IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タブチの特許一覧

<>
  • 特開-分水用コアの挿入器 図1
  • 特開-分水用コアの挿入器 図2
  • 特開-分水用コアの挿入器 図3
  • 特開-分水用コアの挿入器 図4
  • 特開-分水用コアの挿入器 図5
  • 特開-分水用コアの挿入器 図6
  • 特開-分水用コアの挿入器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022177617
(43)【公開日】2022-12-01
(54)【発明の名称】分水用コアの挿入器
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/073 20060101AFI20221124BHJP
   F16L 41/06 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B25B27/073 A
F16L41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084013
(22)【出願日】2021-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000151025
【氏名又は名称】株式会社タブチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】坂本 武司
(72)【発明者】
【氏名】上田 賢佳
【テーマコード(参考)】
3C031
3H019
【Fターム(参考)】
3C031DD46
3H019CA01
3H019CB01
(57)【要約】
【課題】施工不良を抑制することができる分水用コアの挿入器を提供する。
【解決手段】操作部3を回動操作して軸線方向の一端部側へ移動させると、弾性体5を介して移動体4が軸線方向の一端部側へ移動して分水用コア9が分水孔8Aに挿入されるとともに、分水用コア9の分水孔8Aへの挿入圧が所定圧以上になると、弾性体5が収縮することで移動体4に対して操作部3のみが一端部側へ相対移動するように構成され、弾性体5の収縮を許容して移動体4に対する操作部3の相対移動を許容する第1状態と弾性体5の収縮を規制して移動体4に対する操作部3の相対移動を規制する第2状態とに切り換え可能に構成される切換部材12を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分水栓が取り付けられた配水管に形成した分水孔に筒状の分水用コアを挿入して装着するための分水用コアの挿入器において、
筒状に構成され、軸線方向の一端部に前記分水栓の開口部に取り付けられる固定部を有する筒状体と、該筒状体に螺合して軸線回りに回動させることにより該筒状体の軸線方向に移動する操作部と、前記筒状体及び前記操作部を貫通するように設けられ、前記軸線方向に移動可能な移動体と、前記操作部の前記軸線方向への移動力を前記移動体に伝達すべく該操作部と該移動体との間に介在される弾性体と、前記移動体の前記軸線方向の一端部側の先端部に設けられ、前記分水用コアを着脱可能に保持するヘッドと、を備え、
前記操作部を回動操作して前記軸線方向の一端部側へ移動させると、前記弾性体を介して前記移動体が前記軸線方向の一端部側へ移動して前記分水用コアが分水孔に挿入されるとともに、前記分水用コアの前記分水孔への挿入圧が所定圧以上になると、前記弾性体が収縮することで前記移動体に対して前記操作部のみが前記一端部側へ相対移動するように構成され、
前記弾性体の収縮を許容して前記移動体に対する前記操作部の相対移動を許容する第1状態と該弾性体の収縮を規制して前記移動体に対する前記操作部の相対移動を規制する第2状態とに切り換え可能に構成される切換部材を備えていることを特徴とする分水用コアの挿入器。
【請求項2】
前記切換部材は、前記操作部及び前記移動体の一方に取り付けられて他方に係合することで前記第2状態になり、他方への係合が解除されることで第1状態へと切り換えられることを特徴とする請求項1に記載の分水用コアの挿入器。
【請求項3】
前記切換部材は、前記操作部及び前記移動体の一方に着脱可能に取り付けられ、一方から取り外されることで他方への係合が解除されることを特徴とする請求項2に記載の分水用コアの挿入器。
【請求項4】
前記切換部材は、前記操作部及び前記移動体の他方に係合すべく、当接する一方側当接部を有し、前記他方は、前記一方側当接部が当接する他方側当接部を有し、前記一方側当接部及び前記他方側当接部は、互いに当接する方向で対向する対向面を有し、互いの対向面が部分的に接触することで当接するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の分水用コアの挿入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分水用コアの挿入器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記分水用コアの挿入器は、水平回転するハンドルの回転操作により上下動する挿入棒を下降させて、該挿入棒の下端に設けたストレッチャーヘッドにより分水栓を通して水道本管の分水孔に分水用コアを挿入して装着するために使用される。これにより、前記分水孔の腐食を防止できるようにしている。前記挿入器は、前記挿入棒を挿通した状態で前記分水栓に固定され、上部にネジ部を有する挿入器本体と、該挿入器本体の前記ネジ部と螺合する送りねじ部を有して、前記挿入棒の上部が貫通した状態で前記ハンドルを回転操作することにより上下に昇降するハンドル本体と、該ハンドル本体と前記挿入棒の間に改装され、前記ハンドルの回転トルクを前記挿入棒に伝達するスプリングと、前記ハンドル本体の上部に取り付けられ、前記挿入棒の前記ハンドル本体からの貫通上部が出入自在な窓孔を有するキャップと、を備えている。そして、前記分水用コアを前記分水孔に挿入する時に、前記ハンドル本体を一定量下降させたときに、分水用コアの分水孔への挿入圧が所定圧以上になると、前記スプリングを収縮させると共に、該スプリングの収縮量に見合った長さだけ、前記挿入棒の前記貫通上部が前記窓孔から外部に突出する。これにより、分水用コアの装着が完了したことがわかるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、分水用コアには様々な長さの寸法のものがあるが、標準的な長さの分水用コアを良好に装着できるように上記挿入器を構成しているため、例えば長さが短い寸法の分水用コアを装着する場合、スプリングの収縮側へのストロークが大きいため、分水用コアを分水孔に必要以上に挿入してしまう。その結果、分水用コアを変形させてしまい、施工不良となることがあった。また、前記とは逆に長さが長い寸法の分水用コアを装着する場合、スプリングの収縮側へのストロークが小さいため、分水用コアを分水栓に挿入する挿入長さが不足してしまい、施工不良となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-107705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、施工不良を抑制することができる分水用コアの挿入器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分水用コアの挿入器は、前述の課題解決のために、分水栓が取り付けられた配水管に形成した分水孔に筒状の分水用コアを挿入して装着するための分水用コアの挿入器において、筒状に構成され、軸線方向の一端部に前記分水栓の開口部に取り付けられる固定部を有する筒状体と、該筒状体に螺合して軸線回りに回動させることにより該筒状体の軸線方向に移動する操作部と、前記筒状体及び前記操作部を貫通するように設けられ、前記軸線方向に移動可能な移動体と、前記操作部の前記軸線方向への移動力を前記移動体に伝達すべく該操作部と該移動体との間に介在される弾性体と、前記移動体の前記軸線方向の一端部側の先端部に設けられ、前記分水用コアを着脱可能に保持するヘッドと、を備え、前記操作部を回動操作して前記軸線方向の一端部側へ移動させると、前記弾性体を介して前記移動体が前記軸線方向の一端部側へ移動して前記分水用コアが分水孔に挿入されるとともに、前記分水用コアの前記分水孔への挿入圧が所定圧以上になると、前記弾性体が収縮することで前記移動体に対して前記操作部のみが前記一端部側へ相対移動するように構成され、前記弾性体の収縮を許容して前記移動体に対する前記操作部の相対移動を許容する第1状態と該弾性体の収縮を規制して前記移動体に対する前記操作部の相対移動を規制する第2状態とに切り換え可能に構成される切換部材を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、切換部材で第1状態に切り換えて分水用コアを分水孔へ装着する場合には、分水用コアの分水孔への挿入圧が所定圧以上になると、弾性体が収縮することで移動体に対して操作部のみが分水栓側へ移動する。このとき、作業者は、移動体に対する操作部の移動量を確認することによって、分水用コアの分水栓への装着が完了したと判断する。そして、第1状態で施工することが難しい長さの分水用コアを分水孔へ装着する場合には、切換部材で第2状態に切り換える。この場合、分水用コアの分水孔への挿入圧が所定圧以上になっても、弾性体が収縮せず操作部と一緒に弾性体も分水栓側へ移動する。したがって、作業者は、分水孔から操作部へ伝達される分水用コアの挿入圧を確認しながら、操作部を操作することで分水用コアの分水栓への装着が完了したと判断する。
【0008】
又、本発明の分水栓用コアの挿入器は、前記切換部材が、前記操作部及び前記移動体の一方に取り付けられて他方に係合することで前記第2状態になり、他方への係合が解除されることで第1状態へと切り換えられる構成であってもよい。
【0009】
上記のように、操作部及び前記移動体の一方に取り付けられた切換部材を他方に係合するだけで第2状態にすることができる。また、他方へ係合されている切換部材の係合を解除するだけで第1状態にすることができる。
【0010】
又、本発明の分水用コアの挿入器は、前記切換部材が、前記操作部及び前記移動体の一方に着脱可能に取り付けられ、一方から取り外されることで他方への係合が解除される構成であってもよい。
【0011】
上記のように、操作部及び前記移動体の一方に取り付けられた切換部材を、一方から取り外すだけで、他方への係合を解除することができる。
【0012】
又、本発明の分水栓用コアの挿入器は、前記切換部材が、前記操作部及び前記移動体の他方に係合すべく、当接する一方側当接部を有し、前記他方は、前記一方側当接部が当接する他方側当接部を有し、前記一方側当接部及び前記他方側当接部は、互いに当接する方向で対向する対向面を有し、互いの対向面が部分的に接触することで当接するように構成されていてもよい。
【0013】
上記のように、一方側当接部の対向面と他方側当接部の対向面とが部分的に接触することで当接するので、回転摩擦トルクを小さくすることができる。これにより、切換部材が移動体との当接により緩み側に回転されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性体の収縮を許容する第1状態と該弾性体の収縮を規制する第2状態とに切り換える切換部材を備えることによって、施工不良を抑制することができる分水用コアの挿入器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の分水用コアの挿入器を分水栓に取り付けて第1状態で分水用コアを装着しようとする直前の状態を示す縦断面図である。
図2図1の状態から操作部を下降させて分水用コアの下端部を分水孔に挿入した状態を示す挿入器の縦断面図である。
図3図2の状態から操作部を下降させて分水用コアを拡径して分水孔に装着が完了した状態を示す縦断面図である。
図4】本発明の分水用コアの挿入器を分水栓に取り付けて第1状態で分水用コアを装着しようとする直前の状態を示す縦断面図である。
図5図4の状態から操作部を下降させて分水用コアの下端部を分水孔に挿入した状態を示す挿入器の縦断面図である。
図6図5の状態から操作部を下降させて分水用コアを拡径して分水孔に装着が完了した状態を示す縦断面図である。
図7】分水用コアの半分を断面にした側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に、本発明の分水用コアの挿入器(以下において単に挿入器という)1を示している。尚、この実施形態では、軸線方向を上下方向として説明する。
【0017】
挿入器1は、筒状体2と、操作部3と、移動体4と、弾性体5と、ヘッド6と、を備えている。
【0018】
筒状体2は、分水栓7の上端の開口部72aに着脱可能に螺合により取り付けられる固定側の金属製で円筒状の第1筒状体21と、この第1筒状体21の上端部に螺合により連結固定される金属製で円筒状の第2筒状体22と、を備えている。この実施形態では、筒状体2が、第1筒状体21と第2筒状体22の2つの部材から構成されているが、1つの部材から構成してもよいし、3つ以上の任意の個数の部材から構成されていてもよい。
【0019】
第1筒状体21は、円筒状の筒状本体21Aと、筒状本体21Aの下端部に筒状本体21Aの外径よりも大きな外径を有し、筒状本体21Aの長さよりも短い長さを有する円筒状の大径部21Bと、筒状本体21Aの上端部に筒状本体21Aの外径よりも小さな外径を有し、筒状本体21Aの長さよりも短い長さを有する円筒状の小径部21Cと、を備えている。
【0020】
前記大径部21Bの内周面には、雌ねじ部が形成されている。この雌ねじ部を、分水栓7の上端の開口部72aを形成する上端部72Aの外面に形成の雄ねじ部に螺合することにより挿入器1を分水栓7に取り付けることができる。また、前記小径部21Cの外周面には、雄ねじ部が形成されている。この雄ねじ部に、後述する第2筒状体22の下端部の装着部22Aの内周面に形成されている雌ねじ部を螺合することにより第2筒状体22を第1筒状体21に固定することができる。
【0021】
第2筒状体22は、第1筒状体21の小径部21Cの外面に形成の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が内周面に形成された装着部22Aと、装着部22Aの上端から径が小さくなって上方に延びる円筒状の首部22Bと、首部22Bの上端から装着部22Aよりも大きな径を有し操作部3を上下方向に移動可能に支持する円筒状の支持部22Cと、を備えている。
【0022】
分水栓7は、配水管8に装着されるサドル本体71と、サドル本体71に対して回動可能に取り付けられる分水栓本体72と、を備えるサドル分水栓から構成されている。
【0023】
分水栓本体72は、金属製であり、上端に円形の開口部72aを有する上端部72Aと、上端部72Aから下方に延出された中間部72Bと、中間部72Bの下端部に接続され下方に円形の開口部72cを有する下端部72Cと、を備えている。中間部72Bは、ボール弁(三方弁)73を備えるとともに、継手(図示せず)を接続するための分岐継手部74を備えている。ボール弁(三方弁)73は、回転可能な操作軸75に連結されており、操作軸75を一方向に回転させることにより、ボール弁73を開放させて、配水管8からの水を分水栓本体72に供給し、操作軸75を前記一方向とは反対方向へ回転させることによって、ボール弁73を閉じることで、配水管8からの水を分水栓本体72に供給しない状態にすることができる。下端部72Cは、中間部72Bの下端部に接続される第1下端部72Dと、第1下端部72Dの下端に接続され配水管8の表面に当接する円弧状の当接面を有する第2下端部72Eと、を備えている。
【0024】
サドル本体71は、配水管8の上部に配置される上部サドル71Aと、配水管8の下部に配置される下部サドル71Bと、これら上部サドル71Aと下部サドル71Bとを配水管8に固定するためのボルトとナットからなる一対の締結具71C,71Cと、を備えている。
【0025】
支持部22Cの内面には、雌ねじ部22Nが形成されている。この雌ねじ部22Nに対して螺合する雄ねじ部31Nが操作部3を構成する操作部本体31の外周面に形成されている。また、図1の拡大図に示すように、装着部22Aの内面に、外側に凹んだ環状の溝22aが形成され、この溝22aにOリング23が収容されている。このOリング23に移動体4の下端部に形成された後述する円環状の溝41Mが係止することによって、移動体4が下方側へ移動しないように保持される。これにより挿入器1を分水栓7に装着している時に、移動体4が自重により下方へ不測に移動して分水栓7に備える閉じ状態のボール弁73に移動体4の下端部に備えるヘッド6の下端が当接してボール弁73を損傷させることがないようにしている。尚、この実施形態では、前記ヘッド6の下端が、ボール弁73よりも上方に位置している時に、前記Oリング23に移動体4の下端部に形成された後述する円環状の溝41Mが係止することになるが、ボール弁73が無い時には、前記ヘッド6の下端が、分水孔8Aよりも上方に位置している時に、前記Oリング23に移動体4の下端部に形成された後述する円環状の溝41Mが係止する。
【0026】
操作部3は、構成部材の全ての部品が金属製で構成され、内側に位置する操作部本体31と、操作部本体31の外側に位置し、操作部本体31の上端部の側壁にねじ込み固定される円筒状のカバー部32と、操作部本体31の上端部の周方向2箇所に形成されるねじ部にそれぞれねじ込まれて固定される棒状の複数(図1では2個であるが、何個でもよい)のハンドル33,33と、操作部本体31のハンドル33,33よりも上側の外面に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が下端部の円環状のスカート部34Aの内周面に形成されたキャップ部34と、を備えている。
【0027】
操作部本体31は、上端に移動体4を挿通可能な孔31aが形成された天板部31Aを備え、操作部本体31の下端部の外面には、第2筒状体22の支持部22Cの雌ねじ部22Nに螺合する雄ねじ部31Nが形成されている。したがって、ハンドル33,33を持って操作部本体31を上下軸心回りに回動させることによって、雌ねじ部22Nに沿って操作部本体31が移動してヘッド6を上下動させる(図2図3では下方へ移動させている)。
【0028】
移動体4は、金属製で構成され、円形で棒状の部材からなり、下端部に最も径が大きい大径部41と、上端部に最も径の小さな小径部42と、上下方向中間部に大径部41よりも径が小さく小径部42よりも径が大きな中間部43と、を備えている。中間部43と大径部41との段差部44(図1の拡大図参照)が、第2筒状体22の装着部22Aと首部22Bとの段差部24に当接してそれ以上の移動体4の上方への移動が阻止される。このとき、前述したように、第2筒状体22に備えるOリング23に移動体4の下端部、つまり大径部41の上部に形成された溝41Mが係止することによって、移動体4の下方への移動が阻止される(図1参照)。
【0029】
移動体4の小径部42の上端部には、2つのナット45,46(ダブルナットともいう)が螺合して装着されている。上側のナット45は、上端が閉じられた袋ナットに構成されている。このように2つのナット45,46を移動体4の小径部42に螺合させることによって、ナット45,46が移動体4に対して緩むことを防止できる。
【0030】
また、上側のナット45は、後述するプラグ12の下端(一方側当接部)が接触して当接する他方側当接部を備えている。上側のナット45の他方側当接部(上端)と後述するプラグ12の一方側当接部(下端)は、互いに当接する方向で対向する対向面を有し、互いの対向面が、部分的に接触することで当接するように構成されている。前記部分的に接触するとは、点接触や線接触等が挙げられるが、部分的に接触するのであれば、どのように接触してもよい。具体的には、例えば図6の拡大図に示すように、上側のナット45の他方側当接部である上端45Aを上側ほど先細りになる略円錐形状にしている。したがって、プラグ12の下端のねじ部12Aの平面12aに対して上側のナット45の上端45Aが点接触(部分的に接触)した状態になるため、プラグ12と上側のナット45との接触部における回転摩擦トルクを小さくすることができ、プラグ12がナット45との当接により緩み側に回転されることを抑制できる。この実施形態では、ナット45の上端を円錐形状にしているが、ナット45の上端を平面にし、プラグ12の下端を円錐形状にしてもよい。この実施形態では、2つのナット45,46を移動体4に螺合しているが、1つのナットを移動体4に螺合してもよいし、ナットを省略して、移動体4の上端を円錐形状にして実施することもできる。
【0031】
また、上側のナット45の側面には、環状の溝45M(図3の拡大図参照)が形成されている。この溝45Mは、分水用コア9の挿入位置を確認するための目印となる部分である。溝45Mに塗料などにより着色して目立つようにしてもよい。そして、ハンドル33,33を平面視(軸方向視)にて時計回り(右回り)に回転させて操作部3を下方へ移動させて分水用コア9を配水管8の分水孔8Aに挿入する。この挿入時に、分水孔8Aからの反力を受けて弾性体5が収縮することで操作部3のみが下方へ移動する(図3参照)。これによって、キャップ部34から上側のナット45の溝45Mが露出する。作業者は、この溝45Mの露出により分水用コア9が正規の位置まで挿入されて装着されたことを確認することができる。尚、キャップ部34から上側のナット45が露出した位置が図3に示す分水用コア9が正規の位置(正常)に挿入された状態である。そして、分水用コア9は、図7に示す以外に長さの異なる分水用コアが存在しており、それら分水用コアは、後述するプラグ12を用いることによって、分水孔8Aに良好に装着することができる。この実施形態では、ナット45の側面に環状の溝45Mを形成しているが、径方向外側に突出する環状の突条や径方向外側に突出する突起を周方向に複数形成したものであってもよいし、ナット45の側面に塗料等で環状のラインを形成してもよい。
【0032】
弾性体5は、コイルスプリングから構成され、移動体4を貫通した状態で操作部本体31内に配置され、上端が上側ばね受け10に支持され、下端が下側ばね受け11に支持されている。上側ばね受け10は、操作部本体31の天板部31Aで上方への移動が規制され、下側ばね受け11は、移動体4の小径部42と中間部43との段差部47に上方から係合しており、下方側への移動が規制されている。したがって、ハンドル33,33を平面視にて時計回り(右回り)に回転させて操作部3を下方へ移動させると、弾性体5のばね圧で下側ばね受け11が下方へ移動し、移動体4を一緒に下方へ移動させる。そして、分水用コア9の分水孔8Aへの挿入圧が所定圧以上になる、つまり弾性体5のばね圧よりもヘッド6に装着した分水用コア9の分水孔8Aへの挿入圧が大きくなると、挿入圧からの反力により移動体4の下方への移動が阻止される。これにより弾性体5が収縮する。この弾性体5の収縮により操作部3のみが下方へ移動するため、上側のナット45が操作部3のキャップ部34の上端から露出する(図3参照)。
【0033】
ヘッド6は、金属製で略円柱状に構成され、移動体4の下端に螺合により取り付けられ、軸方向(長手方向)に間隔を置いて複数の段差部を形成している。このヘッド6に分水用コア9が外装され、ヘッド6が分水孔8Aに挿入されたのち、ヘッド6を分水孔8Aから引き抜くように上昇させることにより、分水用コア9が分水孔8Aに密着した状態で装着される。
【0034】
分水用コア9は、図7に示すように、筒状の樹脂スリーブ91と筒状の金属スリーブ92とから構成されている。樹脂スリーブ91の上部に対して金属スリーブ92の下部が挿入された状態で組み合わされている。樹脂スリーブ91は、例えばポリエチレン樹脂から形成され、金属スリーブ92がステンレス鋼から形成されているが、他の材料から構成してもよい。そして、図7に示す状態の分水用コア9をヘッド6に装着し、ヘッド6を分水孔8Aに挿入することによって、金属スリーブ92が樹脂スリーブ91に完全に入り込むことで樹脂スリーブ91を拡径変形させる。これにより樹脂スリーブ91が分水孔8Aと分水栓7の下端部の内面とに亘って密着した状態で装着される。
【0035】
前記構成の挿入器1を用いて図7に示す分水用コア9を分水孔8Aに装着する際には、切換部材としてのプラグ12を操作部3に取り付けないことにより弾性体5の収縮を許容して移動体4に対する操作部3の相対移動を許容する第1状態に切り換える。プラグ12は、金属(又は金属と略同等の強度を有する材料)で構成され、図6に示すように、キャップ部34の上端部に形成の雌ねじ部34aに螺合するねじ部12Aと、ねじ部12Aの上端から上方に延びるとともにキャップ部34の上端面34Tに当接するねじ部12Aよりも大径に構成された円板状の当接部12Bと、当接部12Bの上端から当接部12Bと略同一外径を有する円柱状のプラグ本体12Cと、を備えている。プラグ本体12Cを回転させることによりねじ部12Aをキャップ部34の雌ねじ部34aに螺合させることができる。ねじ部12Aの下端は、他方側当接部である上端45Aに部分的に接触して当接する一方側当接部である平面12aを備えている。
【0036】
従って、図7に示す分水用コア9を分水孔8Aに装着する場合には、プラグ12をキャップ部34から取り外してプラグ12をキャップ部34に取り付けていない第1状態に切り換え(図1参照)、図7に示す分水用コア9とは長さが異なる分水用コアを分水孔8Aに装着する場合には、プラグ12をキャップ部34に取り付けて第2状態に切り換える(図4参照)。第1状態は、弾性体5の収縮を許容する状態である。つまり、分水用コア9を分水孔8Aに挿入している時に、弾性体5の弾性力よりもヘッド6を分水孔8Aに挿入させる挿入圧の方が大きくなった時に弾性体5が収縮することで操作部3のみが下方へ移動し、移動体4は下方に移動しない状態になる。第2状態は、プラグ12をキャップ部34に螺合することによって、操作部3と移動体4とを一体化する、つまり操作部3に対して移動体4が上方へ移動することを規制する。これにより、操作部3の下方への移動により、移動体4を同一量だけ下方へ移動させる。
【0037】
前記第1状態(プラグ12をキャップ部34に取り付けていない状態)の挿入器1を用いて図7に示す分水用コア9を分水孔8Aに装着する手順について説明する。まず、挿入器1のヘッド6に分水用コア9を外装し、分水栓7の上端の開口部72aに挿入器1の筒状体2の下端を螺合して挿入器1を固定する(図1参照)。このとき、Oリング23に移動体4の溝41Mが係止して、移動体4が自重で下方側へ移動しないように保持されている。尚、図1の分水栓7のボール弁73は、挿入器1を固定するまでは、閉じられており、固定が完了してから、開放することになる。次に、ハンドル33,33を持って平面視にて時計(右)回りに回転させることにより操作部3を同方向に回転させて操作部3及び移動体4を下降させる。これにより、図2に示すように、ヘッド6の下端部が、分水孔8Aに挿入されるとともに、分水用コア9の下端部が分水孔8Aに挿入される。この図2の状態から更にハンドル33,33を平面視にて時計(右)回りに回転させると、弾性体5の弾性力よりもヘッド6を分水孔8Aに挿入させる挿入圧の方が大きくなる。そのため、ハンドル33,33を更に平面視にて時計(右)回りに回転させると、弾性体5が収縮することで移動体4に対して操作部3のみが分水栓側(下方)へ移動する。この操作部3の下方への移動により、操作部3の上端から上側のナット45が露出していく。そして、上側のナット45の側面の溝45Mが露出した時点(図3参照)が、分水用コア9の分水栓8Aへの装着が完了したと作業者が判断し、ハンドル33,33の回転を停止して装着作業の終了となる。終了後は、ハンドル33,33を前記回転とは反対方向の反時計(左)回りに回転させて図1の状態に戻した後、ボール弁73を閉じ状態に切り換えてから、筒状体2を分水栓7から取り外す。
【0038】
次に、図7に示す分水用コア9とは長さが異なる寸法の分水用コア13を分水孔8Aに前記第2状態(プラグ12をキャップ部34に螺合して取り付けた状態)の挿入器1を用いて装着する手順について説明する。まず、挿入器1のヘッド6に分水用コア13を外装し、分水栓7の上端の開口部72aに挿入器1の筒状体2の下端を螺合して挿入器1を固定する(図4参照)。このとき、Oリング23に移動体4の溝41Mが係止して、移動体4が自重で下方側へ移動しないように保持されている(図4参照)。尚、図1の分水栓7のボール弁73は、挿入器1を固定するまでは、閉じられており、固定が完了してから、開放することになる(図4では開放状態である)。次に、ハンドル33,33を持って平面視時計(右)回りに回転させることにより操作部3を同方向に回転させて操作部3及び移動体4を下降させる。これにより、図5に示すように、ヘッド6の下端部が分水孔8Aに挿入されるとともに分水用コア13の下端部が分水孔8Aに挿入される。この図5の状態から更にハンドル33,33を平面視にて時計(右)回りに回転させると、弾性体5の弾性力よりもヘッド6を分水孔8Aに挿入させる挿入圧の方が大きくなる。しかし、プラグ12により弾性体5が収縮されないように規制されているので、ハンドル33,33を更に平面視にて時計(右)回りに回転させると、操作部3と移動体4とが同一方向に同一量だけ分水栓側(下方)へ移動する。作業者は、分水孔8Aから操作部3のハンドル33,33へ伝達される分水用コア13の挿入圧を確認しながら、操作部3のハンドル33,33を操作することで分水用コア13の分水栓8Aへの装着が完了したことを判断し、ハンドル33,33の回転を停止して装着作業の終了となる。終了後は、ハンドル33,33を前記回転とは反対方向の反時計(左)回りに回転させて図1の状態に戻した後、ボール弁73を閉じ状態に切り換えてから、筒状体2を分水栓7から取り外す。
【0039】
前記第1状態の挿入器1を用いる場合は、プラグ12が不要になるため、プラグ12を保管する場所に困る。これを解消するために、例えば操作部3にねじ孔(図示せず)を形成しておき、そのねじ孔にプラグ12をねじ込んでおいてもよい。そのプラグ12を操作部3に、ねじ孔とキャップ部34とに螺合可能となる長さに構成されたワイヤや紐やロープ等の連結部材により連結しておけば、紛失する等のトラブル発生を回避できる。
【0040】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
上記実施形態では、切換部材をキャップ部34に着脱可能に螺合させるプラグ12から構成したが、図1の状態においてキャップ部34及び移動体4に両者を水平方向から貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、キャップ部34の貫通孔から移動体4の貫通孔に水平方向から貫通するピンを貫通するように装着した第2状態と装着しない第1状態とに切り換えるようにしてもよく、切換部材の具体的構成は、自由に変更できる。
【0042】
また、上記実施形態では、弾性体5としてコイルスプリングを用いたが、板バネや復元力を有する合成ゴム等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…分水用コアの挿入器、2…筒状体、3…操作部、4…移動体、5…弾性体、6…ヘッド、7…分水栓、8…配水管、8A…分水孔、9…分水用コア、10…上側ばね受け、11…下側ばね受け、12…プラグ(切換部材)、12A…ねじ部、12B…当接部、12C…プラグ本体、12a…平面、13…分水用コア、21…第1筒状体、21A…筒状本体、21B…大径部、21C…小径部、22…第2筒状体、22A…装着部、22B…首部、22C…支持部、22N…ねじ部、22a…溝、23…Oリング、24…段差部、31…操作部本体、31A…天板部、31N…雄ねじ部、31a…孔、32…カバー部、33,33…ハンドル、34…キャップ部、34A…スカート部、34T…上端面、34a…雌ねじ部、41…大径部、41M…溝、42…小径部、43…中間部、44…段差部、45,46…ナット、45A…上端、45M…溝、47…段差部、71…サドル本体、71A…上部サドル、71B…下部サドル、71C…締結具、72…分水栓本体、72A…上端部、72B…中間部、72C…下端部、72a…開口部、72c…開口部、73…ボール弁(三方弁)、74…分岐継手部、75…操作軸、91…樹脂スリーブ、92 金属スリーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7