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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177591
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】自転車用駐輪装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/06 20060101AFI20221124BHJP
   B62H 3/08 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
E04H6/06 X
B62H3/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083962
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】519317114
【氏名又は名称】株式会社CPM
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 敬子
(57)【要約】
【課題】前後輪のうち後に搬入される車輪がスライドラックの所定位置に収納されたとき横スライド可能状態であることを駐輪作業者に認識させ、搬入作業時の自転車の落下・転倒を未然に防止し得る自転車用駐輪装置を提供する。
【解決手段】駐輪作業者が自転車の搬入操作を継続し、後輪RWをスライドラック12の後輪用長孔12fに落とし込むと、感知アーム14が後輪RWに接触し、死点越え押圧体15bが地表面Eから離脱してキャスタ12dを着地させ、スライドラック12を横スライド可能とする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面において所定の横方向に沿って水平状に配設された固定レールと、
平面視で横方向と交差する長手方向に自転車1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって、自転車を搭載するための車輪の出入口が長手方向の一端に形成され、前記固定レールに対して横方向にスライド移動可能に載置された複数のスライドラックと、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から先に搬入される車輪である先行搬入車輪を保持した状態で、各々の前記スライドラックの長手方向一端側から他端側に向かって移動可能に載置された車輪移動台車と、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から後に搬入される車輪である後続搬入車輪が、対応する前記スライドラックの長手方向一端側において予め定められた停止位置に収納されていることを感知する感知手段と、
前記感知手段による後続搬入車輪の感知に基づき、対応する前記スライドラックが前記固定レールに沿って横方向にスライド移動可能な状態であることを駐輪作業者に認識させ得る認識喚起手段と、を備え、
前記車輪移動台車が前記出入口から搬入された自転車の先行搬入車輪を保持して対応する前記スライドラックの長手方向一端側から他端側へ移動し、前記感知手段が前記停止位置にある後続搬入車輪を感知したとき前記認識喚起手段が作動することを特徴とする自転車用駐輪装置。
【請求項2】
上下2段式の自転車用駐輪装置であって、
上段の駐輪部は、基準面から所定間隔で立設された複数の支柱と、自転車1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって自転車を搭載した状態で各々の前記支柱から片持ち状に突出し当該支柱に沿って上下昇降可能な昇降ラックと、を有する一方、
下段の駐輪部は、
基準面において所定の横方向に沿って水平状に配設された固定レールと、
平面視で横方向と交差する長手方向に自転車1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって、自転車を搭載するための車輪の出入口が長手方向の一端に形成され、前記固定レールに対して横方向にスライド移動可能に載置された複数のスライドラックと、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から先に搬入される車輪である先行搬入車輪を保持した状態で、各々の前記スライドラックの長手方向一端側から他端側に向かって移動可能に載置された車輪移動台車と、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から後に搬入される車輪である後続搬入車輪が、対応する前記スライドラックの長手方向一端側において予め定められた停止位置に収納されていることを感知する感知手段と、
前記感知手段による後続搬入車輪の感知に基づき、対応する前記スライドラックが前記固定レールに沿って横方向にスライド移動可能な状態であることを駐輪作業者に認識させ得る認識喚起手段と、を備え、
前記下段の駐輪部において、前記車輪移動台車が前記出入口から搬入された自転車の先行搬入車輪を保持して対応する前記スライドラックの長手方向一端側から他端側へ移動し、前記感知手段が前記停止位置にある後続搬入車輪を感知したとき前記認識喚起手段が作動することを特徴とする自転車用駐輪装置。
【請求項3】
前記感知手段は、前記停止位置において後続搬入車輪と接触する感知アームであり、
前記認識喚起手段は、対応する前記スライドラックの横方向へのスライド移動を基準面又は前記固定レールに対して制止可能な制動装置であり、
前記感知アームが後続搬入車輪と接触したとき、前記制動装置は基準面又は前記固定レールに対する制止解除により、対応する前記スライドラックの横方向へのスライド移動が許容される状態であることを駐輪作業者に伝達する請求項1又は請求項2に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項4】
前記制動装置は、前記スライドラックの長手方向一端側に設置された制動体が長手方向一端側に位置する駐輪作業者からの直接操作によって基準面に押圧されて、対応する前記スライドラックのスライド移動を制止状態とする一方、
前記感知アームと後続搬入車輪との接触に基づき、前記制動体が基準面から離脱してスライド移動の制止状態を解除する請求項3に記載の自転車用駐輪装置。
【請求項5】
前記スライドラックにおいて前記停止位置には後続搬入車輪の一部を受け入れて保持するための貫通孔が形成されるとともに、前記感知アームは前記貫通孔の下方に隣接して設けられ、
前記出入口から自転車が搬入及び搬出されるとき、前記車輪移動台車が先行搬入車輪を対応する前記スライドラックの底壁部上に保持した状態で長手方向一端側と他端側との間を往復移動することにより、前記感知アームと先行搬入車輪との接触が回避される請求項3又は請求項4に記載の自転車用駐輪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、横スライド可能な複数の自転車受け台を含む駐輪装置に関する。具体的には、水平な固定レールに沿って横スライド可能な複数の自転車受け台(スライドラック)を有する駐輪装置、又は水平な固定レールに沿って横スライド可能な複数の自転車受け台(スライドラック)を下段に有するとともに、立設された複数の支柱の各々に沿って昇降可能な自転車受け台(昇降ラック)を上段に有する上下2段式の駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1で開示された駐輪装置には、複数の自転車受け台(特許文献1ではレールと表記される)が平面視で互いに平行な状態で地表面に固定配置され、自転車の前輪を保持する台車が各々の自転車受け台において長手方向手前側から前方側へ移動可能に載置されている。
【0003】
特許文献1の駐輪装置によれば、作業者は前輪を台車に載せた後、前輪の施錠、前かごの荷物の取出し、自転車の搬入といった駐輪作業を、自転車搭載済み(又は未搭載)の隣接する自転車受け台との間を通り抜けて前方側へ回り込まなくとも、自転車受け台の後方(手前側)から楽に行える。また、自転車受け台の相互間隔を狭くすることができ、駐輪密度を高めてより多くの自転車を収容できる。
【0004】
一方、特許文献2に記載された駐輪装置では、自転車受け台が水平な固定レールに沿って横スライド可能なスライドラックで構成され、複数のスライドラックが横方向一端側に寄せ集められる。
【0005】
そして、特許文献1の台車移動構造を特許文献2のスライドラック構造に適用するとき、後方(手前側)から駐輪作業を行ったスライドラックを片寄せすることにより、広い空間を容易に確保できる。
【0006】
しかしながら、その際の搬入作業においては、前輪のみを台車に載せた後、ハンドルから両手を放し、後方から自転車全体を押して台車と自転車とを一体的に移動させることになり、このとき自転車はハンドルを保持されていないため姿勢が少し不安定な(揺れ動きやすい)状態である。したがって、例えば後輪をスライドラックに載せ終えるタイミングとスライドラックの横スライドを開始するタイミングとがほぼ同時に実行される場合には、自転車(後輪)がスライドラックの所定位置に達する(収納される)寸前に落下・転倒するおそれがある。とりわけ上下2段式の駐輪装置では、作業者側に突出する上段の昇降ラックに気を取られてスライドラックへの後輪収納の確認を怠りやすく、落下・転倒のおそれが増す。これらは搬入作業に対する作業者の習熟度(不慣れ)や集中力(不注意)のみでは解決し難い問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2949400号公報
【特許文献2】特許5970797号公報(図1図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、前後輪のうち後に搬入される車輪がスライドラックの所定位置に収納されたとき横スライド可能状態であることを駐輪作業者に認識させることにより、搬入作業時の自転車の落下・転倒を未然に防止し得る自転車用駐輪装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の自転車用駐輪装置は、
基準面において所定の横方向に沿って水平状に配設された固定レールと、
平面視で横方向と交差する長手方向に自転車1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって、自転車を搭載するための車輪の出入口が長手方向の一端に形成され、前記固定レールに対して横方向にスライド移動可能に載置された複数のスライドラックと、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から先に搬入される車輪である先行搬入車輪(のみ)を保持した状態で、各々の前記スライドラックの長手方向一端側から他端側に向かって移動可能に載置された車輪移動台車と、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から後に搬入される車輪である後続搬入車輪が、対応する前記スライドラックの長手方向一端側において予め定められた停止位置に収納されていることを感知する感知手段と、
前記感知手段による後続搬入車輪の感知に基づき、対応する前記スライドラックが前記固定レールに沿って横方向にスライド移動可能な状態であることを駐輪作業者に認識させ得る認識喚起手段と、を備え、
前記車輪移動台車が前記出入口から搬入された自転車の先行搬入車輪を保持して対応する前記スライドラックの長手方向一端側から他端側へ移動し、前記感知手段が前記停止位置にある後続搬入車輪を感知したとき前記認識喚起手段が作動することを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の自転車用駐輪装置は、
上下2段式であって、
上段の駐輪部は、基準面から所定間隔で立設された複数の支柱と、自転車1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって自転車を搭載した状態で各々の前記支柱から片持ち状に突出し当該支柱に沿って上下昇降可能な昇降ラックと、を有する一方、
下段の駐輪部は、
基準面において所定の横方向に沿って水平状に配設された固定レールと、
平面視で横方向と交差する長手方向に自転車1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって、自転車を搭載するための車輪の出入口が長手方向の一端に形成され、前記固定レールに対して横方向にスライド移動可能に載置された複数のスライドラックと、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から先に搬入される車輪である先行搬入車輪(のみ)を保持した状態で、各々の前記スライドラックの長手方向一端側から他端側に向かって移動可能に載置された車輪移動台車と、
自転車の前輪及び後輪のうち前記出入口から後に搬入される車輪である後続搬入車輪が、対応する前記スライドラックの長手方向一端側において予め定められた停止位置に収納されていることを感知する感知手段と、
前記感知手段による後続搬入車輪の感知に基づき、対応する前記スライドラックが前記固定レールに沿って横方向にスライド移動可能な状態であることを駐輪作業者に認識させ得る認識喚起手段と、を備え、
前記下段の駐輪部において、前記車輪移動台車が前記出入口から搬入された自転車の先行搬入車輪を保持して対応する前記スライドラックの長手方向一端側から他端側へ移動し、前記感知手段が前記停止位置にある後続搬入車輪を感知したとき前記認識喚起手段が作動することを特徴とする。
【0011】
このように、先行搬入車輪(例えば前輪)を保持した状態で車輪移動台車がスライドラックの長手方向に沿って移動し、感知手段により後続搬入車輪(例えば後輪)がスライドラックの停止位置に収納されたことを感知すると、認識喚起手段が作動して横スライド可能状態であることを駐輪作業者に認識させることにより、搬入作業時の自転車の落下・転倒を未然に防止し得る。すなわち、駐輪作業者は先行搬入車輪を車輪移動台車に載せた後、ハンドルから両手を放し、スライドラックの長手方向一端側(出入口側)から自転車全体を押して車輪移動台車と自転車とを長手方向他端側(出入口と反対側)へ一体的に移動させることになり、このときハンドルを保持しないため自転車の姿勢が少し不安定な(揺れ動きやすい)状態で支えることになっても、認識喚起手段が作動するまで落ち着いて搬入操作を継続でき、またスライドラックに関して横スライド操作開始のタイミングを誤ることもない。
【0012】
とりわけ上下2段式の自転車用駐輪装置において、駐輪作業者は、先行搬入車輪の車輪移動台車への導入を始めとする自転車の搬入作業の他、車輪の施錠、荷かごからの荷物の取出し等を含む一連の駐輪作業を、上段駐輪部の支柱から片持ち状に突出する昇降ラックを逃れつつ、スライドラックの後方側(すなわち出入口側)から安全に行え、かつ搬入作業の終了を確実に確認(認識)できる。
【0013】
なお、本発明における「自転車」には、一般に軽快車と通称される汎用タイプ自転車(例えば15~20kgf程度)の他に、より軽量のスポーツタイプ自転車や子供用自転車(例えば15kgf未満)、さらに近年普及しつつある乳幼児用座席付き自転車(例えば20kgf超)、電動アシスト自転車(道路交通法では駆動補助機付自転車と呼称され、重量大のものでは30kgfを超えるものもある)等が含まれる。他方、いわゆるミニバイク(道路交通法では原動機付自転車と呼称され、排気量50cc以下)や自動二輪車(排気量50cc超)は、いずれも重量40kgf超が一般的であり、上記した各種自転車とは社会通念上区別されているから、本発明における「自転車」には含まないものとする。
【0014】
自転車の搬入時において先行搬入車輪が前輪(後続搬入車輪が後輪)の場合には「前入れ」、これとは逆に先行搬入車輪が後輪(後続搬入車輪が前輪)の場合には「後入れ」と略称される。
【0015】
ところで、固定レールには、スライドラックの長手方向他端側(出入口と反対側)にのみ横方向に設けられる1本レールタイプと、それと平行にスライドラックの長手方向一端側(出入口側)又は中間部に追加レールが並設された一対レールタイプとが含まれる。1本レールタイプの場合、一対レールタイプにおける追加レールに代わり、スライドラックの底面に横移動用のキャスタ(遊転輪)を設け、横スライド時におけるスライドラックの長手方向の水平状態を維持するのが一般的である。言い換えれば、1本レールタイプの横移動用キャスタを追加レールで置換すると一対レールタイプになり、一対の平行レールによってスライドラックの長手方向の水平状態が維持される。なお、一対レールタイプにおいては、横移動用のキャスタを通常要しないが、スライドラックの長手方向の水平状態を厳密に維持するためにさらに付加することは可能である。
【0016】
一方、スライドラックには、平面視において、固定レールに対し直交する場合と、斜め交差する場合とが含まれ、側面視において、固定レールに対し水平な形態と、長手方向他端側が高位となって傾斜する形態とが含まれる。
【0017】
次に、上記「感知手段」は、後続搬入車輪の感知に際し接触式(感知アーム等)か、非接触式(超音波センサ、赤外線センサ、光電センサ等)かを問わない。
【0018】
また、上記「認識喚起手段」は、駐輪作業者の五感に訴えて(又は五感を刺激して)スライドラックの横スライド可能情報を伝達するものであり、駐輪作業者にスライドラックの横スライド可能情報を教示する観点からみると「教示手段」と言い換えることができる。ただし、「認識喚起手段」あるいは「教示手段」のいずれで呼称するかにかかわらず、上記「感知手段」による後続搬入車輪の感知に基づき、例えば次のように機能する。
(1)ランプ、液晶、LED等の表示装置が作動ON(視覚刺激)
(2)スピーカ、ブザー、チャイム等の音響装置が作動ON(聴覚刺激)
(3)スライドラックの横スライドを制止するためにスライドラックに設けられた、摩擦ブレーキ、電磁ブレーキ等の制動装置が制動OFF(触覚刺激)
【0019】
さらに、上記(3)に記載された制動装置には次の仕様を含む。
(3-1)基準面制動方式
制動体が基準面(例えば地表面)を押圧し、スライドラックの横スライドを制止するもの(1本レールタイプ、一対レールタイプのいずれにも適合)
(3-2)固定レール制動方式
制動体が固定レール(追加レールを含む)を押圧し、スライドラックの横スライドを制止するもの(1本レールタイプ、一対レールタイプのいずれにも適合)
(3-3)キャスタ制動方式
制動体が、常時基準面に接地状態であるキャスタ又はそのキャスタと一体回転する中心軸に作用してキャスタの回転を停止させ、スライドラックの横スライドを制止するもの(原則として1本レールタイプに適合、一対レールタイプにも適用可能)
【0020】
一例として、上記感知手段は、停止位置において後続搬入車輪と接触する感知アームであり、
認識喚起手段は、対応するスライドラックの横方向へのスライド移動を基準面又は固定レールに対して制止可能な制動装置であり、
感知アームが後続搬入車輪と接触したとき、制動装置は基準面又は固定レールに対する制止解除により、対応するスライドラックの横方向へのスライド移動が許容される状態であることを(五感のうち触覚に訴える形で)駐輪作業者に伝達する。
【0021】
このように、感知アームによる後続搬入車輪の感知によって制動装置の制動が解除され、スライドラックは横スライド可能となる。よって、後続搬入車輪の感知前、すなわち後続搬入車輪が停止位置に到達する前にはスライドラックの横スライドは制止状態に保たれ、搬入作業の安全性を高めることができる。
【0022】
具体的には、上記制動装置は、スライドラックの長手方向一端側に設置された制動体が長手方向一端側に位置する駐輪作業者からの直接操作によって基準面に押圧されて、対応するスライドラックのスライド移動を制止状態とする一方、
感知アームと後続搬入車輪との接触に基づき、制動体が基準面から離脱してスライド移動の制止状態を解除する。
【0023】
このように、制動体が駐輪作業者から直接操作されて制動開始(ブレーキロック)し、感知アームによる後続搬入車輪の感知によってその制動体が制動解除(ロック解除)する。したがって、駐輪作業者は制動体の制動開始及び制動解除を自身の触覚を介して直接的に感じることができ、搬入作業時のミス(自転車の落下・転倒)が発生しにくくなる。
【0024】
さらに、上記スライドラックにおいて停止位置には後続搬入車輪の一部を受け入れて保持するための貫通孔が形成されるとともに、感知アームは貫通孔の下方に隣接して設けられ、
出入口から自転車が搬入及び搬出されるとき、車輪移動台車が先行搬入車輪を対応するスライドラックの底壁部上に保持した状態で長手方向一端側と他端側との間を往復移動することにより、感知アームと先行搬入車輪との接触が回避される。
【0025】
このように、先行搬入車輪との接触による感知アームの誤作動が、車輪移動台車によって防止されている。したがって、自転車の搬入及び搬出の途中でスライドラックが不意に横スライドを開始することも防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る自転車用駐輪装置の一例として、上下2段式における全体概要を示す平面図。
図2図1の側面図。
図3】下段駐輪部において、自転車搬入前にフットペダルを踏んだ状態を示す側面視説明図。
図4図3の要部拡大説明図。
図5図3に続いて、前輪搬入状態を示す側面視説明図。
図6図5の要部拡大説明図。
図7図5に続いて、後輪搬入状態を示す側面視説明図。
図8図7の要部拡大説明図。
図9図8の変形例を示す要部拡大説明図。
図10】本発明に係る自転車用駐輪装置の他の例として、上下2段式における全体概要を示す平面図。
図11図10の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第一実施例)
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る上下2段式の自転車用駐輪装置の概略構造の一例を示す全体平面図であり、図2はその側面図である。図1図2に示す自転車用駐輪装置100は、下段駐輪部10が横スライド式、上段駐輪部20が垂直昇降式の昇降式上下2段として構成されている。
【0028】
このうち上段駐輪部20は、設置面である地表面E(基準面)から所定間隔で立設された複数の支柱21と、自転車BCL1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって自転車BCLを搭載した状態で各々の支柱21から片持ち状に突出し、基端部が支柱21に沿って上下昇降可能な昇降ラック22(図1では右端の支柱21のみに図示される)と、を備えている。
【0029】
一方、下段駐輪部10は、地表面Eにおいて所定の横方向に沿って水平状に配設された固定レール11と、平面視で横方向と斜めに交差する長手方向に自転車BCL1台分に相当する長さを有する自転車受け台であって、自転車BCLを搭載するための車輪の出入口12aが長手方向の一端である後端に形成され、固定レール11に対して横方向にスライド移動可能に載置された複数のスライドラック12と、を備えている。
【0030】
各スライドラック12及び各昇降ラック22は、自転車BCLの前輪FWと後輪RWを同時に載せられる長さがあり、かつ車輪を載せる際の底壁部と左右の側壁部とを有し上方には開放された、長尺の樋形状に形成される。
【0031】
スライドラック12の長手方向他端部側である前端部側(すなわち、出入口12aの反対側)の底面(底壁部下面)には、複数のころ12c(転動体;図3参照)を介して固定レール11に横スライド可能に係合するスライド枠12bが設けられる。また、スライドラック12の長手方向一端部側である後端部側(すなわち、出入口12a側)又は中間部の底面(底壁部下面)には、横移動用のキャスタ12d(遊転輪)が設けられる。このように、各スライドラック12は前方側が固定レール11、後方側がキャスタ12dでそれぞれ支持され、キャスタ12dの転動に伴い固定レール11に沿って横方向にスライド移動可能である。
【0032】
複数の昇降ラック22は複数のスライドラック12に対し平面視において固定ピッチで設けられ、スライドラック12のスライドにより下段に生じる空きスペースを基準に昇降ガイド部材としての支柱21により垂直昇降可能に設けられる。そして、自転車BCLを載せた昇降ラック22が上昇した状態で下段駐輪部10の空きスペース内にスライドラック12がスライド移動できる。
【0033】
図1に示すように、複数のスライドラック12は、スライド枠12bが長手方向において互いに異なる2種のタイプを組み合わせて左右交互に配置されている。これによって、隣り合うスライドラック12に前入れ式で搬入された自転車BCLのハンドル位置が前後にずれて干渉しなくなり(前端ずらし駐輪)、下段駐輪部10の駐輪間隔を詰めることができる。
【0034】
図3図8に示すように、下段駐輪部10の各々のスライドラック12は、さらに、出入口12aから先に搬入された前輪FW(先行搬入車輪)を保持した状態で、後端側から前端側に向かって移動可能に載置された前輪台車13(車輪移動台車)と、後から搬入された後輪RW(後続搬入車輪)が後端側において予め定められた停止位置に収納されていることを感知する感知アーム14(感知手段)と、感知アーム14による後輪RWの感知に基づき、固定レール11に沿って横方向にスライド移動可能な状態であることを駐輪作業者に認識させるための制動装置15(認識喚起手段)と、を備える。
【0035】
前輪台車13は、前輪FWのみを載せられる長さがあり、かつ車輪を載せる際の天井壁部と左右の側壁部とを有し下方には開放された、直方体の底なし箱形状に形成される。
【0036】
具体的には、図6に示すように、前輪台車13の天井壁部には楕円形状又は長方形状の前輪用長孔13aが前後方向に貫通開口し、搬入によって前輪FWの下部が前輪用長孔13aに落ち込んで支持される。なお、このとき前輪FWの上部及び左右両側部は車輪ガード13bに囲まれて保持される。また、前輪台車13の左右の側壁部には複数のころ13e(転動体)が軸支され、ころ13eを介してスライドラック12の内底面(底壁部上面)に前後移動可能に係合する。さらに、箱形状の前輪台車13の内部には前後方向に長い揺動板13cが設けられ、揺動板13cの中央よりもやや前方の中間部に揺動支軸13dが配置される。揺動支軸13dは前輪用長孔13aの後端部近傍において左右の側壁部に支持され、揺動板13cをシーソー揺動可能に軸支する。
【0037】
したがって、通常時(すなわち、前輪FW搬入前)においては、揺動板13cは、自重により後部側が下がるように揺動支軸13d周りで回動して、スライドラック12の後端部の底壁部に開口する揺動板係合孔12eに係合し、前輪台車13はスライドラック12に移動不能に固定される(図4参照)。一方、搬入により前輪FWの下部が接触すると、揺動板13cは、接触により前部側が下がるように揺動支軸13d周りで回動(図6の矢印方向)して、揺動板係合孔12eとの係合が解かれ、前輪台車13はスライドラック12に対し前方移動可能となる。
【0038】
図8に示すように、スライドラック12の後端部寄りであって揺動板係合孔12eよりも前方の底壁部には、楕円形状又は長方形状の後輪用長孔12f(貫通孔)が前後方向に貫通開口し、搬入によって後輪RWの下部が後輪用長孔12fに落ち込んで支持される。後輪用長孔12fは搬入時の後輪RWの停止位置を定めるものであって、後輪RWが後輪用長孔12fに落ち込んで停止することにより、前輪FWを載せた前輪台車13の移動も停止する(図7参照)。
【0039】
制動装置15は、後輪用長孔12fの後端部寄りであって、平面視ではスライドラック12の左側(図1参照)に配置される。制動装置15は、フットペダル15aの踏み付け操作により、スライドラック12の左側壁部に軸支された制動支軸15c周りに回動する死点越え押圧体15b(制動体)を有する。死点越え押圧体15bは、往きの死点越え回動(図3図4の矢印方向)により地表面Eを押圧してスライドラック12をスライド不可とする制動ON状態と、戻りの死点越え回動(図7図8の矢印方向)により地表面Eから離脱してスライドラック12をスライド可能とする制動OFF状態とに切換えられる。
【0040】
また、感知アーム14は、死点越え押圧体15bの一部を前方に延長して形成されており、死点越え押圧体15bと一体となって移動(回動)する。そして、感知アーム14は、後輪用長孔12fの直下に隣接するように設けられ、搬入時の停止位置である後輪用長孔12fに落ち込んだ後輪RWの下端部と接触する。
【0041】
したがって、駐輪作業者がフットペダル15aを踏み付け操作すると、死点越え押圧体15bが往きの死点越え回動(図3図4の矢印方向)により地表面Eを押圧してキャスタ12dを浮上させ、スライドラック12を横スライド不可とする(制動ON状態)。一方、自転車BCLの後輪RWが停止位置(後輪用長孔12f)に収納され、感知アーム14が後輪RWに接触すると、死点越え押圧体15bが戻りの死点越え回動(図7図8の矢印方向)により地表面Eから離脱してキャスタ12dを着地させ、スライドラック12を横スライド可能とする(制動OFF状態)。このとき、スライドラック12の横スライドが許容される状態であることは、制動装置15の制動ONから制動OFFへの切換えに伴って、例えばスライドラック12からの抵抗感(制動力)を感じなくなる感覚として駐輪作業者の触覚を刺激するので、搬入作業及び横スライド作業の安全性が高められる。
【0042】
出入口12aから自転車BCLが搬入及び搬出されるとき、前輪台車13が前輪FWをスライドラック12の底壁部上に保持した状態で前後に往復移動する。このとき、図6に示すように、前輪FWのタイヤ下端縁はスライドラック12の底壁部上面(内底面)より上方を通過し、感知アーム14の先端部は底壁部下面(底面)より下方に位置しているので、感知アーム14と前輪FWとの接触が回避され、感知アーム14の誤作動が防止される。
【0043】
次に、以上で述べた下段駐輪部10の作動について、搬入操作順に概略を説明する。
【0044】
<スライドラック12の制動ON(前輪FW搬入前);図3図4
駐輪作業者がフットペダル15aを踏み付け操作すると、死点越え押圧体15bが地表面Eを押圧してキャスタ12dを浮上させ、スライドラック12は横スライドできなくなる(制動装置15の制動ON状態)。このとき、前輪台車13の揺動板13cは、自重により後部側が下がるように回動し、スライドラック12の揺動板係合孔12eに係合するので、前輪台車13とスライドラック12とは相対移動禁止状態に維持されている(前輪台車13の移動ロック状態)。
【0045】
<前輪FW搬入開始;図5図6
駐輪作業者が自転車BCLの搬入操作を開始し、前輪FWを前輪台車13の前輪用長孔13aに落とし込むと、前輪台車13の揺動板13cは、前輪FWとの接触により前部側が下がるように回動し、スライドラック12の揺動板係合孔12eとの係合が解かれる。これにより、駐輪作業者は前輪台車13に前輪FWを載せたまま、ハンドルから両手を放し自転車BCLを後ろから押して、スライドラック12に対して前輪台車13を前方移動できる(前輪台車13のロック解除状態)。
【0046】
<後輪RW搬入終了;図7図8
駐輪作業者が自転車BCLの搬入操作を継続し、後輪RWをスライドラック12の後輪用長孔12fに落とし込むと、感知アーム14が後輪RWに接触し、死点越え押圧体15bが地表面Eから離脱してキャスタ12dを着地させ、スライドラック12を横スライド可能とする(制動装置15の制動OFF状態)。駐輪作業者は、制動装置15が制動ONから制動OFFへ切換わる際に触覚を刺激され、これを契機としてスライドラック12の横スライドを開始できるので、ハンドルから両手を放した状態でも落ち着いて搬入操作を継続でき、また横スライド操作開始のタイミングを誤ることもない。
【0047】
(変形例)
図9図8の変形例を示す。図9の変形例では、図8の制動装置15の代わりに、コントロールボックス16(制御部)と、表示装置17(認識喚起手段)及び音響装置18(認識喚起手段)と、を備える。
【0048】
このうち、コントロールボックス16は、感知アーム14(感知手段)の回動中心となるアーム回動軸16aを有し、感知アーム14からアーム回動軸16aを介して入力された後輪感知信号に基づく制御信号を出力する。また、表示装置17は、コントロールボックス16からの制御信号によって青色ランプの点灯表示等を実行し、駐輪作業者の視覚に訴える。同様に、音響装置18は、コントロールボックス16からの制御信号によってスピーカから「スライドラックを動かせます」との音声出力等を実行し、駐輪作業者の聴覚に訴える。なお、図9において16bは、後輪RWとの非接触時に感知アーム14を後輪用長孔12f側に付勢しておくためにアーム回動軸16aに付設されたねじりコイルばね(付勢部材)を表す。
【0049】
(第二実施例)
図10は本発明に係る上下2段式の自転車用駐輪装置の概略構造の他の例を示す全体平面図であり、図11はその側面図である。図10図11に示す自転車用駐輪装置200は、第一実施例と同様に下段駐輪部110が横スライド式、上段駐輪部20が垂直昇降式の昇降式上下2段として構成されている。
【0050】
図10図11に示す下段駐輪部110では、図1図2のキャスタ2dの代わりに、追加レール111(固定レール)が設けられる。このように、第二実施例は、固定レール11と平行に追加レール111が並設された一対レールタイプを表している。したがって、各スライドラック12は、一対の固定レール11,111に対して横方向にスライド移動可能に載置されている。なお、その他の構成は第一実施例と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0051】
以上で説明した実施例及び変形例は、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
【0052】
なお、平面視で長手方向におけるスライド枠12bの位置は同じになるようにして、スライドラック12の出入口12aに自転車BCLを前輪FWから入れる前入れと、後輪RWから入れる後入れとを組み合わせて左右交互に配置すること(前後入れ駐輪)によって、長手方向のトータルの長さを抑制しつつ下段駐輪部10における駐輪間隔を詰めることができる。また、側面視で長手方向におけるスライド枠12bの位置は同じになるようにして、スライドラック12が固定レール11に対し水平な形態と、長手方向他端側(出入口12aと反対側)が高位となって傾斜する形態とを組み合わせて左右交互に配置すること(前端段差駐輪)によっても、長手方向のトータルの長さを抑制しつつ下段駐輪部10における駐輪間隔を詰めることができる。
【0053】
本発明は、歩道上・公園内等に常設された屋外駐輪場、マンション・アパート等に開設された屋内駐輪場、ビル・地下駅等に併設された地下駐輪場を問わず、これらに設置されたいずれの駐輪装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
10 下段駐輪部
11 固定レール
12 スライドラック(自転車受け台)
12a 出入口
12b スライド枠
12c ころ(転動体)
12d キャスタ(遊転輪)
12e 揺動板係合孔
12f 後輪用長孔(貫通孔;停止位置)
13 前輪台車(車輪移動台車)
13a 前輪用長孔
13b 車輪ガード
13c 揺動板
13d 揺動支軸
13e ころ(転動体)
14 感知アーム(感知手段)
15 地表面押圧式ブレーキ(制動装置;認識喚起手段)
15a フットペダル
15b 死点越え押圧体(制動体)
15c 制動支軸
16 コントロールボックス(制御部)
16a アーム回動軸
16b ねじりコイルばね(付勢部材)
17 ランプ(表示装置;認識喚起手段)
18 スピーカ(音響装置;認識喚起手段)
20 上段駐輪部
21 支柱
22 昇降ラック(自転車受け台)
100 自転車用駐輪機
110 下段駐輪部
111 追加レール(固定レール)
200 自転車用駐輪機
BCL 自転車
FW 前輪(先行搬入車輪)
RW 後輪(後続搬入車輪)
E 地表面(基準面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記スライドラックにおいて前記停止位置には後続搬入車輪の一部を受け入れて保持するための貫通孔が形成されるとともに、前記感知アームは前記貫通孔に隣接して設けられ、
前記出入口から自転車が搬入及び搬出されるとき、前記車輪移動台車が先行搬入車輪を対応する前記スライドラックの底壁部上に保持した状態で長手方向一端側と他端側との間を往復移動することにより、前記感知アームと先行搬入車輪との接触が回避される請求項3又は請求項4に記載の自転車用駐輪装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
さらに、上記スライドラックにおいて停止位置には後続搬入車輪の一部を受け入れて保持するための貫通孔が形成されるとともに、感知アームは貫通孔の下方に隣接して設けられ、
出入口から自転車が搬入及び搬出されるとき、車輪移動台車が先行搬入車輪を対応するスライドラックの底壁部上に保持した状態で長手方向一端側と他端側との間を往復移動することにより、感知アームと先行搬入車輪との接触が回避される。