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特開2022-177588樹脂成形装置、被覆体巻き機構及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177588
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、被覆体巻き機構及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20221124BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20221124BHJP
   B29B 11/14 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/02
B29B11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083955
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】安井 隼人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 亮輔
【テーマコード(参考)】
4F201
4F206
【Fターム(参考)】
4F201AG03
4F201BA03
4F201BC02
4F201BC12
4F201BC22
4F201BD04
4F201BM05
4F201BM13
4F206AC01
4F206AC03
4F206AL15
4F206AL16
4F206AM32
4F206JA02
4F206JF01
4F206JF02
4F206JF06
4F206JF23
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM04
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】樹脂成形装置に樹脂材料に被覆体を巻く機能を付与する。
【解決手段】樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻く被覆体巻き機構8と、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを用いて樹脂成形する樹脂成形機構10とを備える。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構と、
前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形機構とを備える、樹脂成形装置。
【請求項2】
前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料に対して周方向の両側から前記被覆体を変形させて、前記樹脂材料の外側周面に前記被覆体を巻くものである、請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記樹脂材料は円柱状をなすものであり、
前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料に対して周方向の両側から前記被覆体を変形させて、前記樹脂材料の外側周面に前記被覆体を沿わせる変形部と、前記変形部により前記被覆体が沿った状態の前記樹脂材料を前記被覆体とともに中心軸周りに回転させる回転部とを有する、請求項1又は2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料が位置決めされて載置される載置部を有し、前記載置部に前記樹脂材料が載置された状態で前記変形部により前記被覆体を前記樹脂材料に沿わせる、請求項3に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記変形部は、前記樹脂材料の外側周面に沿った曲面状の接触面を有しており、前記接触面が前記樹脂材料の外側周面に沿って移動することにより、前記被覆体を前記樹脂材料の外側周面に沿わせる、請求項3又は4に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記被覆体は、シート状をなすものであり、
前記被覆体の幅寸法は、前記樹脂材料の外側周面の軸方向全体を覆うことができる寸法であり、
前記被覆体の長さ寸法は、前記樹脂材料の外側周面を1巻き以上できる寸法である、請求項1乃至5の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を前記樹脂成形機構に搬送する樹脂材料搬送機構をさらに備える、請求項1乃至6の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記樹脂成形機構は、ポットが形成された成形型を有し、
前記被覆体は、前記ポットの内面に密着するものである、請求項1乃至7の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
前記被覆体は、前記ポット内で溶融又は軟化した前記樹脂材料から加わる内圧によって前記ポットの内面に密着する、請求項8に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
前記被覆体は、成形温度において溶融及び熱分解しない材料から構成されている、請求項1乃至9の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項11】
前記被覆体は、樹脂成形後において、成形型のカル部又はランナ部に残留し、当該カル部又はランナ部に残留した樹脂とともに廃棄される、請求項1乃至10の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項12】
被覆体が巻かれた状態の樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形装置に用いられるものであって、
樹脂成形前において前記樹脂材料の外側周面に前記被覆体を1巻き以上巻く、被覆体巻き機構。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、被覆体巻き機構及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を用いて樹脂成形を行う樹脂成形方法としては、成形型のポット内に収容した樹脂材料をプランジャによって成形型のキャビティに押し出すことにより、成形対象物を樹脂封止するものがある。
【0003】
ここで、ポット内に収容される樹脂材料は、搬送時やポットへの装着時に樹脂粉塵が発生してしまう。この樹脂粉塵は、封止設備に悪影響を与えるだけでなく清掃作業も必要となる。このため、樹脂材料から発生する粉塵を防止するものとして、特許文献1に示す樹脂ペレットが考えられている。この樹脂ペレットは、表面に糊粉やワックスからなる発塵防止膜を成膜して、樹脂粉塵の発生を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-291242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポット内の樹脂材料をプランジャによってキャビティに押し出す際に、溶融した樹脂材料がポットの内面とプランジャとの摺動部に侵入し、それによって残滓である樹脂カスが発生してしまう。
【0006】
この問題に対して本願発明者は、ポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体を配置することにより、溶融した樹脂材料がポットの内面とプランジャとの摺動部に侵入しにくくして、樹脂カスを低減することを考えている。
【0007】
そして、ポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体を配置する構成として、ポットに収容する前に樹脂材料に被覆体を巻き付け、被覆体が巻かれた状態の樹脂材料をポットに収容することを考えている。
【0008】
そこで本発明は、ポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体を配置するための具体的構成を実現するためになされたものであり、樹脂成形装置において樹脂材料に被覆体を自動的に巻く機能を付与することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る樹脂成形装置は、樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構と、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このように構成した本発明によれば、樹脂成形装置において樹脂材料に被覆体を自動的に巻く機能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形装置の樹脂成形機構の構成を模式的に示す断面図である。
図2】同実施形態の樹脂材料を取り囲む被覆体の一例を示す模式図である。
図3】同実施形態の樹脂成形装置の機能ブロック図である。
図4】同実施形態の被覆体巻き機構の構成を模式的に示す斜視図である。
図5】同実施形態の被覆体巻き機構の動作を模式的に示す図である。
図6】同実施形態の樹脂材料搬送機構の構成を模式的に示す斜視図である。
図7】同実施形態の第1搬送部及び第2搬送部の収容部の開口部の構成を模式的に示す断面図である。
図8】同実施形態の搬送収容部の構成を模式的に示す樹脂材料をポットに収容する前の(a)図6(d)の矢印Aから見た断面図、(b)図6(d)の矢印Bから見た断面図である。
図9】同実施形態の搬送収容部の構成を模式的に示す樹脂材料をポットに収容した後の(a)図6(d)の矢印Aから見た断面図、(b)図6(d)の矢印Bから見た断面図である。
図10】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための図である。
図11】同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0013】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構と、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形機構とを備えることを特徴とする。
【0014】
この樹脂成形装置であれば、樹脂材料の外側周面に被覆体を巻く被覆体巻き機構を備えているので、樹脂成形装置において樹脂材料に被覆体を自動的に巻く機能を付与することができ、被覆体が巻かれた状態の樹脂材料を用いて樹脂成形することができる。その結果、樹脂成形時にポットの内面と樹脂材料との間に樹脂材料を取り囲む被覆体が配置されることになり、樹脂材料がポットの内面に触れないようにでき、ポットの内面に付着する樹脂カスを低減することができる。また、被覆体により樹脂材料が取り囲まれているので、たとえモールドアンダーフィル(MUF)用樹脂やクリアレジンなどの高流動樹脂であったとしても、ポットの内面とプランジャとの摺動部に溶融した樹脂材料が侵入しにくくなり、摺動部に侵入した樹脂材料によって発生する樹脂カスを低減することができる。このように樹脂カスを低減することにより、次の樹脂成形へのコンタミネーションを低減でき樹脂成形品の品質を向上することができる。また、樹脂カスによる設備トラブルを防止でき、清掃作業の頻度も低減できる。さらに、被覆体を用いることにより、プランジャの摺動抵抗の増大を防止できるので、樹脂成形品の品質の安定化を実現できるとともに、ポット及びプランジャの長寿命化も実現できる。
【0015】
樹脂材料に対して被覆体を巻く工程を簡単にするためには、前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料に対して周方向の両側から前記被覆体を変形させて、前記樹脂材料の外側周面に前記被覆体を巻くものであることが望ましい。
【0016】
前記樹脂材料が円柱状をなす場合において、前記被覆体巻き機構の具体的な実施の態様としては、前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料に対して周方向の両側から前記被覆体を変形させて、前記樹脂材料の外側周面に前記被覆体を沿わせる変形部と、前記変形部により前記被覆体が沿った状態の前記樹脂材料を前記被覆体とともに中心軸周りに回転させる回転部とを有することが望ましい。
【0017】
前記被覆体巻き機構は、前記樹脂材料が位置決めされて載置される載置部を有し、前記載置部に前記樹脂材料が載置された状態で前記変形部により前記被覆体を前記樹脂材料に沿わせることが望ましい。
この構成であれば、変形部によって樹脂材料の外側周面に被覆体を沿わせる動作を安定して行うことができる。
【0018】
前記変形部は、前記樹脂材料の外側周面に沿った曲面状の接触面を有しており、前記接触面が前記樹脂材料の外側周面に沿って移動することにより、前記被覆体を前記樹脂材料の外側周面に沿わせることが望ましい。
この構成であれば、変形部が曲面状の接触面を有しているので、被覆体を樹脂材料の外側周面に隙間なく沿わせることができる。
【0019】
前記被覆体は、シート状をなすものであり、前記被覆体の幅寸法は、前記樹脂材料の外側周面の軸方向全体を覆うことができる寸法であり、前記被覆体の長さ寸法は、前記樹脂材料の外側周面を1巻き以上できる寸法であることが望ましい。
この構成であれば、樹脂材料の外側周面全体を被覆体で覆うことができ、ポットの内面に付着する樹脂カスをより一層低減することができる。
【0020】
また、本発明の樹脂成形装置は、前記被覆体が巻かれた状態の前記樹脂材料を前記樹脂成形機構に搬送する搬送機構をさらに備えることが望ましい。
この構成であれば、被覆体巻き機構による被覆体の巻き動作から樹脂成形機構による樹脂成形動作までを自動的に行うことができる。
【0021】
前記樹脂成形機構は、ポットが形成された成形型を有し、前記被覆体は、前記ポットの内面に密着するものであることが望ましい。このように被覆体がポット内面に密着することによって、被覆体がプランジャの先端面の周縁部を覆い、ポットの内面とプランジャとの摺動部を塞ぐ構成となり、溶融した樹脂材料が摺動部に侵入しにくくなる。
【0022】
被覆体がポットの内面に密着する具体的な構成としては、前記被覆体は、前記ポット内で溶融又は軟化した前記樹脂材料から加わる内圧によって前記ポットの内面に密着するものであることが望ましい。ここで、溶融又は軟化した樹脂材料から加わる内圧は、プランジャによる注入動作中において、溶融又は軟化した樹脂材料がプランジャに押されて周方向に広がる、又は、溶融又は軟化した樹脂材料がプランジャ及び成形型のカル部から押されて周方向に広がることにより生じる。この構成であれば、被覆体をポットに配置する際には、ポットの内面に密着させる必要がないので、被覆体をポット内に配置しやすくできる。
【0023】
被覆体又は被覆体を構成する成分が、溶融した樹脂材料とともにキャビティに導入されないようにするためには、前記被覆体は、成形温度において溶融及び熱分解しない材料から構成されていることが望ましい。
【0024】
被覆体は溶融した樹脂材料とともにポットから押し出されるものの、成形型のキャビティには導入されずに、樹脂成形後において、成形型のカル部又はランナ部に残留する。このため、前記被覆体は、樹脂成形後において、カル部又はランナ部に残留した樹脂とともに廃棄されることになる。
【0025】
また、本発明に係る被覆体巻き機構は、被覆体が巻かれた状態の樹脂材料を用いて樹脂成形する樹脂成形装置に用いられるものであって、樹脂成形前において前記樹脂材料の外側周面に前記被覆体を1巻き以上巻くことを特徴とする。
【0026】
さらに、上述した樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
【0027】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0028】
<樹脂成形装置100の基本構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、電子部品Wxが接続された成形対象物Wを、樹脂材料Jを用いたトランスファ成形によって樹脂成形するものである。
【0029】
ここで、成形対象物Wとしては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、配線基板、リードフレーム等であり、配線の有無は問わない。また、樹脂成形のための樹脂材料Jは、例えば熱硬化性樹脂を含む複合材料であり、樹脂材料Jの形態は、例えば円柱状をなすタブレット状の固形である。また、成形対象物Wの上面に接続される電子部品Wxとしては、例えばベアチップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子又はこれらの電子素子の少なくとも1つが樹脂封止された状態のものである。
【0030】
具体的に樹脂成形装置100は、図1に示すように、樹脂材料Jを用いて樹脂成形する樹脂成形機構10を備えており、当該樹脂成形機構10は、樹脂材料Jを収容するポット21が形成された一方の成形型2(以下、下型2)と、当該下型2に対向して設けられ、樹脂材料Jが注入されるキャビティ31が形成された他方の成形型3(以下、上型3)と、下型2及び上型3を型締めする型締め機構(不図示)とを有する。下型2は、型締め機構により昇降する可動盤(不図示)に下型保持部材4を介して設けられている。上型3は、上部固定盤(不図示)に上型保持部材(不図示)を介して設けられている。なお、下型保持部材4は、例えば、ヒータープレートや断熱プレート等を有している。
【0031】
下型2には、例えば複数のポット21が下型2の上面に開口して形成されている。このポット21は、下型2に形成された貫通孔2Hにより構成されており、当該貫通孔2Hは、例えば超硬合金製や鋼材製の円筒状をなすポット部材20を下型2に嵌めることにより形成されている。ポット21は、樹脂材料Jの形状に対応した形状をなしており、本実施形態では、樹脂材料Jが円柱状であることから、ポット21もそれに合わせて断面円形状をなすものである。その他、下型2の上面には、成形対象物Wが装着される装着部22が形成されている。
【0032】
また、上型3の下面(型面)には、下型2の装着部22に装着された成形対象物Wの電子部品Wxを収容するキャビティ31が形成されている。また、上型3の下面には、下型2のポット21に対向する部分に凹部であるカル部32が形成されるとともに、当該カル部32とキャビティ31とを接続するランナ部33が形成されている。
【0033】
そして、樹脂成形機構10は、下型2の複数のポット21に収容された樹脂材料Jを押し出す複数のプランジャ51を有するプランジャユニット5と、プランジャ51がポット21内で進退移動するようにプランジャユニット5を移動させる駆動機構6とを備えている。
【0034】
プランジャユニット5は、下型2の下方に設けられており、プランジャ51が、下型2の貫通孔2Hに挿入して設けられている。そして、プランジャ51の上面は、下型2のポット21の底面を構成する。また、プランジャ51は、ポット21において加熱されて溶融した樹脂材料Jをポット21から上型3に向かって押圧するものである。
【0035】
駆動機構6は、プランジャユニット5を下型2に対して相対移動させるものであり、これにより、プランジャ51はポット21内において進退する(昇降する)。本実施形態の駆動機構6は、プランジャユニット5に対して下型2とは反対側(プランジャユニット5の下側)に設けられている。ここで、駆動機構6としては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0036】
そして、型締め機構により下型2及び上型3を型締めした状態でプランジャユニット5を上昇させると、樹脂成形機構10に備えられたヒータ(不図示)の熱により溶融した樹脂材料Jがキャビティ31に注入される。これにより、キャビティ31内に収容された成形対象物Wの電子部品Wxが樹脂封止される。
【0037】
<樹脂成形品Pの製造方法の特徴部分>
次に、上記の樹脂成形装置100を用いた樹脂成形品Pの製造方法の特徴部分について説明する。
【0038】
図1に示すように、下型2のポット21に樹脂材料Jを収容する場合に、ポット21の内面と樹脂材料Jとの間に、樹脂材料Jがポット21の内面に接触しないように被覆体7を配置する。
【0039】
この被覆体7は、ポット21内において樹脂材料Jが押し出される方向を開放しつつ樹脂材料Jの全周を取り囲むものである。具体的に被覆体7は、ポット21内において樹脂材料Jの上面を覆うことなく樹脂材料Jの外側周面の全周を取り囲む。
【0040】
この被覆体7は、1回の樹脂成形ごとに廃棄される消耗材であり、例えば、紙製、樹脂製、セルロース製、織布製、不織布製、又はこれらの複合材製のものを挙げることができる。なお、複合材としては、フィラーを含有した樹脂フィルム、紙に例えば10μm以下の耐熱フィルム等の樹脂フィルムをラミネートしたもの、紙に樹脂をコーティング(塗布)したもの、紙に樹脂を含浸させたもの、パルプと樹脂の繊維を混ぜて紙として抄いたもの等が考えられる。これら被覆体7は、樹脂材料Jによって樹脂封止をするための成形温度(例えば170℃程度)において溶融及び熱分解しない材料から構成されている。
【0041】
具体的に被覆体7は、図2に示すように、例えば矩形状をなすシート状のものであり、樹脂材料Jの外側周面に巻き付けられた状態でポット21に配置される。ここで、図2の(d)展開図に示すように、被覆体7の幅寸法L1は、樹脂材料Jの外側周面の軸方向全体を覆う寸法であり、被覆体7の長さ寸法L2は、樹脂材料Jの外側周面の周りを1巻き以上できる寸法である。例えば、被覆体7の幅寸法L1は、樹脂材料Jの幅寸法よりも0.5~3mm程度長く、被覆体7の長さ寸法L2は、樹脂材料Jの外周を1周とした場合、1.1~1.5周分である。このようにシート状の被覆体7を樹脂材料Jに巻く構成にすることで、被覆体7の構成を簡単にでき、加工コストを低減することができる。
【0042】
また、被覆体7の厚みは、ポット21の内面とプランジャ51とのクリアランス(隙間)よりも大きく、被覆体7自体がポット21の内面とプランジャ51と摺動部に侵入しないように構成されている。例えばクリアランスが10μmに対して、被覆体7の厚みは50μmである。
【0043】
そして、被覆体7は、ポット21の内面に密着するように構成されている。具体的に被覆体7は、ポット21内で溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によって被覆体7がポット21の内面に密着する構成としている。本実施形態では、被覆体7を樹脂材料Jに巻くとともに当該被覆体7を周方向に拘束しない構成としており、樹脂材料Jと被覆体7とが密着しておらず、これらの間に隙間が生じ得る状態である。これにより、被覆体7は、溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によって径方向に拡がりやすく、ポット21の内面に密着しやすくなる。なお、溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧とは、主として、プランジャ51による注入動作中において、溶融又は軟化した樹脂材料Jがプランジャ51に押されて周方向に広がる、又は、溶融又は軟化した樹脂材料Jがプランジャ51及び上型3のカル部32から押されて周方向に広がることにより生じる圧力である。
【0044】
このように被覆体7がポット21の内面に密着する構成とすることで、被覆体7がポット21の内面とプランジャ51との摺動部を塞ぐ構成となり、溶融した樹脂材料Jが摺動部により一層侵入しにくくなる。また、被覆体7は、ポット21内で溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によってポット21の内面に密着するものであることから、被覆体7をポット21に配置する際にポット21の内面に密着させる必要がなく、被覆体7をポット21内に配置しやすくできる。
【0045】
<樹脂成形品Pの製造方法を自動化する構成>
上述した樹脂成形品Pの製造方法を自動化する構成として、本実施形態の樹脂成形装置100は、図3図6に示すように、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻く被覆体巻き機構8と、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを樹脂成形機構10に搬送する樹脂材料搬送機構9とをさらに備えており、樹脂成形機構10は、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを用いて樹脂成形するものである。なお、図3に示すように、被覆体巻き機構8、樹脂材料搬送機構9及び樹脂成形機構10は、制御部COMにより制御される。
【0046】
<被覆体巻き機構8>
被覆体巻き機構8は、図4及び図5に示すように、円柱状の樹脂材料Jに対して周方向の両側から被覆体7を変形させて、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻くものである。
【0047】
具体的に被覆体巻き機構8は、樹脂材料Jが位置決めされて載置される載置部81と、載置部81に載置された樹脂材料Jに対して周方向の両側から被覆体7を変形させて、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を沿わせる変形部82と、変形部82により被覆体7が沿った状態の樹脂材料Jを被覆体7とともに中心軸周りに回転させる回転部83とを有している。
【0048】
載置部81は、樹脂材料供給部11(図4参照)から樹脂材料Jが供給されて、当該樹脂材料Jを位置決めするものである。本実施形態の載置部81は、樹脂材料Jの中心軸が水平方向に沿った横倒し状態において、当該中心軸がずれないように位置決めするものである。具体的に載置部81は、横倒し状態の樹脂材料Jが嵌って固定される形状の載置面81aを有している。本実施形態の載置面81aは、断面V字状をなすものであるが、その他、断面多角形状(断面が多角形の内側の形状)をなすものであっても良いし、断面部分円形状(断面が円の内側の一部の形状)をなすものであっても良い。
【0049】
変形部82は、樹脂材料Jの外側周面に沿った曲面状の接触面82aを有しており、接触面82aが樹脂材料Jの外側周面に沿って移動することにより、被覆体7を樹脂材料Jの外側周面に沿わせるものである。具体的に接触面82aは、内部が空洞である円筒の内側の一部の形状である。
【0050】
この変形部82は、樹脂材料Jを両側から挟むように2つ設けられている。具体的に2つの変形部82は、横倒し状態の樹脂材料Jの中心軸に直交する方向に沿って設けられている。これら2つの変形部82それぞれは、把持アーム84によって上下移動可能に設けられている。また、2つの変形部82は、把持アーム84によって、互いの距離を拡大縮小可能に構成されている。さらに、各変形部82は、把持アーム84に対して回転可能に設けられており、例えば、樹脂材料Jの外側周面に沿って移動しつつ把持アーム84に対して回転する。なお、把持アーム84は駆動部85によって上下方向及び拡大縮小方向に移動する。駆動部85としては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0051】
図5(a)に示すように、把持アーム84によって変形部82が上昇位置とされた状態で、載置部81に載置された樹脂材料Jの上部に展開状態の被覆体7が配置される。そして、図5(b)に示すように、把持アーム84によって変形部82を下降させると、変形部82が被覆体7を変形させて被覆体7を樹脂材料Jの外側周面に沿わせた状態とする。その後、把持アーム84によって2つの変形部82の距離を縮小させるとともに、把持アーム84を上昇させる。これにより、図5(c)に示すように、樹脂材料Jが載置部81から持ち上がるとともに、接触面82aが樹脂材料Jの外側周面に沿って移動して、被覆体7が樹脂材料Jの外側周面の全周を覆うことになる。また、この状態において被覆体7の一端部は、被覆体7の他端部の内側に位置しており、被覆体7の他端部は、2つの変形部82の間から下側に延びた状態となる。
【0052】
回転部83は、変形部82により被覆体7が沿った状態の樹脂材料Jを被覆体7とともに中心軸周りに回転させて、被覆体7の全体を樹脂材料Jの外側周面に隙間なく巻くものである。
【0053】
この回転部83は、図5(d)に示すように、2つの変形部82により樹脂材料Jが載置部81から持ち上げられた状態において、被覆体7に接触して、樹脂材料J及び被覆体7を中心軸周りに回転させて被覆体7の全体を樹脂材料Jに巻くものである。ここでは、回転部83は、持ち上げられた樹脂材料Jの上部に接触する位置に設けられている。また、回転部83は、モータ及び当該モータにより回転されるローラを用いて構成されている。
【0054】
具体的に回転部83は、被覆体7の他端部(2つの変形部82の間から下側に延びた部分)を樹脂材料Jの外側周面に沿わせるように被覆体7及び樹脂材料Jを回転させ、図5(d)では、被覆体7及び樹脂材料Jを時計回りに回転させる。これにより、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7が1巻き以上巻かれた状態となり、樹脂材料Jが被覆体7により包装される。以下において、外側周面に被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを「被覆済み樹脂材料J」という。
【0055】
また、被覆体巻き機構8は、図4及び図6に示すように、被覆済み樹脂材料Jを搬送機構9に押し出して受け渡すプッシュ部86を有している。このプッシュ部86は、2つの変形部82に掴まれて横倒し状態の被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って押し出すことにより搬送機構9に受け渡すものである。具体的にプッシュ部86は、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材861と、当該プッシュ部材861を進退移動させる駆動部862とを有している。なお、駆動部862としては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
【0056】
プッシュ部材861は、2つの変形部82に干渉すること無く、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えばT字形状をなすものである(図4参照)。このT字形状のプッシュ部材861は、図5(e)に示すように、樹脂材料Jにおける2つの変形部82の上側部分を押すとともに、2つの変形部82の間の部分を押す。
【0057】
<樹脂材料搬送機構9>
樹脂材料搬送機構9は、図6に示すように、被覆済み樹脂材料Jを樹脂成形機構10に搬送して、被覆済み樹脂材料Jを下型2のポット21に収容するものである。
【0058】
本実施形態の樹脂材料搬送機構9は、図6に示すように、被覆体巻き機構8から被覆済み樹脂材料Jを受け取る第1搬送部91と、第1搬送部91から被覆済み樹脂材料Jを受け取る第2搬送部92と、第2搬送部92から被覆済み樹脂材料Jを受け取り、ポット21に収容する搬送収容部93とを有している。
【0059】
なお、図6において、(a)は、被覆体巻き機構8から第1搬送部91への受け渡し状態を示し、(b)は、第1搬送部91から第2搬送部92への受け渡し状態を示し、(c)は、第2搬送部92から搬送収容部93への受け渡し状態を示し、(d)は、搬送収容部93からポット21への受け渡し状態を示している。
【0060】
第1搬送部91は、被覆体巻き機構8から第2搬送部92に被覆済み樹脂材料Jを搬送するものであり、被覆済み樹脂材料Jを収容する1又は複数の収容部91aを有している。この収容部91aは、樹脂材料Jが円柱状であることから、それに合わせて断面円形状をなす収容空間である。この収容部91aは、第1収容部材911に形成されている。第1搬送部91の収容部91aは、図7に示すように、第1収容部材911において、互いに対向する面に開口するように形成されている。そして、第1収容部材911が被覆体巻き機構8の側方に位置した状態(図6(a)参照)で、一方の面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが入られる。また、第1収容部材911は、図示しない移動機構によって第2搬送部92への受け渡し位置に移動し(図6(b)参照)、この状態で、他方の面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが出される。
【0061】
ここで、図7に示すように、第1搬送部91の収容部91aにおいて、被覆済み樹脂材料Jが入れられる側の収容部91aの端部である開口部の内径は、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている。ここでは、開口部にはテーパ面91bが形成されている。この構成により、被覆済み樹脂材料Jを収容する際に被覆体7が開口部に引っ掛かりにくくなり、スムーズに収容部91aに収容することができる。また、被覆体7の端が折れ曲がって樹脂材料Jの外側周面において覆われていない部分が生じることを防ぐことができる。
【0062】
また、第1搬送部91は、図6(b)に示すように、第1収容部材911の収容部91aから第2搬送部92に被覆済み樹脂材料Jを押し出して受け渡すプッシュ部912を有している。このプッシュ部912は、被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って押し出すことにより第2搬送部92に受け渡すものである。具体的にプッシュ部912は、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材912aと、当該プッシュ部材912aを進退移動させる駆動部(不図示)とを有している。プッシュ部材912aは、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えば、平板形状をなすものである。また、第1収容部材911には、この平板形状のプッシュ部材912aにより樹脂材料J及び被覆体7の両方を押す出すことができるスリット911Sが形成されている。また、このプッシュ部材912aにより複数の被覆済み樹脂材料Jが一括して第2搬送部92に受け渡される。
【0063】
第2搬送部92は、図6に示すように、第1搬送部91から搬送収容部93に被覆済み樹脂材料Jを搬送するものであり、第1搬送部91と同様に、被覆済み樹脂材料Jを収容する1又は複数の収容部92a(図7参照)を有している。この収容部92aは、樹脂材料Jが円柱状であることから、それに合わせて断面円形状をなす収容空間である。この収容部92aは、第2収容部材921に形成されている。第2搬送部92の収容部92aは、第2収容部材921において、一方の面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが出し入れされる。
【0064】
ここで、図7に示すように、第2搬送部92の収容部92aにおいて、被覆済み樹脂材料Jが入れられる側の収容部92aの端部である開口部の内径は、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている。ここでは、開口部にはテーパ面92bが形成されている。この構成により、被覆済み樹脂材料Jを収容する際に被覆体7が開口部に引っ掛かりにくくなり、スムーズに収容部92aに収容することができる。また、被覆体7の端が折れ曲がって樹脂材料Jの外側周面において覆われていない部分が生じることを防ぐことができる。
【0065】
また、第2搬送部92は、第2収容部材921の収容部92aから第2搬送部92に被覆済み樹脂材料Jを押し出して受け渡すプッシュ部922を有している。このプッシュ部922は、被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って上方に押し出すことにより搬送収容部93に受け渡すものである。ここでは、搬送収容部93は、第2搬送部92の上部に設けられており、第2搬送部92は水平状態で第1搬送部91から樹脂材料Jを受け取り(図6(b)参照)、90度回転した起立状態で搬送収容部93に樹脂材料Jを受け渡す(図6(c)参照)。なお、第2搬送部92の回転は、モータ等の駆動部(不図示)により行うことができる。
【0066】
具体的にプッシュ部922は、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材922aと、当該プッシュ部材922aを進退移動させる駆動部922bとを有している。プッシュ部材922aは、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えば、平板形状をなすものである。また、第2収容部材921には、第1収容部材911と同様に、平板形状のプッシュ部材922aにより樹脂材料J及び被覆体7の両方を押す出すことができるスリット(不図示)が形成されている。また、このプッシュ部材922aにより複数の被覆済み樹脂材料Jが一括して搬送収容部93に受け渡される。
【0067】
搬送収容部93は、図6に示すように、第2搬送部92からポット21に被覆済み樹脂材料Jを搬送して投入するものであり、第1搬送部91と同様に、被覆済み樹脂材料Jを収容する1又は複数の収容部93a(図8図9参照)を有している。この収容部93aは、樹脂材料Jが円柱状であることから、それに合わせて断面円形状をなす収容空間である。この収容部93aは、第3収容部材931に形成されている。搬送収容部93の収容部93aは、第3収容部材931において、下面に形成された開口から被覆済み樹脂材料Jが出し入れされる。また、第3収容部材931には、図8(b)及び図9(b)に示すように、収容部93aに収容された被覆体7及び樹脂材料Jが落下しないように一時的に保持する保持シャッタ932が設けられている。なお、保持シャッタ932を設ける位置は、収容部93aに対して被覆体7及び樹脂材料Jを保持できる位置であればよい。さらに、第3収容部材931は、図示しない移動機構によってポット21への受け渡し位置(ここでは収容部93a及びポット21が上下に並ぶ位置)に移動する(図6(d)、図8図9参照)。
【0068】
ここで、図8及び図9に示すように、搬送収容部93の収容部93aにおいて、被覆済み樹脂材料Jが押して入れられる側の収容部93aの端部である開口部の内径は、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている。ここでは、開口部にはテーパ面93bが形成されている。この構成により、被覆済み樹脂材料Jを収容する際に被覆体7が開口部に引っ掛かりにくくなり、スムーズに収容部93aに収容することができる。また、被覆体7の端が折れ曲がって樹脂材料Jの外側周面において覆われていない部分が生じることを防ぐことができる。
【0069】
また、搬送収容部93は、第3収容部材931の収容部93aからポット21に被覆済み樹脂材料Jを押し出して受け渡すプッシュ部933を有している。このプッシュ部933は、被覆済み樹脂材料Jを中心軸方向に沿って下方に押し出すことによりポット21に投入するものである。つまり、収容部93aは、開口側に向かうに連れて大きくなるように構成されている開口部から樹脂材料Jが出し入れされる。ここでは、搬送収容部93の収容部93aをポット21の上方に位置させて、プッシュ部933により被覆体7及び樹脂材料Jの両方を下方に押して、被覆済み樹脂材料Jをポット21に収容する。なお、プッシュ部933により被覆済み樹脂材料Jをポット21に収容する際には、保持シャッタ932を開ける(図9(b)参照)。なお、図9(b)では、保持シャッタ932がポット21(又は収容部93a)の配列方向に直交する方向に移動する構成であるが、これ以外の方向(例えばポット21(又は収容部93a)の配列方向等)に移動する構成であっても良い。
【0070】
具体的にプッシュ部933は、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すプッシュ部材933aと、当該プッシュ部材933aを進退移動させる駆動部(不図示)とを有している。プッシュ部材933aは、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる形状であり、例えば、平板形状をなすものである。詳細には、プッシュ部材933aは、ポット21毎に分かれた平板形状をなすプッシュ端部933a1を有し、複数のプッシュ端部933a1の上部を互いに連結した形状であり、各ポット21に対して樹脂材料J及び被覆体7の両方を押し出すことができる。また、第3収容部材931には、平板形状のプッシュ端部933a1により、樹脂材料J及び被覆体7の両方を押す出すことができるスリット933s(図8図9参照)が形成されている。また、このプッシュ部材933aにより複数の被覆済み樹脂材料Jが一括してポット21に受け渡される。
【0071】
また、図8及び図9に示すように、プッシュ端部933a1における被覆体7及び樹脂材料Jを押す面(下面)には、樹脂材料Jを押すための突出部933a2が形成されている。この構成により、プッシュ端部933a1の被覆体7及び樹脂材料Jを押す面(下面)を平坦面とした場合に比べて、被覆体7を傷付けにくくすることができる。なお、プッシュ端部933a1の被覆体7及び樹脂材料Jを押す面(下面)を平坦面とした場合には、プッシュ部材933aの形状が簡単で設計しやすく、コストを抑えることができる。
【0072】
<樹脂成形品Pの製造方法の全体工程>
次に、樹脂成形装置100の動作の一例を説明する。なお、本実施形態においては、樹脂成形装置100の動作、例えば被覆体巻き機構8の被覆体巻き動作、樹脂材料搬送機構9の樹脂材料の搬送動作、及び樹脂成形機構10の樹脂成形動作など、すべての動作や制御は制御部COM(図3参照)により行われる。
【0073】
<被覆体巻き動作>
図5(a)に示すように、被覆体巻き機構8の載置部81に樹脂材料供給部11から供給された樹脂材料Jが載置される。この状態で樹脂材料Jの上部に、図示しない搬送機構によって、展開状態の被覆体7が搬送される。
【0074】
そして、図5(b)に示すように、被覆体巻き機構8の2つの変形部82が下降して、被覆体7を樹脂材料Jの外側周面に沿って変形させる。次に、図5(c)に示すように、2つの変形部82の距離を縮小することにより、2つの変形部82が被覆体7とともに樹脂材料Jを持ち上げる。このとき、樹脂材料Jに巻かれた被覆体7が回転部83に接触する。
【0075】
この状態で、図5(d)に示すように、回転部83を回転させることによって、樹脂材料Jとともに被覆体7が回転し、被覆体7の全体が隙間なく樹脂材料Jに巻かれる。
【0076】
被覆体7が巻かれた後に、図5(e)に示すように、プッシュ部84が被覆体7及び樹脂材料Jを押して、第1搬送部91の収容部91aに被覆済み樹脂材料Jを受け渡す。第1搬送部91が複数の収容部91aを有する場合には、上記の動作を繰り返して、複数の収容部91aに被覆済み樹脂材料Jを受け渡す。
【0077】
<搬送動作>
第1搬送部91は、図6(a)の状態で被覆済み樹脂材料Jを受け取った後に、図6(b)に示すように、第2搬送部92への受け渡し位置に移動する。この受け渡し位置において、第1搬送部91の収容部91a及び第2搬送部92の収容部92aは、水平方向において互いに対向した状態である。そして、第1搬送部91のプッシュ部912は、収容部91aに収容された被覆済み樹脂材料Jを水平方向に押し出して、第2搬送部92の収容部92aに受け渡す。
【0078】
次に、第2搬送部92は、被覆済み樹脂材料Jを受け取った後に、図6(c)に示すように、90度回転して起立状態となる。この状態において、第2搬送部92の収容部92a及び搬送収容部93の収容部93aは、上下方向において互いに対向している。そして、第2搬送部92のプッシュ部922は、収容部92aに収容された被覆済み樹脂材料Jを上方に押し出して、搬送収容部93の収容部93aに受け渡す。搬送収容部93は、収容部93aに被覆済み樹脂材料Jを受け取った後に、保持シャッタ932を閉じて、被覆体7及び樹脂材料Jが落下しないように保持する。
【0079】
搬送収容部93は、被覆済み樹脂材料Jを受け取り保持した後に、図6(d)に示すように、ポット21への投入位置に移動する。この投入位置において、搬送収容部93の収容部93a及びポット21は、上下方向において互いに対向している(図8参照)。そして、搬送収容部93の保持シャッタ932が開くとともに、搬送収容部93のプッシュ部933は、収容部93aに収容された被覆済み樹脂材料Jのうち少なくとも被覆体7を押し出してポット21に収容する(図9参照)。本実施形態では、プッシュ部933より、被覆体7及び樹脂材料Jの両方を押し出すことにより、被覆体7を確実にポット21の奥まで押し込むことができる。本実施形態では、被覆体7の幅寸法L1が樹脂材料Jの幅寸法よりも0.5~3mm程度長くしているので、自重で落下する樹脂材料Jとともに、被覆体7も大きな損傷なく両方をポット21の底面まで入れることができる。以上の一連の動作により、被覆済み樹脂材料Jがポット21に収容される。
【0080】
<樹脂成形動作>
上記の動作によりポット21内に樹脂材料J及び被覆体7を収容するとともに、図10(a)に示すように、別の成形対象物搬送機構(不図示)を用いて下型2の装着部22に成形対象物Wを装着する。
【0081】
そして、図10(b)に示すように、上型3及び下型2を型締めして成形対象物Wを上型3と下型2とで挟み込む。このとき、成形対象物Wの電子部品Wxは、上型3のキャビティ31内に収容された状態となる。
【0082】
そして、ポット21内で溶融した樹脂材料Jをプランジャ51によって押し出す。これにより、図10(c)に示すように、溶融した樹脂材料Jは、上型3のカル部32及びランナ部33を通過してキャビティ31に導入される。
【0083】
そして、図11(a)に示すように、硬化に必要な所要時間だけ溶融した樹脂材料Jを加熱することによって、樹脂材料Jを硬化させて硬化樹脂を形成する。これにより、キャビティ31内の電子部品Wxとその周辺の基板とは、キャビティ31の形状に対応して成形された硬化樹脂(封止樹脂)内に封止される。
【0084】
次に、硬化に必要な所要時間の経過後において、図11(b)に示すように、上型3と下型2とを型開きして、封止済基板(樹脂成形品P)を不要樹脂J1とともに離型して一体的に搬送する。ここで、不要樹脂J1は、カル部32に残留した樹脂(カルJ11)及びランナ部33に残留した樹脂(ランナJ12)とからなる。その後、成形型(上型3及び下型2)から離れた別のスペースで、図11(c)に示すように、樹脂成形品Pから不要樹脂J1を除去し、不要樹脂J1を廃棄する。ここで、樹脂成形後において被覆体7は、カル部32又はランナ部33に残留し、カル部32及びランナ部33に残留した不要樹脂J1(カルJ11又はランナJ12)内に含まれており、当該不要樹脂J1とともに廃棄される。
【0085】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、樹脂材料Jの外側周面に被覆体7を巻く被覆体巻き機構8を備えているので、樹脂成形装置100において樹脂材料Jに被覆体7を自動的に巻く機能を付与することができ、被覆体7が巻かれた状態の樹脂材料Jを用いて樹脂成形することができる。その結果、樹脂成形時にポット21の内面と樹脂材料Jとの間に樹脂材料Jを取り囲む被覆体7が配置されることになり、樹脂材料Jがポット21の内面に触れないようにでき、ポット21の内面に付着する樹脂カスを低減することができる。また、被覆体7により樹脂材料Jが取り囲まれているので、たとえモールドアンダーフィル(MUF)用樹脂やクリアレジンなどの高流動樹脂であったとしても、ポット21の内面とプランジャ51との摺動部に溶融した樹脂材料Jが侵入しにくくなり、摺動部に侵入した樹脂材料Jによって発生する樹脂カスを低減することができる。ここで、被覆体7は、樹脂材料Jが押し出される方向を開放しているので、プランジャ51による樹脂材料Jの押し出しを邪魔することもない。
【0086】
このように樹脂カスを低減することにより、次の樹脂成形へのコンタミネーションを低減でき樹脂成形品Pの品質を向上することができる。また、樹脂カスによる設備トラブルを防止でき、清掃作業の頻度も低減できる。さらに、被覆体7を用いることにより、プランジャ51の摺動抵抗の増大を防止できるので、樹脂成形品Pの品質の安定化を実現できるとともに、ポット21及びプランジャ51の長寿命化も実現できる。
【0087】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0088】
例えば、前記実施形態では、ポットが下型に形成されており、キャビティが上型に形成されたものであったが、ポット又はキャビティは何れの成形型に形成されたものであっても良い。
【0089】
また、ポット及びプランジャは、断面円形状のものに限られず、例えば、断面矩形状、又はその他の断面多角形状等のその他の形状のものであっても良い。
【0090】
さらに、前記実施形態の樹脂材料搬送機構は、第1搬送部、第2搬送部及び搬送収容部の3つに分かれていたが、第1搬送部及び第2搬送部を1つの搬送部により構成したものであっても良いし、第2搬送部及び搬送収容部を1つの搬送部により構成したものであっても良い。また、1つの搬送部によって、被覆体巻き機構からポットに樹脂材料を搬送するように構成しても良い。
【0091】
また、樹脂成形装置はマルチプランジャ方式に限定されず、1つのプランジャを有するものであっても良い。この場合、プランジャユニットは1つのプランジャを有する構成となる。
【0092】
その上、一対の成形型は、上型及び下型に限られず、トランスファ成形に用いることができるその他の成形型(例えば、中間プレートが存在しているトップゲートタイプの成形型)であっても良い。
【0093】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
100・・・樹脂成形装置
J・・・樹脂材料
P・・・樹脂成形品
10・・・樹脂成形機構
21・・・ポット
2・・・成形型(下型)
32・・・カル部
33・・・ランナ部
7・・・被覆体
8・・・被覆体巻き機構
81・・・載置部
82・・・変形部
82a・・・接触面
83・・・回転部
9・・・樹脂材料搬送機構
91a・・・収容部
92a・・・収容部
93a・・・収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11