明する場合には、便宜上、標準指標12という。切羽4に投影された標準指標12A~12Dは、建設機械2を操作するオペレータ又は建設機械2の近傍に居る作業者が視認できるものである。標準指標12A~12Dは、トンネル1の内空変位量の測定等に用いられるマーカーであってもよい。図1に示す例では、4つの標準指標12A~12Dが、切羽4の中心点に対して、下部左側、下部右側、上部左側、上部右側に位置する。標準指標12A~12Dの配置は特に限定されない。標準指標12A~12Dはここでは4つであるが、1つでもよく、4つ以外の複数であってもよい。また、図1では標準指標12A~12Dを点状のマーカーとしたが、点状に限られず、線状のマーカーであってもよい。
【0012】
なお、本実施形態では、削孔ビットの振動受信を切羽(切羽面)4で行う方法を挙げて説明を行うが、これはあくまで一例であり、切羽前方の地質の予測(地山の探査)には、「トンネルナビ(登録商標)」、「TSPなどの弾性波探査法」、「高速ノンコア削孔切羽前方探査システム」、「トンネル切羽前方湧水探査・対策工選定システム」などが多用されている。これら「トンネルナビ(登録商標)」などを用いる場合であっても、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0013】
図2を参照して、表示システム20について説明する。表示システム20は、制御部21、モデルデータ記憶部22、投影装置11、撮像装置23、及び表示部25を備えている。
【0014】
投影装置11は、上述したようにトンネル1内に配置される。
撮像装置23は、標準指標12A~12Dを撮像可能なカメラであればよい。投影装置11が、可視光を投影する装置である場合には、撮像装置23は可視光カメラである。また、投影装置11が、赤外光を投影する装置である場合には、撮像装置23は赤外光を撮像可能なカメラである。また、撮像装置23は、図1に示すオペレータ室3内に配置されている。
【0015】
表示部25は、オペレータ室3の正面に備えられている。本実施形態では、表示部25は、オペレータ室3のフロントウィンドウを兼ねており、オペレータ室3内のオペレータと作業対象物である切羽4との間に位置する。表示部25の輝度は、オペレータの手動操作に基づき変更できるか、又は表示部25自体の構成(駆動部など)によって自動的に制御することが可能である。本実施形態では、表示部25は、透明性を有するディスプレイであって、例えば透明性を有する有機ELディスプレイである。透明有機ELディスプレイは、一対の電極層と一対の有機EL層とを備える。有機EL層は、一対の電極層の間に位置する。透明有機ELディスプレイは、有機EL層に透明画素を設けたり、有機EL層の全てを覆わないように電極層を網目状にしたりすることにより、高い光透過率を有する。このため、オペレータは、表示部25を介して、切羽4を視認することができる。
【0016】
なお、例えば、透明有機ELディスプレイを建設機械2のオペレータ室3のフロントガラスに貼設するなどして、オペレータと切羽4(作業対象物)の間に配置するように構成してもよい。
【0017】
制御部21は、1つの装置に備えられていてもよく、複数の装置にその構成要素を分散して備えられていてもよい。また、制御部21は、撮像装置23及び表示部25との間でデータを送受信できれば建設機械2に搭載されていてもよく、建設機械2以外に設置されていてもよい。また、制御部21は、計測装置9にデータを送受信可能に接続されている。
【0018】
制御部21は、演算装置、メモリ、各種のインターフェース等を備える。演算装置は、モデルデータ記憶部22等のストレージに記憶された表示制御プログラムをメモリにロードしプログラムに含まれる命令を実行する演算装置(circuitry)である。演算装置は、例えば、CPU、GPU、これら以外の装置又はこれらの組み合わせである。制御部21は、表示制御プログラムを実行することにより、位置特定部30、表示制御部31、外部データ取得部32として機能する。
【0019】
位置特定部30は、撮像装置23が撮像した画像データに基づいて、標準指標12A~12Dの位置等を表示部25に設定された画像座標系において特定する。表示制御部31は、位置特定部30が特定した標準指標12A~12Dの位置を基準として、画像座標系における作業指標の位置を特定する。作業指標は、作業現場における作業の位置を示す指標である。また、表示制御部31は、特定した作業指標の位置に基づいて表示部25に表示するための表示用データを生成し、表示部25に出力する。オペレータ室3に存在するオペレータは、表示部25に表示された作業指標を切羽4の実像に重ね合わせて視認し、作業指標に沿って作業を行うことが可能である。本実施形態では、ロッド5の先端を挿入する孔の位置であって打撃を行う位置を、作業指標によって示す。
【0020】
外部データ取得部32は、建設機械2やその他の外部装置から各種の情報を取得する。本実施形態では、外部データ取得部32は、計測装置9から、測定位置毎に弾性波分布の測定完了通知を受信する。
【0021】
モデルデータ記憶部22は、モデルデータ35を記憶している。モデルデータ記憶部22は、1つの装置に備えられていてもよく、複数の装置にその構成要素を分散して備えられていてもよい。また、制御部21及びモデルデータ記憶部22は、例えばパーソナルコンピュータ等の一つの装置が備えていてもよいし、それぞれ異なる装置が備えていてもよい。
【0022】
モデルデータ35は、CIM(Construction Information Modeling/Management)データであって、トンネル1のトンネル線形、トンネル位置、トンネル断面形状等のトンネル1の3次元モデルデータ36を含む。3次元モデルデータ36は、絶対座標で表される。
【0023】
また、モデルデータ35は、標準指標12A~12Dの位置を示す標準位置データ37を含む。標準位置データ37は、絶対座標で表されている。
モデルデータ35は、作業指標データ38を含む。作業指標データ38は、作業指標の位置を示す。作業指標の位置は、オペレータ又はそれ以外の作業者によって作業前に予め設定されており、絶対座標で表されている。
【0024】
図3図5を参照して、切羽4とオペレータ室3のオペレータの間に設けられた表示部25に作業指標を表示する手順について説明する。
図3に示すように、表示部25は、撮像装置23と切羽4との間に位置する。撮像装置23は、図1に示すオペレータ室3内に設けられ、光軸を表示部25に向けた状態で固定されている。また、表示部25には、表示面25A内の位置を表す表示座標系(u,v)が設定されている。なお、図3では便宜上、切羽4の面と絶対座標系(X,Y,Z)のX軸及びY軸を平行としている。
【0025】
表示部25は、鉛直面と平行であってもよく傾斜していてもよい。言い換えると、表示部25は、絶対座標系のX軸を中心とした回転方向において回転角度を有した状態で建設機械2に取り付けられていてもよい。制御部21の位置特定部30は、表示部25の傾斜角を予め取得する。傾斜角は、固定値として制御部21のストレージ等に予め記録されていてもよい。又は、表示部25に地磁気センサを装着し、地磁気センサの検出データに基づき表示部25の傾斜角を算出するようにしてもよく、他のセンサを用いて傾斜角を算出するようにしてもよい。
【0026】
まず撮像装置23は、切羽4に投影された標準指標12を、表示部25を介して撮像する。
図4は、撮像装置23が撮像した画像データ23Aを模式的に示す図である。撮像装置23の撮像範囲は、表示部25の表示面25Aのうち、作業指標を表示する所定領域を少なくとも含む。これにより、切羽4と、切羽4に投影された標準指標12と、表示部25の所定領域とが重ねられた状態で撮像される。作業指標を表示する所定領域は、表示面25Aの全域であってもよいし、一部であってもよい。
【0027】
位置特定部30は、撮像装置23が撮像した画像データに対して公知の画像処理を行い、表示部25の表示面25Aの所定領域に、所定数以上の標準指標12が重なっているか否かを判定してもよい。位置特定部30は、少なくとも3つ以上の標準指標12が表示面25Aの所定領域に重なっている場合に、作業指標50を表示可能であると判定する。表示面25Aの所定領域に所定数以上の標準指標12Aが重なっていない場合には、作業指標50を表示不可能と判定して、所定領域に所定数の標準指標12Aが重なるまで待機する。
【0028】
また、位置特定部30は、撮像装置23の位置や光軸の向き等に応じて、撮像装置23から取得した画像データを、オペレータの目(視点)の位置等の固定位置からみた画像データに変換してもよい。この変換処理には、例えば公知の射影変換等を用いることができる。なお、撮像装置23と、オペレータの目の位置が近い場合には変換は不要である。
【0029】
次に位置特定部30は、撮像した標準指標12の位置を、表示部25の表示座標系の位置として特定する。具体的には、画像データ上の2次元の画像座標と、表示部25の表示座標系とを予め関連付けておく。撮像装置23と表示部25との相対位置関係は一定であり、撮像範囲の所定位置には常に表示部25の表示領域が含まれるので、画像データ上で標準指標12の位置を特定することによって、特定した標準指標12の位置を、表示座標系の座標で表すことができる。
【0030】
一方、標準指標12の位置は、モデルデータ記憶部22に記憶された標準位置データ37において絶対座標で定義されている。よって、位置特定部30が特定した標準指標12の表示座標系での位置と、標準位置データ37が含む標準指標12の絶対座標系での位置とを対応付けることができる。例えば、標準指標12の絶対座標系の座標を、標準指標12の表示座標系の座標に変換する行列式を求めることができる。この行列式は、回転、平行移動、拡大又は縮小等の画像変換を行うものである。
【0031】
次に、絶対座標系と表示座標系とを対応付ける変換式を用いて、作業指標50の表示座標系の座標を求める。位置特定部30は、表示座標系の座標と絶対座標系の座標とを対応付ける変換式を用いて、作業指標データ38に含まれ絶対座標系で表された作業指標50を、表示座標系の座標に変換する。
【0032】
次に図5に示すように、表示制御部31は、位置特定部30が特定した作業指標50の表示座標系の座標を取得して、表示部25に出力する表示用データを作成する。このとき、表示制御部31は、作業指標50の座標に、図形等を表示する所定の画像を配置した表示用データを生成する。図5の例では、表示部25に、7個の作業指標50が表示されている。このとき、オペレータ102の間近で表示部25を発光させることにより作業指標50を表示するため作業指標50の視認性を高めることができる。また、表示部25は、オペレータ102の手動操作又は自動的にオペレータ室3の明るさ等に合わせて、作業指標50の明るさを変更することができるので、オペレータ102が作業を行いやすい表示態様で作業指標50を表示することができる。
【0033】
また、表示制御部31は、外部データ取得部32が取得した測定データに基づき、打撃が未完了の作業指標50の表示態様と、打撃が完了した作業指標50の表示態様とを異ならせてもよい。これらの表示態様は、オペレータが肉眼で識別可能であればよい。例えば、打撃が未完了の作業指標50Aを「赤色」、打撃が完了した作業指標50Bを「黄色」として表示する。このとき表示制御部31は、作業指標50Aに順番を付与しておき、測定完了通知を受信する度に測定中の作業指標の表示態様を変更するようにしてもよい。又は、撮像装置23が撮像した画像データに基づきロッド5の位置を画像認識し、測定が完了した作業指標50を判別するようにしてもよい。
【0034】
オペレータ102は、作業指標50が表示された表示部25を介して切羽4を視認する。このとき、オペレータ102から見て、作業指標50が切羽4の実像に重ねられた状態となる。これにより、図5中破線で示すように、オペレータ102は、表示部25を介して、切羽4上の打撃の目標位置100を一目で判別することができるので、ロッド5の位置調整を効率よく行うことができる。また、作業指標50A,50Bを異なる表示態様で表示する場合には、作業が未完了の位置を判別しやすくすることができる。
【0035】
第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)建設機械2のオペレータ102と作業対象物である切羽4との間に位置する透明性を有する表示部25と、切羽4の3次元モデルデータ36、切羽4に設定される複数の標準指標12の標準位置データ37、及び建設機械2の作業に用いる作業指標50の作業指標データ38が記憶されたモデルデータ記憶部22と、切羽4が存在する作業現場において複数の標準指標12を検出し、検出した標準指標12の位置と標準位置データ37とを位置合わせして、作業指標データ38に応じた作業指標50の表示位置を特定する位置特定部30と、オペレータ102に表示部25を介して視認される切羽4の実像に作業指標50を重ねるように表示部25に表示する表示制御部31と、を備える。
【0036】
上記構成によれば、作業指標50を表示部25に表示するため、作業指標50を切羽4に実際に投影する場合に比べて作業指標50の視認性を高めることができる。また、切羽4に設定される標準指標12の実像と、モデルデータ35に含まれる標準位置データ37とを位置合わせした上で作業指標50を表示するため、切羽4のうち適切な位置に作業指標を重ねることができる。
【0037】
(2)建設機械2の制御データ及び作業現場に設置された外部装置である計測装置9が検出したデータを外部データとして取得する外部データ取得部32をさらに備え、表示制御部31は、外部データに基づいて、作業指標50の表示態様を変更する。
【0038】
上記構成によれば、外部データに基づいて作業指標50の表示態様を変更するため、オペレータ102は、作業の進行状況を一目で認識することができる。
(3)作業指標50は、建設機械2の作業対象物である切羽4上の作業位置を示す指標である。
【0039】
上記構成によれば、オペレータ102は、作業指標を目標として作業を進めることができる。このため、作業計画に沿って作業を進めることができる。
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、表示システムの第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態では、オペレータの目の位置を測定して作業指標を表示する点で第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態と同様の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0040】
オペレータ室3には、オペレータ102の目の位置103を検出する検出装置51が設けられている。検出装置51は、オペレータ102の顔を認識可能な装置であればよい。検出装置51は、例えば、複数の赤外光線を対象物に照射する投影部と、対象物から反射した反射光を検出する赤外線カメラとを備えていてもよい。
【0041】
位置特定部30は、検出装置51の検出データに基づいて、オペレータ102の目の位置103を特定する。このとき、位置特定部30は、オペレータ102の目の位置103を、二次元座標(X,Y)として特定してもよく、三次元座標(X,Y,Z)として特定してもよい。このとき画像データの座標と、絶対座標系の座標とは予め関連付けられている。つまり、画像データの座標が特定できれば、絶対座標系の座標を特定することができる。
【0042】
表示制御部31は、位置特定部30が特定したオペレータ102の目の位置103に基づき、オペレータ102の目の位置103から見た画像データに変換する射影変換等の画像処理を行う。
【0043】
これにより、オペレータ102の身長が異なっても、目標位置100と作業指標50とのずれを抑制した画像が表示部25に表示される。
第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(3)に記載の効果に加え、以下の効果が得られる。
【0044】
(4)オペレータ102の目の位置103を検出する検出装置51をさらに備え、表示制御部31は、表示部25に表示する画像である作業指標50を、検出した目の位置103からみた画像に変換する。
【0045】
上記構成によれば、検出した目の位置103を基準として作業指標50の座標が変換されるため、オペレータ102の身長や座高に合わせた作業指標50を表示することができる。
【0046】
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、CIMデータであるモデルデータ35をモデルデータ記憶部22に記憶した。これに代えて若しくは加えて、作業現場に応じて、建築設計で用いられるBIM(Building Information Modeling)データをモデルデータ記憶部22に記憶し、これを作業指標の表示に用いてもよい。
【0047】
・上記各実施形態では、撮像装置23は、オペレータ室3に設けたが、表示部25が撮像範囲に含まれればこれ以外の位置に設けてもよい。又は、表示部25の絶対座標系の座標が特定可能である場合等には、撮像装置23を、表示部25が撮像範囲に含まれない位置に設置してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、投影装置11から切羽4に光を照射することで標準指標12を投影するようにした。これに代えて若しくは加えて、可視光や赤外光等を反射する反射材を切羽4に取り付けることによって標準指標12を示すようにしてもよい。
【0049】
・上記各実施形態では、絶対座標系での標準指標12の位置を表示座標系上の位置に変換する変換式を求め、この変換式を用いて作業指標データ38の位置を表示座標系の位置に変換した。これに代えて若しくは加えて、何らかの標準指標を検出して、表示部25の絶対座標系での位置を求めることで、作業指標50の表示部25での表示位置を特定するようにしてもよい。表示部25の絶対座標系での位置は、例えば、絶対座標系での位置が既知である標準指標12A~12Dを撮像装置23が撮像し、撮像装置23に対する標準指標12A~12Dの相対位置関係を求めることにより、位置特定部30が演算することができる。又は、表示部25に設けられた3軸地磁気センサや、標準指標12を撮像する撮像装置、表示部25に設けられ切羽4までの距離を測定するステレオカメラやToF方式のセンサユニット等を用いるか、又は撮像装置23と併用することによって特定してもよい。
【0050】
表示部25の絶対座標系の位置が特定されると、作業指標50の位置、表示部25の位置、オペレータ102の目の位置103が絶対座標系の座標として特定される。目の位置103は固定値であってもよい。
【0051】
図7に示すように、位置特定部30は、切羽4上の作業指標50とオペレータ102の目の位置103とを結ぶ直線L1と表示部25の表示面25Aとが重なる位置を、作業指標50の表示位置50Pとして特定する。
【0052】
・上記各実施形態では、透明性を有する表示部25に作業指標50を表示するようにした。表示部25は、透明性を有するディスプレイであれば、透明性を有する有機ELディスプレイに限定されるものではない。例えば、オペレータ室3のガラス窓であってもよい。
【0053】
例えば、図8に示すように、建設機械2に取り付けられた投影装置52によって表示部25の表示面25Aに画像を投影するようにしてもよい。この場合、表示面25Aに投影を表示可能な表面加工を施したり、又は表示面25Aに投影画像を鮮明に表示するためのシートを取り付けたりしてもよい。
【0054】
・上記各実施形態では、作業指標として、弾性波分布を調べるための打撃の目標位置を示したがこれに限定されない。
例えば図9に示すように、支保工を設ける計画位置を作業指標105として表示部25に表示するようにしてもよい。ロックボルトの打設位置を作業指標106として表示するようにしてもよい。また、コンクリートの吹き付け位置を作業指標107として表示してもよい。また、覆工コンクリートを打設する計画位置を作業指標108として表示するようにしてもよい。さらに、作業指標として、掘削を行う計画面を作業指標109(発破掘削面114との対比:建築限界確認)として表示するようにしてもよい。図9に例示するような線状の作業指標を表示する場合には、作業指標上の複数の点と標準指標12との位置との相対位置関係に基づいて、作業指標105~109の表示部25上での表示位置を特定してもよい。また、発破装薬位置を作業指標として表示したり、表示部25上での表示位置を特定したりしてもよい。
【0055】
・上記各実施形態では、作業指標として、トンネル1の切羽4に作業指標を表示したが、他の表示対象物に表示するようにしてもよい。例えば、建設物に作業指標を表示するようにしてもよい。
【0056】
図10は、鋼桁110に、床版111を設置する作業を模式的に示している。この態様において、モデルデータ記憶部22には、BIM/CIMデータが記憶されている。鋼桁110及び床版111には、投影装置11等から光を照射することにより、標準指標12が投影されている。又は可視光等を反射する反射材によって標準指標12を設置するようにしてもよい。位置特定部30は、標準指標12の位置を特定して、作業指標112の表示位置を特定する。表示制御部31は、表示部25のうち特定された表示位置に作業指標112を表示する。また、床版111にも作業指標113が表示する。作業指標113は、床版111を撮像した画像データを用いて画像認識し、床版111の端面等の実像に重ねて表示するようにしてもよいし、可視光等を反射する反射材によって構成されていてもよい。オペレータは、鋼桁110の作業指標112と床版111の作業指標113とを位置合わせしながら図示しない建設機械を操作して、床版111を鋼桁110に設置する。
【0057】
また、別の態様として、支持層に杭を打設する際の杭孔の位置を、作業指標として支持層の実像に重ねて表示部25に表示してもよい。この場合、撮像装置23により、支持層に表示された標準指標を撮像して、標準指標の位置を特定するようにしてもよい。表示制御部31は、標準指標の位置に基づいて杭孔を打設する目標位置を特定し、目標位置に重ねるように作業指標を表示するようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、作業指標を表示部25に表示した。これに加えて、表示システム20が作業現場のオペレータや他の作業者などの作業員に関する情報を取得する外部データ取得部32を備え、表示制御部31が、オペレータや他の作業者などの作業員に関する情報を表示部25に表示してもよい。この態様において、外部データ取得部32は、作業員情報取得部に対応する。
【0059】
具体的には、図11に示すように、オペレータや他の作業者などの作業員に装着され生体情報を測定可能なセンサ等から取得した作業員生体情報120を表示部25に表示するようにしてもよい。また、外部データ取得部32は、作業環境を測定するセンサから検出データを取得しても良い。作業環境データには、温度センサ、湿度センサ、及び粉じん量を検出するセンサから取得したデータが含まれる。表示制御部31は、作業環境データに基づく検出情報121を表示部25に表示するようにしてもよい。これによれば、オペレータが、建設機械2を用いた作業を進めながら、作業現場のオペレータや他の作業者などの作業員の状態を把握することができる。
【符号の説明】
【0060】
2…建設機械、4…作業対象物としての切羽、11…投影装置、20…表示システム、21…制御部、22…モデルデータ記憶部、23…撮像装置、25…表示部、12,12A~12D…標準指標、50,50A,50B,106~109,112,113…作業指標。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11