(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177602
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20221124BHJP
H01R 13/629 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H01R13/533 D
H01R13/629
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021083985
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】豊田 啓介
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FB07
5E021FC31
5E021HB02
5E021HB04
5E021HB05
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR15
(57)【要約】
【課題】互いにより好適に係合されるアウタハウジングとワイヤカバーとを備えたコネクタを提供すること。
【解決手段】アウタハウジング200と、該アウタハウジング200と組み付けられるワイヤカバー100とを有するコネクタ2000であって、圧締めによって前記アウタハウジング200と前記ワイヤカバー100とを互いに係合する第1圧入係合部Z
Iと第2圧入係合部Y
Iとを有し、前記第1圧入係合部Z
Iにおける第1圧締め方向と、前記第2圧入係合部Y
Iにおける第2圧締め方向とが互いに交差する、コネクタ2000が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタハウジングと、該アウタハウジングと組み付けられるワイヤカバーとを有するコネクタであって、
圧締めによって前記アウタハウジングと前記ワイヤカバーとを互いに係合する第1圧入係合部と第2圧入係合部とを有し、前記第1圧入係合部における第1圧締め方向と、前記第2圧入係合部における第2圧締め方向とが互いに交差する、コネクタ。
【請求項2】
前記第1圧締め方向と前記第2圧締め方向とが互いに直交する関係を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1圧入係合部において、前記ワイヤカバーが側壁に圧入突起を有する一方、前記アウタハウジングは上面における隆起部に設けられた圧入溝を有し、前記圧入突起と前記圧入溝とが互いに係合する、請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記隆起部が、前記アウタハウジングの長手方向に沿って前記上面の周縁に設けられている、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記圧入溝がテーパー溝となっている、請求項3または4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記テーパー溝は前記コネクタの長手方向に漸次狭くなっている、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記側壁が前記ワイヤカバーの内壁である、請求項3~6のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第2圧入係合部において、前記アウタハウジングが上面に突出部を有し、前記ワイヤカバーの前記側壁と前記突出部の側面とが互いに係合する、請求項1~7のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項9】
前記突出部の側面がテーパー面である、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記テーパー面は、前記コネクタの長手方向に漸次傾斜している、請求項9に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記ワイヤカバーと組み付けられた前記アウタハウジングにおいて、前記突出部が前記ワイヤカバーの前記側壁の外側および内側のいずれか一方に位置付けられ、前記隆起部は該側壁の該外側および該内側の他方に位置付けられている、請求項3に従属する請求項8~10のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項12】
前記ワイヤカバーと前記アウタハウジングとを相対的にスライド移動させることによって該ワイヤカバーと該アウタハウジングとが組み付けられ、
前記スライド移動によって、前記圧入突起と前記圧入溝との前記係合と、前記肉厚部と前記突出部の側面との前記係合との双方がなされる、請求項3に従属する請求項8~11のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項13】
前記ワイヤカバーが前記側壁に位置決め突起を有する一方、前記アウタハウジングは前記隆起部に被位置決め突起を有し、
前記ワイヤカバーと前記アウタハウジングとの組み合わせに際して、前記位置決め突起と前記被位置決め突起とが互いに適合する、請求項12に記載のコネクタ。
【請求項14】
前記ワイヤカバーの前記側壁が相対的に肉厚となった肉厚部と相対的に肉薄となった肉薄部とを有し、
前記肉厚部と前記肉薄部とが互いに前記コネクタの長手方向にて隣接している、請求項8~13のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項15】
前記第1圧入係合部と、前記第2圧入係合部とが互いに隣接している、請求項1~14のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項16】
前記隣接している前記第1圧入係合部と前記第2圧入係合部から成る対が4つあり、該4つの対が平面視にて互いに対称的に配置されている、請求項15に記載のコネクタ。
【請求項17】
前記アウタハウジングが、前記ワイヤカバーよりも高い剛性を有する、請求項1~16のいずれかに記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコネクタに関する。特に、本開示は、電気的接続に供するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、複数本の電線が引き出されるコネクタのアウタハウジングと、アウタハウジングとの間に空間を有しながら、電線引出面を覆うワイヤカバーとを備えたコネクタが開示されている。
【0003】
かかるコネクタにおいて、アウタハウジングにワイヤカバーを取り付けるにあたっては、まず、ワイヤカバーの一方の側面周縁におけるロック部がアウタハウジングのロック受け部に引っ掛けられる。次いで、ワイヤカバーの他方の側面周縁におけるロック部をアウタハウジングのロック受け部に係止することで、ワイヤカバーがアウタハウジングに取り付けられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tyco Electronics 取り扱い説明書411-78084-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、従来のコネクタのアウタハウジングおよびワイヤカバーの構造に克服すべき課題があることに気づき、そのための対策をとる必要性を見出した。具体的には、以下の課題があることを見出した。
【0006】
上述のようなワイヤカバーを有するコネクタの配置の一例として、振動が伝わる箇所への配置が挙げられる。このような配置においては、コネクタに伝わる振動によってワイヤカバーとアウタハウジングとの間にガタ付きが生じ、係止が外れてしまう可能性がある。さらに、ワイヤカバーを介して電線からコネクタの端子接点部に振動が伝わることにより、導通性が損なわれるおそれがある。
【0007】
例えば、非特許文献1に記載のコネクタでは、ワイヤカバーのロック部がアウタハウジングのロック受け部に引っ掛けられるように係止されることで、ワイヤカバーとアウタハウジングとの取り付けが実施されている。しかしながら、このような構造では、複数方向からの振動が加えられると、ワイヤカバーとアウタハウジングとの間にがたつきが生じ、アウタハウジングからのワイヤカバーの脱離および/または端子接点部の接触不良が発生するおそれがある。
【0008】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示の主たる目的は、互いにより好適に係合されるアウタハウジングとワイヤカバーとを備えたコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示では、アウタハウジングと、該アウタハウジングと組み付けられるワイヤカバーとを有するコネクタであって、圧締めによって前記アウタハウジングと前記ワイヤカバーとを互いに係合する第1圧入係合部と第2圧入係合部とを有し、前記第1圧入係合部における第1圧締め方向と、前記第2圧入係合部における第2圧締め方向とが互いに交差する、コネクタが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るコネクタでは、アウタハウジングとワイヤカバーとが互いにより好適に係合される。
【0011】
より具体的には、本開示のコネクタは、第1圧締め方向および第2圧締め方向の互いに交差する2つの方向において圧入できる構造を有することで、アウタハウジングとワイヤカバーとのより強固な組付けを達成し得る。したがって、複数の方向からの振動によるガタ付きがより好適に抑制され、アウタハウジングからのワイヤカバーの脱離および/または端子接点部の接触不良がより好適に防止され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示のコネクタを模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたコネクタを模式的に示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示のコネクタのワイヤカバーを模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示のコネクタのハウジングを模式的に示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、ワイヤカバーの組付け前における本開示のコネクタを模式的に示す斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、ワイヤカバーの組付け後における本開示のコネクタを模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本開示のコネクタを模式的に示す側面図である。
【
図11A】
図11Aは、本開示のコネクタのハウジングを模式的に示す上面図である。
【
図11B】
図11Bは、
図11Aのハウジングの部分VIの部分拡大図を模式的に示すと共に、“圧入に関連するテーパー部分”を模式的に示している。
【
図12A】
図12Aは、本開示のコネクタのハウジングを模式的に示す側面図である。
【
図12B】
図12Bは、
図12Aのハウジングの部分VIIの部分拡大図を模式的に示すと共に、“圧入に関連するテーパー面”を模式的に示している。
【
図13】
図13は、本開示のコネクタのワイヤカバーを模式的に示す側面図である。
【
図16A】
図16Aは、ワイヤカバーの組付け前における本開示のコネクタを模式的に示す側面図である。
【
図16B】
図16Bは、ワイヤカバーを仮組付け位置に配置した際の本開示のコネクタを模式的に示す側面図である。
【
図16C】
図16Cは、ワイヤカバーの組付け後における本開示のコネクタを模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照して本開示の一実施形態に係るコネクタをより詳細に説明する。図面における各種の要素は、本開示の説明のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0014】
さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語を用いる。しかしながら、これらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、これらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面の同一符号の部分は、同一または同等の部分を指す。
【0015】
まず、本開示のコネクタの全体構造の把握のため、図面を参照して、以下に本開示のコネクタの概要を説明する。
【0016】
図1は、本開示のコネクタを模式的に示す分解斜視図である。また、
図2は、組立て後における本開示のコネクタを模式的に示す斜視図である。コネクタ2000は、主たる構成要素として、ハウジング1000と、ワイヤカバー100と、ワイヤカバー100に対して、回転可能に取り付けられた操作レバー800とを備える。
【0017】
図示されていないものの、ハウジング1000は、本コネクタ2000と嵌合する相手コネクタに備わる複数の電線の一端に接続された、複数の端子を支持する。ワイヤカバー100は、複数の端子に接続された複数の電線を覆うように、ハウジング1000に取り付けられる。
図3Aは、上側および下側からみた本開示のコネクタのワイヤカバーを模式的に示す斜視図である。ワイヤカバー100は、コネクタ2000の長手方向の一方の端部に開口110を備えている。ワイヤカバー100に覆われた複数の電線(図示せず)は、開口110に向かって引き揃えられ、該開口110からコネクタ2000の外部に延出する。さらに、ワイヤカバー100は、側壁120から外側および内側のいずれか一方に突出した圧入突起121および位置決め突起122を有する(
図3B参照)。
【0018】
ここで、以下の説明の便宜上、本明細書および図面で用いる“方向”について次のとおり規定する。
図2に示すように、本明細書および図面において、コネクタ2000の長手方向に相当する方向を「前後方向X」と称する。「前後方向X」において、特にワイヤカバー100に開口110(
図1参照)が形成されている方向を「後方向X”」、その反対の方向を「前方向X’」と称する。ここで、「後方向X”」は、ワイヤカバーの開口110から電線が引き出される方向を実質的に意味しており、“電線引出方向”に相当する。また、図中における上下方向に相当する方向を「上下方向Z」と称する。「上下方向Z」において、特に鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)を「下方向Z”」と称し、その反対の方向を「上方向Z’」と称する。さらに、コネクタ2000の短手方向に相当する方向を「左右方向Y」と称する。ある好適な態様では、「前後方向X」、「上下方向Z」、および「左右方向Y」の各々は、互いに直交する。
【0019】
なお、本明細書でいう「平面視」とは、上下方向Zに沿って対象物を上側または下側からみたときの状態のことである。また、本明細書でいう「断面視」とは、上下方向Zに対して略垂直な方向、すなわち左右方向Yに沿って対象物をみたときの状態のことである。
【0020】
図1に示すように、本開示のコネクタのハウジング1000は、アウタハウジング200、インナハウジング400、およびフロントハウジング700を有する。
図4は、本開示のコネクタのハウジング1000を模式的に示す斜視図であり、
図5Aは
図4Aのハウジング1000の後方部を取り去った斜視断面図である。図示されるように、アウタハウジング200は、インナハウジング400、およびフロントハウジング700を覆うように組付けられてよい。
【0021】
図5Bに示されるように、アウタハウジング200は、隆起部220と、隆起部220に設けられた圧入溝221と、突出部230とを有する。隆起部220は、アウタハウジング200の上面210から上方向Z’に向かって突出するように、コネクタ2000の長手方向に沿って形成され得る。圧入溝221は、ワイヤカバー100に面する隆起部220の側面において、コネクタ2000の長手方向に沿って形成された溝である。また、突出部230は、アウタハウジングの上面210から上方向Z’に向かって突出するように形成される。
【0022】
さらに、
図1に示すように、アウタハウジング200は、長手方向の2つの側壁のそれぞれにおいて、前後方向Xに沿って貫通する溝240をそれぞれ有してよい。各溝240には、
図4に示されるように、カム部材300が前後方向Xにスライド可能にそれぞれ収容される。
【0023】
本開示のコネクタ2000におけるカム部材300は、略板状形状を有し得る(
図1参照)。カム部材300の側面には、相手コネクタのカムピン(図示せず)に対応するカム溝310が複数設けられている。
【0024】
また、
図2に示すように、本開示のコネクタにおける操作レバー800は、ワイヤカバー100を左右方向Yに跨ぐように湾曲して延在し、ワイヤカバー100の両側に回動可能に軸支される。この回動操作によって、操作レバー800は本コネクタ2000と相手コネクタとの嵌合を助力する。具体的には、操作レバー800は、回動操作によって、アウタハウジング200の溝240内にあるカム部材300をスライド移動させることができるように組付けられてよい。このカム部材300のスライド移動によって、相手コネクタのカムピンはカム部材300のカム溝310に引き込まれ、本コネクタと相手コネクタとの嵌合が完了する。このように、コネクタ2000と相手コネクタとの嵌合に際して、操作レバー800およびカム部材300は倍力機構として作用する。換言すれば、操作レバーおよびカム部材によって、より小さな力でコネクタ2000を相手コネクタに嵌め合わせることが可能となる。
【0025】
また、本開示のコネクタ2000は、インナハウジング400に差し込まれるリテーナ500を備えていてよい(
図1参照)。リテーナ500は、インナハウジング400内において相手コネクタの端子(図示せず)を位置決めし、固定し得る。
【0026】
さらに、本開示のコネクタは、防水のためのシール材600を有してよい(
図1参照)。本開示において、コネクタ2000は、インナハウジング400の内面および/または外周にシール材600を備えていてよい。シール材600は、インナハウジング400と相手コネクタとの間を止水し得る。
【0027】
本開示のコネクタ2000では、
図6Aおよび
図6Bに示すように、相手コネクタの複数の端子(図示せず)がハウジング1000内に挿入された後、操作レバー800が取り付けられたワイヤカバー100がアウタハウジング200に組み付けられる。本開示のコネクタは、アウタハウジング200に対するワイヤカバー100の組付け構造に特徴を有する。以下では、本開示のコネクタのワイヤカバー100とアウタハウジング200との組付け構造について説明する。
【0028】
本開示のコネクタは、ワイヤカバー100とアウタハウジング200とが圧締めによって互いに係合される圧入係合部を有する。圧入係合部は、ワイヤカバー100および/またはアウタハウジング200が圧締め方向へ相対的に移動することを規制する。これは、圧入係合部において、ワイヤカバー100およびアウタハウジング200が圧締め方向への圧力によって固定されることを意味する。換言すれば、本開示のコネクタは、ワイヤカバー100とアウタハウジング200とが互いに干渉しながら係合する圧入係合部を備えており、これによって、互いに係合する面に対して略垂直な方向へのワイヤカバー100および/またはアウタハウジング200の相対変位が抑制される。これは、圧入係合部が、圧力を受ける圧締め方向へのガタ付きを防止し得ることを意味する。したがって、本発明のコネクタは、振動抑制構造を有するワイヤカバーとアウタハウジングとを備えると解することができる。
【0029】
本開示のコネクタは、圧締め方向が互いに交差する2種の圧入係合部を有する。すなわち、本開示のコネクタは、アウタハウジングとワイヤカバーとを互いに係合する第1圧入係合部と第2圧入係合部とを有し、第1圧入係合部における第1圧締め方向と、第2圧入係合部における第2圧締め方向とは、互いに交差する方向である。圧締め方向が互いに交差する2種の圧入係合部によってワイヤカバー100とアウタハウジング200とが組付けられることにより、ワイヤカバー100およびアウタハウジング200の複数方向への相対変位がより好適に規制され得る。したがって、本開示のコネクタでは、複数の方向からの振動によるガタ付きがより好適に抑制され、アウタハウジング200からのワイヤカバー100の脱離および/または端子接点部の接触不良の発生が防止され得る。
【0030】
好ましくは、第1圧入係合部および第2圧入係合部の各圧締め方向は、互いに直交する関係を有する。換言すれば、第1圧入係合部における第1圧締め方向と、第2圧入係合部における第2圧締め方向とは、実質的に互いに垂直に交差する方向であることが好ましい。圧締め方向が互いに直交関係であることにより、複数の方向からの振動による相対変位をより効果的に抑制することが可能となる。ここでいう「互いに直交する」および「実質的に垂直に交差する」とは、完全な「直交」または「垂直」でなくてよく、それから僅かにずれた態様(例えば、第1圧締め方向と第2圧締め方向とが成す角度が、90°±20°の範囲、例えば90°±10°までの範囲)を含んでいる。例えば、本開示のコネクタは、
図6Bに示すように、第1圧締め方向が上下方向Zである第1圧入係合部Z
I(
図10B参照)、および第2圧締め方向が左右方向Yである第2圧入係合部Y
I(
図9B参照)から成る2種の圧入係合部を有してよい。以下にその圧入係合部の構造について説明する。
【0031】
図10Aは、
図7に示す本開示のコネクタ2000の側面断面図である。さらに、
図10Bは、
図10Aのコネクタの第1圧入係合部Z
Iの拡大図を模式的に示す。図示されるように、ワイヤカバー100は側壁120に圧入突起121を有し、アウタハウジング200は隆起部220に設けられた圧入溝221を有する。第1圧入係合部Z
Iでは、該圧入突起121と該圧入溝221とが互いに係合することで、ワイヤカバー100がアウタハウジング200に組み付けられる。したがって、第1圧締め方向のアウタハウジング200とワイヤカバー100との圧入係合は、アウタハウジングの圧入溝221にワイヤカバーの圧入突起121が入り込むように組み付けられることによって実施されてよい。換言すれば、ワイヤカバーの圧入突起121は、アウタハウジングの圧入溝221に圧締めされることで互いに係合され得る。これは、ワイヤカバーの圧入突起121がアウタハウジングの圧入溝221による第1圧締め方向、すなわち上下方向Zからの圧力を受けて固定されることを意味する。このような組付け構造により、アウタハウジング200およびワイヤカバー100の上下方向Zへの相対変位がより好適に規制され得る。
【0032】
図11Aは、本開示のコネクタのハウジング1000の上面図である。図示されるように、本開示のコネクタの隆起部220は、アウタハウジング200の長手方向に沿って、アウタハウジングの上面210の周縁部分に設けられる。この構造により、ワイヤカバーの側壁120が隆起部220によって支持され、アウタハウジング200およびワイヤカバー100のガタ付きがより好適に抑制される。
【0033】
図12Aは、本開示のコネクタのハウジング1000を模式的に示す側面図であり、
図12Bは、
図12Aのアウタハウジング200における、第1圧締め方向の圧入係合に関連する箇所の部分拡大図である。圧入溝221は、ワイヤカバーの圧入突起121に対応するように、隆起部220の側面において前後方向Xに沿って溝を形成するように設けられてよい。ある好適な態様では、
図12Bに示されるように、圧入溝221は、隆起部220に設けられた側面突起222によって形成されてよい。側面突起222は、隆起部220におけるワイヤカバーの側壁120と面する側面からワイヤカバーの側壁120に向かって突出または隆起するように形成されてよい。つまり、圧入溝221は、隆起部220におけるワイヤカバー100と面する側面に設けられた側面突起222の下面222aと、隆起部220の側面と、アウタハウジングの上面210とによって形成されてよい。
【0034】
また、
図12Bに示すように、本開示のコネクタにおいて、圧入溝221はテーパー溝であってよい。換言すれば、圧入溝221の上面は、アウタハウジングの上面210に対して角度をなすように傾斜してよい。つまり、圧入溝221は、コネクタ2000の長手方向に漸次狭くなるテーパー溝であってよい。より具体的には、圧入溝221が後方向X”に漸次狭くなるように、圧入溝221の上面は後方向X”に漸次低くなる傾斜面を有してよい。ある好適な態様では、側面突起の下面222aがテーパー形状を有することで、上述のようなテーパー状の圧入溝221が形成されてよい。これは、隆起部220に設けられた側面突起の下面222aが、コネクタの後方向X”に漸次低下する傾斜面を有することを意味する。
【0035】
圧入溝221の後方部分(すなわち、幅寸法がより狭くなった部分)は、ワイヤカバーの圧入突起121の厚さと同一であるか、より好ましくはそれより僅かに小さい幅寸法を有してよい。すなわち、圧入溝221は、その後方部分が圧入突起121と互いに密接し、干渉し合うような幅寸法にまで漸次狭くなる形状を有することがより好ましい。換言すれば、側面突起の下面222aは、圧入突起121との係合が、軽圧入から重圧入に漸次変化するように、後方向に向かって漸次低くなるような傾斜面を有することがより好ましい。断面視において、側面突起の下面222aがアウタハウジングの上面210と成す傾斜角度α(
図12B参照)は、下面222aの後方部分が圧入突起121と干渉する形態である限り特に限定されない。例えば、傾斜角度αは、5°以上45°以下、より好ましくは5°以上35°以下、例えば30°であることができる。この形状により、圧入溝221と圧入突起121とがより好適に圧入係合され、アウタハウジング200およびワイヤカバー100のガタ付きが好適に抑制される。なお、テーパーを形成する面の形状は、ワイヤカバー100の圧入突起121との圧入係合が可能である限り、特に限定されない。例えば、テーパー形状を形成する面は、平面であってよく、または曲面であってもよい。
【0036】
図14Aは、
図13に示すワイヤカバー100の平面断面図である。また、
図14Bは、
図14Aのワイヤカバーにおける圧入突起121の拡大図を示す。図示されるように、圧入突起121は、ワイヤカバーの側壁120から、アウタハウジングの隆起部220に向かって突出するように設けられる。また、圧入突起121が設けられるワイヤカバーの側壁120は、ワイヤカバーの内壁であることが好ましい。換言すれば、アウタハウジング200の圧入溝221に対応する圧入突起121は、ワイヤカバー100の内側に設けられていることが好ましい。つまり、アウタハウジングの隆起部220は、ワイヤカバーの側壁120の内側と面するように位置付けられ、第1圧締め方向の圧入係合は、ワイヤカバー100の内側において実施されてよい。この構造により、圧入突起121をワイヤカバー100の外側に設けた場合と比較して、ワイヤカバー100における相手コネクタの電線(図示せず)を収容するための空間が、より広く確保され得る。したがって、ワイヤカバーを介して電線からコネクタの端子接点部に伝わり得る振動がより好適に抑制され、接触不良を引き起こす可能性がより好適に減じられ得る。
【0037】
図15Aは、
図13に示すワイヤカバー100の側面断面図である。また、
図15Bは、
図15Aのワイヤカバーにおける圧入突起121の拡大図を示す。図示されるように、アウタハウジングの圧入溝221に対応する圧入突起121は、ワイヤカバーの側壁120の縁部分に設けられることがより好ましい。より詳細には、圧入突起121は、ワイヤカバーの縁部分において、側壁120から、ワイヤカバー100の内側および外側のいずれか一方に突出するように配置されていることがより好ましい。ワイヤカバーの側壁120の縁部分に設けられた圧入突起121は、側面突起の下面222aとアウタハウジングの上面210との間に形成された圧入溝221との圧入係合に際して、より大きな係合面積での圧入係合を可能とする。したがって、上述の構造により、ワイヤカバーの圧入突起121がより安定的に挟持され得ることから、アウタハウジング200およびワイヤカバー100のガタ付きをより好適に抑制することが可能となる。
【0038】
また、本開示のコネクタのようなレバー式コネクタは、自動車のエンジンルーム内などに搭載される場合、一般的に、
図7などに示されるようにワイヤカバー100が上になるような向きで配置され得る。発明者らは、このような配置において、作動時に発生し得る振動のうち、上下方向の成分を有する振動が最も強くなり得ることを見出した。したがって、コネクタは上下方向の振動による影響を最も強く受け得る。本開示のコネクタでは、上述のように上下方向Zの圧締めによってワイヤカバーとアウタハウジングとを圧入係合することで、コネクタに伝わる振動によるガタ付きのより好適な抑制が実現され得る。したがって、本開示のコネクタは、アウタハウジングからのワイヤカバーの意図しない脱離および/または端子接点部の接触不良の防止に寄与する。
【0039】
また、本開示のコネクタにおいて、第2圧入係合部Y
Iの第2圧締め方向は、左右方向Yであってよい。以下に、第2圧入係合部Y
Iの構造を説明する。
図8Aは、
図7に示す本開示のコネクタの斜視断面図であり、
図9Aは平面断面図である。さらに、
図8Bおよび
図9Bの各々は、
図8Aおよび
図9Aのコネクタの各々における第2圧入係合部Y
Iの拡大図を示す。図示されるように、第2圧締め方向の圧入係合は、ワイヤカバーの側壁120がアウタハウジングの突出部230と互いに干渉することによって実施されてよい。つまり、ワイヤカバー100とアウタハウジング200とは、ワイヤカバーの側壁120とアウタハウジングの突出部230との圧締めによって圧入係合されてよい。より具体的には、ワイヤカバーの側壁120が後述する肉薄部120bに対して相対的に肉厚である肉厚部120aを有し、該肉厚部120aは、アウタハウジングの突出部230の側面230a(
図11B参照)と互いに係合されてよい。換言すれば、ワイヤカバーの側壁120の肉厚部120aは、アウタハウジングの突出部230の側面230aと互いに干渉することで、圧締めによって固定されてよい。このような構造により、アウタハウジング200およびワイヤカバー100の左右方向Yへの相対変位が好適に規制され得る。
【0040】
図11Aは、本開示のコネクタのハウジング1000を模式的に示す上面図であり、
図11Bは、
図11Aのコネクタのアウタハウジング200における第2圧締め方向の圧入係合に関連する箇所の部分拡大図である。
図11Bに示すように、本開示のコネクタ2000において、突出部の側面230aはテーパー面であってよい。つまり、突出部の側面230aは、長手軸Lに関して角度βを成すように傾斜してよい。より詳細には、ワイヤカバーの肉厚部120aと干渉する突出部の側面230aは、コネクタの長手方向に漸次傾斜するテーパー面を有してよい。換言すれば、突出部230のテーパー面は、後方部分において肉厚部120aとより強く干渉し合うように漸次傾斜していてよい。これは、本開示のコネクタ2000が、突出部の側面230aのテーパー面の後方部分において突出部の側面230aとワイヤカバーの肉厚部120aとが圧入係合されることを意味する。つまり、突出部の側面230aは、ワイヤカバーの肉厚部120aとの圧入係合が軽圧入から重圧入に漸次変化するように、後方向X”にて漸次肉厚部側に向かって狭くなるような傾斜面を有することが好ましい。平面視において、突出部の側面230aが長手軸Lと成す傾斜角度β(
図11B参照)は、側面230aの後方部分がワイヤカバーの側壁120と干渉する形態である限り特に限定されない。例えば、傾斜角度βは、5°以上40°以下、より好ましくは5°以上35°以下、例えば25°であることができる。この形状により、突出部の側面230aと肉厚部120aとがより好適に圧入係合され、アウタハウジング200およびワイヤカバー100のガタ付きが抑制され得る。なお、テーパーを形成する面の形状は、ワイヤカバーの肉厚部120aとの圧入係合が可能である限り、特に限定されない。例えば、テーパー面は、平面であってよく、または曲面によって形成されてよい。
【0041】
さらに、ワイヤカバー100と組み付けられたアウタハウジング200において、突出部230はワイヤカバーの側壁120の外側および内側のいずれか一方に位置付けられ、隆起部220は側壁120の外側および内側の他方に位置付けられていてよい。つまり、アウタハウジングの突出部230および隆起部220は、ワイヤカバーの側壁120が突出部230と隆起部220との間に入り込むように配置されてよい。換言すれば、突出部230はワイヤカバーの側壁120の内側または外側のどちらか一方と接するように設けられ、隆起部220はその他方の側と接するように設けられてよい。特に、突出部230はワイヤカバーの側壁120の外側と干渉するように配置され、隆起部220はワイヤカバーの内側に配置されることが好ましい。この構造において、突出部230によるワイヤカバー100の外側からの圧入に対して、隆起部220がワイヤカバー100を内側から支持することで、左右方向Yの相対変位がより好適に抑制され得る。ある好適な態様では、
図8Aに示すように、隆起部220は第1圧締め方向の圧入係合に関連する側面突起222を有する。上述の構造において、第1圧入係合部の隆起部220および/または側面突起222は、第2圧締め方向の相対変位の規制にも寄与し得る。これは、隆起部220および/または側面突起222が、突出部230と協働して、より好適に第2圧締め方向の圧入係合を為し得ることを意味する。上述の構造は、複数の方向からの振動によるガタ付きをより好適に抑制するため、アウタハウジングからのワイヤカバーの脱離および/または端子接点部の接触不良の防止に寄与し得る。
【0042】
次いで、本開示のコネクタへのワイヤカバーの組付け方法について説明する。
図16A~16Cは、本開示のコネクタにおけるワイヤカバーの組付け態様を経時的に示す模式図である。組付けにおいて、まず、ワイヤカバー100はハウジング1000の上側から仮組付け位置に配置される(
図16B参照)。圧入係合は、仮組付け位置からワイヤカバー100とアウタハウジング200とを相対的に前後方向Xにスライド移動させることによって実施される(
図16C参照)。換言すれば、ワイヤカバー100をアウタハウジング200に対して後方向X”に相対的にスライド移動させることで、組付けが完了する。このスライド移動によって、第1圧締め方向の圧入係合と第2圧締め方向の圧入係合との双方が為される。つまり、ワイヤカバー100およびアウタハウジング200は、相対的に前後方向Xにスライド移動されることによって、互いに交差する2種の方向の圧締めによる圧入係合を達成する。このように、第1圧締め方向および第2圧締め方向の互いに交差する方向の圧入係合によってワイヤカバーとアウタハウジングとが組付けられることで、複数の方向からの振動によるガタ付きを抑制する効果がより顕著になり得る。したがって、上述のように組付けられた本開示のコネクタは、アウタハウジングからのワイヤカバーの脱離および/または端子接点部の接触不良をより好適に防止し得る。
【0043】
より詳細には、本開示のコネクタにおけるワイヤカバーの組付けでは、
図16Bに示す仮組付け位置において、ワイヤカバーの圧入突起121は、アウタハウジングの圧入溝221の前方向X’に隣接して配置される。また、この際、アウタハウジングの突出部230は、後述するワイヤカバーの肉薄部120bと面するように配置される。次いで、ワイヤカバー100を後方向X”に向かってスライド移動させる。このスライド移動によって、ワイヤカバーの圧入突起121は、アウタハウジングの圧入溝221に挿入される。さらに、アウタハウジングの突出部の側面230aは、当該スライド移動に伴ってワイヤカバーの肉厚部120aに向かって移動し、肉厚部120aと互いに干渉する。そして、圧入溝221と圧入突起121との圧入係合、および突出部230と肉厚部120aとの圧入係合の双方が為されることで、組付けが完了する。このように、上下方向Zの圧締めによる圧入係合と左右方向Yの圧締めによる圧入係合との双方が為されることで、本開示のコネクタは、ワイヤカバー100とアウタハウジング200とのより強固な固定を実現する。つまり、互いに交差する2種の圧締め方向に基づく圧入係合によって、より強固な組付けを行うことができ、ひいては、複数の方向からの高振動条件下におけるガタ付きの抑制においても顕著な効果を示し、アウタハウジングからのワイヤカバーの脱離および/または端子接点部の接触不良がより好適に防止され得る。
【0044】
また、本開示のコネクタは、上述のような組付けにより、ワイヤカバーの脱着の操作性にも優れている。自動車等に搭載されたレバー式コネクタでは、メンテナンスの際にコネクタの差し替えが行われる場合がある。コネクタの差し替えが行われる際には、作業者が手作業でアウタハウジングからワイヤカバーを取り外す必要がある。従来のレバー式コネクタでは、ハウジングからワイヤカバーを取り外す際に、作業者がロック部(係止部)を過度に拡げる必要があり、ハウジングおよび/またはワイヤカバーを破損する可能性がある。一方で、本開示のコネクタでは、ワイヤカバーの取り外しはワイヤカバーとアウタハウジングとを相対的にスライド移動させることによって実施され、ワイヤカバーおよび/またはアウタハウジングを変形させることを必要としない。したがって、本開示のコネクタでは、ワイヤカバーの脱着に際して、作業者がワイヤカバーおよび/またはアウタハウジングを過度に変形させることによる変形および/または破損の発生が防止される。さらに、スライド移動のみで脱着可能であることから、コネクタの差し替え作業などにおける作業者の負荷および作業時間が大幅に低減され得る。
【0045】
本開示のコネクタにおけるワイヤカバーの組付けに際して、ワイヤカバーおよびアウタハウジングは、ワイヤカバーを仮組付け位置に導くための構造を有してよい。具体的には、ワイヤカバー100は側壁120に位置決め突起122を有し(
図3B参照)、アウタハウジング200は該位置決め突起122に対応するように設けられた被位置決め突起223を有してよい(
図5B参照)。ある好適な態様では、アウタハウジングの被位置決め突起223は、隆起部220の圧入溝221を形成する側面突起222の前方向X’に隣接して、隆起部220の側面から側面突起222と同じ方向に突出するように設けられる。ワイヤカバーの位置決め突起122は、圧入突起121の前方向X’に隣接して、ワイヤカバーの側面120から圧入突起121と同じ方向に突出するように設けられる。また、位置決め突起122は、仮組付け位置への配置に際して、位置決め突起122と圧入突起121との間に被位置決め突起223が適合するように位置付けられる。換言すれば、ワイヤカバー100を仮組付け位置に配置するに際して、被位置決め突起223が位置決め突起122と圧入突起121との間を通るように、位置決め突起122および圧入突起121は間隔を有して互いに隣接している。このような構造のもと、ワイヤカバー100の組付けに際して、ワイヤカバー100は、位置決め突起122と被位置決め突起223とが互いに適合するように組み合わされることによって、仮組付け位置に導かれる。より具体的には、位置決め突起122と圧入突起121との間に被位置決め突起223が適合するようにワイヤカバー100とアウタハウジング200とを組み合わせることによって、ワイヤカバー100の仮組付け位置への位置決めが行われる。その後、圧入係合のためにワイヤカバー100とアウタハウジング200とを相対的にスライド移動させるに際して、位置決め突起122は、被位置決め突起223とアウタハウジングの上面210との間を通るように後方向X”に移動する。上述のような構造により、ワイヤカバーの組付けにおいて、仮組付け位置へより確実に配置させることが可能となる。したがって、上述の位置決めのための構造は、ワイヤカバーの誤係合を防止し、組付け作業の作業性をより向上させることに寄与し得る。
【0046】
さらに、アウタハウジングの隆起部220は、仮組付け位置において、ワイヤカバーの位置決め突起122と互いに対向するように配置されてよい。より具体的には、
図9Aに示すように、隆起部220は、仮組付け位置において位置決め突起122と対向するように長手方向に延在してよい。この構造により、圧入係合に際して、位置決め突起122は隆起部220に沿ってスライド移動され、ワイヤカバーは圧入係合が完了する位置に好適に案内され得る。したがって、上述の構造により、ワイヤカバーの誤係合がより好適に防止されるため、組付け作業における作業効率を向上させる効果が得られ得る。
【0047】
また、
図14Bに示すように、ワイヤカバー100は、側壁120が上述の肉厚部120aに対して相対的に肉薄となっている肉薄部120bも有する。より詳細には、肉薄部120bは、仮組付け位置において突出部230のテーパー面が収容される凹形状を形成するように、相対的に肉薄となっていてよい。また、肉薄部120bは、第2圧締め方向の圧入係合部においてアウタハウジングの突出部230と干渉する肉厚部120aと、コネクタ2000の長手方向にて互いに隣接していてよい。より具体的には、肉薄部120bは、肉厚部120aの後方向X”に隣接して配置されてよい。ある好適な態様では、突出部230のテーパー面は、肉厚部120aと隣接する肉薄部120bに向かって漸次傾斜している。肉薄部120bは、仮組付け位置において突出部230のテーパー面を収容するように凹形状を形成していることがより好ましい。この構造により、仮組付けにおいて、突出部230のテーパー面をワイヤカバーの側壁120と干渉させることなく配置することが可能となる。さらに、続くスライド移動による圧入においても、突出部230が肉薄部120bから肉厚部120aに向かってより好適にスライド移動し易くなるといった効果を奏し得る。
【0048】
また、本開示のコネクタにおいて、互いに交差する圧締め方向を有する2種の圧入係合部は、互いに隣接して対を成してよい。換言すれば、第1圧締め方向の第1圧入係合部と第2圧締め方向の第2圧入係合部とは、長手方向に隣接して配置されていてよい。具体的には、
図8Aに示すように、第1圧入係合部Z
Iは、第2圧入係合部Y
Iの後方向X”に隣接して設けられ得る。このような構造において、第1圧入係合部Z
Iに係る隆起部220および/または該隆起部220に設けられた側面突起222は、第2圧締め方向の圧入係合に際してワイヤカバー100を支持する役割も果たし得る。したがって、第1圧締め方向の圧入係合部と第2圧締め方向の圧入係合部を隣接して配置することは、ワイヤカバーのガタ付きのより好適な抑制を助力し得る。
【0049】
さらに、互いに交差する圧締め方向を有する2種の圧入係合部が隣接して配置される場合、ワイヤカバーの圧入突起121または位置決め突起122は、肉薄部120bに設けられていてよい。より具体的には、位置決め突起122は、肉薄部120bにおいて、アウタハウジングの突出部230に面する側とは反対の側面120から突き出すように設けられていてよい(
図14B参照)。
図14Aに示すように、ある好適な態様では、ワイヤカバー100の外側に凹形状を有するように形成された肉薄部120bにおいて、圧入突起121または位置決め突起122はワイヤカバー100の内側に突出するように配置されてよい。上述の構造により、ワイヤカバーの肉薄部120bの強度をより向上させることが可能となる。
【0050】
本開示のコネクタにおいて、互いに隣接している第1圧入係合部と第2圧入係合部から成る対は、1つまたはそれより多く設けられていてよい。例えば、対は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、またはそれより多く設けられていてよい。圧入係合部の対の数は特に制限されないものの、ワイヤカバーとアウタハウジングとの組付けは、圧入係合部の数が多いほどより強固になり得る。しかしながら、圧入係合部の数が増えるほど組付け荷重が大きくなり、組付け作業時における作業者の負荷、ならびにワイヤカバーおよび/またはアウタハウジングの破損の可能性が増す。したがって、組付けの強さおよび組付け荷重をより重視すると、圧入係合部の対は、好ましくは2つ以上6つ以下であり、より好ましくは2つ以上4つ以下である。
【0051】
圧入係合部の対は、コネクタの前方部および/または後方部に設けられていてよい。換言すれば、ワイヤカバーは、コネクタの前方部および後方部の少なくとも一方に設けられた圧入係合部の対によって組付けられてよい。電線から伝わり得る振動に対処することをより重視すると、電線はコネクタの後方部から導出されるため、圧入係合部の対は少なくとも後方部に設けられていることが好ましい。より好ましくは、コネクタの前方部および後方部のそれぞれにおいて、圧入係合部の対の少なくとも1つが設けられていてよい。さらに好ましくは、コネクタは4つの圧入係合部の対を有し、該4つの対が互いに対称的に配置されていてよい。特に、4つの対は、コネクタの平面視において互いに対称的に位置付けられていてよい。
図9Aは本開示のコネクタの断面図であるが、ここでいう「平面視」は、本開示のコネクタを下方向Z”に沿ってとらえたコネクタの平面視に相当する。当該
図9Aに示すように、4つの対のそれぞれは、長手軸Lおよび短手軸Sに関して互いに対称的な位置に配置されることがより好ましい。上述の構造により、圧入係合部にかかる負荷が効果的に分散され、複数の方向からの振動によるガタ付きがより好適に抑制され得る。
【0052】
本開示のコネクタにおいて、ワイヤカバーおよびアウタハウジングは、絶縁性を有する樹脂材を含み得る。特に限定されないものの、ワイヤカバーおよびアウタハウジングは、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂から成る群から選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含み得る。また、ワイヤカバーとアウタハウジングとは、異なる樹脂材を含んで成ってよい。
【0053】
一般的に、本開示のコネクタのようなレバー式コネクタにおいて、ワイヤカバーは最も付け替え作業が容易な部品である。そのため、本開示のコネクタの使用による圧入係合部の消耗が、より容易に付け替え可能なワイヤカバーで優先的に発生するように、アウタハウジングは、ワイヤカバーより相対的に高い強度で形成されることが好ましい。換言すれば、アウタハウジングは、ワイヤカバーよりも高い剛性を有することが好ましい。例えば、アウタハウジングは、ワイヤカバーより相対的に剛性の高い材料で形成されてよい。代替的には、アウタハウジングは、ワイヤカバーより相対的に厚い厚みで形成されることで、相対的により高い強度を有してよい。このように、ワイヤカバーの剛性がアウタハウジングより低い場合、例えば脱着操作の繰返しおよび/または高振動条件下での使用などにおいて、ワイヤカバーが優先的に摩耗し得る。これにより、アウタハウジングの有効寿命を相対的に長くすることが可能となる。一方で、ワイヤカバーは消耗しても付け替えが比較的容易であるため、コネクタのメンテナンスや修理における作業効率が改善され得る。
【0054】
また、本開示のコネクタは、組付け完了後において、ワイヤカバー100とアウタハウジング200との前後方向Xへの移動を防止するための係止部123aを有してよい(
図8A参照)。より具体的には、ワイヤカバー100がスライド移動によって圧入係合された後、スライド移動方向である前後方向Xへのワイヤカバー100の相対的な変位を防ぐため、係止部123aによってワイヤカバー100がアウタハウジング200に固定されてよい。
図8Aに示すように、係止部123aは、ワイヤカバー100の前方部の側壁120に設けられた片持ち梁123の先端に形成されてよい。ワイヤカバー100の組付けに際して、仮組付け位置からワイヤカバー100を後方向X”へスライド移動させることによって、係止部123aがアウタハウジング200の前方に設けられた隆起部220の被係止部250に係止される。上述のような構造により、ワイヤカバー100の前後方向Xの相対変位が規制され、振動などによるワイヤカバーの意図しない脱離を防止することができる。
【0055】
係止部123aによるワイヤカバー100とアウタハウジング200との係合は、スライド移動に際して片持ち梁123が左右方向Yに僅かに撓むことによって実施される。したがって、左右方向Yへの圧締めである第2圧締め方向の圧入係合部は、片持ち梁123の機能を阻害しない位置に設けられることが好ましい。換言すれば、第2圧締め方向の圧入係合部は、係止部123aを有する片持ち梁123の先端付近を避けて配置されることが好ましい。上述のような構造により、スライド移動に際して片持ち梁123の動きが妨害されず、ワイヤカバー100とアウタハウジング200とのより好適な組付けが実現し得る。さらに、上述の構造では、上下方向Z、左右方向Y、および前後方向Xへのワイヤカバーおよびアウタハウジングの相対変位が規制される。したがって、複数の方向からの振動によるガタ付きを抑制するより顕著な効果が得られ、アウタハウジングからのワイヤカバーの脱離および/または端子接点部の接触不良がさらに好適に防止され得る。
【0056】
以上、本開示について説明してきたが、本開示の適用範囲における典型例を示したに過ぎない。本開示のコネクタは、レバーなどの倍力機構を備えていなくてもよい。また、本開示のコネクタは、シール部材を備えた防水コネクタである必要はない。上記以外にも、本開示の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示のワイヤカバーおよびアウタハウジングを備えたコネクタは、電気的接続を要する各種技術分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1000 ハウジング
2000 コネクタ
100 ワイヤカバー
110 開口
120 側壁
120a 肉厚部
120b 肉薄部
121 圧入突起
122 位置決め突起
123 片持ち梁
123a 係止部
200 アウタハウジング
210 上面
220 隆起部
221 圧入溝
222 側面突起
222a 側面突起の下面
223 被位置決め突起
230 突出部
230a 突出部の側面
240 溝
250 被係止部
300 カム部材
310 カム溝
400 インナハウジング
500 リテーナ
600 シール部材
700 フロントハウジング
800 操作レバー
900 端部パーツ
YI 第2圧入係合部
ZI 第1圧入係合部
L 長手軸
S 短手軸
X 前後方向
X’ 前方向
X” 後方向
Y 左右方向
Z 上下方向
Z’ 上方向
Z” 下方向